説明

摩擦ダンパー

【課題】制振対象の構造体が損傷することを有効に回避可能な摩擦ダンパーを提供する。
【解決手段】二部材のうちの一方の部材に一体に設けられた第1圧接板12、14と、他方の部材に一体に設けられた第2圧接板16と、弾発力が前記圧接力となる弾性部材30と、相対移動量に応じて、板厚方向の高さ寸法を拡縮する高さ寸法変更部材40と、第1圧接板12、14、第2圧接板16、弾性部材30、及び高さ寸法変更部材40を板厚方向に重ねた状態で、これらの重なり高さが一定になるように規制すべく、これらを板厚方向に挟み込む重なり高さ規制部材60と、を有する。高さ寸法変更部材40は、所定方向の相対移動動作を回転動作に変換する第1変換機構41と、回転動作を高さ寸法の拡縮動作に変換する第2変換機構42と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物等の構造体の振動を減衰する摩擦ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
構造体の一例としての建物は、一般に、互いに隣り合う上下の階層において水平方向に相対変位し、これが、当該建物の大きな揺れの一因となる。そのため、建物の一部の階層には、相対変位等に対する補強部としてトラス構造部が設けられている。また、当該相対変位を更に低減すべく、建物によっては、トラス構造部の例えば下弦材の一部に摩擦ダンパーが設けられていることもある。
【0003】
かかる摩擦ダンパーは、層間などにおいて、互いに相対移動する一方の部材に固設された滑動板と、他方の部材に固設された摩擦板とを有し、これら滑動板と摩擦板とは、互いに所定の圧接力で圧接されている。そして、上記2つの部材が相対移動して滑動板と摩擦板とが摺動する際に、建物の層間変位の振幅によらずほぼ一定の摩擦力を生じ、この摩擦力を減衰力として用いて建物の振動を減衰する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−002118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来型の摩擦ダンパーには、次のような問題がある。
大地震時等の最大層間変位時には、建物等の制振対象の構造体自身が大きく変形していることから、当該構造体には大きな内力が生じている。このような時に、更に大きな外力が変形方向と逆向きに付与されると、その分だけ、更に内力が拡大して構造体の破壊限界強度に至り易くなる。この点につき、上記摩擦ダンパーの減衰力も、変形方向と逆向きの外力として構造体に作用し、また、層間変位の大きさによらず常にほぼ一定の減衰力を発生する。つまり、上述の従来の摩擦ダンパーによれば、構造体は、最大層間変位時の厳しい内力下においても、大きな減衰力が加えられることになり、その場合には、構造体の破壊限界強度の大きさによっては、構造体は破損してしまう。
【0006】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、制振対象の構造体が損傷することを有効に回避可能な摩擦ダンパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、
所定方向に相対移動する二部材間に介装されて、前記所定方向の相対移動に伴って摺動する圧接板同士の摩擦力を減衰力として用いて前記相対移動に係る振動を抑制する摩擦ダンパーであって、前記所定方向の相対移動量が所定値を超えたときに、前記圧接板同士の間の圧接力が低下する摩擦ダンパーにおいて、
前記二部材のうちの一方の部材に一体に設けられた第1圧接板と、
前記二部材のうちの他方の部材に一体に設けられた第2圧接板と、
弾発力が前記圧接力となる弾性部材と、
前記相対移動量に応じて、前記板厚方向の高さ寸法を拡縮する高さ寸法変更部材と、
前記第1圧接板、前記第2圧接板、前記弾性部材、及び前記高さ寸法変更部材を前記板厚方向に重ねた状態で、これらの重なり高さが一定になるように規制すべく、これらを前記板厚方向に挟み込む重なり高さ規制部材と、を有し、
前記高さ寸法変更部材は、前記所定方向の相対移動動作を回転動作に変換する第1変換機構と、前記回転動作を前記高さ寸法の拡縮動作に変換する第2変換機構と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記請求項1に示す発明によれば、相対移動量が所定値を超えたときに、圧接力は低下する。よって、制振対象の構造体に大きな内力が生じ得る相対移動が大きい時には、摩擦力たる摩擦ダンパーの減衰力は低下することになる。そして、これにより、構造体において摩擦ダンパーの前記2つの部材が取り付けられている部位の内力状態が厳しい時に、外力として作用する上記減衰力を低下させることができて、その結果、当該2つの部材が取り付けられている構造体の損傷を有効に回避可能となる。
また、上記構成によれば、高さ寸法変更部材は、前記所定方向の相対移動動作を回転動作に変換する第1変換機構と、前記回転動作を前記高さ寸法の拡縮動作に変換する第2変換機構とを有している。よって、相対移動に応じて高さ寸法を変化させることにより、弾性部材の弾発力の変化を通して、第1圧接板と第2圧接板との圧接力を変化させることができて、その結果、相対移動量が所定値を超えたときに、摩擦力を確実に低下させることができる。
【0009】
請求項2に示す発明は、請求項1に記載の摩擦ダンパーであって、
前記相対移動量が前記所定値を超えると、前記高さ寸法変更部材の前記高さ寸法が縮小することにより、前記弾性部材の弾発力の低下を介して前記圧接力が低下することを特徴とする。
【0010】
上記請求項2に示す発明によれば、相対移動量が所定値を超えると、重なり高さ規制部材により前記重なり高さが略一定に規制された状態の下で、高さ寸法変更部材の高さ寸法が縮小する。そして、この高さ寸法が小さくなることに基づき、弾性部材の圧縮変形が緩和され、その弾発力たる圧接力の低下を経て摩擦力が低下するが、ここで、この高さ寸法の縮小は、前述のように、相対移動量が所定値を超えたときに起こるように構成されている。よって、相対移動量が所定値を超えたときに、制振対象の構造体に外力として作用する上記摩擦力たる減衰力を確実に低下させ得て、その結果、構造体の損傷を有効に回避可能となる。
【0011】
請求項3に示す発明は、請求項1又は2に記載の摩擦ダンパーであって、
前記第2変換機構は、前記回転動作に基づいて前記板厚方向に沿った軸芯周りに回転する回転円板と、前記回転円板の板面を転動面として前記回転円板の回転方向に沿って転動する転動体と、を有し、
前記転動面は、前記板厚方向に突出する突部を有し、
前記第1圧接板と前記第2圧接板との前記相対移動量が前記所定値以下のときには、前記転動体は、前記突部を転動し、
前記第1圧接板と前記第2圧接板との前記相対移動量が前記所定値を超えたときに、前記転動体は、前記突部よりも前記板厚方向にへこんだ凹部を転動することを特徴とする。
【0012】
上記請求項3に示す発明によれば、相対移動量が所定値を超えたときに発生すべき減衰力たる摩擦力の大きさを、同相対移動量が所定値以下のときよりも確実に低下させることができる。詳しくは次の通りである。
先ず、第1圧接板と第2圧接板との相対移動量が所定値以下のときには、転動体は、回転円板の突部を転動しているので、高さ寸法変更部材の高さ寸法は大きい状態にある。そのため、重なり高さ規制部材の規制に基づいて、弾性部材は大きく圧縮された状態になっており、よって、当該弾性部材は、大きな圧接力でもって第1圧接板と第2圧接板とを圧接し、大きな摩擦力が発生される。
これに対して、第1圧接板と第2圧接板との相対移動量が所定値を超えたときには、転動体は、回転円板の凹部を転動するが、凹部は突部よりも板厚方向にへこんでいる。そのため、高さ寸法変更部材の高さ寸法は、上述の転動体が突部を転動する場合よりも小さくなる。そして、これに伴って、その分だけ、重なり高さ規制部材による弾性部材の圧縮変形も緩和されて圧接力が低下するので、小さな圧接力でもって第1圧接板と第2圧接板とを圧接することとなり、結果、小さな摩擦力が発生される。
【0013】
請求項4に示す発明は、請求項3に記載の摩擦ダンパーであって、
前記回転円板の前記凹部と前記突部との間には、前記凹部から前記突部に向かうに従って徐々に前記板厚方向の突出量が大きくなった傾斜部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
上記請求項4に示す発明によれば、相対移動量が所定値を超えると、転動体は突部を転動する状態から凹部を転動する状態へと移行するが、その移行過程では、上記傾斜部を転動体が転動する。よって、当該移行過程たる圧接力が低下する際の衝撃を抑制可能となる。
【0015】
請求項5に示す発明は、請求項3又は4に記載の摩擦ダンパーであって、
前記回転円板は、その両方の板面にそれぞれ前記突部を有し、
前記両方の板面のうちの一方の板面の突部と、他方の板面の突部とは、互いの前記回転方向の位置を揃えて配置されており、
前記両方の板面には、それぞれ、前記板厚方向を法線方向とする平面を有した平面部材が対向して配置され、
前記転動体は、前記回転円板の板面と前記平板部材の平面とに挟圧されながらこれらを転動することを特徴とする。
【0016】
上記請求項5に示す発明によれば、回転円板の両面に突部は形成されており、また、転動体は両面の各面に対して配置されているので、高さ寸法変更部材の高さ寸法をより大きく変更可能となる。その結果、圧接力の低下幅の拡大を通して摩擦力の低下幅を拡大することができる。
【0017】
請求項6に示す発明は、請求項3乃至5の何れかに記載の摩擦ダンパーであって、
前記回転円板は、前記第1圧接板に対して前記所定方向に相対移動不能且つ前記軸芯周りに回転可能に設けられ、
前記第1変換機構は、前記回転円板のうちで前記軸芯から偏心した部分と、前記第2圧接板とを連結するリンク部材であり、
前記リンク部材は、前記第1圧接板と前記回転円板との前記板厚方向の相対移動を許容しながら、前記第1圧接板と前記回転円板とを連結することを特徴とする。
【0018】
上記請求項6に示す発明によれば、回転円板は、前記所定方向に相対移動不能且つ前記軸芯周りに回転可能に第1圧接板に設けられ、また、リンク部材は、回転円板のうちで前記軸芯から偏心した部分を第2圧接板に連結している。よって、第1圧接板と第2圧接板との間の前記所定方向の相対移動に応じて、回転円板は速やかに回転されることになり、もって、リンク部材たる第1変換機構は、前記所定方向の相対移動動作を回転動作に速やかに変換することができる。
また、リンク部材は、回転円板と第2圧接板との間の前記板厚方向の相対移動を許容する。よって、前記所定方向の相対移動量が所定値を超えたときに、転動体の転動位置の変化を介して起こり得る回転円板の板厚方向の位置の変化を、リンク部材によって速やかに吸収可能であり、結果、圧接力の変更を円滑に行うことができる。
【0019】
請求項7に示す発明は、請求項3乃至6の何れかに記載の摩擦ダンパーであって、
前記突部は、前記回転円板の回転方向に所定間隔をあけながら複数設けられ、
前記転動体は、前記突部毎に設けられ、
前記転動体同士の互いの相対位置関係を一定に保つためのリテーナーを有していることを特徴とする。
【0020】
上記請求項7に示す発明によれば、転動体の相対位置関係を略一定に維持することができるので、転動体の転動動作の安定化を通じて、第1圧接板と第2圧接板との間の圧接力の安定化を図れ、結果、計画通りの摩擦力を、これら第1圧接板と第2圧接板との間に発生させることができる。
【0021】
請求項8に示す発明は、請求項3乃至7の何れかに記載の摩擦ダンパーであって、
前記重なり高さ規制部材は、
前記弾性部材、前記第1圧接板、前記第2圧接板、及び前記回転円板の全てを前記板厚方向に沿って貫通して設けられるボルトと、
前記ボルトに螺合するナットと、を有し、
前記ボルトの頭部と前記ナットとの両者で、前記弾性部材、前記第1圧接板、前記第2圧接板、及び前記回転円板の全てを前記板厚方向に挟み込むことにより、前記ボルトに生じた軸力が、前記圧接力として作用し、
前記ボルトは、前記回転円板の前記軸芯の位置に設けられ、
前記突部は、前記回転円板の回転方向に所定間隔をあけながら複数設けられ、
前記転動体は、前記ボルトの周囲を囲いつつ、前記突部毎に設けられていることを特徴とする。
【0022】
上記請求項8に示す発明によれば、複数の転動体は、ボルトの周囲を囲っており、これら複数の転動体が、ボルトの周囲を転動面として移動する。よって、転動体は、ボルトの軸力に基づく圧接力を、ボルトの軸芯に関して偏りの無い略対称分布で、第1圧接板から第2圧接板へと伝達可能となる。よって、圧接力の安定化を通して、計画通りの摩擦力を、第1圧接板と第2圧接板との間に発生可能となる。
【0023】
請求項9に示す発明は、請求項1乃至8の何れかに記載の摩擦ダンパーであって、
前記第2変換機構は、前記回転動作に基づいて前記板厚方向に沿った軸芯周りに回転する回転円板と、前記回転円板の板面を転動面として前記回転円板の回転方向に沿って転動する転動体と、を有し、
前記転動体は、該転動体の外周方向の位置に応じて回転半径が変化する断面非正円形状のローラーであることを特徴とする。
【0024】
上記請求項9に示す発明によれば、転動体は、その外周方向の位置に応じて回転半径が変化する断面非正円形状のローラーである。よって、相対移動量が所定値を超えたときの前記高さ寸法変更部材に係る高さ寸法の縮小を、相対移動に伴う転動体の転動に基づいて実現することができる。その結果、回転円板の板形状の選定自由度を高めることができる。すなわち、回転円板の板面を平面にすることもできるし、前記板面に前記突部を設ける場合には、当該突部の突出量を小さくすることも可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、制振対象の構造体が、摩擦ダンパーの減衰力によって損傷することを回避可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態の摩擦ダンパー20を柱梁架構3のブレース10に組み込んだ状態の概略正面図である。
【図2】図2Aは、図1中のII−II矢視図であって、ブレース10の分断端部10a,10bに介装された摩擦ダンパー20の概略中心断面図であり、図2Bは、図2A中のB−B矢視図である。
【図3】第1実施形態の摩擦ダンパー20の減衰力特性たる減衰力−変位(相対移動量)関係のグラフである。
【図4】図4A及び図4Bは、それぞれ、図2A及び図2B中の要部拡大図である。
【図5】図5Aは、回転円板45の平面図であり、図5Bは、回転円板45及び受圧板48,49の外周面をその全周に亘って平面上に展開して示した模式図である。
【図6】図6A乃至図6Dは、それぞれ、ジャッキ部材40が回転方向Dcの回転動作を板厚方向の高さ寸法H40の拡縮動作に変換する様子を示す模式図である。
【図7】図7A乃至図7Dは、図3の減衰力特性を有する摩擦ダンパー20が、特に低強度構造体に有効な理由を説明するための図である。
【図8】図8A乃至図8Eは、それぞれ、第1実施形態の変形例の説明図である。
【図9】図9Aは、リテーナー55を具備した摩擦ダンパー20の概略中心断面図であり、図9Bは、図9A中のB−B矢視図である。
【図10】第1実施形態の変形例の説明図である。
【図11】図11A乃至図11Dは、第2実施形態の摩擦ダンパーのジャッキ部材40の説明図であって、回転円板45及び受圧板48,49の外周面をその全周に亘って平面上に展開して示した模式図である。
【図12】皿ばね積層体30に用いられる皿ばね31のばね特性図である。
【図13】回転円板45が突部45cを複数有する場合に奏する作用効果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
===第1実施形態===
第1実施形態の摩擦ダンパー20は、例えば、鉄骨柱と鉄骨梁とを結合してなる柱梁架構3に係るブレース10に取り付けて使用される。以下、これを例に説明するが、取り付け対象は何等これに限らない。
図1は、第1実施形態の摩擦ダンパー20を柱梁架構3のブレース10に組み込んだ状態の概略正面図である。図2Aは、図1中のII−II矢視図であって、ブレース10の分断端部10a,10bに介装された摩擦ダンパー20の概略中心断面図であり、また、図2Bは、図2A中のB−B矢視図である。
【0028】
図1に示すように、ブレース10は、柱梁架構3の対角方向を架け渡し方向として配置されている。また、ブレース10は、その長手方向たる前記架け渡し方向の略中央の位置において分断されており、分断形成された各端部10a,10b(以下、分断端部10a,10bという)同士の間の隙間Gに摩擦ダンパー20が介装されている。
【0029】
図2Aに示すように、摩擦ダンパー20は、一方の分断端部10aに相対移動不能に一体に固定される第1圧接板としての一対の外板12,14と、他方の分断端部10bに相対移動不能に一体に固定される第2圧接板としての中板16と、弾性部材としての皿ばね積層体30と、外板12,14と中板16との架け渡し方向の相対移動量に連動して自身の高さ寸法を拡縮変更する高さ寸法変更部材としてのジャッキ部材40と、を有している。
【0030】
そして、中板16は、一対の外板12,14同士の間に介装され、これにより外板12,14と中板16とは板厚方向に直列に重ねられているとともに、更に、外板12,14には、同板厚方向に直列に皿ばね積層体30及びジャッキ部材40の両者も重ね合わせられている。そして、かかる直列の重なり状態で、これらの全ての部材12,14,16,30,40は、ひとまとまりに挟み込み部材60によって板厚方向に挟み込まれており、これにより、皿ばね積層体30の圧縮の弾発力に基づいてこれと同じ大きさの圧接力が、中板16と外板12,14との間に生じるようになっている。よって、上述のブレース分断端部10a,10b同士の相対移動時に、中板16と外板12,14とが架け渡し方向に摺動すると、当該摺動により上記圧接力に基づき中板16と外板12,14との間に摩擦力が生じ、当該摩擦力を減衰力として柱梁架構3の振動が減衰される。
【0031】
ここで、一対の外板12,14と中板16と皿ばね積層体30とジャッキ部材40との全てを重ね合わせてなる重なり高さHkは、上記挟み込み部材60(重なり高さ規制部材に相当)によって常に略一定寸法に維持されている。また、ジャッキ部材40は、後述するリンク部材41Lを介してジャッキ部材40自身に入力される架け渡し方向の相対移動量に応じて、同自身の板厚方向の高さ寸法H40を拡縮変更する。
すなわち、相対移動量が所定値α以内の場合には、上記高さ寸法H40を略一定に維持するが、他方、相対移動量が所定値αを超えたら、上記高さ寸法H40を縮小する。よって、所定値αを超えると、上記高さ寸法H40の縮小分だけ皿ばね積層体30の圧縮変形が緩和されて、弾発力が小さくなるので、中板16と外板12,14との間の圧接力の低下を介して同摩擦力が低下する。
故に、この摩擦ダンパー20によれば、図3のような減衰力特性を奏し得る。すなわち、同図3の減衰力−変位(相対移動量)関係のグラフに示すように、この摩擦ダンパー20によれば、柱梁架構3における架け渡し方向の相対移動量が所定値α以下では、大きな摩擦力Ff1たる大きな減衰力Fを発生するが、所定値αを超えたときには、同グラフ中に線分ABで示すように、摩擦力たる減衰力Fは低下し始め、そして更なる相対移動量の増加とともに減衰力Fは漸減するような特性を示す。このような減衰力特性の摩擦ダンパー20は、特に制振対象が古い既存建物等の低強度構造体の場合に有効であり、これについては後述する。
【0032】
以下、摩擦ダンパー20の各構成12,14,16,30,40,60について説明する。なお、図2Aを参照してわかるように、上記構成12,14,16,30,40,60のうちで、皿ばね積層体30、ジャッキ部材40、及び挟み込み部材60については、それぞれ2つずつ設けられているが、同じ構造なので、以下では、それぞれ一つにつき説明する。
【0033】
図2Aに示すように、一対の外板12,14は、それぞれ所定厚みの平板部材を本体とし、また、中板16も所定厚みの平板部材を本体とする。そして、これら一対の外板12,14と中板16との間には、ステンレス製等の滑動板23と、複合摩擦材料等でなる摩擦板22とが摺動可能に重ね合わせられて配されている。ここで、滑動板23及び摩擦板22はどちらも薄板状をなしている。そして、図示例では、摩擦板22が、ビス止めや接着(摩擦接合を含む)等の固定方法により、外板12,14に移動不能に固定され、滑動板23が、同様の固定方法により、中板16に移動不能に固定されている。よって、外板12,14と中板16とが架け渡し方向に相対移動すると、これら摩擦板22と滑動板23との摺動に基づいて摩擦力を発し、この摩擦力が振動の減衰力Fとなる。なお、これら摩擦板22及び滑動板23の配置関係は逆でも良い。
【0034】
また、一対の外板12,14及び中板16には、それぞれ、板厚方向に貫通するボルト挿通孔12h,14h,16hが形成されている。これらボルト挿通孔12h,14h,16hは、前述した挟み込み部材60としてのボルト60bを挿通するためのものであり、つまり、ここでは、挟み込み部材60の一部品としてボルト60bが使用され、そして、このボルト60bの先端部に螺合されたナット60nとの締結によって、上述したように、一対の外板12,14と中板16と皿ばね積層体30とジャッキ部材40との全てを一斉に挟み込むようになっている。
【0035】
ここで、外板12,14のボルト挿通孔12h,14hの孔径は、ボルト60bの外径と略同径に設定されており、よって、ボルト60bと外板12,14とは架け渡し方向に略相対移動不能に係合している。しかし、中板16のボルト挿通孔16hは、架け渡し方向に沿って長い長孔状に形成され、もって、当該長孔状のボルト挿通孔16hをボルト60bは架け渡し方向に移動可能になっており、これにより、ボルト60bと中板16とは架け渡し方向に相対移動可能に係合している。そして、このボルト60bと中板16との架け渡し方向の相対移動可能な係合構造に基づいて、中板16と一対の外板12,14との架け渡し方向の相対移動が許容されている。なお、この架け渡し方向が、請求項の「所定方向」に相当する。
【0036】
皿ばね積層体30は、複数の皿ばね31,31…が重ね合わされて構成される。そして、この皿ばね積層体30は、一方の外板14に板厚方向の外方から重ねられている。また、各皿ばね31の中央には、板厚方向に沿った貫通孔31hが形成されており、各貫通孔31hに挟み込み部材60としての上記ボルト60bが挿通されている。そして、ボルト60bの先端部は皿ばね積層体30から突出し、同先端部には上述のナット60nが螺合している。
【0037】
一方、ジャッキ部材40は、ボルト60bの頭部60bh側に設けられている。すなわち、ボルト60bの頭部60bhと外板12との間に、板厚方向に突っ張った状態で介装されている。また、このジャッキ部材40は、前述したように自身の板厚方向の高さ寸法H40を拡縮変更可能であり、更に、同ジャッキ部材40は、当該高さ寸法H40を、外板12,14と中板16との相対移動に連動させて変更する。そして、当該相対移動に基づいて高さ寸法H40が拡大すれば、ボルト60bの頭部60bhと外板12との間のジャッキ部材40の突っ張り状態が更に助長されて、これによりボルト60bの軸力Nの増大を通じて皿ばね積層体30は更に圧縮され、その弾発力たる圧接力が大きくなる分だけ、摩擦板22と滑動板23との間の摩擦力が増大する。他方、これとは逆に、相対移動に基づいて高さ寸法H40が縮小すれば、ジャッキ部材40の突っ張り状態が緩和されて、これによりボルト60bの軸力Nの減少を通じて皿ばね積層体30の圧縮は緩和され、その弾発力たる圧接力が小さくなる分だけ上記摩擦力は減少する。
【0038】
このような相対移動に応じた板厚方向の拡縮機能を実現すべく、ジャッキ部材40は、架け渡し方向の相対移動動作を回転動作に変換する第1変換機構41と、前記回転動作を前記高さ寸法H40の拡縮動作に変換する第2変換機構42と、を有している。
【0039】
図4A及び図4Bは、それぞれ、これら変換機構41,42を説明するための図2A及び図2B中の要部拡大図である。
図2Bに示すように、第1変換機構41は、中板16を、後述する第2変換機構42の回転円板45に連結するリンク部材41Lを本体とする。詳しくは、このリンク部材41Lの一端部41aLは、中板16に(正確には中板16側の部材16aに)回転可能にピン接合されており、また、同リンク部材41Lの他端部41Lbは、回転円板45において、その回転中心たる軸芯C45から所定量だけ偏心した位置の孔部45pに回転可能にピン接合されている。よって、回転円板45を回転可能に支持する外板12,14に対して中板16が架け渡し方向に相対移動すると、その相対移動動作が、リンク部材41Lを介して、回転動作に変換されて回転円板45に伝達され、もって、図4Bに二点鎖線で示すように、当該相対移動に応じて回転円板45は軸芯C45周りの回転動作をする。
【0040】
ちなみに、図2A及び図2Bの例では、ジャッキ部材40,40が架け渡し方向に並んで一対設けられているが、上述のリンク部材41Lは、そのうちの一方のジャッキ部材40たる同図中右側のジャッキ部材40用のものである。そして、もう一方のジャッキ部材40たる同図中左側のジャッキ部材40用のリンク部材41L’としては、ここでは、右側のジャッキ部材40の回転円板45の孔部45pと、左側のジャッキ部材40の回転円板45の孔部45pとをピン接合で繋ぐリンク部材41L’が設けられている。つまり、左側のジャッキ部材40の回転円板45については、リンク部材41L’及び右側のジャッキ部材40の回転円板45を介して、中板16に連結されている。
【0041】
図4A及び図4Bに示すように、第2変換機構42は、(1)ボルト60bを通す貫通孔45hが略平面中心に設けられ、同ボルト60bを軸芯C45として回転動作可能に同ボルト60bに支持された上記の回転円板45と、(2)回転円板45を板厚方向の両方から挟みつつ平面48a,49aを回転円板45に対向して配された平面部材としての一対の略円形の受圧板48,49と、を有する。なお、一対の受圧板48,49の略平面中心にもボルト60bを通す貫通孔48h,49hが設けられており、これにより、一対の受圧板48,49の間に回転円板45が介装された状態に維持される。また、図4Aに示すように、一対の受圧板48,49のうちの板厚方向の外方の受圧板48の片面48aには、ボルト60bを通す上記貫通孔48hが内周面となった円筒部48pが他方の受圧板49の方へ向けて一体に突出形成されている。よって、正確には、回転円板45の貫通孔45h及び受圧板49の貫通孔49hは、この円筒部48pを介してボルト60bを挿通していることになる。ちなみに、この円筒部48pは、無くても良い。
【0042】
図5Aは、回転円板45の平面図であり、図5Bは、回転円板45及び受圧板48,49の板厚方向の厚み変化がわかるように、これらの外周面をその全周に亘って平面上に展開して示した模式図である。
図5A及び図5Bに示すように、回転円板45における受圧板48,49との対向面45a,45bには、回転円板45の回転方向Dcに沿って所定ピッチP45で複数(図示例では四つ)の突部45c,45c…が互いに同形に形成されている。詳しくは、回転円板45の両面45a,45bには、それぞれ突部45c,45c…が設けられており、また同両面45a,45bにおいて互いに対応する突部45c,45c同士については、その回転方向Dcの位置が互いに同じ位置に揃っている。また、回転方向Dcに隣り合う突部45c,45c同士の間の部分は、突部45cよりも板厚方向にへこんだ凹部45dになっており、更に、凹部45dと突部45cとの間の部分は、凹部45dから突部45cへ向かうに従って徐々に板厚方向の突出量が大きくなった傾斜部45fになっている。なお、図5A及び図5Bの例では、凹部45dは平面を有さないノッチ状となっているが、平面を有していても良い。また、回転円板45と各受圧板48,49との間には、転動体50として複数の断面正円形状フラットローラー50,50…が、突部45cの前記回転方向Dcの形成ピッチP45と同じピッチP50で回転円板45の全周に亘って介装されており、これらフラットローラー50,50…は、回転円板45が回転動作をすると、回転円板45と受圧板48,49とに挟まれた状態で、当該回転動作に応じて、回転円板45の板面45a,45b及び受圧板48,49の平坦な板面48a,49aをそれぞれ転動面として回転方向Dcに沿って転動する。
【0043】
よって、例えば、図6Aや図6Bに示すように、回転円板45の回転動作により、フラットローラー50が突部45cを転動する状態になると、ジャッキ部材40の高さ寸法H40は大きい状態になり、他方、図6Cや図6Dに示すように、同回転動作により、フラットローラー50が傾斜部45fや凹部45dを転動する状態になると、突部45cと傾斜部45f又は凹部45dとの板厚方向の寸法変化分だけ、高さ寸法H40は小さくなり、このようにして、このジャッキ部材40は、リンク部材41Lにより伝達された回転動作を板厚方向の拡縮動作に変換する。
【0044】
ここで、上述の各突部45cの頂面45eは、図5Bに示すように、板厚方向を法線方向とする略平面に形成され、また、図5A及び図5Bに示すように、頂面45eの回転方向Dcの代表長さL45e(頂面45eにおいて転動体50の回転軸方向の中央位置P50が当接すべき位置の回転方向Dcでの長さL45e)は、上記所定値αだけ相対移動した際に、転動体50が、頂面45eの中央位置から、同面45eと傾斜部45fとの境界位置Bfまで転動するように設計される。更に、相対移動量が零値の状態、つまり相対移動無しの状態では、図6Aに示すように、転動体50は突部45cの頂面45eの中心に位置しており、これにより、高さ寸法H40は最大になっていて、皿ばね積層体30も最大に圧縮された高圧縮状態にある。
【0045】
よって、柱梁架構3への小さな振動の入力により、外板12,14と中板16とが所定値α以内で相対移動する場合には、図6A及び図6Bに示すように、回転円板45の回転により転動体50は突部45cの頂面45eを転動しているので、上述の高さ寸法H40は大きい状態にあって、皿ばね積層体30は上述の高圧縮状態に維持されて、圧接力も大きいままで変化ない。これにより、摩擦板22と滑動板23との摺動による前記摩擦力も大きな略一定値Ff1に維持されて、その結果として、図3に示すように、摩擦ダンパー20は、相対移動量が所定値α以下の範囲では、大きな略一定値Ff1の減衰力Fを発生する。
【0046】
これに対して、柱梁架構3への大きな振動の入力により、所定値αを超えて相対移動する場合には、図6Cに示すように、回転円板45の回転により転動体50は突部45cの頂面45eを超えて傾斜部45fを転動し、そして、更に相対移動量が大きくなると回転円板45の更なる回転により、図6Dに示すように凹部45dを転動することになる。そして、かかる傾斜部45fや凹部45dでの転動により、上述の高さ寸法H40は漸減していき、これに伴って、皿ばね積層体30の弾発力の漸減を通して圧接力の漸減を来たし、その結果として、図3に示すように、摩擦力たる減衰力Fも上記略一定値Ff1から漸次低下することになる。
このような減衰力特性を有する摩擦ダンパー20は、特に制振対象の構造体が古い既存建物等の低強度構造体の場合に有効に利用される旨を前述したが、以下、これについて説明する。図7A乃至図7Dは、その説明図である。なお、図7Aは、柱梁架構3において従来の摩擦ダンパーにより減衰力Fが付与される力点部位(外力が付与される部位のこと)の水平方向の変位と、力点部位に生じる内力との関係を示すグラフであり、図7Bは、従来の摩擦ダンパーの振動エネルギー吸収履歴特性のグラフである。また、図7Cは、第1実施形態の摩擦ダンパー20の振動エネルギー吸収履歴特性のグラフであり、図7Dは、第1実施形態の摩擦ダンパー20により減衰力Fが付与される力点部位の水平方向の変位と、力点部位に生じる内力との関係を示すグラフである。なお、図7Cは、前述の図3と概ね同じグラフである。
【0047】
図7A中、一点鎖線で示すように、振動の最大変位時には、建物自身が大きく変形していることから、建物の各部位には大きな内力が生じている。このような状態にて、更に外力を変形方向と逆の方向に付与すると、外力が付与される部位たる力点部位では、その内力が、外力の付与分だけ更に拡大する。すなわち、前記力点部位の内力は、図7A中一点鎖線で示す力点部位自身の変形による内力に、外力により生じる内力を足し合わせたものとなる。
【0048】
ここで、通常、摩擦ダンパーの減衰力Fも、変形方向と逆向きの外力として作用する。また、従来の摩擦ダンパーの場合には、図7Bに示すように、その摩擦力たる減衰力Fの大きさは、振動の変位によらず略一定である。よって、従来の摩擦ダンパーでは、図7Aに一点鎖線で示す内力に対して図7Bの減衰力Fにより生じる内力を加算してなる前記力点部位の実際の内力は、図7Aの実線のようになる。つまり、従来の摩擦ダンパーの場合には、柱梁架構3の前記力点部位に対しては、振動の最大変位時の厳しい内力下においても、大きな減衰力Fによる大きな内力が更に追加で生じることになり、この場合には、内力が拡大して当該力点部位の破壊限界強度Zに至り易くなる。
【0049】
これに対して、上記第1実施形態の摩擦ダンパー20によれば、図7Cに示すように、相対移動によって水平変位が前記所定値αに相応する特定値α1を超えると、水平変位が大きくなるにつれて減衰力Fは低下する。よって、図7Dに一点鎖線で示す内力に対して図7Cの減衰力Fにより生じる内力を加算してなる実際の内力は、図7Dの実線のようになる。つまり、第1実施形態の摩擦ダンパー20によれば、水平変位が、前記所定値αに相応する特定値α1を超えた場合には、振動の最大変位に近づくに従って減衰力Fが小さくなるので、減衰力Fの入力に伴う前記力点部位の内力の拡大を、特に厳しい内力状態の最大変位時において有効に抑制できる。よって、振動により建物が大きく相対変位した場合でも、力点部位の破壊限界強度Zに至ることを有効に回避し得て、その結果、当該摩擦ダンパー20は、特に古い既存建物等の低強度構造体にその効力を発揮する。
【0050】
ところで、上述の第1実施形態では、突部45cを回転円板45の両面45a,45bに設けていたが、何等これに限るものではなく、図8A及び図8Bに示すように、突部45cを両面45a,45bのうちの一方の面45b(45a)のみに設け、他方の面45a(45b)には突部45cを設けなくても良い。すなわち、当該他方の面45a(45b)は平面でも良い。
そして、当該構成によっても、一対の外板12,14と中板16との架け渡し方向の相対移動に伴って、回転円板45上における転動体50の転動位置が、突部45cから傾斜部45fを経て凹部45dへと移ることになって、この移る際には、ジャッキ部材40の高さ寸法H40が変化するので、上述と同様のメカニズムに基づいて、相対移動量が大きいときの摩擦力を低下させることができる。
【0051】
また、回転円板45の両面45a,45bのうちで、突部45cを設けない方の面の転動体50については、回転円板45が対向する受圧板48との間で円滑に回転方向Dcの相対滑りが可能な場合に限り、図8Cに示すように省略しても良い。
【0052】
また、図8Dに示すように、突部45cを回転円板45の両面45a,45bのうちの一方の面45aのみに設け、他方の面45bは平面とするとともに、突部45cが設けられた上記面45aと対向する受圧板48の面48aにも、同様の突部48c’、凹部48d’、及び傾斜部48f’を設けても良い。
【0053】
更には、転動体50としての上述のフラットローラー50に代えて、真球等の球状部材を用いても良いし、更には、断面非正円形状のローラーを用いても良い。なお、後者の断面非正円形状のローラーというのは、当該ローラーの外周方向の位置に応じてその回転半径が変化したローラーのことであり、その一例としては、図8Eに示すような、断面形状が楕円形の円柱体様の楕円ローラー52等が挙げられる。そして、このような断面非正円形状のローラー52にあっては、同ローラー52が転動することだけで、前記高さ寸法H40を変化させることができる。よって、この場合には、回転円板45の両面45a,45bの突部45cを省略してこれらの各面45a,45bを、それぞれ図8Dに示すような平面にすることもできる。但し、上述の突部45cを有した回転円板45に対して、当該断面非正円形状のローラー52を適用可能なのは言うまでもなく、その場合には、前記高さ寸法H40をより大きく変化させることができて、その結果、圧接力の低下幅の拡大を通じて、摩擦力の低下幅を拡大することができる。
【0054】
また、望ましくは、図9A及び図9B(図9A中のB−B矢視図)に示すように、複数の転動体50,50…に対してリテーナー55を設けると良い。ここで、基本的には、転動体50,50…は、高い圧接力で回転円板45及び受圧板48の各面45a,45b,48a,49aに挟圧されているので、架け渡し方向の外板12,14と中板16との相対移動に応じて当該回転円板45が回転動作をする際に、転動体50は、上記の各面45a,45b,48a,49aに対して相対滑りを概ね起こすことなく各面45a,45b,48a,49aを回転円板45の回転方向Dcに沿って転がる。つまり、各面45a,45b,48a,49aに対して転がり接触する。しかし、不測の事態により相対滑りを起こして離脱する虞もある。そのため、リテーナー55により、複数の転動体50,50…の相対位置関係を一定に保つと良く、そうすれば、ある特定の転動体50が相対滑りを起こして各面45a,45b,48a,49aから離脱しそうになった時に、リテーナー55を介して他の転動体50から、その離脱を阻止して留めようとする力が働くので、各転動体50の離脱を速やかに抑えることができる。
かかるリテーナー55の具体例としては、例えば、転動体50の直径よりも薄い板厚の円板部材55を本体として用い、この円板部材55における各転動体50に対応する位置に、転動体50の収容孔55hとして、転動体50よりも若干大きい略相似形状の貫通孔55hを形成したもの等が挙げられる。ちなみに、このリテーナー55に係る円板部材55の平面中心には、板厚方向にボルト60bを挿通するためのボルト挿通孔55bが形成されており、これにより、リテーナー55自体もジャッキ部材40から離脱不能に保持されている。
【0055】
また、上述の第1実施形態では、回転円板45の突部45cと凹部45dとの間に傾斜部45fを設けていたが、場合によっては、傾斜部45fは無くても良い。つまり、図10に示すように、突部45cと凹部45dとの間に一段の段差45jが形成されていても良いし、場合によっては、複数段の段差が階段状に形成されていても良い。
但し、この場合の各段差45jの高さは、転動体50の半径よりも小さいことが必要であり、この条件を満たしていれば、転動体50は問題無く段差を乗り越えることができる。ただ、段差45jを乗り越える際には衝撃が生じるので、望ましくは第1実施形態のように傾斜部45fを設ける方が円滑に移行できるので、その方が良い。なお、上述の第1実施形態では、傾斜部45fを平面で形成していたが、曲面で形成しても良い。
【0056】
ところで、図4A及び図4Bに示すように、リンク部材41Lは、中板16に対する回転円板45の板厚方向の相対移動を許容する構造41mを有している。これは、ジャッキ部材40の高さ寸法H40の変更時に、回転円板45の位置が板厚方向に変化する虞があるためである。かかる板厚方向の相対移動の許容構造は、この図示例では、リンク部材41Lにおける中板16との連結部分41Lbの近傍に形成された薄厚部41mであり、同図示例では、かかる薄厚部41mが、複数箇所の一例として二箇所に設けられているが、一箇所でも良い。そして、かかる薄厚部41mは、板厚方向の厚みが薄いことから、板厚方向に弾性屈曲変形自在となり、この屈曲により回転円板45の板厚方向の移動を許容して、つまり板厚方向の相対移動については回転円板45に伝達しない。但し、リンク部材41Lは、架け渡し方向の中板16との相対移動については回転円板45に伝達することができる。この理由は、架け渡し方向の相対移動時には薄厚部41mに架け渡し方向の引っ張り力や圧縮力が作用するが、これによる薄厚部41mの伸び変形や圧縮変形は小さいからである。なお、許容構造は何等これに限るものではなく、これ以外の種々の方法を適用可能である。
【0057】
また、上述の説明では、転動体50は、図5Aに示すように、回転円板45の全周に亘って所定ピッチP50で配置されている旨を述べたが、かかる状態を、ボルト60bに着目して考えると、複数の転動体50,50…はボルト60bの周囲を囲って配置されていると言うこともできる。そして、このように配置されていれば、転動体50,50…は、ボルト60bの軸力Nに基づく圧接力を、ボルト60bの軸芯に関して偏りの無い略対称分布で、外板12,14及び中板16へ伝達可能となる。よって、圧接力の安定化を通して、計画通りの摩擦力を、摩擦板22と滑動板23との間で発生可能となる。
【0058】
===第2実施形態===
図11A乃至図11Dは、第2実施形態の摩擦ダンパーのジャッキ部材40の説明図であり、前述の図5Bと同様、回転円板45及び受圧板48,49の板厚方向の厚み変化がわかるように、これらの外周面をその全周に亘って平面上に展開して示した模式図である。
前述の第1実施形態との主な相違点は、転動体50を無くす代わりに受圧板48,49に突部48c,49cを形成している点にある。よって、主にこの相違点について説明し、これ以外の同一の構成については第1実施形態と同じ符号を付してその説明については省略する。
【0059】
図11Aに示すように、受圧板48,49における回転円板45と対向する面48a,49aには、回転円板45の突部45cに対応させて回転方向Dcに沿って同形の突部48c,49cが設けられている。そして、回転円板45と同様に、突部48c(49c)と突部48c(49c)との間には凹部48d(49d)が形成され、また、突部48c(49c)と凹部48d(49d)との間には、傾斜部48f(49f)が形成されている。また、受圧板48,49及び回転円板45の突部48c,49c,45cと凹部48d,49d,45dとに係り、各突部48c,49c,45cが、対向する凹部48d,49d,45dに入り込み可能にする目的で、凹部48d,49d,45dの架け渡し方向の幅が、突部48c,49c,45cの架け渡し方向の幅よりも広く設定されている。更には、突部48c,49c,45cの頂面48e,49e,45eの回転方向Dcの平均長さLeは、上記所定値αだけ相対移動した際の回転円板45の回転動作によって、各頂面48e,49e,45eの中央位置同士が対向する状態から、頂面48e,49e,45eと傾斜部48f,49f,45fとの境界位置同士が対向する状態になるように設計される。
【0060】
そして、かかる摩擦ダンパーにあっても、図3のような減衰力特性を奏する。すなわち、相対移動量が所定値α以下では、大きな摩擦力Ff1たる大きな減衰力Fを発生するが、所定値αを超えたときには、摩擦力たる減衰力Fは低下し始め、そして更なる相対移動量の増加とともに減衰力Fは漸減するような特性を示す。
【0061】
詳しく説明すると、先ず、相対移動量が零値の状態、つまり相対移動無しの状態においては、図11Aに示すように、回転円板45と一方の受圧板48とは、互いに当接する突部45cと突部48cとが、突部45c,48cの中心同士で対向した状態となり、同様に、回転円板45と他方の受圧板49とは、互いに当接する突部45cと突部49cとが、突部45c,49cの中心同士で対向した状態となるように初期設定されており、つまり、ジャッキ部材40の高さ寸法H40は大きい状態になっている。
【0062】
そして、この初期状態から外板12,14と中板16とが相対移動すると、リンク部材41Lを介して当該相対移動動作が回転動作として回転円板45に入力されて、当該回転円板45は回転動作をし、これにより、受圧板48,49に対して相対的に回転円板45が回転するが、ここで、相対移動量が所定値α以内の場合には、図11A及び図11Bのように回転円板45の突部45cの頂面45eと受圧板48,49の突部48c,49cの頂面48e,49eとが、少なくともそれらの一部で対向当接している。よって、ジャッキ部材40の高さ寸法H40は、上述の大きい状態のまま変化せず、これにより、摩擦板22と滑動板23との摺動による前記摩擦力も大きな略一定値Ff1に維持されて、その結果、図3に示すように、摩擦ダンパー20は、相対移動量が所定値α以下の範囲では、大きな略一定値Ff1の減衰力Fを発生する。
【0063】
これに対して、相対移動量が所定値αを超えると、先ず、図11Cに示すように、突部45cの頂面45eと突部48c,49cの頂面48e,49eとが、互いに一部も対向しない完全非対向状態となり、これに伴って、回転円板45の傾斜部45fと受圧板48,49の傾斜部48f,49fとが互いに略平行な状態をもって対向して当接し始め、更に相対移動量が大きくなると、図11Dに示すように、回転円板45の突部45cの頂面45eと、受圧板48,49の凹部48d,49dとが対向して当接する状態となる。ここで、幾何学的関係に基づけば、突部45cの頂面45eと突部48c,49cの頂面48e,49eとが当接する状態(図11A、図11B)よりも、傾斜部45fと傾斜部48f,49fとが当接する状態(図11C)の方が、ジャッキ部材40の高さ寸法H40は小さくなり、更に、突部45cの頂面45eと凹部48d,49dとが当接する状態(図11D)の方が更に高さ寸法H40は小さくなる。よって、相対移動量が所定値αを超えると、相対移動量が増加するにつれて、高さ寸法H40は漸減していくこととなり、これに伴って、皿ばね積層体30の弾発力の漸減を通して圧接力の漸減を来たし、結果、図3に示すように、摩擦力たる減衰力Fも上記略一定値から漸次低下することになる。
【0064】
但し、この第2実施形態よりも、前述の第1実施形態の方が、回転円板45の回転動作に要する力を小さくできるので、望ましい。詳しくは次の通りである。摩擦ダンパーの設計の際の減衰力Fの算定には、外板12,14と中板16との間に設けられた前述の滑動板23と摩擦板22との間で発生すべき摩擦力以外に、回転円板45の回転動作抵抗を考慮する必要がある。この回転動作抵抗は、主に回転円板45の回転時に回転円板45と受圧板48,49との間で生じる摩擦力等であるが、この摩擦力等の回転動作抵抗については、回転円板45と受圧板48,49との間に転動体50,50…を介装して転動させることにより、格段に縮小することができる。すなわち、上述の滑動板23と摩擦板22との間で発生すべき摩擦力との比較において、ほぼ無視できるレベルまで回転動作抵抗を小さくすることができる。よって、摩擦ダンパーの設計に係る減衰力の算定の際に、上述の回転動作抵抗を考慮しなくて済み、その結果、装置設計の容易化を図ることができる。
ちなみに、ここで言う「転動」とは、転動体たるフラットローラー50と回転円板45及び受圧板48,49の各面45a,45b,48a,49aとが、概ね相対滑りをすることなく、各面45a,45b,48a,49a上をフラットローラー50が回転円板45の回転方向Dcに沿って回転して移動することを意味し、つまり、フラットローラー50が、各面45a,45b,48a,49aに対して概ね転がり接触することを意味する。但し、フラットローラー50の転動経路が、回転円板45の軸芯C45周りの円弧軌道であることから、フラットローラー50の内輪差、つまりフラットローラー50の回転半径方向の内側と外側とで周回半径が異なることに基づいて、多少の相対滑りは生じることになる。そのため、この相対滑りが問題になる場合には、上記のフラットローラー50に代えて、円錐コロを用いても良い。なお、円錐コロを用いた場合には、円錐コロが転動すべき回転円板45及び受圧板48,49の各面45a,45b,48a,49aは、円錐コロの円錐面に対応したテーパー面状に形成されることになる。
【0065】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変形が可能である。例として以下に示すような実施形態が挙げられる。
【0066】
上述の実施形態では、第1圧接板としての一対の外板12,14の間に第2圧接板としての一枚の中板16が介装されている構成を例示したが、第1圧接板の枚数は一枚でも良いし、三枚以上でも良い。また、中板16の枚数も二枚以上であっても良い。例えば、一枚の第1圧接板と一枚の第2圧接板とが相対移動可能に圧接されていても良いし、又は、第1圧接板と第2圧接板とがそれぞれ二枚以上交互に重ね合わせられていても良い。
【0067】
上述の実施形態の説明では、摩擦板22の素材について詳しく述べていなかったが、その素材としては、有機系摩擦材や無機系摩擦材等を使用し得る。有機系摩擦材は、熱硬化型樹脂を結合材として、アラミド繊維,ガラス繊維,ビニロン繊維,カーボンファイバーなどの繊維材料と、カシューダスト,鉛などの摩擦調整材と、硫酸バリュームなどの充填剤とからなる複合摩擦材料で形成される。上記熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂,メラミン樹脂,フラン樹脂,ポリイミド樹脂,DFK樹脂,グアナミン樹脂,エポキシ樹脂,キシレン樹脂,シリコーン樹脂,ジアリルフタレーン樹脂,不飽和ポリエステル樹脂などがある。一方、滑動板23は上述したステンレスやチタンなどの耐食性を有する材料によって形成される。
【0068】
上述の実施形態では、弾性部材として、皿ばね積層体30を例示したが、線形ばね特性を示す線形ばねであれば、何等これに限るものではなく、例えば、コイルスプリングや板ばね等を用いても良い。すなわち、上述した皿ばね積層体30にあっては、そのばね特性が略線形となる範囲で使用される。詳しくは、図12に示すように、一般に皿ばね31のばね特性は、ボルト60bの軸方向の皿ばね31の変形量εに対して荷重たる弾発力σがほぼ変化しない非線形ばね領域Sを備えているが、上述の実施形態の摩擦ダンパー20においては、ボルト60bに所定の軸力Nを付加した状態の皿ばね31の変形量εが、当該非線形領域S内に入るようには設定されておらず、荷重に対する変形量εが略線形に変化する略線形領域R内に入るように設定されている。そして、これにより、前述のジャッキ部材40の高さ寸法H40の変化に対して、皿ばね31の弾発力がほぼ比例して変化するようになっている。
【0069】
上述の第1実施形態では、回転円板45の両面45a,45bに、それぞれ、複数の一例として四つの突部45c,45c…を設けていたが、各面45a,45bの突部45cの数は、それぞれ1つであっても良い。
但し、上述の図5A及び図5Bの第1実施形態のように、回転円板45における少なくとも一方の面45a(45b)に突部45cを複数有していれば、図13のような減衰力特性を奏することができて、結果、制振対象の構造体が想定外の相対変位をした場合に、当該相対変位を有効に抑制することができる。
詳説すると、例えば、前述の突部45cの頂面45eと傾斜部45fと凹部45dとの
回転方向Dcの各代表長さ(頂面45e、傾斜部45f、及び凹部45dのそれぞれにおいて転動体50の回転軸方向の中央位置P50(図5B)が当接すべき位置での回転方向Dcの長さ)は、構造体が想定最大変位分だけ相対移動した際に、転動体50が突部45cの頂面45eの中央位置から凹部45dの位置まで転動するように設計される。そのため、基本的には、突部45cを転動する転動体50が、その隣の突部45cを転動することは、あり得ない。しかしながら、万一この想定最大変位を超えるような振動が入力された場合には、上述のようなことが起こり得て、その場合、つまり転動体50が上記隣の突部45cまで達してこれを転動する場合には、これにより、相対移動により一旦小さくなった前記高さ寸法H40が、反転して大きくなる。これに伴い、圧接力の反転漸増を来たし、摩擦力たる減衰力Fも反転漸増し、つまり、その減衰力特性は、図13中に線分AB及び線分BCで示すように、相対移動の増加とともに一旦漸減した減衰力Fが、反転漸増するカーブを描く。そして、この反転漸増した減衰力Fは、想定最大変位を超える変位を止める方向に有効に働くので、結果、構造体の想定外の相対変位を有効に抑制可能となる。
【符号の説明】
【0070】
3 柱梁架構、10 ブレース、10a 分断端部、10b 分断端部、
12 外板(第1圧接板)、12h ボルト挿通孔、
14 外板(第1圧接板)、14h ボルト挿通孔、
16 中板(第2圧接板)、16h ボルト挿通孔、
16a 部材、
20 摩擦ダンパー、 22 摩擦板、23 滑動板、
30 皿ばね積層体(弾性部材)、31 皿ばね、31h 貫通孔、
40 ジャッキ部材(高さ寸法変更部材)、
41 第1変換機構、
41L リンク部材、41aL 一端部、41Lb 他端部(連結部分)、
41m 薄厚部、
42 第2変換機構、45 回転円板、45a 面、45b 面、
45c 突部、45e 頂面、45d 凹部、45f 傾斜部、
45h 貫通孔、45j 段差、45p 孔部、
48 受圧板(平面部材)、48a 面、
48c 突部、48e 頂面、48d 凹部、48f 傾斜部、
48h 貫通孔、48p 円筒部、
48c’ 突部、48d’ 凹部、48f’ 傾斜部、
49 受圧板(平面部材)、49a 面、49c 突部、
50 フラットローラー(転動体)、
52 楕円ローラー(断面非正円形状のローラー、転動体)、
55 リテーナー、
55b 挿通孔、55h 収容孔、
60 挟み込み部材(重なり高さ規制部材)、
60b ボルト、 60bh 頭部、60n ナット、
G 隙間、N 軸力、R 略線形領域、S 非線形領域、
Dc 回転方向、C45 軸芯、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に相対移動する二部材間に介装されて、前記所定方向の相対移動に伴って摺動する圧接板同士の摩擦力を減衰力として用いて前記相対移動に係る振動を抑制する摩擦ダンパーであって、前記所定方向の相対移動量が所定値を超えたときに、前記圧接板同士の間の圧接力が低下する摩擦ダンパーにおいて、
前記二部材のうちの一方の部材に一体に設けられた第1圧接板と、
前記二部材のうちの他方の部材に一体に設けられた第2圧接板と、
弾発力が前記圧接力となる弾性部材と、
前記相対移動量に応じて、前記板厚方向の高さ寸法を拡縮する高さ寸法変更部材と、
前記第1圧接板、前記第2圧接板、前記弾性部材、及び前記高さ寸法変更部材を前記板厚方向に重ねた状態で、これらの重なり高さが一定になるように規制すべく、これらを前記板厚方向に挟み込む重なり高さ規制部材と、を有し、
前記高さ寸法変更部材は、前記所定方向の相対移動動作を回転動作に変換する第1変換機構と、前記回転動作を前記高さ寸法の拡縮動作に変換する第2変換機構と、を有することを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項2】
請求項1に記載の摩擦ダンパーであって、
前記相対移動量が前記所定値を超えると、前記高さ寸法変更部材の前記高さ寸法が縮小することにより、前記弾性部材の弾発力の低下を介して前記圧接力が低下することを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の摩擦ダンパーであって、
前記第2変換機構は、前記回転動作に基づいて前記板厚方向に沿った軸芯周りに回転する回転円板と、前記回転円板の板面を転動面として前記回転円板の回転方向に沿って転動する転動体と、を有し、
前記転動面は、前記板厚方向に突出する突部を有し、
前記第1圧接板と前記第2圧接板との前記相対移動量が前記所定値以下のときには、前記転動体は、前記突部を転動し、
前記第1圧接板と前記第2圧接板との前記相対移動量が前記所定値を超えたときに、前記転動体は、前記突部よりも前記板厚方向にへこんだ凹部を転動することを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項4】
請求項3に記載の摩擦ダンパーであって、
前記回転円板の前記凹部と前記突部との間には、前記凹部から前記突部に向かうに従って徐々に前記板厚方向の突出量が大きくなった傾斜部が設けられていることを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の摩擦ダンパーであって、
前記回転円板は、その両方の板面にそれぞれ前記突部を有し、
前記両方の板面のうちの一方の板面の突部と、他方の板面の突部とは、互いの前記回転方向の位置を揃えて配置されており、
前記両方の板面には、それぞれ、前記板厚方向を法線方向とする平面を有した平面部材が対向して配置され、
前記転動体は、前記回転円板の板面と前記平板部材の平面とに挟圧されながらこれらを転動することを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項6】
請求項3乃至5の何れかに記載の摩擦ダンパーであって、
前記回転円板は、前記第1圧接板に対して前記所定方向に相対移動不能且つ前記軸芯周りに回転可能に設けられ、
前記第1変換機構は、前記回転円板のうちで前記軸芯から偏心した部分と、前記第2圧接板とを連結するリンク部材であり、
前記リンク部材は、前記第1圧接板と前記回転円板との前記板厚方向の相対移動を許容しながら、前記第1圧接板と前記回転円板とを連結することを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項7】
請求項3乃至6の何れかに記載の摩擦ダンパーであって、
前記突部は、前記回転円板の回転方向に所定間隔をあけながら複数設けられ、
前記転動体は、前記突部毎に設けられ、
前記転動体同士の互いの相対位置関係を一定に保つためのリテーナーを有していることを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項8】
請求項3乃至7の何れかに記載の摩擦ダンパーであって、
前記重なり高さ規制部材は、
前記弾性部材、前記第1圧接板、前記第2圧接板、及び前記回転円板の全てを前記板厚方向に沿って貫通して設けられるボルトと、
前記ボルトに螺合するナットと、を有し、
前記ボルトの頭部と前記ナットとの両者で、前記弾性部材、前記第1圧接板、前記第2圧接板、及び前記回転円板の全てを前記板厚方向に挟み込むことにより、前記ボルトに生じた軸力が、前記圧接力として作用し、
前記ボルトは、前記回転円板の前記軸芯の位置に設けられ、
前記突部は、前記回転円板の回転方向に所定間隔をあけながら複数設けられ、
前記転動体は、前記ボルトの周囲を囲いつつ、前記突部毎に設けられていることを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の摩擦ダンパーであって、
前記第2変換機構は、前記回転動作に基づいて前記板厚方向に沿った軸芯周りに回転する回転円板と、前記回転円板の板面を転動面として前記回転円板の回転方向に沿って転動する転動体と、を有し、
前記転動体は、該転動体の外周方向の位置に応じて回転半径が変化する断面非正円形状のローラーであることを特徴とする摩擦ダンパー。

【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−132520(P2012−132520A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286058(P2010−286058)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(596112527)大同精密工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】