説明

携帯遠隔操作装置およびロボットシステム

【課題】表示部へ表示された教示データから容易にコマンドを視認することができること。
【解決手段】所定の動作をロボットへ実行させる命令ごとに表示色を設定し、設定された表示色を命令に関連付けて記憶する。また、命令をロボットへ教示するティーチングによって作成された教示データを命令に関連付けられて記憶された表示色に基づいて表示部へ表示する。さらに、表示部へ表示された教示データの表示色を所定の操作によって設定された表示色へ一時的に変更して表示部へ表示するよう携帯遠隔操作装置およびロボットシステムを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、携帯遠隔操作装置およびロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用ロボットを動作させるプログラムを作成(以下、「ティーチング」と記載する)し、ティーチングにより作成された教示データを再生することによって産業用ロボットへ作業をさせる携帯遠隔操作装置が知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、表示モードから編集モードへの切り替えが可能で、かつ、表示部の所定部分をタッチすることによって、教示データをコピーやペースト等の編集をすることができる携帯遠隔操作装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−254527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来技術によると、作業者が教示データの編集をする際、教示データは一様に表示されているため、教示データから所望するコマンドを探し出すのに非常に時間がかかってしまうという問題があった。
【0006】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、表示部へ表示された教示データから容易にコマンドを視認することができる携帯遠隔操作装置およびロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る携帯遠隔操作装置は、表示色設定部と、表示色情報記憶部と、教示データ表示部とを備える。前記表示色設定部は、所定の動作をロボットへ実行させる命令ごとに表示色を設定し、前記表示色情報記憶部は、前記表示色設定部によって設定された前記表示色を前記命令に関連付けて記憶する。また、前記教示データ表示部は、前記命令を前記ロボットへ教示するティーチングによって作成された教示データを前記表示色情報記憶部によって前記命令に関連付けられて記憶された前記表示色に基づいて表示部へ表示する。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様によれば、表示部へ表示された教示データから容易にコマンドを視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るロボットシステムの説明図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る携帯遠隔操作装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係る処理選択画面の一例を示す図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係る表示色設定画面の一例を示す図である。
【図5】図5は、第1の実施形態に係る教示データ表示画面の一例その1を示す図である。
【図6A】図6Aは、第1の実施形態に係る教示データ表示画面の一例その2を示す図である。
【図6B】図6Bは、第1の実施形態に係る教示データ表示画面の一例その3を示す図である。
【図7】図7は、第1の実施形態に係る表示色情報の一例を示す図である。
【図8】図8は、第1の実施形態に係る表示色設定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、第1の実施形態に係る教示データ表示処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、第2の実施形態に係る表示色情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する携帯遠隔操作装置およびロボットシステムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係るロボットシステム1について、図1を用いて説明する。図1は、第1の実施形態に係るロボットシステム1の説明図である。なお、図1では、説明を容易にするために一部の形状を単純化して示す。
【0012】
図1に示すように、第1の実施形態に係るロボットシステム1は、携帯遠隔操作装置10と、ロボット制御装置20と、ロボット30とを備える。なお、携帯遠隔操作装置10とロボット制御装置20とは、たとえばケーブルで接続されており、また、ロボット制御装置20とロボット30とは、たとえばケーブルで接続される。
【0013】
携帯遠隔操作装置10は、一般的にティーチングペンダントと呼ばれ、ロボット制御装置20の入出力端末である。たとえば、携帯遠隔操作装置10は、ロボット30を動作させるプログラムを作成(以下、「ティーチング」と記載する)するための携帯操作機器である。また、携帯遠隔操作装置10は、ティーチングによって記録された教示データをロボット制御装置20経由で再生させ、ロボット30へ一連の動作を実行させる。
【0014】
なお、携帯遠隔操作装置10は、各種スイッチやボタン等で構成され、ティーチング等の操作をするための操作部11と、ティーチング中の教示データやロボット30の制御状態等を表示する表示部12とを備える。
【0015】
ロボット制御装置20は、ロボット30の起動や停止等の動作を制御する制御装置である。また、ロボット制御装置20でも、ティーチングや教示データの再生を行うことができる。
【0016】
ロボット30は、いわゆるマニピュレータと呼ばれる産業用ロボットであり、携帯遠隔操作装置10またはロボット制御装置20によってティーチングされた教示データを再生することで、ワークの把持や移載等の動作を行う装置である。
【0017】
ここで、何らかの理由により教示データの再生中にティーチングを行わなくてはならない場合、たとえばワークの変更が発生した場合に、作業者は携帯遠隔操作装置10によってティーチングを行うこととなる。
【0018】
なお、かかるロボットシステム1が設置される場所は、ロボット30の可動範囲の場所を開放しておく必要がある。また、ワークの積載場所や予備のワークの積載場所等も確保しておかなければならない。このため、携帯遠隔操作装置10は、狭小な場所でティーチングが行われることもある。
【0019】
また、携帯遠隔操作装置10は、一般的に手持ちで操作されるため、全体がコンパクトな構成となっている。それに伴い、携帯遠隔操作装置10に備える表示部12の画面は、パソコンに備えるディスプレイと比較した場合、非常に小さな画面によって構成される。
【0020】
また、ティーチングの際に作成される教示データは、膨大な行数の命令群によって記述されている。ロボット30へ実行させる一連の動作によっては、教示データは10万行を超えることもある。
【0021】
ところが、従来のロボットシステムでは、小さな画面でありながら、教示データは一様に表示部へ表示される。このため、従来のロボットシステムでは、作業者が、膨大な行数の教示データから所望のコマンドや修正箇所を探しだすのは非常に困難で時間がかかる。
【0022】
このため、従来のロボットシステムは、作業効率の低下を招いてしまっていた。なお、コマンドとは、作業者がティーチングする際、教示データへ記述する命令のことであり、各命令は、ロボット30の動作に対応する。
【0023】
そこで、第1の実施形態に係る携帯遠隔操作装置10およびロボットシステム1では、教示データを表示部12へ表示する際、コマンドごとに設定された表示色に基づいて教示データを表示することとした。これにより、第1の実施形態に係る携帯遠隔操作装置10およびロボットシステム1では、表示部12へ表示された教示データから容易にコマンドを視認することができる。
【0024】
つぎに、第1の実施形態に係る携帯遠隔操作装置10の構成の詳細について図2を用いて説明する。図2は、第1の実施形態に係る携帯遠隔操作装置10の構成を示すブロック図である。
【0025】
携帯遠隔操作装置10は、操作部11と、表示部12と、記憶部13と、制御部14を備える。また、制御部14は、命令一覧表示部14aと、表示色設定部14bと、教示データ表示部14cとをさらに備え、記憶部13は、色登録情報13aと、表示色情報13bと、教示データ13cとを記憶する。
【0026】
操作部11は、ティーチングする際、教示データを入力したり教示データの再生操作を行う入力機器であり、たとえば、各種スイッチやボタン等で構成されているキーボードである。
【0027】
表示部12は、ロボット30の制御状態や教示データ等を表示する携帯遠隔操作装置10に備える表示機器であり、たとえば、液晶ディスプレイおよびスピーカー等で構成される。なお、かかる表示部12は、感圧式や静電容量式等、種々の方式によって押圧位置を検出することができるタッチパネルを備えるディスプレイでもよい。
【0028】
記憶部13は、RAM(Random Access Memory)および不揮発性メモリといった記憶デバイスで構成される記憶部である。この記憶部13は、色登録情報13aと、表示色情報13bと、教示データ13cとを記憶する。
【0029】
色登録情報13aは、表示色に関する情報であり、たとえば、色名、色番号、RGB値および一覧表示識別等を含み、作業者によって予め登録される。なお、一覧表示識別とは、表示色設定部14bによって設定可能な色の一覧が表示される際に、一覧に表示されるか否かを示す識別子である。
【0030】
具体的には、色登録情報13aに、たとえば256色登録されている場合に、高頻度で選択される10色について、一覧表示識別を「可」と登録したとする。この場合、作業者によって表示色設定の操作が行われたならば、表示色設定部14bは、一覧表示識別が「可」と登録されている10色についてのみ、一覧を表示することとなる。
【0031】
表示色情報13bは、表示色設定部14bによって命令ごとに設定された色の情報であり、命令に関連付けて色名や色番号を記憶しておく。ここで、表示色情報13bの詳細について、図7を用いて説明する。図7は、第1の実施形態に係る表示色情報13bの一例を示す図である。
【0032】
図7に示すように、表示色情報13bは、「命令名称」項目と、「色名」項目と、「色番号」項目とを含んでいる。「命令名称」項目は、表示色を設定する命令の名称であり、「色名」項目は、所定の色に付与された色の名称である。
【0033】
「色番号」項目は、色登録情報13aに登録された「色番号」に対応している。具体的には、色登録情報13aに「色番号:210」に対応して「色名:青」が登録されている場合について説明する。
【0034】
この場合、図7の2行目に示したように、「移動命令」に対して「色名:青」の表示色が設定されたならば、表示色情報13bは、「命令名称:移動命令」に関連付けて、「色名:青、色番号:210」を記憶する。このように、表示色情報13bは、命令ごとに設定された色の情報(色名および色番号)を記憶する。
【0035】
なお、ここでは、携帯遠隔操作装置10に記憶部13を備えることとしたが、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カード等の外部メディアに上述した教示データ13c等を記憶することとしてもよい。
【0036】
図2の説明に戻り、携帯遠隔操作装置10の構成についての説明をつづける。教示データ13cは、ロボット30へ一連の動作を実行させるための命令の集合体である。
【0037】
なお、ロボット30へ実行させる一連の動作を、以下では、「ジョブ」と記載し、かかるジョブごとに関連付けられて教示データ13cが管理されており、たとえば、教示データ13cにはジョブの識別子によってファイル名が付与される。
【0038】
制御部14は、ティーチングを行う操作機器である携帯遠隔操作装置10の全体制御を行う制御部である。命令一覧表示部14aは、表示色情報13bから取得した表示色の設定が可能な命令の一覧と、命令に関連付けられた表示色とを表示部12へ表示する処理を行う処理部である。
【0039】
表示色設定部14bは、所定の命令に関連付けられた表示色の設定操作が操作部11から行われた場合に、命令に対応する表示色情報13bの色の情報(色名および色番号)を設定された表示色によって更新する処理を行う処理部である。
【0040】
教示データ表示部14cは、メインメニュー等から所定の教示データ13cの表示指示を受け付けたならば、表示色情報13bに設定された色の情報に基づいてかかる教示データ13cを表示部12へ表示する処理を行う処理部である。
【0041】
具体的には、作業者によって教示データ13cのファイル名が選択された、または、ジョブの識別子が選択された場合に、教示データ表示部14cは、該ファイル名または該ジョブの教示データ13cの表示指示を受け付ける。
【0042】
また、教示データ表示部14cは、メインメニュー等からの教示データ13cの表示指示を受け付けたならば、表示モードに基づいて教示データ13cを表示部12へ表示する処理を併せて行う。
【0043】
なお、表示モードには、教示データ13cが再生中であることを示す「プレイ」モードと、ティーチング中、すなわち、教示データ13cが編集中であることを示す「ティーチ」モードとが設けられる。
【0044】
つぎに、第1の実施形態に係る携帯遠隔操作装置10に備える表示部12の詳細について図3および図4を用いて説明する。図3は、第1の実施形態に係る処理選択画面の一例を示す図であり、図4は、第1の実施形態に係る表示色設定画面の一例を示す図である。なお、以下の画面例では、説明を容易にするために一部の形状を単純化して示す。
【0045】
まず、図3に示すように、携帯遠隔操作装置10は、操作部11と、表示部12とを備え、操作部11には、実行キー11a、矢印キー11bおよび文字入力キー等を備える。また、表示部12には、メインメニュー等から「携帯遠隔操作装置10の各種設定」の処理が選択され、携帯遠隔操作装置10の設定処理を選択する処理選択画面が表示された状態を示す。
【0046】
ここで、携帯遠隔操作装置10では、作業者によって「表示色設定」の処理が選択された場合に、図4に示すような表示色設定画面を表示する。表示色設定画面には、命令ごとに設定された色名が表示されており、携帯遠隔操作装置10は、表示色設定の操作を受け付けた場合、設定可能な表示色の一覧を表示する。
【0047】
具体的には、「移動命令」に対応する「色名」が表示された部分にカーソルが移動された状態で実行キー11aが押下された場合に、図4に示すように、携帯遠隔操作装置10は、設定可能な表示色の一覧を表示する。なお、表示色の一覧には、色登録情報13aの一覧表示識別へ「可」と登録された色が表示されるものとする。
【0048】
そして、携帯遠隔操作装置10では、作業者によって所定の色が選択され、表示色の設定操作が行われた場合に、表示色情報13bの命令に関連付けられた色の情報(色名および色番号)を、選択された色によって更新する。
【0049】
なお、ここでは、携帯遠隔操作装置10は、表示色設定の操作を受け付けた場合、表示色の一覧を表示し、表示した一覧から設定する色を作業者が選択することとしたが、これに限定されるものではない。たとえば、色登録情報13aに登録されている「色番号」や「RGB値」を、操作部11から作業者が直接入力して表示色の設定を行ってもよい。
【0050】
つづいて、教示データ13cの表示画面について、図5、図6Aおよび図6Bを用いて説明する。図5は、第1の実施形態に係る教示データ表示画面の一例その1を示す図であり、図6Aは、第1の実施形態に係る教示データ表示画面の一例その2を示す図であり、図6Bは、第1の実施形態に係る教示データ表示画面の一例その3を示す図である。
【0051】
まず、図5に示すように、表示部12の上方には、表示された教示データ13cのジョブ名と表示モードが表示される。なお、ここでは、ジョブ名が「a01」、表示モードが「ティーチ」と表示されており、教示データ13cが編集中であることを示す。
【0052】
また、表示部12の中央部には、教示データ13cが表示される。なお、ここでは、行の左端には、行番号が表示され、行番号に続いて、「SET」、「MOVE」等、命令に対応するコマンドが表示される。
【0053】
教示データ表示部14cは、メインメニュー等から教示データ13cの表示指示を受け付けたならば、表示色情報13bに設定された色の情報に基づいて教示データ13cを表示部12へ表示する。
【0054】
たとえば、表示色情報13bに「命令名称:移動命令」に関連付けられて「色名:青」と設定されている場合、教示データ表示部14cは、移動命令が含まれる行の文字を「青」で表示する。
【0055】
具体的には、図5に示すように、教示データ表示部14cは、「命令名称:移動命令」に対応するコマンド「MOVE」を含む行、すなわち破線で囲まれた部分の文字を「青」で表示する。
【0056】
なお、ここでは、教示データ表示部14cは、教示データ13cの文字を表示色情報13bに設定された色で表示することとした。しかし、これに限定されるものではなく、たとえば、教示データ表示部14cは、命令ごとに背景色を表示色情報13bに設定された色で表示することとしてもよい。
【0057】
また、表示色情報13bに、表示色と背景色とを、それぞれ設定することができるようにして、表示色情報13bに設定された色の情報に基づいて教示データ13cを表示することとしてもよい。
【0058】
つづいて、表示部12の下方には、「表示色設定」ボタンおよび「強調表示設定」ボタンが表示される。携帯遠隔操作装置10は、作業者の操作によって所定の行または行の一部が選択され、「表示色設定」ボタンが押下された場合に、選択された行または行の一部の表示色を一時的に変更することができる。
【0059】
なお、一時的に変更する表示色については、「表示色設定」ボタンが押下された場合に、設定可能な表示色の一覧を表示して、作業者によって選択させることとしてもよいし、予め、一時的に変更する表示色として登録しておくこととしてもよい。
【0060】
また、携帯遠隔操作装置10では、作業者の操作によって所定の行または行の一部が選択され、「強調表示設定」ボタンが押下された場合には、選択された箇所の文字を一時的に強調表示へ変更することができる。なお、強調表示とは、文字を強調させて表示することであって、たとえば、対象となる文字を太字で表示してもよいし、文字を点滅してもよい。
【0061】
また、上述した一時的な表示色の変更や、強調表示を解除するタイミングについても限定されるものではない。たとえば、設定された行とは別の行が選択され、再度「表示色設定」ボタンや「強調表示設定」ボタンが押下された場合であってもよいし、教示データ13cの表示を終了する時点であってもよい。
【0062】
つづいて、表示色情報13bに、所定の命令に関連付けて所定の指定色が設定されており、かかる命令以外の命令に関連付けて背景色と同一の色の文字色が設定されている場合について図6Aおよび図6Bを用いて説明する。なお、ここでは、所定の命令がコメント命令である場合について示すこととする。
【0063】
また、コメント命令とは、ロボット30の動作とは対応していない命令であり、教示データ13cへ「見出し」や「しおり」等の用途として任意の箇所へ記述される命令である。たとえば、コメント命令は、「’COMMENT 処理1」、「’COMMENT 処理2」等と記述される。
【0064】
図6Aに示すように、表示部12には、コメント命令が含まれる行は、所定の指定色によって表示され、それ以外の行は、背景色と同一の文字色で表示される。
【0065】
このように、コメント命令に対して指定色が設定され、それ以外の命令に対して背景色と同一の色の文字色が設定されることによって、表示部12へ表示された教示データ13cから容易に所望の命令である「コメント命令」を視認することができる。
【0066】
ここで、教示データ13cに含まれる修正箇所を容易に探せることを目的として作業者はコメント命令を記述する場合が多い。そして、作業者は、所望のコメント命令を見つけた場合、かかるコメント命令の近傍の教示データ13cを修正する。
【0067】
このことから、携帯遠隔操作装置10は、上述したような表示色の設定がされている場合に、以下の処理を行うこととした。
【0068】
携帯遠隔操作装置10は、矢印キー等によるスクロール操作を受け付けている間にスクロール操作が中断された場合、作業者が所望のコメント命令を見つけたと判定し、背景色と同一色とする文字色の設定を一時的に解除する。
【0069】
すなわち、携帯遠隔操作装置10は、背景色と同一色であった文字色を、作業者が視認して修正が可能な文字色へ一時的に変更する。これにより、図6Bに示すように、表示部12には、コメント命令以外の行であっても視認が可能な表示色によって表示される。
【0070】
その後、携帯遠隔操作装置10は、再度スクロール操作を受け付けたならば、背景色と同一色とする文字色の設定へ戻し、スクロール操作が中断された場合に、上述した処理を繰り返すこととする。
【0071】
このようにすることによって、作業者は、所望のコマンドを容易に視認することができるとともに、教示データ13cの修正を行うたびに表示色の設定を変更する操作が不要となる。これにより、携帯遠隔操作装置10は、修正にかかる作業効率を向上させることができる。
【0072】
なお、ここでは、携帯遠隔操作装置10は、作業者によって所望のコマンドを視認させることとした。しかし、操作部11や音声入力等によって所望の命令が指定された場合に、携帯遠隔操作装置10は、かかる命令を検索し、かかる命令が検出された行までスキップさせて教示データ13cを表示してもよい。そして、携帯遠隔操作装置10は、所定のキーが押下された場合に、かかる命令の検索を継続する。
【0073】
また、ここでは、携帯遠隔操作装置10は、命令を順次検索することとしたが、所望の命令が含まれるすべての行を一時的に抽出し、表示部12へ表示してもよい。そして、携帯遠隔操作装置10は、抽出された行から所定の行が選択された場合に、選択された行までスキップさせて教示データ13cを表示してもよい。これにより、作業者は、膨大な行数の教示データ13cの中から、所望の箇所を視認することができる。
【0074】
つぎに、携帯遠隔操作装置10が実行する表示色設定処理の処理手順について図8を用いて説明する。図8は、第1の実施形態に係る表示色設定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0075】
なお、作業者によってメインメニュー等から「携帯遠隔操作装置10の各種設定」が選択され、表示部12に、携帯遠隔操作装置10の設定処理を選択する処理選択画面が表示された状態から本表示色設定処理を行う場合について説明する。
【0076】
図8に示すように、携帯遠隔操作装置10は、処理選択画面から「表示色設定」が選択されたことを受け付け(ステップS101)、表示色情報13bを取得する(ステップS102)。
【0077】
つづいて、命令一覧表示部14aは、取得された表示色情報13bに設定された命令と表示色の色名とを一覧表示する(ステップS103)。
【0078】
そして、表示色設定部14bは、命令に対応する色名にカーソルが移動された状態で実行キー11aが押下されたことを検知し、表示色を設定する命令が選択されたことを受け付ける(ステップS104)。
【0079】
その後、表示色設定部14bは、設定可能な表示色の一覧を表示し(ステップS105)、表示色の一覧から設定する色が選択されたことを受け付ける(ステップS106)。
【0080】
つづいて、表示色設定部14bは、表示色情報13bの命令に関連付けられた色の情報(色名および色番号)を、選択された色によって更新し(ステップS107)、一連の表示色設定処理を終了する。
【0081】
つぎに、教示データ表示部14cが実行する教示データ表示処理の処理手順について図9を用いて説明する。図9は、第1の実施形態に係る教示データ表示処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0082】
図9に示すように、教示データ表示部14cは、所定の教示データ13cの表示指示を受け付け(ステップS201)、表示色情報13bを取得する(ステップS202)。
【0083】
そして、教示データ表示部14cは、作業者によって表示モードが選択されたことを受け付け(ステップS203)、選択された表示モードが「プレイ」モードであるか否かを判定する(ステップS204)。
【0084】
選択された表示モードが「プレイ」モードであった場合(ステップS204,Yes)、制御部14は、教示データ13cの再生をロボット制御装置20へ指示する(ステップS205)。
【0085】
そして、教示データ表示部14cは、表示色情報13bに設定された色の情報に基づいて「プレイ」モードで教示データ13cを表示部12へ表示し(ステップS206)、一連の教示データ表示処理を終了する。
【0086】
一方、選択された表示モードが「プレイ」モードではなく「ティーチ」モードであった場合(ステップS204,No)、以下の処理を行う。この場合、教示データ表示部14cは、表示色情報13bに設定された色の情報に基づいて「ティーチ」モードで教示データ13cを表示部12へ表示し(ステップS207)、一連の教示データ表示処理を終了する。
【0087】
なお、ここでは、教示データ13cの表示指示を受け付けた後に、表示モードの選択が行われることとしたが、メインメニュー等へ、「教示データ13cの再生」の処理および「教示データ13cの編集」の処理を選択する画面やボタンを設けてもよい。
【0088】
この場合、教示データ表示部14cは、「教示データ13cの再生」の処理が選択されたことを受け付けたならば、所定の教示データ13cの再生をロボット制御装置20へ指示するとともに、「プレイ」モードで教示データ13cを表示部12へ表示する。
【0089】
また、教示データ表示部14cは、「教示データ13cの編集」の処理が選択されたことを受け付けたならば、所定の教示データ13cを編集可能な「ティーチ」モードで表示部12へ表示する。
【0090】
上述したように、第1の実施形態では、ティーチングを行う操作機器である携帯遠隔操作装置の表示部へ教示データを表示する際、携帯遠隔操作装置は、コマンドごとに設定された表示色に基づいて教示データを表示することとした。これにより、第1の実施形態に係る携帯遠隔操作装置およびロボットシステムでは、表示部へ表示された教示データから容易にコマンドを視認することができる。
【0091】
ところで、上述した第1の実施形態に係る携帯遠隔操作装置では、作業者によって所定の命令に対して指定色が設定され、それ以外の命令に対して背景色と同一の色の文字色が設定される。
【0092】
しかし、表示色情報に優先度を設け、携帯遠隔操作装置は、命令ごとに設定された色の情報とともに記憶された優先度に基づいて教示データを表示することとしてもよい。そこで、以下に示す第2の実施形態では、優先度に基づいて教示データ表示処理が行われる場合について説明する。
【0093】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態に係る表示色情報13b’の一例を示す図である。なお、図10は、図7に示した表示色情報13bに、「優先度」項目を追加した点が、第1の実施形態とは異なる。また、携帯遠隔操作装置10の構成については、図2と同様であるので、ここでは、構成の説明については省略することとする。
【0094】
図10に示すように、表示色情報13b’は、「命令名称」項目と、「色名」項目と、「色番号」項目と、「優先度」項目とを含んでいる。「優先度」項目は、視認させるべき命令の優先順位であり、重複してもよい。なお、優先度が高いほど作業者が視認を所望している命令であることを示し、「優先度」の数値は小さい。
【0095】
さらに、第2の実施形態に係る携帯遠隔操作装置10では、表示色によって表示するか否かの基準となる優先度として基準優先度を設定する。
【0096】
そして、教示データ表示部14cは、教示データ13cを表示する際、所定の基準優先度以上の優先度が設定された命令に対して、表示色情報13b’に設定された色の情報に基づいて教示データ13cを表示部12へ表示する。
【0097】
たとえば、図10に示すように、A命令に対して優先度が最も高い「1」と、C命令およびF命令に対して優先度を「2」と、B命令およびE命令に対して優先度を「3」と、D命令に対して優先度を「4」と設定された場合について説明する。
【0098】
具体的には、基準優先度が「2」である場合に、教示データ表示部14cは、基準優先度以上の優先度である「1」および「2」と設定された命令に対して、色の情報に基づいて教示データ13cを表示部12へ表示する。
【0099】
したがって、ここでは、教示データ表示部14cは、A命令、C命令およびF命令の文字色を、表示色情報13b’に設定された色である青、緑およびピンクで表示する。一方、基準優先度未満の優先度に設定されている命令に対しては、背景色と同一の色の文字色で表示する。
【0100】
なお、第2の実施形態に係る携帯遠隔操作装置10では、教示データ13cを表示中であっても、基準優先度の設定を変更できることとする。たとえば、第2の実施形態に係る携帯遠隔操作装置10では、所定のテンキーが長押しされた場合に、押下されたテンキーの数値へ基準優先度が変更されたと判定してもよい。
【0101】
上述したように、第2の実施形態では、表示色情報に優先度を設定し、命令ごとに設定された色の情報とともに記憶された優先度と基準優先度とに基づいて教示データを表示することとした。これにより、第2の実施形態に係る携帯遠隔操作装置およびロボットシステムでは、表示部へ表示された教示データから容易にコマンドを視認することができるとともに、コマンドの視認手法に対して柔軟に対応することができる。
【0102】
なお、上述した実施形態では、携帯遠隔操作装置とロボット制御装置とは相互にケーブルで接続されていることとしたが、これに限定されるものではない。たとえば、ワイヤレスの携帯遠隔操作装置によってティーチングされた教示データをロボット制御装置へ無線通信し、教示データの再生を指示してもよい。
【0103】
また、上述した実施形態では、ロボットシステムは、携帯遠隔操作装置が、教示データを記憶することとしたが、携帯遠隔操作装置によってティーチングされた教示データをロボット制御装置が記憶することとしてもよい。
【0104】
また、上述した実施形態では、操作部から入力操作を受け付けることとしたが、携帯遠隔操作装置にマイクを設け、音声入力によって入力操作を受け付けることとしてもよい。これにより、携帯遠隔操作装置に設けられる操作ボタン等が不要となり、操作部を極小化することができるとともに、携帯遠隔操作装置を軽量化することができる。また、携帯遠隔操作装置の操作部を極小化することで、表示部を大きくすることも可能となり、作業者が容易にコマンドを視認することができる。
【0105】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 ロボットシステム
10 携帯遠隔操作装置
11 操作部
11a 実行キー
11b 矢印キー
12 表示部
13 記憶部
13a 色登録情報
13b 表示色情報
13c 教示データ
14 制御部
14a 命令一覧表示部
14b 表示色設定部
14c 教示データ表示部
20 ロボット制御装置
30 ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の動作をロボットへ実行させる命令ごとに表示色を設定する表示色設定部と、
前記表示色設定部によって設定された前記表示色を前記命令に関連付けて記憶する表示色情報記憶部と、
前記命令を前記ロボットへ教示するティーチングによって作成された教示データを前記表示色情報記憶部によって前記命令に関連付けられて記憶された前記表示色に基づいて表示部へ表示する教示データ表示部と
を備えることを特徴とする携帯遠隔操作装置。
【請求項2】
教示データ表示部は、
前記表示部へ表示された前記教示データの表示色を所定の操作によって設定された表示色へ一時的に変更して前記表示部へ表示することを特徴とする請求項1に記載の携帯遠隔操作装置。
【請求項3】
前記表示色設定部は、
前記表示色として文字色と背景色とを同一色とする設定の受け付けを許容することを特徴とする請求項1または2に記載の携帯遠隔操作装置。
【請求項4】
前記教示データ表示部は、
所定の指定色で設定された前記命令以外は前記文字色と前記背景色とを同一色とするよう設定された前記教示データを表示する場合に、所定の操作を受け付けたことを条件として、前記文字色と前記背景色とを同一色とする設定を解除することを特徴とする請求項3に記載の携帯遠隔操作装置。
【請求項5】
ロボットと、
命令を前記ロボットへ教示する教示データに基づいてロボットの動作を制御するロボット制御装置と、
携帯遠隔操作装置と
を備え、
前記携帯遠隔操作装置は、
所定の動作をロボットへ実行させる命令ごとに表示色を設定する表示色設定部と、
前記表示色設定部によって設定された前記表示色を前記命令に関連付けて記憶する表示色情報記憶部と、
前記命令を前記ロボットへ教示するティーチングによって作成された教示データを前記表示色情報記憶部によって前記命令に関連付けられて記憶された前記表示色に基づいて表示部へ表示する教示データ表示部と
を備えることを特徴とするロボットシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−39626(P2013−39626A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175952(P2011−175952)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】