説明

携帯型電子機器

【課題】第1筐体1と第2筐体2が連結部材を介して互いに連結され、全閉状態と全開状態を選択的に設定することが可能な携帯型電子機器において、全開状態にて第2筐体2を第1筐体1側へ引き寄せる過程で第2筐体2の姿勢を安定させ、第2筐体2が第1筐体1と最も接近した状態では第1筐体1に対する第2筐体2の姿勢を一定に保持する。
【解決手段】本発明に係る携帯型電子機器においては、前記連結部材と第2筐体2との対向部に、全開状態で両筐体が最も離間した状態から最も接近した状態へ移行する過程の前半で互いに摺接すべき受け止め面33とスライド面29が形成されると共に、第1筐体1と第2筐体2の対向部には、前記過程の後半で互いに係脱可能に係合すべき凸部10と凹部20が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の筐体を互いに連結して構成されている携帯型電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の筐体を互いに連結してなる携帯型電子機器において、両筐体の表面にそれぞれ表示面を配備して、両表示面によって多くの情報をユーザに提供することが可能な携帯型電子機器が知られている。
【0003】
この様な携帯型電子機器においては、例えば一対の筐体がそれぞれの側部にて互いにリンク部材によって連結され、該リンク部材の回動動作によって、一対の筐体が互いに重なって下側の筐体(第1筐体)の表示面(第1表示面)が上側の筐体(第2筐体)により覆われ、第2筐体の表示面(第2表示面)のみが露出した片面露出状態(全閉状態)と、第1筐体に対して第2筐体が移動して、両筐体の表示面が同一平面上に露出した両面露出状態(全開状態)との間で、両筐体が互いに相対移動を行なう(特許文献1参照)。
【0004】
この様な携帯型電子機器によれば、全開状態にて第1表示面と第2表示面が同一平面上に揃うため、2つの表示面を1つの大きな画面として、大画面による画像の表示が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−71588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第1筐体と第2筐体が連結部材を介して互いに連結され、第1筐体の表示面が第2筐体の背面によって覆われて第2筐体の表示面が露出した全閉状態と、両筐体の表示面を同一平面上に露出させた全開状態の少なくとも2つの状態を選択的に設定することが出来る携帯型電子機器においては、全開状態で第2筐体を第1筐体側へ引き寄せる構成を採用することにより、第1筐体の表示面と第2筐体の表示面とを同一平面上で互いに接近させ、これによって2つの表示面の間隔を狭めることが出来る。従って、全開状態で2つの表示面を1つの画面として画像を表示する場合、両表示面に表示される画像に大きな途切れはなくなる。
【0007】
しかしながら、上記の携帯型電子機器においては、前記連結部材の先端部に対して第2筐体が回転可能に枢支されることになるため、単に全開状態で第2筐体を第1筐体側へ変位可能な構成を採用しただけでは、全開状態にて第2筐体を第1筐体側へ引き寄せる過程で第2筐体が回転して第2筐体の姿勢が安定しないばかりでなく、最終的に第2筐体が第1筐体と最も接近した状態では第2筐体の姿勢を一定に保持することが出来ない問題がある。
【0008】
そこで本発明の目的は、全閉状態と全開状態の少なくとも2つの状態を選択的に設定することが出来、全開状態では第2筐体を第1筐体側へ変位させることが可能な携帯型電子機器において、全開状態にて第2筐体を第1筐体側へ引き寄せる過程で第2筐体の姿勢を安定させ、第2筐体が第1筐体と最も接近した状態では第1筐体に対する第2筐体の姿勢を一定に保持することが出来る携帯型電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る携帯型電子機器においては、第1筐体と第2筐体が連結部材を介して互いに連結され、第1筐体の表面が第2筐体の背面によって覆われて第2筐体の表面が露出した全閉状態と、前記連結部材の回動動作により前記全閉状態から第2筐体が移動し、両筐体の表示面が同一平面上に露出した全開状態の少なくとも2つの状態を選択的に設定することが出来る。
【0010】
ここで、前記連結部材の先端部と第2筐体との間には、連結部材の先端部に対して第2筐体を回転可能且つスライド可能に支持する支持機構が介在して、前記全開状態で第1筐体と第2筐体を互いに接近離間させることが可能である。
前記連結部材と第2筐体との対向部には、全開状態で両筐体が最も離間した状態から最も接近した状態へ移行する過程の前半で互いに摺接すべき受け止め面とスライド面が形成されると共に、第1筐体と第2筐体の対向部には、前記過程の後半で互いに係脱可能に係合すべき凸部と凹部が設けられている。
【0011】
上記本発明の携帯型電子機器においては、全開状態で両筐体が最も離間した状態から最も接近した状態へ移行する過程で、先ず、前記受け止め面とスライド面が互いに摺接し、その後、受け止め面とスライド面が互いに離間すると共に、前記凸部と凹部が互いに係合する。
従って、前記過程の前半では、受け止め面とスライド面の摺接によって、第1筐体に対する第2筐体の姿勢が維持される。その後、前記過程の後半では、凸部と凹部の係合によって、第1筐体に対する第2筐体の姿勢が保持される。
【0012】
具体的態様において、前記連結部材と第2筐体との間には、前記受け止め面とスライド面とを互いに圧接させる方向に第2筐体を回転付勢するバネが介在している。
該具体的態様によれば、前記過程の前半で受け止め面上をスライド面が摺動する過程で、受け止め面に対してスライド面が圧接されることにより、第1筐体に対する第2筐体の姿勢が維持される。
【0013】
又、具体的態様において、全開状態で両筐体が最も離間した状態から最も接近した状態へ移行する過程で、前記受け止め面とスライド面が互いに離間すると同時に、又は、その直前若しくは直後に前記凸部と凹部が互いの係合を開始する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る携帯型電子機器によれば、全開状態にて第2筐体を第1筐体側へ引き寄せる過程で第2筐体の姿勢が安定し、第2筐体が第1筐体と最も接近した状態では第1筐体に対する第2筐体の姿勢が一定に保持される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る携帯型電子機器の全閉状態を示す斜視図である。
【図2】図2は、該携帯型電子機器を全閉状態で裏返して示す斜視図である。
【図3】図3は、該携帯型電子機器のチルト状態を示す斜視図である。
【図4】図4は、該携帯型電子機器のチルト状態を背面側から見た斜視図である。
【図5】図5は、該携帯型電子機器の回動全開状態を示す斜視図である。
【図6】図6は、該携帯型電子機器を回動全開状態で裏返して示す斜視図である。
【図7】図7は、該携帯型電子機器のスライド全開状態を示す斜視図である。
【図8】図8は、該携帯型電子機器をスライド全開状態で裏返して示す斜視図である。
【図9】図9は、該携帯型電子機器の分解斜視図である。
【図10】図10は、該携帯型電子機器を裏返した状態の分解斜視図である。
【図11】図11は、図10の状態から更に一部分解した携帯型電子機器の斜視図である。
【図12】図12は、図11の状態から更に一部を分解した携帯型電子機器の斜視図である。
【図13】図13は、該携帯型電子機器の断面図である。
【図14】図14は、図8の状態から一部を分解した携帯型電子機器の斜視図である。
【図15】図15は、携帯型電子機器の回動全開状態を示す平面図である。
【図16】図16は、回動全開状態(a)から中間状態(b)を経てスライド全開状態(c)へ移行する過程における、図15C−C線に沿う要部の断面図である。
【図17】図17は、全閉状態(a)から回動全開状態(b)を経てスライド全開状態(c)へ移行する過程におけるフレキシブルリードの変形状態を示す断面図である。
【図18】図18は、全閉状態において第2筐体に形成されている一対の凸部を示す斜視図である。
【図19】図19は、図18のE部を拡大して示す斜視図である。
【図20】図20は、全閉状態において第2筐体に形成されている一対の凸部を示す平面図である。
【図21】図21は、図20のF部を拡大して示す平面図である。
【図22】図22は、凸部が形成されている位置における第2筐体の要部を示す拡大断面図である。
【図23】図23は、全開状態での第1筐体と第2筐体の対向部に沿って配備されているフック構造を示す拡大断面図である。
【図24】図24は、第2ディスプレイのホルダー部材から第2ディスプレイと前面キャビネットを分解した状態を示す斜視図である。
【図25】図25は、第2ディスプレイのホルダー部材とフレーム部材の分解斜視図である。
【図26】図26は、本発明に係る携帯型電子機器の全閉状態からチルト状態を経てスライド全開状態に至る過程の前半を示す一連の側面図である。
【図27】図27は、同上の過程の後半を示す一連の側面図である。
【図28】図28は、本発明に係る携帯型電子機器のスライド全開状態からチルト状態を経て全閉状態に至る過程の前半を示す一連の側面図である。
【図29】図29は、同上の過程の後半を示す一連の側面図である。
【図30】図30は、第2筐体の凸部が連結部材の貫通孔に係合する直前の状態を示す断面図である。
【図31】図31は、第2筐体の凸部が連結部材の貫通孔に係合した状態を示す断面図である。
【図32】図32は、第2筐体の背面に形成されている逃げ面の領域を表わす斜視図である。
【図33】図33は、両筐体の全閉状態における逃げ面の傾斜状態を模式的に表わす図である。
【図34】図34は、全閉状態からチルト状態への移行過程における第2筐体の推移を示す図である。
【図35】図35は、ヒンジユニットの正面図である。
【図36】図36は、ヒンジユニットの一部破断正面図である。
【図37】図37は、ヒンジユニットに内蔵されたカム機構のカム曲線の第1例とその機能を説明する図である。
【図38】図38は、ヒンジユニットに内蔵されたカム機構のカム曲線の第2例とその機能を説明する図である。
【図39】図39は、マグネットと磁気センサーの動作を説明する図である。
【図40】図40は、本発明に係る携帯型電子機器をチルト状態(a)及びスライド全開状態(b)にて机上に置いた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態である携帯型電子機器は、図1〜図8に示す如く、表面に第1表示面(11)を有する第1筐体(1)と、表面に第2表示面(21)を有する第2筐体(2)とが、連結機構(3)を介して互いに連結されている。ここで、第1表示面(11)及び第2表示面(21)には、画像だけでなく文字又は映像を表示することが出来る。
又、図2の如く、第1筐体(1)の背面には電池蓋(14)が配備されると共に、該電池蓋(14)から露出させて撮影レンズ(9)が配備されている。
【0017】
尚、以下の説明において携帯型電子機器の構成要素の各部位を特定する場合、図1に示された携帯型電子機器を、図中の矢印Sで示すユーザの視線に沿って見た場合の「前(手前側)」「後」「左」「右」を、他の図面においても、携帯型電子機器の姿勢に拘わらず「前」「後」「左」「右」と呼ぶ。
【0018】
図13に示す如く、第1筐体(1)の内部には、第1表示面(11)に面して第1タッチパネル(13)と第1ディスプレイ(12)が配備され、撮影レンズ(9)に面してカメラ(91)が配備されている。又、第1筐体(1)の内部には電池(15)が収容され、該電池(15)は、電池蓋(14)を取り外すことによって交換が可能となっている。
一方、第2筐体(2)の内部には、第2表示面(21)に面して第2タッチパネル(23)と第2ディスプレイ(22)が配備されている。
【0019】
第1タッチパネル(13)の表面には、第1ディスプレイ(12)及び第1タッチパネル(13)よりも大きな広さのガラス板(16)が設置され、該ガラス板(16)の表面が第1表示面(11)となって第1ディスプレイ(12)の画像が映出される。
又、第2タッチパネル(23)の表面には、第2ディスプレイ(22)及び第2タッチパネル(23)よりも大きな広さのガラス板(24)が設置され、該ガラス板(24)の表面が第2表示面(21)となって第2ディスプレイ(22)の画像が映出される(図20参照)。
尚、第1筐体(1)に設置されたガラス板(16)の両側に、第1筐体(1)の表面(110)(110)が露出している。
【0020】
本発明に係る携帯型電子機器は、図1及び図2に示す如く第1筐体(1)の表面を第2筐体(2)の裏面によって覆うと共に第2筐体(2)の表面のみを露出させた全閉状態と、図3及び図4に示す如く第2筐体(2)を後方へ移動させることによって両筐体(1)(2)の表面を露出させ且つ第1筐体(1)の表面に対して第2筐体(2)の表面を90度以上、180度未満の開き角度で傾斜させたチルト状態と、図5及び図6に示す如く第2筐体(2)を後方へ回動させることによって両筐体(1)(2)の表面を同一平面上に露出させた回動全開状態と、図7及び図8に示す如く両筐体(1)(2)の表面を同一平面上に露出させた状態で第2筐体(2)を第1筐体(1)側へスライドさせたスライド全開状態の4つの状態を選択的に設定することが出来る。
【0021】
第1筐体(1)と第2筐体(2)とを互いに連結する連結機構(3)は、図9及び図10に示す如く、左右に伸びるアーム連結部(32a)の両端部に、前後方向に伸びる左右一対の連結アーム(31)(31)を突設してなるU字状の連結部材(32)を具えている。
連結アーム(31)は、両筐体の表示面に直交する面上でL字形状に屈曲するL字状を呈し、該L字形状の角部にて互いに交叉する第1アーム部(35)と第2アーム部(36)から構成されている。
【0022】
右側の連結アーム(31)の基端部(第1アーム部(35)の基端部)は、後述の如くスプリング付きのカム機構を内蔵したヒンジユニット(4)を介して、第1筐体(1)の右側面後方端部に連結され、左側の連結アーム(31)の基端部(第1アーム部(35)の基端部)は、カム機構を内蔵しないダミーのヒンジユニット(41)を介して、第1筐体(1)の左側面後方端部に連結されている。
【0023】
又、右側の連結アーム(31)の先端部(第2アーム部(36)の先端部)は、第1のヒンジ部材(5)を介して、第2筐体(2)の背面右端部に連結され、左側の連結アーム(31)の先端部(第2アーム部(36)の先端部)は、第2のヒンジ部材(51)を介して、第2筐体(2)の背面左端部に連結されている。
【0024】
ヒンジユニット(4)(41)は連結アーム(31)の基端部を第1筐体(1)に連結する第1枢軸を構成する一方、ヒンジ部材(5)(51)は連結アーム(31)の先端部を第2筐体(2)に連結する第2枢軸を構成し、第1枢軸と第2枢軸は互いに平行となっている。
【0025】
又、各連結アーム(31)の第2アーム部(36)には、第2筐体(2)との対向部に、摺接面(311)が形成されると共に、第2筐体(2)には、全閉状態で摺接面(311)と対向する摺接受け面(211)が形成されている。
【0026】
第1筐体(1)に内蔵されている電子部品と第2筐体(2)に内蔵されている電子部品とは、フレキシブルリード(7)によって互いに接続されている。該フレキシブルリード(7)は、第1筐体(1)の内部から連結アーム(31)の内部を経て第2筐体(2)の内部へ延びており、第1筐体(1)の内部に収容される第1リード部(71)と、連結アーム(31)の内部に収容される第2リード部(72)と、第2筐体(2)の内部に収容された第3リード部(73)とを有している。
【0027】
フレキシブルリード(7)の長さには、第1筐体(1)と第2筐体(2)の相対移動を許容し得る必要最小限の余裕が設けられている。
これによって、第2筐体(2)は第1筐体(1)に対して図26(a)〜(d)及び図27(a)〜(d)に示す一連の相対移動を行なうことが可能となっている。
【0028】
ヒンジユニット(4)は、図3及び図4に示すチルト状態で第1筐体(1)に対して連結部材(32)を軟係止すると共に、連結部材(32)をチルト状態での回転角度を中心とする一定の角度範囲内でチルト状態での回転角度に向けて付勢している。又、ヒンジユニット(4)は、図5及び図6に示す回動全開状態を含む一定の角度範囲内で連結部材(32)を回動全開状態での回転角度に向けて付勢している。
尚、図5及び図6に示す回動全開状態では、連結部材(32)が第1筐体(1)によって受け止められることにより、連結部材(32)は回動全開状態の回転角度に保持される。
【0029】
具体的には、ヒンジユニット(4)は、図35及び図36に示す様に、互いに相対回転可能な固定カム片(42)と可動カム片(43)を具え、固定カム片(42)に形成されたカム面(45)と可動カム片(43)に形成されたカム面(46)とが互いに対向している。
又、固定カム片(42)と可動カム片(43)の間には、両カム片(42)(43)のカム面(45)(46)を互いに圧接せしめるスプリング(47)が介在しており、該スプリング(47)の付勢と両カム面(45)(46)の摺接によって、両カム片(42)(43)を相対回転させるトルクが発生する。
【0030】
ヒンジユニット(4)の固定カム片(42)と可動カム片(43)はそれぞれ、図9に示す連結アーム(31)の第2アーム部(36)と第1筐体(1)の側部に連結される。
斯くして、連結機構(3)を構成するヒンジユニット(4)には、スプリング付きのカム機構が内蔵され、該ヒンジユニット(4)によって、第1筐体(1)に対する第2筐体(2)の回動に抵抗力或いは付勢力としてのトルクが付与される。
【0031】
ヒンジユニット(4)に内蔵されたカム機構は、図37或いは図38に示すカム曲線に従って動作する。該カム曲線は、0°〜180°の角度範囲内に、2つの山部と、この2つの山部の間に介在する1つの谷部とを有している。
カム曲線の0°側の大きな山部(第1山部)は全閉状態からチルト状態への移行過程で機能し、全閉状態では、該山部の0°側の傾斜部(カム状態P1)によって、第1筐体(1)及び第2筐体(2)を閉じ状態に保持すると共に、全閉状態とチルト状態の中間状態を経た後は、第1筐体(1)及び第2筐体(2)をチルト状態へ向けて付勢するものである。
【0032】
カム曲線の180°側の小さな山部(第2山部)はチルト状態から回動全開状態への移行過程で機能し、回動全開状態では、該山部の180°側の傾斜部(カム状態P3)によって、第1筐体(1)及び第2筐体(2)を回動全開状態に保持するものである。
又、カム曲線の谷部(カム状態P2)によって、第1筐体(1)及び第2筐体(2)がチルト状態に保持される。
【0033】
図37に示す第1例のカム曲線においては、全閉状態にてカム機構が発生すべきトルクは、第2筐体(2)のみを把持して持ち上げたときに第1筐体(1)の自重によってカム機構に作用する第1トルク値T1よりも僅かに大きな値に設定されている。
【0034】
一方、図38に示す第2例のカム曲線は、全閉状態とチルト状態の中間の状態で、第1山部の頂部の直前の傾斜部(カム状態P1′)が機能するものであって、全閉状態とチルト状態の中間の状態でカム機構が発生するトルクは、第2筐体(2)のみを把持して持ち上げたときに第1筐体(1)の自重によってカム機構に作用する第1トルク値T1よりも大きな値に設定されると共に、全閉状態にてカム機構が発生するトルクは、前記トルク値T1よりも小さな第2トルク値T2に設定されている。
【0035】
図9に示す如く、第1のヒンジ部材(5)には、その回転軸(第2枢軸)を中心としてトーションバネ(6)が取り付けられ、該トーションバネ(6)によって第2筐体(2)を、図27(b)に示すチルト状態での開き角度θを縮小する方向に回転付勢している。
【0036】
又、図10に示す如く、第1筐体(1)の両側面後端部には、連結部材(32)の連結アーム(31)(31)の第1アーム部(35)(35)を収容すべき収容部(103)(103)が凹設されている。
一方、第2筐体(2)の背面両側部には、連結部材(32)のアーム連結部(37)と第2アーム部(36)(36)とを収容すべき収容部(204)(203)(203)が凹設されている。
【0037】
更に又、連結部材(32)のアーム連結部(32a)の中央部には、横長の貫通孔(312)が開設される一方、第2筐体(2)には、収容部(204)の中央部に、全閉状態で前記貫通孔(312)に係合すべき横長の凸部(218)が形成されている。
【0038】
第2筐体(2)の両側壁(214)(214)はそれぞれ、全閉状態にて第2筐体(2)の表面から第1筐体(1)側へ向かう高さが大きな第1側壁部(212)と、第2筐体(2)の表面から第1筐体(1)側へ向かう高さが小さな第2側壁部(213)とを有し、左右一対の第1側壁部(212)(212)は、第2筐体(2)の両側の収容部(203)(203)の両側に位置している。
又、第1筐体(1)の表面と対向する第1側壁部(212)の端面と第2側壁部(213)の端面の間には、全閉状態で第1筐体(1)の表面に対して傾斜する指掛かり面(215)が形成されている。
【0039】
又、図10に示す如く、連結部材(32)の両連結アーム(31)(31)にはそれぞれ、第2筐体(2)との対向部に、第2筐体(2)を受け止めるための受け止め面(33)が形成されると共に、第2筐体(2)の背面両端部にはそれぞれ、受け止め面(33)と摺接すべきスライド面(29)が形成されている。
【0040】
図3及び図4に示すチルト状態や、図5及び図6に示す回動全開状態では、第2筐体(2)のスライド面(29)が連結アーム(31)の受け止め面(33)に当接して、連結アーム(31)に対する第2筐体(2)の回動が受け止められ、これによって、チルト状態や回動全開状態における第2筐体(2)の連結アーム(31)に対する相対姿勢が規定されることになる。
【0041】
図12に示す如く、第2筐体(2)の内部に設置された板金部材(28)上には、前後方向にスライドが可能なU字状のスライド部材(83)が配備されると共に、該スライド部材(83)を覆って、U字状の支持部材(81)が固定されている(図14参照)。
図12の如く、スライド部材(83)の左右両端部にはアーム部(84)(84)が突設されている。又、支持部材(81)の左右両端部には摺動ガイド部材(82)(82)が取り付けられている。
【0042】
そして、スライド部材(83)のアーム部(84)(84)が、支持部材(81)の摺動ガイド部材(82)(82)と板金部材(28)との間に挟持されて、板金部材(28)上のスライド部材(83)の前後方向のスライドが案内されている。
前述の第1のヒンジ部材(5)と第2のヒンジ部材(51)はそれぞれ、第2筐体(2)上の長孔(219)を貫通し、その先端部がスライド部材(83)のアーム部(84)(84)の両側部に枢支連結されている。
【0043】
これによって、スライド部材(83)のアーム部(84)(84)に対して第2筐体(2)を前後方向にスライドさせるスライド機構(8)が構成され、第2筐体(2)は、図5及び図6に示す回動全開状態と、図7及び図8に示すスライド全開状態との間で、前後にスライドすることが可能となっている。
【0044】
回動全開状態にて第2筐体(2)と対向することとなる第1筐体(1)の後方端面には、図15の如く回動全開状態における第1筐体(1)の前方端面へ向けて突出する凸部(10)が形成される一方、回動全開状態にて第1筐体(1)と対向することとなる第2筐体(2)の前方端面には、図10に示す如く凹部(20)が形成されており、凸部(10)と凹部(20)は図16(a)(b)(c)に示す如く互いに係脱が可能である。
【0045】
図16(a)に示す回動全開状態では凸部(10)と凹部(20)とは互いに離脱しているが、図16(c)に示すスライド全開状態では、凸部(10)と凹部(20)とが互いに係合し、これによって第1筐体(1)と第2筐体(2)とが互いに連結され、第1表示面(11)と第2表示面(21)とが同一平面上に揃った状態が維持される。
【0046】
図16(a)に示す如く回動全開状態では、第1筐体(1)と第2筐体(2)との間には、充分な大きさ(例えば数mm)のギャップTが設けられているが、図16(c)に示す如くスライド全開状態では、第1筐体(1)と第2筐体(2)が互いに当接若しくは僅かな距離(例えば0.1mm)をおいて対向することになる。
【0047】
更に上記携帯型電子機器においては、図18〜図21に示す様に、第1筐体(1)の前方端面の左右両端部に一対の凸部(200)(200)が形成されている。凸部(200)の突出高さHは、約0.3mmである。
より具体的には、図22に示す如く第2筐体(2)は、それぞれ合成樹脂製の前面キャビネット(2a)と背面キャビネット(2b)から構成され、一対の凸部(200)(200)は、前面キャビネット(2a)に形成され、前面キャビネット(2a)のガラス板(24)とは該ガラス板(24)の厚さ領域R1からずれた領域R2であって、且つ、図20に示す様に第2ディスプレイ(22)とは該ディスプレイ(22)の幅方向にずれた位置に配置されている。
【0048】
又、図23及び図24に示す如く、第2ディスプレイ(22)は、ステンレス鋼製の板金(板厚0.3mm)からなるホルダー部材(221)上に保持されており、該ホルダー部材(221)が第2筐体(2)の前面キャビネット(2a)に係止されている。
具体的には、ホルダー部材(221)は、図25に示す合成樹脂製の枠状フレーム部材(2c)に係合しており、前記第2ディスプレイが載置されるべき平板部(220)の前方側の端縁には、3つの係合受け片(222)(222)(222)が上向きに突設されている。
【0049】
一方、図23及び図24に示す様に、第2筐体(2)の前面キャビネット(2a)には、第2ディスプレイ(22)の前方側の端縁に沿って延びる側壁(217)が形成され、該側壁(217)の内面に、前記3つの係合受け片(222)(222)(222)に係合すべき3つの係合片(216)(216)(216)が第2ディスプレイ(22)に向けて突設されている。
図23の如く、係合受け片(222)と係合片(216)の係合状態では、係合受け片(222)に開設された孔(223)に係合片(216)が嵌合することによって、第2筐体(2)の前面キャビネット(2a)にホルダー部材(221)が係止される。
例えば、係合片(216)と係合受け片(222)の係合深さ(ホルダー部材(221)の板厚)Aは0.3mmに設定される。
【0050】
更に、図4に示す第2筐体(2)の背面(231)には、全閉状態からチルト状態への移行時に図3に示す第1筐体(1)の表面(110)(110)に沿って移動することとなる下端部(前方側の端部)に、図33に示す逃げ面(230)が形成されており、該逃げ面(230)は、全閉状態にて第1筐体(1)の表面から離間する方向に傾斜している。
又、該逃げ面(230)は、図32にハッチングで示す様に第2筐体(2)の背面(231)の全幅に跨って左右方向に延びる帯状領域に形成されている。
【0051】
図7に示す如く、第1筐体(1)には、右前方端部に磁気センサー(92)が内蔵されると共に、第2筐体(2)には、右前方端部にマグネット(93)が内蔵されており、図39(a)に示す様に、全閉状態では第1筐体(1)の磁気センサー(92)と第2筐体(2)のマグネット(93)とが互いに対向して近接することになる。
【0052】
図39(a)の全閉状態では、磁気センサー(92)がマグネット(93)からの磁気を強く受けてオンとなり、図39(b)に示す様に第2筐体(2)の背面下端部が第1筐体(1)の表面上を摺動して連結アーム(31)が所定の回転角度θ1(例えば21°)に達したとき、磁気センサー(92)はマグネット(93)から離間してマグネット(93)からの磁気が弱まるためにオンからオフとなる。
そして、図39(c)に示す様に連結アーム(31)が所定の回転角度θ1を上回っている状態で、磁気センサー(92)はオフを維持する。
【0053】
第1筐体(1)に内蔵されている制御回路(図示省略)は、磁気センサー(92)からのオン/オフ信号を受けて、図39(a)〜(b)に示す様に連結アーム(31)の回転角度が所定の回転角度θ1未満の場合は、チルト状態での機器制御は開始せず、図39(b)〜(c)に示す様に連結アーム(31)の回転角度が所定の回転角度θ1以上となったとき、チルト状態での機器制御を開始する。
【0054】
又、ヒンジユニット(4)に内蔵されたカム機構に、図38に示す第2例のカム曲線を採用した場合には、前記所定角度θ1は、第2筐体(2)のみを把持して持ち上げることにより両筐体(1)(2)が全閉状態とチルト状態の中間の状態まで開いたときの連結アーム(31)の回転角度よりも僅かに大きく設定される。
【0055】
上記携帯型電子機器によれば、図1及び図2に示す如く第1筐体(1)と第2筐体(2)とが重なって第2表示面(21)のみを露出させた全閉状態と、図3及び図4に示す如く前記全閉状態から第2筐体(2)を後方へ移動させて第1表示面(11)と第2表示面(21)の両方を露出させ且つ第1表示面(11)に対して第2表示面(21)を90度以上、180度未満の開き角度で傾斜させたチルト状態と、図5及び図6に示す如く前記チルト状態から第2筐体(2)を後方へ回動させて第1表示面(11)と第2表示面(21)の両方を同一平面上に露出させた回動全開状態と、図7及び図8に示す如く前記回動全開状態から第2筐体(2)を第1筐体(1)側へスライドさせて第1表示面(11)と第2表示面(21)を互いに接近させた位置で両表示面(11)(21)を同一平面上に露出させたスライド全開状態の4つの状態を選択的に設定することが出来る。
【0056】
図1及び図2に示す全閉状態では、図10に示す第1筐体(1)の収容部(103)(103)に連結アーム(31)(31)の第1アーム部(35)(35)が収容されると共に、第2筐体(2)の収容部(204)(203)(203)には、連結部材(32)のアーム連結部(37)と第2アーム部(36)(36)とが収容されて、連結機構(3)は両筐体(1)(2)の両側面や後方端面から突出することなく、機器全体がコンパクトに収まっている。
又、全閉状態では、図18に示す様に、第1筐体(1)の前方端面と第2筐体(2)の前方端面とが揃い、凸部(200)(200)は、両筐体(1)(2)の前方端面から前方へ向かって突出することになる。
【0057】
図3に示すチルト状態、図5に示す回動全開状態、及び図7に示すスライド全開状態の何れの状態においても、連結機構(3)は略全体が両筐体(1)(2)の背面側に隠れており、ユーザの通常の視線(図1の矢印S)からは、連結機構(3)の突出部分が見え難くなっている。
又、スライド全開状態では、図10に示す第1筐体(1)の収容部(103)(103)に第2筐体(2)の連結アーム(31)(31)の第1アーム部(35)(35)が収容されると共に、第2筐体(2)の凸部(200)(200)が収容されることになる。
【0058】
図26(a)〜(d)及び図27(a)〜(d)に示す様に、上記携帯型電子機器を全閉状態からチルト状態及び回動全開状態を経てスライド全開状態まで移行させる過程で、図26(a)に示す全閉状態で第2筐体(2)を後方へ押圧して僅かに移動させれば、その後は同図(b)〜(d)に示す様に、前記トーションバネ(6)の付勢によって、第2筐体(2)は破線の矢印の如く反時計方向へ回動し、これに伴って連結アーム(31)は実線の矢印の如く時計方向へ回転する。
これによって、第2筐体(2)は第2表示面(21)を上方若しくは斜め上方に向けたまま後方へ移動することになる。
【0059】
ヒンジユニット(4)に内蔵されたカム機構に、図37に示す第1例のカム曲線を採用した場合は、第2筐体(2)のみを把持して持ち上げたとしても、第1筐体(1)の自重によって、両筐体(1)(2)が全閉状態からチルト状態まで開くことはない。
両筐体(1)(2)を全閉状態からチルト状態まで移行させるときは、第1トルク値T1を上回るトルクをカム機構に作用させればよい。
【0060】
一方、ヒンジユニット(4)に内蔵されたカム機構に、図38に示す第2例のカム曲線を採用した場合、第2筐体(2)のみを把持して持ち上げると、第1筐体(1)の自重によって、両筐体(1)(2)が全閉状態とチルト状態の中間の状態まで僅かに開くことはあるが、チルト状態まで大きく開くことはない。
全開状態からチルト状態へ向けて両筐体(1)(2)を開く操作を行なうときは、第2トルク値T2を上回るトルクをカム機構に作用させればよい。従って、図26(a)に示す全閉状態で第2筐体(2)を後方へ押圧する際に必要な押圧力は小さなものとなる。
【0061】
又、第2筐体(2)のみを把持して持ち上げることにより両筐体(1)(2)が全閉状態とチルト状態の中間の状態(カム状態P1′)まで開いたとしても、そのときの連結アーム(31)の回転角度は図39(b)に示す所定角度θ1よりも小さいので、磁気センサー(92)はオフとならず、よってチルト状態での機器制御、例えば第1ディスプレイを起動する制御は開始されない。
従って、無用な機器動作による消費電力の増大を防止することが出来る。
【0062】
上述の如く、全閉状態からチルト状態へ移行する過程で、第34図に示す様に第2筐体(2)は水平姿勢から斜め姿勢へ徐々に姿勢を立ち上げつつ後方へ移動し、この過程で、第2筐体(2)の背面の下端部(前方側の端部)が、第1筐体(1)の表面(110)上を摺動することになる。
【0063】
しかしながら、第2筐体(2)の背面の下端部には逃げ面(230)が形成されているので、この様な逃げ面(230)が形成されていない場合と比較して、第2筐体(2)の背面の下端部が第1筐体(1)の表面(110)上を摺動するときの接触圧は低いものとなる。
従って、全閉状態からチルト状態への移行時に第1筐体(1)の表面(110)が受け得る傷を軽減することが出来る。
【0064】
図18(a)に示す全閉状態から同図(b)の開き状態まで第2筐体(2)を開く場合、一方の手で第1筐体(1)を把持し、他方の手の指先を第2筐体(2)の両側部に掛けて該筐体(2)を他方の手で挟持した状態で、該筐体(2)を斜めの姿勢まで持ち上げる操作を行なうことも可能である。
この際、全閉状態では、図26(a)に示す様に連結アーム(31)の先端部(第2筐体と連結されている部分)が第2筐体(2)の側壁(214)の第1側壁部(212)によって覆われているので、第2筐体(2)を挟持する手の指先は、第2筐体(2)の両側壁(214)(214)に接触することになり、指先に痛みを感じることなく、確実に第2筐体(2)を挟持することが出来る。
【0065】
特に、第1側壁部(212)の端面と第2側壁部(212)の端面の間には指掛かり面(215)が形成されているので、全閉状態で第2筐体(2)を手の指先で挟持するとき、指先を指掛かり面(215)に掛けることが出来、これによって第2筐体(2)を確実に持ち上げることが出来る。
【0066】
その後、図26(d)の状態を少し過ぎた時点で、前記ヒンジユニット(4)の付勢によって、連結アーム(31)は図27(a)の如く更に時計方向へ回転し、同図(b)の如くチルト状態の回転角度にて軟係止される。又、第2筐体(2)は前記トーションバネ(6)の付勢によって反時計方向に回動し、前記スライド面(29)が連結アーム(31)の受け止め面(33)に当接することによって、図27(b)に示すチルト状態の姿勢に保持される。
【0067】
従って、ユーザは、図26(a)に示す全閉状態で第2筐体(2)を後方へ押圧して僅かに移動させるだけで、その後は図27(b)に示すチルト状態まで自動的に第2筐体(2)が移動することになる。
【0068】
次に、図27(b)に示すチルト状態で第2筐体(2)を後方へ押圧して、連結アーム(31)を僅かに時計方向へ回転させれば、その後は、第2筐体(2)のスライド面(29)が連結アーム(31)の受け止め面(33)に当接したまま、連結アーム(31)が前記ヒンジユニット(4)の付勢によって図27(c)に示す回動全開状態の回転角度まで回転し、この回転角度で第1筐体(1)によって受け止められる。
この連結アーム(31)の回転に伴って第2筐体(2)は後方へ向けて回動し、最終的に第1表示面(11)と第2表示面(21)とが同一平面上に揃うことになる。
【0069】
更に、図27(c)に示す回動全開状態から第2筐体(2)を第1筐体(1)側へ引き寄せれば、図16(a)〜(b)に示す様に、第2筐体(2)のスライド面(29)が連結アーム(31)の受け止め面(33)上を摺動することによって、第2筐体(2)は水平姿勢のまま第1筐体(1)に接近する。
これと同時に、第1筐体(1)の凸部(10)に対して第2筐体(2)の凹部(20)が対向位置にて接近する。
尚、第2筐体(2)のスライド面(29)が連結アーム(31)の受け止め面(33)上を摺動する過程では、前記トーションバネ(6)の付勢力により、スライド面(29)が受け止め面(33)に圧接され、これによって第2筐体(2)の水平姿勢が安定したものとなる。
【0070】
更に第2筐体(2)を第1筐体(1)側へ引き寄せれば、図16(b)〜(c)に示す様に、第2筐体(2)のスライド面(29)が連結アーム(31)の受け止め面(33)から離間し、その直後に、第1筐体(1)の凸部(10)と第2筐体(2)の凹部(20)が係合を開始する。
そして、最終的には、図16(c)に示す如く第1筐体(1)の凸部(10)に第2筐体(2)の凹部(20)が深く係合する。
【0071】
この様にして、第2筐体(2)は図27(d)に示すスライド全開位置まで水平に移動し、第1筐体(1)と当接する。
この結果、図7に示す如く第1表示面(11)と第2表示面(21)とが互いに接近して、両表示面(11)(21)によって1つの大きな画面が形成されることになる。
【0072】
スライド全開状態では、図16(c)の如く第1筐体(1)の凸部(10)と第2筐体(2)の凹部(20)との係合によって、両筐体(1)(2)が互いに連結される。従って、この状態で第2表示面(21)を強くタッチ操作したとしても、第2筐体(2)は第1筐体(1)に対して一定の姿勢に保持されることになる。
【0073】
図17(a)(b)(c)は、全閉状態から回動全開状態を経てスライド全開状態に至る過程のフレキシブルリード(7)の屈曲変形の様子を表わしている。
図17(a)に示す全閉状態では、前述の如く、連結アーム(31)の第2アーム部(36)に形成された摺接面(311)と第2筐体(2)に形成された摺接受け面(211)とが互いに当接して、二点鎖線の矢印で示す方向に第2筐体(2)がスライドすることを阻止している。
【0074】
次に図17(b)に示す回動全開状態では、連結アーム(31)の回動に伴って、フレキシブルリード(7)は、第2リード部(72)と第3リード部(73)の間で大きく屈曲変形している。
そして図17(b)に示す状態から図中に矢印で示す様に第2筐体(2)を前方(図中の左方)へ距離Tだけスライドさせることによって、図17(c)に示すスライド全開状態に至る。この過程でフレキシブルリード(7)は、第2リード部(72)と第3リード部(73)の間の屈曲部が更に大きな曲率となって前方へ変位することになる。
【0075】
上記携帯型電子機器においては、図17(a)に示す全閉状態において第2筐体(2)が図中に鎖線の矢印で示す方向に移動することが阻止されているので、仮にスライド機構(8)の動作によって第2筐体(2)がスライドする場合にフレキシブルリード(7)に与えるべき余裕長さだけ、フレキシブルリード(7)の長さを短縮することが出来る。
【0076】
従って、フレキシブルリード(7)は、図17(a)〜(c)に示す連結アーム(31)の回動に伴うフレキシブルリード(7)の屈曲変形だけを考慮した長さに形成することが出来る。これによって、図17(a)に示す全閉状態でのフレキシブルリード(7)の弛みを必要最小限に抑制することが出来る。
【0077】
上記携帯型電子機器においては、図23に示す如く、合成樹脂製の前面キャビネット(2a)に係合片(216)が一体に突設されると共に、ステンレス鋼製のホルダー部材(221)に係合受け片(222)が一体に突設されているので、合成樹脂製の係合片(216)とステンレス鋼製の係合受け片(222)とが互いに係合することになる。
【0078】
尚、上述の合成樹脂製の係合片とステンレス鋼製の係合受け片からなるフック構造は、第1筐体(1)における第1ディスプレイ(12)の係止にも採用されている(図示省略)。
【0079】
従って、ともに合成樹脂製の係合片と係合受け片とが互いに係合していた従来の構成と比べて、係合受け片が合成樹脂製からステンレス鋼製に変更されたことに伴う板厚の減少分(上述の例では第1筐体側と第2筐体側の両方で約1.0mm)だけ、全開状態における第1ディスプレイ(12)と第2ディスプレイ(22)との間のギャップが小さくなる。
これによって、図7の如く2つの表示面(11)(21)が同一平面上に揃った状態(スライド全開状態)で両表示面(11)(21)を1つの画面として大画像を表示する場合に、途切れの軽微な良好な画像表示が実現される。
【0080】
上記携帯型電子機器においては、スライド全開状態の第2筐体(2)に対してチルト状態に向かう回動力を加えることにより、第1筐体(1)と第2筐体(2)を、スライド全開状態から回動全開状態を経ることなく直接にチルト状態へ移行させることが出来る。
図28及び図29は、スライド全開状態からチルト状態を経て全閉状態に至る過程において、第2筐体(2)の摺接受け面(211)に対して連結アーム(31)の摺接面(311)が摺動する様子を、第2筐体(2)を基準として表わしたものである。
【0081】
スライド全開状態では、図28(a)に示す如く連結アーム(31)の摺接面(311)と第2筐体(2)の摺接受け面(211)とは互いに離間しており、この状態から連結アーム(31)が矢印の様に回動することにより、図28(b)に示す如く第2筐体(2)の摺接受け面(211)に連結アーム(31)の摺接面(311)が摺接する。
【0082】
その後、連結アーム(31)が図29(d)に示す全閉状態まで回動することにより、図28(b)(c)及び図29(a)〜(d)に示す如く第2筐体(2)の摺接受け面(211)に対して連結アーム(31)の摺接面(311)が摺動し、この摺動に伴うカム機能によって、連結アーム(31)の第2筐体(2)側の枢軸(ヒンジ部材(5)(51))が第2筐体(2)に対して前記スライド機構のスライド方向(図の左方向)へ相対移動を行なう。
【0083】
そして、図29(d)に示す全閉状態では、第2筐体(2)の摺接受け面(211)に連結アーム(31)の摺接面(311)が摺接したまま、連結アーム(31)の第2筐体(2)側の枢軸(ヒンジ部材(5)(51))はスライド移動端に達することになる。
【0084】
上述の如くスライド全開状態からチルト状態を経て全閉状態に至る過程において、第2筐体(2)の摺接受け面(211)に対して連結アーム(31)の摺接面(311)が摺動することにより、第2筐体(2)が連結部材(32)に対して前記スライド機構のスライド方向(図の右方向)へ相対移動を行ない、図29(c)〜(d)に示す最終段階にて、図30及び図31に示す様に、第2筐体(2)の凸部(218)が連結部材(32)の貫通孔(312)に嵌入し、第2筐体(2)の凸部(218)が連結部材(32)の貫通孔(312)と係合することになる。
【0085】
第2筐体(2)の凸部(218)が連結部材(32)の貫通孔(312)と係合した状態では、連結アーム(31)の摺接面(311)と第2筐体(2)の摺接受け面(211)とは互いに摺接した状態を維持し、若しくは連結アーム(31)の摺接面(311)が第2筐体(2)の摺接受け面(211)から僅かに離間した状態となる。
【0086】
従って、全閉状態では、図29(d)に示す如く第2筐体(2)の摺接受け面(211)が連結アーム(31)の摺接面(311)に当接若しくは対向することにより、第2筐体(2)の前方(図の左方向)への移動が阻止されると共に、図31に示す如く第2筐体(2)の凸部(218)の後方端面が連結部材(32)の貫通孔(312)の後方側の内周面に当接することにより、第2筐体(2)の後方(図の右方向)への移動が阻止される。
この様にして、全閉状態における第1筐体(1)に対する第2筐体(2)の位置が一定の位置若しくは一定の範囲内に規定され、第2筐体(2)の位置が確定することになる。
【0087】
上述の如く、上記携帯型電子機器によれば、スライド全開状態の第2筐体(2)に対してチルト状態に向かう回動力を加えて、第2筐体(2)をスライド全開状態から回動全開状態を経ることなく全閉状態へ移行させる操作を行なったとしても、全閉状態では、第1筐体(1)に対して第2筐体(2)を所定の位置に移動させて、第2筐体(2)の凸部(218)を連結部材(32)の貫通孔(312)と係合させることが出来る。
【0088】
尚、上述の例では、第2筐体(2)に凸部(218)を、連結部材(32)に凹部となる貫通孔(312)を設けているが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2筐体(2)に凹部を、連結部材(32)に凸部を設けてもよい。又、凹部と凸部に限定されず、全閉状態で第2筐体のスライドを阻止し得る係止構造であればよい。
【0089】
又、上記携帯型電子機器においては、図40(a)の如くチルト状態で机上に置いた場合や、図40(b)の如くスライド全開状態で机上に置いた場合、連結アーム(31)の角部が第1筐体(1)の背面よりも突出して、第1筐体(1)の前方端部と連結アーム(31)の角部とが接地されることになる。
ここで、何れの状態でも図示の如く連結アーム(31)の接地点よりも第1筐体(1)側に重心Gがくる様に、第1筐体(1)と第2筐体(2)に対する部品の配置や連結アーム(31)のL字形状が設計されており、これによって両筐体(1)(2)の姿勢の安定化が図られている。
【0090】
従って、図40(a)の如くチルト状態で机上に置いた場合には、例えば後方の第2筐体(2)のディスプレイを見ながら前方の第1筐体(1)のタッチパネルを操作することが出来る。
【0091】
又、図40(b)の如くスライド全開状態で机上に置いた場合には、連結アーム(31)の角部の突出量に応じて、両表示面(11)(21)が僅かにユーザ側へ向いた姿勢となり、例えば両表示面(11)(21)によって1つの画面を形成して、大画面による画像の鑑賞が可能となる。この場合、両表示面(11)(21)は互いに充分に接近しているので、両表示面(11)(21)には殆ど途切れのない画像を表示することが出来る。
【0092】
更に又、上記携帯型電子機器においては、機器を床面に落下させたとき、第2筐体(2)の前方端面が下向きとなる落下姿勢となった場合には、該前方端面に形成されている一対の凸部(200)(200)の内、何れか一方の凸部(200)が先ず床面と衝突し、その直後に他方の凸部(200)が床面と衝突することになる。
【0093】
ここで、図20に示す様に、第2ディスプレイ(22)は、第2筐体(2)の前方端面に可及的に接近させた配備されており、該第2ディスプレイ(22)を覆ってガラス板(24)が配備されているため、ガラス板(24)の前方端面と第2筐体(2)の前方端面との間の距離は非常に小さくなっており、仮に第2筐体(2)の前方端面に衝撃力が作用した場合、該衝撃力がガラス板(24)に伝わって、ガラス板(24)が破損する場合がある。
【0094】
しかしながら、上記携帯型電子機器においては、一対の凸部(200)(200)が第2筐体(2)のガラス板(24)とは厚さ方向にずれた位置であって、且つ、第2ディスプレイ(22)とは幅方向にずれた位置に配置されており、該凸部(200)がその高さに応じた緩衝作用を発揮するので、凸部(200)が形成されていない前方端面にて床面と衝突した場合と比較して、第2ディスプレイ(22)を覆うガラス板(24)や第2ディスプレイ(22)に作用する衝撃力は、大幅に緩和されることになる。
この結果、衝撃力の作用によるガラス板(24)や第2ディスプレイ(22)の破損が低減されることになる。
【0095】
尚、第1筐体(1)のガラス板(16)に対しても同様に落下による衝撃力が作用することはあるが、全閉状態において第1筐体(1)の後方端面は、図9に示す連結部材(32)によって覆われるため、第1筐体(1)のガラス板(16)への衝撃力を緩和することが出来る。
【符号の説明】
【0096】
(1) 第1筐体
(10) 凸部
(11) 第1表示面
(12) 第1ディスプレイ
(16) ガラス板
(110) 表面
(2) 第2筐体
(20) 凹部
(21) 第2表示面
(22) 第2ディスプレイ
(29) スライド面
(24) ガラス板
(211) 摺接受け面
(200) 凸部
(214) 側壁
(215) 指掛かり面
(216) 係合片
(218) 凸部
(221) ホルダー部材
(222) 係合受け片
(223) 孔
(230) 逃げ面
(231) 背面
(3) 連結機構
(31) 連結アーム
(35) 第1アーム部
(36) 第2アーム部
(33) 受け止め面
(311) 摺接面
(312) 貫通孔
(4) ヒンジユニット
(42) 固定カム片
(43) 可動カム片
(47) スプリング
(5) ヒンジ部材
(6) トーションバネ
(7) フレキシブルリード
(8) スライド機構
(83) スライド部材
(92) 磁気センサー
(93) マグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と第2筐体が連結部材を介して互いに連結され、第1筐体の表面が第2筐体の背面によって覆われて第2筐体の表面が露出した全閉状態と、前記連結機構の回動動作により前記全閉状態から第2筐体が移動し、両筐体の表面を同一平面上に露出させた全開状態の少なくとも2つの状態を選択的に設定することが可能な携帯型電子機器において、
前記連結部材の先端部と第2筐体との間には、連結部材の先端部に対して第2筐体を回転可能且つスライド可能に支持する支持機構が介在して、前記全開状態で第1筐体と第2筐体を互いに接近離間させることが可能であり、
前記連結部材と第2筐体との対向部には、全開状態で両筐体が最も離間した状態から最も接近した状態へ移行する過程の前半で互いに摺接すべき受け止め面とスライド面が形成されると共に、第1筐体と第2筐体の対向部には、前記過程の後半で互いに係脱可能に係合すべき凸部と凹部が設けられていることを特徴とする携帯型電子機器。
【請求項2】
前記連結部材と第2筐体との間には、前記受け止め面とスライド面とを互いに圧接させる方向に第2筐体を回転付勢するバネが介在している請求項1に記載の携帯型電子機器。
【請求項3】
全開状態で両筐体が最も離間した状態から最も接近した状態へ移行する過程で、前記受け止め面とスライド面が互いに離間すると同時に、又は、その直前若しくは直後に前記凸部と凹部が互いの係合を開始する請求項1又は請求項2に記載の携帯型電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公開番号】特開2012−165179(P2012−165179A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23914(P2011−23914)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】