説明

携帯端末装置を使用する移動通信システムとハンドオーバ制御方法

【課題】HSDPA通信を切断せずにハンドオーバすることができる移動通信システムを提供する。
【解決手段】移動通信システムは、複数の基地局装置と、移動端末を備える。移動端末は、複数の基地局装置との間でHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)通信を行う。移動端末は、ハンドオーバ元の基地局装置とハンドオーバ先の基地局装置とからHS−SCCH(High Speed Shared Control Channel)を同時に受信する受信部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末装置を使用する移動通信システムとハンドオーバ制御方法に関し、特にHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)通信におけるハンドオーバ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HSDPA通信においては、移動端末がコードを共有して使用する共通チャネルであるHS−PDSCH(High Speed Physical Shared Downlink Channel)を使用して通信を行っており、基地局からHS−PDSCHが送信されるタイミングは基地局毎に固有となっている。そのため、HSDPA通信では、複数の基地局からタイミングを合わせて同一のデータを送信し、移動端末側で合成するソフトハンドオーバを行うことができない。このため、HSDPA通信中に移動端末の移動等によってハンドオーバしなければならない場合には、一旦、現在通信中の基地局とのHSDPA通信を切断し、その後、次の基地局との通信を開始するハードハンドオーバを行っている。こうして、ハンドオーバに際し、通信の途切れる時間が発生する。本来、切断が必要ない、基地局間でHSDPAチャネルのタイミングが一致している場合においても、上記と同様の処理が行われ、不必要な切断時間が発生している。このように、セクタ間でのハンドオーバ等、基地局間で送信タイミングがそろっている場合には、必ずしも上記のように、一旦、通信を切断する必要がないにもかかわらず、上記と同様の処理が行われ、無駄な切断時間が発生している。
【0003】
ここで、移動通信システムにおいては、次の基地局の選択方法として、移動端末における受信品質を、基地局を選択する際の基準として用いる方法が、特開平1−190137号公報、特開2001−238239号公報に提案されている。上記のように、基地局を選択する基準として移動端末における受信品質を用いる方法でも、この無駄な切断時間が発生するという問題を解決することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−190137号公報
【特許文献2】特開2001−238239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、セクタ間でのハンドオーバ等のように、基地局間でHSDPAチャネルの送信タイミングがそろっている場合に、HSDPA通信を一旦切断することなく、ハンドオーバを行うことができる移動通信システム、携帯端末装置及びそれらに用いるハンドオーバ制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による移動通信システムは、移動自在な携帯端末装置と基地局装置との間でHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)通信を行う。携帯端末装置は、ハンドオーバ元の基地局装置とハンドオーバ先の基地局装置とからHS−SCCH(High Speed Shared Control Channel)を同時に受信する受信部を備えている。
【0007】
本発明による携帯端末装置は、移動自在でかつ基地局装置との間でHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)通信を行う。携帯端末装置は、ハンドオーバ元の基地局装置とハンドオーバ先の基地局装置とからHS−SCCH(High Speed Shared Control Channel)を同時に受信する受信部を備えている。
【0008】
本発明によるハンドオーバ制御方法では、移動自在な携帯端末装置と基地局装置との間でHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)通信が行われる。前記携帯端末装置が、ハンドオーバ元の基地局装置とハンドオーバ先の基地局装置とからHS−SCCH(High Speed Shared Control Channel)を同時に受信する。
【0009】
すなわち、本発明の移動通信システムは、HSDPA(High Speed Downlink Packet Access)通信において、ハンドオーバの際に通信が途切れる時間を短縮する。より具体的に説明すると、本発明の移動通信システムでは、移動端末がハンドオーバを行おうとする場合、移動端末の移動によって通信中のある一定期間2つの基地局から同時にHS−SCCH(High Speed Shared Control Channel)を受信する。この場合には、移動端末が受信できるHS−SCCHの数は最大4つと決まっているため、2つの基地局から受信するHS−SCCHの数の合計が4を超えない。
【発明の効果】
【0010】
これによって、本発明の移動通信システムでは、セクタ間でのハンドオーバ等のように、基地局間でHSDPAチャネルの送信タイミングがそろっている場合に、HSDPA通信を一旦切断することなく、ハンドオーバすることが可能となり、無瞬断のハンドオーバが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施例による移動通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1の移動端末11の受信部の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明の一実施例による移動端末の動作を示すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の一実施例による移動端末におけるHS−SCCHの受信を表す図である。
【図5】図5は、図1の基地局における信号強度を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の移動通信システムについて図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例による移動通信システムの構成を示すブロック図である。図1においては、携帯電話機等の移動端末11が基地局12と基地局13のエリア内を移動する。この場合、基地局12、13はHSDPA対応の基地局である。このときの移動端末が移動端末11’、11”として示されており、2つの基地局12,13からのHS−SCCH(High Speed Shared Control Channel)を受信する。
【0013】
図2は、図1の移動端末11の受信部の構成を示すブロック図である。図2において、移動端末11は、乗算器21〜24と、HS−SCCH逆拡散器(#1)25と、HS−SCCH逆拡散器(#2)26と、HS−SCCH逆拡散器(#3)27と、HS−SCCH逆拡散器(#4)28とを含んでいる。乗算器21〜24は、受信信号にHS−SCCHのChannelisation Codeを乗算し、HS−SCCH逆拡散器(#1)25、HS−SCCH逆拡散器(#2)26、HS−SCCH逆拡散器(#3)27、HS−SCCH逆拡散器(#4)28は、乗算器21〜24からの乗算結果に対して逆拡散を行い、受信信号からHS−SCCHを取り出す。
【0014】
図5は図1の基地局12,13における信号強度を表す図である。図5において、閾値51はある一定値である。移動端末11,11’,11”の基地局12,13からの受信電力差が閾値51を超えると、SHO(soft handover)中の基地局を、HS−SCCHが受信されている基地局に切替える。
【0015】
図3は本発明の一実施例による移動端末の動作を示すフローチャートであり、図4は本発明の一実施例による移動端末におけるHS−SCCHの受信を表す図である。これらを参照して本発明の一実施例による移動通信システムの動作について説明する。
【0016】
携帯端末11は、図1に示すように、移動しており、移動端末11の位置→移動端末11’の位置→移動端末11”の位置と移動するものとする。移動端末11の位置にある時には基地局12からのHS−SCCHのみを受信している。移動端末11’の位置に移動して個別チャンネルのDCH(Dedicated Channel)がSHO状態となった場合、移動端末11’は基地局12からのHS−SCCHを2本に制限し、基地局13からのHS−SCCHを2本受信する。さらに、移動端末11”の位置へと移動した場合、移動端末11”は基地局12からのHS−SCCHの受信をやめ、基地局13からのHS−SCCHを4本受信する。
【0017】
移動端末11’の位置ではHS−SCCH検出が、図2に示される構成にて行われる。移動端末11’は最大4つのHS−SCCHを同時に受信することができる能力を持たなくてはならない。このため、HS−SCCHの逆拡散器を4つ[HS−SCCH逆拡散器(#1)25、HS−SCCH逆拡散器(#2)26、HS−SCCH逆拡散器(#3)27、HS−SCCH逆拡散器(#4)28]備えている。
【0018】
基地局12から受信されるHS−SCCH1及びHS−SCCH2は乗算器21,22で基地局12のScrambling Codeが乗算され、HS−SCCHのChannelisation Codeが乗算された後に逆拡散が行われる。
基地局13から受信されるHS−SCCH3及びHS−SCCH4は乗算器21,22で基地局13のScrambling Codeが乗算され、HS−SCCHのChannelisation Codeが乗算された後に逆拡散が行われる。
【0019】
移動端末11の位置にいる場合、移動端末11は基地局12からのHS−SCCHを4本受信している(図3ステップS1)。移動端末が移動して、移動端末11’の位置になった場合、この位置11’で基地局12及び基地局13の間でSHO状態になると(図3ステップS2)、基地局12から受信されるHS−SCCHの数が2本に制限され(図3ステップS3)、さらに、基地局13からのHS−SCCHが2本受信開始される(図3ステップS4)。こうして、基地局12及び基地局13の両方からHS−SCCHが受信される。
【0020】
移動端末11’は基地局13から受信されるHS−SCCHから自端末宛の情報が一度でも検出された場合(図3ステップS5)、基地局12からのHS−SCCH受信を停止し(図3ステップS6)、基地局13からのHS−SCCH受信を2本から4本へ増やす(図3ステップS7)。
【0021】
図4において、矢印で示した番号は図3に示すフローチャートの各ステップとの対応を示している。矢印S3(ステップS3に対応)までは移動端末11’が基地局12からのHS−SCCHを4本受信している。矢印S3でネットワーク側からのシグナリングによってDCHが基地局13とのSHOとなった場合、移動端末11’が基地局12から受信するHS−SCCHを2本とし、矢印S4(ステップS4に対応)で基地局13からのHS−SCCHを2本受信開始する。
【0022】
矢印S5(ステップS5に対応)でネットワーク側からのシグナリングによって基地局12からのDCH送信が指示され、基地局13からのDCH受信のみとなる場合、矢印S6(ステップS6に対応)で移動端末11’が基地局12からのHS−SCCH受信を停止し、矢印S7(ステップS7に対応)で基地局13からのHS−SCCH受信を4本とする。
【0023】
このように、本実施例では、HSDPAチャネルのタイミングがそろっている基地局12,13間のハンドオーバで、HSDPA通信をいったん切断することなく、ハンドオーバが可能となり、無通信時間を短縮することができる。
【0024】
尚、本実施例では移動端末11’が基地局12,13各々から2本ずつHS−SCCHを受信しているが、移動端末11’が基地局12,13各々から受信するHS−SCCHの合計が4本以下であれば、HS−SCCHの割り当て方法については、本実施例のように2本ずつに必要はなく、これに限定されない。
【0025】
また、本実施例では移動端末11,11’,11”が受信するHS−SCCHを最大4本としているが、移動端末11,11’,11”で受信できるHS−SCCHを8本とすることによって、ハンドオーバ元とハンドオーバ先との合計8本全てのHS−SCCHを受信してもよい。
【0026】
さらに、本実施例ではSHO中の基地局12,13に対して移動端末11’からの送信信号強度を基にどちらか一方の基地局からのみ、当該移動端末11’宛のHS−SCCHを送信するように制御を行っているが、このような制御を行わず、各基地局12,13で独自に送信を行ってもよい。その場合、移動端末11’側では受信品質等による移動端末11’側独自の判断によって受信する基地局を選択してもよい。
【0027】
一方、本実施例ではハンドオーバ元の基地局12とハンドオーバ先の基地局13とでHS−SCCHに割り当てられるChannelisation Codeが同じである場合を想定しているが、SHO開始/終了のシグナリングに応じて移動端末11’でデコードするChannelisation Codeを変更することも可能であるため、基地局12,13間で独自のCode割り当てを行うことも可能である。
【0028】
また、本実施例では移動端末11’が一定期間基地局12,13の両方から2本ずつHS−SCCHを受信しているが、移動端末11’での各基地局12,13からの受信信号品質に応じてどちらか一方の基地局からのみ4本のHS−SCCHを受信するように切替える制御を行ってもよい。
【0029】
さらに、その場合、移動端末11’からの受信品質報告に基づいて品質の良い基地局からのみ当該移動端末11’宛のHS−SCCHを送信するような制御を行って移動端末11’で待ち受け、基地局切替えと送信する基地局の切替えとが一致するようにし、基地局12,13が無駄なHS−SCCHやHS−PDSCHを送信しないような制御を行う。移動端末が前記複数の基地局装置から受信するHS−SCCHの数が前記受信可能なHS−SCCHの受信数を超えないように制御されている。
【0030】
さらにまた、本実施例では、基地局間のHS−SCCHのタイミングがそろっている場合について述べたが、基地局間のHS−SCCHのタイミングが必ずしもそろっている必要はない。
【0031】
本発明は、携帯電話システム等の移動通信システムにおける基地局または携帯電話機等の携帯端末装置において、上記のHSDPA通信に対応した装置に適用することができる。
【0032】
本発明は、以下に述べるような構成及び動作とすることで、セクタ間でのハンドオーバ等のように、基地局間でHSDPAチャネルの送信タイミングがそろっている場合に、HSDPA通信を一旦切断することなく、ハンドオーバを行うことができるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0033】
11,11’,11” 移動端末
12,13 基地局
21〜24 乗算器
25 HS−SCCH逆拡散器#1
26 HS−SCCH逆拡散器#2
27 HS−SCCH逆拡散器#3
28 HS−SCCH逆拡散器#4
51 閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局装置と、
前記複数の基地局装置との間でHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)通信を行う移動端末と、
前記移動端末は、ハンドオーバ元の基地局装置とハンドオーバ先の基地局装置とからHS−SCCH(High Speed Shared Control Channel)を同時に受信する受信部を有する
移動通信システム。
【請求項2】
前記受信部は、前記ハンドオーバ先の基地局装置から自端末宛の情報を検出した時に前記ハンドオーバ元の基地局装置からのHS−SCCH受信を停止する
請求項1記載の移動通信システム。
【請求項3】
前記複数の基地局装置の各々は、ソフトハンドオーバ中の前記移動端末からの受信品質報告に基づいて、最も受信品質のよい基地局装置からのみ前記動端末宛のHS−SCCH及びHS−PDSCH(High Speed Physical Shared Downlink Channel)を送信する切替えを行う
請求項1又は請求項2記載の移動通信システム。
【請求項4】
基地局装置との間でHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)通信を行い、ハンドオーバ元の基地局装置とハンドオーバ先の基地局装置とからHS−SCCH(High Speed Shared Control Channel)を同時に受信する受信部を有する
移動端末。
【請求項5】
前記受信部は、前記ハンドオーバ先の基地局装置から自端末宛の情報を検出した時に前記ハンドオーバ元の基地局装置からのHS−SCCH受信を停止する
請求項4記載の移動端末。
【請求項6】
移動端末と基地局装置との間でHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)通信を行うステップと、
前記移動端末が、ハンドオーバ元の基地局装置とハンドオーバ先の基地局装置とからHS−SCCH(High Speed Shared Control Channel)を同時に受信するステップと
を具備するハンドオーバ制御方法。
【請求項7】
前記ハンドオーバ先の基地局装置から自端末宛の情報を検出した時に前記ハンドオーバ元の基地局装置からのHS−SCCH受信を停止するステップを更に具備する請求項6記載のハンドオーバ制御方法。
【請求項8】
前記基地局装置が、ソフトハンドオーバ中の移動端末からの受信品質報告に基づいて、最も受信品質のよい基地局装置からのみ当該移動端末宛のHS−SCCH及びHS−PDSCH(High Speed Physical Shared Downlink Channel)を送信する切替えを行う請求項6又は請求項7記載のハンドオーバ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−147444(P2012−147444A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−29360(P2012−29360)
【出願日】平成24年2月14日(2012.2.14)
【分割の表示】特願2007−524065(P2007−524065)の分割
【原出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】