説明

携帯端末装置

【課題】携帯端末装置の小型化を実現する。
【解決手段】アレイ状に並べられた複数の発振装置10と、複数の発振装置10を制御する制御部と、制御部に接続する音波検出部30と、を備え、複数の発信装置10は、第1の方向にセンサ用の超音波24を発信する発振装置14と、第1の方向と異なる第2の方向にスピーカ用の超音波22を発信する発振装置12と、を含み、音波検出部30は、反射してきたセンサ用の超音波24を検出し、制御部は、反射してきたセンサ用の超音波24を検出したときに、発振装置12から警告用の音を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を発振する発振装置を利用した技術として、例えばセンサやスピーカが挙げられる。センサとして超音波を利用する技術は、例えば特許文献1〜3に記載される。特許文献1は、2つの結晶像によるコントラストを比較して物体までの距離を測定する検出手段に加えて、超音波センサにより物体までの距離を測定する検出手段を備えるというものである。特許文献2は、車両周囲状況検出センサとして、車両外周囲の適宜高さ位置にアレイ状の超音波振動子を配置してバースト状音波を送受信するというものである。特許文献3は、送信波を送信する少なくとも1つの送信用の素子と、反射波を反射する複数の受信用の素子を有する送受波器を複数配列するというものである。
【0003】
また、スピーカとして超音波を利用する技術は、例えば特許文献4、5に記載される。特許文献4は、圧電振動子を一面に配した振動板の他面をすり鉢形の凹形状にするというものである。特許文献5は、パラメトリック効果を利用したスピーカにおいて、振動発生源を振動膜に当節させて設けるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−287915号公報
【特許文献2】特開平7−333335号公報
【特許文献3】特開2009−264872号公報
【特許文献4】特開2006−165923号公報
【特許文献5】特開2004−282221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
携帯端末装置においては、その多機能化が進んでいる。しかし、多機能とするためには筐体の中に多くのデバイスを実装するため、携帯端末装置全体の小型化を実現することは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、携帯端末装置の小型化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、アレイ状に並べられた複数の発振装置と、
前記複数の発振装置を制御する制御部と、
前記制御部に接続する音波検出部と、
を備え、
前記複数の発信装置は、
第1の方向にセンサ用の超音波を発信する第1の発振装置と、
前記第1の方向と異なる第2の方向にスピーカ用の超音波を発信する第2の発振装置と、
を含み、
前記音波検出部は、反射してきた前記センサ用の超音波を検出し、
前記制御部は、反射してきた前記センサ用の超音波を検出したときに、前記第2の発振装置から警告用の音を出力する携帯端末装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、携帯端末装置の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係る携帯端末装置の動作方法を示す模式図である。
【図2】図1に示す携帯端末装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す携帯端末装置の動作方法を示すフロー図である。
【図4】図1に示す発振装置を示す断面図である。
【図5】図4に示す圧電振動子を示す断面図である。
【図6】第2の実施形態に係る携帯端末装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示す携帯端末装置の動作方法を示すフロー図である。
【図8】第3の実施形態に係る携帯端末装置を構成する発振装置の振動子を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
図1は、第1の実施形態に係る携帯端末装置100の動作方法を示す模式図である。図2は、図1に示す携帯端末装置100の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る携帯端末装置100は、複数の発振装置10と、制御部32と、音波検出部30と、を備えている。携帯端末装置100は、例えば携帯電話機である。
【0012】
複数の発振装置10は、アレイ状に並べられている。制御部32は、複数の発振装置10を制御する。音波検出部30は、制御部32に接続している。複数の発振装置10は、第1の方向にセンサ用の超音波24(20)を発振する発振装置14と、第2の方向にスピーカ用の超音波22(20)を発振する発振装置12と、を含んでいる。音波検出部30は、反射してきた超音波24を検出する。制御部32は、反射してきた超音波24を検出したときに発振装置12から警告用の音を出力する。以下、携帯端末装置100の構成について詳細に説明する。
【0013】
図1および図2に示すように、携帯端末装置100は、筐体60をさらに備えている。発振装置10、音波検出部30および制御部32は、筐体60の内部に形成されている。筐体60には、例えば発振装置10から発振される超音波20を通過させるための複数の孔が形成されている。
【0014】
発振装置10は、振動子として圧電振動子40を有している(図4参照)。制御部32は、信号生成部34を介して圧電振動子40と接続している。信号生成部34は、圧電振動子40に入力する電気信号を生成する。制御部32は、外部から入力された情報に基づいて信号生成部34を制御し、これにより発振装置10の発振を制御する。発振装置10をスピーカとして使用する場合、制御部32は信号生成部34を介してパラメトリックスピーカとしての変調信号を入力する。この場合、圧電振動子40は、20kHz以上、例えば100kHzの音波を信号の輸送波として用いる。また、発振装置10を音波センサとして使用する場合、制御部32に入力される信号は、音波を発振する旨の指令信号である。そして発振装置10を音波センサとして使用する場合、信号生成部34は圧電振動子40に圧電振動子40の共振周波数の音波を発生させる。
【0015】
発振装置12は、例えば複数設けられている。また、発振装置14は、少なくとも1つ設けられており、複数設けられていてもよい。また、発振装置12と発振装置14は、入力する信号によって相互に変換することもできる。超音波24の発振される第1の方向と、超音波22の発振される第2の方向は、例えば互いに反対方向とすることができる。また、第1の方向と第2の方向は、導波管や反射部材を設けることによって、任意の角度にすることもできる。さらに、超音波24が通過する点に音響レンズを設け、超音波24の出力範囲を広角にすることもできる。これにより、音波検出部30による反射してきた超音波24の検出が確実なものとなり、携帯端末装置100の信頼性を向上させることができる。
【0016】
図4は、図1に示す発振装置10を示す断面図である。発振装置10は、圧電振動子40と、支持部材42と、振動部材44と、を備えている。圧電振動子40は、振動部材44の一面に設けられている。支持部材42は、振動部材44の縁を支持している。図4に示すように、発振装置10は、発振装置10の一面側および他面側に超音波を発振する。このため、発振装置12および発振装置14は、一つの発振装置10のうちの一面側および他面側によって構成されていてもよい。
【0017】
図5は、図4に示す圧電振動子40を示す断面図である。図5に示すように、圧電振動子40は、圧電体50、上部電極52および下部電極54からなる。また、圧電振動子40は、例えば円形または楕円形を有する。圧電体50は、上部電極52と下部電極54に挟まれている。また、圧電体50は、その厚さ方向に分極している。圧電体50は、圧電効果を有する材料により構成され、例えば電気機械変換効率が高い材料としてジルコン酸チタン酸鉛(PZT)またはチタン酸バリウム(BaTiO)等により構成される。また、圧電体50の厚みは、10μm〜1mmであることが好ましい。厚みが10μm未満である場合、圧電体50は脆性材料により構成されるため、取り扱い時において破損等が生じやすい。一方、厚みが1mmを超える場合、圧電体50の電界強度が低減する。このため、エネルギー変換効率の低下を招く。
【0018】
上部電極52および下部電極54は、電気伝導性を有する材料によって構成され、例えば銀または銀/パラジウム合金等によって構成される。銀は、低抵抗な汎用材料であり、製造コストや製造プロセスの観点から優位である。また、銀/パラジウム合金は、耐酸化性に優れた低抵抗材料であり、信頼性に優れる。上部電極52および下部電極54の厚みは、1〜50μmであることが好ましい。厚みが1μm未満の場合、均一に成形することが難しくなる。一方、50μmを超える場合、上部電極52または下部電極54が圧電体50に対して拘束面となり、エネルギー変換効率の低下を招く。
【0019】
振動部材44は、金属や樹脂等、脆性材料であるセラミックに対して高い弾性率を持つ材料によって構成され、例えばリン青銅、又はステンレス等の汎用材料によって構成される。振動部材44の厚みは、5〜500μmであることが好ましい。また振動部材44の縦弾性係数は、1〜500GPaであることが好ましい。振動部材44の縦弾性係数が過度に低い、または高い場合、機械振動子としての特性や信頼性を損なうおそれがある。
【0020】
音波検出部30は、例えば検出した音波の周波数が第2の発振装置から発振される超音波24の周波数であり、かつ強度が基準値以上であると特定したときに、制御部32へ一定の信号を送るように形成される。これにより、周囲環境からのノイズと反射された超音波24とを区別することができる。携帯端末装置100が携帯電話機である場合、音波検出部30は、例えばマイクロフォンによって構成することができる。
【0021】
本実施形態では、パラメトリックスピーカの動作原理を利用して音響再生をする。パラメトリックスピーカの動作原理は次のようである。パラメトリックスピーカの動作原理は、AM変調やDSB変調、SSB変調、FM変調をかけた超音波を空気中に放射し、超音波が空気中に伝播する際の非線形特性により、可聴音が出現する原理で音響再生を行うというものである。ここでいう非線形とは、流れの慣性作用と粘性作用の比で示されるレイノルズ数が大きくなると、層流から乱流に推移することをいう。すなわち、音波は流体内で微少にじょう乱しているため、音波は非線形で伝播している。特に超音波を空気中に放射した場合に、非線形性に伴う高調波が顕著に発生する。また音波は、空気中の分子集団が濃淡に混在する疎密状態である。空気分子が圧縮よりも復元するのに時間が生じた場合、圧縮後に復元できない空気が、連続的に伝播する空気分子と衝突し、衝撃波が生じて可聴音が発生する。パラメトリックスピーカは、使用者の周囲にのみ音場を形成することができ、プライバシー保護という観点から優れる。
【0022】
次に、携帯端末装置100の動作方法について説明する。図3は、図1に示す携帯端末装置100の動作方法を示すフロー図である。まず、携帯端末装置100から超音波24を発振させる(S11)。超音波24は、使用者の周囲に発振され、例えば使用者が歩行する際の進行方向へ発振される。使用者の周囲に障害物があるとき、超音波24はこの障害物によって反射する。反射してきた超音波24は、音波検出部30によって検出される(S12)。音波検出部30が反射してきた超音波24を検出したとき、制御部32は発振装置12から超音波22を発振し、これにより使用者へ警告音を出力する(S13)。また、例えば発振装置12から音楽を再生している場合において、反射された超音波24を検出したときに、音楽が警告音へ切り替わるようにしてもよい。
【0023】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態に係る携帯端末装置100は、アレイ状に設けられた発振装置10からセンサ用の超音波24およびスピーカ用の超音波22を発振する。このように発振装置10がセンサとスピーカの機能を兼ね備えることとなり、センサ用のデバイスとスピーカ用のデバイスを別個に設ける必要がない。よって、携帯端末装置を多機能としつつ、携帯端末装置全体の小型化を実現することができる。
【0024】
また、携帯端末装置が携帯電話機等である場合には、発振装置やマイクロフォンは既に実装されている。そのため、新たな部品を実装せずとも携帯端末装置の多機能化を実現することができる。
【0025】
また、発振装置12は、パラメトリックスピーカを構成する。このため、使用者の周囲にのみ音場を形成することができる。よって、プライバシー保護という観点からも優れた携帯端末装置が実現できる。
【0026】
図6は、第2の実施形態に係る携帯端末装置102の構成を示すブロック図であり、第1の実施形態における図2に対応している。図7は、図6に示す携帯端末装置102の動作方法を示すフロー図であり、第1の実施形態における図3に対応している。携帯端末装置102は、図6に示すように、音波検出部30が距離を計測する機能を備える点を除いて、第1の実施形態に係る携帯端末装置100と同様の構成を有する。
【0027】
本実施形態の携帯端末装置102の動作方法は次のようである。まず、超音波24を間欠的に発振する(S22)。次いで、障害物から反射してきた超音波24を、音波検出部30によって検出する(S23)。音波検出部30は、センサ用の超音波24が発振装置14によって発振されてから音波検出部30によって検出されるまでの時間に基づいて、使用者と障害物との距離を計測する(S24)。そして、制御部32は、使用者と障害物との距離が基準値以下のときに(S25Yes)、発振装置12から警告用の音を出力する(S26)。当該基準値は、使用者が任意に設定できるものとしてもよい。
【0028】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、使用者と障害物との距離を測定することで、使用者は障害物との距離を把握することもできる。これにより、使用者にとって、より利便性の高い携帯端末装置を提供することができる。
【0029】
図8は、第3の実施形態に係る携帯端末装置を構成する発振装置10の振動子を示す分解斜視図である。第3の実施形態に係る発振装置10の振動子は、MEMSアクチュエータ70によって構成されている。この点を除いて、本実施形態に係る携帯端末装置は、第1の実施形態に係る携帯端末装置100と同様である。
【0030】
図8に示す例において、MEMSアクチュエータ70の駆動方式は圧電方式であり、圧電薄膜層72を上部可動電極層74及び下部可動電極層76ではさんだ構造を有している。MEMSアクチュエータ70は、信号生成部34から上部可動電極層74及び下部可動電極層76に信号が入力されることにより動作する。MEMSアクチュエータ70の製造には、例えばエアロゾルデポジション法が用いられるが、この方法に限定されない。ただしエアロゾルデポジション法を用いた場合、圧電薄膜層72、上部可動電極層74及び下部可動電極層76をそれぞれ曲面上にも成膜できるため好ましい。なおMEMSアクチュエータ70の駆動方式は、静電方式、電磁方式、又は熱伝導方式であってもよい。
【0031】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0032】
10、12、14 発振装置
20、22、24 超音波
30 音波検出部
32 制御部
34 信号生成部
36 距離測定部
40 圧電振動子
42 支持部材
44 振動部材
50 圧電体
52 上部電極
54 下部電極
60 筐体
70 MEMSアクチュエータ
72 圧電薄膜層
74 上部可動電極層
76 下部可動電極層
100 携帯端末装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ状に並べられた複数の発振装置と、
前記複数の発振装置を制御する制御部と、
前記制御部に接続する音波検出部と、
を備え、
前記複数の発信装置は、
第1の方向にセンサ用の超音波を発信する第1の発振装置と、
前記第1の方向と異なる第2の方向にスピーカ用の超音波を発信する第2の発振装置と、
を含み、
前記音波検出部は、反射してきた前記センサ用の超音波を検出し、
前記制御部は、反射してきた前記センサ用の超音波を検出したときに、前記第2の発振装置から警告用の音を出力する携帯端末装置。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯端末装置において、
前記音波検出部は、前記センサ用の超音波が前記第1の発振装置によって発振されてから前記音波検出部によって検出されるまでの時間に基づいて、使用者と障害物との距離を計測し、
前記制御部は、前記使用者と前記障害物との距離が基準値以下のときに、前記第2の発振装置から前記警告用の音を出力する携帯端末装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の携帯端末装置において、
前記発振装置は、振動子として圧電振動子を有する携帯端末装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の携帯端末装置において、
前記発振装置は、振動子としてMEMSを有し、その駆動方式は圧電方式、静電方式、電磁方式または熱伝導方式である携帯端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−98132(P2012−98132A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245671(P2010−245671)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】