説明

携帯用データ送信装置並びにそれを利用した熱ストレス管理システムおよび方法

人体の過度な熱ストレスをモニタリングする携帯用データ送信装置、熱ストレス管理システム、及び熱ストレス管理方法を提供する。該携帯用データ送信装置は、人体に着脱可能な脱着部と、脱着部に連結されてユーザの生体データを測定する生体データセンサと、ユーザを取り囲む環境データを測定する環境データセンサと、測定されたデータを無線で伝送する無線送信部とを備える。これにより、各個人別に熱ストレスを遠隔及びリアルタイムで測定することによって、最適な安全指針をリアルタイムで提供でき、従って人体の過度な熱ストレスによる極限的な危険状況の予防と応急状況に対する早期対応とが可能である。また、自動化された管理及び報告書によって作業人員の効率的な管理が可能であり、管理効率を極大化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の過度な熱ストレスによる極限的な危険状況の予防と応急状況に対する早期対応とのために、人体の過度な熱ストレスをモニタリングする携帯用データ送信装置、熱ストレス管理システム、及び熱ストレス管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、熱ストレスは、温度、湿度、運動負荷、そして気候に対する適応の影響を受けることが知られている。摂氏25℃以上の暑い環境では、人体は、汗を流して汗の蒸発によって体温を低くするメカニズムでもって体温のバランスを取ろうとする。このメカニズムは、湿度の影響を受ける。したがって、高湿度の条件下では、このメカニズムの効率性は低くなる。また、衣服の状態も、皮膚周囲の空気フローを制限するために、このメカニズムに密接な関連を有する。
【0003】
短期間および長期間の熱ストレスは、いずれも、人体にとって有害である。短期間の熱ストレスの影響の例としては、熱射病、疲労困憊、けいれん、朦朧(もうろう)となることなどがあり、長期間の熱ストレスの影響の例としては、熱による衰弱(thermal weakening)、高血圧、心筋損傷、性欲減衰や勃起不全などがある。
【0004】
熱ストレスに関連した危険な職種の代表的な例としては、警察官、軍人、農夫、建設作業員、溶鉱炉作業員などがある。
【0005】
また、消防士は、森林火災などの火災の鎮圧中に命を失うことがある。場合によっては、運動選手も、訓練過程において、熱ストレスまたは強烈な日光に晒されるなどの環境的な理由によって命を失うことがある。従って、かような職業的熱ストレス及び様々な危険な熱ストレス状況を予防するためには、熱ストレスを測定し、ユーザにあらかじめ警告する方法が必要とされる。
【0006】
特に、作業場が熱ストレスにさらされている場合、または、ユーザが熱ストレスの大きい作業を行う場合、定期的な熱ストレスの感知が要求される。
【0007】
従来使われているWBGT(Wet Bulb Globe Temperature)計測器は、熱ストレスを直接的に測定しなければならない場合に有用である。WBGT計測器は、自由に循環する濡れたボールの温度と乾いたボールの温度とを比較することによって、4種の環境的に重要な要素、すなわち温度、相対湿度、日射量(insolation)及び空気のフローを測定できる。WBGTインデックスは、暑い環境での勤務規則、ISO7243であり、熱ストレス測定基準として使用される。
【0008】
既存の熱ストレスモニタリング方式は、主に作業場に設置されたWBGTシステムを使用する。たとえかようなシステムが環境の影響を測定できるにしても、各個人の業務負荷や気候適応度などが個人ごとに異なるという点を考慮し難い。また、かようなシステムは、基本的に環境の影響を測定するものであるために、一般的に保護装備を着用する消防士や溶鉱炉作業員らが実際に感じる熱ストレスとは異なる値を測定することになる。また、同じ作業場でも、位置によって熱に対し露出が異なるために、1ヵ所に位置したモニタでは測定が困難である。実際には、かような数多くの要素を管理者が主観的な判断に依存して作業の安全性を維持しなければならないために、一人の管理者が管理できる作業人員の数は、少なくならざるを得ないわけであり、効率的な対応および予防は容易ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来技術の問題点を解決するために案出されたものであり、本発明の目的は、各個人の生体データ及び環境データを無線で送信できる携帯用データ送信装置を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、各個人別に熱ストレスを遠隔及びリアルタイムで測定することによって、最適な安全指針をリアルタイムで提供できる熱ストレス管理システムを提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、各個人別に熱ストレスを遠隔及びリアルタイムで測定することによって、最適な安全指針をリアルタイムで提供できる熱ストレス管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的を達成するために、本発明は、人体に着脱可能な脱着部と、前記脱着部に連結されてユーザの生体データを測定する生体データセンサと、ユーザを取り囲む環境データを測定する環境データセンサと、前記測定されたデータを無線で伝送する無線送信部とを備える携帯用データ送信装置を提供する。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記携帯用データ送信装置は、前記センサによって測定されたアナログデータをデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、前記無線送信部の動作を制御する制御部とをさらに備えることができる。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記センサ及び無線送信部は、フレキシブル基板上に配され、前記脱着部は、前記フレキシブル基板を取り囲む防水性のフレキシブルなケース、並びに前記ケース外部の一面にコーティングされている人体の皮膚に脱着可能な接着層を有することができる。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記ケースは、シリコンゴム・パッケージングで製作されうる。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記生体データは心拍数及び運動加速度であり、前記環境データは温度及び湿度でありうる。
【0017】
本発明の他の目的を達成するために、本発明は、人体に着脱可能な脱着部と、前記脱着部に連結されてユーザの生体データを測定する生体データセンサと、ユーザを取り囲む環境データを測定する環境データセンサと、前記測定されたデータを無線で伝送する無線送信部とを備える携帯用データ送信部と;前記携帯用データ送信部の無線送信部から前記ユーザの生体データ及び環境データを無線で受信し、前記受信したデータ及びあらかじめ入力されたユーザの基本データを熱ストレス推定変数に変換し、前記ユーザの熱ストレスを遠隔でモニタリングするモニタリング部とを備える熱ストレス管理システムを提供する。
【0018】
本発明の一実施形態において、前記生体データは心拍数及び運動加速度であり、前記環境データは温度及び湿度であり、前記基本データは、体重及び最近の勤務記録でありうる。
【0019】
本発明の一実施形態において、前記熱ストレス推定変数は、心拍数から変換される業務負荷、温度及び湿度から変換されるWBGT(Wet Bulb Globe Temperature)インデックス、最近の勤務記録から変換される気候適応度、並びに体重及び運動加速度から変換される肉体作業量でありうる。
【0020】
本発明の一実施形態において、前記モニタリング部は、前記データ送信部から無線受信された前記ユーザの生体データ及び環境データ、並びに前記入力されたユーザの基本データを熱ストレス推定変数に変換し、それらから前記ユーザの熱ストレス程度を推定し、前記ユーザの熱ストレス程度が過度である場合、警告信号を自動的に発生させることができる。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記モニタリング部は、ユーザが携帯できる形態でありうる。
【0022】
本発明の一実施形態において、前記熱ストレス管理システムは、前記データ送信部の無線送信部から前記ユーザの生体データ及び環境データを無線で受信し、これらを前記モニタリング部に無線で伝達する携帯用データ受信/伝送部をさらに備えることができる。
【0023】
本発明の一実施形態において、データ送信部、モニタリング部、及びデータ受信/伝送部間の無線データ伝送は、ブルートゥース、ジグビー、高周波のRF信号、無線LAN、CDMA携帯電話網、GSM携帯電話網またはTETRA(TErrestrial Trunked Radio)を利用できる。
【0024】
本発明のさらに他の目的を達成するために、本発明は、ユーザの基本データを受信する段階と、ユーザの生体データ及び環境データを無線で受信する段階と、前記データを熱ストレス推定変数に変換する段階と、前記推定変数からユーザの熱ストレスを推定する段階と、前記ユーザの熱ストレスが過度である場合、警告信号を発生する段階とを含む熱ストレス管理方法を提供する。
【0025】
本発明の一実施形態において、前記ユーザの基本データは、前記ユーザの体重及び最近の勤務記録であり、前記ユーザの生体データはユーザの心拍数及び運動加速度であり、前記環境データは、ユーザを取り囲む環境の温度及び湿度でありうる。
【0026】
本発明の一実施形態において、前記熱ストレス推定変数は、心拍数から変換される業務負荷、温度及び湿度から変換されるWBGTインデックス、最近の勤務記録から変換される気候適応度、並びに体重及び運動加速度から変換される肉体作業量でありうる。
【0027】
本発明の一実施形態において、前記熱ストレス管理方法は、要請がある場合、前記ユーザの熱ストレスに関する報告書を自動的に作成する段階をさらに含むことができる。
【0028】
本発明の一実施形態において、前記報告書は、前記ユーザの基本データ、生体データ、環境データ及び熱ストレス推定変数に関する内容を含むことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、各個人別に熱ストレスを遠隔及びリアルタイムで測定することによって、最適な安全指針をリアルタイムで提供でき、従って人体の過度な熱ストレスによる極限的な危険状況の予防と応急状況に対する早期対応とが可能である。また、自動化された管理及び報告書によって、作業人員の効率的な管理が可能であり、管理効率を極大化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、添付された図面を参照しつつ、本発明の望ましい実施形態について詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の望ましい実施形態による携帯用データ送信装置のブロック図である。 図1を参照すれば、本発明による携帯用データ送信装置10は、人体に着脱可能な脱着部17、脱着部17に連結されてユーザの生体データを測定する生体データセンサ11a、ユーザを取り囲む環境データを測定する環境データセンサ11b、及び測定されたデータを無線で伝送する無線送信部15を備える。
【0032】
また、本発明による携帯用データ送信装置10は、センサ11a、11bから測定されたアナログデータをデジタル信号に変換するA/Dコンバータ(図示せず)、及び無線送信部15の動作を制御する制御部13をさらに備えることができる。また、携帯用データ装置10は、生体データ及び環境データを保存することができるメモリ(図示せず)及びバッテリのような電源供給部(図示せず)をさらに備えることができる。
【0033】
生体データセンサ11aは、ユーザの生体データを測定できる一つ以上のセンサでありうる。望ましくは、生体データは、心拍数及び運動加速度でありうる。生体データセンサ11aは、ユーザの生体データ、例えば心拍数及び運動加速度を測定できる公知のセンサでありうる。例えば、心拍数を測定するために、心電図測定センサを使用でき、運動加速度を測定するために、2軸加速度計(Analog Device、米国)を使用できる。
【0034】
環境データセンサ11bは、ユーザを取り囲む環境のデータを測定できる一つ以上のセンサでありうる。望ましくは、環境データは、温度及び湿度でありうる。環境データセンサ11bは、ユーザを取り囲む環境データ、例えば温度及び相対湿度を測定できる公知のセンサでありうる。例えば、温度及び湿度を測定するために、相対湿度センサが温度センサに統合されたオンチップセンサ(Sensirion、スイス)を使用できる。オンチップセンサを利用する場合、センサ間の距離は、0.1μmと非常に短くなるという長所がある。
【0035】
図2は、本発明の望ましい実施形態による携帯用データ送信装置の概略的な分解斜視図である。図2において、センサ11、制御部13、無線送信部15及びバッテリ16は、概略的に図示されている。
図2を参照すれば、センサ11a、11b及び無線送信部15は、フレキシブル基板18上に配され、脱着部17は、フレキシブル基板18を取り囲む防水性のフレキシブルなケース14a、14b及びケース14a、14b外部の一面にコーティングされている人体の皮膚に脱着可能な接着層19を備える。
【0036】
専門的な職業環境において、実用的に使用されるための人体付着型熱ストレス感知装置の要求事項は、最小限の制限性、防水性、低重量、迅速で容易な設置、低コスト、多様な体型に対する適用性を含む。
【0037】
本発明による携帯用データ送信装置10は、前記要求事項をいずれも満足させることができる。具体的には、フレキシブル基板18として、FPCB(Flexible Printed Circuit Board)を使用でき、防水性のフレキシブルなケース14a、14bとして、シリコンゴム・パッケージングを使用でき、接着層19として、シリコンゴム接着剤を使用できる。FPCB及びシリコンゴム・パッケージングを使用することによって、全体装置は柔軟に曲がり、ユーザの胸に付着され、シリコンゴム接着剤を使用することによって、装置を水で洗浄して再び人体の皮膚に付着できる。
【0038】
図3は、本発明の望ましい実施形態による熱ストレス管理システムのブロック図である。
図3を参照すれば、本発明による熱ストレス管理システム100は、人体に付着可能な携帯用データ送信部10及び携帯用データ送信部10からデータを無線で受信することができるモニタリング部20を備える。
【0039】
携帯用データ送信部10は、ユーザの生体データ及び環境データを測定し、測定されたデータを無線で伝送する。携帯用データ送信部10についての詳細な説明は、前述の通りである。
【0040】
モニタリング部20は、データ送信部の無線送信部からユーザの生体データ及び環境データを無線で受信し、受信したデータ及びあらかじめ入力されたユーザの基本データを熱ストレス推定変数に変換し、そうすることによって前記ユーザの熱ストレスを遠隔でモニタリングする。
【0041】
望ましくは、モニタリング部20は、データ送信部10から無線受信されたユーザの生体データ及び環境データ、並びに前記入力されたユーザの基本データを熱ストレス推定変数に変換し、それによりユーザの熱ストレス程度を推定し、ユーザの熱ストレス程度が過度である場合、警告信号を自動的に発生させることができる。
【0042】
モニタリング部20は、管理者領域(domain)に存在するコンピュータシステムである場合もあるが、ユーザが携帯できる形態であることが望ましい。例えば、モニタリング部20として、腕時計、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)または無電器(wireless telegraph set)などの形態を活用できる。その場合、ユーザの熱ストレス程度が過度である場合、警告信号を直接ユーザに伝達できる。
【0043】
望ましくは、ユーザの生体データは、ユーザの心拍数及び運動加速度であり、環境データは、ユーザを取り囲む環境の温度及び湿度であり、ユーザの基本データは、ユーザの体重及び最近の勤務記録でありうる。
【0044】
また、望ましくは、熱ストレス推定変数は、心拍数から変換される業務負荷、温度及び湿度から変換されるWBGT(Wet Bulb Globe Temperature)インデックス、最近の勤務記録から変換される気候適応度、並びに体重及び運動加速度から変換される肉体作業量でありうる。
【0045】
図4Aは、本発明の望ましい実施形態による熱ストレス管理システムをユーザが着用した状態を示す図面であり、図4Bは、図4Aの熱ストレス管理システムのモニタリング部の拡大図である。
図4Aを参照すれば、携帯用データ送信部10は、ユーザの胸の部分に装着され、ユーザの生体データ及び環境データを測定し、測定されたデータを無線で伝送する。また、モニタリング部20は、腕時計の形態でもってユーザの手首に装着され、携帯用データ送信部10からユーザの生体データ及び環境データを無線で受信し、ユーザに生体データ、環境データ及び熱ストレス推定変数などに関する情報を提供し、ユーザの熱ストレス程度が過度である場合、警告信号をユーザに伝達する。図4Bを参照すれば、例えば、腕時計形態のモニタリング部20は、温度、湿度、WBGTインデックス、作業量及び心拍数に関する情報を提供する。
【0046】
再び図3を参照すれば、本発明による熱ストレス管理システム100は、データ伝送中継の役割を行う携帯用データ受信/伝送部30をさらに含むことができる。携帯用データ受信/伝送部30は、データ送信部10からユーザの生体データ及び環境データを無線で受信し、これらを前記モニタリング部20に無線で伝達する。例えば、携帯用データ受信/伝送部30として、腕時計、携帯電話、PDAまたは無電器などの形態を活用できる。
【0047】
データ送信部10、モニタリング部20、及びデータ受信/伝送部30間の無線データ伝送は、ブルートゥース、ジグビー、高周波のRF信号、無線LAN、CDMA携帯電話網、GSM携帯電話網またはTETRA(TErestrial Trunked Radio)を利用できる。
【0048】
上述の方式は、熱ストレス管理システムが使われる環境によって変わりうる。例えば、データ送信部10は、ブルートゥースまたはジグビーモジュールを含むことができ、ユーザの無電器または携帯電話30を介してデータを中央サーバに伝送できる。また、データ送信部10はCDMAモジュールを含むことができ、データを直接中央サーバに伝送することも可能である。
【0049】
図5は、本発明の望ましい実施形態による熱ストレス管理方法を説明するフローチャートである。
図5を参照すれば、本発明による熱ストレス管理方法は、ユーザの基本データを受信する段階(S10)、ユーザの生体データ及び環境データを無線で受信する段階(S20)、データを熱ストレス推定変数に変換する段階(S30)、推定変数からユーザの熱ストレスを推定する段階(S40)、及びユーザの熱ストレスが過度であるか否かを判別する段階(S50)を含む。判別の結果、ユーザの熱ストレスが過度である場合、警告信号を発生する(S60)。
【0050】
望ましくは、前記ユーザの基本データは、ユーザの体重及び最近の勤務記録であり、ユーザの生体データは、ユーザの心拍数及び運動加速度であり、環境データは、ユーザを取り囲む環境の温度及び湿度でありうる。
【0051】
望ましくは、熱ストレス推定変数は、業務負荷、WBGTインデックス、気候適応度、及び肉体作業量でありうる。既存の熱ストレスモニタリング方法は、環境の温度及び湿度によるWBGTインデックスのみを利用することによって、正確性が落ちるという問題点があった。
【0052】
熱ストレス推定変数のうち一つである業務負荷(work load)は、心拍数から変換されうる。心拍数を測定するために、誘導心電計(lead electrocardiograph)(ECG)を使用でき、心拍数から業務負荷を推定する方法は、公知の推定方法(Shaver,Essentials of Exercise Physiology,Section Three,The Heart and Exercise,Burgess Publishing Company,pp.74-93,1981)を利用できる。
【0053】
熱ストレス推定変数のうちの一つであるWBGTインデックスは、温度及び湿度から変換されうる。各ユーザの身体に付着されたセンサから、温度及び相対湿度データを得ることによって、各個人の最適なWBGTインデックスをリアルタイムで得ることができる。温度及び相対湿度を測定するために、相対湿度センサが温度センサに統合されたオンチップセンサ(Sensirion,スイス)を使用できる。ガスの相対湿度は、その温度に強く依存する。従って、相対湿度が測定される空気と同じ温度に湿度センサを維持させることが必須である。
【0054】
WBGTインデックスは、空気のフロー(風)、空気の温度、湿度、日射量などに影響を受けるが、一般的な日射量があって弱い風の吹く環境で、WBGTインデックスは、次のような公式を介して推定されうる(American College of Sports Medicine,Med.J.Aust.,Dec.876,1984)。
【0055】
【数1】

【0056】
上記式において、Taは、濡れたボールの温度(゜C)であり、eは、水蒸気圧または湿度(hPa)である。
【0057】
蒸気圧は、以下の数式2を利用して、温度及び相対湿度から計算されうる。
【0058】
【数2】

【0059】
上記式において、rhは、相対湿度(%)である。
【0060】
熱ストレス推定変数のうちの一つである気候適応度(acclimatization)は、最近の勤務記録から変換されうる。気候に対する適応度は、1週間または2週間にわたって徐々に熱に適応する過程である。いったん適応した後には、体は、さらに低い温度で汗を流し始め、熱が体に蓄積されることを防止するとが知られている。従って、気候に対する適応度は定量的に測定し難いが、例えば、3週間の勤務記録を介して気候に対する適応度を推定できる。
【0061】
熱ストレス推定変数のうちの一つである肉体作業量は、体重並びに運動加速度から変換されうる。データ送信部のセンサ部から測定される加速度データと、ユーザによって入力された体重データとを結合することによって、肉体作業量を推定できる。推定は、陸上選手のように主に体全体を動かす作業を行う人に適している。一方、主に腕及び足を動かす作業を行う作業者には、推定は適さないこともある。また、実際の加速度データを介してユーザが休んでいる時間と仕事をしている時間とを測定することができる。
【0062】
推定変数からの熱ストレス推定及び熱ストレスが過度であるか否かの判断は、例えば下記表1に示した基準を使用して行うことが可能である。表1は、ACGIH(American Conference of Governmental Industrial Hygienist)によって提供される熱ストレス露出に対するスクリーニング基準である(2000 TLVs and BEIs,Cincinnati:ACGIH,p.183,2000)。表1は、開始段階において熱ストレスが極端であるかどうかを判断することを容易にするために使用することができる。
【0063】
【表1】

【0064】
表1において、各数値は、WBGTインデックスを示す。
【0065】
例えば、表1を参照して、変換された熱ストレス推定変数、すなわち気候適応/気候非適応、業務負荷及びWBGTインデックスを使用することによって、作業及び休息の比率を判断することができる。例えば、WBGTインデックスが29.5で中間の業務負荷においてユーザが気候に適応している場合、50%作業及び50%休息が適切である。
【0066】
本発明による熱ストレス管理方法において、ユーザの熱ストレスが過度である場合、警告信号を発生する。例えば、前記の通り、50%作業及び50%休息が適切である場合、すなわち30分作業及び30分休息が適切である場合、作業を始めた後で30分ほどしてユーザまたは管理者に警告信号を発生できる。警告信号は、視覚または聴覚を介してなされうる。
【0067】
本発明による熱ストレス管理方法は、要請のある場合、ユーザの熱ストレスに関する報告書を自動的に作成する段階をさらに含むことができる。報告書は、ユーザの基本データ、生体データ、環境データ及び熱ストレス推定変数に関する内容を含むことができる。
【0068】
本発明はまた、コンピュータで読み取り可能な記録媒体にコンピュータで読み取り可能なコードとして具現することが可能である。コンピュータで読み取り可能な記録媒体は、コンピュータシステムによって読み取り可能なデータが保存されるあらゆる種類の記録装置を含む。コンピュータで読み取り可能な記録媒体の例としては、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random-Access Memory)、CD−ROM、磁気テープ、フロッピー(登録商標)ディスク及び光データ記憶装置などがあり、搬送波(例えばインターネットを介した伝送)の形態で具現されるものも含む。コンピュータで読み取り可能な記録媒体は、ネットワークに連結されたコンピュータシステムに分散され、分散方式でコンピュータで読み取り可能なコードが記憶され、実行されうる。
【0069】
以上のように、図面及び明細書で最適な実施形態が開示された。ここでは、特定の用語が使われたが、それらは単に本発明を説明するための目的で使われたものであり、意味の限定や特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を制限するために使われたものではない。従って、本技術分野の当業者ならば、それらから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であろうという点を理解することができるであろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によってのみ決まるものである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の望ましい実施形態による携帯用データ送信装置のブロック図である。
【図2】本発明の望ましい実施形態による携帯用データ送信装置の概略的な分解斜視図である。
【図3】本発明の望ましい実施形態による熱ストレス管理システムのブロック図である。
【図4A】本発明の望ましい実施形態による熱ストレス管理システムをユーザが着用した状態を示す図面である。
【図4B】図4Aの熱ストレス管理システムのモニタリング部の拡大図である。
【図5】本発明の望ましい実施形態による熱ストレス管理方法を説明するフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に着脱可能な脱着部と、
前記脱着部に連結されてユーザの生体データを測定する生体データセンサと、
ユーザを取り囲む環境データを測定する環境データセンサと、
前記測定されたデータを無線で伝送する無線送信部とを備えることを特徴とする携帯用データ送信装置。
【請求項2】
前記センサによって測定されたアナログデータをデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、
前記無線送信部の動作を制御する制御部とをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の携帯用データ送信装置。
【請求項3】
前記センサ及び無線送信部は、フレキシブル基板上に配され、前記脱着部は、前記フレキシブル基板を取り囲む防水性のフレキシブルなケース、及び前記ケース外部の一面にコーティングされている人体の皮膚に脱着可能な接着層を有することを特徴とする請求項1に記載の携帯用データ送信装置。
【請求項4】
前記ケースは、シリコンゴム・パッケージングで製作されることを特徴とする請求項3に記載の携帯用データ送信装置。
【請求項5】
前記生体データは心拍数及び運動加速度であり、前記環境データは温度及び湿度であることを特徴とする請求項1に記載の携帯用データ送信装置。
【請求項6】
人体に着脱可能な脱着部と、前記脱着部に連結されてユーザの生体データを測定する生体データセンサと、ユーザを取り囲む環境データを測定する環境データセンサと、前記測定されたデータを無線で伝送する無線送信部とを備える携帯用データ送信部と、
前記携帯用データ送信部の無線送信部から前記ユーザの生体データ及び環境データを無線で受信し、前記受信したデータ及びあらかじめ入力されたユーザの基本データを熱ストレス推定変数に変換し、前記ユーザの熱ストレスを遠隔でモニタリングするモニタリング部とを備えることを特徴とする熱ストレス管理システム。
【請求項7】
前記生体データは心拍数及び運動加速度であり、前記環境データは温度及び湿度であり、前記基本データは、体重及び最近の勤務記録であることを特徴とする請求項6に記載の熱ストレス管理システム。
【請求項8】
前記熱ストレス推定変数は、心拍数から変換される業務負荷、温度及び湿度から変換されるWBGTインデックス、最近の勤務記録から変換される気候適応度、または体重及び運動加速度から変換される肉体作業量であることを特徴とする請求項7に記載の熱ストレス管理システム。
【請求項9】
前記モニタリング部は、前記データ送信部から無線受信された前記ユーザの生体データ及び環境データ、並びに前記入力されたユーザの基本データを熱ストレス推定変数に変換し、それらから前記ユーザの熱ストレス程度を推定し、前記ユーザの熱ストレス程度が過度である場合、警告信号を自動的に発生させることを特徴とする請求項6に記載の熱ストレス管理システム。
【請求項10】
前記モニタリング部は、ユーザが携帯できる形態であることを特徴とする請求項6に記載の熱ストレス管理システム。
【請求項11】
前記データ送信部の無線送信部から前記ユーザの生体データ及び環境データを無線で受信し、これらを前記モニタリング部に無線で伝達する携帯用データ受信/伝送部をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の熱ストレス管理システム。
【請求項12】
前記データ送信部、前記モニタリング部、及び前記データ受信/伝送部間の無線データ伝送は、ブルートゥース、ジグビー、高周波のRF信号、無線LAN、CDMA携帯電話網、GSM携帯電話網またはTETRAを利用することを特徴とする請求項6または請求項11に記載の熱ストレス管理システム。
【請求項13】
ユーザの基本データを受信する段階と、
ユーザの生体データ及び環境データを無線で受信する段階と、
前記受信したデータを熱ストレス推定変数に変換する段階と、
前記推定変数からユーザの熱ストレスを推定する段階と、
前記ユーザの熱ストレスが過度である場合、警告信号を発生する段階とを含むことを特徴とする熱ストレス管理方法。
【請求項14】
前記基本データは体重及び最近の勤務記録であり、前記生体データは心拍数及び運動加速度であり、前記環境データは温度及び湿度であることを特徴とする請求項13に記載の熱ストレス管理方法。
【請求項15】
前記熱ストレス推定変数は、心拍数から変換される業務負荷、温度及び湿度から変換されるWBGTインデックス、最近の勤務記録から変換される気候適応度、及び体重並びに運動加速度から変換される肉体作業量であることを特徴とする請求項14に記載の熱ストレス推定方法。
【請求項16】
要請がある場合、前記ユーザの熱ストレスに関する報告書を自動的に作成する段階をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の熱ストレス管理方法。
【請求項17】
前記報告書は、前記ユーザの基本データ、生体データ、環境データ及び熱ストレス推定変数を含むことを特徴とする請求項16に記載の熱ストレス管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−518106(P2009−518106A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544230(P2008−544230)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【国際出願番号】PCT/KR2006/000695
【国際公開番号】WO2007/066853
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(596180076)韓國電子通信研究院 (733)
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
【住所又は居所原語表記】161 Kajong−dong, Yusong−gu, Taejon korea
【Fターム(参考)】