説明

携帯電子機器

【課題】放熱ファンやペルチェ素子などを設けることなく高効率の放熱構造を実現し、また、機器を把持する際に手が触れる部分の温度上昇を抑えられるようにする。
【解決手段】プロジェクタモジュール30の光源31から発した熱は、放熱ブロック38の熱伝達部38Aから放熱部38Bに伝わり、金属製の外カバー100Aoを介して外部に放出される。これにより外カバー100Aの温度が上昇するが、両側面カバー100Cl,100Crおよび指掛け部100Dは、樹脂製であるため温度上昇が抑えられ、カメラを把持する使用者が不快感を抱くことはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱対策を講じた携帯電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばプロジェクタ装置においては、その光源(例えば、高輝度LED)の発熱が無視できず、有効な熱対策を講じないと熱による光源の破損や、画像への悪影響が懸念される。光源の熱対策を講じたものとして、例えば特許文献1,2に記載されたものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2004−4581号公報
【特許文献2】特開2004−69825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2における熱対策は、熱伝導性の放熱部材や冷却用のペルチェ素子などを追加する必要があるため部品点数が増加し、また熱を外部に効率よく逃がす工夫はなされておらず、放熱が不十分である。一方、熱を機器本体のカバー表面から外部に逃がすよう構成すると、カバーが高温となり、機器を把持する使用者が不快感を抱くおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る携帯電子機器は、機器本体内に設けられた熱源と、熱源からの熱を機器本体の外面から外部に放熱するための放熱機構とを有し、機器本体の外面のうち、機器の基本的な把持方法で使用者の手が触れる部分の少なくとも一部を、他の部分よりも熱伝導率の低い材料で構成したことを特徴とする。
放熱機構は、熱源からの熱を前記他の部分に伝導する熱伝導部材であってもよい。
画像を外部に投影するプロジェクタ部を有し、熱源は、プロジェクタ部の光源であってもよい。
基本的な把持方法で使用者の手が触れる部分の少なくとも一部を非金属で構成し、他の部分を金属で構成してもよい。非金属は、樹脂またはゴムであってもよい。
他の部分よりも熱伝導率の低い材料で構成される部分は、当該機器を両手で把持する際に両手が接触し得る両側面部を含んでいてもよい。
他の部分よりも熱伝導率の低い材料で構成される部分は、当該機器を把持し易くするために設けられた指掛け部を含んでいてもよい。
他の部分よりも熱伝導率の低い材料で構成される部分は、当該機器を両手で把持する際に両手が接触し得る両側面部、および当該機器を把持し易くするために設けられた指掛け部とを含み、両側面部および指掛け部を予め一体成形により構成してもよい。また、熱源を有するモジュールを機器本体内に支持する支持部と、両側面部と、指掛け部とを一体に成形して成る構成部品を設けてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、放熱ファンやペルチェ素子などを設けることなく高効率の放熱構造を実現できるのに加えて、機器を把持する際に手が触れる部分の温度上昇を抑えることができ、使用者が熱による不快感を抱くことがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1〜図3により本発明をプロジェクタ内蔵カメラに適用した場合の一実施形態を説明する。
図1は本実施形態におけるプロジェクタ内蔵カメラの正面図、図2はそのII−II線断面図である。カメラ本体100は、カメラの外郭を構成する前面/背面カバー100A,100Bと、左右の側面カバー100Cl,100Crとを有する。前面カバー100Aは、金属製の外カバー100Aoと、その内面に固定される樹脂性の内カバー100Aiとから構成される。外カバー100Aoには、撮影窓W1,投影窓W2,閃光発光窓W3が形成されるとともに、表面には、操作者がカメラを把持する際に右手の指を掛ける樹脂製の指掛け部100Dが固着される。また、背面カバー100Bは金属製、側面カバー100Cl,100Crは樹脂製とされる。
【0008】
カメラ本体100の内部には、左側に電池室10が、右側にカメラユニット20がそれぞれ配置され、それらの間にプロジェクタモジュール30が配置される。電池室10には、例えばカメラ底面から電源電池が装填される。カメラモジュール20は、撮影光学系や撮像素子等から成り、撮影窓W1から取り込んだ被写体光束を撮像素子で光電変換して画像データを生成する。画像データは、カードスロット40に装填されたメモリカードに記録される。なお、51は画像等を外部表示するための液晶モニタ、52はカメラのメイン基板である。
【0009】
図3はプロジェクタモジュールをカメラ正面から見た断面図である。プロジェクタモジュール30は、高輝度LED等の光源31と、集光レンズ32と、偏光ビームスプリッタ(以下、PBS)33と、LCOS等の反射型液晶パネル34と、投影レンズ35と、ミラー36と、これらを収容するケース37と、光源31に一体化された金属製(例えば、アルミ製)の放熱ブロック38とを有する。放熱ブロック38は、図2に示すように、熱伝達部38Aと放熱部38Bとが略L字を形成して成る。
【0010】
プロジェクタモジュール30は、予め前面カバー部組として前面カバー100Aに一体化される。本実施形態では、前面カバー100Aの内カバー(樹脂カバー)100Aiに複数のねじ孔付き凸部を形成しておき、ここにプロジェクタモジュール30のケース37をビスで固定する。その際、上記放熱ブロック38の放熱部38Bが、内カバー100Aiに設けた孔を介して外カバー(金属カバー)100Aoの裏面に密着される。図では、熱伝導性の両面接着テープTPを介して放熱部38Bを外カバー100Aoに密着固定させている。このようにプロジェクタモジュール30を予め前面カバー100Aに部組化することで、放熱部38Bを外カバー100Aoに密着させる作業が楽に行える。
【0011】
このようなプロジェクタモジュール30を用いて、メモリカードに記録された所望の画像データを外部に投影することができる。カメラの制御回路(不図示)は、フレキシブルプリント基板39を介して画像データを液晶パネル34に送り、表示させる。この状態で光源31を点灯すると、光源光は集光レンズ32およびPBS33を透過して反射型液晶パネル34に入射し、その反射光像がPBS33で上方に90度屈曲される。屈曲された光は、投影レンズ35を透過した後にミラー36で反射され、投影窓W2を介してカメラ前方に投影される。
【0012】
光源31から発した熱は、放熱ブロック38の熱伝達部38Aから放熱部38Bに伝わり、金属製の外カバー100Aoを介して外部に放出される。放熱ブロック38をL字状としたことで、放熱部38Bと外カバー100Aoとの接触面積を十分確保しつつも、熱伝達部38Aと放熱部38Bとの間の空間に電池室10の一部を割り込ませることができる。したがって、放熱効率を損なわずにカメラ内空間の有効利用が図れる。
【0013】
なお、カメラ本体内部において、外カバー100Aoと背面カバー100Bとを金属部材で連結することで、背面カバー100Bを介しても放熱が図れ、放熱効率をアップさせることができる。
【0014】
ここで、プロジェクタ機能を使用する際には、カメラを机上等に載置して投影することで投影像を安定させることができるが、適当な置き場所がない場合は、カメラを手で持って投影してもよい。ただし、上述のように光源31の熱を金属カバー(外カバー100Aoなど)を介して外気に放熱する構成では、金属カバーの温度上昇は免れず、金属部分を把持して長時間投影を行うと、操作者が不快感を感ずるおそれがある。
【0015】
手持ちでの投影の場合は、撮影時と同様に両手でカメラの左右部を把持することで像を最も安定させることができ、その際、両手の掌はカメラ両側面と接触し、右手の指は指掛け部100Dに掛けられる。本実施形態では、左右の側面カバー100Cl,100Crと指掛け部100Dとがいずれも樹脂で構成されているので、手持ちでの投影時に手が触れる箇所は殆ど樹脂部であり、金属カバー部には触れずに済むか、触れるとしても最小限の面積で済む。樹脂はいうまでもなく金属と比べて熱伝導率が低い(温度上昇が抑えられる)から、手持ちで長時間投影を行っても熱による不快感を感ずることがない。
【0016】
図4は他の実施形態を示し、これは、先の実施形態における内カバー100Ai、両側面カバー100Cl,100Crおよび指掛け部100Dを一体の樹脂成型品200で構成したものである。内カバー、側面カバー、指掛け部に相当する箇所は、それぞれ符号200Ai,200Cl,200Cr,200Dで示してある。これによれば、部品点数の低減により組立効率の向上が図れる。
【0017】
以上では、プロジェクタの投影窓をカメラ本体の前面に設けた例を示したが、図5に示すように一側面に投影窓W2を設けた場合には、他方の側部を片手で把持して投影を行うのが自然である。この場合は、外面カバー300のうち他方の側部(斜線部分)を樹脂材料で構成し、他の部分を金属材料で構成すればよい。同様に図6に示すように、カメラ本体の上面に投影窓W2を設けた場合は、底面側を把持して投影を行うので、底面側の部分を樹脂材料で構成し、他の部分を金属材料で構成すればよい。
【0018】
なお、金属部よりも熱伝導性の低い部材として樹脂を用いたが、樹脂に代えてゴムでもよい。また、プロジェクタモジュールの構成は上記のものに限定されず、例えば透過型の液晶パネルを用いたものでもよい。さらに、カメラ機能を持たない携帯プロジェクタ装置や、プロジェクタ内蔵の携帯電話機にも本発明を適用できる。さらに、プロジェクタ以外の機器(例えば、高輝度LEDを用いた照明装置)や、LED以外の熱源を備えた機器にも本発明を同様に適用できる。これらの機器において、熱伝導率の低い材料を用いる箇所は、機器の形状や使用方法(把持方法)によって異なることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態におけるプロジェクタ内蔵カメラの正面図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】プロジェクタモジュールをカメラ正面から見た断面図。
【図4】他の実施形態を示す図2に相当する断面図。
【図5】他のプロジェクタ内蔵カメラを示す図。
【図6】更に他のプロジェクタ内蔵カメラを示す図。
【符号の説明】
【0020】
30 プロジェクタモジュール
31 光源
38 放熱ブロック
100 カメラ本体
100A 前面カバー
100Ai 内カバー
100Ao 外カバー(金属カバー)
100B 背面カバー(金属カバー)
100Cl,100Cr 側面カバー(樹脂カバー)
100D 指掛け部
200 樹脂成型品
TP 熱伝導性両面接着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体内に設けられた熱源と、該熱源からの熱を機器本体の外面から外部に放熱するための放熱機構とを有し、前記機器本体の外面のうち、機器の基本的な把持方法で使用者の手が触れる部分の少なくとも一部を、他の部分よりも熱伝導率の低い材料で構成したことを特徴とする携帯電子機器。
【請求項2】
前記放熱機構は、前記熱源からの熱を前記他の部分に伝導する熱伝導部材であることを特徴とする請求項1に記載の携帯電子機器。
【請求項3】
画像を外部に投影するプロジェクタ部を有し、前記熱源は、該プロジェクタ部の光源であることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯電子機器。
【請求項4】
前記基本的な把持方法で使用者の手が触れる部分の少なくとも一部を非金属で構成し、前記他の部分を金属で構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の携帯電子機器。
【請求項5】
前記非金属は、樹脂またはゴムであることを特徴とする請求項4に記載の携帯電子機器。
【請求項6】
前記他の部分よりも熱伝導率の低い材料で構成される部分は、当該機器を両手で把持する際に両手が接触し得る両側面部を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の携帯電子機器。
【請求項7】
前記他の部分よりも熱伝導率の低い材料で構成される部分は、当該機器を把持し易くするために設けられた指掛け部を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の携帯電子機器。
【請求項8】
前記他の部分よりも熱伝導率の低い材料で構成される部分は、当該機器を両手で把持する際に両手が接触し得る両側面部、および当該機器を把持し易くするために設けられた指掛け部とを含み、前記両側面部および指掛け部は、予め一体成形により構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の携帯電子機器。
【請求項9】
前記熱源を有するモジュールを前記機器本体内に支持する支持部と、前記両側面部と、前記指掛け部とを一体に成形して成る構成部品を有することを特徴とする請求項8に記載の携帯電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−156912(P2009−156912A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331853(P2007−331853)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】