説明

搾り出し装置及び粘調性液体用包装袋

【課題】 既存の所謂「パウチ袋」を利用した包装袋内の粘調性液体を良好に搾り出すことのできる搾り出し装置を得る。
【解決手段】 ガスバリア性を有する合成樹脂製のシート材を貼り合わせて構成された袋体内部に封止した粘調性液体を先端外方向へ導出する貫通孔が形成される粘調性液体用包装袋を搾り出す搾り出し装置であって、袋体の先端部と後端部とを固定した張架支持する一対の袋体支持部と、この袋体支持部に支持された袋の後端部を上下から挟んだ状態で先端部方向にスライド可能に設けられた搾り出し機構部と、この搾り出し機構部を先端部方向にスライド駆動する駆動機構部とを備え、駆動機構部が前記搾り出し機構部のスライド方向に平行に配置されたロッドを備えたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば建築の際に水密を図るために用いられるシーリング剤や物と物とを接着させる接着剤等の粘調性液体の包装袋及び搾り出し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、シーリング剤や接着剤等の粘調性液体は大量に使用される建築用の容器として、先端にノズルを有する筒体の内部にこの筒体内を先端方向に摺動可能な底板が設けられた形態の充填容器(カートリッジタイプ)が市販されている(例えば、特許文献1参照)。尚、筒体には紙製及びポリプロピレン等の樹脂製のものがある。このような形態のものは、コーキングガンと呼ばれる吐出装置で、充填容器の底板をピストンのようにレバーでノズル方向に移動させて用いる。
【0003】
この筒状容器の形態以外には、容器として筒体を用いず、フィルムによってソーセージ様に包装した形態の充填容器(フィルムパックタイプ)も市販されている(例えば、特許文献2参照)。フィルムパックタイプのものは使用後の廃棄物を大幅に削減できる利点がある。このフィルムパックタイプのものは容器として筒体を用いない代わりに、内部に粘調性液体のフィルムパックを収容する円筒状の外筒と外筒の後端から先端のノズル方向にピストンのように移動させる底板とを備えた専用のコーキングガンを用いる。
【0004】
また、2種類の樹脂を現場で混合させて使用する二液タイプのシーリング剤や接着剤もあり、これについては、前者のカートリッジタイプが主流となっている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−88415号公報
【特許文献2】実開平6−53469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前者の充填容器には、粘調性液体の押し出し後の筒体が押し出し前と同じ体積であり、かさばるため廃棄処分上の問題があり、更に、後端部の底板と筒体との密閉性が低いために経時的な劣化によって後端部から硬化するという問題があった。また、後者の充填容器には、フィルム容器の先端部をカットして外筒内に装入するタイプがあり、この際に作業者の手や外筒内部等に粘調性液体が付着して汚れる問題があった。
【0007】
また、前者と後者との何れの充填容器についても円筒形状である。これはこれら充填容器を用いる突出装置が何れもピストンのように押し出す機構を採用しているからである。具体的には、前者では筒体を円形にしないと底板と筒体との間で漏れが発生し易く、後者では充填容器の先端部は外筒の先端面に均等に押し付けられないと先端面の中央に配したノズルに粘調性液体が突出しないからである。更に、何れの充填容器が円筒形状を取らざるを得ないために、並べて保管した場合には円筒同士の隙間が形成される。
【0008】
本発明は、既存の所謂「パウチ袋」を利用した包装袋内の粘調性液体を良好に搾り出すことのできる搾り出し装置を得ることを目的とする。また、製造に際しては既存のパウチ製造装置で製造することができ、保存に際しては使用前には長期間の保存にも耐えることができると共に積層することにより、狭い体積であっても多数の保管が可能であり、使用に際しては内部の粘調性液体を絞りきることができ、使用後に際しては廃棄物の容量が小さくて済む粘調性液体用包装袋を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載された発明に係る搾り出し装置は、ガスバリア性を有する合成樹脂製のシート材を貼り合わせて構成された袋体内部に封止した粘調性液体を先端外方向へ導出する貫通孔が形成される粘調性液体用包装袋を搾り出す搾り出し装置であって、
袋体の先端部と後端部とを固定した張架支持する一対の袋体支持部と、この袋体支持部に支持された袋の後端部を上下から挟んだ状態で先端部方向にスライド可能に設けられた搾り出し機構部と、この搾り出し機構部を先端部方向にスライド駆動する駆動機構部とを備え、
前記駆動機構部が前記搾り出し機構部のスライド方向に平行に配置されたロッドを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項2に記載された発明に係る粘調性液体用包装袋は、ガスバリア性を有する合成樹脂製のシート材を貼り合わせて構成された袋体内部に封止した粘調性液体を先端外方向へ導出する貫通孔が形成される粘調性液体用包装袋であって、
前記袋体の先端縁部に前記シート材の貼り合わせ端縁の一部に融着された扁平なノズル挿着片と、このノズル挿着片に設けられた、着脱可能なノズルの後端縁部が挿着されたときに貫通孔を形成する未貫通のノズル挿着ガイド孔と、このノズル挿着ガイド孔に付設された、挿着後のノズルの逸脱を防止するノズル掛止手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に記載された発明に係る粘調性液体用包装袋は、請求項2に記載の掛止手段が、前記着脱可能なノズルの側面から後端縁部方向に延設されたL字掛止片と、この先端部に形成された被鉤部と、この被鉤部に掛合するノズル挿着ガイド孔の側方に形成された鉤部とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項4に記載された発明に係る粘調性液体用包装袋は、請求項2又は3に記載の袋体の後端縁部の内側面に幅方向に亘って線状の咬合組部からなるファスナが形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上説明した通り、既存のパウチ袋を利用した包装袋内の粘調性液体を良好に搾り出すことができる搾り出し装置を得ることができる。また、製造に際しては従来よりの製造装置で製造することができ、保存に際しては使用前には長期間の保存にも耐えることができると共に積層することにより、狭い体積であっても多数の保管が可能であり、使用に際しては内部の粘調性液体を絞りきることができ、使用後に際しては廃棄物の容量が小さくて済む粘調性液体様包装袋を得ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る搾り出し装置は、ガスバリア性を有する合成樹脂製のシート材を貼り合わせて構成された袋体内部に封止した粘調性液体を先端外方向へ導出する貫通孔が形成される粘調性液体用包装袋を搾り出すものであればよく、より詳しくは、袋体の先端部と後端部とを固定した張架支持する一対の袋体支持部と、この袋体支持部に支持された袋の後端部を上下から挟んだ状態で先端部方向にスライド可能に設けられた搾り出し機構部と、この搾り出し機構部を先端部方向にスライド駆動する駆動機構部とを備え、駆動機構部が前記搾り出し機構部のスライド方向に平行に配置されたロッドを備える。尚、前記搾り出し機構部はスリットでもよいが、1つのローラ又は対向した2つのローラで押圧しながらスライドさせるものが搾り出し機構部のスライドに大きな力を必要とせず、好ましい。
【0015】
本発明の搾り出し装置に用いる包装袋としては、ガスバリア性を有する合成樹脂製のシート材を貼り合わせて構成された袋体内部に封止した粘調性液体を先端外方向へ導出する貫通孔が形成される粘調性液体用包装袋であればよく、既存のパウチ袋を応用することができる。最も簡易な包装袋としては、ガスバリア性を有する合成樹脂製のシート材を貼り合わせて構成された袋体の先端部の一部を突き出して内部に貫通孔として袋体の内側層と融着する円形又は楕円状な可撓性の貫通管を備え、この貫通管の出口側を袋体のヒートシールで封止した抽出口付きの袋体を用いることができる。
【0016】
本搾り出し装置への包装袋の袋体支持部への固定は、袋体の先端部と後端部とを固定して張架支持すればよい。先端部と後端部との固定は用いる粘調性液体包装袋の形態に応じて選択すればよい。袋体の後端部の固定は、例えば、後端部の横方向の移動を規制するための支持棒を1つ以上搾り出し装置の後端部に備え、その支持棒が貫通する支持孔を包装袋に設けたり、後部に袋体を上下方向から挟んで固定する挟持具等によって固定する。より好ましくは袋体を張架支持するために、後端部の固定は後方に向かうテンションを掛けることが好ましい。
【0017】
また、先端部の固定は、例えば、前述の最も簡易な包装袋の場合には、先端部の固定は包装袋の先端部を遊嵌して縦方向の移動を規制するための開口部を搾り出し装置の先端部に備える。開口部は包装袋の先端部を遊嵌する形状及び大きさを備えればよい。具体的には、開口部への包装袋の先端部の装着時には開口部の上縁が開放された凹部形状であり、先端部を凹部に装着した後に上縁部を取付けて凹部を塞いで開口部とする。また、包装袋の先端部の横方向の移動を規制するための支持棒を1つ以上搾り出し装置の先端部に備え、その支持棒が貫通する支持孔を包装袋に設ければよい。
【0018】
本発明の好ましい包装袋としては、ガスバリア性を有する合成樹脂製のシート材を貼り合わせて構成された袋体内部に封止した粘調性液体を先端外方向へ導出する貫通孔が形成される粘調性液体用包装袋であって、袋体の先端縁部にシート材の貼り合わせ端縁の一部に融着された扁平なノズル挿着片と、このノズル挿着片に設けられた、着脱可能なノズルの後端縁部が挿着されたときに貫通孔を形成する未貫通のノズル挿着ガイド孔と、このノズル挿着ガイド孔に付設された、挿着後のノズルの逸脱を防止するノズル掛止手段と、を備える。
【0019】
これにより、製造に際しては所謂「パウチ」と称されるフレキシブル包装袋の製造技術を用いることができるため、既存のパウチ製造装置で製造することができる。また、保存に際してはガスバリア性が高く扁平な包装袋とすることにより使用前には長期間の保存にも耐えることができると共に積層することにより、狭い体積であっても多数の保管が可能であり、使用に際してはノズル挿着片が扁平であるため内部の粘調性液体を絞りきることができ、使用後に際しては全体が扁平となるため廃棄物の容量が小さくて済む等の利点がある。
【0020】
本発明の袋体としては、前述の簡易な包装袋でも好ましい包装袋でも、ガスバリア性を有する合成樹脂製のシート材の周囲を貼り合わせて構成されたものであればよい。貼り合わせによる袋体の形成に際しては、シート材の全ての周囲又は一部の周囲を貼り合わせてシールして作製することができる。貼り合わせにはパウチ袋の製造技術を用いることができる。
【0021】
例えば、シート材の材質としては、ガスに対するバリア性を有する材質、例えば、アルミ箔をガスバリア層として、その片側に延伸ポリアミド樹脂を、他方の側にはヒートシール可能な低密度ポリエチレン樹脂層もしくは未延伸ポリプロピレン樹脂層等を積層した積層フィルム等を用いることができる。より具体的には、袋体を構成するフィルムは、その周囲の内面同士をヒートシールすればよいため、かかるフィルムとしては、通常、プラスチックを主体とする積層フィルムであって、その一方の面(裏面あるいは最内層)をヒートシール性を有するヒートシール層とし、他方の面(表面あるいは最外層)をヒートシール性を有さない層とするフィルムが好ましくは用いられる。
【0022】
従って、最も簡単な構成としては、ベースフィルム層とヒートシール層との間に、中間層として、ガスバリア機能を持つフィルム層を積層して構成することができる。ベースフィルム層としては、ポリエチレンやポリプロピレンの一軸又は二軸延伸フィルムのほか、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等の一軸又は二軸延伸ポリエステルフィルム等の一軸又は二軸延伸ポリアミドフィルム等を好適に用いることができる。特に開封性の観点から、一軸延伸フィルムが好ましい。これらは単独で使用してもよく、また、複数を組み合わせて積層して使用することもできる。
【0023】
また、中間層にガスバリア性を持たせる場合には、中間層としてエチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等のフィルムを好適に用いることができる。これらフィルムに、アルミニウム箔、あるいは、シリカ、アルミナ、アルミニウム等の蒸着層やポリ塩化ビニリデンの塗膜層等を設けることによりガスバリア性を向上させることができる。この場合には、前記ベースフィルム層の内面に直接蒸着又は塗布して形成してもよく、また、別の二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィムル、二軸延伸ポリプロピレンフィルム等に形成しておいて、そのフィルムを中間層に積層してもよい。これらのうち、アルミニウム箔とアルミニウム蒸着層は、不透明であるため遮光層を兼ねることもできる。
【0024】
さらに、最内層のヒートシール層としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンのほか、エチレンαオレフィン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンアクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレンまたはその共重合体等を用いることができる。これら積層フィルムからなるシート材をヒートシールで貼り合わせて袋体を作製する。袋体の形状としては、封止された粘調性液体を搾り出した際に内部に液体が残存しないのであれば、2方シール袋、3方シール袋、4方シール袋、ピロー包装袋、ガゼット袋等で特に限定されるものではない。
【0025】
また、本発明の包装袋の先端部の前記搾り出し装置への固定としては、搾り出し装置の先端面から上方に立ち上がった前面板にノズルの側壁に当接・支持するノズル当接孔とこの両側にノズルのL字掛止片を挿通する掛止片スリットとを備え、ノズルを挿着した袋体の先端部を固定する。また、好ましい後端部の固定手段としては、袋支持体の後部に袋体を上下方向から挟んで固定する挟持具を備える。特に、線状のファスナを挟持具の外方に配置させることにより、搾り出し機構部の先端部方向へのスライドによっても線状のファスナが挟持具外方で引っ掛かり、確実に固定することができる。
【0026】
本発明に係る好ましい包装袋は、ガスバリア性を有する合成樹脂製のシート材を筒状に成型して袋体胴部を形成する工程と、筒状に成型した袋体胴部の先端にノズル挿着片を融着させて袋体の先端部を形成する工程と、筒状に成形したフィルムの後端部から粘調性液体を充填する工程と、後端部をシールする工程とを経ることにより、従来よりある製造装置で容易に製造することができる。
【0027】
本発明の袋体の先端縁部に形成されたシート材の貼り合わせ端縁の一部に扁平なノズル挿着片を融着して配する。ノズル挿着片には未貫通のノズル挿着ガイド孔を備え、このガイド孔内に着脱可能なノズルの後端縁部を挿着した場合により、袋体内部からノズル内部に至る貫通孔が形成される。例えば、ノズル挿着ガイド孔は袋体内面側にガイド孔全面を覆うように閉塞片が形成され、閉塞片のガイド孔の周縁部を他の部分よりも厚さを薄くして袋体内側に押されると容易に閉塞片が内側方向に外れるように形成されることにより、ノズル後端縁部をガイド孔に押し込んだ際に袋体内部からノズル挿着片に挿着されたノズル後端縁部の内側からノズル先端部に至る貫通孔が形成される。
【0028】
尚、ノズル後端縁部はガイド孔に差し込んだ際に容易に閉塞片を内側方向に押し込むことができるように端縁を挿入方向に対して斜めに形成されていてもよい。斜めに形成された端縁の先端部が閉塞片に最初に当接され、更に押圧されることにより、閉塞片のガイド孔の周縁部のうち当接された部分が最初に破断して外れることにより、容易に閉塞片を内側方向に押し込むことができる。
【0029】
具体的なノズル挿着片としては、シート材の貼り合わせ端縁に確実に融着する素材のものが選択される。例えば、シート材の内側層のポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂に融着しやすいポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂で構成される。また、具体的な形状は扁平であればあるほど搾り出し終了後に残存する粘調性液体が少なくなるが、ガイド孔に挿着されるノズルの厚みも薄くなる。よって、好ましい厚みとしては10mm〜30mm、より好ましくは15mm〜20mmである。10mmよりも薄ければ挿着するノズルがより薄くなり、30mmよりも厚ければ搾り出し終了後に残存する粘調性液体が多くなりすぎるためである。
【0030】
ノズル挿着片の幅は袋体と同幅にすることも可能である。しかし、同幅とすると絞り出し終了後に粘調性液体が両端部に残存しやすくなるため、好ましくは、袋体の幅よりも狭くし、袋体の幅端部をノズル挿着片に向かうように徐々に幅を狭くして先細り状とする。ノズル挿着片の奥行きとしては、シート材の貼り合わせ端縁に確実に融着する奥行きとする。そのため、袋体のノズル挿着片が融着するヒートシール部の奥行きを他のヒートシール部よりも大きくしてもよい。好ましい奥行き長さとしては8mm〜20mm、より好ましくは10m〜15mmである。8mmよりも小さければノズル挿着片の袋体への融着が不充分となる可能性があり、20mmよりも大きければ包装袋の長さが大きくなりすぎるためである。尚、シート材の貼り合わせ端縁に確実に融着するために、貼り合わせ端縁との融着面積を大きくするフィンや貼り合わせ側面に幅方向に突条を形成させてもよい。
【0031】
本発明の包装体には、ノズル挿着ガイド孔にノズルの後端縁部を挿着して貫通孔が形成されたノズルの逸脱を防止するために、ノズル掛止手段を更に備える。具体的には、ノズル後端縁部をガイド孔内に挿着させたままにする機構であればよい。扁平なノズル挿着ガイド孔にも搭載可能な好ましい態様としては、掛止手段が、前記着脱可能なノズルの側面から後端縁部方向に延設されたL字掛止片の先端部に形成された被鉤部に掛合するノズル挿着ガイド孔の側方に形成された鉤部が挙げられる。尚、鉤部と被鉤部とは互いに掛合するものであればよく、掛止片側に鉤部を、ノズル挿着片側に被鉤部を配してもよい。
【0032】
本発明の粘調性液体用包装袋はパウチの製造技術を利用して容易に作製できる。即ち、前述のフィルム材を筒状に成型して袋体胴部を形成する工程と、筒状に成型した袋体胴部の先端にノズル挿着片を融着させて袋体の先端縁部を形成する工程と、筒状に成形したフィルムの後端部から粘調性液体を充填する工程と、後端縁部をシールする工程とを経て製造することができる。この際に、フィルム材を筒状に成型して袋体胴部を形成する工程や後端部をシールする工程はパウチの製造技術をそのまま適用して製造することができる。袋体胴部の先端にノズル挿着片を融着させて袋体の先端縁部を形成するにはパウチの製造技術を利用して作製する。即ち、ヒートシールを行う金型に袋体胴部を配置し、袋体胴部の先端縁の内側にノズル挿着片を配置してノズル挿着片と共にヒートシールすればよい。
【0033】
袋体内に封止される粘調性液体としては、例えば建築の際に水密を図るために用いられるシーリング剤(コーキング剤)や、物と物とを接着させる接着剤を始めとする粘調性を有する液体が挙げられるが、これに限らずノズルで所望の箇所に導かれるものであればよい。また、ノズルからの吐出時に二液を混合して所望の混合液として導く二液混合タイプの粘調性液体も含む。この場合には袋体内を2つに分割して各々の分割区に被混合液を入れて1つ又は2つのノズル装着ガイド孔に挿着されたノズル内で混合させて吐出させてもよく、被混合液を封止した個別の袋体を積層又は並列させる専用の搾り出し装置を用いて個々のノズル挿着ガイド孔に挿着されたノズル内で混合させて吐出させてもよい。
【0034】
更に、粘調性液体にはシーリング剤や溶剤型接着剤等のように有機溶媒を含むものがある。有機溶媒を含む粘調性液体を袋体内に充填し、ヒートシールして製造する場合には有機溶媒が引火しやすいために換気等の防火設備が整った製造機器で製造する必要がある。しかしながら、防火設備が整ったパウチ製造装置を新たに建設・設置する必要をなくすために、好ましい態様の粘調性液体用包装袋は、袋体の後端縁部の内側面に幅方向に亘って線状の咬合組部からなるファスナが形成されている。
【0035】
即ち、袋体胴部の後端部にファスナを形成する工程を粘調性液体を充填する工程の前に備える。このファスナの形成もパウチの製造技術をそのまま適用して製造することができる。例えば、ファスナは互いに嵌合したファスナのテープを袋胴部の後端部の内側面に幅方向に亘って配置した上で、該当するテープ部分をヒートシールすれば容易にしかも安全に一体化することができる。
【0036】
粘調性液体を充填する工程の前で得られた袋体に換気装置の整った充填室内で粘調性液体を充填し、ファスナを咬合して封止した後に、ヒートシール装置へ搬送してファスナの外方又は内方を袋体胴部の幅方向に亘ってヒートシールして確実に封止すればよい。また、咬合したファスナ部分は搾り出し装置が袋体の後端部を上下方向から挟んで固定する挟持具を備えた場合には、搾り出し機構部のスライドによってもファスナが挟持具外方で引っ掛かり、確実に固定することができる。
【実施例】
【0037】
図1は本発明の搾り出し装置の一実施例の構成を示す説明図である。図2は図1のc図の拡大図である。図3は図1の搾り出し装置に装着される簡易な包装袋の構成を示す説明図である。図4は図1の搾り出し装置に装着される本発明の粘調性液体用包装袋の一実施例の構成を示す説明図である。図5は図4の粘調性液体用包装袋のノズル挿着片の構成を示す説明図である。図6は図5のノズル挿着片に装着されるノズルの構成を示す説明図である。図7は図4の粘調性液体用包装袋を用いる場合の図1の搾り出し装置の先端側の固定手段の構成を示す説明図である。
【0038】
図1に示す通り、本発明の搾り出し装置10は、包装袋の袋体3の先端部と後端部とを固定した状態で横向きに支持する袋体支持部11と、この袋体支持部11に支持された袋体3の後端部を上下から挟んだ状態で先端部方向にスライド可能に設けられた搾り出し機構部12と、この搾り出し機構部12を先端部方向にスライド駆動する駆動機構部13とを備える。袋体支持部11は、搾り出し装置10の先端部に配された前面板14及び後端部側に配された後面板15と、これらを連結する3本の連結棒16,16bとで構成され、軽量化を図っている。これら3本の連結棒の内、上部の一対の連結棒16はガイドバーとして機能し、連結棒16間は中央スライド案内溝16aとして構成される。袋体支持部11の後部側にはグリップ17とトリガ18とが設けられている。中央スライド案内溝16aには、搾り出し機構部12が先端に取付けられたスライドバー19が先端部方向に前進可能に配されている。
【0039】
搾り出し機構部12は、下部に中央スライド案内溝16a内を遊嵌してスライドするスライド部と、その上部にスライド方向に直行する一対の回転軸20を有する一対の上下ローラ21とを備える。上下ローラ21は各々の回転軸20が支持されるローラ支持枠体22のロック部23を解除することにより、蝶番部24で開放可能になっている。スライドバー19は袋体支持部11の後部に配されたラチェット送り機構(図示せず)とを備え、グリップ17とトリガ18との引き寄せ操作によりラチェット送り機構によりスライドバー19を一定のピッチで前進させ、搾り出し機構部12を押動させる。搾り出し機構部12は上下ローラ21で袋体3の後端部を挟んだ状態で搾り出し機構部12をノズルが挿着された先端部方向に移動することにより、袋体3を順次搾り出すことになる。尚、スライドバー19を先端部方向に一定のピッチで前進させる機構としては、ラチェット送り機構の他にもスライドバー19の下面に多数の歯を形成させこの歯に噛合して一定のピッチで送り出す送り爪機構を用いてもよい。
【0040】
本搾り出し装置10に装着される包装袋の袋体3の袋体支持部11への固定は、袋体3の先端部と後端部とを固定して張架支持すればよく、袋体3の構成・形状に応じて選択する。例えば図3に示す簡易な包装袋30は、ガスバリア性を有する合成樹脂製のシート材を貼り合わせて構成された袋体32の先端部の一部を突き出して内部に貫通孔として袋体の内側層と融着する円形又は楕円状な可撓性の貫通管33を備え、この貫通管33の出口側を袋体32のヒートシールで封止した抽出口付きの袋体の貫通管33先端部分を切除して用いる。袋体32の後端部には線状ファスナ34が配されている。尚、貫通管33のヒートシール部分には手で開封しやすいように切欠35が形成されている。
【0041】
図3の粘調性液体用包装袋30は、袋体32にポリアクリロニトリルにアルミ箔を蒸着したガスバリア層の片側に延伸ポリアミド樹脂を、他方の側に低密度ポリエチレン樹脂層を積層した積層フィルム等を用いた。低密度ポリエチレン樹脂層を内側にして長手方向両端をヒートシールして袋体胴部を作製して、これを所望の長さに切断した後、先端部に貫通管33を装入しつつ突き出し状態にヒートシールして先端部を形成した。引き続き、後端部に線状ファスナテープを入れてヒートシールして一体化した。線状ファスナ34を開放して袋体32内部にシーリング剤を充填して線状ファスナ34を閉じ、線状ファスナ34の外方をヒートシールして得た。
【0042】
この図3の袋体32の搾り出し装置10の袋体支持部11への固定は、袋体32の先端部と後端部とを固定することで行われる。先端部の固定手段は、図2に示す通り、搾り出し装置10の前面板14に包装袋30の先端部を遊嵌して縦方向の移動を規制するための開口部25を備える。開口部25は前面板14の本体に形成された凹部25aを前面板14の上部に上縁部25bを取付けて凹部25aを塞いで開口部25とする。また、包装袋30の先端部の横方向の移動を規制するための一対の支持棒26を凹部25a内に配し、包装袋30に設けられた支持孔31を装着する。
【0043】
袋体32の後端部の固定手段は、袋体支持部11の後部に袋体32を上下方向から挟んで固定する挟持具27によって行う。この際、袋体32の線状ファスナ34を挟持具27の外方に配置させることにより、搾り出し機構部12の先端部方向へのスライドによっても線状ファスナ34が挟持具27外方で引っ掛かり、確実に固定することができる。尚、挟持具27は、上下ローラ21と同様に、一方を蝶番28で連結した上下の挟持具部材を他方の留め具29(所謂「パチン錠」)で固定する。
【0044】
図4に示す通り、本発明の別の実施例としての包装袋40は、ガスバリア性を有する合成樹脂製のシート材を貼り合わせて構成された袋体42と、この袋体42の先端縁部にシート材の貼り合わせ端縁の一部に融着された扁平なノズル挿着片50と、袋体42の後端縁部に形成された線状ファスナ44とからなる。袋体42はポリアクリロニトリルにアルミ箔を蒸着したガスバリア層の片側に延伸ポリアミド樹脂を、他方の側に低密度ポリエチレン樹脂層を積層した積層フィルム等を用いガゼット付き袋体42とした。
【0045】
図5に示す通り、ノズル挿着片50の外観は正面が扁平な六角形の柱構造をしており、シート材の貼り合わせ端縁部46に埋設させてヒートシールした際に良好に融着するために両側部にはフィン51と、六角柱の側面には2本の突条53とが形成されている。ノズル挿着片50には未貫通のノズル挿着ガイド孔52とその両側に凹部56が形成されている。具体的にはガイド孔52の袋体内面側にガイド孔52全面を覆うように閉塞片54が形成されており未貫通となっている。
【0046】
図6のノズル60の後端縁部62をガイド孔52内部に挿着することにより、閉塞片54が内側方向に外れて袋体42内部からノズル挿着片50のガイド孔52に挿着されたノズル後端縁部62の内側からノズル60先端部に至る貫通孔が形成される。ノズル60の上面及び下面には鍔部66が形成され、後端縁部62のガイド孔52へのこれ以上の挿入を阻害している。
【0047】
図5のb図に示す通り、一組の凹部56は各々の内側に鉤部58が形成されている。この鉤部58は図6のノズル60の側面から後端縁部方向に延設されたL字掛止片64の先端部に形成された被鉤部65と掛合して、ノズル60のノズル挿着片50からの逸脱を防止する。尚、本実施例で示したノズル60は先細りのノズルであるが、先端部の形状を平たい面に均質に塗布するために先端部がヘラ状の平板になっていてもよいし、V字の溝条や突条を形成させるようなノズル先端部であってもよい。
【0048】
図4の粘調性液体用包装袋40も図3の包装袋30と同様に、低密度ポリエチレン樹脂層を内側にして長手方向両端をヒートシールして袋体胴部を作製して、これを所望の長さに切断した後、ガゼット48を形成させつつ先端部にノズル挿着片50を内側に入れてヒートシールして一体化し、後端部に線状ファスナテープを入れてヒートシールして一体化した。線状ファスナ44を開放して袋体42内部にシーリング剤を充填して線状ファスナ44を閉じ、線状ファスナ44の内方をヒートシールして得た。
【0049】
先端部の固定手段は、前述の前面板14とは相違する前面板74で行われる。尚、図1に示した搾り出し装置10の前面板のみ相違するため、他の構成については、同一の符号を付す。図7に示す通り、袋体支持部11の先端面から上方に立ち上がった前面板74にはノズル60の側壁に当接・支持するノズル当接孔75とこの両側にノズル60のL字掛止片64を挿通する掛止片スリット76とを備え、ノズル60を挿着した袋体42の先端部を固定する。尚、この前面板74の上面を押さえ板で覆って袋体42を取付けた後に図3と同様に上縁部で当接孔75とスリット76との上面を覆って固定をより確実にしてもよい。また、袋体42の後端部の固定手段は、前述の袋体32と同様に袋体支持部11の後部に袋体42を上下方向から挟んで固定する挟持具27によって行う。この際、袋体42の線状ファスナ44を挟持具27の外方に配置させることにより、確実に固定することができること等も同様である。
【0050】
絞り出し終了状態は、上下ローラ21とにより、ノズル挿着片50が扁平であるため内部のシーリング剤(粘調性液体)を絞りきることができる。また、ノズル挿着片50のガイド孔内に残存するシーリング剤の多くはノズル後端部内に残存するため、別の粘調性液体用包装袋40へノズル60を取り換える際に一緒に持ち越すことができる。よって、同種類のシーリング剤が封止された粘調性液体用包装袋を使えば使うほど袋体内に残存するシーリング剤が少なくなる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の搾り出し装置の一実施例の構成を示す説明図であり、a図は搾り出し前の側面図、b図は搾り出し後の側面図、c図は正面図、d図は背面図である。
【図2】図1のc図の拡大図である。
【図3】図1の搾り出し装置に装着される簡易な包装袋の構成を示す説明図である。
【図4】図1の搾り出し装置に装着される本発明の粘調性液体用包装袋の一実施例の構成を示す説明図であり、a図は平面図、b図は側面図、c図は正面図、d図は背面図である。
【図5】図4の粘調性液体用包装袋のノズル挿着片の一実施例の構成を示す説明図であり、a図は平面図、b図は断面図、c図は正面図である。
【図6】図5のノズル挿着片に装着されるノズルの構成を示す説明図であり、a図は平面図、b図は側面図、c図は正面図である。
【図7】図4の粘調性液体用包装袋を用いる場合の図1の搾り出し装置の先端側の固定手段の構成を示す説明図であり、a図は平面図、b図は正面図である。
【0052】
3…袋体、10…搾り出し装置、11…袋体支持部、12…搾り出し機構部、13…駆動機構部、14…前面板、15…後面板、16…ガイドバー、16a…中央スライド案内溝、17…グリップ、18…トリガ、19…スライドバー、20…回転軸、21…上下ローラ、22…ローラ支持枠体、23…ロック部、24…蝶番部、25…開口部、25a…凹部、25b…上縁部、26…支持棒、27…挟持具、28…蝶番、29…留め具、30…包装袋、31…支持孔、32…袋体、33…貫通管、34…線状ファスナ、35…切欠、40…包装袋、42…袋体、44…線状ファスナ、46…貼り合わせ端縁部、48…ガゼット、50…ノズル挿着片、51…フィン、52…ノズル挿着ガイド孔、53…突条、54…閉塞片、56…凹部、58…鉤部、60…ノズル、62…ノズル後端縁部、64…L字掛止片、65…被鉤部、66…鍔部、74…前面板、75…ノズル当接孔、76…掛止片スリット、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリア性を有する合成樹脂製のシート材を貼り合わせて構成された袋体内部に封止した粘調性液体を先端外方向へ導出する貫通孔が形成される粘調性液体用包装袋を搾り出す搾り出し装置であって、
袋体の先端部と後端部とを固定した張架支持する一対の袋体支持部と、この袋体支持部に支持された袋の後端部を上下から挟んだ状態で先端部方向にスライド可能に設けられた搾り出し機構部と、この搾り出し機構部を先端部方向にスライド駆動する駆動機構部とを備え、
前記駆動機構部が前記搾り出し機構部のスライド方向に平行に配置されたロッドを備えたことを特徴とする搾り出し装置。
【請求項2】
ガスバリア性を有する合成樹脂製のシート材を貼り合わせて構成された袋体内部に封止した粘調性液体を先端外方向へ導出する貫通孔が形成される粘調性液体用包装袋であって、
前記袋体の先端縁部に前記シート材の貼り合わせ端縁の一部に融着された扁平なノズル挿着片と、
このノズル挿着片に設けられた、着脱可能なノズルの後端縁部が挿着されたときに貫通孔を形成する未貫通のノズル挿着ガイド孔と、
このノズル挿着ガイド孔に付設された、挿着後のノズルの逸脱を防止するノズル掛止手段と、を備えたことを特徴とする粘調性液体包装袋。
【請求項3】
前記掛止手段が、前記着脱可能なノズルの側面から後端縁部方向に延設されたL字掛止片と、この先端部に形成された被鉤部と、この被鉤部に掛合するノズル挿着ガイド孔の側方に形成された鉤部とを備えたことを特徴とする請求項2に記載の粘調性液体用包装袋。
【請求項4】
前記袋体の後端縁部の内側面に幅方向に亘って線状の咬合組部からなるファスナが形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の粘調性液体用包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−184713(P2009−184713A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28361(P2008−28361)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【特許番号】特許第4251659号(P4251659)
【特許公報発行日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(508209945)有限会社 ウォルハ商会 (3)
【Fターム(参考)】