説明

携帯電話機およびスケール表示方法

【課題】携帯電話機において簡単な処理でスケール表示を実現する。
【解決手段】携帯電話機10は、撮影素子1と、カメラレンズ2と、レンズ2を移動させて合焦させるAF処理部3と、レンズ位置の情報とレンズから被写体までの距離の情報とを対応付けて記憶する距離テーブル8と、レンズから被写体までの距離の情報とスケールの単位長の情報とを対応付けて記憶するサイズテーブル9と、合焦状態になったときのレンズ2の位置情報を取得し、距離テーブル8を参照してレンズ位置に対応する距離を決定する距離決定部5と、サイズテーブル9を参照して、距離に対応するスケールの単位長を決定するサイズ決定部6と、サイズ決定部6が決定した単位長のスケールを、撮影素子1が撮影した被写体画像と共に表示部40に表示させるCPU4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ付きの携帯電話機において、被写体の大きさに合わせたスケールを表示する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機では、カメラで被写体を撮影しても、被写体の大きさを確認することは不可能だった。
従来、デジタルカメラやビデオカメラでは、被写体の大きさの目安となるスケールを表示する技術が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−102007号公報
【特許文献2】特開2002−185823号公報
【特許文献3】特開2008−078828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、特許文献2、特許文献3に開示された技術では、被写体との距離を計算し、被写体との距離や画角などから被写体の大きさに対応したスケール長を計算する必要があり、また被写体が移動する度に計算をやり直す必要があった。携帯電話機では、CPUの処理能力が限られているので、特許文献1、特許文献2、特許文献3に開示された技術を適用する場合には、携帯電話機でも容易に実現可能なように処理を簡略化する必要がある。
【0005】
また、特許文献1に開示された技術では、スケール画像情報をカメラ内部のリンクテーブルに記録しているが、カメラ外部のアプリケーションではスケールを表示できないという問題点があった。
一方、特許文献3に開示された技術では、JPEGファイルのヘッダにスケール表示のための情報を格納し、外部のアプリケーションプログラムによって撮影画像を再生するときにJPEGファイルのヘッダから情報を読み出してスケール表示を行うようにしている。しかしながら、この特許文献3に開示された技術では、既存のアプリケーションでスケール表示ができないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、携帯電話機において簡単な処理でスケール表示を実現することを目的とする。
また、本発明は、既存のアプリケーションでスケール表示を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の携帯電話機は、撮像手段と、この撮像手段に被写体像を結像させるレンズと、このレンズを移動させて合焦させる自動合焦手段と、レンズ位置の情報とレンズから被写体までの距離の情報とを対応付けて予め記憶する距離テーブルと、レンズから被写体までの距離の情報とスケールの単位長の情報とを対応付けて予め記憶するサイズテーブルと、前記自動合焦手段によって合焦状態になったときのレンズの位置情報を取得し、前記距離テーブルを参照してレンズ位置に対応する距離を決定する距離決定手段と、前記サイズテーブルを参照して、前記距離決定手段が決定した距離に対応するスケールの単位長を決定するサイズ決定手段と、このサイズ決定手段が決定した単位長のスケールを、前記撮像手段が撮影した被写体画像と共に表示する表示手段とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の携帯電話機のスケール表示方法は、撮像手段に被写体像を結像させるレンズを、移動させて合焦させる自動合焦ステップと、前記自動合焦ステップによって合焦状態になったときのレンズの位置情報を取得し、レンズ位置の情報とレンズから被写体までの距離の情報とを対応付けて予め記憶する距離テーブルを参照して、レンズ位置に対応する距離を決定する距離決定ステップと、レンズから被写体までの距離の情報とスケールの単位長の情報とを対応付けて予め記憶するサイズテーブルを参照して、前記距離決定ステップで決定した距離に対応するスケールの単位長を決定するサイズ決定ステップと、このサイズ決定ステップで決定した単位長のスケールを、前記撮像手段で撮影した被写体画像と共に表示する表示ステップとを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スケールを表示するために、レンズの位置情報に対応する距離の情報を距離テーブルから取得し、距離に対応するスケールの単位長の情報をサイズテーブルから取得すればよいので、携帯電話機において簡単な処理でスケール表示を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る携帯電話機の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る携帯電話機の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるカメラレンズのレンズ位置情報について説明する図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における距離テーブルの構成を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態におけるサイズテーブルの構成を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態におけるスケール表示例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る携帯電話機の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る携帯電話機の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る携帯電話機の構成を示すブロック図である。
携帯電話機10は、被写体を撮影するカメラ部20と、携帯電話機全体を制御する制御部30と、各種の情報を表示するための表示部40と、キーボード等からなる操作部50と、基地局(不図示)との通信を行うための無線通信部60とを有する。
【0012】
カメラ部20は、CCDなどの撮像素子1と、撮像素子1に被写体像を結像させるカメラレンズ2と、コントラスト検出方式によってカメラレンズ2の焦点合わせを行う自動合焦手段となるAF(オートフォーカス)処理部3とから構成される。
【0013】
制御部30は、CPU4と、情報記憶のための記憶手段であるメモリ7とを有する。CPU4は、メモリ7に格納されているプログラムに従って処理を行い、カメラ部20と表示部40と無線通信部60とを制御する。また、CPU4は、プログラムに従って処理を行うことにより、カメラレンズ2から被写体までの距離を決定する距離決定部5、スケールの単位長を決定するサイズ決定部6、表示処理を行う表示手段、画像データをメモリ7に保存する保存処理手段、およびユーザへの通知を行う通知手段として動作する。メモリ7は、距離テーブル8と、サイズテーブル9とを有する。なお、図1では、携帯電話機として必要なマイクロホンやスピーカについては記載を省略している。
【0014】
本実施の形態の携帯電話機10の動作を図2のフローチャートを参照して説明する。携帯電話機10のユーザが操作部50を操作して、被写体サイズ測定用の機能をオンすると(図2ステップS001)、CPU4は、カメラ部20を制御し、カメラ部20の撮像素子1が撮影した被写体画像を取得して、取得した被写体画像を表示部40に表示させ、プレビュー表示を開始する(ステップS002)。
【0015】
CPU4は、カメラ部20を制御してAF処理部3の動作を開始させる。AF処理部3は、撮像素子1が撮影した被写体画像のコントラストを検出して、コントラストが最大になる位置にカメラレンズ2を移動させる。そして、AF処理部3は、合焦可否情報をCPU4に通知する(ステップS003)。このとき、AF処理部3は、被写体画像のコントラストが十分に高く、コントラストが最大になる位置にカメラレンズ2を移動させることができる場合には、合焦可能とし、被写体画像のコントラストが低く、コントラストが最大になる位置にカメラレンズ2を移動させることが難しい場合には、合焦不可能とする。
【0016】
CPU4は、AF処理部3から通知された合焦可否情報に基づいてカメラレンズ2の合焦状態を判断する(ステップS004)。CPU4は、合焦していると判断した場合、カメラ部20からレンズ位置情報を取得する(ステップS005)。また、CPU4は、合焦していないと判断した場合、被写体との距離の計測に失敗した旨のメッセージを表示部40に表示させる(ステップS009)。
【0017】
距離決定部5は、ステップS005においてレンズ位置情報を取得した後、距離テーブル8を参照して、カメラレンズ2から被写体までの距離Xを決定する(ステップS006)。距離テーブル8には、図3に示すような複数段階のレンズ位置L0〜LNの情報とカメラレンズ2から被写体までの距離X0〜XNの情報とが対応付けられて予め登録されている。このときの距離テーブル8の構成を図4に示す。距離決定部5は、、カメラ部20から取得したレンズ位置情報に対応する距離Xの情報を距離テーブル8から取得することで、カメラレンズ2から被写体までの距離Xを決定する。
【0018】
続いて、サイズ決定部6は、サイズテーブル9を参照して、距離決定部5が決定した距離Xに対応するスケールの単位長(1目盛の長さ)zを決定する(ステップS007)。図5に示すように、サイズテーブル9には、カメラレンズ2から被写体までの距離X0〜XNの情報とスケールの単位長z0〜zNの情報とが対応付けられて予め登録されている。サイズ決定部6は、距離決定部5が決定した距離Xに対応するスケールの単位長zの情報をサイズテーブル9から取得する。こうして、例えば5cm、10cm、1mといった、スケールの単位長zを決定することができる。
【0019】
CPU4は、ステップS007で決定した単位長zのスケールを被写体画像と共に表示部40に表示させる(ステップS008)。図6にスケール表示例を示す。図6における100は被写体画像、101はスケールである。
【0020】
以上のように、本実施の形態では、日頃多くの人が携帯している携帯電話機によって容易に被写体までの距離を求め、被写体の縦横の大きさを測ることを可能にする。また、本実施の形態では、撮影した被写体画像の縦横の脇に被写体の大きさに合わせたスケールを表示することにより、被写体の大きさを把握し易くすることができる。そして、本実施の形態では、レンズ位置情報に対応する距離の情報を距離テーブルから取得し、距離に対応するスケールの単位長の情報をサイズテーブルから取得すればよいので、携帯電話機において簡単な処理でスケール表示を実現することができる。
なお、被写体が動いたときには、ステップS003以降の処理を再実行すればよい。
【0021】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図7は本発明の第2の実施の形態に係る携帯電話機の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、第1の実施の形態の携帯電話機の構成に対して、スケール表示した被写体画像を記憶する画像格納部11を追加したことを特徴とする。
【0022】
本実施の形態の携帯電話機10の動作を図8のフローチャートを参照して説明する。ステップS008までの動作は第1の実施の形態と同じである。CPU4は、被写体画像のデータをメモリ7の画像格納部11に保存する際に、スケール表示を保存するか否かを携帯電話機10のユーザに確認し(ステップS010)、ユーザからスケール表示の保存を指示された場合には、ステップS008で表示した被写体画像とスケールとを合成した画像のデータを画像格納部11に保存する(ステップS011)。また、CPU4は、ユーザからの指示によりスケール表示を保存しない場合、ステップS008で表示した被写体画像のデータを画像格納部11に保存する(ステップS012)。
【0023】
こうして、本実施の形態では、ユーザの指示に応じて被写体画像とスケールとを合成した画像のデータを画像格納部11に保存するようにしたので、携帯電話機においてスケール表示を後で確認できるだけでなく、画像データを外部に出力することで既存のアプリケーションでもスケール表示を確認することができる。
【0024】
なお、第1、第2の実施の形態の制御部30は、上記のとおりCPU、メモリおよびインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、メモリに格納されたプログラムに従って第1、第2の実施の形態で説明した処理を実行する。
【0025】
上記の実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0026】
(付記1)撮像手段と、この撮像手段に被写体像を結像させるレンズと、このレンズを移動させて合焦させる自動合焦手段と、レンズ位置の情報とレンズから被写体までの距離の情報とを対応付けて予め記憶する距離テーブルと、レンズから被写体までの距離の情報とスケールの単位長の情報とを対応付けて予め記憶するサイズテーブルと、自動合焦手段によって合焦状態になったときのレンズの位置情報を取得し、距離テーブルを参照してレンズ位置に対応する距離を決定する距離決定手段と、サイズテーブルを参照して、距離決定手段が決定した距離に対応するスケールの単位長を決定するサイズ決定手段と、このサイズ決定手段が決定した単位長のスケールを、撮像手段が撮影した被写体画像と共に表示する表示手段とを備えることを特徴とする携帯電話機。
【0027】
(付記2)付記1記載の携帯電話機において、さらに、画像データを記憶する記憶手段と、ユーザの指示に応じて被写体画像とスケールとを合成した画像のデータを記憶手段に保存する保存処理手段とを備えることを特徴とする携帯電話機。
【0028】
(付記3)付記1または付記2記載の携帯電話機において、さらに、レンズの非合焦時に、被写体との距離の計測に失敗したことをユーザに通知する通知手段を備えることを特徴とする携帯電話機。
【0029】
(付記4)撮像手段に被写体像を結像させるレンズを、移動させて合焦させる自動合焦ステップと、自動合焦ステップによって合焦状態になったときのレンズの位置情報を取得し、レンズ位置の情報とレンズから被写体までの距離の情報とを対応付けて予め記憶する距離テーブルを参照して、レンズ位置に対応する距離を決定する距離決定ステップと、レンズから被写体までの距離の情報とスケールの単位長の情報とを対応付けて予め記憶するサイズテーブルを参照して、距離決定ステップで決定した距離に対応するスケールの単位長を決定するサイズ決定ステップと、このサイズ決定ステップで決定した単位長のスケールを、撮像手段で撮影した被写体画像と共に表示する表示ステップとを備えることを特徴とする携帯電話機のスケール表示方法。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、カメラ付きの携帯電話機において、被写体の大きさに合わせたスケールを表示する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1…撮像素子、2…カメラレンズ、3…AF処理部、4…CPU、5…距離決定部、6…サイズ決定部、7…メモリ、8…距離テーブル、9…サイズテーブル、10…携帯電話機、11…画像格納部、20…カメラ部、30…制御部、40…表示部、50…操作部、60…無線通信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段と、
この撮像手段に被写体像を結像させるレンズと、
このレンズを移動させて合焦させる自動合焦手段と、
レンズ位置の情報とレンズから被写体までの距離の情報とを対応付けて予め記憶する距離テーブルと、
レンズから被写体までの距離の情報とスケールの単位長の情報とを対応付けて予め記憶するサイズテーブルと、
前記自動合焦手段によって合焦状態になったときのレンズの位置情報を取得し、前記距離テーブルを参照してレンズ位置に対応する距離を決定する距離決定手段と、
前記サイズテーブルを参照して、前記距離決定手段が決定した距離に対応するスケールの単位長を決定するサイズ決定手段と、
このサイズ決定手段が決定した単位長のスケールを、前記撮像手段が撮影した被写体画像と共に表示する表示手段とを備えることを特徴とする携帯電話機。
【請求項2】
請求項1記載の携帯電話機において、
さらに、画像データを記憶する記憶手段と、
ユーザの指示に応じて前記被写体画像と前記スケールとを合成した画像のデータを前記記憶手段に保存する保存処理手段とを備えることを特徴とする携帯電話機。
【請求項3】
請求項1または2記載の携帯電話機において、
さらに、レンズの非合焦時に、被写体との距離の計測に失敗したことをユーザに通知する通知手段を備えることを特徴とする携帯電話機。
【請求項4】
撮像手段に被写体像を結像させるレンズを、移動させて合焦させる自動合焦ステップと、
前記自動合焦ステップによって合焦状態になったときのレンズの位置情報を取得し、レンズ位置の情報とレンズから被写体までの距離の情報とを対応付けて予め記憶する距離テーブルを参照して、レンズ位置に対応する距離を決定する距離決定ステップと、
レンズから被写体までの距離の情報とスケールの単位長の情報とを対応付けて予め記憶するサイズテーブルを参照して、前記距離決定ステップで決定した距離に対応するスケールの単位長を決定するサイズ決定ステップと、
このサイズ決定ステップで決定した単位長のスケールを、前記撮像手段で撮影した被写体画像と共に表示する表示ステップとを備えることを特徴とする携帯電話機のスケール表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−199560(P2011−199560A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63685(P2010−63685)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】