説明

携帯型情報処理装置及びその制御方法

【課題】ホスト装置から電子ペーパーに表示すべき表示データが受信することができない通信不能状態においても、必要な情報を表示部に表示させて、視覚的な認証手段として利用することができる携帯型情報処理装置を提供する。
【解決手段】ホスト装置200とICカード(携帯型情報処理装置)との間の無線通信の通信状態を監視し、無線通信が通信不能状態であるか否かを判定するステップ(ステップS102)と、通信不能状態である場合に、特定の入力操作を受け付けたか否かを判定するステップ(ステップS104)と、特定の入力操作を受け付けた場合に、記憶部に記憶されているデータに応じた表示データをICカードの表示部に表示させるステップ(ステップS105)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスト装置と相互に無線通信を行う携帯型情報処理装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁界や電波などを用いた近距離(周波数帯によって数cm〜数m)の無線通信によって、ID情報を埋め込んだタグとリーダ/ライタとの間で情報をやりとりするRFID(Radio Frequency Identification)技術が知られている。
特許文献1には、遊技機や遊技媒体貸出装置(台間機)などの遊技関連機器に関するデータを正確かつ迅速に更新して管理するため、RFID技術を採用したデータ管理システムが記載されている。
【0003】
特許文献2には、物品に管理情報を記録したRFIDタグを付すことにより、物品の貸出管理を自動的に行うことが可能で、物品管理の省力化を実現した物品貸出期限管理システムが記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、建物の出入口、部屋の出入口、及び保管棚にそれぞれリーダライタを備え、それぞれのリーダライタから読み取られたIDコードの論理性をチェックすることにより、保管棚の施開錠の制御と保管棚に収納されている物品持ち出しを管理する物品管理システムが記載されている。
【0005】
また、特許文献4には、表示部である電子ペーパーを備えたICカードが記載されており、ホスト装置によって電子ペーパーによるカード表面のデータ表示を可変的に変更するカードシステムが記載されている。
【0006】
このカードシステムのホスト装置は、ICカードとデータの送受信が可能なカードI/F装置と、このカードI/F装置との間でデータの送受信を行う通信装置と、通信装置が受信したカードからの通信内容における識別用データと顧客・カード識別用データベースに格納しているカード保有者の識別用データとを照合してICカードの認証を行うカード認証装置と、基本制御データベースに格納している基本部分データと個別制御データベースに格納している個別部分データとを抽出して結合データを作成する制御データ作成装置と、を備えている。
【0007】
結合データは、ICカードに備えられた電子ペーパーに表示する表示データを含む情報であり、例えば、一部の画像データをICカードが出入りする部署毎の要求等に応じて変更することにより、電子ペーパーに表示させる画像を出入りする部署毎に必要な認証画像に自動的に切り替えることができるようになっている。
従って、各部署の受付等では、電子ペーパーに表示している画像を視認することで、容易にそのICカードの提示者を認証することができ、出入り許可を視覚的に確認する認証カードとしても、利用することができる。
【0008】
【特許文献1】特開2001−212341号公報
【特許文献2】特開2005−298100号公報
【特許文献3】特開2005−301331号公報
【特許文献4】特開2004−030406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献4に記載されているカードシステムにおいて非接触式のICカードが用いる場合に、何らかの事情によりICカードとホスト装置との間の無線通信が通信不能状態になると、カード認証装置によるICカードの認証処理を行うことができない。また、ICカードは電子ペーパーに表示させる表示データを受信できず、電子ペーパーに画像を表示することができなくなってしまう。
なお、通信不能状態が発生する原因としては、例えば、ホスト装置を構成している通信装置、カード認証装置、制御データ作成装置等の何れかが機能停止したり、あるいはホスト装置がネットワークを介して表示データを送信する構成でネットワークに故障が発生した場合などが考えられる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、例えばICカードのようにホスト装置と相互に無線通信を行う携帯型情報処理装置において、ネットワーク故障やホスト装置の構成部材の故障等で、ホスト装置から表示データを受信することができない通信不能状態に陥った場合でも、必要な情報を携帯型情報処理装置の表示部に表示させることを目的とする。また、通信不能状態に陥った場合でも、視覚的な認証手段として利用することができる携帯型情報処理装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決することのできる本発明の携帯型情報処理装置は、ホスト装置と相互に無線通信を行う携帯型情報処理装置において、
前記ホスト装置から送信された表示データを表示する表示部と、
前記表示データを記憶する不揮発性の記憶部と、
入力操作を受け付ける入力操作部と、
前記無線通信の通信状態を監視し、前記無線通信が通信不能状態であることを検出する通信制御部と、
前記通信制御部により通信不能状態が検出されているときに、前記入力操作部が特定の入力操作を受け付けた場合は前記記憶部に記憶されている表示データを前記表示部に表示させる表示制御部と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、携帯型情報処理装置がホスト装置に対して通信不能状態になっているときでも、入力操作部で行う特定の入力操作をすれば、表示制御部が記憶部に記憶されている表示データに応じた画像を表示部に表示させる。したがって、ホスト装置と通信不能状態になっているときでも、必要な情報を携帯型情報処理装置の表示部に表示させることができ、必要な情報を視認可能に表示した認証手段として携帯型情報処理装置を有用に利用することができる。
【0012】
また、本発明において、表示データが、当該携帯型情報処理装置の保有者を特定する個人特定情報を含むことが好ましい。
この構成によれば、ホスト装置に対して通信不能状態になっているときでも、個人特定情報を含む認証用の表示データを表示部に表示させることが可能である。例えば、特定の施設や設備の利用許可のために個人特定が必要となる場合にも、携帯型情報処理装置に表示した画像の視認による認証によって個人特定ができる。個人特定に必要な画像が携帯型情報処理装置に表示できないために施設や設備の利用許可が受けられなくなるといった事態を回避することができる。
【0013】
また、本発明において、前記通信不能状態が検出されているときに前記表示制御部が前記記憶部から読み出して前記表示部に表示させる表示データが、前記ホスト装置と最後に無線通信を行ったときに前記ホスト装置から送信された表示データであることが好ましい。
この構成によれば、通信不能状態が検出されているときに表示制御部により表示部に表示される画像は、直前の通信可能状態の時に入手した最新の認証結果を反映したものである。例えば、認証用の情報の更新が繰り返されていた場合でも、比較的に最新の更新情報を表示することができる。
【0014】
また、本発明において、前記特定の入力操作は、前記入力操作部に装備された複数個の操作ボタンを特定手順で操作するもので、予め当該携帯型情報処理装置に記憶させた所定の操作であることが好ましい。
この構成によれば、入力操作部に装備された複数個の操作ボタンを操作する特定手順は、例えば当該携帯型情報処理装置の保有者自身が任意に設定する構成とすることができる。これにより、入力操作を保有者自身が決定した暗号入力として機能させることができ、特定の入力操作で表示される情報に個人情報が含まれる場合に、不用意にその個人情報が表示されることを防止して個人情報を保護することが可能になる。
【0015】
また、上記課題を解決することのできる本発明は、ホスト装置と相互に無線通信を行い、前記ホスト装置から送信された表示データを表示する携帯型情報処理装置の制御方法において、
前記無線通信の通信状態を監視し、前記無線通信が通信不能状態であるか否かを判定するステップと、
前記通信不能状態である場合に、特定の入力操作を受け付けたか否かを判定するステップと、
前記特定の入力操作を受け付けた場合に、前記記憶部に記憶されているデータに応じた表示データを表示部に表示させるステップと、を有することを特徴とする。
この構成によれば、携帯型情報処理装置がホスト装置に対して通信不能状態である場合でも、記憶部に記憶されているデータに応じた表示データを表示部に表示させるステップが実施されることにより、表示部に情報が表示されない表示不能状態に陥ることを防止することができる。したがって、情報を視認可能に表示した認証手段として携帯型情報処理装置を有用に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る携帯型情報処理装置及びその制御方法の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の携帯型情報処理装置の一実施形態であるICカードにおける画像表示をホスト装置により制御するICカードシステムの全体構成を示す図である。
【0017】
図1に示したICカードシステム300は、ICカード10−1,10−2と、これらのICカード10−1,10−2と相互に無線通信して、これらのICカード10−1,10−2に表示データを送るホスト装置200とで構成されている。
【0018】
ホスト装置200は、具体的には、図1に示すように、通信ルータ20−1,20−2、制御装置30−1,30−2、ネットワーク40、管理装置50、およびユーザ端末装置60−1,60−2を備えている。ホスト装置200は、ICカード10−1,10−2との無線通信で得たカード固有のデータと、カード保有者の識別用データとを照合してICカードの認証を行い、認証結果を示す表示データをICカード10−1,10−2に送信する。
これに対して、ICカード10−1,10−2は、ホスト装置200から送信された表示データを、後述するEPDパネル11aに表示する。
【0019】
次に、ホスト装置200の各構成部品について、その動作や機能を説明する。
通信ルータ20−1,20−2は、ループアンテナA11〜A13およびループアンテナA21〜A23を有し、通信対象となるICカードが属している通信可能エリアに対応するループアンテナを用いてICカード10−1,10−2との無線通信を実施し、更に、後述の管理装置50から送信される表示データをICカード10−1,10−2に送信する。
【0020】
制御装置30−1,30−2は、通信ルータ20−1,20−2が受信したICカード10−1,10−2からの情報を、ネットワーク40を介して管理装置50に送ったり、管理装置50から送信された表示データを、通信対象のICカード10−1,10−2に対応するコマンドに変換し、通信ルータ20−1,20−2を介して通信対象のICカードに送信する。
【0021】
ネットワーク40は、例えば、LAN(Local Area Network)またはインターネット等によって構成され、制御装置30−1,30−2、ユーザ端末装置60−1,60−2、および、管理装置50を相互に接続し、これらの間で情報を送信する。
【0022】
管理装置50は、各種のデータベースを保有していている。例えば、カード識別情報データベースを保有しており、通信ルータ20−1,20−2が受信したICカード10−1,10−2からの通信内容におけるカード固有のデータとカード識別情報データベースに格納しているカード保有者の識別用データとを照合してICカード10−1,10−2の認証を行う。また、他のデータベースからその認証結果に応じたデータを抽出し、それらのデータを結合して結合データを作成したりする。
【0023】
また、管理装置50は、ICカード10−1,10−2と相互に無線通信しているループアンテナの位置を特定する情報と、そのループアンテナを有する制御装置を特定する情報とを対応付けして格納する位置特定データベースを保有している。
そして、ユーザ端末装置60−1,60−2は、管理装置50に対して、所定の情報を所定のICカードに対して送信する要求を行うことができる。
【0024】
管理装置50は、例えば、ユーザ端末装置60−1,60−2から特定のICカードに対して所定の情報を送信する要求がなされた場合には、この位置特定データベースを参照して、通信対象のICカードが属する通信エリアに対応するループアンテナおよび制御装置を特定し、通信対象のICカードに対して情報を送信する。
【0025】
管理装置50が作成する結合データは、ICカード10−1,10−2に備えられたEPDパネル11aに表示する表示データを含み、通信ルータ20−1,20−2よりICカード10−1,10−2に送信される表示データである。例えば、一部の表示データをICカード10−1,10−2が出入りする部署毎の要求等に応じて変更することにより、ICカード10−1,10−2に表示させる画像を出入りする部署毎に必要な認証画像に自動的に切り替えることができるようになっている。
従って、各種の部署の受付等では、ICカード10−1,10−2に表示している画像を視認することで、容易にそのICカードの提示者を認証することができ、出入り許可を視覚的に確認する認証カードとしても、利用することができる。
【0026】
図2は、上記のICカード10−1,10−2が社員証として利用される場合に、管理装置50が作成した表示データによりICカード10−1,10−2に表示される画像を例示したものである。図3は、図1に示すICカード10−1の外観構成を示す図である。
【0027】
ここに例示した社員証は、○×付属病院の社員であることを証明するものである。そして、上記ICカード10−1,10−2を社員証として使う病院では、病院の通用門や病院内の各部署、あるいは適宜に病院内を区分した各エリア毎に、ICカード10−1,10−2と相互に無線通信可能な通信ルータ20−1,20−2が配置されている。ICカード10−1,10−2を保有した社員が各通信ルータ20−1,20−2により通信可能な範囲に入ると、自動的にICカード10−1,10−2と通信ルータ20−1,20−2との間で相互に通信を行う。管理装置50が認証処理結果に応じて作成した表示情報がICカード10−1,10−2に送信されて、各ICカード10−1,10−2に認証用の画像が表示される。
【0028】
図2において、(a)は初期状態の時のICカード10−1,10−2における表示画像であり、(b)はICカードの認証処理が行われる前の初期時表示画像であり、(c)〜(f)はICカードの認証処理後、社名や社員個人を識別する個人特定情報がICカード10−1,10−2に登録された場合の表示画像例を示したものである。
【0029】
図2(b)に示した表示画像は、退社等でICカード10−1,10−2を保有する社員が通用門等に配置された通信ルータ20−1,20−2の通信エリアから外れるときに、管理装置50が対象となるICカードに送信する表示データである。画像表示するデータとしては、社名D1と、会社の代表電話番号D2のみに制限し、ICカードの保有者を特定する個人特定情報に該当する画像は含まないようにしている。
【0030】
図2(c)は、出社時画面で、ICカード10−1,10−2を保有する社員が出社して、通用門等に配置された通信ルータ20−1,20−2の通信エリア内に入ったときに、管理装置50が対象となるICカードに送信する表示データである。画像表示するデータとしては、社名D1や出社時間D3、職場連絡事項D4などのデータの他に、ICカードの保有者を特定する個人特定情報に該当するデータD5〜D8がある。
データD5は該当社員の所属部署名であり、データD6は該当社員の氏名であり、データD7は該当社員の識別コード(番号)であり、D8は該当社員の顔写真である。
【0031】
図2(d),(e)は、ICカード10−1,10−2に装備される入力操作部15の操作によって、特定の情報表示要求をホスト装置200に送信した結果、要求した画像が追加された状態を示している。
(d)では、(c)の画面から更に時計表示D9が追加されている。
(e)では、出勤データの表示が要求された場合で、(c)の画面の一部に、出勤データ表D10が表示された構成になっている。
【0032】
図2(f)は、ICカード10−1,10−2の保有者が、病院内の他の通信エリアから売店エリア内に移動したときに、表示される表示データである。管理装置50は、ICカード10−1,10−2と売店エリア内を通信可能エリアとする通信ルータ20−1,20−2との相互通信を介して、対象のICカードの存在位置を売店エリア内であると特定し、売店でのカード払いによる商品購入を可能にするバーコードデータD11をICカードへ送信する。
【0033】
上記のようにICカードシステム300が稼働する施設が病院の場合には、図2(f)に示したようにICカード10−1,10−2の保有者の移動に応じて自動的に表示する画像の一部を変更する画像制御を、例えば、出入り許可が必要となる各部署や施設毎に実施することで、ICカードを各部署や施設に出入りする際の視覚的な認証手段として有効に利用することができる。
【0034】
なお、この例では、ICカードは2枚とされ、制御装置および通信ルータはそれぞれ2台とされ、ループアンテナは3本ずつとされ、ユーザ端末装置は2台とされ、管理装置は1台とされているが、これ以外の数であってもよい。
【0035】
なお、ICカード10−1とICカード10−2は、同様の構成とされているので、以下では、ICカード10−1を例に挙げて説明を行う。
【0036】
図3に示すように、ICカード10−1は、略長方形の薄型の形状を有する担体100を有している。ICカード10−1の表面(図3における奥行き方向の手前側の面)には、前述のホスト装置200の通信ルータ20−1,20−2から送信された表示データを表示する表示部として、EPD(Electrophoretic Display)パネル11aがはめ込まれている。そして、このEPDパネル11aの下側(図3の上下方向の下側)には、入力操作部15を構成する3つの操作ボタン15a〜15cが配置されている。
【0037】
図4は、ICカード10−1の内部構成例を示すブロック図である。
図4に示すように、ICカード10−1は、EPDパネル11a、SRAM(Static RAM)11b、表示制御回路12、バッテリ13、電源回路14、入力操作部15、表示制御MCU(表示制御部)16、不揮発性メモリ(不揮発性の記憶部)17、通信制御MCU18(通信制御部)、RF(Radio Frequency)回路19、および、ループアンテナ19aを主要な構成要素としている。
なお、上記表示制御MCU16及び通信制御MCU18に表記の「MCU」は、Main Control Unitを略記したものである。
【0038】
ここで、EPDパネル11aは、透明な液体の中で浮動する微粒子を電界によって移動させることにより文字および図形等の表示を行うと共に、電源の供給を絶っても表示が継続する不揮発性の表示デバイスである。また、本実施の形態のEPDパネル11aは、薄肉シート状の表示デバイスで、いわゆる電子ペーパーとも呼称されるものである。
【0039】
SRAM11bは、EPDパネル11aに表示する情報を一時的に格納するメモリである。より詳細には、EPDパネル11aは、例えば、横および縦がそれぞれ352×450画素から構成されており、SRAM11bは、横および縦がそれぞれ352×450ビットの情報を格納可能な記憶容量を有しており、SRAM11bに格納されている情報の各ビットに応じてEPDパネル11aを構成する画素を黒または白の状態とすることにより、種々の情報を表示することができる。なお、この実施の形態では、SRAM11bは、書き込みのみが可能なライトオンリ(Write Only)のメモリとして構成される。
【0040】
表示制御回路12は、EPDパネル11aに情報を表示する際の制御を行う回路であり、例えば、表示制御MCU16とEPDパネル11aとの間の電圧の変換を行う制御を行う。
また、表示制御回路12は、電源回路14から供給された電力をSRAM11bおよびEPDパネル11aに供給する。
【0041】
バッテリ13は、例えば、リチウムイオン電池等によって構成され、電源回路14に直流電力を供給する。
電源回路14は、バッテリ13から供給される電源電圧を、所定の電圧に昇圧または降圧し、表示制御回路12に供給する。なお、図4では、電源回路14によって生成された電源電圧は、表示制御回路12のみに供給されているが、実際にはその他の部分にも供給されている。
【0042】
入力操作部15は、3つの操作ボタン15a〜15cと、図示せぬスイッチによって構成され、図3に示す操作ボタン15a〜15cがユーザによって操作された場合には、スイッチがオンまたはオフの状態になり、表示制御MCU16がスイッチの状態に基づいて操作ボタンが操作されたことを検出する。
【0043】
不揮発性メモリ17は、例えば、FeRAM(Ferroelectric RAM)によって構成され、管理装置50から供給された描画コマンドを格納する。また、不揮発性メモリ17は、表示制御MCU16が使用するフォントデータおよびビットマップデータを格納するとともに、表示制御MCU16が実行するプログラム等を格納する。
【0044】
更に、本実施の形態の場合、不揮発性メモリ17は、ホスト装置200において各ICカードの識別や認証処理に必要な固有データ17aやホスト装置200から送信された表示データ17bを記憶する。固有データ17aには、例えば、各ICカードに固有の情報としての固有IDと、全てのICカードに共通の情報としてのグローバルIDと、複数のICカードに共通の情報としてのグループIDなどが、記憶される。また、表示データ17bには、上述したように、社名D1や出社時間D3、職場連絡事項D4などのデータの他に、ICカードの保有者を特定する個人特定情報に該当するデータD5〜D8がある。
【0045】
通信制御MCU18は、RF回路19から供給されるディジタル信号を解釈し、内蔵するメモリ(不図示)を書き換えたり、ディジタル信号から復元されたコマンドを表示制御MCU16に供給したりする。
更に、本実施の形態の場合、通信制御MCU18は、RF回路19における電波の受信状況によりRF回路19とホスト装置200との間の無線通信の通信状態を監視していて、ホスト装置200との間の無線通信が通信不能状態であることを検出すると、その旨を表示制御MCU16に通知する。
【0046】
RF回路19は、ループアンテナ19aによって捕捉された電波を復調し、ディジタル信号を生成して、通信制御MCU18に供給する。ループアンテナ19aは、コイル形状を有しており、通信ルータ20から送信された電波を捕捉し、RF回路19に供給する。
【0047】
表示制御MCU16は、通信制御MCU18から供給された描画コマンドを不揮発性メモリ17に描画コマンドとして格納するとともに、コマンドを解釈し、不揮発性メモリ17に格納されている対応するフォントデータまたはビットマップデータを取得し、内蔵されているVRAM(Video RAM)をワークエリアとして描画処理を実行し、得られた表示データを表示制御回路12に供給してEPDパネル11aに表示させる処理を実行する。
【0048】
そして、本実施の形態のICカード10−1,10−2の場合、表示制御MCU16は、通信制御MCU18により通信不能状態が検出されているときに、入力操作部15が特定の入力操作を受け付けたか否かを判定し、入力操作部15が特定の入力操作を受け付けた場合は不揮発性メモリ17に記憶されている情報に応じた画像をEPDパネル11aに表示させる。
【0049】
そして、本実施の形態のICカード10−1,10−2の場合、表示制御MCU16は、通信不能状態が検出されているときに、入力操作部15から特定の入力操作が成された時には、その入力操作に対応して予め不揮発性メモリ17に取り決めしていた表示データを不揮発性メモリ17から読み出してEPDパネル11aに表示させる。
【0050】
ここで、入力操作部15からの特定の入力操作とは、入力操作部15に装備された3つの操作ボタン15a〜15cを特定手順で操作するもので、表示制御MCU16は各操作ボタン15a〜15cの操作の順列組み合わせを暗号として記憶することで、ICカードの保有者がのみしか知り得ない暗号入力で、通信不能時にEPDパネル11aに表示させる画像の選択を可能にしている。
【0051】
次に、通信不能状態のときにEPDパネル11aに表示データを表示させる処理方法について図5を参照して説明する。
図5に示すように、ICカードとホスト装置200の通信可能状態であるときは、通常行う処理を実行している(ステップS101)。ホスト装置200との間の無線通信状態を通信制御MCU18が監視し、無線通信が通信不能状態であるか否かを判定する(テップS102)。通信不能状態であると判定されると(ステップS102:Yes)、表示制御MCU16は入力操作部15が特定の入力操作を受け付ける待機状態となる(ステップS103)。
【0052】
入力操作部15が特定の入力操作を受け付けた場合(ステップS104:Yes)、不揮発性メモリ17に記憶されているデータに応じた表示データをEPDパネル11aに表示させる(ステップS105)。
【0053】
ステップS102における通信状態の判定では、RF回路19が受信する電波の強度を閾値より低くなって、正常に通信できなくなったときに、通信不能状態と判定される。正常な通信状態であると判定された時には、ステップS101の通常制御状態に戻り(ステップS101)、ホスト装置200から送信された表示データをEPDパネル11aに表示する。
【0054】
ステップS101の通常制御状態の時では、例えば、ICカード10−1,10−2が社員証で、且つ、カード保有者が社内となる病院内にいる場合には、ホスト装置200から送信される表示データに基づいて、図2の(c)〜(f)の画像を表示する。
【0055】
一方、ステップS102において、通信不能状態に陥っていると判定された場合には、表示制御MCU16による制御処理はステップS103に進み、入力操作部15からの特定の入力操作による暗号入力を待つ暗号入力待機状態になる。
【0056】
そして、ステップ104において、暗号入力(特定の入力操作)が成されたと判定されると、不揮発性メモリ17に記憶されている表示データのうち、ICカードの保有者を特定する個人特定情報に該当するデータD5〜D8をEPDパネル11aに表示する(ステップS105)。
【0057】
また、上記のステップ104において、暗号入力(特定の入力操作)が成されていない場合には、ステップS102に戻り、ホスト装置200との間の無線通信が正常に回復するのを待つ。
【0058】
本実施の形態のICカード10−1,10−2では、ホスト装置200に対して通信不能状態になっているときでも、入力操作部15で特定の入力操作をすれば、表示制御MCU16が不揮発性メモリ17に記憶されている個人特定情報に対応した画像をEPDパネル11aに表示させる。
従って、ホスト装置200に対して通信不能状態になっているときでも、EPDパネル11aに情報が表示されない表示不能状態に陥ることを防止することができ、情報を視認可能に表示した認証手段としてICカード10−1,10−2を有用に利用することができる。
【0059】
例えば、特定の施設や設備の利用許可のために個人特定が必要となる場合にも、ICカード10−1,10−2に表示した画像の視認による認証によって個人特定が可能で、個人特定に必要な画像がICカード10−1,10−2に表示できないために施設や設備の利用許可が受けられなくなるといった不便を回避することができる。
【0060】
さらに、本実施の形態のICカード10−1,10−2では、入力操作部15が受け付ける特定の入力操作は、入力操作部15に装備された3個の操作ボタン15a〜15cを特定手順で操作するもので、予め当該ICカード10−1,10−2に記憶させた所定の操作である。
したがって、これらの操作ボタン15a〜15cを操作する特定手順は、例えば当該ICカード10−1,10−2の保有者自身が任意に設定する構成としておくことで、入力操作を保有者自身が決定した暗号入力として機能させることができ、特定の入力操作で表示される情報に個人情報が含まれる場合に、不用意にその個人情報が表示されることを防止して個人情報を保護することが可能になる。
【0061】
また、本発明に係るICカードにおいて、ホスト装置との間の無線通信が通信不能状態の時に、表示部に表示させる表示データは、個人特定情報に限られない。例えば、ステップS102で通信不能状態が検出されているときに表示制御MCU16が不揮発性メモリ17から読み出し、ステップS05でEPDパネル11aに表示させる表示データは、ホスト装置200と最後に無線通信を行ったときにホスト装置200から送信された表示データであってもよい。
通信不能状態が検出されているときに表示制御MCU16によりEPDパネル11aに表示される画像は、直前の通信可能状態の時に入手した最新の認証結果を反映したもので、例えば、認証用の情報の更新が繰り返されていた場合でも、比較的に最新の更新情報を表示することができる。
【0062】
また、最後に無線通信を行った場所を記憶しておいて、その場所に関する情報を表示するよう構成することもできる。このように、通信不能状態に陥った場合に、最後に通信を行ったときの表示データや最後に通信を行った場所の情報を表示することによって、通信可能であった場所がわかるのでその場所に戻って再度電波を受信することができる。
【0063】
なお、本発明に係るICカードにおいて、入力操作部を構成する操作ボタンの数量等は、上記実施の形態に限定しない。適宜に設計変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本実施形態のICカードシステムの全体構成を示す図である。
【図2】ホスト装置との無線通信でICカードに送信される表示データによってICカードに表示される具体的な画像の例の説明図である。
【図3】図1に示すICカードの外観を示す図である。
【図4】図1に示すICカードの詳細な構成例を示すブロック図である。
【図5】図1に示したICカードにおいて通信不能時に画像を表示させる制御方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
10−1,10−2:ICカード(携帯型情報処理装置)、11a:EPDパネル(表示部)、15:入力操作部、16:表示制御MCU(表示制御部)、17:不揮発性メモリ(不揮発性の記憶部)、17a:固有データ、17b:表示データ、18:通信制御MCU(通信制御部)、200:ホスト装置、300:ICカードシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト装置と相互に無線通信を行う携帯型情報処理装置において、
前記ホスト装置から送信された表示データを表示する表示部と、
前記表示データを記憶する不揮発性の記憶部と、
入力操作を受け付ける入力操作部と、
前記無線通信の通信状態を監視し、前記無線通信が通信不能状態であることを検出する通信制御部と、
前記通信制御部により通信不能状態が検出されているときに、前記入力操作部が特定の入力操作を受け付けた場合は前記記憶部に記憶されている表示データを前記表示部に表示させる表示制御部と、を有することを特徴とする携帯型情報処理装置。
【請求項2】
前記表示データが、当該携帯型情報処理装置の保有者を特定する個人特定情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の携帯型情報処理装置。
【請求項3】
前記通信不能状態が検出されているときに前記表示制御部が前記記憶部から読み出して前記表示部に表示させる表示データが、前記ホスト装置と最後に無線通信を行ったときに前記ホスト装置から送信された表示データであることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯型情報処理装置。
【請求項4】
前記特定の入力操作は、前記入力操作部に装備された複数個の操作ボタンを特定手順で操作するもので、予め当該携帯型情報処理装置に記憶させた所定の操作であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の携帯型情報処理装置。
【請求項5】
ホスト装置と相互に無線通信を行い、前記ホスト装置から送信された表示データを表示する携帯型情報処理装置の制御方法において、
前記無線通信の通信状態を監視し、前記無線通信が通信不能状態であるか否かを判定するステップと、
前記通信不能状態である場合に、特定の入力操作を受け付けたか否かを判定するステップと、
前記特定の入力操作を受け付けた場合に、前記記憶部に記憶されているデータに応じた表示データを表示部に表示させるステップと、を有することを特徴とする携帯型情報処理装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−218990(P2009−218990A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62230(P2008−62230)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】