説明

携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の制御方法

【課題】より安定して動作する携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の制御方法を提供する。
【解決手段】外部機器と非接触通信を行う携帯可能電子装置20であって、第1の受信効率と第2の受信効率とのいずれかの受信効率を用いて前記外部機器から発せられる電波を受信し、電圧を生成する共振部24と、前記共振部24により生成された前記電圧を整流する整流部29と、前記整流部29により整流された前記電圧の値を検知し、この検知された電圧値が予め設定された基準電圧値以上であるかを判断する電圧検知部32と、前記電圧検知部32の判断結果に基づいて、前記共振部24の受信効率を前記第1の受信効率と前記第2の受信効率とで切り替える切替部と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、携帯可能電子装置として用いられるICカードは、プラスチックなどで形成されたカード状の本体と本体に埋め込まれたICモジュールとを備えている。ICモジュールは、ICチップを有している。ICチップは、電源が無い状態でもデータを保持することができるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)またはフラッシュROMなどの不揮発性メモリと、種々の演算を実行するCPUとを有している。
【0003】
ICカードは、例えば、国際標準規格ISO/IEC7816、及びISO/IEC14443に準拠したICカードである。ICカードは、携帯性に優れ、且つ、外部装置との通信及び複雑な演算処理を行う事ができる。また、偽造が難しい為、ICカードは、機密性の高い情報などを格納してセキュリティシステム、電子商取引などに用いられることが想定される。
【0004】
また、非接触通信によりデータの送受信を行うことができるICカードが一般的に普及している。上記したような非接触通信を行うICカードは、ICチップとアンテナとを備えている。ICカードは、ICカードを処理するICカード処理装置のリーダライタから発せられる磁界を受けて、カード内のアンテナを電磁誘導により起電させることにより動作する。また、ICカードは、非接触通信により処理装置からコマンドを受信した場合、受信したコマンドに応じてアプリケーションを実行する。これにより、ICカードは、種々の機能を実現することができる。
【0005】
しかし、リーダライタから過大磁界がICカードに放射された場合、過電圧が誘起される。この場合、過電圧によりICチップが発熱し、破壊、アンテナ接続部の剥離などが発生する可能性がある。そこで、ICチップの温度を検知し、温度が所定値異常になる場合に、ICチップの動作を停止(Halt)させる技術などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−072966号公報
【特許文献2】特開2010−108485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ICチップの動作状態がホルトに移行する場合、処理装置との通信が中断される。この為、ICカード及び処理装置は、処理を初めから実行し直す必要がある場合がある。
【0008】
また、アンテナとICチップとが電気的に接続されている為、アンテナにより誘起された過電圧がICチップに印加される。この場合も、過電圧によりICチップが発熱し、破壊、アンテナ接続部の剥離などが発生する可能性がある。
【0009】
そこで、より安定して動作する携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態に係る携帯可能電子装置は、外部機器と非接触通信を行う携帯可能電子装置であって、第1の受信効率と第2の受信効率とのいずれかの受信効率を用いて前記外部機器から発せられる電波を受信し、電圧を生成する共振部と、前記共振部により生成された前記電圧を整流する整流部と、前記整流部により整流された前記電圧の値を検知し、この検知された電圧値が予め設定された基準電圧値以上であるかを判断する電圧検知部と、前記電圧検知部の判断結果基づいて、前記共振部の受信効率を前記第1の受信効率と前記第2の受信効率とで切り替える切替部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、一実施形態に係るICカード処理システムの構成例について説明するための図である。
【図2】図2は、一実施形態に係るICカードの構成例について説明するための図である。
【図3】図3は、一実施形態に係る共振部の例について説明するための図である。
【図4】図4は、磁界により誘起される電力について説明するための図である。
【図5】図5は、一実施形態に係る共振部の例について説明するための図である。
【図6】図6は、一実施形態に係る共振部の例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の制御方法について詳細に説明する。
【0013】
本実施形態に係る携帯可能電子装置(ICカード)20及びICカード20を処理する処理装置(端末装置)10は、例えば、ISO/IEC14443などにより規定されている非接触通信の機能を備える。これにより、ICカード20及び端末装置10は、互いにデータの送受信を非接触で行うことができる。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、一実施形態に係るICカード処理システム1の構成例を示す。
ICカード処理システム1は、ICカード20を処理する端末装置10と、ICカード20と、を備える。端末装置10とICカード20とは、上記したように非接触通信により互いに種々のデータを送受信する。
【0015】
端末装置10は、CPU11、ROM12、RAM13、不揮発性メモリ14、送受信部15、共振部16、ロジック部17、上位インターフェース18、及び電源部19を備える。CPU11、ROM12、RAM13、不揮発性メモリ14、送受信部15、共振部16、ロジック部17、及び上位インターフェース18は、それぞれバスを介して互いに接続されている。
【0016】
CPU11は、端末装置10全体の制御を司る制御部として機能する。CPU11は、ROM12又は不揮発性メモリ14に記憶されている制御プログラム及び制御データに基づいて種々の処理を行う。例えば、CPU11は、送受信部15及び共振部16を介してICカード20とコマンド及びレスポンスの送受信を行う。
【0017】
ROM12は、予め制御用のプログラム及び制御データなどを記憶する不揮発性のメモリである。RAM13は、ワーキングメモリとして機能する揮発性のメモリである。RAM13は、CPU11の処理中のデータなどを一時的に格納する。例えば、RAM13は、送受信部15及び共振部16を介して外部の機器と送受信するデータを一時的に格納する。また、RAM13は、CPU11が実行するプログラムを一時的に格納する。
【0018】
不揮発性メモリ14は、例えばEEPROM、FRAMなどを備える。不揮発性メモリ14は、例えば、制御用のプログラム、制御データ、アプリケーション、及びアプリケーションに用いられるデータなどを記憶する。
【0019】
送受信部15及び共振部16は、ICカード20と通信を行うためのインターフェース装置である。
【0020】
送受信部15は、共振部16により送受信するデータに対して信号処理を施す。例えば、送受信部15は、符号化、復号、変調、及び復調を行なう。送受信部15は、符号化及び変調を施したデータを共振部16に供給する。
【0021】
共振部16は、例えば所定の共振周波数を有するアンテナを有する。共振部16は、送受信部15から供給されるデータに応じて磁界を発生させる。これにより、端末装置10は、通信可能範囲に存在するICカード20に対してデータを非接触で送信することができる。
【0022】
また、共振部16は、磁界を検知し、検知した磁界に応じてデータを生成する。これにより、共振部16は、データを非接触で受信することができる。共振部16は、受信したデータを送受信部15に供給する。送受信部15は、共振部16により受信したデータに対して復調及び復号を行う。これにより、端末装置10は、ICカード20から送信された元のデータを取得することができる。
【0023】
ロジック部17は、所定の演算処理を行う。例えば、ロジック部17は、CPU11の制御に基づいて、データの暗号化、復号、及び乱数生成などの演算処理を行う。
【0024】
上位インターフェース18は、上位端末と通信するためのインターフェースである。上位端末は、例えば操作部及び表示部などを備える。操作部は、例えば操作キーなどを備え、操作者により入力される操作に基づいて、操作信号を生成する。表示部は、種々の情報を表示する。上位インターフェース18は、上位端末からデータを受け取り、CPU11に伝送する。また、上位インターフェース18は、送受信部15及び共振部16によりICカード20から取得したデータを上位端末に伝送する構成であってもよい。
【0025】
電源部19は、端末装置10の各部に電力を供給する。
【0026】
図2は、一実施形態に係るICカード20の構成例を示す。
図2に示すように、ICカード20は、例えば、矩形状の本体21と、本体21内に内蔵されたICモジュール22とを備える。ICモジュール22は、ICチップ23と、共振部24とを備える。ICチップ23と共振部24とは、互いに接続された状態でICモジュール22内に形成されている。
【0027】
なお、本体21は、少なくとも共振部24が配設されるICモジュール22を設置可能な形状であれば、矩形状に限らず如何なる形状であっても良い。
【0028】
ICチップ23は、CPU25、ROM26、RAM27、不揮発性メモリ28、整流部29、送受信部30、電源部31、電圧検知部32、及びロジック部33などを備える。CPU25、ROM26、RAM27、不揮発性メモリ28、整流部29、送受信部30、電源部31、電圧検知部32、及びロジック部33は、バスを介して互いに接続されている。
【0029】
共振部24は、端末装置(外部機器)10の共振部16と通信を行うためのインターフェースである。共振部24は、例えば、ICモジュール22内に所定の形状で配設される金属線により構成されるアンテナを備える。
【0030】
アンテナは、例えば、エッチングにより薄型基板(例えばPETなど)に形成されるアンテナコイルを備える。また、アンテナコイルは、導電性のワイヤーを巻き線形状に形成されたものであってもよい。また、共振部24は、静電誘導により電気を蓄える共振コンデンサを有する。共振コンデンサは、アンテナコイルと並列に接続される。この場合、アンテナコイルと共振コンデンサによりLC共振回路が形成される。
【0031】
アンテナコイルのインダクタンスをL、コンデンサの静電容量をCとする場合、LC共振回路の共振周波数fは、次の数式1により表される。
【数1】

【0032】
ICカード20は、端末装置10に送信するデータに応じて共振部24に電流を流し、共振部24により磁界を発生させる。これにより、ICカード20は、端末装置10に対してデータを送信することができる。また、ICカード20は、電磁誘導によりアンテナに発生する誘導電流に基づいて端末装置10から送信されるデータを認識する。
【0033】
CPU25は、ICカード20全体の制御を司る制御部として機能する。CPU25は、ROM26あるいは不揮発性メモリ28に記憶されている制御プログラム及び制御データに基づいて種々の処理を行う。例えば、端末装置10から受信したコマンドに応じて種々の処理を行い、処理結果としてのレスポンスなどのデータの生成を行なう。
【0034】
ROM26は、予め制御用のプログラム及び制御データなどを記憶する不揮発性のメモリである。ROM26は、製造段階で制御プログラム及び制御データなどを記憶した状態でICカード20内に組み込まれる。即ち、ROM26に記憶される制御プログラム及び制御データは、予めICカード20の仕様に応じて組み込まれる。
【0035】
RAM27は、ワーキングメモリとして機能する揮発性のメモリである。RAM27は、CPU25の処理中のデータなどを一時的に格納する。例えば、RAM27は、共振部24を介して端末装置10から受信したデータを一時的に格納する。またRAM27は、共振部24を介して端末装置10に送信するデータを一時的に格納する。またさらに、RAM27は、CPU25が実行するプログラムを一時的に格納する。
【0036】
不揮発性メモリ28は、例えば、EEPROMあるいはフラッシュROMなどのデータの書き込み及び書換えが可能な不揮発性のメモリを備える。不揮発性メモリ28は、ICカード20の運用用途に応じて制御プログラム及び種々のデータを格納する。
【0037】
たとえば、不揮発性メモリ28では、プログラムファイル及びデータファイルなどが創成される。創成された各ファイルには、制御プログラム及び種々のデータなどが書き込まれる。CPU25は、不揮発性メモリ28、または、ROM26に記憶されているプログラムを実行することにより、種々の処理を実現することができる。
【0038】
整流部29は、共振部24により受信した電力波を整流する。整流部29は、例えば、ダイオードブリッジを備える。ダイオードブリッジは、共振部24のアンテナコイルの両端に発生した電力波を全波整流、または半波整流する。整流部29は、整流した電力(信号)を送受信部30、及び電源部31に供給する。
【0039】
送受信部30は、端末装置10に送信するデータに対して符号化、負荷変調などの信号処理を行う。例えば、送受信部30は、端末装置10に送信するデータの変調(増幅)を行う。送受信部30は、信号処理を施したデータを共振部24に整流部29を介して送信する。
【0040】
また、送受信部30は、共振部24により受信する信号に対して復調、及び復号を行う。例えば、送受信部30は、共振部24により受信する信号の解析を行う。これにより、送受信部30は、2値の論理データを取得する。送受信部30は、解析したデータをCPU25にバスを介して送信する。
【0041】
電源部31は、共振部24により受け取られた電波(例えばキャリア波)に基づいて電力を生成する。即ち、電源部31は、整流部29の出力電圧をコンデンサにより平滑化することにより、安定な直流電圧を生成する。さらに、電源部31は、動作クロックを生成する。電源部31は、生成した電力及び動作クロックをICカード20の各部に供給する。ICカード20の各部は、電力の供給を受けた場合、動作可能な状態になる。
【0042】
電源部31は、出力電圧を一定に保つように動作する。電源部31は、例えば、シャントレギュレータなどを備える。即ち、電源部31は、整流部29の出力電圧に因らず、常に一定の値の電圧を出力する。
【0043】
電圧検知部32は、整流部29の出力電圧を検知する。電圧検知部32は、予め設定される電圧レベル(基準電圧値)を記憶する。電圧検知部32は、検知した整流部29の出力電圧と、記憶している電圧レベルとを比較する。電圧検知部32は、検知した整流部29の出力電圧が記憶している電圧レベル以上である場合、CPU25に警告信号(割り込み信号)を送信する。
【0044】
ロジック部33は、演算処理をハードウエアにより行う演算部である。例えば、ロジック部33は、端末装置10からのコマンドに基づいて、暗号化、復号、及び乱数の生成などの処理を行う。例えば、端末装置10から相互認証コマンドを受信する場合、ロジック部33は、乱数を生成し、生成した乱数をCPU25に伝送する。
【0045】
共振部24は、アンテナコイルの受信効率を変える機能を有する。これにより、共振部24は、端末装置10から受け取る磁界に応じて誘起する電力波を調整することができる。
【0046】
CPU25は、電圧検知部32から警告信号を受信する場合、共振部24のアンテナコイルの受信効率が低くなるように共振部24を制御する。これにより、共振部24により生成された過電圧がICチップ23に流れることを防ぐことができる。
【0047】
図3は、第1の実施形態に係る共振部24の例を示す。
共振部24は、アンテナコイルL1、アンテナコイルL2、スイッチSW1、スイッチSW2、及びアンテナコイルと並列に接続される共振コンデンサC1を備える。共振部24の出力端子は、整流部29に接続されている。整流部29の出力端子は、アースと、後段の送受信部30、電源部31、及び電圧検知部32に接続されている。なお、整流部29の出力端子とアースとの間には、整流部29の出力電圧を平滑化するコンデンサC2が接続されている。
【0048】
アンテナコイルL1及びL2は、それぞれ独立したアンテナコイルである。アンテナコイルL1は、アンテナコイルL2に対して、例えば、アンテナコイルのループの面積が大きい。この為、アンテナコイルL1は、アンテナコイルL2に対して、電波の受信効率が高い。
【0049】
スイッチSW1及びスイッチSW2(スイッチSWと称する)は、例えば、トランジスタなどの半導体を備える。スイッチSW1は、入力端子A1、入力端子B1及び出力端子O1を備える。また、スイッチSW2は、入力端子A2、入力端子B2及び出力端子O2を備える。出力端子O1及び出力端子O2は、それぞれ共振部24の出力端子に接続されている。なお、スイッチSWは、CPU25の制御に基づいて連動して動作する。
【0050】
スイッチSW1の入力端子A1は、アンテナコイルL1の一端に接続されている。また、スイッチSW2の入力端子A2は、アンテナコイルL1の他方の一端に接続されている。
【0051】
スイッチSW1の入力端子B1は、アンテナコイルL2の一端に接続されている。また、スイッチSW2の入力端子B2は、アンテナコイルL2の他方の一端に接続されている。
【0052】
即ち、スイッチSW1の及びスイッチSW2において、出力端子O1及びO2と、入力端子A1及びA2とがそれぞれ接続される場合、整流部29にアンテナコイルL1が接続される。
【0053】
また、スイッチSW1の及びスイッチSW2において、出力端子O1及びO2と、入力端子B1及びB2とがそれぞれ接続される場合、整流部29にアンテナコイルL2が接続される。
【0054】
即ち、共振部24は、CPU25の制御に基づいてスイッチSWを切り替えることにより、整流部29に接続されるアンテナコイルを受信効率の高いアンテナコイルL1と受信効率の低いアンテナコイルL2とで切り替えることができる。CPU25は、電圧検知部32から警告信号を受信する場合、出力端子O1及びO2と、入力端子B1及びB2とがそれぞれ接続されるようにスイッチSW1の及びスイッチSW2を制御する。
【0055】
ICカード20は、初期状態において、整流部29とアンテナコイルL1とが接続されるようにスイッチSWを制御する。アンテナコイルL1は、ICカード20と端末装置10の共振部16とが所定距離である場合に、共振部16と良好な通信を実現する為に最適なアンテナ面積、及び巻き数で構成される。例えば、ICカード20と共振部16との距離が上記の所定距離より近づく場合、ICカード20により大きな磁界が印加される。これにより、ICカード20に過電圧が発生する。
【0056】
図4は、ICカード20と端末装置10の共振部16との距離と電圧との関係について示す。
図4に示されるように、ICカード20は、端末装置10の共振部16と距離r離隔された位置に存在する。ICカード20の共振部24のアンテナコイルの中心を点Dとする。
【0057】
また、図4に示されるように、端末装置10の共振部16のアンテナコイルは、半径aであり、且つ巻き数がNである。ここで、共振部16のアンテナコイルに電流Iが流される場合、点Dに印加される磁界の磁界強度Hは、次の数式2により表される。
【数2】

【0058】
ここで、ICカード20の共振部24のアンテナコイルの面積をSとし、共振部24のアンテナコイルの巻き数をMとし、端末装置10の共振部16から発せられる磁界の周波数をfとする。この場合、ICカード20の共振部24のアンテナコイルの端部に発生する電圧Vは、次の数式3により表される。
【数3】

【0059】
なお、数式3のμは、透磁率(μ=4π×10−7)を示す。
【0060】
数式3に示したように、D点においてICカード20のアンテナコイルの端部に発生する電圧Vは、アンテナコイルの巻き数、及び1ループ当たりの面積に比例する。この為、共振部は、整流部29に接続されるアンテナコイルを、面積Sの大きなアンテナコイルL1から面積Sの小さなアンテナコイルL2に切り替えることにより、整流部29の出力電圧を下げる事ができる。
【0061】
強い磁界がICカード20に印加され、過電圧がアンテナコイルにより生成された場合、整流部29から出力され、電源部31に入力する電圧の値が増加する。しかし、上記したように、ICカード20の電源部31は、出力電圧を一定に保つように動作する。電源部31の入出力電圧の電位差が大きい場合、電位差に応じて発熱量が増大する。この為、電源部31が破壊される場合がある。電源部31が破壊された場合、過電圧が後段の各ユニットに印加され、過電圧が各ユニットに悪影響を与える可能性がある。
【0062】
しかし、上記したように、電圧検知部32は、整流部29の出力電圧を検知する。電圧検知部32は、予め設定される電圧レベル以上の電圧を検知した場合、CPU25に警告信号を送信する。CPU25は、電圧検知部32から警告信号を受信する場合、共振部24のアンテナコイルの受信効率が低くなるように共振部24のスイッチSWを制御する。これにより、ICカード20は、電波の受信効率を下げる。これにより、ICカード20は、整流部29から出力される出力電圧の値を下げることが出来る。この結果、ICカード20は、共振部24により生成された過電圧がICチップ23に流れることを防ぐことができる。
【0063】
上記の実施形態によると、より安定して動作する携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の制御方法を提供することができる。
【0064】
なお、上記の実施形態では、共振部24がスイッチSWを備える構成として説明したが、この構成に限定されない。スイッチSWは、ICチップ23内に構成されてもよい。
【0065】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る共振部24の例を示す。なお、共振部24以外の構成は、第1の実施形態と同様の構成である為、同じ参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0066】
共振部24は、アンテナコイルL3、アンテナコイルL4、スイッチSW、及びアンテナコイルと並列に接続される共振コンデンサC1を備える。
【0067】
アンテナコイルL3及びL4は、直列に接続されたアンテナコイルである。アンテナコイルL3は、アンテナコイルL4より巻き数が多い、及び/又は、1ループ当たりの面積が大きい。また、アンテナコイルL3は、アンテナコイルL4とコイルの巻き方向が逆方向である。
【0068】
即ち、アンテナコイルL3は、アンテナコイルL4より、受信効率が高い。さらに、アンテナコイルL3を流れる電流の向きは、アンテナコイルL4を流れる電流の向きと逆方向である。この為、アンテナコイルL3及びアンテナコイルL4が直列に接続される場合、アンテナコイルL3に発生する磁束の向きは、アンテナコイルL4に発生する磁束の向きと逆方向である。
【0069】
ICカード20は、初期状態において、整流部29とアンテナコイルL3とが接続されるようにスイッチSWを制御する。なお、アンテナコイルL3は、ICカード20と端末装置10の共振部16とが所定距離である場合に、共振部16と良好な通信を実現する為に最適なアンテナ面積、及び巻き数で構成される。
【0070】
アンテナコイルL3の一端は、整流部29の入力端子に接続されている。また、スイッチSWの入力端子Aは、アンテナコイルL3の他方の一端と、アンテナコイルL4の一端に接続されている。またさらに、スイッチSWの入力端子Bは、アンテナコイルL4の他方の一端に接続されている。
【0071】
即ち、スイッチSWにおいて、出力端子Oと、入力端子Aとが接続される場合、整流部29にアンテナコイルL3が接続される。
【0072】
また、スイッチSWにおいて、出力端子Oと、入力端子Bとが接続される場合、整流部29にアンテナコイルL3及びアンテナコイルL4が直列に接続される。
【0073】
ここで、アンテナコイルL3に誘導電流が流れることにより発生する磁界をH3とし、アンテナコイルL4に誘導電流が流れることにより発生する磁界をH4とする。上記したように、この磁界H3と磁界H4とは、互いに逆の向きの磁界である。また、アンテナコイルL3の受信効率がアンテナコイルL4の受信効率より高い為、磁界H3は、磁界H4より磁界の強度が強い。この場合、実質的に共振部24に印加される磁界は、磁界H3から磁界H4を引いた強さとなる。
【0074】
即ち、スイッチSWにおいて、出力端子Oと、入力端子Aとが接続される場合、共振部24に印加される磁界は、磁界H3である。また、スイッチSWにおいて、出力端子Oと、入力端子Bとが接続される場合、共振部24に印加される磁界は、磁界H3−H4である。
【0075】
即ち、共振部24は、CPU25の制御に基づいてスイッチSWを切り替えることにより、整流部29に接続されるアンテナコイルの受信効率を下げることができる。CPU25は、電圧検知部32から警告信号を受信する場合、出力端子Oと、入力端子Bとがそれぞれ接続されるようにスイッチSWを制御する。
【0076】
この場合、共振部24は、スイッチSWを切り替えることにより、整流部29の出力電圧を下げる事ができる。
【0077】
上記したように、電圧検知部32は、整流部29の出力電圧を検知する。電圧検知部32は、予め設定される電圧レベル以上の電圧を検知した場合、CPU25に警告信号を送信する。CPU25は、電圧検知部32から警告信号を受信する場合、共振部24のアンテナコイルの受信効率が低くなるように共振部24のスイッチSWを制御する。これにより、ICカード20は、整流部29から出力される出力電圧の値を下げることが出来る。この結果、ICカード20は、共振部24により生成された過電圧がICチップ23に流れることを防ぐことができる。
【0078】
上記の実施形態によると、より安定して動作する携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の制御方法を提供することができる。
【0079】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態に係る共振部24の例を示す。なお、共振部24以外の構成は、第1の実施形態と同様の構成である為、同じ参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0080】
共振部24は、アンテナコイルL5、アンテナコイルL6、スイッチSW、及びアンテナコイルと並列に接続される共振コンデンサC1を備える。
【0081】
アンテナコイルL5及びL6は、直列に接続されたアンテナコイルである。アンテナコイルL5は、1ループあたりの面積がアンテナコイルL6と同等であり、且つ、コイルの巻き方が同じである。なお、アンテナコイルL5及びアンテナコイルL6の巻き数は如何なる値であってもよい。
【0082】
ICカード20は、初期状態において、整流部29にアンテナコイルL5及びアンテナコイルL6が直列に接続されるようにスイッチSWを制御する。なお、アンテナコイルL5及びアンテナコイルL6は、アンテナコイルL5とアンテナコイルL6とが直列接続され、且つICカード20と端末装置10の共振部16とが所定距離である場合に、共振部16と良好な通信を実現する為に最適なアンテナ面積、及び巻き数で構成される。
【0083】
アンテナコイルL5の一端は、整流部29の入力端子に接続されている。また、アンテナコイルL5の他方の一端は、アンテナコイルL6の一端と、スイッチSWの入力端子Bとに接続されている。またさらに、スイッチSWの入力端子Bは、アンテナコイルL6の他方の一端に接続されている。
【0084】
即ち、スイッチSWにおいて、出力端子Oと、入力端子Aとが接続される場合、整流部29にアンテナコイルL5及びアンテナコイルL6が直列に接続される。
【0085】
また、スイッチSWにおいて、出力端子Oと、入力端子Bとが接続される場合、整流部29にアンテナコイルL5が直列に接続される。
【0086】
共振部24は、スイッチSWにより、整流部29に接続されるアンテナコイルの巻き数を、アンテナコイルL5+L6の巻き数からアンテナコイルL5の巻き数に減らすことができる。
【0087】
即ち、共振部24は、CPU25の制御に基づいてスイッチSWを切り替えることにより、整流部29に接続されるアンテナコイルの受信効率下げることができる。CPU25は、電圧検知部32から警告信号を受信する場合、出力端子Oと、入力端子Bとがそれぞれ接続されるようにスイッチSWを制御する。
【0088】
この場合、共振部24は、スイッチSWを切り替えることにより、整流部29の出力電圧を下げる事ができる。
【0089】
上記したように、電圧検知部32は、整流部29の出力電圧を検知する。電圧検知部32は、予め設定される電圧レベル以上の電圧を検知した場合、CPU25に警告信号を送信する。CPU25は、電圧検知部32から警告信号を受信する場合、共振部24のアンテナコイルの受信効率が低くなるように共振部24のスイッチSWを制御する。これにより、ICカード20は、整流部29から出力される出力電圧の値を下げることが出来る。この結果、ICカード20は、共振部24により生成された過電圧がICチップ23に流れることを防ぐことができる。
【0090】
上記の実施形態によると、より安定して動作する携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の制御方法を提供することができる。
【0091】
なお、上述の各実施の形態で説明した機能は、ハードウエアを用いて構成するに留まらず、ソフトウエアを用いて各機能を記載したプログラムをコンピュータに読み込ませて実現することもできる。また、各機能は、適宜ソフトウエア、ハードウエアのいずれかを選択して構成するものであっても良い。
【0092】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0093】
L1乃至L6…アンテナコイル、C1…共振コンデンサ、C2…コンデンサ、SW…スイッチ、A…入力端子、B…入力端子、O…出力端子、1…ICカード処理システム、10…端末装置、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…不揮発性メモリ、15…送受信部、16…共振部、17…ロジック部、18…上位インターフェース、19…電源部、20…ICカード、21…本体、22…ICモジュール、23…ICチップ、24…共振部、25…CPU、26…ROM、27…RAM、28…不揮発性メモリ、29…整流部、30…送受信部、31…電源部、32…電圧検知部、33…ロジック部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部機器と非接触通信を行う携帯可能電子装置であって、
第1の受信効率と第2の受信効率とのいずれかの受信効率を用いて前記外部機器から発せられる電波を受信し、電圧を生成する共振部と、
前記共振部により生成された前記電圧を整流する整流部と、
前記整流部により整流された前記電圧の値を検知し、この検知された電圧値が予め設定された基準電圧値以上であるかを判断する電圧検知部と、
前記電圧検知部の判断結果基づいて、前記共振部の受信効率を前記第1の受信効率と前記第2の受信効率とで切り替える切替部と、
を具備する携帯可能電子装置。
【請求項2】
前記第1の受信効率は、前記第2の受信効率に比べて電波の受信効率が高く、
前記切替部は、前記電圧検知部により検知された前記電圧値が前記基準値以上である場合、前記共振部の受信効率を前記第2の受信効率に切り替える、
請求項1に記載の携帯可能電子装置。
【請求項3】
前記共振部は、
受信効率が前記第1の受信効率である第1のアンテナコイルと、
受信効率が前記第2の受信効率である第2のアンテナコイルと、
を具備し、
前記切替部は、前記電圧検知部により検知された前記電圧値が前記基準値未満である場合、前記整流部に前記第1のアンテナコイルを接続し、前記電圧検知部により検知された前記電圧値が前記基準値以上である場合、前記整流部に前記第2のアンテナコイルを接続する、
請求項2に記載の携帯可能電子装置。
【請求項4】
前記共振部は、
受信効率が第3の受信効率である第3のアンテナコイルと、
受信効率が第4の受信効率であり、且つアンテナコイルの巻き方向が前記第3のアンテナコイルと逆方向である第4のアンテナコイルと、
を具備し、
前記切替部は、前記電圧検知部により検知された前記電圧値が前記基準値未満である場合、前記整流部に前記第3のアンテナコイルを接続し、前記電圧検知部により検知された前記電圧値が前記基準値以上である場合、前記整流部に前記第3のアンテナコイルと前記第4のアンテナコイルとを直列に接続する、
請求項2に記載の携帯可能電子装置。
【請求項5】
前記共振部は、
受信効率が第5の受信効率である第5のアンテナコイルと、
受信効率が第6の受信効率であり、且つアンテナコイルの巻き方向が前記第5のアンテナコイルと同じ方向である第6のアンテナコイルと、
を具備し、
前記切替部は、前記電圧検知部により検知された前記電圧値が前記基準値未満である場合、前記整流部に前記第5のアンテナコイルと前記第6のアンテナコイルとを直列に接続し、前記電圧検知部により検知された前記電圧値が前記基準値以上である場合、前記整流部に前記第5のアンテナコイルを接続する、
請求項2に記載の携帯可能電子装置。
【請求項6】
前記電圧検知部は、前記整流部により整流された前記電圧の値が予め設定された基準電圧値以上である場合、警告信号を出力し、
前記切替部は、前記電圧検知部により前記警告信号が出力されたか否かに基づいて、前記共振部の受信効率を前記第1の受信効率と前記第2の受信効率とで切り替える、
請求項2に記載の携帯可能電子装置。
【請求項7】
前記各部を備えるICモジュールと、
前記ICモジュールが配設される本体と、
を具備する請求項1に記載の携帯可能電子装置。
【請求項8】
外部機器と非接触通信を行う携帯可能電子装置の制御方法であって、
第1の受信効率と第2の受信効率とのいずれかの受信効率を用いて前記外部機器から発せられる電波を受信し、電圧を生成し、
生成された前記電圧を整流し、
整流された前記電圧の値を検知し、この検知された電圧値が予め設定された基準電圧値以上であるか否かを判断し、
検知された前記電圧値が前記基準値以上であるか否かに基づいて、前記受信効率を前記第1の受信効率と前記第2の受信効率とで切り替える、
携帯可能電子装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−194917(P2012−194917A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59823(P2011−59823)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】