搬送車システム
【課題】
搬送車がステーションに到着すると速やかに物品を移載できるようにする。
【構成】
搬送車システムはステーションと搬送車とを備えて、ステーションと搬送車との間で物品を移載し、ステーションは物品の搬送装置を備えている。搬送車は、物品の移載装置と、ステーションまでの残走行距離からステーションへの到着時刻を予測する機上制御部と、予測した到着時刻から所定時間前に、搬送装置の駆動を禁止する駆動禁止要求が送信可能状態にセットされる機上側通信装置とを備えている。さらに、搬送車と通信する地上側通信装置と、地上側通信装置が前記駆動禁止要求を受信すると、前記搬送装置の駆動を禁止する地上側制御部とが設けられている。
搬送車がステーションに到着すると速やかに物品を移載できるようにする。
【構成】
搬送車システムはステーションと搬送車とを備えて、ステーションと搬送車との間で物品を移載し、ステーションは物品の搬送装置を備えている。搬送車は、物品の移載装置と、ステーションまでの残走行距離からステーションへの到着時刻を予測する機上制御部と、予測した到着時刻から所定時間前に、搬送装置の駆動を禁止する駆動禁止要求が送信可能状態にセットされる機上側通信装置とを備えている。さらに、搬送車と通信する地上側通信装置と、地上側通信装置が前記駆動禁止要求を受信すると、前記搬送装置の駆動を禁止する地上側制御部とが設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は搬送車システムに関し、特に搬送車とステーション間で物品を速やかに移載することに関する。
【背景技術】
【0002】
コンベヤ、リフタ等の搬送装置を備えた地上側のステーションと、スタッカークレーン等の搬送車との間で物品を移載するためには、搬送車の移載装置が動作する前に、ステーション側の搬送装置の駆動を禁止しておく必要がある。従来は、停止した搬送車がステーション側へ搬送装置の駆動禁止要求を送信し、次いで移載装置を動作させるようにしている。しかしながら搬送車からステーションへの通信には待時間が必要なことがあり、このため搬送車の停止から待時間分遅れて移載作業を開始することになる。より待時間の短い通信装置を導入すると、移載作業の開始までの遅れを短縮できるが、高価な通信装置が必要になる。そこで待時間の有る通信装置を用いながら、移載作業を開始するまでの待時間を短縮する必要がある。
【0003】
なお出願人らは、ステーションへ到着する前に搬送車からステーションへインターロック信号を送信し、ステーションはこれに基づいてシャッタを開く等の作業を行うシステムを提案した(特許文献1:JP2000-299364A)。しかしながら特許文献1は通信の待時間については検討しておらず、また搬送車からステーションへインターロック信号を送信するタイミングに付いても検討していない。例えば早過ぎるタイミングでインターロックを要求すると、インターロックを開始したにも係わらず、搬送車がステーションに到着しない等のリスクが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】JP2000-299364A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、待時間の有る通信装置を用いながら、かつステーションに不要なインターロックを要求することなく、搬送車がステーションに到着すると速やかに物品を移載できるようにすることにある。
この発明の追加の課題は、搬送車がステーションに到着すると同時に物品を移載できるようにすることにある。
この発明の追加の課題は、搬送装置の駆動を禁止したにも係わらず、搬送車が到着しないとのリスクを小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、ステーションと搬送車とを備えて、ステーションと搬送車との間で物品を移載する搬送車システムであって、ステーションは物品の搬送装置を備え、搬送車は、物品の移載装置と、ステーションまでの残走行距離からステーションへの到着時刻を予測する機上制御部と、予測した到着時刻から所定時間前に、前記搬送装置の駆動を禁止する駆動禁止要求が送信可能状態にセットされる機上側通信装置とを備え、さらに、搬送車と通信する地上側通信装置と、地上側通信装置が前記駆動禁止要求を受信すると、前記搬送装置の駆動を禁止する地上側制御部とが設けられていることを特徴とする。ここで駆動禁止要求が送信可能状態にセットされるとは、例えば機上側通信装置の送信バッファ等に駆動禁止要求が書き込まれ、送信が可能になると直ちに送信できるようになることをいう。また到着時刻から所定時間前にセットされるとは、例えば駆動禁止要求のセットから送信までの待時間に相当する時間だけ前にセットされることをいう。
【0007】
この発明では、残走行距離からステーションへの到着時刻を予測し、到着時刻から所定時間前に駆動禁止要求が送信可能状態にセットされるので、搬送車の到着直前〜到着とほぼ同時に駆動禁止要求が送信される。このため地上側通信装置と機上側通信装置間の通信能力を増さずに、搬送車が到着後に移載を開始するまでの待時間を短くできる。また不必要に早く駆動禁止要求を送信することがないので、ステーション側からすると、駆動禁止要求を受信したにもかかわらず、搬送車が到着しないとのトラブルを少なくできる。
【0008】
好ましくは、前記機上制御部は、搬送車がステーションに到着するのと同時に、移載装置の動作を開始させるように構成されている。同時とは例えば、搬送車の停止から、±100ms以下の時間差を意味し、より具体的には±50ms以下の時間差を意味し、特に好ましくは±10ms以下の時間差を意味する。このようにすると搬送車の到着から移載の開始までの時間を実質的に0にし、搬送のサイクルタイムをさらに短縮できる。
【0009】
特に好ましくは、前記地上側通信装置と前記機上側通信装置との通信は、ポーリングによりシリアル通信により行われ、前記所定時間はポーリングとポーリングとの間隔に基づく時間、即ちポーリング間隔にほぼ等しい時間である。例えば前記の所定時間は上記のポーリング間隔±50msの時間で、最も好ましくはポーリング間隔±10msの時間である。機上側通信装置から地上側通信装置への通信は、ポーリングのため所定の間隔でしか行われ、ポーリングの間隔が送信までの待時間の最大値となる。到着よりもポーリング間隔に相当する時間だけ前に、駆動禁止要求をセットすると、搬送車の到着までに駆動禁止要求が送信され、到着と同時に移載を開始できる。しかも到着の直前で最大でも1ポーリング周期前に送信するので、駆動禁止要求を送信したものの搬送車がステーションに到着しないとのトラブルは、ごく希にしか生じない。従って、搬送車が到着しないため、ステーションに送信済みの駆動禁止要求を解除する等のトラブルが極めて生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例の搬送車システムの平面図
【図2】実施例での制御系のブロック図
【図3】実施例での入出庫作業のタイミングを示す波形図で、1)はステーションのコンベヤのオン/オフを、2)はコンベヤの載荷センサの信号を、3)は入出庫作業の可/不可を示し、4)はスタッカークレーンから地上制御盤への駆動禁止要求のセットを、5)はスタッカークレーンの走行/停止を、6)はスタッカークレーンのスライドフォークの動作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき、明細書の記載とこの分野での周知技術とを参酌し、当業者の理解に従って定められるべきである。
【実施例】
【0012】
図1〜図3に、実施例の搬送車システム2を示す。各図において4はスタッカークレーンで、無人搬送車,有軌道台車,あるいは自動倉庫の高さレベル毎の搬送台車などの他の搬送車でもよく、移載装置を搭載してステーションとの間で物品を移載するものであればよい。スタッカークレーン4はマスト8に沿って昇降する昇降台6を備え、昇降台6にはスライドフォーク7等の移載装置を搭載している。
【0013】
スタッカークレーン4はレール10に沿って走行し、例えばその左右両側にラック12,12が設けられ、ラック12の適宜の位置にステーション14が設けられている。実施例では一対のステーション14,14を示すが、ステーションの個数は任意で、スタッカークレーン4はステーション14とラック12との間で物品を搬送する。ステーション14にはコンベヤ16等が接続され、図1ではステーション14とコンベヤ16とを分離して示すが、実際にはステーション14上までコンベヤ16が設けられ、スタッカークレーン4から荷下ろしされた物品を搬出し、またスタッカークレーン4に荷積みする物品を搬入する。コンベヤ16はステーション14に設けられた搬送装置の例で、これ以外に物品を昇降させるためのリフタをステーション14に設ける場合、リフタもステーションに付属の搬送装置に含まれる。18は地上制御盤で、搬送車システム2全体の制御部であると共に、スタッカークレーン4と光通信、無線通信などによりシリアル通信し、ステーション14とは有線で、もしくは地上LANにより通信する。
【0014】
図2に搬送車システム2の制御系を示し、スタッカークレーン4の制御部20はスタッカークレーン4の全体を制御する。走行制御部21は走行モータM1を制御し、位置センサS1により走行方向位置を求めて、走行制御部21へフィードバックする。昇降制御部22は昇降モータM2を駆動し、位置センサS2により高さ方向位置を求めて制御部22へフィードバックする。移載制御部23はスライドフォークの駆動モータM3などを駆動し、位置センサS3によりスライドフォークの位置を求めて、移載制御部23へフィードバックする。制御部20から見た通信装置25のインターフェースとして通信バッファ24が設けられ、通信装置25から受信したデータ及び通信装置25から送信するデータをバッファ24に書き込む。なお通信装置25とバッファ24を図では別体として示すが、実際にはこれらは一体で機上側通信装置を構成する。
【0015】
地上制御盤18は通信装置26を備えて、スタッカークレーンの通信装置25と例えばシリアル光通信し、光通信に代えて無線通信,赤外線通信などでもよい。この通信はポーリングにより行われ、通信装置26は例えば300msなどの所定間隔で、通信装置25へ通信すると共に、通信装置26からの通信終了後に送信しても良いことを通信装置25へ通知する。また通信装置26側からの通信データがない場合も、同じ時間間隔で通信装置25に対して通信の開始を許可する。制御部28はスタッカークレーン4側から受信したデータと、ステーション14側から受信したデータ、並びに上位コントローラもしくは図示しない操作パネルなどから入力されたデータに基づいて、搬送車システム2を制御する。そして制御部28は、スタッカークレーン4側から駆動禁止要求などを受け付けると、指定されたステーション14へ転送する。ステーション14は制御部30とコンベヤ、リフタ等のモータM4とを備え、荷物の有無を載荷センサS4で検出する。
【0016】
図3に実施例の動作を示し、ここではステーション14からスタッカークレーン4へ物品を荷積みすることにより、物品を入庫する例を示す。しかし図3の2)での載荷信号の有無を反転すると、スタッカークレーン4からステーション14へ物品を荷下ろしする出庫時の動作となる。図3の1)のように、ステーションに接続されたコンベヤが動作して、物品をステーション上に搬入し、図3の2)のように、載荷センサが物品を検出して信号がオンすると、コンベヤを停止させる。コンベヤの停止により入出庫作業、即ちスタッカークレーンとの間の物品の受け渡しが可能になり、ステーション側での準備が整ったことになる(図3の3))。
【0017】
スタッカークレーン4は、目的のステーションへ到着するまでの速度パターンを走行制御部で発生させ、現在位置を位置センサで監視しながら走行しているので、ステーションまでの残走行距離を認識している。そして速度パターンに従って走行しているので、この残走行距離を走行するための所要時間も認識している。一方通信装置25から通信装置26への通信は、ポーリングによるシリアル通信で、ポーリングとポーリングとの間隔から成る通信間隔は例えば300msである。そこでステーションに到着すると予測される時刻の例えば300ms前に、バッファにコンベヤの駆動禁止要求を書き込み(図3の4))、スタッカークレーンの機上側通信装置は、ポーリングによる送信が可能になった時点で、バッファのデータを地上制御盤側の通信装置へ送信する。なお駆動禁止要求をスタッカークレーン4側から地上制御盤18あるいはステーション14へ送信する代わりに、コンベヤ16等の駆動を可能にする駆動可信号をスタッカークレーン4側から送信するように構成しても良い。そして駆動禁止要求に代えて、駆動可信号を「有」から「無」へ変更しても良い。
【0018】
ポーリング間隔分だけ前にバッファに駆動禁止要求を書き込むので、スタッカークレーンの到着までの間に駆動禁止要求が地上制御盤へ送信される。また地上制御盤はステーションと有線等で接続されているので、直ちにステーションの制御部へ駆動禁止要求が転送される。従ってスタッカークレーンがステーションに到着するよりもポーリング間隔分だけ前ないし到着と同時に、駆動禁止要求がステーションの制御部にセットされる。従ってスタッカークレーンが到着する直前もしくは到着と同時に、移載のためのインターロックが取れていることになる。そこでスタッカークレーンは到着と同時に、言い換えると停止と同時に、スライドフォーク等の移載装置を駆動し、物品の受け渡しを開始する(図3の5),6))。
【0019】
物品の受け渡しの途中で、ステーション側での載荷センサの信号が変化し(図3の2))、スライドフォークの出退が完了すると(図3の6))、クレーンは走行を開始し(図3の5))、走行の開始と例えば同時に駆動禁止要求を解除する(図3の4))。なおスライドフォークの後退が完了すると同時に駆動禁止要求を解除し、かつスタッカークレーンの走行を開始しても良い。駆動禁止要求の解除要求が送信されると、ステーション側では入出庫作業が不可となり(図3の3))、次の入庫もしくは出庫のためにコンベヤをオンさせることができる(図3の1))。なおスタッカークレーン側で駆動禁止要求の解除要求をバッファにセットした後、実際にこの要求が送信されるまでには、最大で300ms程度の待時間がある。しかし一般に、搬送負荷が高いのはスタッカークレーンの側で、ステーションの側ではない。従って駆動禁止要求の解除信号が送信されるまでに待時間が生じることは、特に問題ではない。
【0020】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) スタッカークレーン4は到着と同時に物品の移載を開始できる。
(2) スタッカークレーンと地上制御盤との通信自体を高速にする必要がない。
(3) 駆動禁止要求は到着の直前でポーリング間隔分だけ前に送信されるので、駆動禁止要求が送信されたものの、スタッカークレーン4が到着しないため、ステーション側での手順が混乱することがない。
【0021】
実施例では、スタッカークレーン4はステーション14と地上制御盤18を介して通信するものとしたが、スタッカークレーン4と地上制御盤14とが光通信などにより直接通信するようにしても良い。
【符号の説明】
【0022】
2 搬送車システム
4 スタッカークレーン
6 昇降台
7 スライドフォーク
8 マスト
10 レール
12 ラック
14 ステーション
16 コンベヤ
18 地上制御盤
20〜23 制御部
24 通信バッファ
25,26 通信装置
28,30 制御部
S1〜S3 位置センサ
S4 載荷センサ
M1〜M4 モータ
【技術分野】
【0001】
この発明は搬送車システムに関し、特に搬送車とステーション間で物品を速やかに移載することに関する。
【背景技術】
【0002】
コンベヤ、リフタ等の搬送装置を備えた地上側のステーションと、スタッカークレーン等の搬送車との間で物品を移載するためには、搬送車の移載装置が動作する前に、ステーション側の搬送装置の駆動を禁止しておく必要がある。従来は、停止した搬送車がステーション側へ搬送装置の駆動禁止要求を送信し、次いで移載装置を動作させるようにしている。しかしながら搬送車からステーションへの通信には待時間が必要なことがあり、このため搬送車の停止から待時間分遅れて移載作業を開始することになる。より待時間の短い通信装置を導入すると、移載作業の開始までの遅れを短縮できるが、高価な通信装置が必要になる。そこで待時間の有る通信装置を用いながら、移載作業を開始するまでの待時間を短縮する必要がある。
【0003】
なお出願人らは、ステーションへ到着する前に搬送車からステーションへインターロック信号を送信し、ステーションはこれに基づいてシャッタを開く等の作業を行うシステムを提案した(特許文献1:JP2000-299364A)。しかしながら特許文献1は通信の待時間については検討しておらず、また搬送車からステーションへインターロック信号を送信するタイミングに付いても検討していない。例えば早過ぎるタイミングでインターロックを要求すると、インターロックを開始したにも係わらず、搬送車がステーションに到着しない等のリスクが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】JP2000-299364A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、待時間の有る通信装置を用いながら、かつステーションに不要なインターロックを要求することなく、搬送車がステーションに到着すると速やかに物品を移載できるようにすることにある。
この発明の追加の課題は、搬送車がステーションに到着すると同時に物品を移載できるようにすることにある。
この発明の追加の課題は、搬送装置の駆動を禁止したにも係わらず、搬送車が到着しないとのリスクを小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、ステーションと搬送車とを備えて、ステーションと搬送車との間で物品を移載する搬送車システムであって、ステーションは物品の搬送装置を備え、搬送車は、物品の移載装置と、ステーションまでの残走行距離からステーションへの到着時刻を予測する機上制御部と、予測した到着時刻から所定時間前に、前記搬送装置の駆動を禁止する駆動禁止要求が送信可能状態にセットされる機上側通信装置とを備え、さらに、搬送車と通信する地上側通信装置と、地上側通信装置が前記駆動禁止要求を受信すると、前記搬送装置の駆動を禁止する地上側制御部とが設けられていることを特徴とする。ここで駆動禁止要求が送信可能状態にセットされるとは、例えば機上側通信装置の送信バッファ等に駆動禁止要求が書き込まれ、送信が可能になると直ちに送信できるようになることをいう。また到着時刻から所定時間前にセットされるとは、例えば駆動禁止要求のセットから送信までの待時間に相当する時間だけ前にセットされることをいう。
【0007】
この発明では、残走行距離からステーションへの到着時刻を予測し、到着時刻から所定時間前に駆動禁止要求が送信可能状態にセットされるので、搬送車の到着直前〜到着とほぼ同時に駆動禁止要求が送信される。このため地上側通信装置と機上側通信装置間の通信能力を増さずに、搬送車が到着後に移載を開始するまでの待時間を短くできる。また不必要に早く駆動禁止要求を送信することがないので、ステーション側からすると、駆動禁止要求を受信したにもかかわらず、搬送車が到着しないとのトラブルを少なくできる。
【0008】
好ましくは、前記機上制御部は、搬送車がステーションに到着するのと同時に、移載装置の動作を開始させるように構成されている。同時とは例えば、搬送車の停止から、±100ms以下の時間差を意味し、より具体的には±50ms以下の時間差を意味し、特に好ましくは±10ms以下の時間差を意味する。このようにすると搬送車の到着から移載の開始までの時間を実質的に0にし、搬送のサイクルタイムをさらに短縮できる。
【0009】
特に好ましくは、前記地上側通信装置と前記機上側通信装置との通信は、ポーリングによりシリアル通信により行われ、前記所定時間はポーリングとポーリングとの間隔に基づく時間、即ちポーリング間隔にほぼ等しい時間である。例えば前記の所定時間は上記のポーリング間隔±50msの時間で、最も好ましくはポーリング間隔±10msの時間である。機上側通信装置から地上側通信装置への通信は、ポーリングのため所定の間隔でしか行われ、ポーリングの間隔が送信までの待時間の最大値となる。到着よりもポーリング間隔に相当する時間だけ前に、駆動禁止要求をセットすると、搬送車の到着までに駆動禁止要求が送信され、到着と同時に移載を開始できる。しかも到着の直前で最大でも1ポーリング周期前に送信するので、駆動禁止要求を送信したものの搬送車がステーションに到着しないとのトラブルは、ごく希にしか生じない。従って、搬送車が到着しないため、ステーションに送信済みの駆動禁止要求を解除する等のトラブルが極めて生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例の搬送車システムの平面図
【図2】実施例での制御系のブロック図
【図3】実施例での入出庫作業のタイミングを示す波形図で、1)はステーションのコンベヤのオン/オフを、2)はコンベヤの載荷センサの信号を、3)は入出庫作業の可/不可を示し、4)はスタッカークレーンから地上制御盤への駆動禁止要求のセットを、5)はスタッカークレーンの走行/停止を、6)はスタッカークレーンのスライドフォークの動作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき、明細書の記載とこの分野での周知技術とを参酌し、当業者の理解に従って定められるべきである。
【実施例】
【0012】
図1〜図3に、実施例の搬送車システム2を示す。各図において4はスタッカークレーンで、無人搬送車,有軌道台車,あるいは自動倉庫の高さレベル毎の搬送台車などの他の搬送車でもよく、移載装置を搭載してステーションとの間で物品を移載するものであればよい。スタッカークレーン4はマスト8に沿って昇降する昇降台6を備え、昇降台6にはスライドフォーク7等の移載装置を搭載している。
【0013】
スタッカークレーン4はレール10に沿って走行し、例えばその左右両側にラック12,12が設けられ、ラック12の適宜の位置にステーション14が設けられている。実施例では一対のステーション14,14を示すが、ステーションの個数は任意で、スタッカークレーン4はステーション14とラック12との間で物品を搬送する。ステーション14にはコンベヤ16等が接続され、図1ではステーション14とコンベヤ16とを分離して示すが、実際にはステーション14上までコンベヤ16が設けられ、スタッカークレーン4から荷下ろしされた物品を搬出し、またスタッカークレーン4に荷積みする物品を搬入する。コンベヤ16はステーション14に設けられた搬送装置の例で、これ以外に物品を昇降させるためのリフタをステーション14に設ける場合、リフタもステーションに付属の搬送装置に含まれる。18は地上制御盤で、搬送車システム2全体の制御部であると共に、スタッカークレーン4と光通信、無線通信などによりシリアル通信し、ステーション14とは有線で、もしくは地上LANにより通信する。
【0014】
図2に搬送車システム2の制御系を示し、スタッカークレーン4の制御部20はスタッカークレーン4の全体を制御する。走行制御部21は走行モータM1を制御し、位置センサS1により走行方向位置を求めて、走行制御部21へフィードバックする。昇降制御部22は昇降モータM2を駆動し、位置センサS2により高さ方向位置を求めて制御部22へフィードバックする。移載制御部23はスライドフォークの駆動モータM3などを駆動し、位置センサS3によりスライドフォークの位置を求めて、移載制御部23へフィードバックする。制御部20から見た通信装置25のインターフェースとして通信バッファ24が設けられ、通信装置25から受信したデータ及び通信装置25から送信するデータをバッファ24に書き込む。なお通信装置25とバッファ24を図では別体として示すが、実際にはこれらは一体で機上側通信装置を構成する。
【0015】
地上制御盤18は通信装置26を備えて、スタッカークレーンの通信装置25と例えばシリアル光通信し、光通信に代えて無線通信,赤外線通信などでもよい。この通信はポーリングにより行われ、通信装置26は例えば300msなどの所定間隔で、通信装置25へ通信すると共に、通信装置26からの通信終了後に送信しても良いことを通信装置25へ通知する。また通信装置26側からの通信データがない場合も、同じ時間間隔で通信装置25に対して通信の開始を許可する。制御部28はスタッカークレーン4側から受信したデータと、ステーション14側から受信したデータ、並びに上位コントローラもしくは図示しない操作パネルなどから入力されたデータに基づいて、搬送車システム2を制御する。そして制御部28は、スタッカークレーン4側から駆動禁止要求などを受け付けると、指定されたステーション14へ転送する。ステーション14は制御部30とコンベヤ、リフタ等のモータM4とを備え、荷物の有無を載荷センサS4で検出する。
【0016】
図3に実施例の動作を示し、ここではステーション14からスタッカークレーン4へ物品を荷積みすることにより、物品を入庫する例を示す。しかし図3の2)での載荷信号の有無を反転すると、スタッカークレーン4からステーション14へ物品を荷下ろしする出庫時の動作となる。図3の1)のように、ステーションに接続されたコンベヤが動作して、物品をステーション上に搬入し、図3の2)のように、載荷センサが物品を検出して信号がオンすると、コンベヤを停止させる。コンベヤの停止により入出庫作業、即ちスタッカークレーンとの間の物品の受け渡しが可能になり、ステーション側での準備が整ったことになる(図3の3))。
【0017】
スタッカークレーン4は、目的のステーションへ到着するまでの速度パターンを走行制御部で発生させ、現在位置を位置センサで監視しながら走行しているので、ステーションまでの残走行距離を認識している。そして速度パターンに従って走行しているので、この残走行距離を走行するための所要時間も認識している。一方通信装置25から通信装置26への通信は、ポーリングによるシリアル通信で、ポーリングとポーリングとの間隔から成る通信間隔は例えば300msである。そこでステーションに到着すると予測される時刻の例えば300ms前に、バッファにコンベヤの駆動禁止要求を書き込み(図3の4))、スタッカークレーンの機上側通信装置は、ポーリングによる送信が可能になった時点で、バッファのデータを地上制御盤側の通信装置へ送信する。なお駆動禁止要求をスタッカークレーン4側から地上制御盤18あるいはステーション14へ送信する代わりに、コンベヤ16等の駆動を可能にする駆動可信号をスタッカークレーン4側から送信するように構成しても良い。そして駆動禁止要求に代えて、駆動可信号を「有」から「無」へ変更しても良い。
【0018】
ポーリング間隔分だけ前にバッファに駆動禁止要求を書き込むので、スタッカークレーンの到着までの間に駆動禁止要求が地上制御盤へ送信される。また地上制御盤はステーションと有線等で接続されているので、直ちにステーションの制御部へ駆動禁止要求が転送される。従ってスタッカークレーンがステーションに到着するよりもポーリング間隔分だけ前ないし到着と同時に、駆動禁止要求がステーションの制御部にセットされる。従ってスタッカークレーンが到着する直前もしくは到着と同時に、移載のためのインターロックが取れていることになる。そこでスタッカークレーンは到着と同時に、言い換えると停止と同時に、スライドフォーク等の移載装置を駆動し、物品の受け渡しを開始する(図3の5),6))。
【0019】
物品の受け渡しの途中で、ステーション側での載荷センサの信号が変化し(図3の2))、スライドフォークの出退が完了すると(図3の6))、クレーンは走行を開始し(図3の5))、走行の開始と例えば同時に駆動禁止要求を解除する(図3の4))。なおスライドフォークの後退が完了すると同時に駆動禁止要求を解除し、かつスタッカークレーンの走行を開始しても良い。駆動禁止要求の解除要求が送信されると、ステーション側では入出庫作業が不可となり(図3の3))、次の入庫もしくは出庫のためにコンベヤをオンさせることができる(図3の1))。なおスタッカークレーン側で駆動禁止要求の解除要求をバッファにセットした後、実際にこの要求が送信されるまでには、最大で300ms程度の待時間がある。しかし一般に、搬送負荷が高いのはスタッカークレーンの側で、ステーションの側ではない。従って駆動禁止要求の解除信号が送信されるまでに待時間が生じることは、特に問題ではない。
【0020】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) スタッカークレーン4は到着と同時に物品の移載を開始できる。
(2) スタッカークレーンと地上制御盤との通信自体を高速にする必要がない。
(3) 駆動禁止要求は到着の直前でポーリング間隔分だけ前に送信されるので、駆動禁止要求が送信されたものの、スタッカークレーン4が到着しないため、ステーション側での手順が混乱することがない。
【0021】
実施例では、スタッカークレーン4はステーション14と地上制御盤18を介して通信するものとしたが、スタッカークレーン4と地上制御盤14とが光通信などにより直接通信するようにしても良い。
【符号の説明】
【0022】
2 搬送車システム
4 スタッカークレーン
6 昇降台
7 スライドフォーク
8 マスト
10 レール
12 ラック
14 ステーション
16 コンベヤ
18 地上制御盤
20〜23 制御部
24 通信バッファ
25,26 通信装置
28,30 制御部
S1〜S3 位置センサ
S4 載荷センサ
M1〜M4 モータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステーションと搬送車とを備えて、ステーションと搬送車との間で物品を移載する搬送車システムであって、
ステーションは物品の搬送装置を備え、
搬送車は、物品の移載装置と、ステーションまでの残走行距離からステーションへの到着時刻を予測する機上制御部と、予測した到着時刻から所定時間前に、前記搬送装置の駆動を禁止する駆動禁止要求が送信可能状態にセットされる機上側通信装置とを備え、
さらに、搬送車と通信する地上側通信装置と、地上側通信装置が前記駆動禁止要求を受信すると、前記搬送装置の駆動を禁止する地上側制御部とが設けられていることを特徴とする、搬送車システム。
【請求項2】
前記機上制御部は、搬送車がステーションに到着するのと同時に、移載装置の動作を開始させるように構成されていることを特徴とする、請求項1の搬送車システム。
【請求項3】
前記地上側通信装置と前記機上側通信装置との通信は、ポーリングによりシリアル通信により行われ、前記所定時間はポーリングとポーリングとの間隔に基づく時間であることを特徴とする、請求項2の搬送車システム。
【請求項1】
ステーションと搬送車とを備えて、ステーションと搬送車との間で物品を移載する搬送車システムであって、
ステーションは物品の搬送装置を備え、
搬送車は、物品の移載装置と、ステーションまでの残走行距離からステーションへの到着時刻を予測する機上制御部と、予測した到着時刻から所定時間前に、前記搬送装置の駆動を禁止する駆動禁止要求が送信可能状態にセットされる機上側通信装置とを備え、
さらに、搬送車と通信する地上側通信装置と、地上側通信装置が前記駆動禁止要求を受信すると、前記搬送装置の駆動を禁止する地上側制御部とが設けられていることを特徴とする、搬送車システム。
【請求項2】
前記機上制御部は、搬送車がステーションに到着するのと同時に、移載装置の動作を開始させるように構成されていることを特徴とする、請求項1の搬送車システム。
【請求項3】
前記地上側通信装置と前記機上側通信装置との通信は、ポーリングによりシリアル通信により行われ、前記所定時間はポーリングとポーリングとの間隔に基づく時間であることを特徴とする、請求項2の搬送車システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2012−153469(P2012−153469A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12872(P2011−12872)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
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