説明

携帯端末装置、シチュエーション推定方法及びプログラム

【課題】位置情報を高い精度で得られない状況下であっても、ユーザのシチュエーションを推定できる携帯端末装置、シチュエーション推定方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】携帯端末装置1は、音声情報取得部2と、第1のデータベース3と、シチュエーション推定部4とを備える。音声情報取得部2は、周辺の音声情報を取得する。第1のデータベース3は、複数種類の場所と複数の音声情報の属性とを対応づけて記憶する。シチュエーション推定部4は、第1のデータベース3を参照し、音声情報取得部2によって取得された音声情報の属性と、第1のデータベース3に記憶された音声情報の属性とを比較して、ユーザのシチュエーションを推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末装置、シチュエーション推定方法及びプログラムに関し、更に詳しくは、GPS(Global Positioning Systems)等の測位機能を有する携帯端末装置のシチュエーションを推定する携帯端末装置、シチュエーション推定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機等の携帯端末装置には、GPS機能を搭載したものが知られている。特許文献1,2には、GPS機能を用いて取得した位置情報に基づいて、携帯端末装置を所持するユーザのシチュエーションを推定する技術が記載されている。ユーザのシチュエーションは、ユーザの移動状態や滞在場所等を含む、いわゆるシチュエーション情報(以下、プレゼンス情報ともいう)として各種サービスに利用されている。
【0003】
図8を参照して、特許文献1に記載の技術について説明する。シチュエーション特定サーバ100Aは、位置情報受信部101と、速度/加速度計算部102と、シチュエーション特定部103と、地図情報データベース104と、シチュエーション情報送信部105とを備える。位置情報受信部101は、測位サーバから送信された位置情報を受信し、この位置情報を速度/加速度計算部102及びシチュエーション特定部103に受け渡す。位置情報は、例えば、携帯端末装置がGPS衛星からの電波を受信した後に、GPS情報を測位サーバに送信し、測位サーバがGPS情報を処理することで算出される。
【0004】
速度/加速度計算部102は、単位時間当たりの位置情報の変化に基づいて速度と加速度とを算出し、算出結果をシチュエーション特定部103に受け渡す。シチュエーション特定部103は、位置情報を地図情報データベース104に照会して該当する地図情報を読み出し、この地図情報と、上記算出された速度及び加速度とに基づいて、シチュエーションを推定する。シチュエーション情報送信部105は、シチュエーション特定部103から受け渡されたシチュエーション情報を、各種サービスを提供するプレゼンス情報管理サーバに送信する。
【0005】
次に、図9を参照して、シチュエーション特定部103の動作について説明する。まず、シチュエーション特定部103は、測位によって得られた緯度・経度から地図情報を検索し(ステップS1)、地図情報を特定する(ステップS2)。次に、シチュエーション特定部103は、特定された地図情報が線路か否か(ステップS3)、道路か否か(ステップS4)、どの建物か(ステップS5)を判定する。続いて、シチュエーション特定部103は、ステップS3〜S5の判定結果に従い、シチュエーションを、「電車内」、「徒歩」or「自動車」、「当該建物内」として推定する(ステップS6〜S8)。さらに、ステップS7では、速度及び加速度に基づいて、「徒歩中」or「ドライブ中」の何れであるかを推定している(ステップS9,S10)。
【0006】
特許文献2には、上記のように、移動する端末の測位データ(位置情報)から移動距離、所要時間、速度等を算出し、算出されたデータに基づいて、移動状態が徒歩、自動車、電車等の何れであるかを推定する技術が記載されている。特許文献2では、さらに、端末が留まり続けていることを検出すると、地図情報データベースを参照し、滞在場所が自宅、学校、商業施設等の何れであるかを推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−189594号公報(段落0019−0030、図2及び図3)
【特許文献2】特開2008−146249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2では、GPS機能によって得られる位置情報と、位置情報から算出された速度、加速度等と、地図情報とをマッチングさせて、ユーザのシチュエーションを推定している。しかし、GPS衛星からの信号を部分的にしか受信できない状況下、即ち屋内や都市部等でGPS機能を用いて位置情報を取得した場合には、位置情報と現在位置との間で誤差が生じることがある。一例として、GPS衛星からの信号だけでなく、携帯端末装置の基地局からの電波情報とを組み合せて測位した場合であっても、数百m〜数km程度の誤差が生じることがある。
【0009】
つまり、特許文献1,2に記載の技術を使用しても、位置情報を高い精度で得られない状況下では、位置情報と地図情報とのマッチングでユーザのシチュエーションを推定することは困難であった。
【0010】
本発明は、位置情報を高い精度で得られない状況下であっても、ユーザのシチュエーションを推定できる携帯端末装置、シチュエーション推定方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、周辺の音声情報を取得する音声情報取得部と、
複数種類の場所と複数の音声情報の属性とを対応づけて記憶する第1のデータベースを参照し、前記音声情報取得部によって取得された音声情報の属性と、前記第1のデータベースに記憶された音声情報の属性とを比較して、ユーザのシチュエーションを推定するシチュエーション推定部と、を備えることを特徴とする携帯端末装置を提供する。
【0012】
また、本発明は、周辺の音声情報を取得するステップと、
複数種類の場所と複数の音声情報の属性とを対応づけて記憶する第1のデータベースを参照し、前記音声情報を取得するステップによって取得された音声情報の属性と、前記第1のデータベースに記憶された音声情報の属性とを比較して、ユーザのシチュエーションを推定するステップと、を備えることを特徴とするシチュエーション推定方法を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、コンピュータを用い、ユーザのシチュエーションを推定する携帯端末装置のためのプログラムであって、前記コンピュータに、
周辺の音声情報を取得する処理と、
複数種類の場所と複数の音声情報の属性とを対応づけて記憶する第1のデータベースを参照し、前記音声情報を取得する処理によって取得された音声情報の属性と、前記第1のデータベースに記憶された音声情報の属性とを比較して、ユーザのシチュエーションを推定する処理と、を実行させることを特徴とするプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の携帯端末装置、シチュエーション推定方法及びプログラムでは、位置情報を高い精度で得られない状況下であっても、ユーザのシチュエーションを推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の携帯端末装置の最小基本構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る携帯端末装置の構成を示すブロック図。
【図3】図2に示すシチュエーション特定部の構成を主に示すブロック図。
【図4】図3に示す移動状態推定部の動作を示すフローチャート。
【図5】図3に示す滞在場所属性推定部の動作を示すフローチャート。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る携帯端末装置に含まれるシチュエーション特定部の構成を示すブロック図。
【図7】図6に示す移動属性推定部の動作を示すフローチャート。
【図8】従来のシチュエーション特定サーバの構成を示すブロック図。
【図9】図8に示すシチュエーション特定部の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の携帯端末装置の最小基本構成を示すブロック図である。本発明の携帯端末装置1は、図1に示すように、最小基本構成として、音声情報取得部2と、第1のデータベース3と、シチュエーション推定部4とを備える。
【0017】
音声情報取得部2は、周辺の音声情報を取得する。第1のデータベース3は、複数種類の場所と複数の音声情報の属性とを対応づけて記憶する。シチュエーション推定部4は、第1のデータベース3を参照し、音声情報取得部2によって取得された音声情報の属性と、第1のデータベース3に記憶された音声情報の属性とを比較して、ユーザのシチュエーションを推定する。
【0018】
上記携帯端末装置1では、周辺の音声情報の属性に基づいて、ユーザのシチュエーションを推定するので、位置情報を高い精度で得られない状況下であっても、位置情報と地図情報とのマッチングを行うことなく、ユーザのシチュエーションを推定できる。
【0019】
本発明の携帯端末装置は、携帯端末装置の現在位置、移動速度、加速度、現在位置での滞在時間の少なくとも1つの属性を含む位置/移動情報を取得する位置/移動情報検出部を更に備え、シチュエーション推定部は、位置/移動情報検出部の検出対象である位置/移動情報の属性と、携帯端末装置の推定滞在場所とを関連づけて記憶する第2のデータベースを更に参照して、ユーザのシチュエーションを推定する構成を採用できる。この構成により、位置/移動情報の属性と、携帯端末装置の推定される滞在場所とを関連づけて、ユーザのシチュエーションを推定できる。
【0020】
また、本発明の携帯端末装置は、推定されたシチュエーションに含まれる滞在場所の履歴を記憶する履歴記憶部を更に備え、シチュエーション推定部は、更に履歴記憶部に記憶された滞在場所の属性に基づいて、ユーザのシチュエーションを推定する構成を採用できる。この構成により、滞在場所の履歴を用いて得られたユーザの傾向に基づいて、ユーザのシチュエーションをより正確に推定できる。
【0021】
さらに、本発明の携帯端末装置は、シチュエーション推定部は、滞在場所の属性が推定された地点と他の地点との間での移動経路の履歴を蓄積して移動経路パターンを学習し、該移動経路パターンに基づいて、次の移動先となる滞在場所を推定し、推定された移動先の滞在場所の属性に基づいて、移動の目的を推定する構成を採用できる。この構成により、ユーザのシチュエーションの推定に、移動の目的が利用できる。
【0022】
さらに、本発明のシチュエーション推定方法及びプログラムは、上記最小基本構成及び他の各構成に対応する構成をそれぞれ採用できる。上記最小基本構成に対応する構成により、位置情報を高い精度で得られない状況下であっても、ユーザのシチュエーションを推定できる。また、他の各構成に対応する構成により、上記同様の効果を奏する。
【0023】
以下、図2〜図7を参照して、本発明の例示的な実施の形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図2は、本発明の第1の実施形態に係る携帯端末装置の構成を示すブロック図である。携帯端末装置100は、GPS機能等からなる測位機能を搭載し、また、加速度センサ、方位センサ及びジャイロ等の少なくとも一つのセンサと、マイクとを備えている。携帯端末装置100は、測位サーバから送信される位置情報と、各センサから得られる移動量に関する移動情報と、マイクから取得される音声情報とに基づいて、携帯端末装置100を所持しているユーザのシチュエーションを推定する。また、携帯端末装置100は、推定されたユーザのシチュエーションを示すプレゼンス情報を、各種サービスを提供するプレゼンス情報管理サーバに送信する。
【0024】
携帯端末装置100は、位置/移動情報検出部10と、滞在特徴計算部20と、滞在場所履歴記憶部21と、周辺音推定部30と、音声情報属性データベース40と、移動情報属性データベース50と、地図情報データベース60と、シチュエーション特定部70と、シチュエーション情報送信部80とを備える。なお、携帯端末装置100は、プログラムによって制御されるコンピュータとして構成されている。
【0025】
位置/移動情報検出部10は、携帯端末装置100の現在位置、移動速度、加速度、現在位置での滞在時間等の少なくとも1つの属性を含む位置/移動情報を取得する機能を有しており、例えば、移動量推定部11と、位置情報受信部12と、速度/加速度計算部13と、滞在場所検出部14とを備えている。
【0026】
移動量推定部11は、加速度センサ/方位センサ/ジャイロ等からの出力に基づいて、単位時間当たりの移動量を推定し、推定された移動量に関する移動情報をシチュエーション特定部70に受け渡す。移動量とは、例えば、単位時間当たりの加速度センサ出力の分散値、フーリエ変換後のパワースペクトル、方位センサ/ジャイロ等から得られる角速度や角度の変動値が挙げられる。また、これらに限らず、歩数を加速度センサから推定して、これを移動量としてもよい。
【0027】
位置情報受信部12は、GPS又は通信事業者の測位サーバから送信される位置情報を受信し、位置情報を速度/加速度計算部13及び滞在場所検出部14に受け渡す。速度/加速度計算部13は、位置情報の時系列変化に基づいて携帯端末装置100の速度や加速度を算出する。ここでの処理は、例えば、GPS信号の受信状態が急に変化する等の原因による、いわゆる位置飛びの影響を軽減するために、複数の時系列データを用いて速度や加速度の平均値や中間値を算出し、これを所定の速度や加速度としてもよい。また、速度/加速度計算部13は、算出した速度や加速度をシチュエーション特定部70に受け渡す。
【0028】
滞在場所検出部14は、位置情報受信部12から受け渡された位置情報に基づいて、滞在場所を検出する。ここでの処理は、例えば、GPS信号が検出されなくなった場所とGPS信号が検出されるようになった場所とを比較し、2つの場所間の距離を尺度として、同一施設であると判定される場合には、その重心位置を滞在場所と検出する。また、一定時間以上、同一場所から移動しなかったと判定される場合には、その場所を滞在場所と検出する。
【0029】
また、滞在場所検出部14は、検出された滞在場所を滞在場所履歴記憶部21及びシチュエーション特定部70に受け渡す。ここで、滞在場所検出部14は、滞在場所履歴記憶部21に記憶された滞在場所の履歴に基づいて、同一の滞在場所とみなせる領域を統合する処理を行う。この処理は、いわゆるウォード法等のクラスタリング手法を用いて、距離が一定値以下の場所を同じ場所とみなして順に統合する処理を適用したものである。
【0030】
滞在特徴計算部20は、滞在場所検出部14で同一の滞在場所と判定された滞在場所に対して、滞在場所履歴記憶部21から滞在時間の履歴を参照して、この履歴に基づいて、滞在頻度/時間長/時間帯の傾向をヒストグラム等から作成し、指標となる確率をシチュエーション特定部70に受け渡す。
【0031】
ここで、指標となる確率についての具体例を示す。一例として、滞在頻度に関して1週間に3回の週が8つ、1週間に4回の週が2つあった場合には、滞在頻度:1週間に3回が80%、4回が20%とする。また、滞在時間に関して0〜1時間が過去に1回、1時間〜2時間が過去に6回、2時間〜3時間が過去に3回あった場合には、滞在時間:0〜1時間が10%、1時間〜2時間が60%、2時間〜3時間が30%とする。さらに、滞在時間帯に関して午前9時〜午後0時が過去に1回、午後1時〜午後5時が過去に6回、午後5時〜午後9時が過去に3回あった場合には、滞在時間帯:午前9時〜午後0時が10%、午後1時〜午後5時が60%、午後5時〜午後9時が30%とする。
【0032】
周辺音推定部30は、周辺の音声情報を取得して、シチュエーション特定部70に受け渡す。周辺音推定部30は、マイクから収集した音データに基づいて、騒がしさや音の特徴、例えば、特徴的な周波数成分等を検出する。音声情報としては、単位時間当たりの音圧の最大値や平均値、フーリエ変換後のパワースペクトル等が挙げられる。
【0033】
音声情報属性データベース40は、複数種類の場所と複数の音声情報の属性とを対応づけて記憶する。移動情報属性データベース50は、位置/移動情報検出部10の検出対象である位置/移動情報の属性と、携帯端末装置100の推定された滞在場所とを関連づけて記憶する。
【0034】
地図情報データベース60は、緯度や経度と、建物や道路との関係が記憶されている。一例として、地図情報データベース60には、行政区域、海岸線、街区、道路(中心線、車道、歩道境界、道路界)、河川(中心線、河川区域)、鉄道、駅、内水面、公園等の場所、建物等が、対応する緯度や経度と共に記憶されている。
【0035】
シチュエーション特定部70は、上記した移動量推定部11からの移動情報、速度/加速度計算部13からの速度と加速度、滞在場所検出部14からの滞在場所、滞在特徴計算部20からの推定された滞在場所に関連する各種傾向を示す確率、周辺音推定部30からの音声情報、及び各データベース40,50,60に基づいて、ユーザのシチュエーションを推定する。ここでのユーザのシチュエーションには、移動状態と滞在場所の属性とを含む。
【0036】
以下、シチュエーション特定部70について説明する。シチュエーション特定部70は、コンピュータを制御するプログラムによって構成されており、図3に示すように、移動状態推定部71と、滞在場所属性推定部72とを備える。
【0037】
移動状態推定部71は、移動情報、速度と加速度、及び音声情報に基づいて、ユーザのシチュエーションに含まれる移動状態を推定する。ここでの移動情報は、例えば、特定の振動特徴、即ち特定の周波数成分が含まれる割合が高い等の情報を含む。音声情報は、例えば、音の周波数、音色及び音レベルを含む。また、推定される移動状態としては、ユーザが、静止、徒歩中、電車中、ドライブ中、さらに不明の状態が挙げられる。
【0038】
図4は、移動状態推定部71の動作を示すフローチャートである。まず、移動状態推定部71は、速度/加速度計算部13により得られる速度の大きさが予め定めた閾値v1以下であるか否かを判定する(ステップS101)。ステップS101でしきい値(閾値)v1以下であれば(Y)、移動情報属性データベース50を参照して、移動状態を「静止」と推定する(ステップS102)。
【0039】
また、ステップS101で閾値v1より大きければ(N)、速度/加速度計算部13により得られる速度の大きさが予め定めた閾値v1以上v2以下であるか否かを判定する(ステップS103)。ステップS103で閾値v1以上v2以下であれば(Y)、続いて、移動量推定部11で推定される加速度センサのパワースペクトルが、特定の周波数成分、例えば歩行タイミングに関係する1Hz近辺が高いか否かを判定する(ステップS104)。ステップS104で特定の周波数成分が高ければ(Y)、移動情報属性データベース50を参照して、移動状態を「徒歩中」と推定する(ステップS105)。
【0040】
次に、ステップS103又はステップS104が成立しない場合には(N)、速度の大きさが閾値v3以上であるか否かを判定する(ステップS106)。ステップS106で速度が閾値v3以上であれば(Y)、続いて、周辺音推定部30で音レベルが一定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS107)。ステップS107で音レベルが一定値よりも大きければ(Y)、音声情報属性データベース40を参照して、移動状態を「電車中」と推定する(ステップS108)。
【0041】
次に、ステップS106又はステップS107が成立しない場合には(N)、速度の大きさが閾値v4以上v5以下であるか否かを判定し(ステップS109)、閾値v4以上v5以下であれば(Y)、移動情報属性データベース50を参照して、移動状態を「ドライブ中」と推定する(ステップS110)。最後に、ステップS109が成立しない場合には(N)、移動情報属性データベース50を参照して、移動状態を「不明」と推定する(ステップS111)。
【0042】
つまり、移動状態推定部71では、移動状態の推定に際して、屋内や都市部等、GPS信号の受信が困難である状況下では信頼性が損なわれてしまう位置情報(例えば、線路や道路上にある旨を示す情報)を利用していない。移動状態推定部71では、位置情報の精度から影響を受けないパラメータである、速度の大きさ、特定の振動特徴及び特定の音レベルを用いて、ユーザの移動状態を推定している。
【0043】
滞在場所属性推定部72は、滞在場所として推定された場所、滞在時の移動情報、滞在時の周辺音の特徴を示す音声情報、滞在場所に関連づけられた傾向を示す確率に基づいて、ユーザのシチュエーションに含まれる滞在場所の属性を推定する。ここでの滞在時の移動情報としては、移動量の大きさを含む。滞在場所に関連づけられた傾向としては、滞在頻度、滞在時間、滞在時間帯を含む。また、滞在場所の属性としては、例えば、会社又は学校を含む属性、自宅を含む属性、買い物又は展示会を含む属性、飲食、宴会、映画、コンサート、ボーリング又はパチンコを含む属性、さらに不明を含む属性が挙げられる。
【0044】
図5は、滞在場所属性推定部72の動作を示すフローチャートである。まず、滞在場所属性推定部72は、滞在場所として推定された場所の滞在頻度が、予め設定された値より大きいか否かを判定する(ステップS201)。ここで、滞在頻度が、予め設定された値よりも大きいとは、例えば、1週間に5回以上滞在する確率が80%以上であることが挙げられる。また、ステップS201では、滞在場所として推定された場所が、滞在の確率が上位2箇所の場所であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0045】
次に、ステップS201で滞在頻度が予め設定された値よりも大きいとき(Y)、続いて、滞在時間帯として昼間に滞在する可能性がより高いか否かを判定する(ステップS202)。ステップS202の判定は、例えば、10時〜15時に滞在する確率が80%以上かつ0時〜6時に滞在する確率が20%以下である等の傾向に基づいて行われる。
【0046】
ステップS202で昼間に滞在する可能性がより高ければ(Y)、移動情報属性データベース50を参照して、滞在場所の属性を「会社又は学校」と推定する(ステップS203)。一方、ステップS202が成立しない場所には(N)、移動情報属性データベース50を参照して、滞在場所の属性を「自宅」と推定する(ステップS204)。
【0047】
次に、ステップS201で滞在頻度が予め設定された値より小さいとき、又は上位2箇所の場所でないとき(N)、単位時間あたりの移動量が一定値より大きいか否かを判定する(ステップS205)。ステップS205で移動量が一定値よりも大きければ(Y)、移動情報属性データベース50を参照して、滞在場所の属性を「買い物又は展示会」と推定する(ステップS206)。
【0048】
ここで、ステップS206での推定結果を更に区分する場合には、地図情報データベース60を参照する。例えば、一般に展示会場は広く、かつ、場所が限定されているので、位置情報が高精度で得られない状況下であっても、位置情報と地図情報とのマッチングによって、展示会又は買い物の何れであるか、ある程度の識別が可能となる。
【0049】
次に、ステップS205が成立しない場合には(N)、滞在時間が設定値(例えば、30分)より大きいか否かを判定する(ステップS207)。ステップS207の判定は、例えば、滞在時間が30分以上である確率が95%以上であることに基づいて行ってもよい。ステップS207で滞在時間が設定値よりも小さいのであれば(N)、移動情報属性データベース50を参照して、短時間の立寄りであることを推定し、ここでは滞在場所の属性を「不明」とする(ステップS208)。
【0050】
一方、ステップS207で滞在時間が設定値より長い場合には(Y)、周辺音が静か否かを判定する(ステップS209)。ステップS209で周辺音が静かであれば(Y)、音声情報属性データベース40を参照して、滞在場所の属性を「飲食」と推定し(ステップS210)、周辺音が静かでなければ(N)、滞在場所の属性を「宴会、映画、コンサート、ボーリング又はパチンコ」と推定する(ステップS211)。
【0051】
また、ステップS211での推定結果(位置推定結果)を更に区分する際には、地図情報データベース60を参照して、位置推定結果と地図情報とのマッチングを行い、「居酒屋、映画館、コンサートホール、ボーリング場、パチンコ店」が明確に識別できる場合には、更に限定して滞在場所の属性を推定してもよい。
【0052】
つまり、滞在場所属性推定部72では、滞在場所の属性の推定に際して、上記移動状態推定部71と同様に、屋内や都市部等の状況下では信頼性が損なわれてしまう位置情報を利用していない。滞在場所属性推定部72では、位置情報の精度から影響を受けないパラメータである、滞在頻度、移動量の大きさ、滞在時間、周辺音を用いて、ユーザの滞在場所の属性を推定している。
【0053】
ここで、移動状態推定部71は、図3に示すように、推定したユーザの移動状態を滞在場所属性推定部72及びシチュエーション情報送信部80に受け渡し、また、滞在場所属性推定部72は、推定したユーザの滞在場所の属性をシチュエーション情報送信部80に受け渡す。シチュエーション情報送信部80は、図2に示すように、シチュエーション特定部70から受け渡されたユーザのシチュエーションを示すプレゼンス情報を、プレゼンス情報管理サーバに送信する。なお、プレゼンス情報は、プレゼンス情報管理サーバに限らず、情報配信サーバ等、各種サービスを運営するサーバに送信してもよい。
【0054】
従って、携帯端末装置100では、位置情報の精度の影響を受けない上記各パラメータを用いることで、屋内や都市部等、GPS信号の受信が困難である状況下であっても、ユーザの移動状態及び滞在場所の属性を含むシチュエーションを推定できる。
【0055】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係る携帯端末装置に含まれるシチュエーション特定部の構成を主に示すブロック図である。本実施形態に係る携帯端末装置は、上記シチュエーション特定部70に、移動先推定部73及び移動属性推定部74を追加した構成を有するシチュエーション特定部70Aを備えている点で、上記携帯端末装置100と異なる。
【0056】
移動先推定部73は、滞在場所属性推定部72で滞在場所の属性が推定された地点と他の地点との間での移動軌跡の履歴を蓄積して、移動パターンを学習し、この移動パターンを参照することで、現在までの移動軌跡から次の移動先(目的地)を推定する。ここでの処理は、例えば、特許第3816068号に記載された既存の技術を適用してもよい。さらに、移動先推定部73は、推定した目的地の属性(滞在場所属性)を移動属性推定部74及びシチュエーション情報送信部80に受け渡す。目的地の属性としては、例えば、自宅を含む属性、会社を含む属性、買い物を含む属性、宴会、映画、コンサート、ボーリング又はパチンコを含む属性が挙げられる。
【0057】
移動属性推定部74は、移動先推定部73から受け渡された目的地の属性に基づいて、ユーザのシチュエーションに含まれる移動属性を推定する。移動属性とは、移動の目的を意味しており、例えば、帰宅中、出社、買い物に行く、遊びに行く等が挙げられる。
【0058】
図7は、移動属性推定部74の動作を示すフローチャートである。まず、移動属性推定部74は、目的地の属性が自宅であるか否かを判定し(ステップS301)、自宅であれば(Y)、移動属性を「帰宅中」と推定する(ステップS302)。次に、ステップS301で目的地の属性が自宅でなければ(N)、目的地の属性が会社であるか否かを判定し(ステップS303)、会社であれば(Y)、移動属性を「出社中」と推定する(ステップS304)。
【0059】
次に、ステップS303で目的地の属性が会社でなければ(N)、目的地の属性が買い物であるか否かを判定し(ステップS305)、買い物であれば(Y)、移動属性を「買い物に行く」と推定する(ステップS306)。
【0060】
続いて、ステップS305で目的地の属性が買い物でなければ(N)、目的地の属性が、宴会、映画、コンサート、ボーリング又はパチンコであるか否かを判定する(ステップS307)。ステップS307で目的地の属性が、宴会、映画、コンサート、ボーリング又はパチンコであれば(Y)、移動属性を「遊びに行く」と推定する(ステップS308)。一方、ステップS307が成立しない場合には(N)、移動属性を「不明」と推定する(ステップS309)。
【0061】
つまり、シチュエーション特定部70Aでは、移動先推定部73で現在までの移動軌跡から次の目的地を推定し、移動属性推定部74で目的地の属性から移動属性を推定できる。従って、シチュエーション特定部70Aを備えた携帯端末装置では、移動状態及び滞在場所の属性だけでなく、移動の目的を示す移動属性をも含めたユーザのシチュエーションを推定できる。
【0062】
上記各実施形態の携帯端末装置は、例えば、携帯端末装置やワンセグ(登録商標)等の放送を利用した情報配信、広告配信、プレゼンス提供、マーケティング情報収集等の各種サービスに利用可能である。一例として、ユーザのシチュエーションが、買い物又は展示会に滞在している、又はその場所に向かっている途中であると推定された場合に、その買い物又は展示会に関連する商品の広告を携帯端末装置に配信する等、ユーザのシチュエーションに適した情報を提供するサービスに利用できる。
【0063】
上記各実施形態では、携帯端末装置でシチュエーションを推定する構成を例示したが、これに限定されない。一例として、移動量推定部11及び周辺音推定部30を携帯端末装置に搭載し、それ以外の構成をサーバに搭載してもよい。この場合には、サーバは、測位サーバから送信される携帯端末装置の位置情報を位置情報受信部12で受信し、また、携帯端末装置の移動量推定部11及び周辺音推定部30から送信される移動情報及び音声情報を、シチュエーション特定部70で受信する。このようにすれば、ユーザのシチュエーションをサーバで推定することができる。
【0064】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の携帯端末装置、シチュエーション推定方法及びプログラムは、上記実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1:携帯端末装置
2:音声情報取得部
3:第1のデータベース
4:シチュエーション推定部
10:位置/移動情報検出部
11:移動量推定部
12:位置情報受信部
13:速度/加速度計算部
14:滞在場所検出部
20:滞在特徴計算部
21:滞在場所履歴記憶部
30:周辺音推定部
40:音声情報属性データベース
50:移動情報属性データベース
60:地図情報データベース
70,70A:シチュエーション特定部
71:移動状態推定部
72:滞在場所属性推定部
73:移動先推定部
74:移動属性推定部
80:シチュエーション情報送信部
100:携帯端末装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺の音声情報を取得する音声情報取得部と、
複数種類の場所と複数の音声情報の属性とを対応づけて記憶する第1のデータベースを参照し、前記音声情報取得部によって取得された音声情報の属性と、前記第1のデータベースに記憶された音声情報の属性とを比較して、ユーザのシチュエーションを推定するシチュエーション推定部と、を備えることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
携帯端末装置の現在位置、移動速度、加速度、現在位置での滞在時間の少なくとも1つの属性を含む位置/移動情報を取得する位置/移動情報検出部を更に備え、
前記シチュエーション推定部は、前記位置/移動情報検出部の検出対象である位置/移動情報の属性と、携帯端末装置の推定滞在場所とを関連づけて記憶する第2のデータベースを更に参照して、ユーザのシチュエーションを推定する、請求項1に記載の携帯端末装置。
【請求項3】
前記推定されたシチュエーションに含まれる滞在場所の履歴を記憶する履歴記憶部を更に備え、
前記シチュエーション推定部は、更に前記履歴記憶部に記憶された滞在場所の属性に基づいて、ユーザのシチュエーションを推定する、請求項1又は2に記載の携帯端末装置。
【請求項4】
前記シチュエーション推定部は、前記滞在場所の属性が推定された地点と他の地点との間での移動経路の履歴を蓄積して移動経路パターンを学習し、該移動経路パターンに基づいて、次の移動先となる滞在場所を推定し、前記推定された移動先の滞在場所の属性に基づいて、移動の目的を推定する、請求項1〜3の何れか一に記載の携帯端末装置。
【請求項5】
周辺の音声情報を取得するステップと、
複数種類の場所と複数の音声情報の属性とを対応づけて記憶する第1のデータベースを参照し、前記音声情報を取得するステップによって取得された音声情報の属性と、前記第1のデータベースに記憶された音声情報の属性とを比較して、ユーザのシチュエーションを推定するステップと、を備えることを特徴とするシチュエーション推定方法。
【請求項6】
携帯端末装置の現在位置、移動速度、加速度、現在位置での滞在時間の少なくとも1つの属性を含む位置/移動情報を取得するステップを更に備え、
前記シチュエーションを推定するステップでは、前記第1のデータベースの参照に先立って、前記位置/移動情報を取得するステップの検出対象である位置/移動情報の属性と、携帯端末装置の推定滞在場所とを関連づけて記憶する第2のデータベースを更に参照する、請求項5に記載のシチュエーション推定方法。
【請求項7】
前記推定されたシチュエーションに含まれる滞在場所の履歴を記憶するステップを更に備え、
前記シチュエーションを推定するステップは、更に前記履歴を記憶するステップで記憶された滞在場所の属性に基づいて、ユーザのシチュエーションを推定する、請求項5又は6に記載のシチュエーション推定方法。
【請求項8】
前記滞在場所の属性が推定された地点と他の地点との間での移動経路の履歴を蓄積して移動経路パターンを学習するステップを更に有し、
前記シチュエーションを推定する処理は、該移動経路パターンに基づいて、次の移動先となる滞在場所を推定し、前記推定された移動先の滞在場所の属性に基づいて、移動の目的を推定する、請求項5〜7の何れか一に記載のシチュエーション推定方法。
【請求項9】
コンピュータを用い、ユーザのシチュエーションを推定する携帯端末装置のためのプログラムであって、前記コンピュータに、
周辺の音声情報を取得する処理と、
複数種類の場所と複数の音声情報の属性とを対応づけて記憶する第1のデータベースを参照し、前記音声情報を取得する処理によって取得された音声情報の属性と、前記第1のデータベースに記憶された音声情報の属性とを比較して、ユーザのシチュエーションを推定する処理と、を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
前記コンピュータに、携帯端末装置の現在位置、移動速度、加速度、現在位置での滞在時間の少なくとも1つの属性を含む位置/移動情報を取得する処理を更に実行させ、
前記シチュエーションを推定する処理では、前記第1のデータベースの参照に先立って、前記位置/移動情報を取得する処理の検出対象である位置/移動情報の属性と、携帯端末装置の推定滞在場所とを関連づけて記憶する第2のデータベースを更に参照する、請求項9に記載のプログラム。
【請求項11】
前記コンピュータに、前記推定されたシチュエーションに含まれる滞在場所の履歴を記憶する処理を更に実行させ、
前記シチュエーションを推定する処理は、更に前記履歴を記憶する処理で記憶された滞在場所の属性に基づいて、ユーザのシチュエーションを推定する、請求項9又は10に記載のプログラム。
【請求項12】
前記コンピュータに、前記滞在場所の属性が推定された地点と他の地点との間での移動経路の履歴を蓄積して移動経路パターンを学習する処理を更に実行させ、
前記シチュエーションを推定する処理は、該移動経路パターンに基づいて、次の移動先となる滞在場所を推定し、前記推定された移動先の滞在場所の属性に基づいて、移動の目的を推定する、請求項9〜11の何れか一に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−178200(P2010−178200A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20582(P2009−20582)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】