説明

搬送車の横移動機構

【課題】比較的簡易な構成により横移動機構の飛出しを的確に検知する。
【解決手段】搬送車100の横移動機構30は、第1ベース32と、第2ベース33と、第1光透過型センサ45と、第1遮光部43と、判定部とを備える。第1遮光部は、第2ベースが第1ベースの下方に収納される収納状態にある場合、第1光透過型センサにおける第1発光部からの第1光を遮光しない位置にあり、第2ベースが第1ベースに対し第1方向に移動した第1横移動状態にある場合、第1光を遮光する位置にあり、判定部は、第1光透過型センサにおける第1受光部が第1光を受光する場合に出力される第1信号が入力される場合、第2ベースが第1横移動状態より他の状態にあると判定し、第1信号が入力されない場合、第2ベースが第1横移動状態にあると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体素子製造用の各種基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)等の被搬送物を搬送するビークル等の搬送車において、把持機構を走行方向に直交する横方向に移動させる横移動機構(即ち、横移載方式の移載装置)の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の機構として、把持機構或いは移載装置を走行方向の左右に移動させるために、駆動手段を備えたベース部と、駆動手段により左右両側に進出するミドル部と、把持機構或いは移載装置を支持しミドル部の左右動に従動して左右動するフロント部とを備えたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、荷を移載するための可動側フォークが、固定側フォークの表面上に沿ってスライドするものが提案されている(例えば特許文献2参照)。例えば特許文献2によれば、可動側フォークの下面にスライド方向に沿って設けられた一本のドグを、固定側フォークの上面に一列に配列された4つのセンサにより検出することで、可動側フォークの本体部からの飛び出しを検出可能であるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−127200号公報
【特許文献2】特開平9−309606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献2のシステムでは、可動側フォークの本体部からの飛び出しを検出するべく、一本のドグを検出する4つのセンサを備えるが、これは搬送車(特に、横移動機構)の製造コストを高める一因となり兼ねない。
【0006】
ここで、本願発明者による研究或いは実験の成果又は経験によれば、ドグを検出するセンサについて、仮に光学式の反射型センサを用いる場合、設置範囲の制約を受けるドグの大きさによっては、検出距離や検出範囲の調整が困難であったり、外乱光等による誤検出が起こり兼ねないといった技術的問題点がある。
【0007】
また、上述した4つのセンサに代えて、仮に光学式の透過型センサを1つ用い、一本のドグに代えて、左右端検出用の2つのドグを設ける場合、可動側フォークがスライドする距離によっては、各ドグの一端が可動側フォークの本体幅を超える長さになり、横移動機構本体が大型化するといった技術的問題点がある。
【0008】
更には、例えば可動側フォークの駆動用モータ或いはアクチュエータに取り付けられたエンコーダの出力に基づいて可動側フォークをスライドする場合、エンコーダにトラブルが発生すると、固定側フォークと可動側フォークとを接続するベルトが切れるといった事態が発生し兼ねない。仮にこうした事態が発生した場合、可動側フォークの飛出しを的確に検出できないといった技術的問題点がある。
【0009】
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、比較的簡易な構成により、搬送車本体からの、横移動機構又はその一部の飛出しを的確に検知し得る搬送車の横移動機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明に係る搬送車の横移動機構は、天井又は該天井側に敷設された軌道に沿って走行しつつ被搬送物を搬送する搬送車において、前記被搬送物を把持可能な把持機構を、前記搬送車の本体に対し前記軌道の方向に交差する横方向に移動可能である搬送車の横移動機構であって、第1ベースと、前記第1ベースの下方に配置される第2ベースであって、該第2ベースの下方に前記把持機構が連結されており、前記第1ベースに対しスライドして前記横方向における第1方向に相対移動可能な前記第2ベースと、前記第1ベースの下面又は前記第2ベースの上面に配置され、第1発光部及び第1受光部を有しており、前記第1発光部からの第1光を前記第1受光部が受光する場合、第1信号を出力する第1光透過型センサと、前記第1ベースの下面又は前記第2ベースの上面における、前記第1光透過型センサに対向可能である位置に、前記横方向に沿って延びる長手状に設けられており、前記第1発光部から前記第1受光部への前記第1光を遮光可能な第1遮光部と、前記出力された第1信号が入力される判定部とを備え、前記第1遮光部は、前記第2ベースが前記第1ベースの下方に収納される収納状態にある場合、前記第1光を遮光しない位置にあり、前記第2ベースが前記第1ベースに対し前記第1方向に移動した第1横移動状態にある場合、前記第1光を遮光する位置にあるように配置され、前記判定部は、前記第1信号が入力される場合、前記第2ベースが前記第1横移動状態より他の、前記収納状態を含む状態にあると判定し、前記第1信号が入力されない場合、前記第2ベースが前記第1横移動状態にあると判定する。
【0011】
本発明に係る搬送車は、例えばFOUP等の被搬送物を搬送するOHT(Overhead Hoist Transfer)等である。この搬送車の横移動機構は、軌道より下方、且つ軌道の方向に例えば直角に交差する横方向に設置されるロードポート又はバッファ等の載置台との間で横移載方式にてFOUPを移載する(以後、適宜「横移載する」と記載する)際に駆動される機構である。ここに「横移載方式」とは、軌道の横方向に、FOUP又はこれを把持する把持機構を移動させる工程を経て移載が行われることを示す。このような横移動機構は、少なくとも第1及び第2ベースを備えており、第1ベースに対し第2ベースが横方向にスライドする、単段又は複段のスライド機構である。
【0012】
ここで、一の軌道に沿って走行する搬送車が、一の軌道に隣合う他の軌道に沿って走行する他の搬送車と擦れ違う場合、又は一の軌道に沿って設置されたOHB(Over Head Buffer)等の吊り部材の傍らを通過する場合、他の搬送車又は吊り部材との干渉を避けるべく、横移動機構における横方向への飛出しを的確に検知する必要がある。
【0013】
そこで、本発明に係る第1ベースについて、例えば下面に、例えばドグ等と称される第1遮光部が、横方向に沿って配置されている。この場合、第1遮光部は、第2ベースが第1ベースに対しスライドして横方向における第1方向(例えば右方向)に移動する場合、後述の第1光透過型センサに連続して対向するように横方向に沿って延びる長手状の部材である。この第1遮光部の一端は、第1ベースにおける第1方向(例えば右方向)の端部を検知可能にその端部に位置していてもよい。
【0014】
本発明に係る第2ベースについて、例えば上面に、第1光透過型センサが、上述の第1遮光部に対応するように配置されている。この場合、第1光透過型センサは、第1光を発光する第1発光部と、この第1発光部から発光された第1光を受光する第1受光部とから構成されている。第1光透過型センサにおける横方向の断面は、例えば凹型となる。第1光透過型センサについて、第2ベースが第1ベースに対し第1方向(例えば右方向)に移動する過程及び完全に飛出した状態、即ち、第1横移動状態(例えば第1方向が右方向の場合、右飛出し状態)にある場合、第1遮光部が第1発光部と第1受光部との間に入り込んで第1発光部から第1受光部への第1光が遮断される。この時、第1光透過型センサは例えば「ON」信号等の第1信号を出力できない。言い換えれば、第1光透過型センサは、第2ベースが第1ベースに対し第1方向(例えば右方向)に移動することがなければ、第1遮光部により第1光が遮断されることがなく、第1信号を出力できる。
【0015】
本発明に係る判定部は、例えば搬送車に固有のコントローラ等である。判定部は、第1光透過型センサから出力された第1信号が入力された場合、第2ベースが第1横移動状態より他の状態にあると判定し、第1信号が入力されない場合、第1横移動状態(例えば右飛出し状態)にあると判定する。ここに「第1横移動状態より他の状態」とは、収納状態を含んでおり、その他、例えば第1光透過型センサが故障した状態等が想定される。「収納状態」とは、搬送車の本体から少なくとも第2ベースが食み出さない状態であって、第1ベースの例えば真下に第2ベースが収納される状態を示す。
【0016】
本発明によれば、第1遮光部と第1光透過型センサとの位置関係を表す第1信号の入力に応じて、第2ベースの第1方向(右又は左方向)への飛出しを検知する。これにより、一対の遮光部及び光透過型センサを、横方向に沿って配置する比較的簡易な構成にて、横移動機構について、横方向における少なくとも片側(右又は左側)の飛出しを的確に検知することが可能である。
【0017】
本発明に係る搬送車の横移動機構飛出し検知システムの一の態様では、前記第1ベースの下面又は前記第2ベースの上面に配置され、第2発光部及び第2受光部を有しており、前記第2発光部からの第2光を前記第2受光部が受光する場合、第2信号を出力する第2光透過型センサと、前記第1ベースの下面又は前記第2ベースの上面における、前記第2光透過型センサに対向可能である位置に、前記横方向に沿って延びる長手状に設けられており、前記第2発光部から前記第2受光部への前記第2光を遮光可能な第2遮光部とを更に備え、前記第2ベースは、前記第1方向に加えて、前記第1ベースに対しスライドして前記横方向における前記第1方向と逆の第2方向に相対移動可能であり、前記判定部には、前記第1信号に加えて、前記出力された第2信号が入力され、前記第2遮光部は、前記第2ベースが前記収納状態又は前記第1横移動状態にある場合、前記第2光を遮光しない位置にあり、前記第2ベースが前記第1ベースに対し前記第2方向に移動した第2横移動状態にある場合、第2光を遮光する位置にあるように配置され、前記判定部は、前記第1信号及び前記第2信号が共に入力される場合、前記第2ベースが前記収納状態にあると判定し、前記第1信号のみが入力される場合、前記第2ベースが前記第2横移動状態にあると判定し、前記第2信号のみが入力される場合、前記第2ベースが前記第1横移動状態にあると判定し、前記第1信号及び第2信号のどちらも入力されない場合、前記第1光透過型センサ及び前記第2光透過型センサのうちの少なくとも一方に異常があるセンサ異常状態にあると判定する。
【0018】
第1ベースについて、第1遮光部と同様にして、例えば下面に、第2遮光部が、横方向に沿って配置されている。この場合、第2遮光部は、第2ベースが第1ベース対しスライドして横方向における第2方向(例えば第1方向が右方向である場合、左方向)に移動する場合、後述の第2光透過型センサに連続して対向するように横方向に沿って延びる長手状の部材である。この第2遮光部の一端は、第1ベースにおける第2方向(例えば左方向)の端部を検知可能にその端部に位置していてもよい。
【0019】
第2ベースについて、例えば上面に、第1光透過型センサと同様にして、第2光透過型センサが、上述の第2遮光部に対応するように配置されている。この場合、第2光透過型センサは、第2光を発光する第2発光部と、この第2発光部から発光された第2光を受光する第2受光部とから構成されている。第2光透過型センサにおける横方向の断面は、第1遮光部と同様にして、例えば凹型となる。第2光透過型センサについて、第2ベースが第1ベースに対し第2方向(例えば左方向)に移動する過程及び完全に飛出した状態、即ち、第2横移動状態(例えば第2方向が左方向の場合、左飛出し状態)にある場合、第2遮光部が第2発光部と第2受光部との間に入り込んで第2発光部から第2受光部への第2光が遮断される。この時、第2光透過型センサは例えば「ON」信号等の第2信号を出力できない。言い換えれば、第2光透過型センサは、第2ベースが第1ベースに対し第2方向(例えば左方向)に移動することがなければ、第2遮光部により第2光が遮断されることがなく、第2信号を出力できる。
【0020】
この態様における判定部は、第1及び第2光透過型センサから出力された第1及び第2信号が共に入力された場合、収納状態にあると判定し、第1信号のみが入力された場合、第2横移動状態(例えば左飛出し状態)にあると判定し、第2信号のみが入力される場合、第1横移動状態(例えば右飛出し状態)にあると判定し、第1及び第2センサのどちらも入力されない場合、センサ異常状態にあると判定する。ここに「センサ異常状態」とは、第1及び第2光透過型センサ自体の故障、又は第1及び第2光透過型センサと判定部との接続に異常があり、第1及び第2光透過型センサからの第1及び第2信号の入力が不可能になった状態を示す。
【0021】
この態様によれば、第1及び第2光透過型センサから判定部へ第1及び第2信号が夫々入力される収納状態から、第2ベースが第1方向(例えば右方向)に移動した場合、判定部へ第2信号のみが入力される。すると、判定部により、第2ベースが第1横移動状態(例えば第1方向が右方向の場合、右飛出し状態)にあると判定される。他方、収納状態から、第2ベースが第2方向(例えば左方向)に移動した場合、第1信号のみが入力される。すると、判定部により、第2ベースが第2横移動状態(例えば第2方向が左方向の場合、左飛出し状態)にあると判定される。更には、例えば第1及び第2光透過型センサが共に故障した場合、第1及び第2信号のどちらも入力されない。すると、判定部により、第2ベースがセンサ異常状態にあると判定される。
【0022】
このように、第1遮光部と第1光透過型センサとの位置関係を表す第1信号、及び第2遮光部と第2光透過型センサとの位置関係を表す第2信号の入力に応じて、第2ベースの第1又は第2方向(右又は左方向)への飛出しを検知する。これにより、一対の遮光部及び光透過型センサを二組、横方向に沿って配置する比較的簡易な構成にて、横移動機構について、横方向における右左両側への飛出しを的確に検知することが可能である。
【0023】
本発明に係る搬送車の横移動機構の他の態様では、前記第1ベースの上方に配置されており、前記本体に固定された固定ベースを更に備え、前記第1ベースは、前記固定ベースに対しスライドして前記横方向に相対移動可能であり、前記第2ベースは、前記第1ベースに従動して前記第1ベースがスライドする方向と同一方向に移動し、前記固定ベース、前記第1ベース及び前記第2ベースは、前記第2ベースが前記収納状態にある場合、上下方向で重なり前記本体に収納され、前記第2ベースが前記第1横移動状態又は前記第2横移動状態にある場合、前記第1ベースの移動距離が前記第2ベースの移動距離より短くなるように構成されている。
【0024】
この態様によれば、横移動機構は、第1及び第2ベース、並びに固定ベースの3つのベースを備える、二段スライド機構である。スライドの段階として、固定ベースに対し、先ず、第一段階として第1ベースがスライドする。すると、このスライドに従動して、第二段階として第2ベースが第1ベースのスライド方向と同一方向にスライドする。これにより、横移載を行う移載位置まで把持機構を二段階で移動することが可能である。第1及び第2ベースの移動距離について、例えば第1ベースが「1」移動する場合、第2ベースが「2」移動する。
【0025】
第1横移動状態、第2横移動状態、又はセンサ異常状態にあると判定する判定部を備える態様では、当該搬送車は、走行が開始される際に、前記判定部により前記第2ベースが前記第1横移動状態、前記第2横移動状態、又は前記センサ異常状態にあると判定される場合、当該搬送車の走行を禁止する走行禁止部を備えてもよい。
【0026】
このように構成すれば、搬送車について、横移載を行う場合等の停止の状態から、走行を開始する前或いは直前に、判定部により第2ベースの状態が判定される。具体的には、第1及び第2信号のどちらか一方が入力される、又は第1及び第2信号のどちらも入力されず、第2ベースが第1横移動状態(例えば右飛出し状態)、第2横移動状態(例えば左飛出し状態)、又はセンサ異常状態にあると判定された場合、搬送車に固有のコントローラ等の走行禁止部により搬送車の走行が禁止される。これにより、搬送車は、第1横移動状態、第2横移動状態、又はセンサ異常状態で走行することがなく、他の軌道を走行する他の搬送車等との接触による破損を回避することが可能である。
【0027】
第1横移動状態、第2横移動状態、又はセンサ異常状態にあると判定する判定部を備える態様では、当該搬送車は、走行中に、前記第2ベースが前記第1横移動状態、前記第2横移動状態、又は前記センサ異常状態にあると判定された場合、走行速度を所定時間極低速に設定すると共に、前記所定時間の経過後に前記第2ベースが前記第1横移動状態、前記第2横移動状態、又は前記センサ異常状態にあると判定される場合、当該搬送車の走行を停止させる走行停止部を更に備えてもよい。
【0028】
このように構成すれば、搬送車について、走行中、常時、判定部により第2ベースの状態が判定される。具体的には、第1及び第2信号のどちらか一方が入力される、又は第1及び第2信号のどちらも入力されず、第2ベースが第1横移動状態(例えば右飛出し状態)、第2横移動状態(例えば左飛出し状態)、又はセンサ異常状態にあると判定された場合、搬送車に固有のコントローラ等の走行停止部により、走行速度が所定時間極低速に設定される。ここに走行速度の設定に係る「所定時間」とは、例えば数秒であって、第2ベースを収納状態にするための制御を実行するための期間を示す。また、走行速度に係る「極低速」とは、例えば毎秒0.05メートル(即ち、0.05m/sec)であって、殆ど停止の状態となるように徐行を行う程に極めて低い速度を示す。所定時間極低速にて走行した後も、第2ベースが第1横移動状態、第2横移動状態、又はセンサ異常状態にあると判定された場合、走行停止部により搬送車の走行が停止される。これにより、走行中であっても、他の搬送車等との接触による破損を防止することが可能である。
【0029】
第1及び第2ベース、並びに固定ベースの3つのベースを備える態様では、前記横移動機構は、前記第1ベースに駆動ベルトを介して連結される前記固定ベースと、前記第1ベースがスライドするように前記駆動ベルトを回動可能な回動部と、前記第2方向の端部に回転自在に取り付けられる第1定滑車、及び前記第1方向の端部に回転自在に取り付けられる第2定滑車を有する前記第1ベースと、一端が前記固定ベースの前記第1方向の端部に固定され、他端が前記第2ベースの前記第1方向の端部に固定されると共に、中間部が前記第1定滑車に摺動自在に掛けられる第1摺動ベルトと、一端が前記固定ベースの前記第2方向の端部に固定され、他端が前記第2ベースの前記第2方向の端部に固定されると共に、中間部が前記第2定滑車に摺動自在に掛けられる第2摺動ベルトと、前記回動部により前記第1ベースがスライドして前記第1方向に移動するのに伴って、前記第1摺動ベルト及び前記第2摺動ベルトが前記第1定滑車及び前記第2定滑車を夫々摺動することで前記第1方向に移動すると共に、前記回動部により前記第1ベースがスライドして前記第2方向に駆動するのに伴って、前記第1摺動ベルト及び前記第2摺動ベルトが前記第1定滑車及び前記第2定滑車を夫々摺動することで前記第2方向に移動する前記第2ベースとを備えてもよい。
【0030】
このように構成すれば、横移動機構は、第1及び第2ベース、並びに固定ベースの3つのベースにより、回動部による回動、並びに第1及び第2摺動ベルトの摺動により、横移載を行う移載位置まで把持機構を二段階で移動する。具体的には、先ず、例えばモータ又はアクチュエータ等の回動部により駆動ベルトが回動されると、第1ベースが固定ベースに対して第1方向(例えば右方向)に移動する。この移動に伴って、第1及び第2摺動ベルトが第1及び第2定滑車の回転面を夫々摺動すると、第2ベースが第1ベースに対して第1方向(例えば右方向)に移動する。これにより、第2ベースが第1横移動状態(例えば第1方向が右方向の場合、右飛出し状態)になる。他方、第2方向(例えば左方向)への移動についても同様の段階を経て、第2ベースが第2横移動状態(例えば第2方向が左方向の場合、左飛出し状態)になる。
【0031】
このような横移動機構において、第1ベースに対する第2ベースの飛出しを検知することで、固定ベースに対する第1ベースの飛出しを検知することが可能である。これは、固定ベース、第1及び第2ベースが第1及び第2摺動ベルトを介して接続されており、第1及び第2ベースの移動が連動するためである。これにより、固定ベースに対する第1ベースの飛出しを検知するための手段が不要であり、第1ベースに対する第2ベースの飛出しを検知することで、横移動のための駆動に係る部位の不具合(即ち、回動部の故障、又は駆動ベルト、第1摺動ベルト若しくは第2摺動ベルトの断線)を検知することも可能である。
【0032】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る収納状態にある横移動機構の構造を模式的に表す正面図及び側面図である。
【図2】図1の第1光透過型センサの構造を模式的に表す斜視図である。
【図3】図2の第1光透過型センサの発光が第1遮光部により遮断される、第1遮光部及び第1光透過型センサの位置関係を表す斜視図である。
【図4】図1の第1及び第2遮光部並びに第1及び第2光透過型センサの配置を表す上面図である。
【図5】図1の横移動機構の右飛出し状態を表す正面図である。
【図6】図1の横移動機構の左飛出し状態を表す正面図である。
【図7】図1のコントローラの構成を表すブロック図である。
【図8】実施形態に係る第1異常検知処理を説明するフローチャートである。
【図9】実施形態に係る第2異常検知処理を説明するフローチャートである。
【図10】本発明に係る第1及び第2遮光部並びに第1及び第2光透過型センサの配置の一例を表す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
<実施形態>
<実施形態の構成>
【0035】
始めに、図1を参照し、本発明の実施形態に係る横移動機構30の構成について説明する。ここに、図1について、左図が横移動機構30の構造を模式的に表す正面図であって、右図が横移動機構30の構造を模式的に表す側面図である。
【0036】
図1において、ビークル100は、本発明に係る「搬送車」の一例として、不図示のレール(即ち、本発明に係る「軌道」の一例)に沿って走行し、半導体素子製造用基板が収容されたFOUP3を搬送すると共に、軌道の直下又はその側方に設置される不図示の載置台との間でFOUP3を移載可能に構成されている。ビークル100は、主として、不図示の走行機構、グリッパ10、昇降機構20及び横移動機構30を備える本体部と、コントローラ101を備える制御部とから構成されている。FOUP3は、本発明に係る「被搬送物」の一例として、ビークル2が把持する際の取っ手となるフランジ4を備える。
【0037】
走行機構は、動力源たるモータと、一対のローラとを備えており、不図示のレールに沿って本体部を移動させるように構成されている。レールは、半導体素子製造工場等の建物内部の天井に敷設されている。
【0038】
グリッパ10は、本発明に係る「把持機構」の一例として、動力源たる不図示のモータと、一対のフィンガ11とを備える。グリッパ10は、モータの動力により一対のフィンガ11を駆動することで、FOUP3(言い換えれば、フランジ4)を把持する把持状態と、FOUP3(言い換えれば、フランジ4)を解放する解放状態との間で一対のフィンガ11を変位させるように構成されている。
【0039】
昇降機構20は、動力源たる不図示のモータと、巻取部21と、昇降ベルト22とを備える。昇降機構20は、モータの動力により巻取部21を巻取方向又は巻出方向に回転させることで、グリッパ10の上面に一端が固定される昇降ベルト22の巻き取り又は巻き出しを行い、グリッパ10を鉛直方向に移動させるように構成されている。
【0040】
横移動機構30は、主として、固定ベース31と、第1可動ベース32と、第2可動ベース33とを備えており、二段式の可動ベースたる第1及び第2可動ベース32,33を、レールの方向に直交する横方向(即ち、図1において矢印で示す方向)に夫々移動させるように構成されている。
【0041】
固定ベース31について、上面がビークル本体1に固定されており、下面に、動力源たる減速機付サーボモータ(即ち、本発明に係る「回動部」の一部)34と、駆動プーリ(即ち、本発明に係る「回動部」の一部)35と、アイドラ36と、右固定端37と、左固定端38とが取り付けられている。減速機付サーボモータ34には、不図示のエンコーダが取り付けられている。
【0042】
第1可動ベース(即ち、本発明に係る「第1ベース」の一例)32について、上面に、左固定端39と、右固定端40とが取り付けられており、横方向の両端部に、夫々の横方向が一致しないように、右プーリ(即ち、本発明に係る「第1定滑車」の一例)41と、左プーリ(本発明に係る「第2定滑車」の一例)42とが組み付けられている。また、下面に、相互が横方向に沿って並行するように、右飛出し検知ドグ(即ち、本発明に係る「第1遮光部」の一例)43と、左飛出し検知ドグ(即ち、本発明に係る「第2遮光部」の一例)44とが取り付けられている。
【0043】
第2可動ベース(即ち、本発明に係る「第2ベース」の一例)33について、上面に、第2可動ベース33が横方向における右方向に移動する場合に右飛出し検知ドグ43に対向する、右飛出し検知センサ(即ち、本発明に係る「第1光透過型センサ」の一例)45と、第2可動ベース33が横方向における左方向に移動する場合に左飛出し検知ドグ44に対向する、左飛出し検知センサ(即ち、本発明に係る「第2光透過型センサ」の一例)46とが取り付けられている。また、下面に、昇降機構20が固定されている。
【0044】
次に、図2及び図3を参照し、右左の飛出し検知センサ45,46の構成について説明する。ここに、図2は、右飛出し検知センサ45の構造を模式的に表す斜視図であって、図3は、右飛出し検知センサ45の発光が右飛出し検知ドグ43により遮断される状態を表す斜視図である。
【0045】
図2に示すように、右飛出し検知センサ45は、横方向の断面が凹型となるように形成されており、その凹み部分に、対向する一対の発光部(即ち、本発明に係る「第1発光部」の一例)451と受光部(即ち、本発明に係る「第1受光部」の一例)452とを備えている。発光部451は、レールの方向に光(即ち、本発明に係る「第1光」の一例)453を発し、受光部452は、発光部451が発する光453を受光可能である。この右飛出し検知センサ45と同様にして、左飛出し検知センサ46は、不図示の発光部と受光部とを備えており、発光部からの光を受光部にて受光可能に構成されている。
【0046】
図3に示すように、第2可動ベース33が右方向に移動した状態(即ち、右飛出し状態)では、右飛出し検知センサ45の凹み部分に、右飛出し検知ドグ43が入り込む。この場合、発光部451から受光部452に向かう光453が遮断される。右飛出し検知センサ45は、受光部452が光453を受光する場合、所定の信号を出力し、「ON」の状態となる。一方、右飛出し検知ドグ43の入り込みにより受光部452が光453を受光しない場合、所定の信号が出力されることはなく、「OFF」の状態となる。この右飛出し状態と同様にして、左飛出し状態では、左飛出し検知センサ46の凹み部分に、左飛出し検知ドグ44が入り込み、発光部から受光部に向かう光が遮断される。また、左飛出し検知センサ46は、受光部が光を受光する場合、所定の信号を出力し、「ON」の状態となる一方、左飛出し検知ドグ44の入り込みにより受光部が光を受光しない場合、所定の信号が出力されることはなく、「OFF」の状態となる。
<遮光部及び光透過型センサの配置>
【0047】
次に、図4を参照し、右左の飛出し検知ドグ43,44と、右左の飛出し検知センサ45,46との配置について説明する。ここに、図4は、横移動機構30における右左の飛出し検知ドグ43,44と右左の飛出し検知センサ45,46との配置を表す上面図である。
【0048】
図4において、右左の飛出し検知ドグ43,44は、FOUP3をレール方向における前後から挟むようにして横方向に並行に配置されている。右左の飛出し検知センサ45,46は、右左の飛出し検知ドグ43,44の夫々横方向に配置されている。
【0049】
第2可動ベース33が右方向に移動した場合、右飛出し検知センサ45における発光部451と受光部452との間に右飛出し検知ドグ43が入り込み、光453が遮断されることで、右飛出し検知センサ45が所定の信号を出力することはない。他方、光453が遮断されなければ、右飛出し検知センサ45が所定の信号を出力する。
【0050】
第2可動ベースが左方向に移動した場合、左飛出し検知センサ46における発光部と受光部との間に右飛出し検知ドグ44が入り込み、光が遮断されることで、左飛出し検知センサ46が所定の信号を出力することはない。他方、光が遮断されなければ、左飛出し検知センサ46が所定の信号を出力する。
【0051】
再び図1において、横移動機構30は、更に、固定ベース31と第1可動ベース32とを接続する駆動ベルト49、第1可動ベース32を介して固定ベール31と第2可動ベース33とを接続する第1及び第2摺動ベルト50,51を備える。
<第2ベースの状態>
【0052】
次に、図5及び図6を参照し、横移動機構30の状態について説明する。ここに、図5は、横移動機構30における右飛出し状態を表す正面図であり、図6は、横移動機構30における左飛出し状態を表す正面図である。
【0053】
駆動ベルト49について、一端が左固定端39に固定され、中間部が駆動プーリ35、アイドラ36に順番に掛けられ、他端が第1可動ベース32の右固定端40に固定されている。駆動ベルト49は、減速機付サーボモータ34の動力により駆動プーリ35が回転することで、駆動プーリ35及びアイドラ36の回転面上を摺動する。この摺動により、駆動プーリ35及び左固定端39間の駆動ベルト49の長さが長短することで、第1可動ベース32が横方向に移動する。
【0054】
第1摺動ベルト50について、一端が固定ベース31の右固定端37に固定され、中間部が右プーリ41に掛けられ、他端が第2可動ベース33の右固定端47に固定されている。第1摺動ベルト50は、第1可動ベース32の横方向への移動に伴い、右プーリ41の回転面上を摺動する。この摺動により、第1摺動ベルト50における、右固定端37から右プーリ41までの長さと、右プーリ41から右固定端47までの長さとの比が変わる。
【0055】
第2摺動ベルト51について、一端が固定ベース31の左固定端38に固定され、中間部が左プーリ42に掛けられ、他端が第2可動ベース33の左固定端48に固定されている。第2摺動ベルト51は、第1可動ベース32の横方向への移動に伴い、左プーリ42の回転面上を摺動する。この摺動により、第2摺動ベルト51における、左固定端38から左プーリ42までの長さと、左プーリ42から左固定端48までの長さとの比が変わる。
【0056】
横移動機構30は、収納状態、右飛出し状態、及び左飛出し状態の3つの状態の間で変位可能である。図1に示すように、横移動機構30は、走行時、又は横移載の前後に、固定ベース31、第1及び第2可動ベース32,33が上下方向で重なる状態、即ち、収納状態にある。収納状態では、右左の飛出し検知センサ45,46は夫々所定の信号を出力する。
【0057】
図5において、横移動機構30は、右方向にある載置台との間で横移載を行う場合、先ず、減速機付サーボモータ34の動力により駆動プーリ35が右回転する。すると、駆動ベルト49が右回動し、左固定端39(言い換えれば、第1可動ベース32)が右方向に移動する。これに伴って、第1及び第2摺動ベルト50,51が摺動すると、第2可動ベース33が右方向に移動し、横移動機構30が右飛出し状態になる。これにより、第2可動ベース33の下方に連結されるグリッパ10が所定の移載位置に達し、右方での横移載が可能になる。収納状態から右飛出し状態への移動距離について、第1可動ベース32の移動距離が「1」である場合、第2可動ベース33の移動距離が「2」である。右飛出し状態では、右飛出し検知センサ45が所定の信号を出力することはなく、左飛出し検知センサ46は所定の信号を出力する。
【0058】
図6において、横移動機構30は、左方向にある載置台との間で横移載の動作を行う場合、先ず、減速機付サーボモータ34の動力により駆動プーリ35が左回転する。すると、駆動ベルト49が左回動し、左固定端39(言い換えれば、第1可動ベース32)が左方向に移動する。これに伴って、第1及び第2摺動ベルト50,51が摺動すると、第2可動ベース33が左方向に移動し、横移動機構30が左飛出し状態になる。これにより、第2可動ベース33の下方に連結されるグリッパ10が所定の移載位置に達し、左方での横移載が可能となる。収納状態から左飛出し状態への移動距離について、第1可動ベース32の移動距離が「1」である場合、第2可動ベース33の移動距離が「2」である。左飛出し状態では、右飛出し検知センサ45は所定の信号を出力するが、左飛出し検知センサ46が所定の信号を出力することはない。
【0059】
横移動機構30は、上述した3つの状態(即ち、収納状態、右飛出し状態、及び左飛出し状態)に加え、右左の検知センサ45,46のどちらも信号を出力することがない状態、即ち、センサ異常状態になる場合がある。
【0060】
尚、センサ(即ち、右飛出し検知センサ45及び左飛出し検知センサ46の各々)について、「OFF」の状態とは、センサが正常な作動状態にある場合、ドグ(即ち、右飛出し検知ドグ43及び左飛出し検知ドグ44の各々)により光が遮断される状態を示す。一方、センサが停止の状態を含む異常な作動状態、即ち、センサ異常状態にある場合、ドグにより光が遮断されない状態にも関わらず、発光部が発光しない或いは/且つ受光部が受光しないために所定の信号が出力されずに「OFF」の状態となり得る。無人走行を前提とするビークル100において、センサがいずれの作動状態にあるのか(即ち、正常又は異常であるのか)を瞬時に判断することは困難である。このため、コントローラ101により、センサが所定の信号を出力しない場合、「OFF」の状態であると判断し、センサがいずれの作動状態であってもビークル100が発進しないように(又は走行時には減速するように)、走行機構が制御される。これにより、センサの異常で横移動機構30の飛出しを検知できないままにビークル100が走行する(又は所定の速度で走行する)恐れがなく、フェイルセーフを確立することが可能である。
【0061】
コントローラ101は、ビークル100の各部を制御可能に構成されている。ここで、図7を参照し、本実施形態に係るコントローラ101の構成について説明する。ここに、図7は、コントローラ101の構成を示すブロック図である。コントローラ101は、判定部102と、走行禁止部103と、走行停止部104と、走行制御部105とを備える。判定部102は、右左の飛出し検知センサ45,46と接続されており、右左の飛出し検知センサ45,46から夫々出力可能である所定の信号が入力された場合、右左の飛出し検知センサ45,46が「ON」の状態にあると断定し、右左の飛出し検知センサ45,46からの所定の信号が入力されない場合、右左の飛出し検知センサ45,46が「OFF」の状態にあると断定する。判定部102は、右左の飛出し検知センサ45,46における「ON」又は「OFF」の状態に応じて、横移動機構30(言い換えれば、第2可動ベース33)の状態、即ち、収納状態、右飛出し状態、左飛出し状態、及びセンサ異常状態のうちのいずれかの状態を判定可能である。走行禁止部103及び走行停止部104は、後述する第1異常検知処理及び第2異常検知処理を夫々実行可能である。走行制御部105は、ビークル100の走行制御用コントローラであって、第1異常検知処理及び第2異常検知処理に従って走行機構のモータを制御可能である。
<実施形態の動作>
<第1異常検知処理>
【0062】
走行禁止部103は、停止しているビークル100が走行を開始する際に、横移動機構30が右飛出し状態、左飛出し状態、又はセンサ異常状態にあると判定される場合(即ち、右左の飛出し検知センサ45,46の少なくともいずれかが所定の信号を出力しない場合)、走行を禁止するように走行機構を制御するための第1異常検知処理を実行可能である。
【0063】
次に、図8を参照し、本実施形態に係る走行禁止部103による第1異常検知処理について説明する。ここに、図8は、第1異常検知処理を示すフローチャートである。
【0064】
図8において、判定部102は、横移動機構30において、横移載が完了したか否かを判定する(ステップS51)。この判定の結果、横移載が継続中であると判定される場合(ステップS51:NO)、その動作が完了するまで待機状態となる。一方、横移載が完了したと判定される場合(ステップS51:YES)、走行制御部105は、横移動機構30が収納状態になるように、減速機付サーボモータ34を駆動して駆動プーリ35を右回転又は左回転させる(ステップS52)。
【0065】
続いて、判定部102は、右左の飛出し検知センサ45,46が夫々所定の信号を出力するか否かを判定する(ステップS53)。この判定の結果、右左の飛出し検知センサ45,46が夫々所定の信号を出力すると判定された場合(ステップS53:YES)、判定部102は、走行機構に対しビークル100の発進を許可する(ステップS54)。一方、左飛出し検知センサ46が所定の信号を出力するが、右飛出し検知センサ45が所定の信号を出力しないと判定された場合(ステップS53:NO)、走行禁止部103は、走行制御部105に対しビークル100の発進を禁止する(ステップS55)。このように、ビークル100の発進が許可又は禁止され、一連の第1異常検知処理が終了する。
【0066】
第1異常検知処理によれば、右左の飛出し検知センサ45,46が夫々所定の信号を出力するようになるまで、ビークル100の走行が禁止される。これにより、ビークル100は、右飛出し状態、左飛出し状態、又はセンサ異常状態で走行することがないから、他のレールを走行する他のビークル等との接触による破損を回避することが可能である。
<第2異常検知処理>
【0067】
走行停止部104は、走行中のビークル100において、横移動機構30が右飛出し状態、左飛出し状態、又はセンサ異常状態にあると判定される場合(即ち、右左の飛出し検知センサ45,46の少なくともいずれかが所定の信号を出力しない場合)、所定時間極低速にて走行すると共に、所定時間経過後も横移動機構30が右飛出し状態、左飛出し状態、又はセンサ異常状態にあると判定される場合、走行を停止するように走行機構を制御するための第2異常検知処理を実行可能である。
【0068】
次に、図9を参照し、本実施形態に係る走行停止部104による第2異常検知処理について説明する。ここに、図9は、第2異常検知処理を示すフローチャートである。
【0069】
図9において、判定部102は、右左の飛出し検知センサ45,46のいずれかが所定の信号を出力しないか否かを判定する(ステップS61)。この判定の結果、右左の飛出し検知センサ45,46が夫々所定の信号を出力すると判定された場合(ステップS61:NO)、再びステップS61の処理を実行する。一方、右飛出し検知センサ45が所定の信号を出力し、左飛出し検知センサ46が所定の信号を出力しないと判定された場合(ステップS61:YES)、走行停止部104は、走行制御部105に対し所定時間、極めて低い速度で走行するための指令を送る(ステップS62)。
【0070】
続いて、判定部102は、所定時間経過後、右左の飛出し検知センサ45,46のいずれかが未だ所定の信号を出力しないか否かを判定する(ステップS63)。この判定の結果、右左の飛出し検知センサ45,46が夫々所定の信号を出力すると判定される場合(ステップS63:NO)、再びステップS61の処理を実行する。一方、左飛出し検知センサ46が継続して所定の信号を出力しないと判定される場合(ステップS63:YES)、走行停止部104は、走行制御部105に対しビークル100の走行を停止し、警報音を発生させる等の措置を取るための指令を送る(ステップS64)。これにより、一連の第2異常検知処理が終了する。
【0071】
第2異常検知処理によれば、走行中、右左の飛出し検知センサ45,46のいずれかが所定の信号を出力しない場合、所定時間極めて低い速度で徐行した後、所定時間経過後も右左の飛出し検知センサ45,46のいずれかが所定の信号を出力しない場合、ビークル100の走行が停止される。これにより、ビークル100は、走行中であっても、他のレールを走行する他のビークル等との接触による破損を防止することが可能である。
【0072】
上述の第1及び第2異常検知処理によれば、右飛出し検知ドグ43と右飛出しセンサ45との位置関係を表す「ON」又は「OFF」の状態、並びに左飛出し検知ドグ44と左飛出しセンサ46との位置関係を表す「ON」又は「OFF」の状態に応じて、横移動機構30の右左方向への飛出しを検知する。これにより、一対の飛出し検知ドグと飛出しセンサとを二組、横方向に並行に配置する比較的簡易な構成にて、横移動機構30の飛出しを的確に検知することが可能である。
【0073】
尚、本実施形態では、一対の飛出し検知ドグと飛出しセンサとを二組、横方向に並行に配置するが、一対の飛出し検知ドグと飛出しセンサとの配置についてこれに限定されない。例えば、図4の本実施形態では、上記二組が、レール方向でFOUP3を挟むように、横方向に並行に配置されるが、上記二組が、レール方向でFOUP3を挟まずとも同一の横方向をとらないように、横方向に並行に配置されてもよい。
<遮光部及び光透過型センサの他の配置>
【0074】
次に、図10を参照し、右左の飛出し検知ドグと、右左の飛出し検知センサとの他の配置について説明する。ここに、図10は、横移動機構130における右左の飛出し検知ドグ143,144と右左の飛出し検知センサ145,146との配置を表す上面図である。
【0075】
図10において、右左の飛出し検知ドグ143,144は、図4の場合と同様に、FOUP3を挟むように横方向に並行に配置されている。ここで、図4の右左の飛出し検知センサ45,46は、右左の飛出し検知ドグ43,44の夫々横方向における、横移動機構30の中央側に夫々配置されている。これに対し、図10の右左の飛出し検知センサ145,146は、右左の飛出し検知ドグ143,144の夫々横方向における、横移動機構130の両端部に配置されている。これら飛出し検知ドグ143,144及び右左の飛出し検知センサ145,146は夫々、第1可動ベースの下面及び第2可動ベースの上面のどちらに取り付けられてもよい。但し、右飛出し検知センサ145は、第2可動ベースが右方向に移動する場合、右飛出し検知ドグ143で遮光され、所定の信号を出力することはなく、左飛出し検知センサ146は、第2可動ベースが左方向に移動する場合、左飛出し検知ドグ144で遮光され、所定の信号を出力することはないように構成されるものとする。
【0076】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う搬送車の横移動機構もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0077】
3…FOUP、31…固定ベース、32…第1可動ベース、33…第2可動ベース、43…右飛出し検知ドグ、44…左飛出し検知ドグ、45…右飛出し検知センサ、46…左飛出し検知センサ、100…ビークル、101…コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井又は該天井側に敷設された軌道に沿って走行しつつ被搬送物を搬送する搬送車において、前記被搬送物を把持可能な把持機構を、前記搬送車の本体に対し前記軌道の方向に交差する横方向に移動可能である横移動機構であって、
第1ベースと、
前記第1ベースの下方に配置される第2ベースであって、該第2ベースの下方に前記把持機構が連結されており、前記第1ベースに対しスライドして前記横方向における第1方向に相対移動可能な前記第2ベースと、
前記第1ベースの下面又は前記第2ベースの上面に配置され、第1発光部及び第1受光部を有しており、前記第1発光部からの第1光を前記第1受光部が受光する場合、第1信号を出力する第1光透過型センサと、
前記第1ベースの下面又は前記第2ベースの上面における、前記第1光透過型センサに対向可能である位置に、前記横方向に沿って延びる長手状に設けられており、前記第1発光部から前記第1受光部への前記第1光を遮光可能な第1遮光部と、
前記出力された第1信号が入力される判定部と
を備え、
前記第1遮光部は、前記第2ベースが前記第1ベースの下方に収納される収納状態にある場合、前記第1光を遮光しない位置にあり、前記第2ベースが前記第1ベースに対し前記第1方向に移動した第1横移動状態にある場合、前記第1光を遮光する位置にあるように配置され、
前記判定部は、前記第1信号が入力される場合、前記第2ベースが前記第1横移動状態より他の、前記収納状態を含む状態にあると判定し、前記第1信号が入力されない場合、前記第2ベースが前記第1横移動状態にあると判定する
ことを特徴とする搬送車の横移動機構。
【請求項2】
前記第1ベースの下面又は前記第2ベースの上面に配置され、第2発光部及び第2受光部を有しており、前記第2発光部からの第2光を前記第2受光部が受光する場合、第2信号を出力する第2光透過型センサと、
前記第1ベースの下面又は前記第2ベースの上面における、前記第2光透過型センサに対向可能である位置に、前記横方向に沿って延びる長手状に設けられており、前記第2発光部から前記第2受光部への前記第2光を遮光可能な第2遮光部と
を更に備え、
前記第2ベースは、前記第1方向に加えて、前記第1ベースに対しスライドして前記横方向における前記第1方向と逆の第2方向に相対移動可能であり、
前記判定部には、前記第1信号に加えて、前記出力された第2信号が入力され、
前記第2遮光部は、前記第2ベースが前記収納状態又は前記第1横移動状態にある場合、前記第2光を遮光しない位置にあり、前記第2ベースが前記第1ベースに対し前記第2方向に移動した第2横移動状態にある場合、第2光を遮光する位置にあるように配置され、
前記判定部は、前記第1信号及び前記第2信号が共に入力される場合、前記第2ベースが前記収納状態にあると判定し、前記第1信号のみが入力される場合、前記第2ベースが前記第2横移動状態にあると判定し、前記第2信号のみが入力される場合、前記第2ベースが前記第1横移動状態にあると判定し、前記第1信号及び第2信号のどちらも入力されない場合、前記第1光透過型センサ及び前記第2光透過型センサのうちの少なくとも一方に異常があるセンサ異常状態にあると判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送車の横移動機構。
【請求項3】
前記第1ベースの上方に配置されており、前記本体に固定された固定ベース
を更に備え、
前記第1ベースは、前記固定ベースに対しスライドして前記横方向に相対移動可能であり、
前記第2ベースは、前記第1ベースに従動して前記第1ベースがスライドする方向と同一方向に移動し、
前記固定ベース、前記第1ベース及び前記第2ベースは、前記第2ベースが前記収納状態にある場合、上下方向で重なり前記本体に収納され、前記第2ベースが前記第1横移動状態又は前記第2横移動状態にある場合、前記第1ベースの移動距離が前記第2ベースの移動距離より短くなるように構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送車の横移動機構。
【請求項4】
当該搬送車は、
走行が開始される際に、前記判定部により前記第2ベースが前記第1横移動状態、前記第2横移動状態、又は前記センサ異常状態にあると判定される場合、当該搬送車の走行を禁止する走行禁止部を備える
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の搬送車の横移動機構。
【請求項5】
当該搬送車は、
走行中に、前記第2ベースが前記第1横移動状態、前記第2横移動状態、又は前記センサ異常状態にあると判定される場合、走行速度を所定時間極低速に設定すると共に、前記所定時間の経過後に前記第2ベースが前記第1横移動状態、前記第2横移動状態、又は前記センサ異常状態にあると判定される場合、当該搬送車の走行を停止させる走行停止部を更に備える
ことを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の搬送車の横移動機構。
【請求項6】
前記横移動機構は、
前記第1ベースに駆動ベルトを介して連結される前記固定ベースと、
前記第1ベースがスライドするように前記駆動ベルトを回動可能な回動部と、
前記第2方向の端部に回転自在に取り付けられる第1定滑車、及び前記第1方向の端部に回転自在に取り付けられる第2定滑車を有する前記第1ベースと、
一端が前記固定ベースの前記第1方向の端部に固定され、他端が前記第2ベースの前記第1方向の端部に固定されると共に、中間部が前記第1定滑車に摺動自在に掛けられる第1摺動ベルトと、
一端が前記固定ベースの前記第2方向の端部に固定され、他端が前記第2ベースの前記第2方向の端部に固定されると共に、中間部が前記第2定滑車に摺動自在に掛けられる第2摺動ベルトと、
前記回動部により前記第1ベースがスライドして前記第1方向に移動するのに伴って、前記第1摺動ベルト及び前記第2摺動ベルトが前記第1定滑車及び前記第2定滑車を夫々摺動することで前記第1方向に移動すると共に、前記回動部により前記第1ベースがスライドして前記第2方向に駆動するのに伴って、前記第1摺動ベルト及び前記第2摺動ベルトが前記第1定滑車及び前記第2定滑車を夫々摺動することで前記第2方向に移動する前記第2ベースと
を備えることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の搬送車の横移動機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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