説明

携帯型電子機器、復号鍵提供方法及びプログラム

【課題】汎用性が高く、セキュリティの強化が図られた新しい認証技術を提供すること。
【解決手段】認証キー提供装置1において、GPS受信部30により、GPS衛星信号を受信して現在位置が測位され、当該測位位置と許可位置記憶部40に記憶された許可位置とが、照合部52により照合される。そして、GPS受信部30の測位からの経過時間が所定時間(例えば“1分”)に達したか否かがタイマー部54により判定され、その経過時間の判定結果と、移動検知部60により検知された自機の移動の検知結果とを用いて、移動許否判定部55により移動許否が判定される。そして、照合部52により承認され、且つ、移動許否判定部55による移動許否の判定結果が許可である場合に、認証キー記憶部70に記憶された認証キーが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に装着され、復号鍵記憶部に記憶されている復号鍵を前記電子機器に提供する携帯型電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
データの第三者による解読を防止するための技術としては、パスワード認証や生体認証等の様々な認証技術が知られている。最近では、位置情報を用いた認証技術が注目されている。例えば、特許文献1には、暗号化されたデータに予め対応付けて記憶された位置と、GPS(Global Positioning System)により測位された測位位置との合致を判定し、合致したと判定した場合に、当該データの復号を可能にする技術が開示されている。また、特許文献2には、GPSにより取得した位置情報を用いてデータを暗号化する技術が開示されている。
【特許文献1】特許第3634506号公報
【特許文献2】特開2004−302930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の位置情報を用いた認証技術では、位置情報を取得するために、例えばGPS衛星から発信されている衛星信号を受信する必要がある。しかし、認証が必要なデータを取り扱うケースは、例えばコンピュータで当該データを処理するといった屋内の場合がほとんどであると考えられる。すなわち、そもそも屋内ではGPS衛星を直視することができず、衛星信号を受信し難い状況であるために、現在位置を測位できず、データを復号することができないという根本的な問題が内在している。
【0004】
また、従来の技術は、暗号化されたデータと復号鍵とが同一の筺体内に記憶されている電子機器を想定したものがほとんどであった。このため、電子機器が盗難等された場合には、データ及び復号鍵の両方が盗難されることになり、データの安全性の面で問題があった。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みて為されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための第1の発明は、電子機器に装着され、復号鍵記憶部に記憶されている復号鍵を前記電子機器に提供する携帯型電子機器であって、測位用信号を受信して現在位置を測位する測位部と、前記復号鍵の提供の許否の判定に用いる許可位置を記憶する許可位置記憶部と、前記測位部により測位された測位位置と前記許可位置記憶部に記憶された許可位置とを照合する照合部と、前記測位部の測位からの経過時間が所定時間に達したか否かを判定する経過時間判定部と、自機の移動を検知する移動検知部と、前記経過時間判定部の判定結果と前記移動検知部の検知結果とを用いて移動許容状態に有るか否かを判定する移動許否判定部と、を備え、前記照合部により承認され、且つ、前記移動許否判定部により許可されている場合に前記復号鍵を提供し、それ以外の場合には提供しないことを特徴とする携帯型電子機器である。
【0007】
また、他の発明として、電子機器に装着される携帯型電子機器が、復号鍵記憶部に記憶されている復号鍵を前記電子機器に提供するための復号鍵提供方法であって、測位用信号を受信して現在位置を測位することと、前記復号鍵の提供の許否の判定に用いる許可位置を記憶することと、前記測位された測位位置と前記許可位置とを照合することと、前記測位からの経過時間が所定時間に達したか否かを判定することと、前記携帯型電子機器の移動を検知する移動検知部の検知結果と前記所定時間に達したか否かの判定結果とを用いて移動許容状態に有るか否かを判定することと、前記照合の結果が承認であり、且つ、前記移動許容状態にあると判定された場合に前記復号鍵を提供し、それ以外の場合には提供しないことと、を含む復号鍵提供方法を構成してもよい。
【0008】
さらに、他の発明として、電子機器に装着される携帯型電子機器に内蔵されたコンピュータに、当該携帯型電子機器の復号鍵記憶部に記憶されている復号鍵を前記電子機器に提供させるためのプログラムであって、測位用信号を受信して現在位置を測位することと、前記復号鍵の提供の許否の判定に用いる許可位置を記憶することと、前記測位された測位位置と前記許可位置とを照合することと、前記測位からの経過時間が所定時間に達したか否かを判定することと、自機の移動を検知することと、前記携帯型電子機器の移動を検知する移動検知部の検知結果と前記所定時間に達したか否かの判定結果とを用いて移動許容状態に有るか否かを判定することと、前記照合の結果が承認であり、且つ、前記移動許容状態にあると判定された場合に前記復号鍵を提供し、それ以外の場合には提供しないことと、を前記コンピュータに実行させるためのプログラムを構成してもよい。
【0009】
この第1の発明等によれば、測位用信号を受信して現在位置が測位され、当該測位位置と許可位置とが照合される。また、測位部の測位からの経過時間が所定時間に達したか否かが判定され、その経過時間の判定結果と自機の移動の検知結果とを用いて、移動許否が判定される。そして、照合部により承認され、且つ、移動許否の判定結果が許可である場合に、復号鍵が提供される。
【0010】
位置の照合結果が承認である場合に復号鍵を提供するといった単純な構成ではなく、自機が移動許容状態にあることを復号鍵提供の条件に付加したことで、例えば屋内等の測位用信号の受信が困難な環境であっても、移動許容状態にあればデータの復号が可能となる。また、第1の発明等によれば、復号鍵を記憶した携帯型電子機器をパソコン等の電子機器に装着することで、当該電子機器内の暗号化されたデータを復号する構成としている。すなわち、暗号化されたデータと復号鍵とが分離されており、電子機器と携帯型電子機器との両者が無ければデータを復号・閲覧することができず、セキュリティの強化が図られる。
【0011】
また、第2の発明として、第1の発明の携帯型電子機器であって、前記移動許否判定部は、前記経過時間判定部により前記所定時間に達したと判定された後に前記移動検知部による検知がなされた場合に不許可と判定し、それ以外の場合に許可と判定する携帯型電子機器を構成してもよい。
【0012】
この第2の発明によれば、測位部の測位からの経過時間が所定時間に達したと判定された後に自機の移動が検知された場合には、移動許否の判定が不許可とされ、それ以外の場合には、移動許否の判定が許可とされる。従って、屋内で測位用信号を受信することが困難な状況下では、窓際や屋外等の測位用信号を受信可能な環境に移動して測位を行った後、所定時間内に携帯型電子機器を電子機器に装着することで、当該電子機器内のデータの復号を行うことが可能となる。
【0013】
また、第3の発明として、第1又は第2の発明の携帯型電子機器であって、ユーザの測位指示操作を検出する測位指示操作検出部を更に備え、前記測位部は前記測位指示操作検出部の検出に応じて測位を実行し、前記照合部は前記測位部により測位された最新の測位位置と前記許可位置とを照合し、前記経過時間判定部は前記測位指示操作検出部の検出に応じた前記測位部による最新の測位からの経過時間を判定する携帯型電子機器を構成してもよい。
【0014】
この第3の発明によれば、ユーザの測位指示操作が検出された場合に、測位部による測位が行われる。そして、照合部により、測位部により測位された最新の測位位置と許可位置とが照合され、経過時間判定部により、測位部による最新の測位からの経過時間が判定される。
【0015】
また、第4の発明として、第3の発明の携帯型電子機器であって、前記測位部により測位された最新の位置を更新して保持する測位位置保持部と、前記移動許否判定部により不許可と判定された場合に前記測位位置保持部の保持内容をリセットする保持位置リセット部と、を更に備え、前記照合部は前記測位位置保持部に保持されている測位位置と前記許可位置とを照合し、測位位置が保持されていない場合には照合結果を否認とする携帯型電子機器を構成してもよい。
【0016】
この第4の発明によれば、測位部により測位された最新の位置が、測位位置保持部に更新・保持される。また、移動許否の判定結果が不許可である場合は、測位位置保持部の保持内容がリセットされる。そして、測位位置保持部に保持されている測位位置と許可位置とが照合され、測位位置保持部に測位位置が保持されていない場合は、照合結果が否認とされる。
【0017】
また、第5の発明として、第1〜第3の何れかの発明の携帯型電子機器であって、前記照合部は前記測位位置と前記許可位置との照合を随時実行し、前記照合部により承認された場合に、その旨を保持する照合結果保持部と、前記移動許否判定部により不許可と判定された場合に前記照合結果保持部の保持内容を否認とする照合結果リセット部と、を更に備えた携帯型電子機器を構成してもよい。
【0018】
この第5の発明によれば、測位位置と許可位置との照合が随時実行され、承認された場合に、その旨が保持される。そして、移動許否の判定結果が不許可である場合は、保持内容が否認とされる。
【0019】
また、第6の発明として、第1〜第5の何れかの発明の携帯型電子機器であって、前記照合部は、前記測位位置と前記許可位置間の距離が所定の近距離条件を満たす場合に照合結果を承認とする携帯型電子機器を構成してもよい。
【0020】
この第6の発明によれば、測位位置と許可位置とが所定の近距離条件を満たす近い位置に存在する場合に、照合結果が承認とされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に好適な実施形態の一例を説明する。尚、以下では、携帯型電子機器として認証キー提供装置を例に挙げ、測位システムとしてGPS(Global Positioning System)を用いた場合について説明するが、本発明を適用可能な実施形態がこれに限定されるわけではない。
【0022】
1.第1実施形態
1−1.構成
図1は、第1実施形態における認証キー提供装置1の概略外観図であり、図2は、認証キー提供装置1の機能構成を示すブロック図である。認証キー提供装置1は、操作部10と、GPSアンテナ20と、GPS受信部30と、許可位置記憶部40と、処理部50と、移動検知部60と、認証キー記憶部70と、認証キー提供装置1の各機能部に電源を供給する電源回路80と、パソコン等の電子機器にUSB(Universal Serial Bus)接続するためのUSB端子90とを備えて構成される。
【0023】
操作部10は、GPS受信部30に測位を実行させ、位置情報を取得するための位置情報取得ボタンを有して構成され、その押下信号をGPS受信部30に出力する。
【0024】
GPSアンテナ20は、GPS衛星から発信されているGPS衛星信号を含むRF(Radio Frequency)信号を受信するアンテナであり、受信した信号をGPS受信部30に出力する。尚、GPS衛星信号は、衛星毎に異なる拡散符号の一種であるPRN(Pseudo Random Noise)コードで直接スペクトラム拡散方式により変調された1.57542[GHz]の通信信号である。PRNコードは、コード長1023チップを1PNフレームとする繰返し周期1msの擬似ランダム雑音である。
【0025】
GPS受信部30は、操作部10からの測位指示信号(ボタン押下信号)の入力に応じて一時的(単発的)に起動して、GPSアンテナ20から出力された信号に基づいて認証キー提供装置1の現在位置を測位する測位回路であり、不図示のRF受信回路部及びベースバンド処理回路部を備えて構成される。尚、RF受信回路部と、ベースバンド処理回路部とは、それぞれ別のLSI(Large Scale Integration)として製造することも、1チップとして製造することも可能である。
【0026】
RF受信回路部は、RF信号の処理回路ブロックであり、所定の局部発振信号を分周或いは逓倍することで、RF信号乗算用の発振信号を生成する。そして、生成した発振信号を、GPSアンテナ20から出力されたRF信号に乗算することで、RF信号を中間周波数の信号(以下、「IF(Intermediate Frequency)信号」と称す。)にダウンコンバートし、IF信号を増幅等した後、A/D変換器でデジタル信号に変換して、ベースバンド処理回路部に出力する。
【0027】
ベースバンド処理回路部は、RF受信回路部から出力されたIF信号に対して相関処理等を行ってGPS衛星信号を捕捉・抽出し、データを復号して航法メッセージや時刻情報等を取り出し、疑似距離の演算や測位演算を行う回路部である。尚、測位演算としては、例えば最小二乗法を用いた測位演算等の公知の手法を適用することができる。
【0028】
許可位置記憶部40は、認証キー記憶部70に記憶された認証キーの提供の許否の判定に用いる許可位置が記憶された記憶部であり、例えばROM(Read Only Memory)やフラッシュROM等によって実現される。
【0029】
処理部50は、GPS受信部30から出力された測位結果と、許可位置記憶部40に記憶されている許可位置と、移動検知部60による自機の移動検知結果とに基づいて、認証キー記憶部70に記憶された認証キーの提供を制御する回路部であって、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等の各種マイクロプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、ICメモリ、各種のデジタル回路等によって構成される。処理部50は、主な回路ブロックとして、測位位置保持部51と、照合部52と、提供制御部53と、タイマー部54と、移動許否判定部55とを備えて構成される。
【0030】
測位位置保持部51は、GPS受信部30から最後に出力された最新の測位位置を更新・保持するレジスタの機能を有する回路部である。測位位置保持部51は、移動許否判定部55(リセット部57)からのリセット信号S4のOFFからONへの切り替わりに応じて(いわゆる立ち上がりに応じて)、保持内容をリセットする。
【0031】
照合部52は、測位位置保持部51に保持されている測位位置と、許可位置記憶部40に記憶されている許可位置とを照合し、その照合結果を提供制御部53に出力する機能を有する回路部である。具体的には、測位位置と許可位置との合致を判定し、合致したと判定した場合に、認証キーの提供の承認指示信号を提供制御部53に出力する。尚、位置の合致の判定は、測位位置と許可位置間の距離が所定の閾値距離(例えば“10m”)未満である(測位位置と許可位置間の距離が近距離条件を満たす)か否かを判定することで行う。
【0032】
提供制御部53は、認証キー記憶部70に記憶された復号鍵としての認証キーの提供を制御する回路部であり、例えば認証キー記憶部70と外部バスとを接続するスイッチを有して構成される。提供制御部53は、照合部52から認証キーの提供の承認指示信号を入力している場合に、認証キー記憶部70を外部バスに接続する。
【0033】
タイマー部54は、GPS受信部30の測位からの経過時間を計時する計時回路であり、経過時間が所定時間(例えば“1分”)に達している場合はON、達していない場合はOFFのタイマー信号S1を、移動検知結果保持部56及びリセット部57に出力する。タイマー部54からのタイマー信号S1がOFFからONに切り替わることで、移動検知結果保持部56の保持内容がリセットされる。
【0034】
移動許否判定部55は、タイマー部54から出力されるタイマー信号S1と、移動検知部60から出力される検知結果信号S2とに基づいて、認証キー提供装置1が移動許容状態に有るか否かを判定する回路部である。移動許否判定部55は、移動検知結果保持部56と、リセット部57とを備えて構成される。
【0035】
移動検知結果保持部56は、移動検知部60から出力される検知結果信号S2に基づいて、移動が検知された場合に、その後に移動の検知がなされなくなったとしても、移動を検知した旨を保持し続けるレジスタの機能をなす回路部である。移動検知結果保持部56は、移動検知を保持している場合はON、保持していない場合はOFFの検知結果保持信号S3を、リセット部57に出力する。また、移動検知結果保持部56は、タイマー信号S1のOFFからONへの切り替わり(いわゆる立ち上がり)に応じて、保持内容をリセットする。
【0036】
リセット部57は、測位位置保持部51をリセットする回路部であり、例えばANDゲートによって実現される。リセット部57は、タイマー部54からONのタイマー信号S1を入力しており、且つ、移動検知結果保持部56からONの検知結果保持信号S3を入力している場合に、リセット信号S4をONとして、測位位置保持部51に出力する。リセット信号S4がOFFからONに切り替わることで、測位位置保持部51の保持内容がリセットされる。
【0037】
移動検知部60は、認証キー提供装置1の移動を検知する回路部であり、例えばジャイロセンサや加速度センサ等の移動検知センサによって実現される。移動検知部60は、自機の移動を随時検知しており、検知した場合はON、検知していない場合はOFFの検知結果信号S2を、移動検知結果保持部56に随時出力する。
【0038】
認証キー記憶部70は、パソコン等の電子機器内の暗号化されたデータを復号するための復号鍵である認証キーを記憶した記憶部であり、例えばROMやフラッシュROM等によって実現される。
【0039】
1−2.動作
先ず、操作部10の位置情報取得ボタンが押下されることで単発的にGPS受信部30が起動する。GPS受信部30は、GPS衛星信号を受信して現在位置を測位し、測位位置を測位位置保持部51及びタイマー部54に出力する。GPS受信部30が出力する測位位置は1つとは限らず、GPS受信部30が一時的に機能している間、時系列に複数の測位位置が出力され得る。しかし、測位位置保持部51には、最後に測位された最新の測位位置が更新・保持されることとなる。
【0040】
照合部52は、測位位置保持部51に保持されている測位位置と、許可位置記憶部40に記憶されている許可位置間の距離が、所定の近距離条件である所定の閾値距離未満であるか否かを判定することで、位置の合致を判定する。合致したと判定した場合には、照合部52は認証キーの提供の承認指示信号を提供制御部53に出力する。そして、提供制御部53が、認証キー記憶部70を外部バス(USBバス)に接続し、認証キー記憶部70に記憶されている認証キーの外部からの読み出しを許可することで、認証キーを提供する。
【0041】
一方、GPS受信部30から測位位置を入力されたタイマー部54は、測位位置が入力される度にタイマーをリセット・リスタートとして、最新の測位からの経過時間を計時する。そして、経過時間が所定時間に達した場合には、タイマー信号S1をONとする。
【0042】
移動検知部60は、随時、認証キー提供装置1の移動を検知し続けている。移動検知結果保持部56は、移動検知部60からONの検知結果信号S2を入力した場合には、その後、移動が検知されなくなった場合であっても、移動が検知された旨を記憶・保持する。但し、タイマー信号S1がOFFからONに切り替わると、保持内容をリセットする。そして、移動が検知された旨を記憶・保持している場合には、検知結果保持信号S3をONとする。
【0043】
従って、タイマー信号S1がONで、且つ、検知結果保持信号S3がONの場合というのは、GPS受信部30による測位から所定時間が経過し、且つ、所定時間経過後に移動検知がなされた場合である。この場合にのみ、リセット部57は、リセット信号S4をONとする。
【0044】
リセット信号S4がOFFからONに切り替わると、測位位置保持部51に保持されていた測位位置が消去・リセットされる。この結果、照合部52は、位置の合致判定を不一致として、承認指示信号の出力を停止する。承認指示信号が入力されなくなった提供制御部53は、認証キー記憶部70と外部バスとの接続を切り離す。
【0045】
1−3.作用効果
第1実施形態では、認証キー提供装置1において、GPS受信部30により測位された測位位置が、測位位置保持部51に保持される。そして、GPS受信部30の測位からの経過時間が所定時間に達した後に自機の移動が検知された場合には、測位位置保持部51の保持内容がリセットされ、提供制御部53により認証キーが提供されないように制御される。従って、屋内等のGPS衛星信号を受信することが困難な状況下では、窓際や屋外等のGPS衛星信号を受信可能な環境に移動して測位を行った後、所定時間内に認証キー提供装置1をパソコン等の電子機器に装着することで、当該電子機器内のデータの復号を行うことが可能となる。
【0046】
また、第1実施形態では、パソコン等の電子機器に認証キー提供装置1を装着することによって、当該電子機器内の暗号化されたデータを復号する構成としている。すなわち、暗号化されたデータと復号鍵とが分離されており、電子機器と認証キー提供装置1との両者が無ければデータを復号・閲覧することができないため、セキュリティの強化が図られる。
【0047】
1−4.変形例
第1実施形態では、認証キーの提供を処理部50においてハードウェア的に実現するものとして説明したが、処理部50をCPU等のプロセッサで代替し、当該プロセッサが認証キーの提供をソフトウェア的に行うこととしてもよい。この場合は、ROMやフラッシュROM等の記憶装置に第1認証キー提供プログラムを格納しておき、CPUが、この第1認証キー提供プログラムを読み出して実行することで、第1認証キー提供処理を行うようにする。
【0048】
図3及び図4は、第1認証キー提供処理の流れを示すフローチャートである。
先ず、CPUは、操作部10を介して測位指示操作がなされたか否かを判定し(ステップA1)、なされたと判定した場合は(ステップA1;Yes)、測位制御処理を行い、GPS受信部30に現在位置を測位させるように制御する(ステップA3)。
【0049】
次いで、CPUは、GPS受信部30により測位された測位位置を、メモリに保存する(ステップA5)。そして、タイマーフラグをOFFに設定し(ステップA7)、タイマーをリセット・スタートさせた後(ステップA9)、ステップA1に戻る。
【0050】
一方、ステップA1において測位指示操作がなされなかったと判定した場合は(ステップA1;No)、CPUは、移動検知センサ60により移動が検知されたか否かを判定する(ステップA11)。そして、移動が検知されたと判定した場合は(ステップA11;Yes)、移動検知フラグをONに設定して(ステップA13)、ステップA1に戻る。
【0051】
また、ステップA11において移動が検知されなかったと判定した場合は(ステップA11;No)、CPUは、タイマーをスタートさせてからの経過時間が所定時間(例えば“1分”)に達したか否かを判定し(ステップA15)、達したと判定した場合は(ステップA15;Yes)、タイマーフラグをONに設定する(ステップA17)。また、移動検知フラグをOFFに設定して(ステップA19)、ステップA1に戻る。
【0052】
一方、ステップA15において経過時間が所定時間に達していないと判定した場合は(ステップA15;No)、CPUは、タイマーフラグがONに設定されており、且つ、移動検知フラグがONに設定されているかを判定する(ステップA21)。そして、フラグが共にONに設定されていると判定した場合は(ステップA21;Yes)、メモリに格納されている測位位置を消去して(ステップA23)、ステップA1に戻る。
【0053】
また、ステップA21において、タイマーフラグ及び移動検知フラグの何れか又は両方がOFFに設定されていると判定した場合は(ステップA21;No)、CPUは、メモリに格納されている測位位置と、許可位置記憶部40に記憶されている許可位置との合致判定を行う(ステップA25)。尚、位置の合致判定は、測位位置と許可位置間の距離を算出し、算出した距離が所定の閾値距離(例えば“10m”)未満である場合に、合致したと判定することにすれば好適である。
【0054】
そして、位置が合致したと判定した場合は(ステップA27;Yes)、CPUは、認証キー記憶部70に記憶されている認証キーを外部バスに出力することで認証キーを提供して(ステップA29)、ステップA1に戻る。また、位置が合致しなかったと判定した場合は(ステップA27;No)、認証キーを出力せずに、ステップA1に戻る。
【0055】
2.第2実施形態
2−1.構成及び動作
図5は、第2実施形態における認証キー提供装置2の機能構成を示すブロック図である。尚、認証キー提供装置2の概略外観は第1実施形態における認証キー提供装置1と同一であるため、図示を省略する。また、認証キー提供装置1と同一の構成要素については同一の符号を付して、説明を省略する。
【0056】
認証キー提供装置2では、処理部50に測位位置保持部51が設けられておらず、その代わりに、照合部52の後段に、照合部52による照合結果を保持するレジスタとしての機能を有する照合結果保持部58が設けられている。例えば、照合部52による照合結果が承認である場合は“1”が保持され、照合結果が否認である場合は“0”が保持される。
【0057】
照合結果保持部58は、移動許否判定部55(リセット部57)からのリセット信号S4のOFFからONへの切り替わりに応じて(いわゆる立ち上がりに応じて)、保持内容をリセットする。また、提供制御部53は、照合結果保持部58に記憶されている保持内容が承認(“1”)である場合に限り、認証キー記憶部70と外部バスとを接続して、認証キーを提供する。
【0058】
2−2.作用効果
第2実施形態によれば、認証キー提供装置2において、照合部52により測位位置と許可位置との照合が随時実行され、照合部52により承認された場合に、その旨が照合結果保持部58に保持される。そして、移動許否判定部55により不許可と判定された場合は、照合結果保持部58の保持内容がリセットされる。かかる構成により、第1実施形態と同様に、屋内等のGPS衛星信号の受信が困難な状況下におけるデータの復号が可能になるとともに、暗号化されたデータと認証キーとを分離したことで、セキュリティの強化が図られる。
【0059】
2−3.変形例
認証キーの提供を処理部50においてハードウェア的に実現するのではなく、第1実施形態の変形例と同様に、CPU等のプロセッサによってソフトウェア的に実現することにしてもよい。この場合は、ROMやフラッシュROM等の記憶装置に第2認証キー提供プログラムを格納しておき、CPUが、この第2認証キー提供プログラムを読み出して実行することで、第2認証キー提供処理を行うようにする。
【0060】
図6及び図7は、第2認証キー提供処理の流れを示すフローチャートである。
先ず、CPUは、操作部10を介して測位指示操作がなされたか否かを判定し(ステップB1)、なされたと判定した場合は(ステップB1;Yes)、測位制御処理を行い、GPS受信部30に現在位置を測位させるように制御する(ステップB3)。
【0061】
次いで、CPUは、照合フラグをOFFに設定するとともに(ステップB5)、タイマーフラグをOFFに設定する(ステップB7)。そして、タイマーをリセット・スタートさせた後(ステップB9)、GPS受信部30により測位された測位位置と、許可位置記憶部40に記憶されている許可位置との合致判定を行う(ステップB11)。
【0062】
そして、CPUは、位置が合致したと判定した場合は(ステップB13;Yes)、照合フラグをONに設定して(ステップB15)、ステップB1に戻る。また、位置が合致しなかったと判定した場合は(ステップB13;No)、ステップB1に戻る。
【0063】
一方、ステップB1において測位指示操作がなされなかったと判定した場合は(ステップB1;No)、CPUは、移動検知センサ60により移動が検知されたか否かを判定する(ステップB17)。そして、移動が検知されたと判定した場合は(ステップB17;Yes)、移動検知フラグをONに設定して(ステップB19)、ステップB1に戻る。
【0064】
また、ステップB17において移動が検知されなかったと判定した場合は(ステップB17;No)、CPUは、タイマーをスタートさせてからの経過時間が所定時間(例えば“1分”)に達したか否かを判定し(ステップB21)、達したと判定した場合は(ステップB21;Yes)、タイマーフラグをONに設定する(ステップB23)。また、移動検知フラグをOFFに設定して(ステップB25)、ステップB1に戻る。
【0065】
一方、ステップB21において経過時間が所定時間に達していないと判定した場合は(ステップB21;No)、CPUは、タイマーフラグがONに設定されており、且つ、移動検知フラグがONに設定されているかを判定する(ステップB27)。そして、フラグが共にONに設定されていると判定した場合は(ステップB27;Yes)、照合フラグをOFFに設定して(ステップB29)、ステップB1に戻る。
【0066】
また、ステップB27において、タイマーフラグ及び移動検知フラグの何れか又は両方がOFFに設定されていると判定した場合は(ステップB27;No)、CPUは、照合フラグがONに設定されているか否かを判定する(ステップB31)。
【0067】
そして、照合フラグがONに設定されていると判定した場合は(ステップB31;Yes)、CPUは、認証キー記憶部70に記憶されている認証キーを外部バスに出力して(ステップB33)、ステップB1に戻る。また、照合フラグがOFFに設定されていると判定した場合は(ステップB31;No)、認証キーを出力せずに、ステップB1に戻る。
【0068】
3.他の実施例
3−1.携帯型電子機器
本発明を適用可能な携帯型電子機器は、USB接続可能な認証キー提供装置に限られるわけではなく、暗号化されたデータが記憶された電子機器に装着可能な携帯型電子機器であれば任意の機器に適用可能である。
【0069】
3−2.衛星測位システム
上述した実施形態では、衛星測位システムとしてGPSを例に挙げて説明したが、WAAS(Wide Area Augmentation System)、QZSS(Quasi Zenith Satellite System)、GLONASS(GLObal NAvigation Satellite System)、GALILEO等の他の衛星測位システムであってもよい。
【0070】
3−3.現在位置の測位
上述した実施形態では、GPS受信部30が、操作部10から測位指示操作を検出した場合に現在位置を測位するものとして説明したが、操作部10を設けずに、GPS受信部30が継続的(例えば1秒毎)に現在位置を測位する構成としてもよい。
【0071】
3−4.認証キーの提供
例えば、外部から処理部50に対して、認証キーの提供要求を受けた時にのみ照合部52を作動させて、認証キーを提供する或いは提供しないこととしてもよい。もちろん、図4のステップA25の前に、外部から認証キーの提供要求を受けたか否かを判定し、受けたと判定した場合に、ステップA25〜A29の処理を行うこととしてもよい。図7でも同様に、ステップB31の前に、外部から認証キーの提供要求を受けたか否かを判定し、受けたと判定した場合に、ステップB31及びB33の処理を行うこととしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】認証キー提供装置の概略外観図。
【図2】第1実施形態における認証キー提供装置の機能構成を示すブロック図。
【図3】第1認証キー提供処理の流れを示すフローチャート。
【図4】第1認証キー提供処理の流れを示すフローチャート。
【図5】第2実施形態における認証キー提供装置の機能構成を示すブロック図。
【図6】第2認証キー提供処理の流れを示すフローチャート。
【図7】第2認証キー提供処理の流れを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0073】
1、2 認証キー提供装置、 10 操作部、 20 GPSアンテナ、
30 GPS受信部、 40 許可位置記憶部、 50 処理部、
51 測位位置保持部、 52 照合部、 53 提供制御部、 54 タイマー部、
55 移動許否判定部、 56 移動検知結果保持部、 57 リセット部、
58 照合結果保持部、 60 移動検知部、 70 認証キー記憶部、
80 電源回路、 90 USB端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器に装着され、復号鍵記憶部に記憶されている復号鍵を前記電子機器に提供する携帯型電子機器であって、
測位用信号を受信して現在位置を測位する測位部と、
前記復号鍵の提供の許否の判定に用いる許可位置を記憶する許可位置記憶部と、
前記測位部により測位された測位位置と前記許可位置記憶部に記憶された許可位置とを照合する照合部と、
前記測位部の測位からの経過時間が所定時間に達したか否かを判定する経過時間判定部と、
自機の移動を検知する移動検知部と、
前記経過時間判定部の判定結果と前記移動検知部の検知結果とを用いて移動許容状態に有るか否かを判定する移動許否判定部と、
を備え、前記照合部により承認され、且つ、前記移動許否判定部により許可されている場合に前記復号鍵を提供し、それ以外の場合には提供しないことを特徴とする携帯型電子機器。
【請求項2】
前記移動許否判定部は、前記経過時間判定部により前記所定時間に達したと判定された後に前記移動検知部による検知がなされた場合に不許可と判定し、それ以外の場合に許可と判定する請求項1に記載の携帯型電子機器。
【請求項3】
ユーザの測位指示操作を検出する測位指示操作検出部を更に備え、
前記測位部は前記測位指示操作検出部の検出に応じて測位を実行し、
前記照合部は前記測位部により測位された最新の測位位置と前記許可位置とを照合し、
前記経過時間判定部は前記測位指示操作検出部の検出に応じた前記測位部による最新の測位からの経過時間を判定する、
請求項1又は2に記載の携帯型電子機器。
【請求項4】
前記測位部により測位された最新の位置を更新して保持する測位位置保持部と、
前記移動許否判定部により不許可と判定された場合に前記測位位置保持部の保持内容をリセットする保持位置リセット部と、
を更に備え、
前記照合部は前記測位位置保持部に保持されている測位位置と前記許可位置とを照合し、測位位置が保持されていない場合には照合結果を否認とする、
請求項3に記載の携帯型電子機器。
【請求項5】
前記照合部は前記測位位置と前記許可位置との照合を随時実行し、
前記照合部により承認された場合に、その旨を保持する照合結果保持部と、
前記移動許否判定部により不許可と判定された場合に前記照合結果保持部の保持内容を否認とする照合結果リセット部と、
を更に備えた請求項1〜3の何れか一項に記載の携帯型電子機器。
【請求項6】
前記照合部は、前記測位位置と前記許可位置間の距離が所定の近距離条件を満たす場合に照合結果を承認とする請求項1〜5の何れか一項に記載の携帯型電子機器。
【請求項7】
電子機器に装着される携帯型電子機器が、復号鍵記憶部に記憶されている復号鍵を前記電子機器に提供するための復号鍵提供方法であって、
測位用信号を受信して現在位置を測位することと、
前記復号鍵の提供の許否の判定に用いる許可位置を記憶することと、
前記測位された測位位置と前記許可位置とを照合することと、
前記測位からの経過時間が所定時間に達したか否かを判定することと、
前記携帯型電子機器の移動を検知する移動検知部の検知結果と前記所定時間に達したか否かの判定結果とを用いて移動許容状態に有るか否かを判定することと、
前記照合の結果が承認であり、且つ、前記移動許容状態にあると判定された場合に前記復号鍵を提供し、それ以外の場合には提供しないことと、
を含む復号鍵提供方法。
【請求項8】
電子機器に装着される携帯型電子機器に内蔵されたコンピュータに、当該携帯型電子機器の復号鍵記憶部に記憶されている復号鍵を前記電子機器に提供させるためのプログラムであって、
測位用信号を受信して現在位置を測位することと、
前記復号鍵の提供の許否の判定に用いる許可位置を記憶することと、
前記測位された測位位置と前記許可位置とを照合することと、
前記測位からの経過時間が所定時間に達したか否かを判定することと、
自機の移動を検知することと、
前記携帯型電子機器の移動を検知する移動検知部の検知結果と前記所定時間に達したか否かの判定結果とを用いて移動許容状態に有るか否かを判定することと、
前記照合の結果が承認であり、且つ、前記移動許容状態にあると判定された場合に前記復号鍵を提供し、それ以外の場合には提供しないことと、
を前記コンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−177370(P2009−177370A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12115(P2008−12115)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】