説明

携帯電子機器

【課題】筐体本体にストラップ係止部材が美観を損なうことなく設けられると共に落下時の衝撃に耐えうる剛性を備え、且つベルトストラップの保持機能を高めることができる携帯電子機器を提供する。
【解決手段】筐体8にストラップHSを係止するストラップ取付部11,12が設けられた携帯電子機器1であって、ストラップ取付部11,12は、板状基部、支柱C1,C2及び梁部Hを有するストラップ係止部材13と、開口部及び内壁を有するストラップ係止部材収容部Rと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機、電子手帳あるいはデジタルカメラなどの携帯電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、電子手帳あるいはデジタルカメラなどの各種携帯電子機器が提案されている。
このような携帯電子機器では、屋外で使用されることが多く、機能上片手で操作することも多いため常に滑落などの対策が必要であった。この対応策として被服に固定した紐に携帯電子機器を接続したり、ストラップを指に絡ませるなどの方法を取っていたが、操作性にも影響を与えるなど十分な対応策が得られていなかった。
その対応策の一つとして、紐状のストラップに代えてストラップベルトを使用した携帯電子機器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような携帯電子機器は、ストラップベルトを取付けるための一対のストラップ係止部材を、筐体本体の操作部裏面側の上下面に接着材などを使用して取り付けたもので、ストラップ係止部材は、裏面に接着面を有する支持板上面の両端に立設した一対の支柱頂部間に梁を連結した構成とされており、樹脂材により一体成型されている。
【特許文献1】特開2006−279907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に開示される携帯電子機器では、ストラップ係止部材が筐体本体の操作部裏面側に接着剤などを使用して取付けられているため、操作部裏面側から一対の支柱や支柱間に連結した梁が突出した構成となっている。
このように、筐体本体裏面側の上下面に一対のストラップ係止部材が突出して凹凸部を形成した構成では、筐体の美観が損なわれるだけでなく、筐体本体の外形が大型化し、落下した際に裏面側から突出したストラップ係止部材が床面などに当接して破損する問題を有していた。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、ストラップ係止部材が美観を損なうことなく筐体本体に設けられると共に落下時の衝撃に耐えうる剛性を備え、且つベルトストラップの保持機能を高めることができる携帯電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る携帯電子機器では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
本発明は、筐体にストラップを係止するストラップ取付部が設けられた携帯電子機器であって、前記ストラップ取付部は、板状基部、前記板状基部から立設する一対の支柱及び前記一対の支柱の頂部にそれぞれ連結する梁部を有するストラップ係止部材と、前記筐体の表面に開口して前記一対の支柱と前記梁部を収容する開口部及び前記開口部の内縁から筐体内部側に立設して前記板状基部に当接する内壁を有するストラップ係止部材収容部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、筐体の開口部内にストラップ係止部材が収容されてストラップを係止可能となる。したがって、筐体本体の表面が凹凸の少ないデザインが形成されるので外観を損なうことが抑えられる。
【0008】
また、前記ストラップ係止部材は、前記筐体よりも高剛性の強化樹脂からなることを特徴とする。
この発明によれば、筐体本体が耐衝撃力に強い樹脂で形成され、ストラップ係止部材が筐体本体よりも高剛性の強化樹脂で形成されるため、落下時の衝撃による筐体の破損を防止することができる。
【0009】
また、前記ストラップ係止部材は、ガラス繊維を60パーセント含有するナイロン樹脂からなることを特徴とする。
この発明によれば、より高い強度を得ることができる。
【0010】
また、前記一対の支柱は平行に形成された壁部であり、前記梁部が前記一対の壁部のそれぞれの中央に連結されることを特徴とする。
この発明によれば、前記ストラップ係止部材が平面視H型に形成されるので、落下時の衝撃に耐えうる高い剛性を備えることができる。
【0011】
また、前記内壁は、前記開口部の内縁全周に環状に立設し、前記環状基部に対して環状に密着することを特徴とする。
この発明によれば、開口部の内縁全周に環状に立設した内壁が環状基部に対して環状に密着しているので、筐体内部へ塵埃の侵入を防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ストラップ係止部材が筐体の表面が凹凸の無いデザインで形成されるので携帯電子機器の美観を損なうことが抑えられる。また、落下時の衝撃に耐えうる剛性が備えられるので、損傷を防止することができる。また、ベルトストラップの保持機能を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の携帯電子機器の実施形態について図を参照して説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る携帯電話機1の正面図及び側面図である。
携帯電話機1は、例えば強化樹脂材で平面視略矩形状に形成されたフロントケース5と、このフロントケース5の厚さ方向に重ねあわせ可能なリヤケース6と、両ケース5,6を図示しない連結部により密接接合して筐体となる薄型のケース本体8が構成されている。
なお、ケース本体8(両ケース5,6)は、ポリカーボネート(PC)やABS樹脂により形成される。
【0014】
フロントケース5は、その表面に、テンキーやカーソルキーなどからなる操作部2、下端部に配置されたマイク3、上端部に配置されたスピーカー4、並びに各種情報を表示する液晶ディスプレイや有機ディスプレイ等の表示部10を備えている。
【0015】
図2は、本発明の第一実施形態に係る携帯電話機1の背面側を示す斜視図であって、(a)はハンドストラップHSのない状態、(b)はハンドストラップHSを取り付けた状態を示す。
図3は、ストラップ取付部11,12を示す図であって、(a)は携帯電話機1の背面図、(b)はA−A断面図、(c)はB−B断面図である。
【0016】
ケース本体8のリヤケース6の上部にはカメラ7を備えると共に、リヤケース6の表面にはバッテリー収容部Bを挟んで上下面に略同一構成となる一対のストラップ取付部11,12を取り付けるための横長矩形状の開口部20がそれぞれ形成されている。
なお、本実施形態では、ストラップ取付部11,12を一対設けた例を説明するが、1つの場合であってもよい。
【0017】
ストラップ取付部11,12は、ベルト状のハンドストラップHSを係止するために横長形状に形成されたストラップホルダ13と、リヤケース6の表面に開口する一対の開口部20を含むストラップホルダ収容部Rとからなり、ストラップホルダ収容部Rにストラップホルダ13が収容保持されるようになっている。
【0018】
図4は、ストラップホルダ13を示す図であって、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
ストラップホルダ13は、開口部20よりも一回り小さく形成されており、リヤケース6の裏面側からストラップホルダ13をストラップホルダ収容部Rに挿入して開口部20の内部に収容保持されるように構成されている。
すなわち、ストラップホルダ13は、開口部20よりも大きな外形で形成されると共に断面コ字型のベース部材15を有しており、このベース部材15がリヤケース6の開口部20の内縁全周に環状に立設する内壁WTの下端縁にリヤケース6の裏面側から当接するように取り付けられる。
【0019】
また、ストラップホルダ13は、ベース部材15上面の両側から立設した幅広の壁部として形成される一対の支柱C1,C2と、これら板状に形成された支柱C1,C2の頂部中央にそれぞれ連結される梁部Hとを有しており、支柱C1,C2及び梁部Hがリヤケース6の開口部20の内側から外部に露出するよう配置される。
そして、ベース部材15、支柱C1,C2及び梁部Hにより形成される挿通孔16に対して、ベルト状のハンドストラップHSを挿通し、係止できるようになっている。
【0020】
なお、ストラップホルダ13には、ベース部材15の両端に、取付ネジSを挿通保持するためのボス18a,18bも一体的に設けられている。更に、支柱C1,C2とボス18a,18bの間には上方に開口する一対の嵌合溝M2が形成されている。
【0021】
また、ストラップホルダ13は、例えばナイロン樹脂(ガラス繊維含有)等の強化樹脂材により一体成型されている。特に、ストラップホルダ13を、ガラス繊維を60パーセント程度含有するナイロン樹脂からなる強化樹脂で構成することで、高い引張り強度を得ることができる。
【0022】
図5は、ストラップホルダ収容部Rを示す図であって、(a)はリヤケース6の内面を示す図、(b)はC−C断面図、(c)はD−D断面図である。
【0023】
リヤケース6には、一対の開口部20が形成されており、開口部20の開口内縁全周には内面側に向けて矩形環状枠体に形成された内壁WT(傾斜壁W1,垂直側壁W2)が立設している。
また、内壁WTの両外側には、ストラップホルダ13のボス18a,18bに形成された一対のネジ孔22に対応して、それぞれ雌ネジTが螺設されている。
【0024】
開口部20は、リヤケース6の内面側内縁に突設された内壁WTは、対向する長辺にそれぞれ形成された一対の傾斜壁W1と、対向する短辺にそれぞれ形成された垂直側壁W2とを有している。
また、傾斜壁W1の両端には、それぞれ垂直側壁W2との間に嵌合溝M1が形成されている。嵌合溝M1には、リヤケース6の内面側からストラップホルダ13を開口部20の内部に挿入した際に、一対の支柱C1,C2の両側縁が挿嵌されて、位置決めされるようになっている。
【0025】
図6はストラップ取付部11,12の組立図、図7はストラップ取付部11,12の部分断面斜視図及び部分斜視図である。
ストラップ取付部11,12の組立の際には、ストラップホルダ13をリヤケース6の内面側から開口部20内に挿入し、ベース部材15の上面を、ストラップホルダ収容部Rの内壁WT(傾斜壁W1,垂直側壁W2)の下端縁に密接状態で当接させる。
これより、支柱C1,C2の両側縁が嵌合溝M1に挿嵌され、支柱C1,C2の外側面は、垂直側壁W2の内壁に密接した状態となる。また、ストラップホルダ収容部Rの内壁WTの短辺側下端縁が、支柱C1,C2の両外壁面とベース部材15両端のボス18a,18bの間に形成された一対の嵌合溝M2にそれぞれ挿嵌される。
【0026】
これにより、支柱C1,C2の両側縁が嵌合溝M1に挿嵌されるので、ストラップホルダ13が位置決めされて、ベース部材15の端に形成されたボス18a,18bのネジ孔22をリヤケース6の内面に形成した雌ネジTに正対させることができる。
【0027】
また、支柱C1,C2の両側縁が嵌合溝M1に挿嵌されることで、開口部20の内縁全周に環状に立設した内壁WT(傾斜壁W1,垂直側壁W2)の下端周縁を、ベース部材15の上面に当接させて密着する。更に、支柱C1,C2の外壁面が開口部20の短辺側の垂直側壁W2の内壁面に密接した状態となる。
これにより、ケース本体8内部への塵埃等の侵入を防止することができる。
【0028】
そして、ボス18a,18bのネジ孔22から取付ネジSを挿通し、正対するリヤケース6内面側の雌ネジTに締着することで、ストラップホルダ13の支柱C1,C2及び梁部Hがストラップホルダ収容部Rの開口部20に内側に収容され、ストラップ取付部11,12の組立てが完成する。
【0029】
ストラップホルダ13がストラップホルダ収容部Rに組込まれた状態では、図7(a)、(b)に示すように、支柱C1,C2の頂部ないし梁部Hが、リヤケース6の表面から僅かに突出した状態(突出量h)となる。このようにして、リヤケース6の長手方向の両端側に形成された一対の開口部20の内部に一対の梁部Hが露出するので、この一対の梁部Hの間にハンドストラップHSが張設できる。
また、ストラップホルダ13の左右にリアケース6から僅かに突出した凸部(不図示)を設けることで、より強化することもできる。
【0030】
したがって、ケース本体8のリヤケース6の表面が凹凸の無いデザインに形成されるので外観を損なうことながく、しかもストラップホルダ13は、落下時の衝撃から保護されるだけでなく、強度的に耐え得る剛性を備えることができる。
【0031】
更に、ストラップホルダ13は、開口部20の内部に収容されて梁部Hがリヤケース6の表面と略面一な低い位置に設けられるので、ハンドストラップHSをリヤケース6の表面に近接した状態で張設される。したがって、ハンドストラップHSとリヤケース6の表面の間に片手を差し込んで保持した際に、ハンドストラップHSの張力により携帯電話機1を片手で確実に保持することができ、ハンドストラップHSの保持機能を高めることができる。
【0032】
上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0033】
例えば、本実施形態では、ストレート型(棒状)の携帯電話機について説明したが、これに限らず、開閉型、スライド型、リボルバ型等にも適用することができる。
また、携帯電話機以外にも、例えば、PDA,デジタルカメラなどの携帯電子機器に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第一実施形態に係る携帯電話機の正面図及び側面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る携帯電話機1の背面側を示す斜視図である。
【図3】ストラップ取付部を示す図である。
【図4】ストラップホルダを示す図である。
【図5】ストラップホルダ収容部を示す図である。
【図6】ストラップ取付部の組立図である。
【図7】ストラップ取付部の部分断面斜視図及び部分斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1…携帯電話機(携帯電子機器)、 8…ケース本体(筐体)、 11,12…ストラップ取付部、 13…ストラップホルダ(ストラップ係止部材)、 15…ベース部材(板状基部)、 20…開口部、 C1,C2…支柱、 H…梁部、 WT…内壁、 R…ストラップ係止部材収容部、 HS…ハンドストラップ(ストラップ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体にストラップを係止するストラップ取付部が設けられた携帯電子機器であって、
前記ストラップ取付部は、
板状基部、前記板状基部から立設する一対の支柱及び前記一対の支柱の頂部にそれぞれ連結する梁部を有するストラップ係止部材と、
前記筐体の表面に開口して前記一対の支柱と前記梁部を収容する開口部及び前記開口部の内縁から筐体内部側に立設して前記板状基部に当接する内壁を有するストラップ係止部材収容部と、
を備えることを特徴とする携帯電子機器。
【請求項2】
前記ストラップ係止部材は、前記筐体よりも高剛性の強化樹脂からなることを特徴する請求項1に記載の携帯電子機器。
【請求項3】
前記ストラップ係止部材は、ガラス繊維を60パーセント含有するナイロン樹脂からなることを特徴とする請求項2に記載の携帯電子機器。
【請求項4】
前記一対の支柱は平行に形成された壁部であり、前記梁部が前記一対の壁部のそれぞれの中央に連結されることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の携帯電子機器。
【請求項5】
前記内壁は、前記開口部の内縁全周に環状に立設し、前記板状基部に対して環状に密着することを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の携帯電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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