説明

携帯端末装置およびその通信制御方法

【課題】無線信号を受信すると自動的に通信を開始することが可能な非接触ICチップ等の通信部において、ユーザの意図しない状態で通信が行われることを防止できる携帯端末装置とその通信制御方法を提供する。
【解決手段】ICチップ用キー(例えばサイドキー519)が押下されていない場合、非接触ICチップ部109による通信が禁止される。これにより、ユーザの意図しない状態で非接触ICチップ部109とリーダ/ライタ装置600とが自動的に通信することを確実に防止できる。例えば、ICカード用のスキマーなどを用いてユーザの知らない間に非接触ICチップ部109のデータにアクセスする行為を有効に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線信号を受信すると自動的に通信を開始することが可能な非接触ICチップ等の通信部を備える携帯端末装置とその通信制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外部のリーダ/ライタ装置との間で電磁結合により非接触通信を行うRFIDなどと呼ばれるICチップが普及しており、これを埋め込んだICカードが乗車券や銀行のキャッシュカード、電子マネーの媒体などに広く用いられている。ICカードは、従来の磁気方式のカードに比べてデータの記憶容量が大きく、また記録データの暗号化が可能でセキュリティ性が高いなどの優れた特徴を有している。
【0003】
他方、携帯電話機に代表される携帯端末装置は多機能化が進んでおり、本来の電話機としての機能に加えて、電子メール端末、Webブラウザ、カメラ、音楽プレーヤ、テレビジョン受信機などの様々な機能が取り込まれている。そして、そのような機能の中で、近年このICカード機能を内蔵する携帯電話機が登場し、注目を集めている。
【0004】
携帯電話機にRFIDチップ(ICチップ)機能が搭載されるようになると、今後はその利便性によって種々の重要なデータが携帯電話機に集中する可能性がある。しかしながらその場合、携帯電話機を紛失したり盗まれたりしてICチップ機能が悪用さると、ユーザは甚大な損失を被る可能性がある。したがって、ICチップ機能を内蔵する携帯電話機については、そのセキュリティ性の向上が大きな課題となっている。
【0005】
特許文献1には、バッテリ電圧の低下などによって電源がオフ状態になると非接触ICチップ機能を使用不能にする携帯通信装置が記載されている。
【0006】
特許文献2には、通常時にICチップ機能を使用不能とし、ユーザが入力した暗証番号と予め登録された暗証番号とが一致した場合に一定期間だけICチップ機能の使用可能とする携帯端末機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−117116号公報
【特許文献2】特開2003−16398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2に記載される装置は、何れも紛失時や盗難時におけるICチップ機能の不正使用を防止するものである。ところが非接触ICカードについては、文字通り非接触の状態でデータを読み書きすることができるため、たとえユーザがカードを身に着けているときであっても、カード内のデータが不正にアクセスされる可能性を完全に否定することはできない。例えば磁気カードのデータを不正に読み出すスキマー(skimmer)のように、ICカードのデータを非接触で容易に読み出す装置が将来開発されることも有り得る。このような装置を使えば、例えば電車などで第三者と隣り合った際に、身に着けている携帯電話機のICチップから知らぬ間にデータを読み出される可能性がある。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、無線信号を受信すると自動的に通信を開始することが可能な非接触ICチップ等の通信部において、ユーザの意図しない状態で通信が行われることを防止できる携帯端末装置とその通信制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明の携帯端末装置は、第1の操作手段を含む複数の操作手段を有する入力部と、電磁結合による無線通信を実行可能な無線通信部と、前記第1の操作手段が操作されていない状態において前記無線通信を規制する制御部と、を有し、前記制御部は、前記第1の操作手段が操作されている状態において前記無線通信の規制を解除し、当該第1の操作手段が操作されていない状態になると前記無線通信を再び規制する。
【0011】
第2の発明の携帯端末装置は、第1の操作手段を含む複数の操作手段を有する入力部と、電磁結合による無線通信を実行可能な無線通信部と、前記第1の操作手段が操作されていない状態において前記無線通信を規制する制御部と、を有し、前記制御部は、前記第1の操作手段が操作され、かつ所定の条件を満たす状態において前記無線通信の規制を解除し、当該第1の操作手段が操作されていない状態になると前記無線通信を再び規制する。
【0012】
第3の発明の携帯端末装置は、第1の操作手段の含む複数の操作手段を有する入力部と、電磁結合による無線通信を実行可能な無線通信部と、前記無線通信部にて送受信するデータの読み出し書き込みを制御する無線通信制御部と、前記無線通信制御部に給電する電源部と、前記第1の操作手段が操作されていない状態において前記無線通信制御部への給電を行わない制御部と、を有し、前記制御部は、前記第1の操作手段が操作されている状態において前記無線通信制御部への給電を行い、当該第1の操作手段が操作されていない状態になると前記無線通信制御部への給電を再び行わなくする。
【0013】
第4の発明の通信制御方法は、第1の操作手段を含む複数の操作手段を有する入力部と、電磁結合による無線通信を実行可能な無線通信部と、を有する携帯端末装置における通信制御方法であって、前記第1の操作手段が操作されていない状態において前記無線通信を規制する第1のステップと、前記第1の操作手段が操作されている状態において前記規制を解除し、当該第1の操作手段が操作されていない状態になると前記無線通信を再び規制する第2のステップと、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、押しボタン等の所定の操作手段が操作中でないとき通信を禁止することによって、ユーザの意図しない状態で通信が行われることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯端末装置の外観の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る携帯端末装置の構成の一例を示す図である。
【図3】非接触ICチップ部の構成の一例を示す図である。
【図4】図1に示す携帯端末装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る携帯端末装置100の外観の一例を示す図である。図1(A)は正面方向からの斜視図であり、図1(B)は背面方向からの斜視図である。
【0017】
携帯端末装置100は、図1に示すように、第1筐体(上部筐体)501と第2筐体(下部筐体)502とを有する。これら2つの筐体501,502は、ヒンジ部503を介して折り畳み自在に連結されることにより、相互に開閉することができる。
【0018】
折り畳まれた状態(閉状態)において第2筐体502と対向する第1筐体501の面501Aには、表示部518(図2の107)とスピーカ504(図2の105)が配置される。閉状態において第1筐体501と対向する第2筐体502の面502Aには、キー群517とマイクロフォン505(図2の106)が配置される。
【0019】
第2筐体502の内部には、非接触ICチップ部506(図2の109)が内蔵される。非接触ICチップ部506は、通信回路等が形成されたICチップ510と、回路基板の配線により形成されたアンテナ520(図3の112)とを有する。
第2筐体502のヒンジ部503には、携帯電話網の基地局と無線通信を行うための伸縮自在のアンテナ507(図2のAT1)が配置される。
第2筐体502の長手方向の側面には、後述するICチップ用のサイドキー519が配置される。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に係る携帯端末装置100の構成例を示すブロック図である。
図2に示す携帯端末装置100は、無線通信部101と、キー入力部103と、音声処理部104と、スピーカ105と、マイクロフォン106と、表示部107と、記憶部108と、非接触ICチップ部109と、制御部120とを有する。
【0021】
無線通信部101は、携帯電話網の基地局との間の無線通信に関する処理を行う。例えば、制御部120(端末制御部)から出力される送信データに所定の変調処理を施して無線信号に変換し、アンテナAT1から送出する。また、アンテナAT1において受信された無線信号に所定の復調処理を施して受信データを再生し、制御部120に出力する。
【0022】
キー入力部103は、例えば電源キー、通話キー、数字キー、文字キー、方向キー、決定キー、各種の機能が割り当てられたキーを有しており、これらのキーがユーザによって操作された場合に、その操作内容に対応する信号を発生し、これをユーザの指示として制御部120に入力する。
図1におけるキー群517やサイドキー519はキー入力部103に含まれる。
【0023】
音声処理部104は、スピーカ105において出力される音声信号やマイクロフォン106において入力される音声信号の処理を行う。すなわち、マイクロフォン106から入力される音声信号に増幅、アナログ−デジタル変換、符号化等の信号処理を施し、デジタルの音声データに変換して制御部120に出力する。また、制御部120から供給される音声データに復号化、デジタル−アナログ変換、増幅等の信号処理を施し、アナログの音声信号に変換してスピーカ105に出力する。
【0024】
表示部107は、例えば液晶表示パネルや有機ELパネルなどの表示デバイスを用いて構成されており、制御部120から供給される映像信号に応じた画像を表示する。例えば、発信時における発信先の電話番号、着信時における着信相手の電話番号、受信メールや送信メールの内容、日付、時刻、バッテリ残量、待ち受け画面などの各種の情報や画像を表示する。
【0025】
記憶部108は、制御部120において処理に利用される各種のデータを記憶する。例えば、制御部120に備わるコンピュータのプログラム、電話番号や電子メールアドレス等の個人情報を管理するアドレス帳、着信音やアラーム音を再生するための音声ファイル、各種の設定データ、プログラムの処理過程で利用される一時的なデータなどを保持する。
【0026】
記憶部108は、例えば不揮発性の記憶デバイス(不揮発性半導体メモリ、ハードディスク装置、光ディスク装置など)やランダムアクセス可能な記憶デバイス(例えばSRAM、DRAM)などによって構成される。
【0027】
非接触ICチップ部109は、外部のリーダ/ライタ装置600と電磁結合による非接触通信を行う。非接触ICチップ部109は、例えば外部のリーダ/ライタ装置600から電磁波として発せられるAM変調信号を受信すると、負荷変調などの方法によりリーダ/ライタ装置600へ応答を返すことにより、外部のリーダ/ライタ装置600との間で情報をやり取りする。
【0028】
図3は、非接触ICチップ部109の構成の一例を示す図である。
図3に示す非接触ICチップ部109は、アンテナ112と、送受信部113と、暗号処理部114と、記憶部115と、ICチップ制御部116とを有する。
【0029】
送受信部113は、アンテナ112において受信される信号からベースバンド信号を復調するとともに、受信信号のキャリア成分に基づいてクロック信号を再生し、このクロック信号に同期してベースバンド信号を復号化し、受信データを取得する。また、ICチップ制御部116から供給される送信データを符号化して送信信号を生成し、この送信信号に応じてアンテナ112を駆動することにより、リーダ/ライタ装置600に情報を送信する。
【0030】
暗号処理部114は、リーダ/ライタ装置600との間でやり取りされる情報の暗号化や復号化に関わる処理を行う。
【0031】
記憶部115は、リーダ/ライタ装置600と通信を開始するために必要な暗号鍵や、各種の機密情報を記憶する。
また記憶部115は、電子マネー情報なども記憶する。具体的には金額情報であり、リーダ/ライタ装置600との通信や、無線通信部101を用いて電子マネーの管理サーバ(図示略)に接続しての通信により金額のチャージが行われる。
【0032】
ICチップ制御部116(無線通信制御部)は、リーダ/ライタ装置600と所定の通信プロトコルに基づいて通信を行い、情報をやり取りするための処理を行う。例えばリーダ/ライタ装置600は、図示しない認証装置と接続されており、この認証装置において所定の暗号鍵により暗号化された乱数を非接触ICチップ部109に送信する。ICチップ制御部116は、記憶部115の暗号鍵を用いて、この暗号化された乱数を暗号処理部114により復号化し、リーダ/ライタ装置600へ返信する。認証装置は、リーダ/ライタ装置600に返信された乱数と元の乱数とを比較することにより、非接触ICチップ部109が正規に登録された暗号鍵を保有しているか否か判定する。
更に、商品購入などを行うときには、リーダ/ライタ装置600との通信を行い、ICチップ制御部116は、購入する商品に該当する金額が記憶部115の記憶残高から減算する処理を行う。
【0033】
なお、アンテナ112はコイルとして機能し、リーダ/ライタ装置600からの電磁波を受けると励磁されて電磁結合する。リーダライタ装置600からの電磁波の強弱変動などによって生成された送信信号が、アンテナ112にて受信され、送受信部113およびICチップ制御部116によりアンテナ112側誘導起電力の変動から受信信号を抽出する。なお、送受信部113を始め、暗号処理部114、記憶部115やICチップ制御部116は携帯電話機100側の電源により駆動されても、アンテナ112からの誘導起電力により駆動されてもよい。
【0034】
制御部120は、携帯端末装置100の全体的な動作を統括的に制御する。すなわち、携帯端末装置100の各種の処理(回線交換網を介して行われる音声通話、電子メールの作成と送受信、インターネットのWebサイトの閲覧など)がキー入力部103の操作に応じて適切な手順で実行されるように、上述した各ユニットの動作(無線通信部101における信号の送受信、音声処理部104における音声の入出力、表示部107における画像の表示など)を制御する。
例えば制御部120は、記憶部108に格納されるプログラム(オペレーティングシステム、アプリケーション等)に基づいて処理を実行するコンピュータを備えており、このプログラムにおいて指示された手順に従って上述した処理を実行する。
【0035】
制御部120は、非接触ICチップ部109による通信の禁止とその解除を制御する。すなわち、第1の操作手段としてのサイドキー519が押下されていない場合、制御部120は非接触ICチップ部109による通信を禁止する。
具体的には、制御部120は非接触IC(RFID)の無線通信を制限する際、非接触IC制御部への電源供紬を遮断する。すなわち、携帯電話機100側の電源、あるいはアンテナ112側からの誘導起電力の供給路を遮断するなどして、無線通信を規制する。また、単に非接触IC制御部に無線通信を行わないよう命令する制御信号を送付するだけでも良い。
このように、ユーザの意図的なキー操作がない限り非接触ICチップ部109の通信を禁止することによって、ユーザの意図しない状態で非接触ICチップ部109とリーダ/ライタ装置600とが自動的に通信すること防止する。
【0036】
なお「通信の禁止」とは、非接触ICチップ部109における一切の情報の通信を禁止する場合のみならず、特定の情報に限定して通信を禁止する場合も含む。例えば、記憶部115に格納されている特定の機密情報については通信を禁止するが、それ以外の情報についてはリーダ/ライタ装置600との間で送受信を許可するような場合も含む。
【0037】
また制御部120は、時計機能を備えており、予め設定された時間帯においては、サイドキー519が押下されていても非接触ICチップ部109による通信を禁止する。例えば、非接触ICチップ部109を通勤用の乗車券として利用している場合において、ユーザが日常的に通勤する時間帯を除いて非接触ICチップ部109の通信を禁止する。これにより、禁止時間帯を知らない他人が容易に非接触ICチップ部109を使用できないようにする。
【0038】
更に制御部120は、一定時間内における非接触ICチップ部109の通信回数を計数し、その数が予め設定された上限値に達した場合には、サイドキー519が押下されていても非接触ICチップ部109による通信を禁止する。これにより、ユーザの意図しない状態で非接触ICチップ部109が無際限に不正使用されることを防止する。
例えば、定期券の改札機を通り抜けるための定期券契約分の確認のための非接触通信と、記憶部115にチャージして使用可能となる電子マネー機能の加算減算のための非接触通信を切り分けて制御部120などにより管理し、電子マネー機能についての通信を行う場合にのみ、非接触通信の可否判断を行うようにすると、定期券としての利便性を全く損なうことが無い。
【0039】
また制御部120は、非接触ICチップ部109の通信回数が時間帯ごとに予め設定された上限値に達した場合、サイドキー519が押下されていても非接触ICチップ部109による通信を禁止する。時間帯と通信回数にそれぞれ制限を設定することによって、他人による非接触ICチップ部109の不正使用をより困難なものにする。
つまり、朝の出勤時間帯には2回、夕方の退勤時刻に2回だけ使用可能と設定しても良く、非接触通信を設定時間内であってなおかつ設定回数内についてのみ認める、という制御を制御部120に行わせても良い。
【0040】
ただし、上述のような時間帯や通信回数の制限を設ける場合、ユーザ自身がその制限を自由に解除できるようにしたほうが利便性がよい。
次に、制御部120は、非接触通信を禁止してある場合には、サイドキー519が押下された状態でキー入力部103の他のキー(第2の操作手段)によって所定の暗証番号が入力された場合には、非接触ICチップ部109の通信禁止を解除する。
この場合、制御部120は、所定の暗証番号と異なる番号が入力されたり、又は、一定時間内に所定の暗証番号が入力されなかったりした場合には、それ以降も禁止を継続し、非接触ICチップ部109による通信の禁止を解除する条件として、サイドキー519の押下に加えて、暗証番号の入力を常に要求してもよい。これにより、非接触ICチップ部109の不正使用を試みる者が間違った暗証番号を入力すると、以降はサイドキー519の押下のみで非接触ICチップ部109の通信禁止を解除できなくなるため、セキュリティ性が向上する。
【0041】
以上述べたような時間帯や回数などの制限解除の条件や制限対象は、キー人力部103などにより設定されると記憶部108にて記憶管理されることは言うまでも無い。
【0042】
逆に制御部120は、サイドキー519(第1の操作手段)の押下中であっても、キー入力部103の他のキー(第2の操作手段)によって所定の暗証番号が入力されるまでは、非接触ICチップ部109による通信を常に禁止してもよい。これにより、非接触ICチップ部109による通信の禁止を解除するためには、サイドキー519の押下に加えて暗証番号の入力が常に要求されるため、セキュリティ性が向上する。
【0043】
更に制御部120は、上述した暗証番号の入力を要求していること気付かれないように、表示部107の画面など、報知関連部の報知を制御する。すなわち、暗証番号の入力により非接触ICチップ部109の通信禁止を解除できる状態と、暗証番号を入力してもこの禁止を解除できない状態とにおいて、キー入力部103の同一のキーが同一に操作された場合、この2つの状態を判別できないように、表示部107の表示状態やスピーカ105の出力音(つまり報知部の報知)を同一に制御する。言い換えると、例えばサイドキー519等の押下によって暗証番号の入力の受付が開始されても、そのことを報知部の報知の状態からは判別できないように報知部を制御する。これにより、暗証番号の入力によって非接触ICチップ部109の通信禁止を解除できることが報知部の報知の状態から全く把握できなくなるため、不正使用者の攻撃に対するセキュリティ耐性が向上する。
【0044】
制御部120は、キー入力部103から入力される設定情報に応じて、上述した通信禁止の時間帯や、通信回数の上限値、暗証番号などを任意に設定してもよい。またこの設定情報に応じて、非接触ICチップ部109を使用するために押下する第1の操作手段としてのキー(ICチップ用キー)をサイドキー519以外のキーに割り当てできるようにしてもよい。これにより、ICチップ用キーの割り当てを知らない他人が容易に非接触ICチップ部109を使用できないようにする。
加えて、制御部120は、キー入力部103から入力される設定情報に応じて、予め定めた時間帯ごとにICチップ用キーの割り当てを変更してもよい。これにより、朝はサイドキー、夜はクリアキーなどのように、ICチップ用キーを時間帯に応じて変更できるため、他人による非接触ICチップ部109の使用が一層困難になる。
【0045】
ICチップ用に第1の操作手段として割り当てられるキーは、割り当て前と割り当て後とで、その見た目上の処理を同じくする。すなわち、第1の操作手段として割り当てられたキーがアドレス帳呼び出しキーならば、割り当て前だけでなく割り当て後も、操作されるとアドレス帳を呼び出すという表示を行わせるよう制御部120は制御する。これにより、ICカード機能の禁止状態を解除する手がかりが非常につかみ難くなるため、非接触ICカード部109の不正使用が更に困難になる。
【0046】
このように、非接触ICによる通信を禁止された状態においては、第1の操作手段が操作されただけでは、通常の動作を行うため、報知を確認しても解除のための操作が入ったのかどうかは分からない。更に、このように第1の操作手段が操作された上で第2の操作手段としてのテンキーにより暗証番号が入力されると、まず第1の操作手段に本来アサインされている機能を処理し、その後引き続いて押下されたテンキーの入力に応じた動作を見た目上実行する。つまり、第1の操作手段が操作される状態にてICチップ用に第1の操作手段として割り当てられるキーは、割り当て前と割り当て後とで、その見た目上の処理を同じくする。例えば第1の操作手段として割り当てられたキーがアドレス帳呼び出しキーならば、割り当て前だけでなく割り当て後も、操作されるとアドレス帳を呼び出すという表示を行わせるよう制御部は制御する。これにより、解除の操作がなされているのかどうか一見して分からないよう構成する。そして、正しい暗証番号が一定時間内に入力されると制御部120は、非接触ICチップ部109による通信の禁止を解除する場合、表示部107の画面表示やスピーカ105の音やバイブレータ(図示略)など、任意の報知手段によってこの通信禁止の解除をユーザに通知する。
【0047】
第1の操作手段としてアサインされるキーの例として、サイドキーやクリアキーやアドレス帳呼び出しキーを示したが、他のキーであっても良い。ただし、制御部120が、操作された第1の操作手段にもともとアサインされる機能を操作に応じて実行させる処理を行う場合には、第1の操作手段としては、電源キー(電源がオフされてしまうため)や発信キー(後に引き続いてテンキーにより入力される番号について発呼してしまうため)やカメラキー(カメラが起動されてしまうため)は好ましくない。
【0048】
ここで、上述した構成を有する本実施形態に係る携帯端末装置の動作について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0049】
非接触ICチップ部109の通信が禁止されているとき(ステップST105)、制御部120はICチップ用キー(例えばサイドキー519)が押下されているか否かを監視する(ステップST110)。
【0050】
ICチップ用キーが押下されると、制御部120は現在ロック状態にあるか否かを判定する(ステップST145)。ここでロック状態とは、ICチップ用キーの押下に加えて暗証番号を入力しなければ非接触ICチップ部109の通信禁止を解除できない状態を示す。
【0051】
制御部120は、ロック状態の判定に加えて、現在の時刻が非接触ICチップ部109の通信を禁止する所定の禁止時間帯にあるか否かの判定(ステップST120)、並びに、禁止時間帯内(若しくは所定時間内)において行われた非接触ICチップ部109の通信回数が制限回数を超えているか否かの判定(ステップST125)も行う。
【0052】
上記の判定の結果、ロック状態でなく、現在が禁止時間帯でなく、かつ、通信回数が制限を超えていない場合、制御部120は非接触ICチップ部109の通信禁止の解除を所定の報知動作により報知して(ステップST150)、ICチップ機能を有効にする(ステップST155)。例えば、表示部107の画面表示や、スピーカ105の音、不図示の発光部における発光、不図示の振動部における振動などによって、非接触ICチップ部109が使用可能になったことをユーザに通知する。
【0053】
他方、制御部120は、ロック状態の場合や、現在が禁止時間帯の場合、通信回数が制限を超えている場合において、暗証番号の入力を開始する(ステップST130)。ただしこのとき、非接触通信の禁止を解除する操作を行っている旨を示す情報は表示部107に一切表示しない。
【0054】
暗証番号の入力を開始すると、制御部120はキー入力部103の操作を監視する(ステップST135)。
ステップST130の入力開始時点から所定時間内に暗証番号が入力され(ステップST135)、更にその暗証番号が記憶部108に予め登録されているものと一致する場合(ステップST140)、制御部120は通信禁止の解除を報知して(ステップST150)、ICチップ機能を有効にする(ステップST155)。
これに対し、ステップST130の入力開始時点から所定時間内に暗証番号が入力されない場合や(ステップST135)、入力された暗証番号が記憶部108に登録されているものと一致しない場合(ステップST140)、制御部120はロック状態へ移行し(ステップST145)、非接触ICチップ部109の通信禁止を維持する(ステップST170)。
【0055】
ICチップ機能を有効にすると(ステップST155)、制御部120はICチップ用キーが押下されているか否かを監視する(ステップST160)。ICチップ用キーが押下されなくなると(すなわちユーザがキーから指を離すと)、制御部120は所定の報知動作を行って(ステップST165)、非接触ICチップ部109の通信を再び禁止する(ステップST170)。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、ICチップ用キー(例えばサイドキー519)が押下されていない場合、非接触ICチップ部109による通信が禁止される。これにより、ユーザの意図しない状態で非接触ICチップ部109とリーダ/ライタ装置600とが自動的に通信することを確実に防止できる。例えば、ICカード用のスキマーなどを用いてユーザの知らない間に非接触ICチップ部109のデータにアクセスする行為を有効に防止できる。
【0057】
また本実施形態によれば、時間帯や通信回数に応じてICチップ機能の利用に制限を設けることにより、他人が容易に非接触ICチップ部109を使用できなくなるため、セキュリティ性を向上できる。
【0058】
更に、時間帯や通信回数の制限を設定情報に応じて任意に設定できるため、ユーザの日常行動に合わせてICチップ機能のセキュリティレベルを自由に設定できる。例えばICチップ機能の利用頻度が高い時間帯においてはICチップ用キーの押下だけで禁止状態を解除できるが、それ以外の時間帯では暗証番号を入力しなければ禁止状態を解除できないようにする。また、特に利用頻度の高い時間帯では通信回数の制限を緩くし、逆に全く使用予定のない時間帯では通信回数の制限を厳しくするなどの調節も可能である。これにより、不正使用に対する十分なセキュリティを確保しつつ利便性の向上を図ることができる。
【0059】
また、非接触ICチップ部109の通信禁止を解除するために入力した暗証番号が間違っていたり、所定時間内に暗証番号が入力されない場合に、ICチップ用キーの押下に加えて暗証番号の入力を行わなければ非接触ICチップ部109を使用できないようにするロック状態が設けることにより、紛失時や盗難時における不正使用にも十分なセキュリティを確保することができる。
【0060】
しかも、本実施形態によれば、暗証番号の入力を要求していることが気付かれないように表示部107の画面を制御することによって、ICチップ機能の不正使用を試みる者は、正しい暗証番号を知らないだけでなく暗証番号の入力を要求されていることも把握できなくなるため、セキュリティ性を更に向上できる。
【0061】
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明は上記の形態のみに限定されるものではない。
【0062】
上述した実施形態では、非接触ICチップ部109の通信禁止を解除するための操作手段の一例としてキー(押しボタン)を挙げているが、本発明はこれに限定されない。すなわち操作手段は任意であり、例えばダイヤルや、スライドスイッチ、感圧スイッチ、タッチパネルなどでも良い。
【0063】
また、上述した実施形態では、非接触ICチップ部109の通信禁止を解除するために入力する情報の一例として暗証番号を挙げているが、本発明はこれに限定されない。例えば、指紋や静脈パターンなどを読み取る装置を用いて入力される生体情報に基づいて非接触ICチップ部109の通信禁止を解除してもよい。
【0064】
制御部120の処理は上述のようにコンピュータでソフトウェアによって実行してもよいし、その少なくとも一部をハードウェアで実行してもよい。
【0065】
本発明の携帯電子機器は携帯電話機に限定されるものではなく、携帯ゲーム機やPDA(personal digital assistants)、ノートブック型コンピュータなど、地磁気センサを搭載可能な種々の携帯電子機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
101…無線通信部、103…キー入力部、104…音声処理部、105…スピーカ、106…マイクロフォン、107…表示部、108…記憶部、109…非接触ICチップ部、120…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の操作手段を含む複数の操作手段を有する入力部と、
電磁結合による無線通信を実行可能な無線通信部と、
前記第1の操作手段が操作されていない状態において前記無線通信を規制する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記第1の操作手段が操作されている状態において前記無線通信の規制を解除し、当該第1の操作手段が操作されていない状態になると前記無線通信を再び規制する
ことを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
第1の操作手段を含む複数の操作手段を有する入力部と、
電磁結合による無線通信を実行可能な無線通信部と、
前記第1の操作手段が操作されていない状態において前記無線通信を規制する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記第1の操作手段が操作され、かつ所定の条件を満たす状態において前記無線通信の規制を解除し、当該第1の操作手段が操作されていない状態になると前記無線通信を再び規制する
ことを特徴とする携帯端末装置。
【請求項3】
第1の操作手段の含む複数の操作手段を有する入力部と、
電磁結合による無線通信を実行可能な無線通信部と、
前記無線通信部にて送受信するデータの読み出し書き込みを制御する無線通信制御部と、
前記無線通信制御部に給電する電源部と、
前記第1の操作手段が操作されていない状態において前記無線通信制御部への給電を行わない制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記第1の操作手段が操作されている状態において前記無線通信制御部への給電を行い、当該第1の操作手段が操作されていない状態になると前記無線通信制御部への給電を再び行わなくする
ことを特徴とする携帯端末装置。
【請求項4】
第1の操作手段を含む複数の操作手段を有する入力部と、電磁結合による無線通信を実行可能な無線通信部と、を有する携帯端末装置における通信制御方法であって、
前記第1の操作手段が操作されていない状態において前記無線通信を規制する第1のステップと、
前記第1の操作手段が操作されている状態において前記規制を解除し、当該第1の操作手段が操作されていない状態になると前記無線通信を再び規制する第2のステップと、
を有することを特徴とする通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−253565(P2011−253565A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194851(P2011−194851)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【分割の表示】特願2006−112052(P2006−112052)の分割
【原出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】