説明

搬送補助装置

【課題】作業者の搬送時の負担を軽減すると共に、正確な位置決めをなし得る搬送補助装置を提供する。
【解決手段】搬送補助装置30は、搬送物Mを吊り下げ保持する懸吊手段38と、操作情報を検知する力覚センサ62と、搬送物Mの荷重を検知する荷重センサ70とを備える。懸吊手段38は、走行手段36を介してX軸,Y軸サーボモータ40,42によりX−Y軸方向へ移動される。また、懸吊手段38は、Z軸サーボモータ44によって搬送物MをZ軸方向へ移動させる。更に、各サーボモータ40,42,44には、夫々エンコーダが設けられる。制御手段は、搬送物Mの荷重に基づいて懸吊手段38が搬送物Mを吊り下げ保持するようZ軸サーボモータ44を制御する。更に、制御手段は、力覚センサ62からの操作情報とエンコーダが出力したパルスとを比較演算して、各サーボモータ40,42,44を、夫々フィードバック制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業者が搬送物を搬送するのを補助する搬送補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の組立ライン等においては、搬送物を搬送する際の補助として、バランサにフック部を懸吊保持した搬送補助装置が好適に使用されている(例えば、特許文献1参照)。図5は、従来例に係る搬送補助装置10を示す概略図であって、搬送補助装置10は、図示しない流体圧供給源からエア等の流体圧をバランサ12に供給することで、フック部14に保持された搬送物Mを持ち上げ、作業者を補助するようになっている。また、バランサ12は、上方に架設された走行手段16を介して、X−Y軸方向(水平方向)に移動させ得るようになっている。この走行手段16は、X軸方向に平行に延在する一対の固定レール18,18と、両固定レール18,18間にスライド自在に架設され、Y軸方向に延在するスライドレール20とから構成されている。
【0003】
前記バランサ12は、スライドレール20に沿ってY軸方向に移動自在な走行ローラ22を介して該スライドレール20に連結されている。この走行ローラ22から操作棒24が垂下しており、該操作棒24の下端に、走行ローラ22を操作するためのハンドル26が設けられている。そして、作業者は、ハンドル26を引っ張って走行ローラ22を移動させることで、バランサ12をX−Y軸方向へ移動させ得るようになっている。すなわち、作業者がハンドル26をX軸方向へ引っ張ると、前記バランサ12がスライドレール20と共にX軸方向へ移動する。また、作業者がハンドル26をY軸方向へ引っ張れば、バランサ12が走行ローラ22と共にY軸方向へ移動するよう構成されている。なお、作業者は、バランサ12に供給される流体圧を変化させるコントローラ28を所持しており、搬送物MをZ軸方向に移動(昇降)させる場合には、作業者はコントローラ28に設けた複数の操作ボタン28aを押圧操作するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3079274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の搬送補助装置10は、流体圧によって搬送物Mを持ち上げることでZ軸方向への補助をなし、作業者の負担を軽減するよう図られている。しかしながら、従来の搬送補助装置10は、X−Y軸方向について補助はしないため、X−Y軸方向への搬送物Mの移動は、作業者自身がハンドル26を引っ張る力によって行なわれるため、作業者に負担となっていた。特に、搬送開始時や停止時には、搬送物Mやスライドレール20等の慣性が大きくなるので、作業者への肉体的負担は増大することとなる。
【0006】
また、搬送物Mを停止する際、作業者は目測で位置決めをする必要があるため、操作を誤ると搬送物Mを組立てラインの機材や組付け対象等に接触させて傷付けてしまったり、破損したりする危険性がある。特に、重量物を搬送する場合には、該重量物の慣性が大きくなって正確な位置決めは更に困難となる。なお、固定レール18やスライドレール20にストッパーを設け、該ストッパーに走行ローラ22等を接触させることで搬送物Mを機械的に位置決めすることは可能である。しかしながら、このような方法では、ストッパーに衝突する際の衝撃が大きくなり、該ストッパーや走行ローラ22等の劣化が早く進んで、メンテナンス費や取り替えコストが高騰化する難点がある。また、搬送物Mを昇降させる際に操作するコントローラ28は、操作ボタン28aの数が多く、操作に手間取ったり誤操作を招くと云った問題を招来していた。
【0007】
そこで本発明は、前述した従来の技術に内在している前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、X−Y軸方向への補助を行なって作業者の負担を軽減し得ると共に、搬送物の正確な位置決めをなし得る搬送補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決し、所期の目的を好適に達成するため、本願の請求項1に係る発明の搬送補助装置は、
作業者が搬送物を搬送するのを補助する搬送補助装置であって、
搬送物を吊り下げ保持する懸吊手段と、
作業者による力の入力および力の方向に基づく操作情報を検知する操作情報検知手段と、
前記操作情報検知手段が検知した操作情報のX軸成分に基づいて駆動され、前記懸吊手段をX軸方向へ移動させるX軸駆動手段と、
前記操作情報検知手段が検知した操作情報のY軸成分に基づいて駆動され、前記懸吊手段をY軸方向へ移動させるY軸駆動手段とを備えていることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、X軸駆動手段およびY軸駆動手段によりX−Y軸方向への補助をなし得るようにしたので、作業者は搬送物の慣性を殆ど感じることなく搬送でき、作業者の負担を軽減し得る。また、作業者による操作情報に基づいてX軸駆動手段およびY軸駆動手段が駆動するので、作業者は搬送物を感覚的に搬送することができ、操作性を向上することが可能となる。従って、作業者は、搬送物を簡単かつ確実に搬送することができ、誤操作により、搬送物が例えば組付けラインの機材や組付け対象等に接触するのを防止することができる。
【0009】
請求項2に係る搬送補助装置では、X軸駆動手段およびY軸駆動手段を、夫々、エンコーダを備えたサーボモータで構成すると共に、該X軸駆動手段およびY軸駆動手段を制御可能な制御手段を設け、該制御手段は、前記操作情報検知手段からの操作情報と各エンコーダが出力したパルスとを比較演算して、該操作情報に応じて前記懸吊手段がX−Y軸方向へ移動するようX軸駆動手段およびY軸駆動手段を制御する。
請求項2の発明によれば、X軸駆動手段およびY軸駆動手段としてサーボモータを採用することで、搬送物の搬送方向や搬送速度等を制御手段により正確に制御でき、作業者の意思に沿った安全かつ確実な搬送を実現できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る搬送補助装置によれば、搬送物のX−Y軸方向への補助を行なって、作業者の負担を軽減し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例に係る搬送補助装置が実装された自動車の組立てラインを示す説明図である。
【図2】実施例に係る搬送補助装置をY軸方向から見た要部拡大図である。
【図3】実施例に係る搬送補助装置をX軸方向から見た要部拡大図である。
【図4】実施例に係る搬送補助装置の制御系を示すブロック図である。
【図5】従来例に係る搬送補助装置をX軸方向から見た要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る搬送補助装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお、実施例では、搬送補助装置を自動車の組立てラインに設置し、自動車のボデーに搬送物を組付ける場合を例に説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、実施例に係る搬送補助装置30が設けられた自動車の組立てラインを上方から見た説明図、図2は、実施例に係る搬送補助装置30をY軸方向から見た要部拡大図、図3は、実施例に係る搬送補助装置30をX軸方向から見た要部拡大図である。なお、以下では、搬送物Mの搬送を開始する位置(搬送開始位置)を原点とし、自動車のボデー32が移送される方向をX軸方向とするX−Y−Z座標空間を規定して説明を行なう。また、自動車のボデー32は、X軸方向の一方向(図1の右から左)へ一定の速度で移送されるものとし、作業者hは、移送されるボデー32へ向けて搬送物Mを搬送するものとする。そして、搬送物Mがボデー32に到達した後は、作業者hは、当該ボデー32の移送速度に合わせて搬送物MをX軸方向へ搬送させながら組付け作業を行なうものとする(図1参照)。なお、目標搬送位置とは、搬送物MのX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の夫々についての搬送開始位置からの搬送距離を意味するものとする。従って、搬送開始位置からボデー32までの直線距離(すなわち、Y軸方向の距離)を「L」とすれば、Y軸方向の目標搬送位置は「L」となる。一方、X軸方向については、作業者hがボデー32への組付けが終了するまで続けられて一定でないので、実施例では、X軸方向の目標搬送位置は設定されない。また、搬送物Mのボデー32への組付け高さも一定でないため、Z軸方向の目標搬送位置についても設定していない。換言すれば、実施例に係る目標搬送位置は、X−Y−Z空間においてy=Lを満たす平面(図1のS参照)となる。
【0014】
実施例に係る搬送補助装置30は、搬送物Mを吊り下げ保持する懸吊手段38と、X−Y軸方向(水平方向)へ移動可能な走行手段36と、走行手段36を介して懸吊手段38をX軸方向へ移動させるX軸サーボモータ(X軸駆動手段)40と、走行手段36を介して懸吊手段38をY軸方向へ移動させるY軸サーボモータ(Y軸駆動手段)42と、該懸吊手段38に保持された搬送物MをZ軸方向へ移動させるZ軸サーボモータ(Z軸駆動手段)44とから基本的に構成されている。前記走行手段36は、X軸方向に平行に延在する一対の固定レール46,46と、両固定レール46,46にスライド自在に架設され、Y軸方向に延在するスライドレール48と、該スライドレール48をX軸方向へスライドさせるX方向スライダー50,50と、前記懸吊手段38をY軸方向へスライドさせるY方向スライダー52とから構成されている。図3に示すように、各固定レール46は、断面H型に形成されており、固定レール46の内側に下方へ向けて開放する案内路46aが画成されている。
【0015】
前記スライドレール48は、その延在長さが両固定レール46,46の離間距離より大きく設定されており、該スライドレール48の一端側(図1の上端側)は、一列で移送されるボデー32の上方まで延出している。スライドレール48は、Y軸方向への移動は不能とされており、その延在長さが搬送物MのY軸方向への搬送距離を規定している。なお、実施例では、スライドレール48の延在長さは、Y軸方向の目標搬送距離Lに略等しく設定されており、搬送物M(Y方向スライダー52)は、スライドレール48の略全長に亘って搬送されることとなる。図2に示すように、スライドレール48の断面形状は、固定レール46と同様にH型に形成されており、スライドレール48の内部には、下方に向けて開放する案内路48aが画成されている。
【0016】
スライドレール48における両固定レール46,46と交差する位置には、該スライドレール48を固定レール46,46に対しスライド自在に連結する前記X方向スライダー50,50が設けられている。X方向スライダー50の下部は、スライドレール48の上部に固定されている。一方、X方向スライダー50の上部には、図2に示すように、Y軸方向に軸支されたゴムローラ50a,50aがX軸方向に離間して2つ設けられている。このゴムローラ50a,50aは、図示しないスプリングの弾性力により常に下方へ付勢されており、該ゴムローラ50a,50aは、前記固定レール46の案内路46a内において、固定レール46の下面46bに圧着した状態で回転自在に配設されている。また、各X方向スライダー50には、前記ゴムローラ50aを正逆方向に回転させてスライドレール48を移動させるX軸サーボモータ40が設けられている。すなわち、X軸サーボモータ40が駆動することで固定レール46の案内路46a内をゴムローラ50a,50aが転動し、スライドレール48をX軸方向へスライドさせるよう構成されている。図4に示すように、X軸サーボモータ40(図4には、1つのみ図示)には、該モータの回転量に基づくパルス(X軸パルス)を出力するエンコーダ54が設けられている。なお、2つのX軸サーボモータ40,40は、スライドレール48が平行移動するよう同期的に駆動されるようになっている。
【0017】
前記Y方向スライダー52は、前記懸吊手段38の上部に固定されており、図3に示すように、Y方向スライダー52の上部には、X軸方向に軸支されたゴムローラ52a,52aがY軸方向に離間して2つ設けられている。このゴムローラ52a,52aは、図示しないスプリングの弾性力により常に下方へ付勢されており、該ゴムローラ52a,52aは、前記スライドレール48の案内路48a内において、スライドレール48の下面48bに圧着した状態で回転自在に配設されている。また、Y方向スライダー52には、前記ゴムローラ52a,52aを正逆方向に回転させるY軸サーボモータ42が設けられている。すなわち、Y軸サーボモータ42が駆動してスライドレール48の案内路48a内をゴムローラ52a,52aが転動することで、Y方向スライダー52が懸吊手段38と共にスライドレール48に沿ってY軸方向に移動するよう構成されている。このY軸サーボモータ42には、X軸サーボモータ40と同様に、エンコーダ55が設けられており(図4参照)、該エンコーダ55は、Y軸サーボモータ42の回転量に基づくパルス(Y軸パルス)を出力するようになっている。
【0018】
前記懸吊手段38は、搬送物Mを引っ掛けて保持するフック部34を備えている。また懸吊手段38は、筐体状の本体部58の内部に正逆回転自在に配設されたドラム状の巻取り装置60を備えており、該巻取り装置60およびフック部34はワイヤ56を介して連結されている。そして、前記巻取り装置60が回転してワイヤ56を巻取りまたは引き出すことで、搬送物M(フック部34)をZ軸方向に移動(昇降)させるようになっている。図2に示すように、前記懸吊手段38の本体部58の側部には、回転軸を巻取り装置60に連結させたZ軸サーボモータ44が設けられ、Z軸サーボモータ44が駆動することで、巻取り装置60を正逆方向に回転させるよう構成されている。Z軸サーボモータ44には、X軸サーボモータ40およびY軸サーボモータ42と同様に、Z軸サーボモータ44の回転量に基づくパルス(Z軸パルス)を出力するエンコーダ57が設けられている(図4参照)。
【0019】
前記懸吊手段38の本体部58の下面には、前記ワイヤ56の変位に基づいて作業者hが搬送物Mに付与した力の入力および力の方向(以下、搬送方向という)に基づく操作情報を検知する力覚センサ(操作情報検知手段)62が設けられている。図4に示すように、この力覚センサ62は、X軸方向に関するX軸センサ部64、Y軸方向に関するY軸センサ部66およびZ軸方向に関するZ軸センサ部68から構成され、作業者hからの操作情報を各センサ部64,66,68がX,Y,Z軸成分に分解し、夫々、X軸操作情報(X軸成分)、Y軸操作情報(Y軸成分)およびZ軸操作情報(Z軸成分)として検知するようになっている。また、前記懸吊手段38の本体部58の内部には、前記フック部34に保持された搬送物Mの荷重を検知する荷重センサ(荷重検知手段)70が設けられている。なお、この荷重センサ70としては、例えば、歪みゲージ等の公知の重量センサが用いられる。
【0020】
図4は、実施例に係る搬送補助装置30の制御系を示すブロック図であって、搬送補助装置30は、前記力覚センサ62が検知した操作情報に基づいて制御信号を出力し各サーボモータ40,42,44を制御可能な制御手段72と、該制御手段72からの制御信号を受けてX軸サーボモータ40、Y軸サーボモータ42およびZ軸サーボモータ44の夫々に駆動電力を供給するサーボドライバ74とを備えている。前記サーボドライバ74は、X軸サーボモータ40、Y軸サーボモータ42およびZ軸サーボモータ44に対応的に駆動電力を供給するX軸ドライバ76、Y軸ドライバ78およびZ軸ドライバ80から構成されている。X軸ドライバ76は、X軸駆動電力をX軸サーボモータ40に供給して、該モータ40を駆動させるようになっている。同様に、Y軸ドライバ78は、Y軸サーボモータ42にY軸駆動電力を供給し、また、Z軸ドライバ80は、Z軸サーボモータ44にZ軸駆動電力を供給し、両サーボモータ42,44を夫々独立に駆動させるよう構成されている。なお、2つのX軸サーボモータ40,40を同期して駆動するべく、X軸ドライバ76から両X軸サーボモータ40,40に対し、同一のX軸駆動電力が同じタイミングで供給されるようになっている。
【0021】
前記制御手段72は、前記X軸センサ部64,Y軸センサ部66およびZ軸センサ部68に電気的に接続されており、各センサ部64,66,68から前記X軸,Y軸およびZ軸操作情報が送出されるようになっている。そして、制御手段72は、各センサ部64,66,68から送出された操作情報に基づいて、X軸方向に関するX軸制御信号、Y軸方向に関するY軸制御信号およびZ軸方向に関するZ軸制御信号を算出し、これら制御信号を対応する前記X軸,Y軸およびZ軸ドライバ76,78,80に送出するよう構成される。すなわち、制御手段72は、各センサ部64,66,68が検知した操作情報に基づいて搬送物M(フック部34)の搬送方向、搬送速度等に対応した制御信号をX軸,Y軸およびZ軸方向毎に算出し、算出されたX軸、Y軸およびZ軸制御信号に基づいて、各ドライバ76,78,80が対応のサーボモータ40,42,44を駆動させる構成となっている。具体的には、制御手段72は、IC回路が実装されたプリント基板(図示せず)を備え、該IC回路が各センサ部64,66,68で検知された操作情報から各制御信号を算出するようになっている。
【0022】
制御手段72には、X軸、Y軸およびZ軸サーボモータ40,42,44の各エンコーダ54,55,57が接続されており、制御手段72は、各エンコーダ54,55,57から送出されるX軸パルス,Y軸パルスおよびZ軸パルスを受信するようになっている。そして、制御手段72は、搬送物M(フック部34)の現在位置や搬送速度等をパルスから算出し、制御手段72へ入力された操作情報と比較演算することで、制御信号を補正するフィードバック制御を行なうよう構成されている。また、制御手段72は、前記荷重センサ70に電気的に接続されており、該荷重センサ70で検知された搬送物Mの荷重情報を制御手段72が受信するよう構成されている。そして、制御手段72は、荷重センサ70から送出された荷重情報に基づいて、前記Z軸ドライバ80にZ軸制御信号を送出し、懸吊手段38がフック部34を懸吊状態で保持するようZ軸サーボモータ44を駆動させるようになっている。従って、搬送物Mは、搬送補助装置30によって常に所定高さに保持される。すなわち、Z軸サーボモータ44は、搬送物Mを所定高さに保持するバランサとしての機能と、作業者の操作情報に基づいて搬送物Mを昇降させる機能とを有している。
【0023】
図4に示すように、制御手段72は、目標搬送位置(実施例では、Y軸方向のみ)を記憶する記憶部82と、該記憶部82に記憶された目標搬送位置および搬送物Mの現在位置を比較演算する演算部84とを備えている。そして、制御手段72は、搬送物MがY軸方向についての目標搬送位置に停止するようY軸サーボモータ42を制御するよう構成されている。すなわち、制御手段72は、搬送物Mの現在位置と目標搬送位置とを監視して、搬送物MがY軸方向に「L」だけ搬送したらY軸サーボモータ42を停止させて、搬送物Mを目標搬送位置に正確に位置決めするようになっている。この演算部84は、具体的には、プリント基板に実装されたIC回路で構成される。
【0024】
前記制御手段72は、搬送物Mが目標搬送位置に到達した後には、前記Z軸センサ部68からのZ軸操作情報をキャンセルするよう設定されている。すなわち、搬送物Mがボデー32に搭載されて搬送物Mの荷重が軽くなった場合に、前記Z軸センサ部68が作業者hによる上方への力として検知して、搬送物Mが上昇してしまうのを防止するようになっている。なお、搬送物Mが目標搬送位置に到達した後もX軸センサ部64のX軸操作情報は有効であり、搬送物Mをボデー32と共にX軸方向へ搬送するのは許容される。
【0025】
前記制御手段72は、搬送物Mが漸次的に加速または減速するようX軸、Y軸およびZ軸サーボモータ40,42,44を制御するよう構成されている。すなわち、制御手段72は、搬送物Mの加減速時の速度カーブが漸次的に増加または減少する正弦曲線状になるよう各サーボモータ40,42,44を制御するようになっている。従って、作業者hが搬送物Mを加速または減速する際には、力覚センサ62が検知した操作情報を忠実に再現するのではなく、搬送物Mの速度カーブが予め設定された正弦曲線を描くように各サーボモータ40,42,44を制御して、搬送物Mの急加速または急減速を防止するよう構成されている。具体的には、制御手段72は、各センサ部64,66,68から入力される搬送速度に関する操作情報を所定の正弦曲線に近似するよう補正し、その制御信号を各ドライバ76,78,80に送出する。これにより、各サーボモータ40,42,44は、搬送物Mの速度カーブが正弦曲線状となるよう駆動することとなる。
【0026】
(実施例の作用)
次に、前述した実施例に係る搬送補助装置30の作用について、図1のA〜Eに示すように、作業者hが搬送開始位置から搬送物Mを搬送させて、該搬送物Mをボデー32に組付けるまでを例に説明する。なお、記憶部82には、予めY軸方向についてのみ目標搬送位置「L」が記憶されているものとする。先ず始めに、作業者は、搬送開始位置においてフック部34に搬送物Mを保持させる。すると、前記荷重センサ70がフック部34に保持された搬送物Mの荷重を検知し、その荷重情報を制御手段72に送出する。すると、制御手段72は、荷重情報に基づいてZ軸制御信号をZ軸ドライバ80に送出し、該Z軸ドライバ80がZ軸サーボモータ44にZ軸駆動電力を供給する。すると、前記Z軸サーボモータ44が駆動して前記懸吊手段38の巻取り装置60を回転させ、前記ワイヤ56を巻き上げる。これにより、フック部34が上昇して、搬送物Mは、懸吊状態で所定高さに保持される。
【0027】
次に、作業者hが搬送物Mをボデー32へ向けて押し出すと、搬送補助装置30による搬送が開始される。なお、作業者hが搬送物Mを押す方向は、図1に示すように、作業者hの斜め前方左でかつZ軸方向に上向きであったとする。すると、作業者hの力および搬送方向に応じて前記ワイヤ56が変位し、この変位から前記力覚センサ62が作業者hの操作情報を検知する。すなわち、X軸センサ部64、Y軸センサ部66およびZ軸センサ部68が、夫々、作業者hの操作情報をX軸,Y軸およびZ軸方向に分解したX軸操作情報、Y軸操作情報およびZ軸操作情報を検知する。これらの操作情報は制御手段72へ送出され、該制御手段72は、操作情報に対応した制御信号を算出する。ここで、搬送開始時は、作業者hによって搬送物Mが加速されるので、制御手段72が算出する制御信号は、搬送物Mの速度カーブが正弦曲線状となるよう補正される。次に、制御手段72は、X軸制御信号、Y軸制御信号およびZ軸制御信号を、夫々、X軸ドライバ76、Y軸ドライバ78およびZ軸ドライバ80に送出する。すると、各ドライバ76,78,80は、送出された制御信号に応じた駆動電力を対応するサーボモータ40,42,44に供給する。すなわち、X軸ドライバ76は、X軸駆動電力をX軸サーボモータ40へ供給し、Y軸ドライバ78は、Y軸駆動電力をY軸サーボモータ42へ供給し、Z軸ドライバ80は、Z軸駆動電力をZ軸サーボモータ44へ供給する。
【0028】
サーボドライバ74から駆動電力を受けたX軸,Y軸およびZ軸サーボモータ40,42,44は、夫々独立して駆動して、走行手段36および懸吊手段38を移動させる。すなわち、X軸駆動電力を受けた2つのX軸サーボモータ40,40が同期的に駆動し、各X方向スライダー50のゴムローラ50a,50aを回転させる。すると、ゴムローラ50a,50aが固定レール46の案内路46a内を転動し、2つのX方向スライダー50,50がX軸方向に同時に移動して、スライドレール48が図1の左方向に平行移動する。一方、Y軸サーボモータ42は、Y軸駆動電力により駆動されて、前記Y方向スライダー52のゴムローラ52a,52aを回転させる。すると、ゴムローラ52a,52aがスライドレール48の案内路48a内を転動することで、Y方向スライダー52がY軸方向(図1では、作業者の前方)へ移動し、懸吊手段38がY軸方向へ移動する。
【0029】
また、Z軸サーボモータ44は、Z軸駆動電力により駆動されて、前記懸吊手段38の巻取り装置60を回転させる。すると、前記ワイヤ56が巻き上げられ、フック部34(搬送物M)がZ軸方向(図2,図3の上方)へ移動する。こうして、スライドレール48のX軸方向への移動と、懸吊手段38のY軸方向への移動と、フック部34のZ軸方向への移動が合成されて、搬送物Mは、作業者hが望む搬送方向および搬送速度で搬送される。しかも、搬送補助装置30のX−Y−Z方向への補助により、作業者hは、搬送物Mの慣性を殆ど感じることなく搬送を開始することができる。更に、搬送補助装置30によって実現される搬送物Mの速度カーブは、漸次的に増加する正弦曲線状となるので、搬送物Mは緩やかに加速されて急発進する危険性はない。
【0030】
各サーボモータ40,42,44が駆動すると、該モータ40,42,44に設けられたエンコーダ54,55,57がモータの回転量に基づくパルスを出力し、前記制御手段72へ送出する。すなわち、X軸サーボモータ40のエンコーダ54は、X軸パルスを出力し、Y軸サーボモータ42のエンコーダ55は、Y軸パルスを出力し、Z軸サーボモータ44のエンコーダ57は、Z軸パルスを出力する。すると、制御手段72は、送出された各パルスから搬送物Mの現在位置や搬送速度、搬送方向等を算出し、前記操作情報との差分(ズレ)を比較演算する。すなわち、制御手段72は、フィードバック制御を行なって、サーボドライバ74へ送出する制御信号をリアルタイムで補正する。これにより、作業者hの意図に沿った搬送方向および搬送速度で搬送物Mを搬送することが可能となり、作業者hは搬送物Mを感覚的に操作して簡単に搬送することができる。なお、制御手段72の演算部84は、搬送物Mの現在位置と記憶部82に記憶された目標搬送位置とを比較演算し、制御手段72は、演算部84の演算結果から搬送物Mが目標搬送位置に到達しているか否かを監視している。
【0031】
こうして、搬送補助装置30による補助のもと搬送物Mがボデー32へ向けて搬送されていく。なお、例えば、搬送途中で作業者hが搬送物Mを減速した場合には、制御手段72は、前述と同様な手順で、搬送物Mの加速度カーブが正弦曲線を描くようX軸、Y軸およびZ軸サーボモータ40,42,44の駆動を制御する。搬送物Mがボデー32に近づくと、制御手段72は、演算部84の演算結果から搬送物Mが目標搬送位置に近いことを認識し、搬送物MがY軸方向について目標搬送位置に停止するよう制御を行なう。すなわち、制御手段72は、搬送物Mが搬送開始位置からY軸方向にLだけ離間した位置に位置決めされるようY軸サーボモータ42の駆動を制御する。具体的には、作業者hからの操作情報のうちY軸操作情報を補正して、搬送物Mが目標搬送位置で停止するようY軸制御信号を算出する。すると、Y軸ドライバ78は、このY軸制御信号に基づいてY軸駆動電力をY軸サーボモータ42に供給し、Y軸サーボモータ42は、搬送物MがY軸方向について目標搬送位置で停止するよう駆動する。このように、搬送物Mがボデー32に近付くと、Y軸方向への搬送がY軸サーボモータ42によって自動的になされ、搬送物Mは目標搬送位置で確実に位置決めされる(図1のD参照)。しかも、搬送物Mが停止する際に、搬送物MのY軸方向への加速度カーブは正弦曲線状に緩やかに減速するので、搬送物Mを目標搬送位置に確実に停止させることができ、高い位置決め精度を実現し得る。
【0032】
搬送物Mが目標搬送位置に到達すると、制御手段72は、Y軸サーボモータ42を停止させて、搬送物MのY軸方向への搬送は規制される。すなわち、搬送物Mは、ボデー32に到達した後はY軸方向(作業者hの前後)に搬送されることはなく、搬送物Mのボデー32への組付け作業が効率的となる。ここで、作業者hが搬送物Mをボデー32に搭載したとすると、搬送物Mの荷重が小さくなって、力覚センサ62(Z軸センサ部68)がZ軸方向への力を検知してしまう。そして、このZ軸操作情報に基づいてZ軸サーボモータ44が駆動すると、搬送物Mが上昇してボデー32や作業者hに接触する事故が起こる虞がある。そこで、制御手段72は、搬送物Mが目標搬送位置に到達した後は、Z軸センサ部68からのZ軸操作情報をキャンセルして、Z軸サーボモータ44が駆動しないようになっている。これにより、搬送物Mをボデー32に搭載しても搬送物Mが上昇することはなく、搬送物Mがボデー32に接触するのは防止される。また、作業者hがZ軸方向への力を誤って付与してしまった場合にも、搬送物Mが上昇することはなく、ボデー32に接触することはない。
【0033】
なお、制御手段72は、搬送物Mが目標搬送位置に到達してもX軸操作情報についてはキャンセルしないので、作業者hは、X軸方向に搬送物Mを搬送することが可能である。従って、図1のD→Eのように、ボデー32の移送速度に合わせて搬送物Mを搬送させながら、搬送物Mのボデー32への組付け作業を継続することができる。こうして、搬送物Mのボデー32への組付けが完了すると、作業者hは、フック部34を搬送開始位置まで引き戻す。そして、次の搬送物Mをフック部34で再び保持して、搬送および組付け作業が繰り返される。
【0034】
以上に説明したように、実施例に係る搬送補助装置30によれば、X軸、Y軸およびZ軸サーボモータ40,42,44によりX−Y−Z軸方向への補助をなし得るようにしたので、作業者hの負担を軽減し得る。また、作業者hによる操作情報を力覚センサ62(X軸、Y軸およびZ軸センサ部64,66,68)が検知して制御手段72が各サーボモータ40,42,44を駆動するので、作業者hは搬送物Mを感覚的に搬送することができ、操作性を向上することが可能となる。従って、作業者hは、搬送物Mを簡単に搬送することができ、誤操作により搬送物Mが周囲の機材等に接触するのを防止することができる。しかも、各サーボモータ40,42,44を制御することで、搬送物Mの搬送方向や搬送速度等を正確に制御し得るので、接触等の発生を更に確実に防止し得る。また、制御手段72は、演算部84の演算結果に基づいて、搬送物MがY軸方向に関しては目標搬送位置に停止するよう制御するので、搬送物Mの正確な位置決めを実現し得る。従って、搬送物Mがボデー32に接触するのをより確実に防止することが可能となる。また、従来のように、ストッパー等による機械的な位置決めを行なう必要がなく、装置の寿命が短くなることもない。
【0035】
更に、制御手段72は、搬送物Mが目標搬送位置に到達した後は、Z軸操作情報をキャンセルするので、搬送物Mが目標搬送位置に到達した後にZ軸方向への入力が誤ってされた場合でも、搬送物Mが移動してしまうのを防止し得る。従って、目標搬送位置において搬送物Mがボデー32に接触したり、作業者hが怪我をするのを抑制することが可能となる。しかも、制御手段72は、加減速時の速度カーブが正弦曲線状になるよう各サーボモータを制御するので、作業者hが操作を誤ったとしても、搬送物Mが突発的に加速したり減速したりするのを防止して搬送物Mを安全かつ確実に搬送し得る。また、搬送物Mは、正弦曲線状に緩やかに減速して停止するので、該搬送物Mの正確な位置決めをすることができる。
【0036】
なお、本発明に係る搬送補助装置としては、実施例で説明した構成に限定されず、以下のような変更が可能である。
(1) 実施例では、X軸駆動手段、Y軸駆動手段およびZ軸駆動手段として、夫々、X軸サーボモータ、Y軸サーボモータおよびZ軸サーボモータを採用した場合を例示したが、各駆動手段としては、必ずしもサーボモータに限定される訳ではなく、従来公知の他の電動モータを適宜採用することが可能である。
(2) 実施例では、作業者が搬送物を直接押して、ワイヤが変位することで力覚センサが力の入力や搬送方向に基づく操作情報を検知する構成とした。しかしながら、例えば、フック部等に操作ハンドルを設け、作業者が操作ハンドルを操作することで、搬送物を搬送する構成としてもよい。この場合、力覚センサは操作ハンドルに設けられ、作業者による操作ハンドルの操作に基づいて、力覚センサが力や搬送方向等の操作情報を検知する構成が採用される。
(3) 実施例では、Y軸方向についてのみ目標搬送位置を設定し、X軸方向やZ軸方向については目標搬送位置を設定しない場合を例示した。しかしながら、例えば、組付け対象であるボデーが停止しているような場合には、目標搬送位置は、X軸方向およびY軸方向の両方向について設定することができる。すなわち、目標搬送位置は、X−Y平面上の一点に設定され、この一点に向けて搬送物を正確に停止(位置決め)させることができる。更に、Z軸方向についても目標搬送位置を設定した場合には、X−Y−Z空間上の一点に搬送物を正確に停止させることも可能である。
(4) 実施例では、全ての搬送経路において、作業者の操作情報に基づき搬送物を搬送させる構成とした。しかしながら、例えば、搬送物の理想的な搬送コースを予め制御手段に記憶(プリセット)し、当該搬送コースに沿って搬送物Mを自動で搬送する構成としても良い。
(5) 実施例では、操作情報検知手段として、力覚センサを採用したが、例えば、作業者による力の入力や搬送方向を検知し得るのであれば、公知のセンサを適宜採用することが可能である。
(6) 実施例では、走行手段として、固定レールおよびスライドレールによる構成を採用したが、搬送物(フック部)をX−Y軸方向へ移動させ得るものであれば、例えば、長手方向に伸縮自在でかつ一端が軸支されて回動可能なアーム式の走行手段を採用することも可能である。
(7) 実施例では、懸吊手段として、巻取り装置によりワイヤを巻き取りまたは引き出す構成としたが、例えば、Z軸方向に延在するボールネジおよびナットにより、フック部を昇降させる構成としてもよい。
(8) 実施例では、X−Y−Z軸方向の全てについてサーボモータを設け、作業者の操作情報に基づいてX−Y−Z軸方向に搬送物を搬送させ得る構成とした。しかしながら、X−Y軸方向についてサーボモータを設け、Z軸方向については、従来のバランサやホイストを用いることも可能である。
(9) なお、制御手段の制御態様を、切換スイッチ等により切り換え得るようにしてもよい。例えば、操作情報検知手段のZ軸方向への入力(Z軸成分)のみを有効とし得るよう制御手段を切り換え可能に構成してもよい。このように制御手段を切り換えることで、X−Y軸方向の位置を固定した状態で、搬送物をZ軸方向にのみ移動させることが可能となる。
【0037】
また、本発明の具体的構成としては、以下のような限定が可能である。
〔付記1〕
請求項2記載の搬送補助装置に関して、前記操作情報検知手段(62)が検知した操作情報のZ軸成分に基づいて駆動され、前記懸吊手段(38)に保持された搬送物(M)をZ軸方向へ移動させるZ軸駆動手段(44)を備え、該Z軸駆動手段(44)を、エンコーダ(57)を備えたサーボモータで構成し、前記制御手段(72)は、前記操作情報検知手段(62)からの操作情報とZ軸駆動手段(44)のエンコーダ(57)が出力したパルスとを比較演算して、該操作情報に応じて搬送物(M)がZ軸方向へ移動するようZ軸駆動手段(44)を制御する。
付記1によれば、搬送物をZ軸方向へ移動させるZ軸駆動手段を設けたので、作業者は搬送物をZ軸方向についても感覚的に搬送することが可能となり、作業性をより向上し得る。
【0038】
〔付記2〕
付記1記載の搬送補助装置に関して、前記制御手段(72)は、搬送物(M)のX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の夫々についての目標搬送位置を記憶可能な記憶部(82)と、該記憶部(82)に記憶された目標搬送位置および前記エンコーダ(54,55,57)が出力したパルスから算出される前記搬送物(M)の現在位置を比較演算する演算部(84)とを備え、制御手段(72)は、該演算部(84)の演算結果に基づいて、搬送物(M)がX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の各目標搬送位置に停止するよう前記X軸駆動手段(40)、Y軸駆動手段(42)およびZ軸駆動手段(44)を制御する。
付記2によれば、制御手段は、演算部の演算結果に基づき搬送物がX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の各目標搬送位置に停止するようサーボモータを制御するので、搬送物の正確な位置決めを実現でき、搬送物が例えば組付けラインの機材や組付け対象等に接触するのを確実に防止することが可能となる。また、搬送補助装置の補助のもと正確な位置決めをなし得るので、作業者の負担も軽減される。
【0039】
〔付記3〕
付記2記載の搬送補助装置に関して、前記制御手段(72)は、前記搬送物(M)が前記目標搬送位置に到達した後は、前記操作情報検知手段のZ軸方向についての操作情報をキャンセルする。
付記3によれば、制御手段は、搬送物が目標搬送位置に到達した後に、Z軸方向についての操作情報をキャンセルするので、搬送物が目標搬送位置に到達した後に誤ってZ軸方向への入力がされた場合でも、搬送物が移動してしまうのを防止し得る。従って、搬送物が組付け対象等に接触したり、作業者が怪我をするのを抑制することが可能となる。また、例えば、搬送物を目標搬送位置の組付け対象に搭載して、搬送物の荷重が軽減されると、これを操作情報検知手段がZ軸方向への操作情報が入力されたと認識して、搬送物を上昇させてしまう虞がある。そこで、搬送物が目標搬送位置に到達した場合には、Z軸方向についての操作情報をキャンセルすることで、搬送物が組付け対象に接触するのを防止し得る。
【0040】
〔付記4〕
請求項1、2または付記1〜3の何れかに記載の搬送補助装置に関して、前記制御手段(72)は、搬送物(M)が漸次的に加速または減速するよう前記X軸駆動手段(40)、Y軸駆動手段(42)およびZ軸駆動手段(44)を制御する。
付記4によれば、制御手段は、搬送物が漸次的に加速または減速するよう各サーボモータを制御するので、作業者が操作を誤ったとしても、搬送物が突発的に加速したり減速したりするのを防止して搬送物を安全かつ確実に搬送し得る。また、搬送物は、徐々に減速して停止するので、搬送物の位置決め精度をより向上することができる。
【符号の説明】
【0041】
38 懸吊手段,40 X軸サーボモータ(X軸駆動手段)
42 Y軸サーボモータ(Y軸駆動手段),54 エンコーダ(X軸サーボモータ)
55 エンコーダ(Y軸サーボモータ),62 力覚センサ(操作情報検知手段)
72 制御手段,M 搬送物,h 作業者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者(h)が搬送物(M)を搬送するのを補助する搬送補助装置であって、
搬送物(M)を吊り下げ保持する懸吊手段(38)と、
作業者(h)による力の入力および力の方向に基づく操作情報を検知する操作情報検知手段(62)と、
前記操作情報検知手段(62)が検知した操作情報のX軸成分に基づいて駆動され、前記懸吊手段(38)をX軸方向へ移動させるX軸駆動手段(40)と、
前記操作情報検知手段(62)が検知した操作情報のY軸成分に基づいて駆動され、前記懸吊手段(38)をY軸方向へ移動させるY軸駆動手段(42)とを備えている
ことを特徴とする搬送補助装置。
【請求項2】
前記X軸駆動手段(40)およびY軸駆動手段(42)を、夫々、エンコーダ(54,55)を備えたサーボモータで構成すると共に、該X軸駆動手段(40)およびY軸駆動手段(42)を制御可能な制御手段(72)を設け、該制御手段(72)は、前記操作情報検知手段(62)からの操作情報と各エンコーダ(54,55)が出力したパルスとを比較演算して、該操作情報に応じて前記懸吊手段(38)がX−Y軸方向へ移動するようX軸駆動手段(40)およびY軸駆動手段(42)を制御する請求項1記載の搬送補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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