説明

携帯電話機

【課題】 緊急機関への通報時に操作ミスや妨害によって通信が遮断されることを防止できる緊急通報手段を提供する。
【解決手段】 携帯電話機から緊急機関へ音声情報と位置算出情報を平行して送信している状態で、音声通信回線が切断されてから所定の時間以内に電源OFFの操作を受けると、液晶画面やスピーカなどからの出力やキー操作を制限して、あたかも電源OFFの状態のように見せかけながら、制御部や送受信部の電源を切らず、位置算出情報の送信を継続する手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯電話機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機が普及するに伴って、携帯電話機からの緊急通報が急増している。従来は、自宅の電話機もしくは近くの公衆電話からの緊急通報が多かったが、携帯電話機の所持者が事件・事故に遭遇すると、直ちに携帯電話機から緊急機関へ通報できるようになった。ところが、携帯電話機から通報した通報者自身が事件・事故の発生現場周辺の地理に詳しくない場合、正確な情報が通報できないことから、状況把握に時間を要することがある。また、事件・事故に遭遇時に通報者があわててしまい、氏名や現場の位置を詳しく伝えないままに電話を切ってしまうことがある。そのため、緊急車両が到着するまでの平均時間が以前よりも長くなっている。そこで、携帯電話機からの緊急通報時における、通報者の位置情報を通知する機能の整備が進められている。例えば、携帯電話機から緊急通報が行われた際、携帯電話機が位置情報を測位する機能を設けて、その位置情報を緊急機関に通知するというものである。
【0003】
しかしながら、従来の携帯電話機における位置情報の測位機能は、本体の電源がついた状態でのみ実行可能であり、電源が切られた状態では実行できない。位置情報の測位には時間がかかる場合があり、その間に携帯電話機の電源が切られると、位置情報を通知できなくなる。これは例えば、犯罪に巻き込まれた際、携帯電話機で緊急機関に通報中に電源が故意に切られたとき、位置情報を伝えることができないという状況が考えられる。
【0004】
そこで、簡単な操作で緊急情報の発信を開始することができ、緊急情報の発信時には第三者にそうと気付かれないようにし、気付かれても簡単には停止することができないような携帯電話機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に示されている発明では、携帯電話機に緊急通報用アプリケーションを備える。緊急通報用アプリケーションは特定のキー操作によって起動され、起動時にはあらかじめ設定した緊急時通報先に通信動作を開始する。通信動作が行われている期間中は、表示画面を待受け画面もしくは電源OFF時の画面と区別できない状態にする。また、緊急通報用アプリケーションは特定の終了キーがあるときのみ終了し、電源OFFのキー操作があっても停止せずに通信動作を継続する。この緊急通報用アプリケーションによる通報内容は、外部からダウンロードすることができ、ユーザ自ら細かく設定することもできる。通報内容の設定候補として、警報音の鳴動や現在位置の通知、自宅へ緊急メールの送信が挙げられており、このいずれか1つ、あるいは複数を併用することを選択し、緊急通報アプリケーションをユーザの要望に応じてカスタマイズする構成となっている。
【特許文献1】特開2005−341302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
緊急情報の発信時に、待受け画面や電源OFFと同じ状態の画面にすることで、第三者に緊急情報を発信していると気付かれないようにすることは、緊急情報の通信を第三者の妨害を受けることなく完了させるために有効である。しかし、上記特許文献1では、あらかじめ緊急時の連絡先や通報内容を設定しておく必要がある。そのため、緊急時の連絡先や通報内容を設定していないと、緊急通報アプリケーションを有効に利用することができない問題がある。また、緊急時の発生状況により、あらかじめ設定した連絡先とその時に連絡したい連絡先とが一致しない場合は意味をなさないうえに、通報内容もあらかじめ設定した通報内容が適しているとは限らないという問題がある。
【0007】
さらに、緊急通報アプリケーションの起動と終了時に特定のキー操作を行う必要があり、緊急時のあわてている状況下での特定のキー操作はうまく行われない可能性があるといった問題がある。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、緊急時に特別なキー操作をユーザに課さず、事前に特別な設定をしていなくても、通報操作後の位置情報通信を第三者の妨害によって遮断されることを防止できる携帯電話機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明による携帯電話機は、緊急機関の情報端末との間で音声通信ネットワークおよびデータ通信ネットワークを用いて緊急通信を行うことができる携帯電話機であって、前記音声通信ネットワークを用いて前記緊急機関の情報端末との間で音声情報を送受信し、前記データ通信ネットワークを用いて前記緊急機関の情報端末に位置算出情報を送信している状態で、前記音声通信ネットワークが切断されてから所定の時間以内に電源OFFの操作を受けた場合、少なくとも表示画面を制限して擬似的に電源OFFの状態のように設定し、内部制御部および送受信部の電源を維持させて前記位置算出情報の送信を継続することを特徴としている。
【0010】
また、本発明による携帯電話機は、緊急機関の情報端末との間で音声通信ネットワークおよびデータ通信ネットワークを用いて緊急通信を行う送受信部を有し、前記音声通信ネットワークを用いて前記緊急機関の情報端末との間で音声情報を送受信した後、前記音声通信ネットワークが切断されてから所定の時間以内に電源OFFの操作を受けた場合、少なくとも表示画面を表示させずに、内部制御部および送受信部の電源を維持させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の携帯電話機によれば、緊急時に特別なキー操作をユーザに課さず、事前に特別な設定をしていなくても、通報操作後の位置情報の通信を第三者の妨害によって遮断されることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る携帯電話機の外観を概略的に示した図である。図1(a)に示すように、携帯電話機1の前面には、キー2と、液晶画面3と、通話用スピーカ4と、マイクロホン5とが設けられている。また、図1(b)に示すように、背面にはLED6と、案内用スピーカ7が設けられている。
【0014】
携帯電話機1の電源が入れられた状態で、キー2のいずれかが押下されると案内用スピーカ7からキー操作音が出力され、キー2のバックライトと液晶画面3が一定時間表示される。また着信時には、液晶画面3、LED6、およびキー2のバックライトが表示され、案内用スピーカ7から音が出力される。このとき、通話ボタン2aが押下されると通話が開始され、通話開始後に終話ボタン2bが押下されると通話回線が切れる。
【0015】
図2は、本発明の実施形態に係る携帯電話機の構成を示すブロック図である。本発明の実施形態に係る携帯電話機の構成を、図1と図2を用いて説明する。図2に示すように携帯電話機1は、制御部51を備えている。制御部51は、携帯電話機1全体の制御を行う。また、制御部51には音声信号処理部52、送受信部53、GPS受信部54、記憶部55、表示部56、操作部57、計時部58が接続されている。
【0016】
音声信号処理部52は、図1の通話用スピーカ4やマイクロホン5や案内用スピーカ7などを用いて音声信号の入出力を行う。送受信部53は、図示しない基地局と交信するアンテナを含み、無線信号の送受信を行う。GPS受信部54はGPS衛星の電波を受信するGPS用アンテナを含み、GPS衛星からの電波発射時刻情報を含んだ電波を受信する。記憶部55は、例えばフラッシュメモリのような書き換え可能な不揮発性メモリで構成され、着信音量、電話帳データのような各種の設定情報や、アプリケーションなどが格納される。また、記憶部55には緊急時に発呼するときに使用する緊急機関用の電話番号が記憶される。それに加えて、操作部57によって入力(電話帳データからの選択も含む)されたものを緊急時の発呼情報として記憶することができる。表示部56は、図1の液晶画面3やLED6やキー2のバックライト(図示せず)などを用いて携帯電話機1の動作状況や操作の案内、受信メッセージなどをユーザに示す。操作部57は、キー2(電話番号を入力するためのテンキーと、携帯電話機1への指令を制御部51に入力するためのファンクションキーなどを含む)を用いて入力された情報を、制御部51に送信する。計時部58は、制御部51からの現在時刻の送信命令を受信すると、現在時刻を制御部51に送信する。また、計時部58によって、ある時刻からの経過時間を測定することもできる。
【0017】
図3は、本発明の実施形態に係る携帯電話機1と緊急機関との間のネットワーク構成を示した一例である。この実施形態では、音声通話による緊急通報を行うネットワークと、位置情報を通知するネットワークとによって構成されている。
【0018】
ここで、図3と図2を用いて、携帯電話機1からの音声情報と位置情報を緊急機関に送信する動作を説明する。
【0019】
操作部57から緊急発信の操作(操作方法は後述する)がなされたとき、制御部51は送受信部53から基地局102を通じて加入者交換機106へ発呼信号とダイヤル信号を発信する。携帯電話機1と基地局102の間に通話チャネルが確立すると、加入者交換機106、音声回線ネットワーク107、関門交換機108、および公衆電話交換網109(以下、音声通信ネットワークと称する)を通じて発呼先の緊急機関103内の電話機104に繋がると、電話機104に着信呼び出しがかかる。
【0020】
発呼先の緊急機関103の電話機104からこの着信呼び出しに応えると、通話が開始される。すなわち、音声信号処理部52から入力された音声情報は、送受信部53で変調され、音声通信ネットワークを通じて緊急機関103内の電話機104まで送信される。
【0021】
一方、制御部51によって発信操作(操作方法は後述する)が行われたことが検出されると、現在位置の測位を開始する。制御部51は、現在位置を測位するためにGPS衛星101が発信する電波発信時刻情報を含んだ電波を利用する。制御部51は、GPS受信部54を通じて複数のGPS衛星101から受け取った電波発信時刻情報とその電波の到着時刻情報とを、送受信部53、基地局102、加入者交換機106を介して測位サーバ110に送信する。測位サーバ110は、複数のGPS衛星の電波発信時刻情報と電波到着時刻情報を用いて、高精度な計算方法で発信元の携帯電話機1の位置を算出する。なお、携帯電話機1がGPS衛星101からの電波を受信できない場合、基地局102からの情報(例えば、複数基地局からの同期信号や、接続している基地局のセルID)によって測位を行うこともできる。
【0022】
測位サーバ110に接続される通報サーバ111は、パケット交換ネットワーク112、広域イーサネット113(以下、データ通信ネットワークと称する)を通じて音声通話が接続された緊急機関103の位置情報受信装置105に、測位サーバ110で測位された位置情報と電話番号を送信する。緊急機関103では、電話番号を基にして、受信した携帯電話機1の位置情報と音声情報とを対応づけることができる。
【0023】
また、緊急機関103では、通報サーバ111を通じて、携帯電話機1に現在位置情報の通知を要求することもできる。
【0024】
なお、図3では、緊急機関103への音声情報と位置情報を通知するために音声通信ネットワークおよびデータ通信ネットワークを示したが、位置情報と音声情報を受信することができる装置があれば緊急機関でなくても良い。例えば、位置情報と音声情報を受信することができる、携帯電話機などを用いても良い。
【0025】
次に、携帯電話機1の電話番号入力操作、発信操作の動作を、図1、図2および図4乃至図6を用いて説明する。
【0026】
図4は、制御部51が操作部57(キー2の操作)からの発信操作を検出して、発信するまでのフローチャートである。制御部51が入力された電話番号にもとづく発信操作を検出したとき(S201)、その電話番号と記憶部55に保持している緊急機関用の電話番号とのマッチングを行い(S202)、緊急機関用の電話番号に発信するのか、緊急機関用以外の一般の電話番号に発信するのか判断する(S203)。入力された電話番号が緊急機関用の電話番号であると判断されたときには、緊急機関用の電話であるという情報を記憶部55に記憶し(S204)、緊急機関への電話であるという緊急呼フラグをつけた信号を送受信部53から発信する。緊急機関用ではない一般の電話番号であるときは、従来の動作と同様であるので、その説明は省略する(S205)。ユーザが行う操作は、電話番号を入力して発信するだけであり、従来の携帯電話機からの発信操作と同じ操作である。
【0027】
図5は、ステップS203で緊急機関の電話番号への発信操作が検出された後の制御部51の動作を表すフローチャートである。また図6は、緊急機関への発信がされた後、電源OFFまたは擬似的な電源OFF状態になるまでの画面遷移を示している。図5のステップ(a)乃至(f)と、図6の画面(a)乃至(f)は対応している。図1乃至図3と、図5、図6を用いて、緊急機関103への発信後、電源OFFまたは擬似的な電源OFF状態になるまでの制御部51の動作を説明する。
【0028】
図6(a)の発信画面P401が液晶画面3に表示されている状態で、携帯電話機1の制御部51が操作部57による発信操作を検出すると、送受信部53から発呼信号とダイヤル信号を基地局102に発信する(S251)。このとき、液晶画面3には図6(b)の発信中画面P402が表示される。発信を開始した後、制御部51は現在位置の測位を開始する(S253)。
【0029】
その後、上述した音声通信ネットワークを用いた通話手順で、緊急機関103からの応答信号が送信され、制御部51が送受信部53を通じて緊急機関103からの応答信号を受信すると、緊急機関103と携帯電話機1との間で通話が開始される(S255)。このとき、液晶画面3には図6(c)の通話中画面P403が表示される。
【0030】
また、制御部51が、GPS受信部54を通じてGPS衛星101から電波発信時刻情報を受信し、上述したデータ通信ネットワークを用いたデータ通信手順で、測位サーバ110によって算出された位置データが緊急機関103内の位置情報受信装置105まで送信されると、位置測位が終了した状態となる(S257)。
【0031】
なお、図5のフローでは、通話開始前に位置測位を開始しているが、通話開始後に位置測位を開始しても良い。また、図5のフローでは、位置測位終了前に通話を開始しているが、位置測位終了後に通話開始となる場合もある。つまり、図6の発信画面P401の表示中に発信操作がされた瞬間から、発信中画面P402もしくは通話中画面P403が表示されている間のどこかのタイミングで位置測位が行われれば良い。
【0032】
制御部51が緊急機関103の電話番号に発信してから(S251)、制御部51は、操作部57によって終話操作(例えば、キー2bの押下)もしくは電源OFF操作(例えば、キー2bの一定時間以上の押下)が入力されないかチェックする(S252、S254、S256、S258)。
【0033】
制御部51が終話操作を検出した場合(S301のNo)、計時部58を制御し、終話操作からの経過時間を測定するためのタイマーを起動する(S302)と共に、記憶部55に発信した緊急機関の電話番号を記憶する(S303)。そして、制御部51は、液晶画面3に図6(d)の待受け画面P404を表示する(S304)。このとき、位置情報の通信が完了していなければ、位置情報の通信を継続することができる。
【0034】
計時部58のタイマーが起動した後、制御部51が電源OFF操作を検出すると(S305のYes)、前回の緊急機関の電話番号への現在位置情報が通知済みか未通知かを記憶部55に記憶する(S306)。そして、制御部51は、計時部58のタイマーによって、終話操作からの経過時間を確認する(S307)。もし、終話操作から所定時間が経過していれば、電源を切る(S308)。このとき、液晶画面3には図6(e)の電源OFF画面P405が表示される。しかし、所定時間の経過前に電源OFF操作を受けると、制御部51は擬似電源OFFの状態とする(S309)。このときには、液晶画面3には図6(f)の画面P406が表示される。
【0035】
擬似電源OFFの状態とは、キー2が押下されても着信があっても液晶画面3、LED6、およびキー2のバックライトなどは消灯されたままで、電源ON以外のキー操作は無効となり、通話用スピーカ4と案内用スピーカ7からは音が出力されない状態であり、あたかも電源が切られたかのような状態である。そのため、擬似電源OFFの状態の画面P406は電源OFF状態の画面P405と同じく、画面表示が消灯したブラック画面となる。しかし、制御部51、送受信部53、GPS受信部54、および記憶部55は起動したままであり、ユーザには電源OFFの状態と見せかけながらも、通信や処理を行うことができる状態である。
【0036】
上述したように、ユーザが緊急機関へ発信してからしばらく時間が経過すると、位置情報が緊急機関に通知される。そこで、制御部51が終話操作を検出すると、計時部58のタイマーを起動し、電源OFF操作が終話操作から所定の時間内に行われたか否かを確認する(S307)。そして、一定時間の経過前の電源OFF操作では擬似電源OFFの状態にして通信を継続し、一定時間経過後の電源OFF操作では電源を切断する。
【0037】
なお、擬似電源OFFへの移行条件として、終話操作からの経過時間が所定時間以内という条件を挙げたが、これは、終話操作からの経過時間に限定せず、音声通話接続の切断からの経過時間でも良い。また、終話操作後に待受け画面が表示(S304)されてからの経過時間でも良いし、発信した緊急機関番号を記憶(S303)してからの経過時間でも良いし。
【0038】
また、終話操作から所定の時間内に電源OFF操作を受けた場合だけでなく、電話の発信後に、制御部51が終話操作を検出することなく電源OFF操作を検出した場合(S301のYes)にも、擬似電源OFFの状態に移行する(S309)。
【0039】
図7は、擬似電源OFFの状態(S451)で、位置情報を再送信する動作を示すフローチャートである。
【0040】
制御部51は、擬似電源OFFの状態になる前に発信した緊急機関の電話番号を記憶部55に記憶しているかを調べ(S452)、また位置情報の通知状態(通知済みか未通知か)を記憶部55に記憶しているか調べる(S453)。どちらも記憶部55に記憶されていて、位置情報が未通知の場合(S454のYes)、記憶部55に記憶した緊急機関の電話番号を用いて再度その緊急機関103に自動的に発信する(S455)。
【0041】
制御部51は、自動発信によって通話状態になった場合、携帯電話機1のマイクロホン5から入力される音は緊急機関103に送信されるが、緊急機関103からの音声は携帯電話機1のスピーカ4から出力しないように制御する。そして制御部51は、自動発信後に、GPS衛星101からの電波発信時刻情報をGPS受信部54によって受信し、その電波発信時刻情報とその電波の到着時刻情報とを送受信部53を通じて測位サーバ110に送信して、測位サーバ110に位置情報を算出させる(S456)。
【0042】
測位サーバ110によって算出された位置情報は、データ通信ネットワークを介して緊急機関103へ通知される(S457)。そして制御部51は、位置情報の送信が終われば、自動的に回線を切断する(S458)。この位置情報の再送信中(S452〜S458)の間、携帯電話機1は擬似電源OFFの状態を続ける。これによって、位置情報を送信中に終話操作や電源OFF操作が行われた場合にも、自動的に位置情報を緊急機関103に再通知することができる。
【0043】
図8は、擬似電源OFFの状態(S501)のときに、緊急機関103からの測位要求を受信した場合のフローチャートである。
【0044】
携帯電話機1の制御部51は、データ通信ネットワークを通じて緊急機関103から測位要求を受信すると(S502)、擬似電源OFFの状態を維持したままでGPS衛星101からの電波発信時刻情報をGPS受信部54によって受信する。そして、制御部51は送受信部53を通じて電波発信時刻情報とその電波の到着時刻情報とを測位サーバ110に送信し、測位サーバ110にて位置情報を算出させる(S503)。
【0045】
通報サーバ111によって算出された位置情報は、データ通信ネットワークを介して緊急機関103に通知される(S504)。位置情報の通知後、制御部51は自動的に回線を切断する(S505)。この測位要求受信による位置情報通知中(S502〜S505)の間、携帯電話機1は擬似電源OFFの状態を続ける。すなわち、携帯電話機1は擬似電源OFFの状態を維持したままで、緊急機関103からの要求に対し、位置情報や周囲の音声情報などを送信することができるが、携帯電話機1のスピーカからは音声が出力されることはない。
【0046】
擬似電源OFFの状態から電源ON操作を行うと、液晶画面3には待受け画面が表示される。これは電源OFF状態から電源ON操作を行うと、液晶画面3に待受け画面が表示されるのと同様である。その後、再び電源OFF操作を行うと通常と同様に、電源が切れる。擬似電源OFFの状態から電源を切る方法としてはこの他に、擬似電源OFFの状態で緊急機関103から電源切断の指示を受けると電源OFFする方法や、擬似電源OFFの状態になった時点からの経過時間を計測しておき、その時間が一定の時間になると電源を切る方法としても良い。
【0047】
このような実施形態の構成をとることで、緊急機関への位置情報の通知時に電源を切断されることがあっても、擬似電源OFFの状態となって位置情報を通知することができる。さらに、携帯電話機に新たなボタンを設けず、また新たな操作をユーザに強いることなく擬似電源OFFの状態に設定することができるため、ユーザがあわてて操作したとしても確実に正確な情報を緊急機関に送信することができる。
【0048】
なお、上記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜変更しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯電話機の外観図。
【図2】実施形態に係る携帯電話機の構成を示すブロック図。
【図3】本発明の携帯電話機と緊急機関間のネットワーク構成図。
【図4】実施形態に係る携帯電話機の発信操作が検出されて発信するまでのフローチャート。
【図5】実施形態に係る携帯電話機の緊急機関用の電話番号であると判断された後の制御部の動作を表すフローチャート。
【図6】実施形態に係る携帯電話機の緊急機関への発信がされた後、電源OFFまたは擬似的な電源OFF状態になるまでの画面遷移図。
【図7】実施形態に係る携帯電話機の擬似電源OFFの状態で位置情報を再送信する制御部の動作を示すフローチャート。
【図8】実施形態に係る携帯電話機の擬似電源OFFの状態で、緊急機関からの測位要求を受信した場合のフローチャート。
【符号の説明】
【0050】
1 携帯電話機、2 キー、2a 発信キー、2b 終話キー、3 液晶画面、4 通話用スピーカ、5 マイクロホン、6 LED、7 案内用スピーカ、51 制御部、52 音声信号処理部、53 送受信部、54 GPS受信部、55 記憶部、56 表示部、57 操作部、101 GPS衛星、102 基地局、103 緊急機関、104 電話機、105 位置情報受信装置、106 加入者交換機、107 音声回線ネットワーク、108 関門交換機、109 公衆電話交換網、110 測位サーバ、111 通報サーバ、112 パケット交換ネットワーク、113 広域イーサネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急機関の情報端末との間で音声通信ネットワークおよびデータ通信ネットワークを用いて緊急通信を行うことができる携帯電話機であって、
前記音声通信ネットワークを用いて前記緊急機関の情報端末との間で音声情報を送受信し、前記データ通信ネットワークを用いて前記緊急機関の情報端末に位置算出情報を送信している状態で、前記音声通信ネットワークが切断されてから所定の時間以内に電源OFFの操作を受けた場合、少なくとも表示画面を制限して擬似的に電源OFFの状態のように設定し、内部制御部および送受信部の電源を維持させて前記位置算出情報の送信を継続することを特徴とする携帯電話機。
【請求項2】
緊急機関の情報端末との間で音声通信ネットワークおよびデータ通信ネットワークを用いて緊急通信を行う送受信部を有し、
前記音声通信ネットワークを用いて前記緊急機関の情報端末との間で音声情報を送受信した後、前記音声通信ネットワークが切断されてから所定の時間以内に電源OFFの操作を受けた場合、少なくとも表示画面を表示させずに、内部制御部および送受信部の電源を維持させることを特徴とする携帯電話機。
【請求項3】
緊急機関の情報端末との間で音声通信ネットワークおよびデータ通信ネットワークを用いて緊急通信を行う送受信部を有し、
前記音声通信ネットワークへの接続要求の発信した後、音声情報の送受信開始前に前記音声通信ネットワークが切断され、その後所定の時間以内に電源OFFの操作を受けた場合、少なくとも表示画面を表示させずに、内部制御部および送受信部の電源を維持させることを特徴とする携帯電話機。
【請求項4】
緊急機関の情報端末との間で音声通信ネットワークおよびデータ通信ネットワークを用いて緊急通信を行うことができる携帯電話機であって、
前記音声通信ネットワークを用いて前記緊急機関の情報端末との間で音声情報を送受信し、前記データ通信ネットワークを用いて前記緊急機関の情報端末に位置算出情報を送信した後、前記音声通信ネットワークが切断されてから所定の時間以内に電源OFFの操作を受けた場合、少なくとも表示画面を制限して擬似的に電源OFFの状態のように設定し、内部制御部および送受信部の電源を維持させることを特徴とする携帯電話機。
【請求項5】
前記擬似的な電源OFFの状態のときに、前記データ通信ネットワークが切断されていて、前記データ通信ネットワークによる前記位置算出情報が前記緊急機関の情報端末に未通知である場合、前記擬似的な電源OFFの状態のまま前記データ通信ネットワークを介して前記緊急機関の情報端末に再接続し、前記位置算出情報を送信することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の携帯電話機。
【請求項6】
前記データ通信ネットワークを介した前記緊急機関の情報端末への再接続は、前記音声情報通信ネットワークへの接続要求発信後に行われることを特徴とする請求項5に記載の携帯電話機。
【請求項7】
前記擬似的な電源OFF状態のときに、前記データ通信ネットワークを通じて前記緊急機関の情報端末から前記位置算出情報の送信要求を受信した場合、前記擬似的な電源OFF状態のまま、前記データ通信ネットワークを通じて前記位置算出情報を前記緊急機関の情報端末に送信することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の携帯電話機。
【請求項8】
前記擬似的な電源OFF状態のときに、前記音声情報通信ネットワークに接続した場合、前記緊急機関の情報端末から受信した音声情報は、出力しないことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の携帯電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−109396(P2008−109396A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290268(P2006−290268)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】