説明

携帯用電子機器

【課題】 イヤホンをスピーカとしても使用することができ、小型化及び低コスト化を図ること。
【解決手段】 ケース本体2と、ケース本体に出し入れ可能に取り付けられたコード3aと、コードの先端に配されて耳に挿入可能な挿入部3bとを有するイヤホン3と、イヤホンから音声を出力させる音声出力手段と、イヤホンを収納すると共に収納されたイヤホンから出力された音声を内壁で反響させて該音声による空気振動を増幅させる収納室5と、収納室内を閉塞する閉位置と収納室内を開放する開位置P2との間で変位可能にケース本体に固定され、増幅された空気振動によって振動する振動板6aを有するカバー部6とを備えている携帯用電子機器1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持ち運び可能な携帯用電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話機、PDA等の携帯情報端末や携帯型ゲーム機等、数多くの携帯用電子機器が提供されている。この種の携帯用電子機器は、通常機器本体に内蔵されたスピーカによって音声を聞くことができるようになっているが、外部の音を遮断して音声を聞くために、イヤホンも使用できるようになっているのが一般的である。このイヤホンの取り付けに関しては、機器本体にイヤホンのジャックを差し込んで使用する方法が一般的な使われ方である。
【0003】
一方、機器本体にイヤホンを収納できるように構成された携帯用電子機器も知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。具体的には、イヤホンと機器本体とが巻き取り可能なコードによって接続されている。これにより、イヤホンを使用する場合には、イヤホンを機器本体の収納部から引き出して使用することができる。また、イヤホンを使用しない場合には、コードを巻き取ってイヤホンを収納部に収納することができる。
【特許文献1】特開2000−134298号公報
【特許文献2】特開平7−143214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の携帯用電子機器では、以下の課題がまだ残されていた。
始めに、各種の携帯用電子機器は、近年の小型化によってバックやポケット等に入れて容易に持ち運べるようになっている。そのため、電車等での移動や歩行の際に頻繁に使用でき、常に持ち歩いている人が数多くいる。よって、イヤホンを使用する頻度は、非常に高いものであった。
ところが、機器本体にジャックを差し込んでイヤホンを使用する場合には、常に長いコードを有するイヤホンを持ち運ぶ必要があり、煩わしさを感じるものであった。しかも、イヤホンを使用する毎に、ジャックを抜き差しする必要があるので、この点においても煩わしさを感じるものであった。
【0005】
これに対して、コードが巻き取り可能とされ、機器本体にイヤホンを収納することができるタイプの携帯用電子機器の場合には、上述した煩わしさを感じることがない。ところが、この携帯用電子機器は、通常内蔵されているスピーカとは別に、イヤホンを収納する収納部とコードの巻き取り機構等を備える必要がある。そのため、設置スペースを確保する必要があり、小型化を図ることが難しいものであった。
しかも、部屋の中等、静かな環境で携帯用電子機器を使用する場合には、イヤホンではなく通常スピーカから音声を聞いている。このような状況の場合には、イヤホンは何ら機能していない。このように、使用状況によってはイヤホンを使用しない時間が多々あるにも関わらず、スピーカとは別にイヤホンを備える必要があった。よって、コストダウンを図ることが難しかった。
【0006】
また、スピーカを内蔵せず、イヤホンだけを備えた携帯用電子機器も知られているが、この携帯用電子機器の場合には、小型化及び低コスト化を図り易い反面、以下の不都合がある。
即ち、部屋の中等、周囲に迷惑をかけない静かな環境で使用する場合であっても、イヤホンを使用せざるを得ない。そのため、やはり煩わしさを感じる場合があった。仮にイヤホンを耳から外して音量を上げたとしても、スピーカとは異なりイヤホンからの音声を明瞭に聞き取ることが難しいものであった。このように、イヤホンを使用しないと音声を聞き取ることができず、使い勝手が悪く、利便性に欠けるものであった。
【0007】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、イヤホンをスピーカとしても使用することができ、小型化及び低コスト化を図ることができる携帯用電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る携帯用電子機器は、ケース本体と、該ケース本体に基端側が出し入れ可能に取り付けられたコードと、該コードの先端に配されて耳に挿入可能な挿入部とを有するイヤホンと、前記ケース本体に設けられ、前記イヤホンから音声を出力させる音声出力手段と、前記ケース本体の表面から内側に凹んだ状態で形成され、前記イヤホンを収納すると共に、収納されたイヤホンから出力された音声を内壁で反響させて該音声による空気振動を増幅させる収納室と、該収納室内を閉塞する閉位置と収納室内を開放する開位置との間で変位可能に前記ケース本体に固定され、増幅された前記空気振動によって振動する振動板を有するカバー部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
この発明に係る携帯用電子機器においては、まず、イヤホンを使用する場合には、カバー部を閉位置から開位置に変位させて、ケース本体の表面から内側に凹んだ収納室内を開放した状態にする。次いで、収納室内に収納されているイヤホンをケース本体から引き出す。またこの際、挿入部に接続されているコードは、ケース本体から引き出される。そして、挿入部を耳に挿入した後、音声出力手段により音声を出力させる。これにより、イヤホンを利用して音声を聞くことができ、周囲の音が煩い状況等であっても明瞭に音声を聞くことができる。
【0010】
また、イヤホンを使用しない場合には、イヤホンを収納室内に収納した後、カバー部を開位置から閉位置に変位させる。これにより、収納室内はカバー部によって閉塞された状態になる。つまり、イヤホンは、収納室の内壁とカバー部とで囲まれる空間内に置かれた状態になる。そして、イヤホンを収納した後、音声出力手段によりイヤホンから音声を出力させる。すると、イヤホンから出力された音声は、収納室の内壁で反響する。そのため、音声出力によって発生する空気振動は、増幅された状態となってカバー部の振動板に伝播する。これにより、振動板は、増幅された空気振動によって振動し、より大きな音で外部に音声を伝える。つまり、イヤホンをスピーカとして機能させることができる。
【0011】
その結果、イヤホンだけでは出せない音量で音声を明瞭に聞くことができる。よって、使用者は部屋の中等静かな環境で使用する場合には、イヤホンを耳に装着しなくても音声を聞くことができる。
特に、イヤホンをスピーカとして機能させることができるので、従来のように、イヤホンとスピーカとを別々に設ける必要がない。そのため、スピーカの設置スペースをなくすことができ、小型化を図ることができると共に、構成の簡略化を図ることができる。また、スピーカのコストを削減できるので、低コスト化を図ることができる。また、イヤホンを収納室に収納してカバー部を閉位置に位置させるだけで、スピーカとして機能させることができるので、スイッチ等によりスピーカ使用とイヤホン使用とで音声出力先を切り替える操作等が不要である。よって、操作性の向上化も図ることができる。
【0012】
また、本発明に係る携帯用電子機器は、上記本発明の携帯用電子機器において、前記収納室には、前記挿入部が嵌め込まれる嵌合孔が形成され、該嵌合孔が、嵌め込まれた前記挿入部の周囲を所定の力で押圧して保持することを特徴とするものである。
【0013】
この発明に係る携帯用電子機器においては、挿入部を収納室内に収納する際に、収納室内に形成された嵌合孔に挿入部を押し込んで嵌め込む。すると嵌合孔は、嵌め込まれた挿入部の周囲を所定の力で押圧して、該挿入部を保持する。これにより、単に挿入部を収納室内に収納するのではなく、しっかりと保持した状態で収納することができる。そのため、使用中に携帯用電子機器の姿勢を変化させたとしても、挿入部が収納室内で動いてしまうことがない。その結果、安定した音声を出力させることができ、信頼性の向上化を図ることができる。
【0014】
また、本発明に係る携帯用電子機器は、上記本発明の携帯用電子機器において、前記カバー部が、ヒンジ部を介して前記ケース本体に開閉可能に固定されていることを特徴とするものである。
【0015】
この発明に係る携帯用電子機器においては、ヒンジ部を中心としてカバー部を開閉操作するだけで、該カバー部を閉位置と開位置との間で容易かつ瞬時に変位させることができる。よって、使いやすく操作性に優れている。
【0016】
また、本発明に係る携帯用電子機器は、上記本発明の携帯用電子機器において、前記カバー部が、前記ケース本体に対してスライド可能に固定されていることを特徴とするものである。
【0017】
この発明に係る携帯用電子機器においては、ケース本体に対してカバー部をスライド操作するだけで、該カバー部を閉位置と開位置との間で容易かつ瞬時に変位させることができる。よって、使いやすく操作性に優れている。
【0018】
また、本発明に係る携帯用電子機器は、上記本発明のいずれかの携帯用電子機器において、前記イヤホン、前記収納室及び前記カバー部材をそれぞれ2つ備えていることを特徴とするものである。
【0019】
この発明に係る携帯用電子機器においては、イヤホンを使用する際に、両耳にイヤホンを入れて使用することができる。よって、より外部の音を遮断して、明瞭に音声を聞くことができる。
【0020】
また、本発明に係る携帯用電子機器は、上記本発明の携帯用電子機器において、前記音声出力手段が、前記2つのイヤホンから出力させる音声の出力レベルをそれぞれ調整するステレオ音量調整手段を有していることを特徴とするものである。
【0021】
この発明に係る携帯用電子機器においては、2つのイヤホンからステレオ音量調整手段により出力レベルが調整された音声を出力することができるので、最適な音量のステレオ状態で音声を聞くことができる。従って、機能性を向上することができる。
【0022】
また、本発明に係る携帯用電子機器は、上記本発明のいずれかの携帯用電子機器において、前記本体ケースの表面には、少なくとも1つが前記音声出力手段を制御する複数のスイッチと、前記音声出力手段の出力情報を表示する表示部とが設けられていることを特徴とするものである。
【0023】
この発明に係る携帯用電子機器においては、スイッチにより音声出力手段を制御できるので、音声の出力タイミングや所望する音声情報を確実に出力することができる。また、表示部に表示された出力情報を確認することで、正確な操作を行うことができる。従って、操作性をより向上することができる。
【0024】
また、本発明に係る携帯用電子機器は、上記本発明の携帯用電子機器において、前記収納室が、前記複数のスイッチ及び前記表示部が設けられた面と同じ面に設けられていることを特徴とするものである。
【0025】
この発明に係る携帯用電子機器においては、スイッチ及び表示部が設けられている面と同じ面に収納室が設けられている。例えば、ケース本体の上面に、スイッチ、表示部及び収納室が全て設けられている。そのため、イヤホンを収納室に収納してスピーカとして機能させる際に、音声を使用者に向かって出力させることができる。よって、音声をより聞き取り易くすることができる。
【0026】
また、本発明に係る携帯用電子機器は、上記本発明のいずれかの携帯用電子機器において、前記ケース本体内には、前記コードをケース本体内に巻き取る巻取手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0027】
この発明に係る携帯用電子機器においては、イヤホンを収納室内に収納する際に、巻取手段により容易かつ瞬時にコードを巻き取ることができる。よって、操作性を高めることができる。また、イヤホンを耳に装着した後、コードを巻き取って、該コードの長さを最適な長さに調整することができる。このように、コードの余長分を調整できるので、使い易い。
【0028】
また、本発明に係る携帯用電子機器は、上記本発明のいずれかの携帯用電子機器において、前記本体ケース内に設けられた充電池と、前記ケース本体に設けられ、前記充電地に電力を充電する充電手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0029】
この発明に係る携帯用電子機器においては、充電手段を介して充電池に外部からの電力を充電できるので、通常の電池を別個に用意する必要がない。従って、ランニングコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る携帯用電子機器によれば、イヤホンをスピーカとして使用することができ、小型化及び低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る携帯用電子機器の第1実施形態を、図1から図6を参照して説明する。なお、本実施形態では、携帯用電子機器の一例として、携帯型語学学習機を例に挙げて説明する。
本実施形態の携帯型語学学習機1は、図1から図3に示すように、ケース本体2と、2つのイヤホン3と、2つのイヤホン3から音声を出力させる音声出力手段4と、2つのイヤホン3をそれぞれ収納する収納室5と、該収納室5にそれぞれ蓋をする2つのカバー部6とを備えている。
【0032】
ケース本体2は、プラスチックやアルミ等の金属材料により薄型の箱状に形成されている。このケース本体2の上面には、音声出力手段4の出力情報を表示するLCD(Liquid Crystal Display)等の液晶表示器である表示部10と、少なくとも1つが音声出力手段4を制御する複数のボタン(スイッチ)11とが設けられている。
【0033】
また、ケース本体2内には、図3に示すように、制御部12及び音声情報を含む各種の情報が記憶されているメモリ13等が実装された基板14や、乾電池15が内蔵されている。制御部12は、CPU等の演算処理部、語学学習機としての各種プログラム等が記憶されているROM、一時記憶媒体であるRAM、表示部10の制御を行う表示制御部やボタン11の入力を制御する入力制御部等を有している。そして制御部12は、複数のボタン11が押下されたときに送られてくる信号に基づいて、各構成品を総合的に制御して語学学習機としての各種機能を作動させるようになっている。例えば、ボタン11によって選択された学習プログラムを実行させたり、日本語表示と英語表示とを切り替えたり、音量を調整したりするようになっている。
【0034】
また、制御部12は、メモリ13に記憶されている音声情報を、音声変換部16を介して2つのイヤホン3から音声出力させる機能を有している。これにより、例えば、外国語を正しい音声(ネイティブ音声)で聞いて学習することが可能とされている。この際、制御部12は、音声出力の情報を表示部10に表示している。そのため、使用者は、目と耳とで語学を学習することができるようになっている。即ち、制御部12及び音声変換部16は、上記音声出力手段4として機能するようになっている。
また、制御部12は、ボタン11の操作に応じて、音声出力の情報だけなく、その他各種情報を表示部10に表示している。例えば、学習プログラムの内容、音声再生速度、時刻、日付や乾電池15の残量等を表示できるようになっている。
【0035】
また、音声変換部16は、2つのイヤホン3から出力させる音声の出力レベルをそれぞれ調整するステレオ調整手段としても機能するようになっている。これにより、2つのイヤホン3から最適な音量のステレオ状態で音声を聞くことができるようになっている。
【0036】
イヤホン3は、ケース本体2に基端側が出し入れ可能に取り付けられたコード3aと、該コード3aの先端に配されて耳に挿入可能な挿入部3bとから構成されている。コード3aは、図3に示すように、収納室5に設けられた挿通孔5dを通って出し入れされるようになっている。また、本実施形態では、コード3aの基端側をケース本体2内に設けられた巻取手段20によって巻き取ることができるようになっている。
【0037】
この巻取手段20は、図4に示すように、軸部材21と、該軸部材21によって軸線L回りに回転可能に支持されると共に、コード3aを2つのフランジ22、23間の外周面に巻回可能なリール24と、リール24を軸線L回りの一方向(図4に示すR方向)に向けて付勢するコイルスプリング25とを有している。
軸部材21は、円柱状に形成されてケース本体2の上面に垂直な方向に向いた状態で固定されている。リール24は、中心部分にコイルスプリング25を収納する凹部24aが形成されている。コイルスプリング25は、この凹部24a内に収納されると共に、両端が軸部材21及び凹部24aの内周面にそれぞれ取り付けられている。これにより、リール24は、常に一方向(R方向)に付勢された状態となっている。
【0038】
また、2つのフランジ22、23のうち一方のフランジ23には、切り欠き部23aが所定の角度毎に形成されている。また、リール24に隣接する位置には、ストッパ26がピン27を中心として回転自在に設けられている。このストッパ26は、切り欠き部23aに係合する鉤状の爪部26aが形成されている。そして、リール24は、爪部26aと切り欠き部23aとが係合しているときに、上述した一方向(R方向)に回転しないようになっている。また、ストッパ26の先端は、リール24を他方向(図4に示すR方向とは逆方向)に回転したときに、その回転を妨げないように、例えば、円弧状に形成されている。
【0039】
また、ストッパ26は、図示しないスプリング等によって爪部26aが一方のフランジ23に向けて付勢されている。また、ストッパ26の基端側は、ケース本体2に設けられた図示しない巻取ボタンに機械的に連結されており、巻取ボタンが押下されたときにスプリングに抗する力で回転するようになっている。これにより、爪部26aと切り欠き部23aとの係合が解かれて、リール24がコイルスプリング25によって一方向に回転し。コード3aをケース本体2内に巻き取ることができるようになっている。
【0040】
上記収納室5は、図2及び図3に示すように、ケース本体2の表面から内側に凹んだ状態で形成され、イヤホン3を収納すると共に、収納されたイヤホン3から出力された音声を内壁5aで反響させて該音声による空気振動を増幅させている。具体的に説明すると、この収納室5は、ケース本体2の表面から内側に向けて漸次径が縮径する断面テーパ状の内壁5aと、該内壁5aの一端側を遮蔽する遮蔽板5bとで囲まれた空間であり、本実施形態では、複数のボタン11及び表示部10と同じ面であるケース本体2の上面に形成されている。
【0041】
なお、2つの収納室5は、図2に示すように、複数のボタン11を間に挟むように形成されている。また、内壁5a及び遮蔽板5bは、ケース本体2と一体的に形成されていても構わないし、音を反響させる最適な材質で形成した後、ケース本体2に対して取り付けても構わない。また、遮蔽板5bの略中心には、図3に示すように、イヤホン3の挿入部3bの一部が納まる凹部5cと、コード3aが挿通される上述した挿通孔5dとが連続的に形成されている。
【0042】
上記カバー部6は、図2に示すように収納室5内を閉塞する閉位置P1と、図5に示すように収納室5内を開放する開位置P2との間で変位可能にケース本体2に固定されており、収納室5の内壁5aで増幅された空気振動によって振動する振動板6aを備えている。
具体的に説明すると、カバー部6は、収納室5の開口に合わせて環状に形成されたリング部6bと、該リング部6bの内側に固定された上記振動板6aとを有している。この振動板6aは、例えば、減衰性能が高い極薄のマグネシウム等の金属板を成型加工されたものである。そして、このカバー部6は、収納室5の開口付近のケース本体2に対して、ヒンジ部6cを介して開閉可能に固定されている。
【0043】
次に、このように構成された携帯型語学学習機1を使用する場合について、以下に説明する。
まず、イヤホン3を使用して学習する場合には、図5に示すように、ヒンジ部6cを中心に2つのカバー部6をそれぞれ回転させて、閉位置P1から開位置P2に変位させる。これにより、収納室5内は、開放された状態になる。次いで、2つの収納室5内にそれぞれ収納されているイヤホン3の挿入部3bを指で把持して、収納室5から外部に引き出す。この際、挿入部3bに接続されているコード3aは、挿通孔5dを介してケース本体2から引き出される。
【0044】
つまり、挿入部3bの引き出しに伴って、コード3aをコイルスプリング25に抗する力で引き出すと、図4に示すリール24は他方向(R方向とは逆方向)に回転する。この際、ストッパ26は、先端の形状により他方向へのリール24の回転を妨げることがないので、円滑にコード3aを引き出すことができる。そして、コード3aをある程度の長さまで引き出す。なお、コード3aの引き出しを終了すると、コイルスプリング25に付勢されてリール24が一方向(R方向)に回転し、ストッパ26の爪部26aがフランジ23の切り欠き部23aに係合する。これにより、コード3aは引き出された状態で維持される。
【0045】
次いで、使用者は、図6に示すように、引き出した挿入部3bを耳に挿入してイヤホン3を装着する。また、イヤホン3を装着した後、コード3aを巻き取ってコード3aの長さを最適な調整することができる。即ち、ケース本体2に設けられている巻取ボタンを押下して、ストッパ26をリール24から離間するように回転させる。すると、爪部26aと切り欠き部23aとの係合が解かれるので、リール24がコイルスプリング25により一方向(R方向)に回転する。これにより、コード3aをケース本体2内に巻き取ることができ、コード3aの長さを短く調整することができる。また、巻取ボタンの押下を止めると、スプリングにより再度ストッパ26がリール24に当接して、爪部26aと切り欠き部23aとが係合する。そのため、コード3aの巻き取りを停止することができる。
このように、巻取ボタンを押下することで、コード3aの余長分を調整して最適な長さに調整することができる。
【0046】
次いで、ボタン11を適宜押下して、メモリ13に記憶されている音声情報を音声出力手段4により音声出力させる。例えば、英語の例文を正しい音声で出力させる。使用者は、この音声を周囲の音が煩い状況(電車内やバス内)であっても、イヤホン3を利用して両耳で明瞭に聞くことができる。しかも、表示部10に音声の出力情報、即ち、英語の例文が表示されるので、使用者は目と耳で英語を学習することができる。
【0047】
次に、イヤホン3を使用しないで学習する場合には、巻取ボタンを押下してコード3aを巻き取りながら、挿入部3bを収納室5内に入れてイヤホン3を収納する。次いで、ヒンジ部6cを中心にカバー部6を回転させて、図5に示す開位置P2から図2に示す閉位置P1に変位させる。これにより、収納室5内はカバー部6によって閉塞された状態となる。つまり、イヤホン3は、図3に示すように、収納室5の内壁5a及び遮蔽板5bとカバー部6とで囲まれる空間内に置かれた状態となる。そして、イヤホン3を収納した後、再度ボタンを適宜押下して、メモリ13に記憶されている音声情報を音声出力手段4により音声出力させる。例えば、イヤホン3使用時と同様に英語の例文を正しい音声で出力させる。
【0048】
すると、イヤホン3から出力された音声は、収納室5の内壁5aで反響する。そのため、音声出力によって発生する空気振動は、増幅された状態となってカバー部6の振動板6aに伝播する。これにより、振動板6aは、増幅された空気振動によって振動して、より大きな音で外部に音声を伝える。つまり、イヤホン3をスピーカとして機能させることができる。
その結果、イヤホン3だけでは出せない音量で音声を明瞭に聞くことができる。よって、使用者は、部屋の中等静かな環境で使用する場合時には、イヤホン3を耳に装着しなくても明瞭に音声を聞くことができ、学習することができる。
【0049】
特に、本実施形態の携帯型語学学習機1によれば、イヤホン3をスピーカとして機能させることができるので、従来のように、イヤホン3とスピーカとを別々に設ける必要がない。そのため、スピーカの設置スペースをなくすことができ、小型化を図ることができると共に、構成の簡略化を図ることができる。また、イヤホン3を収納室5に収納してカバー部6を閉位置P1に位置させるだけで、スピーカとして機能させることができるので、スイッチ等によりスピーカ使用とイヤホン3使用とで音声出力先を切り替える操作等が不要である。よって、操作性の向上化も図ることができる。しかも、カバー部6を変位させる際に、ヒンジ部6cを中心として単に開閉操作するだけであるので、容易かつ瞬時に閉位置P1と開位置P2との間を変位させることができる。よって、使い易く操作性に優れている。
【0050】
また、イヤホン3を2つ備えているので、両耳に装着して学習することができる。そのため、特に周囲の音が煩い状況であっても、外部の音をより確実に遮断して明瞭に音声を聞くことができる。なお、イヤホン3を必ず2つ使用する必要はなく、一方のイヤホン3だけを使用しても構わない。また、イヤホン3を2つ使用することで、最適な音量のステレオ状態で音声を聞くことができる。従って、機能性の向上化を図ることができる。
【0051】
また、ボタン11により音声出力手段4を制御できるので、音声の出力タイミングや、所望する音声情報を確実に出力することができる。また、音声の出力情報が表示部10に表示されるので、正確な操作を行うことができると共に、目と耳で学習でき、学習効率に優れている。また、コード3aの長さを使用状況に応じて最適な長さで調整できるので、コード3aが邪魔にならず煩わしさを感じることがない。よって、使い易い。
また、ボタン11及び表示部10が設けられている面と同じ面に収納室5が設けられているので、イヤホン3を収納室5に収納してスピーカとして機能させる際に、音声を使用者に向かって出力させることができる。よって、この点においても音声が聞き取り易い。
【0052】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る携帯用電子機器の第2実施形態について、図7から図11を参照して説明する。なお、第2実施形態において第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、収納室5を複数のボタン11及び表示部10と同じ面であるケース本体2の上面に設けたが、第2実施形態では、収納室5をケース本体2の下面に設けた点である。また、第1実施形態では、イヤホン3、収納室5及びカバー部6をそれぞれ2つ備えたが、第2実施形態では、イヤホン3、収納室5及びカバー部6を1つだけ備えている点である。
【0053】
即ち、本実施形態の携帯型語学学習機(携帯用電子機器)30は、図7から図10に示すように、ケース本体2の上面に複数のボタン11及び表示部10が設けられ、ケース本体2の下面に収納室5及びカバー部6が設けられている。また、本実施形態の収納室5には、図11に示すように、イヤホン3の挿入部3bが嵌め込まれる嵌合孔31が形成されている。具体的にこの嵌合孔31は、遮蔽板5bに挿入部3bの外形と略同じ径で形成された円形の孔である。そして、この嵌合孔31は、嵌め込まれた挿入部3bの周囲を所定の力で押圧して保持するようになっている。また、本実施形態の収納室5の内壁5aは、断面テーパ状ではなく、ケース本体2の上面及び下面に対して垂直に形成されている。
【0054】
このように構成された携帯型語学学習機30においては、イヤホン3を使用する際に片耳でしか音声を聞くことができない点が第1実施形態と異なるが、それ以外は第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。特に、収納室5がケース本体2の下面に設けられているので、収納室5の分だけケース本体2を小さくしたり、収納室5の分だけ表示部10を大きく設計したりすることができる。
また、イヤホン3を単に収納室5内に収納するのではなく、嵌合孔31に嵌め込んでしっかりと保持した状態で収納することができる。そのため、収納時にイヤホン3が下を向いていたとしても、ぐらついたり落下したりする恐れがない。従って、安定した音声を出力させることができ、信頼性の向上化を図ることができる。
【0055】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0056】
例えば、上記各実施形態においては、携帯用電子機器を携帯型語学学習機1、30として説明したが、携帯型語学学習機1、30に限られるものではなく、音声を出力する携帯用電子機器であれば構わない。例えば、携帯電話機、PDA等の携帯情報端末、携帯ゲーム機や電子辞書等である。また、ボタン11の個数や位置等は、任意に設定して良く、また表示部10の位置等も同様に任意に設定して構わない。また、各ボタン11の設定(制御部12の制御方法)も用途に応じて自由に設定して構わない。
【0057】
また、上記各実施形態では、ヒンジ部6cを中心に開閉可能にカバー部6を構成したが、この場合に限られず、閉位置P1と開位置P2との間で変位できるように構成されていれば構わない。例えば、本体ケースに対してスライド可能にカバー部6を固定しても構わない。この場合であっても、カバー部6をスライド操作するだけで、閉位置P1と開位置P2との間を容易かつ瞬時に変位させることができる。
【0058】
また、上記各実施形態では、イヤホン3のコード3aを巻取手段20にてケース本体2内に巻き取ることができるように構成したが、この場合に限られず、単にコード3aの基端側が出し入れ可能にケース本体2に取り付けられていれば構わない。
【0059】
また、上記各実施形態において、乾電池15を充電可能な充電池40としても構わない。例えば、図12に示すように、ケース本体2内に充電池40を備えると共に、該充電池40に電力を充電する充電用コネクタ(充電手段)41をケース本体2に設けても構わない。こうすることで、図示しない充電器からの充電コード等を充電用コネクタ41に接続することで、充電を行うことができ、通常の電池を別個に用意する必要がない。従って、維持経費(ランニングコスト)を低減することができる。
なお、充電用コネクタ41をパッキン付のカバーで保護して、防水機能を有するように構成すると良い。こうすることで、充電用コネクタ41を水滴等から保護することができる。
【0060】
また、図12に示すように、図示しないUSBケーブル等の通信用ケーブルやメモリカード等の外部接続手段を接続することができるコネクタ部42及び通信部43を設けても構わない。こうすることで、他の電子機器から通信用ケーブルを介して音声情報を入手したり、メモリカードを介して音声情報を入手したりしてメモリ13に記憶することができ、機能性をさらに向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る携帯用電子機器の第1実施形態を示す上面図である。
【図2】図1に示す携帯用電子機器の斜視図である。
【図3】図1に示す断面矢視A−A図である。
【図4】図2に示す巻取手段の拡大斜視図である。
【図5】図1に示す携帯用電子機器の斜視図であって、カバー部を開けてイヤホンを収納室から引き出した状態を示す図である。
【図6】イヤホンを耳に装着する直前の状態を示す図である。
【図7】本発明に係る携帯用電子機器の第2実施形態を示す上面図である。
【図8】図7に示す携帯用電子機器の下面図である。
【図9】図7に示す携帯用電子機器の上面側から見た斜視図である。
【図10】図7に示す携帯用電子機器の下面側から見た斜視図である。
【図11】図9に示す断面矢視B−B図である。
【図12】図1に示す携帯用電子機器の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
P1 閉位置
P2 開位置
1、30 携帯型語学学習機(携帯用電子機器)
2 ケース本体
3 イヤホン
3a コード
3b 挿入部
4 音声出力手段
5 収納室
5a 内壁
6 カバー部
6a 振動板
6c ヒンジ部
10 表示部
11 ボタン(スイッチ)
16 音声変換部(ステレオ音量調整手段)
20 巻取手段
31 嵌合孔
40 充電池
41 充電用コネクタ(充電手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体と、
該ケース本体に基端側が出し入れ可能に取り付けられたコードと、該コードの先端に配されて耳に挿入可能な挿入部とを有するイヤホンと、
前記ケース本体に設けられ、前記イヤホンから音声を出力させる音声出力手段と、
前記ケース本体の表面から内側に凹んだ状態で形成され、前記イヤホンを収納すると共に、収納されたイヤホンから出力された音声を内壁で反響させて該音声による空気振動を増幅させる収納室と、
該収納室内を閉塞する閉位置と収納室内を開放する開位置との間で変位可能に前記ケース本体に固定され、増幅された前記空気振動によって振動する振動板を有するカバー部と、を備えていることを特徴とする携帯用電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯用電子機器において、
前記収納室には、前記挿入部が嵌め込まれる嵌合孔が形成され、
該嵌合孔は、嵌め込まれた前記挿入部の周囲を所定の力で押圧して保持することを特徴とする携帯用電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2記載の携帯用電子機器において、
前記カバー部は、ヒンジ部を介して前記ケース本体に開閉可能に固定されていることを特徴とする携帯用電子機器。
【請求項4】
請求項1又は2記載の携帯用電子機器において、
前記カバー部は、前記ケース本体に対してスライド可能に固定されていることを特徴とする携帯用電子機器。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の携帯用電子機器において、
前記イヤホン、前記収納室及び前記カバー部材をそれぞれ2つ備えていることを特徴とする携帯用電子機器。
【請求項6】
請求項5に記載の携帯用電子機器において、
前記音声出力手段は、前記2つのイヤホンから出力させる音声の出力レベルをそれぞれ調整するステレオ音量調整手段を有していることを特徴とする携帯用電子機器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の携帯用電子機器において、
前記本体ケースの表面には、少なくとも1つが前記音声出力手段を制御する複数のスイッチと、前記音声出力手段の出力情報を表示する表示部とが設けられていることを特徴とする携帯用電子機器。
【請求項8】
請求項7に記載の携帯用電子機器において、
前記収納室は、前記複数のスイッチ及び前記表示部が設けられた面と同じ面に設けられていることを特徴とする携帯用電子機器。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の携帯用電子機器において、
前記ケース本体内には、前記コードをケース本体内に巻き取る巻取手段が設けられていることを特徴とする携帯用電子機器。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の携帯用電子機器において、
前記本体ケース内に設けられた充電池と、
前記ケース本体に設けられ、前記充電地に電力を充電する充電手段とを備えていることを特徴とする携帯用電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−187430(P2008−187430A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18873(P2007−18873)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】