説明

携帯機器及び携帯時計

【課題】押し釦等の押し引き操作部材が非使用時に誤って動かされないように押し引き操作部材を規制する操作及びこの規制を解除する操作が容易な携帯機器を提供する。
【解決手段】腕時計(携帯機器)11において、押し釦(押し引き操作部材)27は係合部30を有し、この押し釦27を時計外装体(機器外装体)12に取付ける。時計外装体12にロック部材51及び板ばね(付勢部材)55を配置する。ロック部材51は、係合部30との係合により押し釦27を所定位置に保持するロック位置と押し釦27の操作を許すロック解除位置にわたって移動可能である。板ばね55によりロック部材51をロック解除位置に向けて付勢する。時計外装体12に取付けられた文字板(表示部)14を囲む円形の操作リング61を時計外装体12にその正面側から回転操作可能に取付ける。この操作リング61の回転操作にロック位置とロック解除位置にわたるロック部材51の動きを連動させたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押し釦や竜頭等のような押し引き操作部材を、その非使用時に誤って押し引き方向に動かされないように規制できる構成を備えた携帯機器及び携帯時計に関する。
【背景技術】
【0002】
腕時計や懐中時計などの携帯時計、ストップウオッチ、携帯電話、携帯型情報端末機などの携帯機器の中には、例えば機器外装体内の接点等を動作させる押し釦を機器外装体に取付けたものがある。押し釦が押圧されることによって、例えばクォーツ式携帯時計では、時計表示をアナログ表示からデジタル表示に切換えたり、デジタル表示された日付や曜日を修正したりできるようになっている。
【0003】
従来、この種の携帯機器例えば腕時計では、押し釦が誤って押し込み操作されることを防止するために、円筒からなるロック部材の内周に形成した雌ねじ部を、機器外装体が備える胴に取付けられたパイプの外周に形成した雄ねじ部に螺合させて、これらねじ部の螺合位置の変化によりロック部材をロック位置とロック待機位置とにわたって移動可能に設けている。又、円筒からなるロック部材の回転操作の支障とならないように、前記パイプに挿入された押し釦の正面形状は円形となっている。
【0004】
ロック部材がロック待機位置に配置された状態で、ロック部材の規制部がパイプを貫通した押し釦の頭部から離れるため、その離れた距離に相当するストロークで押し釦の押し込み操作が許容される。この逆に、ロック部材がロック位置に配置された状態では、規制部が押し釦の頭部に接した状態となるため、押し釦の押し込みが規制される。
【特許文献1】特開2003−7164号公報(段落0002−0006、段落0026−0038、図1−図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術で、ロック部材は押し釦に見合った径を有する円筒からなるが、このロック部材は例えば機器外装体の厚み以下と小径である。このため、機器外装体の側方らロック部材を掴み難く、このロック部材を回転操作する際の作業性が悪い。特に、腕時計として実施した場合に、この腕時計が人体の腕に装着された状態ではロック部材を操作し難い。
【0006】
本発明の目的は、押し釦等の押し引き操作部材が非使用時に誤って動かされないように押し引き操作部材を規制する操作及びこの規制を解除する操作が容易な携帯機器及び携帯時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の携帯機器は、係合部を有した押し引き操作部材を機器外装体に取付けるとともに、前記係合部との係合により前記押し引き操作部材を所定位置に規制するロック位置と前記押し引き操作部材の操作を許すロック解除位置にわたって動かされるロック部材、及びこのロック部材を前記ロック解除位置に向けて付勢する付勢部材を前記機器外装体に配置し、前記機器外装体に取付けられた表示部を囲む円形の操作リングを前記機器外装体にその正面側から回転操作可能に取付け、この操作リングの回転操作に前記ロック位置と前記ロック解除位置にわたる前記ロック部材の動きを連動させたことを特徴としている。
【0008】
本発明で、押し引き操作部材とは、軸方向に沿って押し込み操作される押し釦、又は軸方向に沿って引き出しされた状態で回転操作される時計の竜頭等を指している。本発明で、所定位置とは、押し引き操作部材が押し釦である場合、この押し釦が押し込み可能な待機状態に配置された位置を指しており、押し引き操作部材が竜頭である場合に、この竜頭が引き出し可能な待機状態に配置された位置を指している。これとともに、前記所定位置に配置された押し引き操作部材は非使用状態にある。
【0009】
本発明で、機器外装体とは、携帯機器の駆動部品が収容される外装ケースを指しており、携帯機器が例えば腕時計や懐中時計等の携帯時計である場合には、時計ムーブメントなどの駆動部品が収容される外装ケースを指している。本発明で、表示部は、時刻表示に限らず各種の情報を静止画や動画などの画像として表示するものでもよいとともに、この表示部は円形であることが好ましいがそうでなくても良い。
【0010】
本発明で、操作リングは、その少なくとも周部がこれに使用者の手指が掛けられるように露出して設けてあればよい。操作リングの表面全体を露出させる場合には、この表面に、回転操作の指標となる表示を大きく設けることができるとともに、回転操作用の引っ掛かり部を更に必要により設けることも可能である点で好ましい。
【0011】
本発明で、ロック部材を付勢する付勢部材には、板ばねやコイルばね等のばね部品を好適に用いることができるが、それ以外の弾性変形が可能な材料で作ることもできる。又、ロック部材がばね性を有する金属である場合、このロック部材から切起こして、その切起こし片を付勢部材として用いることも可能である。
【0012】
本発明では、機器外装体に回転操作可能に取付けられた円形の操作リングを、機器外装体の正面側から回転操作することによって、これに連動させて、付勢部材で付勢されたロック部材をロック位置又はロック解除位置に配置できる。ロック位置に配置されたロック部材は押し引き操作部材の係合部に係合可能であるから、この係合により押し引き操作部材が所定位置から動かないように規制されて、押し引き操作部材の誤操作が防止される。ロック解除位置に配置されたロック部材は押し引き操作部材の係合部から外れているので、この状態で押し引き操作部材を軸方向に押し込み操作又は引き出し操作することにより、この押し引き操作部材を所定位置から移動させることができる。
【0013】
操作リングは、機器外装体に取付けられた表示を囲んでいるので、押し引き操作部材に比較してはるかに大きく、そのため、この操作リングを容易に掴んで回転操作できる。これとともに、操作リングは機器外装体の正面側から操作されるので、例えば腕時計での実施においてこの腕時計が人体の腕に装着されていても、腕が邪魔になり難い。したがって、押し釦等の押し引き操作部材が非使用時に誤って動かされないように押し引き操作部材を規制する操作及びこの規制を解除する操作を容易にできる。
【0014】
又、本発明の携帯機器は、貫通孔並びにこの貫通孔に交差する収納穴が夫々形成された機器外装体と、この機器外装体に取付けられた表示部と、前記貫通孔に挿入して前記機器外装体に固定されたパイプと、このパイプ内に摺動可能に挿入された軸部、この軸部の一端部に設けられて前記貫通孔に挿入された操作ヘッド、及びこの操作ヘッドに形成された係合部を有する押し引き操作部材と、前記表示部を囲む大きさに形成されているとともに、前記収納穴に対向可能なロック面及びこのロック面に開放するロック解除凹部を有して、前記機器外装体にこの外装体の正面側から回転操作可能に取付けられた円形の操作リングと、前記操作ヘッドが挿入される通し部及び前記係合部が係合可能なストッパ部を有し、このストッパ部に前記係合部が係合されるロック位置と、前記ストッパ部が前記係合部から離れたロック解除位置とにわたって前記収納穴に移動可能に収納されたロック部材と、前記収納穴内に配置されて前記ロック部材を前記操作リングに向けて付勢する付勢部材と、を具備したことを特徴としている。
【0015】
本発明で、押し釦等の押し引き操作部材の操作ヘッドは軸部と一体でも別体で軸部に連結されたものであっても良い。
【0016】
本発明では、機器外装体に回転操作可能に取付けられた円形の操作リングを、機器外装体の正面側から回転操作することによって、これに連動させて、付勢部材で操作リングに向けて付勢されたロック部材をロック位置又はロック解除位置に配置できる。
【0017】
即ち、回転操作された操作リングのロック面がロック部材に接した状態では、ロック部材は付勢部材の付勢力に抗してロック位置に配置される。ロック位置に配置されたロック部材のストッパ部には押し引き操作部材の係合部が係合可能であるから、この係合により押し引き操作部材が所定位置から動かないように規制されて、押し引き操作部材の誤操作が防止される。又、回転操作された操作リングのロック面がロック部材から外れるとともにロック解除凹部がロック部材に対向した状態では、ロック部材は付勢部材の付勢力によってロック解除凹部に入り込み、ロック解除位置に配置される。それにより、ロック部材のストッパ部が押し引き操作部材の係合部から外れるので、この状態でロック部材の通し部に通されている押し引き操作部材を軸方向に操作することにより、この押し引き操作部材を所定位置から移動させることができる。
【0018】
操作リングは、機器外装体に取付けられた表示を囲んでいるので、押し引き操作部材に比較してはるかに大きい。そのため、この操作リングを容易に掴んで回転操作できる。これとともに、操作リングは機器外装体の正面側から操作されるので、例えば腕時計での実施においてこの腕時計が人体の腕に装着されていても、腕が邪魔になり難い。したがって、押し釦等の押し引き操作部材が非使用時に誤って動かされないように押し引き操作部材を規制する操作及びこの規制を解除する操作を容易にできる。
【0019】
本発明の携帯機器の好ましい形態では、前記押し引き操作部材が押し釦であって、この押し釦の押し込み操作が前記ロック位置に配置された前記ロック部材により妨げられることを特徴としている。
【0020】
この発明の形態では、押し釦が非使用時に誤って動かされないように押し釦を規制する操作及びこの規制を解除する操作が容易な携帯機器を提供できる。更に、この押し釦は操作リングとは別の位置に配置されていてこの操作リングの回転を拘束するものではないので、押し釦の正面形状が、円形に限られることはなく、この正面形状を携帯機器のデザインに応じて非円形を含めた任意形状にすることができる点で好ましい。
【0021】
本発明の携帯機器の好ましい形態では、前記押し釦の操作ヘッドの正面形状が非円形であることを特徴としている。
【0022】
この発明の形態では、押し釦の操作ヘッドの正面形状が非円形であるにも係わらず、この押し釦が非使用時に誤って動かされないように規制することが可能な携帯機器を提供できる。
【0023】
本発明の携帯機器の好ましい形態では、前記ロック部材が前記ロック位置に配置された状態で、前記操作リングを仮保持するクリックストップ機構を備えたことを特徴としている。
【0024】
この発明の形態では、操作リングの回転操作に伴いロック部材がロック位置に配置された状態において、クリックストップ機構がクリックストップ動作をして操作リングを仮保持できる。これとともに、クリックストップ動作による節度の感触及びこの節度に伴い発生する音により、使用者にロック部材がロック位置に配置されたことを報知できる点で好ましい。
【0025】
又、本発明の携帯時計は、前記各発明の携帯機器で形成されていることを特徴としている。
【0026】
この発明の携帯時計は、前記各発明の携帯機器で形成されているので、押し釦が非使用時に誤って動かされないように押し釦を規制する操作及びこの規制を解除する操作が容易である。
【0027】
本発明の携帯機器の好ましい形態では、前記各発明の携帯機器で形成された携帯時計であって、この携帯時計の竜頭が前記押し引き操作部材であるとともに、この竜頭の引出し操作が前記ロック位置に配置された前記ロック部材により妨げられることを特徴としている。
【0028】
この発明の形態では、操作リングが、機器外装体に取付けられた表示を囲んでいるので、竜頭に比較してはるかに大きい。このため、この操作リングを容易に掴んで回転操作できる。これとともに、操作リングは機器外装体の正面側から操作されるので、腕時計が人体の腕に装着されていても、腕が邪魔になり難い。したがって、竜頭が非使用時に誤って引き出されないように竜頭を規制する操作及びこの規制を解除する操作を容易にできる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、押し釦等の押し引き操作部材が非使用時に誤って動かされないように押し引き操作部材を規制する操作及びこの規制を解除する操作が容易な携帯機器及び携帯時計を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の第1実施形態を図1〜図8を参照して説明する。
【0031】
図1〜図3中符号11は携帯機器例えば携帯時計具体的には腕時計を示している。機器外装体をなす腕時計11の時計外装体12には、内蔵部品例えば時計ムーブメント13が内蔵されているとともに、表示部例えば円形の文字板14が取付けられている。文字板14の表示は、時計ムーブメント13で駆動される時針・分針・秒針などの時刻表示針15により指し示される。
【0032】
時計ムーブメント13は板ばね等からなる接点16(図2及び図3参照)を有している。この接点16が後述の押し釦で押されることによって、時計ムーブメント13の機能の切換えがなされる。
【0033】
時計外装体12は、ステンレス鋼やチタンなどの金属により環状に作られた外装体本体をなす胴21の厚み方向の一面に、文字板14を透視させるガラス22を液密に装着するとともに、胴21の厚み方向の他面に、金属や合成樹脂等で作られた裏蓋23を液密に装着して形成されている。
【0034】
図2及び図3に示すように胴21は、その正面部(上面部)に環状凸部25とリング配置溝26を有している。環状凸部25は円形であり、その内周にガラス22が装着されている。リング配置溝26は環状凸部25を囲んで設けられていて、胴21の上方及び側方に開放している。このリング配置溝26の底面26aは水平面で作られている。
【0035】
胴21には、押し引き操作部材例えば竜頭81(図1及び図6参照)が取付けられているとともに、他の押し引き操作部材例えば押し釦27が取付けられている。押し釦27は例えば竜頭81に対して12時側及び6時側にずれて夫々設けられている。これら押し釦27の構成及び胴21への取付けの構成は同じであるので、その内の一方について図2及び図3等を参照して以下説明する。
【0036】
胴21には、この胴21を半径方向に貫通した貫通孔35が、環状凸部25及びリング配置溝26よりも胴21の裏側にずれて設けられている。貫通孔35はパイプ取付け孔部35aとこれに連続したヘッド挿入孔部35bを有している。
【0037】
パイプ取付け孔部35aは円形の孔からなり、その一端は、胴21の内部、つまり、時計外装体12の内部に開口されている。パイプ取付け孔部35aの他端はヘッド挿入孔部35bに開口されている。ヘッド挿入孔部35bは、パイプ取付け孔部35aの径より大きく、例えば四角い孔で形成されている。このヘッド挿入孔部35bは胴外面(外装体外面)21aに開口されている。
【0038】
胴21に収納穴37が形成されている。収納穴37はヘッド挿入孔部35bと交差例えば直交して設けられている。図6に示すように収納穴37は幅が狭い四角な穴からなる。この収納穴37の一端(下端)は閉じられ、収納穴37の他端(上端)は開放されている。即ち、図6等に示すように収納穴37の上端はリング配置溝26の底面26aに開放されている。
【0039】
軸方向と直交する方向の断面が丸のパイプ41が胴21に固定されている。パイプ41は金属好適にはステンレス鋼等で作られている。パイプ41は、小径部と大径部を有した段付きに形成されている。
【0040】
パイプ41は、その小径部を貫通孔35のパイプ取付け孔部35aにヘッド挿入孔部35b側から圧入して胴21に固定されている。この固定は、金属製ろう材を用いたろう付け接合でなされている。ろう材はパイプ41と胴21との間の防水を担っている。以上のように胴21に固定されたパイプ41の大径部はヘッド挿入孔部35b内に突出されている。
【0041】
図3及び図4に示すように押し釦27は、金属又は合成樹脂により作られていて、軸部28と、操作ヘッド29と、係合部30を有している。胴21内に突出された軸部28の先端(一端)は、押し釦27が胴外側から押込まれることにより、前記接点16を押して移動(図3中二点鎖線参照)させるようになっている。
【0042】
軸部28の軸方向と直交する方向の断面は円形である。操作ヘッド29は軸部28の他端に一体に形成されている。この操作ヘッド29は、前記ヘッド挿入孔部35bの形状に見合った形状に作られていて、その形状は軸部28より大きい非円形であって、本実施形態では略四角形状をなしている。係合部30は例えば操作ヘッド29の裏面で形成されている。なお、符合29aは軸部28の他端部を囲んで操作ヘッド29の裏面から一体に突設された円筒部を示している。
【0043】
押し釦27の軸部28はパイプ41に胴外側から挿入され、胴21内部側に位置された操作ヘッド29の一端部はヘッド挿入孔部35bに挿入されている。図2及び図3中符号43は軸部28に装着された防水用のシールリングを示しており、このシールリング43は弾性変形をした状態でパイプ41の内面に摺動可能に密接されている。図2及び図3に示すように軸部28の先端部に、押し釦27の軸方向移動に伴いパイプ41の小径部先端に接離する抜け止め部材例えば止め輪44が装着されている。
【0044】
円筒部29aにより操作ヘッド29の裏面から隔離して配置されるコイルばね45が、軸部28を巻装してパイプ41の大径部と操作ヘッド29の裏面との間に挟まれている。このコイルばね45は押し釦27を胴外側方向に付勢しており、この付勢による押し釦27の抜け止めを止め輪44が担っている。押し釦27が止め輪44で位置決めされた状態では、胴21の外部側に位置された操作ヘッド29の他端部が押し込み可能に胴外面21aから突出されている。これとともに、同状態では、操作ヘッド29の円筒部29aが前記収納穴37を貫通し、かつ、軸部28の先端が接点16から離されている。
【0045】
腕時計11の携帯時等に胴21内へ押し釦27が不用意に押込まれることを妨げるためのロック部材51が、胴21の収納穴37に、この収納穴37をガイドとして時計外装体12の厚み方向に移動可能に収納されている。
【0046】
ロック部材51はその中央部に四角い通孔からなる通し部52を有している。通し部52は押し釦27の操作ヘッド29を正面又は裏面から見た形状と相似形でかつ一回り大きく形成されている。なお、通し部52はロック部材51の周縁に開放されていてもよい。この通し部52に操作ヘッド29が通されている。
【0047】
図4及び図5に示すようにロック部材51の一端部(上端部)の縁51aは略山形状に湾曲されている。したがって、ロック部材51の外形形状は、図4及び図5に示すように将棋の駒のような略五角形状をなしている。ロック部材51はその縁51aを収納穴37の開放端側に位置させて収納穴37に摺動可能に納められている。
【0048】
ロック部材51の縁51aと通し部52との間の部位、つまり、前記一端部はストッパ部51bとして用いられている。ストッパ部51bには押し釦27の係合部30が係合可能である。
【0049】
収納穴37の底部に付勢部材例えば板ばね55が収納されている。板ばね55は通し部52を境にストッパ部51bとは反対側に位置されている。この板ばね55によってロック部材51が収納穴37の開放された端から突出する方向、言い換えれば、後述する操作リング61の裏面に向けて付勢されている。板ばね55はロック部材51に連結されていても、いなくても良い。
【0050】
時計外装体12のリング配置溝26に円形の操作リング61が回転可能に配置されている。なお、操作リング61は図示のように切れ目なく連続するリングであることが好ましいが、一つの切れ目を有していても良い。図2及び図3中符号21bは環状凸部25の外周面に一体に形成された環状係止突起を示しており、この環状係止突起21bに操作リング61の内周面が引っ掛かって、操作リング61が外れ止めされている。そのため、操作リング61は文字板14を囲んだ環状凸部25の外周に回転可能に嵌合して胴21に取付けられている。
【0051】
操作リング61の表面(上面)及び周面は露出している。図1中符合61a,61bは操作リング61に複数形成された指掛け部を示しており、これら指掛け部61a,61bは例えば凹部からなるとともに操作リング61の周部に設けられている。
【0052】
操作リング61の露出された表面に、図1に示すように第1の表示62と第2の表示63が設けられている。第1の表示62と第2の表示63は操作リング61の径方向に対応して設けられて、第1の表示62は「LOCK」という文字列からなり、第2の表示63は「UNLOCK」という文字列からなる。これら第1の表示62と第2の表示63は、例えば竜頭81を目印としてこれに合わされるようになっているが、目印は竜頭81とは別に胴21に設けても良い。
【0053】
図8に示すように操作リング61はロック面61c及びロック解除凹部64を有している。ロック面61cはリング配置溝26の底面26aに接する操作リング61の裏面で形成されている。ロック解除凹部64はロック面61cに開放して押し釦27と同数設けられている。ロック面61cにはロック部材51の縁51aが押付けられ、ロック解除凹部64にはロック部材51のストッパ部51bが挿脱可能である。
【0054】
操作リング61のロック面61cが収納穴37の開放端に対向されると、この開放端を塞いだロック面61cにより図2及び図4に示すようにロック部材51が板ばね55に抗して押下げられるので、このロック部材51のストッパ部51bが押し釦27の係合部30に胴21の内部側から近接対向した状態に保持される。
【0055】
操作リング61のロック解除凹部64が収納穴37の開放端に対向されて収納穴37に連続されると、板ばね55の付勢力でロック部材51が押上げられて、そのストッパ部51bが図3及び図5に示すようにロック解除凹部64に挿入されるので、ストッパ部51bが押し釦27の係合部30の上方に外れた状態に保持される。
【0056】
前記ロック部材51、板ばね55、及び操作リング61は、係合部30を有した押し釦27を、その非使用時に所定位置に位置決めしてロック状態に保持するとともに、このロック状態を押し釦27が操作される際に解除可能なロック手段をなしている。
【0057】
又、腕時計11は図7に示すクリックストップ機構71を例えば一対有している。このクリックストップ機構71は、機構部72とストップ凹部73とからなる。
【0058】
図6に示すように機構部72は、例えば、12時−6時を通る直線上に位置して胴21に取付けられている。これら機構部72は、図7に示すように胴21に埋め込まれた筒状のホルダ72aと、ホルダ72aに上下動可能でかつ上方に抜けないように支持された回転可能な鋼球72bと、ホルダ72aに収容されて鋼球72bを上向きに付勢するばね72cとで形成されている。鋼球72bの上部はリング配置溝26の底面26aから突出されている。
【0059】
ストップ凹部73は図8に示すように操作リング61の裏面をなしたロック面61cに開口して操作リング61に180°隔てて設けられている。これらのストップ凹部73には鋼球72bが着脱自在に係合できる。
【0060】
前記第1の表示62が竜頭81に合うように操作リング61が回転操作された状態では、鋼球72bがストップ凹部73に係合して操作リング61が仮保持されるとともに、この仮保持状態でロック部材51は、操作リング61のロック面61cで押し下げられてロック位置に配置されるようになっている。又、第2の表示63が竜頭81に合うように操作リング61が回転操作された状態では、ストップ凹部73が鋼球72bから外れるとともに、この状態でロック部材51は、押し上げられてロック解除凹部64に係合しロック解除位置に配置されるようになっている。
【0061】
前記構成を備えた腕時計11において携帯時など押し釦27が使用されない状態では、胴21の内部側へ向けて押し釦27が不用意に押し込まれることを防止するために、図2及び図4に示すようにロック部材51はロック位置に配置されている。このロック状態は、操作リング61を回転操作して、その表面の第1の表示62を竜頭81に合わせることにより得ることができる。
【0062】
操作リング61の回転操作によりロック部材51がロック位置に適正に配置されると、その時点において、クリックストップ機構71がクリックストップ動作をして操作リング61を仮保持する。この場合、クリックストップ動作による節度の感触及びこの節度に伴い発生する音により、使用者にロック部材51がロック位置に配置されたことを報知できる。
【0063】
ロック状態では、操作リング61のロック面61cがロック部材51の縁51aに接しているので、ロック部材51は、板ばね55の付勢力に抗して押下げられて、図2及び図4に示したロック位置に配置されている。
【0064】
このロック位置に配置されたロック部材51のストッパ部51bには、胴21の外側から押し釦27の係合部30が至近距離で対向している。そのため、前記ロック状態で、腕時計11が落下した際の衝撃等により押し釦27に誤って押し込み力が作用すると、直ちに押し釦27の係合部30がロック部材51のストッパ部51bに引っ掛かる。こうした係合により押し釦27が所定位置から動かないように規制されて、押し釦27が誤って押し込まれる誤操作が防止される。
【0065】
この場合、ロック部材51は、金属製でそれ自体の強度が大きく変形する恐れがないことに加えて、広い面積を有した板状であるので、ロック部材51に対する誤った押し込み力を、広い面積で、ロック部材51の移動をガイドする胴21の収納穴37の内面で支持できる。そのため、誤操作防止の信頼性が高い。
【0066】
更に、従来技術のようにねじ山の噛み合いを要しないので、ロック部材51がロック位置に配置されたときに、押し釦27に外側へ向かう負荷を与えることがない。これとともに、例え操作リング61を何回回転させても押し釦27に対する胴外側へ向けての負荷が次第に強化されることがないので、安全である。なお、従来技術のようにねじ山の噛み合いを利用したものでは、ロック部材をロック位置に移動させる場合に、このロック部材を回転させ過ぎると、押し釦が胴外側に抜け恐れが考えられる。又、従来技術のようにねじ山の噛み合いを要しないので、加工が簡単である。即ち、ロック部材51はプレス加工により打ち抜いて簡単に得ることが可能であるとともに、操作リング61に対する加工も容易であるので製造性に優れている。
【0067】
押し釦27を操作する必要があるときは、まず、図2及び図4に示した状態から操作リング61を180°回転させ、その第2の表示63を竜頭81に合わせることにより、ロック部材51をロック解除位置に移動させた後に、押し釦27を押し込み操作すればよい。
【0068】
こうした操作リング61の回転により、ロック面61cがロック部材51から外れるとともに操作リング61のロック解除凹部64がロック部材51に対向する。そのため、ロック部材51が、板ばね55の付勢力によって押上げられてロック解除凹部64に入り込んで、ロック解除位置に配置される。これに伴い、ロック部材51のストッパ部51bが押し釦27の係合部30に対向しないようにこの上方に外れて、押し釦27の押し込み操作が許容された状態となる。
【0069】
なお、この場合にも、ロック部材51が板ばね55の付勢力でロック解除凹部64に入り込んで、クリックストップ機構71と同様なクリックストップ動作を得られる。そのため、この動作による節度の感触及びこの節度に伴い発生する音で、使用者にロック部材51がロック解除位置に配置されたことを報知できる。
【0070】
こうしたロック解除状態でロック部材51の通し部52に通されている押し釦27を軸方向に押し込むことにより、この押し釦27を図2及び図3中実線で示した所定位置から胴21の内部側に移動できる。それにより、押し釦27で接点16を押して、この接点16に与えられた所定の機能を行わせることができる。
【0071】
以上のように時計外装体12に回転操作可能に取付けられた円形の操作リング61はカムとして機能し、そのカム面(ロック面61c及びこれに連続したロック解除凹部64)に、板ばね55で押付けられたロック部材51が従動される。したがって、時計外装体12の正面側から操作リング61を回転操作することによって、これに連動させて、板ばね55で操作リング61に向けて付勢されたロック部材51をロック位置又はロック解除位置に配置できる。
【0072】
操作リング61は、時計外装体12に取付けられた文字板14を囲んでいるので、胴21の側方から押し込み操作される押し釦27に比較してはるかに大きい。そのため、この操作リング61を容易に掴んで回転操作することができる。これとともに、操作リング61は時計外装体12の正面側から操作されるので、腕時計11が使用者の腕に装着されていても、腕が邪魔になり難い。
【0073】
したがって、押し釦27が非使用時に誤って動かされないように規制する操作及びこの規制を解除する操作を容易にできる。
【0074】
更に、第1実施形態では、ロック位置に配置されたロック部材51を用いて押し釦27の押し込み操作を妨げる構成であるので、ロック部材51を連動する操作リング61と押し釦27とが別々の位置に配置されていて、押し釦27が操作リング61の回転を拘束することがない。そのため、押し釦27の正面形状を第1実施形態で例示したように四角形にすることができる。なお、押し釦27の正面形状は、円形であっても良いとともに、これに代えて、四角形以外の任意な非円形形状とすることが可能である。したがって、腕時計11のデザインの自由度を高めることができる点で好ましい。
【0075】
図9及び図10は本発明の第2実施形態を示している。この実施形態は以下説明する事項を除いて第1実施形態と同じであるので、第1実施形態と同じ構成については同一符号を付して説明を省略する。第2実施形態は押し引き操作部材である竜頭81を、前記ロック手段により非使用時に所定位置から動かないように規制するとともに、この規制を竜頭81が操作される際に解除可能にした点が第1実施形態とは異なる。
【0076】
具体的には、竜頭81は、軸部82とこれに例えば一体に連続した操作ヘッド83とを有してなり、軸部82は、これに接続された巻真84を介して時計ムーブメント13に接続されている。
【0077】
操作ヘッド83は軸部82より大径であり、その外周に、操作ヘッド83を回すために掴んだ使用者の指が滑り難くするための凹凸83aが、スプライン加工により形成されている。更に、操作ヘッド83の外周には凹凸83aを横切って円環形の凹部からなる係合部85が形成されている。以上説明した事項以外の構成は、図9及び図10に示されない構成を含めて第1実施形態と同じである。
【0078】
この第2実施形態の腕時計11において、携帯時など竜頭81が使用されない状態では、図9に示すようにロック部材51が、胴21の外部側方へ向けての竜頭81の不用意な引き出しを防止するロック位置に配置されている。
【0079】
前記ロック手段により竜頭81がロックされた状態では、操作リング61のロック面61cがロック部材51の縁51a(図4及び図5参照)に接しているので、ロック部材51は、板ばね55の付勢力に抗して押下げられて、図9に示したロック位置に配置されている。このロック位置に配置されたロック部材51のストッパ部51b(図4及び図5参照)は竜頭81の凹部からなる係合部85に嵌合されている。
【0080】
そのため、前記ロック状態で、竜頭81に誤って引き出し力が作用すると、直ちに係合部85をなす凹部の壁面がロック部材51のストッパ部51bに胴21の内部側から引っ掛かる。こうした係合により竜頭81が所定位置から動かないように規制されて、竜頭81が誤って引き出される誤操作が防止される。
【0081】
竜頭81を操作する必要があるときは、まず、図9に示した状態から操作リング61を180°回転させ、その第2の表示63(図1参照)を竜頭81に合わせることにより、ロック部材51をロック解除位置に移動させた後に、竜頭81を引き出した上で回転操作すればよい。
【0082】
こうした操作リング61の回転により、ロック面61cがロック部材51から外れるとともに操作リング61のロック解除凹部64がロック部材51に対向する。そのため、ロック部材51が、板ばね55の付勢力によって押上げられてロック解除凹部64に入り込んで、ロック解除位置に配置される(図10参照)。これに伴い、ロック部材51のストッパ部51bが竜頭81の係合部85の上方に外れて移動され、竜頭81の引き出し操作が許容された状態となる。
【0083】
そのため、ロック解除状態でロック部材51の通し部52に通されている竜頭81を、図9及び図10に示した所定位置から軸方向に沿って引き出すことができ、その上で竜頭81を回転操作して、時刻合わせや日付け合わせ等をすることができる。
【0084】
なお、その他の作用も第1実施形態と同様であるので、その説明については省略する。したがって、第2実施形態でも本発明の課題を解決できる。
【0085】
本発明は前記各実施形態に制約されるものではなく、携帯時計の他にも、例えばストップウオッチ、携帯電話、携帯型情報端末機などの携帯機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1実施形態の腕時計を示す正面図。
【図2】図1の腕時計の押し釦の取付け部を押し釦がロックされた状態で示す断面図。
【図3】図1の腕時計の押し釦の取付け部を押し釦のロックが解除された状態で示す断面図。
【図4】図2中F4−F4線に沿って示す略断面図。
【図5】図3中F5−F5線に沿って示す略断面図。
【図6】図1の腕時計をその操作リングを外した状態で一部を切欠いて示す正面図。
【図7】図1の腕時計のクリックストップ機構まわりを示す断面図。
【図8】図1の腕時計が備える操作リングを示す裏面図。
【図9】本発明の第2実施形態の腕時計の竜頭取付け部を竜頭がロックされた状態で示す断面図。
【図10】第2実施形態の腕時計の竜頭取付け部を竜頭のロックが解除された状態で示す断面図。
【符号の説明】
【0087】
11…腕時計(携帯時計・携帯機器)
12…時計外装体(機器外装体)
14…文字板(表示部)
21…胴
27…押し釦(押し引き操作部材)
28…押し釦の軸部
29…押し釦の操作ヘッド
30…押し釦の係合部
35…貫通孔
35a…パイプ取付け孔部
35b…ヘッド挿入孔部
37…収納穴
41…パイプ
51…ロック部材
51a…ロック部材の縁
51b…ロック部材のストッパ部
52…通し部
55…板ばね(付勢部材)
61…操作リング
61c…ロック面
64…ロック解除凹部
71…クリックストップ機構
81…竜頭(押し引き操作部材)
82…竜頭の軸部
83…竜頭の操作ヘッド
85…竜頭の係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
係合部を有した押し引き操作部材を機器外装体に取付けるとともに、前記係合部との係合により前記押し引き操作部材を所定位置に規制するロック位置と前記押し引き操作部材の操作を許すロック解除位置にわたって動かされるロック部材、及びこのロック部材を前記ロック解除位置に向けて付勢する付勢部材を前記機器外装体に配置し、前記機器外装体に取付けられた表示部を囲む円形の操作リングを前記機器外装体にその正面側から回転操作可能に取付け、この操作リングの回転操作に前記ロック位置と前記ロック解除位置にわたる前記ロック部材の動きを連動させたことを特徴とする携帯機器。
【請求項2】
貫通孔並びにこの貫通孔に交差する収納穴が夫々形成された機器外装体と、
この機器外装体に取付けられた表示部と、
前記貫通孔に挿入して前記機器外装体に固定されたパイプと、
このパイプ内に摺動可能に挿入された軸部、この軸部の一端部に設けられて前記貫通孔に挿入された操作ヘッド、及びこの操作ヘッドに形成された係合部を有する押し引き操作部材と、
前記表示部を囲む大きさに形成されているとともに、前記収納穴に対向可能なロック面及びこのロック面に開放するロック解除凹部を有して、前記機器外装体にこの外装体の正面側から回転操作可能に取付けられた円形の操作リングと、
前記操作ヘッドが挿入される通し部及び前記係合部が係合可能なストッパ部を有し、このストッパ部に前記係合部が係合されるロック位置と、前記ストッパ部が前記係合部から離れたロック解除位置とにわたって前記収納穴に移動可能に収納されたロック部材と、
前記収納穴内に配置されて前記ロック部材を前記操作リングに向けて付勢する付勢部材と、
を具備したことを特徴とする携帯機器。
【請求項3】
前記押し引き操作部材が押し釦であって、この押し釦の押し込み操作が前記ロック位置に配置された前記ロック部材により妨げられることを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯機器。
【請求項4】
前記押し釦の操作ヘッドの正面形状が非円形であることを特徴とする請求項3に記載の携帯機器。
【請求項5】
前記ロック部材が前記ロック位置に配置された状態で、前記操作リングを仮保持するクリックストップ機構を備えたことを特徴とする請求項1から4の内のいずれか一項に記載の携帯機器。
【請求項6】
請求項1から5の内のいずれか一項に記載の携帯機器で形成されたことを特徴とする携帯時計。
【請求項7】
請求項1から5の内のいずれか一項に記載の携帯機器で形成された携帯時計であって、この携帯時計の竜頭が前記押し引き操作部材であるとともに、この竜頭の引出し操作が前記ロック位置に配置された前記ロック部材により妨げられることを特徴とする携帯時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−127682(P2010−127682A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300716(P2008−300716)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】