説明

携帯型もしくは身体装着型の骨折治療装置

【目的】前腕の骨折の治療のため、患者に臥床姿勢を強いることなく患者が簡単な日常生活を送ることを可能にしながら、持続牽引療法を行うことができる携帯型もしくは身体装着型の骨折治療装置を提供する。
【構成】患者の前腕の患部が前腕の長手方向に沿うように、前記前腕の患部及びその周辺部に当てられ装着される副木部と、前記副木部を前記患者の上腕に装着する装着部と、前記患者の前腕の患部よりも手側の部分を固定する固定部と、前記副木部に支持されており、前記固定部を前記患者の前腕の患部から前記患者の手側に向かう方向に引くことにより、前記患者の前腕の患部を前記患者の前腕の患部から前記患者の手側に向かう方向に引っ張る、引張り部と、を備えた携帯型もしくは身体装着型の骨折治療装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前腕もしくは手の骨折や脱臼の整復操作および整復後の保持固定などの治療に使用される牽引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、転倒して手をついた際に発生する手関節周辺の骨折は数が多い。近年の高齢化社会で、脆弱性骨折として撓骨遠位端骨折が急増している。これらの骨折の多くはギプスにより治療されている。ギプスによる保存療法は、一回の徒手整復操作で骨片をほぼ元の状態にしなければならない。その整復操作には麻酔がなければ疼痛を伴う。良い整復を得てギプス固定をしても、後日ギプス内で骨折が再転位する場合もある。ギプスは手術をしない保存治療として有効であるが、ギプスによる頻回の整復は、再転位や麻酔などの問題から回避されている。
【0003】
また、手術による治療法は、直接に骨を動かしてほぼ解剖学的状態へ戻すことが可能であるが、手術操作による筋肉などの軟部組織への侵襲は避けられないし、術者の習熟度に拘わらず、血管、腱および神経の損傷を起こす可能性がある。そして、手術は、麻酔などのリスクを伴い、手術瘢痕を残して治療され、しばらくの間は金属などの異物が生体内に残っている。また手術療法は体力の低下した高齢者については避けられる傾向にある。手術は患者に心理的および肉体的なストレスを強いることになり、更に費用負担が問題となる。以上のように、ギプス治療も手術治療も多くの問題点を有している。
【0004】
他方、臥位姿勢による持続牽引療法は、小児の骨折、特に治療が難しいとされる肘関節周辺の骨折や大腿骨骨折の治療に採用されている。例えば、図10に示すように、前腕の骨折に対して患部の指に緊縛具61を取付け、この緊縛具61をロープもしくは紐62を介して重錘63で引くタイプの牽引装置が知られている(牽引方向を略水平方向とするために図10の従来例では滑車64が採用されている)。これらの牽引療法は、整復方向や牽引力を調節することで、良好な成績が期待できる治療方法であり、牽引中は肢位が動かないことから骨折部の疼痛は軽度である。すなわち、これらの牽引療法によるときは、手術療法と比較して、患者に痛みや不安を与えることがなく、リスクが小さく、安価に治療ができるというメリットがある。またギプス治療と比較しても、ギプス治療の場合は骨折部をギプスで覆うので目視で観察することが難しいのに対して、牽引療法によるときは、患部を肉眼で観察することが可能になる、ギプスによる合併症を回避できる、などのメリットがある。
【0005】
この牽引療法の短所は、ベッド柵又はベッドの近傍に、大掛かりな装置と重錘を取付け又は設置し、患者に横臥姿勢を長期間強いる必要があることである。骨癒合の早い小児では合併症の問題は小さいが、高齢者では長期の臥床に伴う筋肉萎縮や関節拘縮そして認知症の発症などの問題を生じさせる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4277106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、臥位姿勢による持続牽引療法は、骨折部の疼痛が少なく、麻酔を必要としないというメリットがある。しかしながら、この持続牽引療法のために従来用いられている錘を使用して牽引力を発生させる牽引装置は、重量が大きいためにベッドサイドに置いて使用する必要があり、患者に臥床姿勢を長期間持続してもらう必要があるため、患者の生活を制限し、特に床上でのトイレなどで患者に大きな精神的な苦痛を与えるものであった。また、従来の牽引装置においては、錘を使用して牽引力を発生させるようにしているので、牽引の方向や牽引力の力加減を細かく調節・設定することができないという問題があった。
【0008】
本発明は以上のような従来技術の課題に着目してなされたものであって、前腕もしくは手の骨折もしくは脱臼に対して、患者に臥床姿勢を強いることなく患者が簡単な日常生活を送ることを可能にしながら、持続牽引療法を行うことができる携帯型もしくは身体装着型の牽引装置を提供することを目的とする。すなわち、本発明は、骨折等の場合に、できる限り手術を回避することができ、患者に麻酔や疼痛を強いることなく整復を行うことができ、良い整復状態を骨癒合に至るまで保持することができる、そしてそのような治療を従来の治療法ではできない快適な生活を送りながら行うことができる、携帯型もしくは身体装着型の牽引装置を提供することを目的とする。また、本発明は、特に、牽引の方向や牽引力の力加減を細かく調節・設定することができる、携帯型もしくは身体装着型の牽引装置を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以上のような課題を解決する本発明による携帯型もしくは身体装着型の牽引装置は、前腕もしくは手の骨折および脱臼の整復のために使用される牽引装置であって、患者の前腕もしくは手の患部以外の部分であって前記患部より患者の遠位部分を、把持もしくは固定する固定部と、前記固定部を、患者の遠位部分の方向又はこれと近似する方向に引っ張る引張り部と、前記引張り部を支持するベース部と、前記ベース部を、患者の上肢の前記患部以外の部分であって前記患部の近位の部分に、固定、装着、若しくは取り付ける装着部と、を備えたことを特徴とするものである。
なお、本明細書において、「患部」とは例えば「骨折部位」である。また、「患部の遠位の部分」とは、心臓(体の中心)から患部より遠方の部分で、患部が前腕なら手首、掌、手の指などの部分である。また「患部の近位の部分」とは、患部より心臓に近い方の部分で、患部が前腕なら肘や上腕などの部分である。また、本明細書において、患者の前腕の患部の遠位の部分は患者の患部より手側もしくは手の指先側の部分と略同義である。また、本明細書において「手」は指も含む。また、本明細書において、前記引張り部は、前腕の掌側及び下方にあるベース部に固定されていてもよい。また、前記ベース部は、シーネ(副木。薄い板状の構造で手足の長軸方向に当てて治療に使うもので、アルミ片かプラスチック片かギプスの1片などで構成される)を兼ねるものであってもよい。
【0010】
また、本発明による携帯型もしくは身体装着型の牽引装置は、前腕もしくは手の骨折もしくは脱臼の整復のために使用される牽引装置であって、患者の前腕もしくは手の患部を引っ張る引張り部と、前記引張り部を支持するベース部と、前記ベース部を、患者の上肢の前記患部以外の部分に固定、装着、若しくは取り付ける装着部と、を備え、前記ベース部は、患者の前記患部よりも近位側の前腕もしくは上腕に、固定、装着、若しくは取り付けられる近位側ベース部と、患者の前記患部よりも遠位側の手首もしくは手に、固定、装着、若しくは取り付けられる遠位側ベース部とにより構成されており、前記引張り部は、一端が前記近位側ベース部に固定されると共に他端が前記遠位側ベース部に固定されており、前記近位側ベース部と前記遠位側ベース部との間を所定の力で伸展させることにより、前記患部を引っ張るものである、ことを特徴とするものである。
なお、骨折部位の遠位側にある遠位側ベース部と、骨折部位の近位側にあって対向牽引として働く近位側ベース部は、同じシーネ上にあり、骨折部位を挟んで力を作用させ、骨折部に対して整復作用を生じるものであってもよい。
【0011】
また、本発明による携帯型もしくは身体装着型の牽引装置においては、前記ベース部または前記ベース部が固定、装着、若しくは取り付けられた患者の上肢を、患者の胴体もしくは肩に、固定、装着もしくは取り付ける取付部を備えた、ことが望ましい。
【0012】
また、本発明による携帯型もしくは身体装着型の牽引装置においては、前記取付部は、患者の体幹の周囲に巻回されて使用され、その表側(患者の体幹と対向する側の反対側)に前記ベース部が固定、装着、若しくは取り付けられているベルトである、ことが望ましい。
【0013】
また、本発明による携帯型もしくは身体装着型の牽引装置においては、前記取付部は、患者の肩に吊り下げ、装着、若しくは取り付けられて使用され、その表側(患者の体幹と対向する側の反対側)に前記ベース部が固定、装着、若しくは取り付けられている肩掛けタイプの身体装着具である、ことが望ましい。
【0014】
また、本発明による携帯型もしくは身体装着型の牽引装置においては、前記引張り部は、前記患部に対する牽引力を調整するために前記患部を引っ張るワイヤもしくは紐の長さを調整する機構を含んでいてもよい。
【0015】
さらに、本発明による携帯型もしくは身体装着型の牽引装置においては、前記引張り部は、前記患部に対する牽引力を調整するための電動機を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、患者に引張り部を支持するベース部と、対向牽引の働きをもつ上肢側のベース部ともに体に装着するようにしたので、患者に一定の体勢を強いることなく牽引が行え、従来の牽引療法の欠点である患者に臥床を強いることを解消させることができる。すなわち、本発明によれば、骨折等の治療のために、患者は普通の日常生活を続けながら牽引療法を行うことができるので、従来の牽引療法のように患者に臥床姿勢を強いることがなくなり、患者はベッドに縛られることがなくなり、治療中も歩行や日常生活を自由に行なえるようになり、患者の筋力や内蔵機能の低下を抑止できるのみならず、高齢者における長期間の臥床による認知症の進行を抑制できるようになる。
【0017】
また、本発明において、前記ベース部もしくは前記ベース部が固定もしくは装着された前腕を、(例えば体幹巻回型のベルトや肩掛け型の装着具などを使用して)患者の胴体もしくは肩に固定、装着もしくは取り付けるようにしたときは、牽引装置全体を体のほぼ同じ所に保つことが可能となる。
【0018】
また、本発明において、前記のベース部を介して携帯もしくは身体装着される引張り部に、前記患部に対する牽引力を調整するために前記患部を引っ張るワイヤもしくは紐の長さを調整する機構(ウインチなど)、又は前記患部に対する牽引力を調整するための電動機、を含むようにしたときは、従来の牽引装置のように錘を使用しないため装置全体を軽量化・小型化でき、患部に対する牽引の方向や牽引力の力加減も細かく正確に調整・設定できるようになる。特に引張り部の力源として錘を使わないようにしたときは、患者が自らの上肢に本装置を取付けて牽引療法を行う際に、本装置の向きが変わっても牽引力が変化することが無くなり、患部に過大な力が加わったり治療に悪影響を与えることが少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1による携帯型もしくは身体装着型の牽引装置を説明するための図で、患者の上方から見たときの状態を示す図である。
【図2】図1の装置を患者の前方から見たときの状態を示す概略図である。
【図3】本実施例1を装着した患者の様子を示す概略図である。
【図4】本実施例1の変形例であって引張り部に複数のウインチを採用した例を説明するための図である。
【図5】本実施例1の変形例であって、牽引力の方向変換のために、滑車を用いずに、内周面が低摩擦のプラスチックで形成されているチューブの中にワイヤ等を通した構造を採用した例を説明するための図である。
【図6】本実施例1の変形例であって、一定以上の牽引力が患部に作用しないように、引張り部と患部の間の伝達部に安全装置としてのクラッチ機構を設けた例を説明するための図である。
【図7】本実施例1の変形例であって、引張り部に電動機を採用した例を説明するための図である。
【図8】本実施例1の変形例であって、手首を真っ直ぐに伸展させる場合と手首を曲げた状態で引っ張る場合との双方を可能とする例を説明するための図である。
【図9】本発明の実施例2による携帯型もしくは身体装着型の牽引装置を説明するための図である。
【図10】従来の骨折治療用の牽引装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施する最良の形態は、以下の実施例1について述べるような形態である。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明の実施例1による身体装着型牽引装置を患者の頭上からみたときの状態を示す図である。図1において、Aは患者の体幹(腹部)、Bは患者の前腕、Cは患者の上腕、Dは患者の手首、Eは患者の指、を示す。
【0022】
また、図1において、1は金属製もしくはプラスチック製の例えば平板状もしくは断面略U字状(患者の前腕Bの表面形状と対応するように湾曲した形状)の部材から成るベース、2,3は前記ベース1の裏面側(患者の体幹側)に接着剤もしくは面ファスナー(例えば登録商標「マジックテープ」)等で固定された布もしくはゴムなどの弾性体から成るパッド(患者の体幹Aの前方左右の2箇所に対向するようにそれぞれ配置される)、4は前記ベース1の両端側にそれぞれ各端部が固定され患者の体幹の外周面に巻回され保持されるベルト、4aは前記ベルト4のバックル、である。本実施例1では、前記ベース1は、前記ベルト4により、患者の体幹Aに被服を介して固定もしくは装着されている(なお、本実施例1では、前記ベルト4に代えて、例えば、前記ベース1とこれに固定された各パッド2,3とを患者のベストなどの着衣へ縫製することなどにより、前記ベース1を患者の体幹Aに固定するようにしてもよい)。
【0023】
また、図1において、5a,5bは、前記ベース1にその両端が固定されたベルトであって患者の前腕Bの外周面に巻回され保持されるベルト(バックルは図示省略している)である。この2つのベルト5a,5bにより、患者の前腕Bに前記ベース1が固定もしくは装着される。また、図1において、6は、前記ベース1の図示右側部分に前記ベース1と一体的に形成された上腕当接部であって患者の上腕Cの内側(患者の前腕Bと対向する側)に当接され(図示しないベルトなどにより)取り付け・装着されるように断面(患者から見て横方向の断面)が略半円状に形成された上腕当接部である。患者の上腕Cに取り付け・装着された前記上腕当接部6は、上腕C側で対向引っ張るものである。なお、図1では前記上腕当接部6は前記ベース1と一体的に形成されるように示したが、前記上腕当接部6は前記ベース1とは別体に構成してもよい。また、これらに使用者の体格や好みによって長さや角度を調節できる構造を付加するようにしてよい。
【0024】
また、図1において、7は前記ベースの患者の手首Dに対向する部分から患者の手首D方向に突出するように形成されたフレーム支持部、9は前記フレーム支持部7から患者の指先方向に向かうように配置されたフレームである。前記フレーム9は、図1ではロッド状に示しているが、図1の患者から見て自らの手の上方の位置と下方の位置とにそれぞれ略平行に延びるロッドを含み、その2つのロッドの先端部を繋ぐ軸(患者から見て縦方向の棒状部分)に後述の滑車15が取り付けられるようになっている(図2参照)。本実施例1において、前記フレーム9は、前記フレーム支持部7により、前記フレーム支持部7を支点として図1の患者の体幹Aに近接もしくは離反する方向(図1の矢印α方向)に角度変更可能(回動可能)に接続されている(図1において破線で示す符号9’,10’,14’,15’,16’,E’なども参照)。
【0025】
また、図1において、10は患者の骨折した部位(例えば手首など)の遠位にある指Eの先端部に固定される緊縛具(例えば、竹や金属線により籠状に編んで形成されており引っ張ると籠の内径が狭まることによって引張り部位の緊縛がなされるフィンガー・トラップなど)、11は前記ベース1の図示左端部に固定された鉤状突起、12は前記鉤状突起11の略中央に形成されているネジ穴に挿入(螺入)されるノブネジ、13はその一端が前記ノブネジ12の先端部に固定された引きバネなどの弾性体(目盛付き)、14は前記緊縛具10の先端部と前記弾性体13の先端部との間を結ぶワイヤもしくは紐、15は前記ワイヤもしくは紐14による牽引方向を変えるために前記フレーム9の先端側の軸(図1の図面と直交する方向に配置された棒状部分。図2参照)に取り付けられた滑車である。前記ノブネジ12は、例えば、前記鉤状突起11のネジ穴への螺入状態を調整するなどして前記ワイヤもしくは紐14の前記緊縛具10から前記弾性体13までの長さを変動させることにより、前記緊縛具10に対する前記ワイヤもしくは紐14による牽引力の大きさを調整するためのものである。また、前記弾性体13は、前記牽引力の急激な変化を緩衝吸収するためのもので、例えばバネ、ゴムなどで構成することができる(本実施例1では、ゴム、バネなどに代えて、ガスシリンダーなどで構成するようにしてもよい)。なお、前記ノブネジ12などは、そのノブを回転させることにより前記ワイヤもしくは紐14を所定の円筒体に巻き取るウインチのように構成し、これにより前記ワイヤもしくは紐14の牽引力を調整できるようにしてもよい。
【0026】
図1において、前記のフレーム9、鉤状突起11、ノブネジ12、弾性体13、ワイヤもしくは紐14、及び滑車15などは、本実施例1において患部を引っ張るための引張り部20を構成するものである。また、図1において、16は、前記ベース1及び鉤状突起11の外周縁部に取り付けられた布製又はプラスチック製のカバーである。前記カバー16は、前記引張り部20や患者の前腕を、それらが外部から見えないように遮断し且つそれらに外部の物体が直接に当たらないように保護するためのものである(図3参照)。
【0027】
なお、前述のように、前記フレーム9は、前記フレーム支持部7により、前記フレーム支持部7を支点として図1の患者の体幹Aに近接もしくは離反する方向(図示矢印α方向)に角度変更可能(回動可能)に接続されている(図1において破線で示す符号9’,10’,14’,15’,16’,E’なども参照)。よって、本実施例1では、図1における前記フレーム9の前腕Bの長手方向に対する角度を前記フレーム支持部7を支点として変えることによって、前記指Eに牽引力を加える方向を調整する(手首を真っ直ぐにした状態で引っ張るか手首を曲げた状態で引っ張るかを選択する)ことができる。
【0028】
また、図2は図1で説明した実施例1の牽引装置を患者の前方から見たときの状態を示す概略図である。この図2は概略図なので、図1と厳密には一致していな部分もある。例えば、図2においては、図1において示している前記カバー16、ベルト5a,5b、ノブネジ12などは図示を省略している。また、図3は本実施例の使用状態を示す図で患者を正面側から見たときの状態を示す図である。なお、図3においては、図1のベース1、引張り部20、及び患者の前腕のほとんどを前記カバー16で覆っているように図示しているが、本実施例1では必ずしもこのような形態にする必要はなく、前記ベース1、引張り部20、及び患者の前腕の一部だけを前記カバー16で覆うようにしてもよい。
【0029】
次に本実施例1の動作(使用方法など)を説明する。図1−2では、指先を引っ張る場合を示している。この場合は、まず、前記ベース1を患者の上肢(この場合は前腕B)に取り付けて、前記ベルト5a,5bを前腕Bの外周面に巻回してから締めて固定もしくは装着する。次に、前記緊縛具10(その先端部に前記ワイヤもしくは紐14が予め固定されている)を患部の指の先に取り付ける。その後、前記ノブネジ12を回して前記ワイヤもしくは紐14を図1の矢印β方向に移動させながら、前記ワイヤもしくは紐14による前記指E(患部)への牽引力の大きさを調整する。次に、前記患者の前腕Bに固定もしくは装着された前記ベース1を、前記ベルト4により患者の体幹Aに(前記各パッド2,3及び図示しない衣服を介して)固定もしくは装着する。そして、前記ベース1の外周縁部から患者の前腕B及び前記引張り部20の全体に渡って前記カバー16を覆う。以上の手順は絶対的なものではなく個別に順番を変えることは可能である。
【0030】
本実施例1においては、このようにして、前記のフレーム9、鉤状突起11、ノブネジ12、弾性体13、ワイヤもしくは紐14、及び滑車15などから成る引張り部20を、前記ベース1を患者の前腕Bに固定もしくは装着することを介して、患者の上肢に固定もしくは装着するようにしているので、患者は歩行などの日常の動作を行いながら、指Eなどの骨折部分を継続的に引っ張ることができる。また、特に、本実施例1では、前述のように、前記ベース1を(したがってこれに支持された前記引張り部20を)、前記ベルト4及びパッド2,3により、患者の体幹Aに固定もしくは装着するようにしているので、患者は、立ったり座ったりしている場合だけでなく横臥姿勢でいる場合でも安定的に前記牽引を継続することができる。
【0031】
また、本実施例1においては、前記ノブネジ12の締め具合すなわちダイヤルの調整によって、牽引力の設定や変更が容易に出来るようになっているので、骨折の場所や状況、患者の体格に適した牽引力を付加し、治療の進捗に応じて牽引力を変化させることが容易となる。また、本実施例1では、引っ張る方向や牽引力の作用点を治療中に変更する事が容易である。また、本実施例1では、バネ等を使った弾性体13を設けているので、振動や変位によって牽引力が急激に変化することがなく、患部に過大な力が加わって治療に悪影響を与えることがないというメリットが得られる。
【0032】
なお、本実施例1では、患者が立ったり座ったりしている場合だけならば、患者は、自分の前腕Bと前記ベース1及び引張り部20とを自分の腕力だけで保持できるので、前記ベース1(及び引張り部20)を図1に示すような前記ベルト4により自己の体幹Aに取り付けることは、必ずしも必要ない。すなわち、患者は、本実施例1に係る前記ベース1(及び引張り部20)を、自分の前腕Bに取り付けるだけで、すなわち自分の腕力だけで支持するようにしてもよい。ただ、長時間に渡って容易にかつ安定的に使用するためには、患者の腕力にもよるが自分の腕力だけで前記ベース1(及び引張り部20)を支持することは難しくなるので、前記ベルト4や後述のアームホルダー、アームストラップもしくはショルダーブレースなどをも使用して、前記ベース1及び引張り部20を自己の体幹や肩によっても支持することが望ましい。
【0033】
また、以上の実施例1の説明では、長時間に渡って容易にかつ安定的に使用するために、前記ベース1及び引張り部20を前記ベルト4により患者の体幹Aに取り付けるようにしているが、本実施例1では、前記ベルト4に代えて、患者の肩に吊り下げる紐や布(三角巾など)を使用して、前記のベース1、引張り部20、及び患者の前腕を支持するようにしてもよい。すなわち、本実施例1では、前記ベルト4に代えて、患者の肩に取り付けて前記のベース1、引張り部20、及び患者の前腕を支持する装具として、公知のアームホルダーやアームストラップなどを、使用するようにしてもよい。あるいは、本実施例1では、患者の肩と体幹の両方に取り付けて前記のベース1、引張り部20、及び患者の前腕を支持する装具として、公知の「ショルダーブレース」(商標。アルケア株式会社(東京都墨田区錦糸1−2−1)より提供)などを、使用するようにしてもよい。あるいは、本実施例1では、患者が着ているベストまたはジャケット状の着衣に縫付ける等の方法で、前記のベース1(前記引張り部20を支持しているベース1)を患者の胸部または腹部の前方の位置で支持するようにしてもよい。また、本実施例1では、前記引張り部を、患者の上腕部に受けパッドを当て、腕を本装置の体幹側のベースパッドに置き、それぞれの部分を伸縮自在な布や皮革などで作られたベルトを巻くことにより、患者の胴体に固定もしくは装着するようにしてもよい(面ファスナー(例えば登録商標「マジックテープ」)等を利用すると締め具合の調節がさらに容易である)。
【0034】
また、本実施例1においては、牽引のために錘以外の力源を用いることにし、牽引力はワイヤもしくは紐14の終端に設けられたウインチまたはネジを回すことによって発生され、牽引力は肘より少し上方に在る上腕当接部6を介して上腕C側で受け止められる(上腕C側に牽引力への反力が発生する)。なお、本発明では、上腕C側でなく前腕B側(例えば前腕のベルト付近)で牽引力を受け止めるようにしてもよい。また本実施例1では、ワイヤもしくは紐14の終端とノブネジ12との間に、巻きバネやゴムなどの弾性体(もしくはガスシリンダーなど)を介在させることによって、変位によって牽引力が急激に変化することを防止するようにしている。また、ワイヤもしくは紐14それ自体を弾性を有するように構成してもよいし、ワイヤもしくは紐14を取り付けるフレームまたはその支持部にバネなどを仕込んで弾性を得るように構成してもよい。また、本実施例1では、患者の腕や体幹との間や、本発明の装置の間にスペーサーを入れて、方向や位置調節をして、理想的な位置に滑車を持ってくるようにしてもよい。また、本実施例1は、肩からストラップなどで吊るすようにしてもよいし、懸垂ストラップと体幹を一周するベルトに牽引装置を固定して使用するようにしてもよいし、ベルトで吊下げる他に、チョッキ状の装具に本装置を取付けるようにしてもよい。
【0035】
また、本実施例1では、さらに、手首付近に柔らかいベルト状または円筒状の牽引サポーターを巻くようにしてもよい。この牽引サポーターには2本以上の紐が付いており、牽引力源に繋がるようにしてもよい。また、牽引力源は、ベース1から伸びたフレームに回転可能に取付けられた滑車15と、ベース1に固定された、ワイヤもしくは紐14の終端を引いて牽引力を発生させるウインチと、ワイヤもしくは紐の終端付近、ウインチ、または滑車に内蔵され、振動や変位によって牽引力が急激に変化するのを避ける目的のバネなどを利用した弾性体を含むように構成されていてもよい。また、本実施例1では、手首付近に巻いて使用する牽引サポーターの代わりに、指にフィンガー・トラップを付けて、これを引っ張るようにしてもよい。また、手首付近の骨折の場合に、指にフィンガー・トラップを付けて引っ張るようにしてもよい。また、手首または、手部の骨折に対しては、2本以上の指を引っ張るようにしてもよい。指の骨折においては1本だけ引っ張るようにしてもよい。また、本実施例1では、ウインチをドライバーなどの工具を使って回したり、ダイヤルを回すなどの方法でワイヤもしくは紐14を引っ張り、適切な牽引力に調節してこれを付加することによって、骨折部位がズレたり短縮することが無く、治療が促進されるようになる。また、牽引サポーターに取付けたワイヤもしくは紐14の位置と方向、本数によって適切な牽引方向を設定するようにしてもよい。また、ワイヤもしくは紐14の方向を調節する場合、フレーム9の角度と長さ、滑車15の位置や半径を変えることによって調整するようにしてもよい。指にフィンガー・トラップを付けて引っ張る場合、手首の骨折だけでなく、指や手の骨折治療にも効果を期待できる。また、患者の負担にならないように、金属材料としては、アルミ、マグネシウム、チタン等の合金を用いて出来る限り軽量にし、本体にはプラスチックなど成型が容易で強度があり、かつ軽量な素材を使うことが望ましい。また、携帯の邪魔にならないように、極力小型コンパクトな形状とすることが望ましい。
【0036】
次に図4は本実施例1の変形例を示す図である。この図4に示す変形例では、特に図4(b)に示すように、前記引張り部20の中に複数のウインチ(ワイヤもしくは紐14の長さを調整するための機構で、ノブネジ12などにより構成してもよい)を設置している。このように、複数のウインチを設けるときは、特に骨折部分が複数個の場合、個々のウインチ毎に違った牽引ストロークと牽引力を設定することが可能となるので、治療効果を上げる事が出来るようになる。
【0037】
次に図5は本実施例1の他の変形例を示す図である。この図5に示す他の変形例は、牽引力の方向変換のために、図1のような滑車15を使用しないで、「内周面に低摩擦のプラスチック素材が使用されているチューブ21の中に、ワイヤもしくは紐14を通した構造」を採用したものである。このような構造を採用した場合、牽引力源の配置、及び、作用点の配置自由度が大きくなり、かつ、牽引力を伝達するワイヤもしくは紐14の露出が少なくなるので、安全性やスペース効率が向上し、外観の見栄えも良くなるというメリットがある。
【0038】
次に図6は本実施例1の更に他の変形例を示す図である。この図6に示す更に他の変形例では、牽引装置のワイヤもしくは紐14の途中部分(図6(a)の緊縛具10と弾性体13との間の部分)に、一定以上の牽引力が患部に作用しないように、すなわち、一定以上の荷重が加わるのを防止する目的で、牽引動力部と患部の間の伝達部に安全装置としてのクラッチ機構22を設けている。このクラッチ機構22の構成は、摩擦抵抗を利用したものが好適であるが、一定以上の荷重で破断する構造のものなども採用することができる(図6(c)参照)。
【0039】
次に図7は本実施例1の更に他の変形例を示す図である。この図7に示す更に他の変形例では、前記本実施例1の引張り部20の中に、前記ワイヤもしくは紐14の長さを調整するために前記の手動式のノブネジ12などに代えて電動機23を使用する構成を採用している。図7(a)では、電動機23に減速機24を組み合わせたものを2台、使用する例(2箇所の骨折部分をそれぞれ引っ張るときの例)を示している。図7(b)では、患者の手首及びその周辺に固定もしくは取り付けた装具(例えば公知のウレタンゴム製シートと包帯などで構成される装具)をスタビライザーを介して引っ張る場合において、前記ワイヤもしくは紐14の長さを調整するために電動機25を使用する構成を示している。図7(b)では、出力が大きな電動機25を採用しているので図7(a)で採用している減速機24は不要となる。
【0040】
次に図8は本実施例1の更に他の変形例を示す図である。この図8に示す更に他の変形例では、患者の指を引っ張る場合において、手首を真っ直ぐに伸展させた状態での牽引と手首を曲げた状態での牽引との双方を可能とするものである。図8(a)は手首を真っ直ぐに伸展させた状態、図8(b)は手首を前腕の長手方向に対して約30度曲げた状態で引っ張る状態を示している(なお、図8(b)では、便宜上、一部の部品の図示を省略している)。図8の変形例では、前記滑車15の位置を、例えば、患者の前腕Bの長手方向と平行な位置から同斜め方向に位置に変更することにより、患者の手首を曲げた状態で引っ張ることができる。なお、この場合の曲げる角度は、固定されたものではなく症状や治療方針によって変更可能とすることができる。なお、このような、前記滑車15の位置を患者の前腕Bの長手方向と平行な位置から同斜め方向に位置に変更するための構成は、図1に関して既に類似の構成を説明している。また、図8に示す変形例では、手首に装着した装具を示しており、このような手首装具を使用して牽引を行うことも可能である。
【実施例2】
【0041】
次に図9を参照して本発明の実施例2による携帯型もしくは身体装着型の牽引装置を説明する。図9(a)は本実施例2を装着した患者の前腕をその上方から見たときの状態を示す図、同(b)は本実施例2を装着した患者の前腕をその側方から見たときの状態を示す図である。なお、図9において図1と共通する部分には同一の符号を付している。
【0042】
図9において、31は患者の患部よりも近位側の部分(前腕Bの肘近傍部分もしくは前腕Bの略中央部分)に固定もしくは装着される断面略「逆U字」状(患者の前腕Bの表面形状に対応するように湾曲した形状)の近位側ベース部、32a,32bは前記近位側ベース部31を患者の前腕Bに固定するためのベルト、33は前記近位側ベース部31と連結部34により連結されており患者の上腕Cに当接され取り付けられる上腕当接部、33aは前記上腕当接部33及び連結部34を患者の上腕Cに取り付けるための(前記上腕当接部33及びこれと連結された前記近位側ベース部31が手首D方向に移動するのを防ぐための)止め具であって患者の上腕Cの外周面を囲む略リング状に形成されている止め具(ベルト)、35は前記近位側ベース部31の上方(前腕Bから離れる方向)に配置され且つ前記近位側ベース部31に固定されたコイル支持部、36は前記コイル支持部35(及び前記近位側ベース部31)に固定されており且つコイルバネ37の図示右側端部が固定されている上腕側コイル固定部、である。本実施例2において、前記上腕当接部33は、引張り部からの牽引力を上腕C側に伝達する(上腕C側に牽引力への反力を発生させる)ためのものである。
【0043】
また、図9において、38は患者の患部の遠位側の部分(手首もしくは手の甲の部分)に固定もしくは装着される略テーパ状(患者の手の甲の表面形状に対応するような略筒状)の遠位側ベース部、39は前記遠位側ベース部38とフレーム40を介して固定されており且つコイルバネ37の図示左側端部が固定されている手側コイル固定部、である。
【0044】
本実施例2では、前記上腕側コイル固定部36と前記手側コイル固定部39との間に、これらの間の距離を伸展する方向に力を生じるコイルバネ(「前記上腕側コイル固定部36と前記手側コイル固定部39との間に在る、前腕Bの骨折部分」を伸ばし引っ張るための圧縮バネ)37が介設されている。また図9において、41は、前記コイルバネ37の力を調整するために前記上腕側コイル固定部36と前記手側コイル固定部39との間の距離(前記コイルバネ37の長さ)を調整するための調整ネジ、50は前記コイル支持部35の図9(b)の上下方向の角度を調整するための角度調整用ネジである。
【0045】
本実施例2は、このように構成されているので、患者の前腕Bの一部が骨折等した場合は、本実施例2の牽引装置を患者の上肢に装着することにより、すなわち、前記骨折等部分の上肢側に上肢側ベース部31を固定もしくは装着すると共に前記骨折部分の手側に遠位側ベース部38を固定もしくは装着することにより、継続的に前記の骨折等部分を伸展し引っ張ることができる。しかも、この実施例2による場合は、単に患者の上肢に牽引装置を装着するだけで継続的な牽引療法が可能になるので、患者は極めて手軽に牽引療法を受けることできる(これに対して、図1で説明した前記の実施例1においては、前記ベース1(図1参照)を患者の上肢に装着するだけでなく、前記ベルト4や肩掛けタイプの支持具などの特別の装具を使用して患者の体幹や肩によっても前記ベース1を支持することが長期間の牽引療法を安定的にかつ容易に行うためには原則的に必要であった)。なお、前記実施例2においては、前記遠位側ベース部38に、前記フレーム40の前記遠位側ベース部38への取り付け位置を調整できる機構を備えるようにしてもよい。また、本実施例2においては、前記フレーム40の途中部分に、ターンバックルなどの長さ調整機構を組み入れるようにしてもよい。
【0046】
以上、本発明の各実施例について説明したが、本発明は前記の各実施例として述べたものに限定されるものではなく、様々な修正及び変更が可能である。例えば、前記実施例1においては、患者の指を引っ張るための緊縛具10としてフィンガー・トラップなどを使用しているが、骨折箇所が患者の手首や前腕などであるときは、従来より公知の方法であるウレタンゴム製シート及び包帯などを使用して患者の手首や前腕などを緊縛もしくは固定するようにしてもよい。また、前記実施例において、前記ベース1は骨折などの際に患部の固定を行うためのシーネ(添え木)の役割をも果たすことができるが、場合によっては、前記ベース1と患者の前腕Bとの間に添え木を介在させるようにしてもよい。また、前記の実施例2においては、前記近位側ベース部31と前記遠位側ベース部38との間を伸展させるための伸展部としてコイルバネ(圧縮バネ)37を使用しているが、本発明では前記コイルバネ37に代えて、例えば電動機(リニアモーターなど)を使用して前記近位側ベース部31と前記遠位側ベース部38との間を伸展させる力を調整する(その調整が行われたら所定の機構によりその状態を保持する)ようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 ベース
2,3 パッド
4,5a,5b ベルト
6 上腕当接部
7 フレーム支持部
9 フレーム
10 緊縛具
11 鉤状突起
12 ノブネジ
13 弾性体
14 ワイヤもしくは紐
15 滑車
16 カバー
20 引張り部
21 チューブ
22 クラッチ機構
23,25 電動機
24 減速機
31 近位側ベース部
34 連結部
35 コイル支持部
36 上腕側コイル固定部
37 コイルバネ
38 遠位側ベース部
39 手側コイル固定部
40 フレーム
A 体幹
B 前腕
C 上腕
D 手首
E 指

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前腕もしくは手の骨折もしくは脱臼の整復のために使用される牽引装置であって、
患者の前腕もしくは手の患部以外の部分であって前記患部より患者の遠位部分を、把持もしくは固定する固定部と、
前記固定部を、患者の遠位部分の方向又はこれと近似する方向に引くことにより、前記患部を引っ張る引張り部と、
前記引張り部を支持するベース部と、
前記ベース部を、患者の上肢の前記患部以外の部分であって前記患部より患者の近位の部分に、固定、装着、若しくは取り付ける装着部と、
を備えたことを特徴とする、携帯型もしくは身体装着型の牽引装置。
【請求項2】
前腕もしくは手の骨折もしくは脱臼の整復のために使用される牽引装置であって、
患者の前腕もしくは手の患部を引っ張る引張り部と、
前記引張り部を支持するベース部と、
前記ベース部を、患者の上肢の前記患部以外の部分に固定、装着、若しくは取り付ける装着部と、を備え、
前記ベース部は、患者の前記患部よりも近位側の前腕もしくは上腕に、固定、装着、若しくは取り付けられる近位側ベース部と、患者の前記患部よりも遠位側の手首もしくは手に、固定、装着、若しくは取り付けられる遠位側ベース部とにより構成されており、
前記引張り部は、一端が前記近位側ベース部に固定されると共に他端が前記遠位側ベース部に固定されており、前記近位側ベース部と前記遠位側ベース部との間を所定の力で伸展させることにより、前記患部を引っ張るものである、ことを特徴とする、携帯型もしくは身体装着型の牽引装置。
【請求項3】
請求項1において、前記ベース部または前記ベース部が固定、装着、若しくは取り付けられた患者の上肢を、患者の胴体もしくは肩に固定、装着もしくは取り付ける取付部を備えたことを特徴とする、携帯型もしくは身体装着型の牽引装置。
【請求項4】
請求項3において、前記取付部は、患者の体幹の周囲に巻回されて使用され、その表側(患者の体幹と対向する側の反対側)に前記ベース部が固定、装着、若しくは取り付けられているベルトである、ことを特徴とする、携帯型もしくは身体装着型の牽引装置。
【請求項5】
請求項3において、前記取付部は、患者の肩に吊り下げ、装着、若しくは取り付けられて使用され、その表側(患者の体幹と対向する側の反対側)に前記ベース部が固定、装着、若しくは取り付けられている肩掛けタイプの身体装着具である、ことを特徴とする、携帯型もしくは身体装着型の牽引装置。
【請求項6】
請求項1,3,4,又は5において、前記引張り部は、前記患部に対する牽引力を調整するために前記患部を引っ張るワイヤもしくは紐の長さを調整する機構を含んでいる、ことを特徴とする、携帯型もしくは身体装着型の牽引装置。
【請求項7】
請求項1から5までのいずれかにおいて、前記引張り部は、前記患部に対する牽引力を調整するための電動機を含んでいる、ことを特徴とする、携帯型もしくは身体装着型の牽引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−40228(P2012−40228A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184899(P2010−184899)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【特許番号】特許第4714796号(P4714796)
【特許公報発行日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(510221168)
【Fターム(参考)】