説明

携帯可能電子装置

【課題】ICチップの破損を抑制できる携帯可能電子装置を提供する。
【解決手段】携帯可能電子装置は、基板11と、基板11に対向配置されたICチップ16と、基板11及びICチップ16間に介在され、基板11及びICチップ16を接合する第1接着剤18と、ICチップ16に対して基板11の反対側に配置された補強板20と、ICチップ16及び補強板20間に介在され、第1接着剤18より低い弾性率を有し、ICチップ16及び補強板20を接合する第2接着剤19と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯可能電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ICカードとして、接触通信の機能を有する接触式ICカード、非接触通信(無線通信)の機能を有する非接触式ICカード(無線ICカード)、並びに接触通信及び非接触通信の双方の機能を有するデュアルインターフェイスICカードが知られている。デュアルインターフェイスICカードとしては、接触通信及び非接触通信を1つのICで処理するコンビICカードと、接触通信及び非接触通信を個々のICで処理するハイブリッドICカードとに分類される。
【0003】
例えば、非接触式ICカードは、カード型のインレットを備えている。インレットは、基板と、基板上に形成された電極パターンと、ICチップとを有している。インレットを備えたICカードは、外部の通信装置との間で、非接触通信を行うことができる。
【0004】
ICチップは、フリップチップ実装技術を用いて基板上に実装されている。フリップチップ実装技術は、ICチップに備えられた突起電極(バンプ)を基板上に形成された電極パターンに対向させて、突起電極及び電極パターンを電気的に接続する技術である。
【0005】
フリップチップ実装技術を用いた接続工法として、例えば熱圧着工法が知られている。熱圧着工法は、ICチップの突起電極と基板上の電極パターンとを、導電性の接着剤を介して貼り合せた後、ICチップの上方より熱と荷重を加え、接着剤を硬化させる。これにより、基板及び電極パターンと、ICチップとが接合され、電極パターンと突起電極とが電気的に接続されて回路が形成される。すなわち、1回の圧着により、物理的な接合と、電気的な接続とが同時に行われる。
【0006】
インレットは、接着剤を介してICチップと接合された補強板をさらに備えている。補強板は、インレットの機械的強度を補強するものである。補強板を用いた場合、補強板を用いない場合に比べ、応力が加わることによりICチップに発生する亀裂や割れの抑制を図るものである。基板及びICチップ間に介在する接着剤、並びにICチップ及び補強板間に介在する接着剤は、それぞれ高い弾性率を有している。
【0007】
一方、収納用凹部を有したカード基材と、収納用凹部に収納されたICモジュールと、を有したICカードが知られている(例えば、特許文献1参照)。ICモジュールをカード基材に接合するための接着剤は低い弾性率を有し、接着剤は応力を吸収できるため、ICモジュール(ICチップ)に発生する亀裂や割れを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3529420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ICモジュールは、収納用凹部に収納され接着剤にてカード基材に接合されることにより、亀裂や割れの発生を抑制することができるが、ICモジュール単体で輸送された場合などを考えると、亀裂や割れの発生を抑制することができない問題がある。
【0010】
また、ICモジュールとしての上記インレットでは、単体で、亀裂や割れの発生の抑制を図る構成ではあるものの、上記各接着剤の弾性率は高い。このため、補強板に応力が加わった場合、応力がほとんど吸収されることなく接着剤及びICチップの順に伝わるため、ICチップに亀裂や割れが発生する恐れがある。
【0011】
そこで、補強板に加わる応力を接着剤にて吸収し、ICチップに発生する亀裂や割れを抑制するため、上記各接着剤を弾性率の低い接着剤とすることが考えられる。しかしながら、この場合、バルク破壊が起こり、突起電極が電極パターンから外れ、ICカードとしての機能(無線通信機能等)が失われる恐れがある。
【0012】
今後は、さらなるICチップの小型化及び薄型化が図られる傾向にあるため、一層ICチップに亀裂や割れが発生することが考えられる。このため、ICチップの破損を抑制できるICモジュールや、ICカード等が求められている。
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、ICチップの破損を抑制できる携帯可能電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の態様に係る携帯可能電子装置は、
基板と、
前記基板に対向配置されたICチップと、
前記基板及びICチップ間に介在され、前記基板及びICチップを接合する第1接着剤と、
前記ICチップに対して前記基板の反対側に配置された補強板と、
前記ICチップ及び補強板間に介在され、前記第1接着剤より低い弾性率を有し、前記ICチップ及び補強板を接合する第2接着剤と、を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、ICチップの破損を抑制できる携帯可能電子装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係るICカードを示す分解斜視図である。
【図2】上記ICカードの一部を示す断面図である。
【図3】上記ICカードを裏面側から見た平面図である。
【図4】上記ICカードの製造工程において、加圧/加熱処理部により、基板に図1乃至図3に示したICチップを熱圧着する状態を示す断面図である。
【図5】図4に示したICカードの製造工程において、基板にICチップが熱圧着された状態を示す平面図である。
【図6】図4に示したICカードの製造工程に続く、ICチップ及び基板に補強板を熱圧着する状態を示す断面図である。
【図7】図4に示したICカードの製造工程に続く、作製されたインレット及びインレットの両面に配置されたプラスチックシートに熱プレスを施す状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながらこの発明に係る携帯可能電子装置を、ICカードに適用した実施の形態について詳細に説明する。この実施の形態において、ICカードは非接触式ICカードである。
【0017】
図1、図2及び図3に示すように、ICカード1は、ICモジュールとしてのインレット2及び2枚のオーバレイシート3を備えている。インレット2は、基板11と、電極パターン12と、アンテナコイル15と、ICチップ16と、導電性の第1接着剤18と、第2接着剤19と、補強板20と、を備えている。
【0018】
基板11は、カード型に形成されている。基板11は、PET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、PVC(ポリ塩化ビニル)、紙等の絶縁材で形成されている。電極パターン12は基板11上に形成されている。
【0019】
アンテナコイル15は、図示しない通信装置との間で無線通信するためのものである。アンテナコイル15は、基板11上に形成されている。アンテナコイル15の一端は1つの電極パターン12に接続され、アンテナコイル15の他端は他の1つの電極パターン12に接続されている。
【0020】
この実施の形態において、電極パターン12及びアンテナコイル15は、同一の導電材料で一体に形成されている。ここでは、電極パターン12及びアンテナコイル15は、アルミニウムで形成されている。
【0021】
ICチップ16は、基板11上に搭載されている。この実施の形態において、ICチップ16は、LSI(large scale integrated circuit)のICチップである。ICチップ16の厚みは、50μm乃至100μmである。ICチップ16は、突起電極(バンプ)17を有している。突起電極17は、ICチップ16の一面側の4つの角部に設けられている。突起電極17は、電極パターン12に対向して位置している。
【0022】
第1接着剤18は、基板11及び電極パターン12上に塗布され、基板11及びICチップ16間に介在されている。第1接着剤18は、ICチップ16の外縁を越えて形成されている。
【0023】
ICチップ16は、第1接着剤18により、基板11及び電極パターン12に接合されている。図示しないが、電極パターン12及び突起電極17は、第1接着剤18中に分散された導電粒子を介して電気的に接続されている。この接続により回路が形成され、アンテナコイル15を介して非接触で外部との通信を行うことが可能となっている。
【0024】
補強板20は、ICチップ16に対して基板11の反対側に配置されている。補強板20のサイズは、ICチップ16より大きい。補強板20は、インレット2の機械的強度を補強するものである。
【0025】
第2接着剤19は、ICチップ16上に塗布され、ICチップ16及び補強板20間に介在されている。第2接着剤19は、補強板20の外縁を越えて形成されている。補強板20は、第2接着剤19により、基板11、電極パターン12、第1接着剤18及びICチップ16に接合されている。
【0026】
ここで、第2接着剤19は、第1接着剤18より低い弾性率を有している。第1接着剤18の弾性率は、3000MPa以上であり、第2接着剤19の弾性率は、10MPa以下である。第1接着剤18は、硬化後の弾性率が高い高弾性接着剤を塗布することにより形成されている。第2接着剤19は、硬化後の弾性率が低い低弾性接着剤を塗布することにより形成されている。
上記のようにインレット2が形成されている。
【0027】
2枚のオーバレイシート3は、インレット2の両面を覆っている。オーバレイシート3は、絶縁材として、例えばプラスチックで形成されている。インレット2及び2枚のオーバレイシート3は、例えば、熱プレス等により溶着されている。
上記のように、ICカード1が形成されている。
【0028】
ICカード1は、通信装置のアンテナを介して供給される磁力線をアンテナコイル15を介して受信して電力に変換し、この電力によってICチップ16のCPUを動作させ、残りの電力で通信装置にレスポンスを返す。このように、このICカード1は、非接触により通信装置との間でデータ通信を行なう。
【0029】
次に、上記ICカード1の製造方法について説明する。
図4及び図5に示すように、まず、アルミニウム箔が貼り付けられた基板11を用意する。ここでは、図示しない樹脂付きアルミニウム箔が貼り付けられた基板11を用意する。そして、電極パターン12の厚みに等しい厚みを有したアルミニウム箔を用いた。
【0030】
次いで、フォトエッチング工法を用い、アルミニウム箔を選択的にエッチング除去することにより、アルミニウム箔がパターニングされる。すなわち、アルミニウム箔の一部が除去されることにより、電極パターン12及びアンテナコイル15が形成される。なお、電極パターン12及びアンテナコイル15は、一般に知られた製造方法にて形成されていれば良い。
【0031】
続いて、基板11及び電極パターン12上に、導電性の高弾性接着剤を塗布する。その後、ICチップ16の突起電極17を電極パターン12に対向させ、ICチップ16を基板11及び電極パターン12に貼り付ける。
【0032】
その後、ICチップ16が貼り付けられた基板11を加圧/加熱処理部30に搬送し、基板11を加圧/加熱処理部30の受け台31上に載置する。続いて、ICチップ16に対向した加圧/加熱処理部30の処理ヘッド32を降下させ、ICチップ16をその上部側から押圧するとともに加熱する。
【0033】
これにより、ICチップ16の突起電極17が電極パターン12に押し付けられ、高弾性接着剤が硬化される。硬化した高弾性接着剤は、弾性率が高い第1接着剤18となる。ICチップ16は、第1接着剤18により基板11及び電極パターン12に接合される。突起電極17は、第1接着剤18中に分散された導電粒子を介して電極パターン12に電気的に接続される。1回の熱圧着工法により、物理的な接合と、電気的な接続とが同時に行われる。
【0034】
図6に示すように、次いで、ICチップ16上に、低弾性接着剤を塗布する。その後、補強板20をICチップ16に対向させ、補強板20をICチップ16に貼り付ける。
【0035】
続いて、補強板20が貼り付けられた基板11を加圧/加熱処理部30に搬送し、基板11を加圧/加熱処理部30の受け台31上に載置する。続いて、補強板20に対向した加圧/加熱処理部30の処理ヘッド32を降下させ、補強板20をその上部側から押圧するとともに加熱する。
【0036】
これにより、補強板20がICチップ16に押し付けられ、低弾性接着剤が硬化される。硬化した低弾性接着剤は、弾性率が低い第2接着剤19となる。補強板20は、第2接着剤19により基板11、電極パターン12、ICチップ16及び第1接着剤18に接合される。
上記の工程により、インレット2が作製される。
【0037】
その後、図7に示すように、作製したインレット2の両面に、それぞれプラスチックシートを配置する。次いで、積層構造のインレット2及びプラスチックシートに熱プレスを施す。これにより、インレット2及びプラスチックシートが溶着される。プラスチックシートは、オーバレイシート3となる。
上記の工程により、ICカード1が完成する。
【0038】
以上のように構成されたICカード1によれば、インレット2は、基板11と、基板11に対向配置されたICチップ16と、基板11及びICチップ16間に介在され、基板11及びICチップ16を接合する第1接着剤18と、ICチップ16に対して基板11の反対側に配置された補強板20と、ICチップ16及び補強板20間に介在され、ICチップ16及び補強板20を接合する第2接着剤19と、を備えている。
【0039】
第2接着剤19は、第1接着剤18より低い弾性率を有している。第2接着剤19は、緩衝材の役割を果たすため、補強板20に応力が加わっても、第2接着剤19により応力を吸収することができ、ICチップ16へ伝わる応力を緩和することができる。このため、ICチップ16に発生する亀裂や割れを抑制することができる。上記の効果は、第2接着剤19の弾性率が、10MPa以下の場合に得ることができる。
【0040】
第1接着剤18は、第2接着剤19より高い弾性率を有している。このため、バルク破壊の発生を抑制することができ、第1接着剤18は、突起電極17及び電極パターン12の接続状態を保持することができる。すなわち、第1接着剤18により、高い電気的接続信頼性を得ることができるため、ICカードとしての機能(無線通信機能等)を維持することができる。上記の効果は、第1接着剤18の弾性率が、3000MPa以上の場合に得ることができる。
【0041】
第2接着剤19は、補強板20の外縁を越えて形成されている。補強板20に応力が加わっても、第2接着剤19により応力をより広範囲に分散させることができるため、ICチップ16への応力の集中を抑制することができる。
上記のことから、ICチップの破損を抑制できるICカード1を得ることができる。
【0042】
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0043】
例えば、電極パターン12及び突出部13は、銅箔等、アルミニウム箔以外の金属箔で形成されても良い。
この発明は、上記ICカード1に限らず、熱圧着工法等のフリップチップ実装技術を用いて製造された各種のICカードに適用することが可能である。また、この発明のICモジュールは、インレットに限らず、各種のICモジュールに適用することが可能である。さらにまた、この発明の携帯可能電子装置は、ICカードに限らず、各種の携帯可能電子装置に適用することが可能である。携帯可能電子装置としては、ICモジュールと、このICモジュールを収納した本体と、を備えた携帯可能電子装置が挙げられる。上記本体としては、例えばICカード本体が挙げられる。
【符号の説明】
【0044】
1…ICカード、2…インレット、3…オーバレイシート、11…基板、12…電極パターン、15…アンテナコイル、16…ICチップ、17…突起電極、18…第1接着剤、19…第2接着剤、20…補強板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に対向配置されたICチップと、
前記基板及びICチップ間に介在され、前記基板及びICチップを接合する第1接着剤と、
前記ICチップに対して前記基板の反対側に配置された補強板と、
前記ICチップ及び補強板間に介在され、前記第1接着剤より低い弾性率を有し、前記ICチップ及び補強板を接合する第2接着剤と、を備えていることを特徴とする携帯可能電子装置。
【請求項2】
前記第1接着剤の弾性率は、3000MPa以上であり、
前記第2接着剤の弾性率は、10MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の携帯可能電子装置。
【請求項3】
前記第2接着剤は、前記補強板の外縁を越えて形成され、前記ICチップを覆い、前記基板に接着されていることを特徴とする請求項1に記載の携帯可能電子装置。
【請求項4】
基板と、前記基板に対向配置されたICチップと、前記基板及びICチップ間に介在され、前記基板及びICチップを接合する第1接着剤と、前記ICチップに対して前記基板の反対側に配置された補強板と、前記ICチップ及び補強板間に介在され、前記第1接着剤より低い弾性率を有し、前記ICチップ及び補強板を接合する第2接着剤と、を具備したICモジュールと、
前記ICモジュールを収納した本体と、を備えていることを特徴とする携帯可能電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−65473(P2011−65473A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216062(P2009−216062)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】