説明

摩擦攪拌処理技術を使用する3物体の接合

部分的に消耗可能なピンを使用して摩擦攪拌リベット締結を実施するための摩擦攪拌工具が提供され、このピンは、その底部表面に切削縁部を含み、この工具は第2の材料と重なり合う第1の材料内にピンによって切り込むことを可能にするように第1の速度で回転させられ、ピンが十分な深さまで切削した後、この工具の回転速度は増加させられ、それによって消耗可能なピン、第1の材料、および第2の材料の可塑化を可能にし、次いでこの工具は停止するまで急速に減速され、ピン、第1の材料、および第2の材料の間の拡散結合が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、摩擦攪拌接合方法に関する。より詳しくは、本発明は、少なくとも部分的に消耗可能なピンを有する消耗可能な摩擦攪拌工具を使用して金属加工物を互いに接合する方法であり、このピンは、第1の速度で回転させられるとき、第1の加工物材料を貫通して切削する切削縁部を有する。少なくとも第1の加工物材料を十分な深さまで切削した後、工具の回転速度は、接合される第1と第2の加工物材料のみならず、ピン自体の可塑化を生じさせるように変更される。第1と第2の加工物材料およびピンの十分な加熱の後、ピンと第1と第2の加工物材料の結合が可能になるように、工具の回転は急速に減速されまたは完全に停止される。このプロセスは、この文献の最初から最後まで摩擦攪拌リベット締結(friction stir riveting)と呼ばれる。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2006年6月13日に出願の米国特許出願第60/804,628号、および2006年6月23日に出願の米国特許出願第60/816,396号の優先権を主張し、それらの主題の全てを参照により本明細書に組み込む。
【0003】
金属加工物を一緒に接合するための多くの方法が存在する。それらのいくつかには溶接、スポット溶接、(ねじとボルトなどの)留め具、摩擦攪拌溶接等が含まれる。全ての接合方法を支配する3つの基本的な原理には、機械的取付け、融解接合(溶接)、および固体(solid state)接合(摩擦溶接)が含まれる。各々の原理的な技術は、利点を有する。しかしながら、ある用途のためにしばしば選択される方法は、許容可能な欠点が最も少ない方法によって決定される。機械的な加工物接合方法の例には、ねじ、ナットとボルト、蟻接ぎ、スェージング、リベット締結、締付けによる取付け(interference attachment)等が含まれる。多くの用途は、ねじが限られた荷重担持能力しか有さないこと、複数の構成部品および組み立て品の高コスト、加工物内に配置しなければならない穴のコストおよび/または留め具のために要するスペースのために、ねじまたはボルトを使用できない。蟻接ぎおよび他の加工物固定方法は、特定の方向に固定するが、他の方向に離れて摺動または回転することができる。リベットは、おそらく任意の機械的留め具のうちで単位面積および容積当たり最大の接合強度を有するが、リベットヘッドの機械的な変形は、伸びのみならずエネルギ吸収能力も減少させる。
【0004】
機械的方法が受け入れ可能な接合技術でないとき、加工物が溶接可能でないと見なされない限り融解溶接方法が利用される。例えば、7000シリーズアルミニウムから作られる航空機構成部品は、結果として得られる溶接部の強度がベースになっている金属の特性の50%と同じくらい低くなるので、溶接可能とは見なされない。鋼、ステンレス鋼およびニッケルベースの合金などの高溶融温度材料(HMTM)は溶接することができるが、接合部の強度は融解溶接に関連する問題点のために限定される。これらの問題点には、限定的ではないが、凝固欠陥、溶接部マクロ構造体内の硬い/軟らかいゾーン、液体から固体への相変態から結果として生じる残留応力、空隙率、割れ、非均一なかつ予想できないミクロ構造、腐食敏感性、加工物変形、および加工物ベース材料特性の喪失が含まれる。変形を修復するためまたは溶接部非破壊性を評価するために溶接後工程がしばしば必要になり、このプロセスにコストを加える。その上、適切な安全処置が付随しない場合、作業者に対する潜在的に可能性がある網膜損傷のみならず、6価クロムおよびマンガン暴露に関連する健康上の問題が存在する。多くの場合、溶接可能と見なされないより高い強度の材料の優位性のため、溶接可能と見なされるより低い強度の基部材料を使用するためには加工物のサイズを増加させなければならない。より低い強度の鋼から現行製造される自動車車体がこのケースにあたる。進歩した高強度鋼(2相(Dual Phase)鋼およびTRIP鋼)を車両重量を劇的に低下させるためにフレーム構造に使用することができるが、融解溶接性問題のため、これらの材料は使用されてこなかった。
【0005】
摩擦攪拌溶接(FSW)は、融解溶接方法より優れた多くの利点を有する固体溶接プロセスである。図1は、ショルダ12およびショルダから外向きに延びるピン14を有する全体的に円筒状の工具10によって特徴付けられる摩擦攪拌溶接用に使用される工具の斜視図である。ピン14は、十分な熱が発生するまで加工物16に押し付けられて回転させられ、その点で工具のピンは、可塑化された加工物材料内に突入させられる。加工物16はしばしば、接合線18のところで一緒に付き合わされる材料の2枚のシートまたはプレートである。ピン14は、接合線18のところで加工物16内に突入させられる。この工具は従来技術で開示されてきているが、この工具は新規な目的のために使用できることが明らかにされるであろう。用語「加工物(work piece)」および「ベース材料(base material)」は、この文献の最初から終わりまで同義的に使用されるであろうことにも留意する。
【0006】
加工物材料16に押し付けられたピン14の回転動作により生じる摩擦熱は、加工物材料を溶融温度に達することなく軟らかくさせる。工具10は接合線18に沿って横方向に移動させられ、それによって、可塑化された材料がピンの周りで前縁から後縁に流れるとき溶接部を作り出す。この結果は、他の溶接部と比較して、加工物材料16それ自体と全体的に見分けがつかない可能性のある、接合線18のところの固相結合部20になる。
【0007】
ショルダ12が加工物の表面と接触するとき、その回転が、挿入されるピン14の周りに材料のより大きな円筒状の柱を可塑化させる追加の摩擦熱を作り出すことが観察される。このショルダ12は、工具ピン14によって生じる上向きの金属流を阻止する前進力をもたらす。
【0008】
FSW中、溶接される予定の領域および工具は、工具が溶接接合部の所望の長さ横断するように、互いに対して移動させられる。回転するFSW工具は連続的な熱間加工作用をもたらし、ベース金属に沿って横断方向に移動するときに狭いゾーン内で金属を可塑化させ、同時に金属をピンの前面からその後縁に移送する。工具が通過するときに液体が全く作り出されないので、溶接部ゾーンが冷却するとき、凝固は通常存在しない。結果として得られる溶接部が、欠陥なしで、再結晶した、溶接部の領域に形成される細粒ミクロ構造であることは、常にではないが、よくあることである。
【0009】
移動速度は、通常10から500mm/分であり、回転速度は200から2000rpmである。到達する温度は通常固相線温度に近いが、それより低い。摩擦攪拌溶接パラメータは、材料の熱特性、高温流れ応力および貫通深さの関数である。
【0010】
米国特許第6,648,206号および第6,779,704号などの発明者らの何人かによる以前の特許は、以前に機能的に溶接できないと思われていた材料について摩擦攪拌溶接を実施することができる利点を教示してきた。これらの材料のいくつかは、融解溶接不可能、または溶接するのが全く困難である。これらの材料には、例えば、金属マトリックス複合材料、鋼およびステンレス鋼などの鉄合金、および非鉄材料が含まれる。やはり摩擦攪拌溶接の利点を取ることができた材料の別の部類は超合金である。超合金は、より高い溶融温度の青銅またはアルミニウムを有する材料とすることができ、混合された他の元素も同様に有することができる。超合金のいくつかの例は、一般に約534℃(1000°F)より上の温度で使用されるニッケル、鉄−ニッケル、およびコバルトベースの合金である。超合金に一般に存在する追加の元素には、限定されるものではないが、クロム、モリブデン、タングステン、アルミニウム、チタン、ニオブ、タンタル、およびレニウムが含まれる。
【0011】
語句「摩擦攪拌処理」は、固体状態処理と同義的に呼ばれることができることにも留意する。固体状態処理は、本明細書では通常液相を含まない可塑化状態への一時的な変態として定義される。しかしながら、いくつかの実施形態では1つまたは複数の元素が液相を通過でき、かつ依然として本発明の利益を得ることができることに留意する。
【0012】
摩擦攪拌処理では、工具ピンが回転させられ、処理する予定の材料内に突入されられる。この工具は材料の処理領域を横切って横断方向に移動させられる。それは、当初の材料と異なる特性を有するように改変される材料に結果としてなる可能性のある、固体処理で材料に可塑化を行わせる作用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
FSWに伴う主な欠点は、溶接の終わりに加工物内に残される残留孔である。多くの場合、エンドタブ(run off tab)を溶接部の端部のところに使用し、後で取り除くことができるので、これは問題点にならない。溶接が進行するとき端部孔をなくすために後退可能なピンを使用することができるが、この工具および設備は大規模でありコストが高い。FSW中、工具を溶接部から徐々に引き抜くことを可能にする工具形状も使用することができるが、既存の溶接に対して追加される熱サイクルと組み合わされた追加の処理時間はコストを増加させ、かつベース金属特性を低下させる。
【0014】
摩擦攪拌スポット溶接(FSSW)が現在、高度な高強度鋼を重ね溶接形態で接合するために実験的に使用されている。FSSWは、米国特許出願第20050178817号に記載されるように、アルミニウム構成部品を重ね溶接するために商業的に使用されている。2つの手法が現行使用される。
【0015】
第1の手法は、加工物が一緒にスポット摩擦攪拌溶接されるまで、ピン工具(ピンおよびショルダから構成されるFSSW工具)を加工物内に突入させることを含む。この方法に伴う欠点は、図2に示すようにピンの後に残される穴26である。加工物28の間の結合は工具のショルダの下で達成されるが、このピン穴は溶接部の強度を低下させる。
【0016】
第2の方法は、材料をピン穴内に強制的に戻す設備の設計を含む(米国特許第6,722,556号)。この方法は、大きなスピンドルヘッド、固定要件、およびスポット溶接を行うために必要な荷重のために極めて面倒である。
【0017】
迅速かつ経済的な方法でリベットを使用してFSSWを実施するために、部分的に消耗可能な工具を使用するシステムおよび方法を提供できることは、金属加工物接合の最新技術分野より優れた利点となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の態様では、少なくとも部分的に消耗可能なピンを使用して摩擦攪拌リベット締結を実施するための摩擦攪拌工具が提供される。このピンは、その底部表面に切削縁部を含む。この工具は、ピンによって第2の材料と重なり合う第1の材料内に切り込むことを可能にするように第1の速度で回転させられ、ピンが十分な深さまで切削した後、この工具の回転速度は増加させられ、それによって消耗可能なピン、第1の材料、および第2の材料の可塑化を可能にし、次いでこの工具は停止するまで急速に減速され、ピン、第1の材料、および第2の材料の間の拡散結合が可能になる。
【0019】
本発明のこれらのおよび他の目的、特徴、利点および代替の態様は、添付の図面と組み合わせて行われる以下の詳細な説明の考察から当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】高溶融温度材料に摩擦攪拌溶接を実施することができる既存の摩擦攪拌溶接工具の従来技術の斜視図である。
【図2】従来技術で行われたときの、摩擦攪拌スポット溶接(FSSW)を使用して実施された3つの溶接部の外形図である。
【図3】摩擦攪拌リベット締結を実施することができる、本発明の一実施形態の原理により構築された回転工具の斜視図である。
【図4】消耗可能なピンが完全に2つの加工物を貫通している、図3の工具の外形図である。
【図5】迅速摩擦攪拌リベット締結用の多重分割ピン用の中央孔を有する工具の外形切欠図である。
【図6】本発明の一実施形態の原理により製造された多重分割消耗ピンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の様々な要素に数字の指定が与えられ、当業者が本発明を作りかつ使用できるようにするように本発明が論じられるであろう図面に対して参照が行われる。以下の説明は本発明の原理の例示でしかなく、添付の特許請求の範囲を狭めるものとして見るべきではないことを理解されたい。
【0022】
本発明の第1の態様では、上記で述べた接合の問題点の多くを解決するために新規な手法が使用される。分離可能かつ少なくとも部分的に消耗可能なピンと組み合わされた非消耗可能なショルダを有する回転摩擦攪拌リベット締結工具が、本発明の摩擦攪拌リベット締結接合法の基礎を形成する。このピンは、全部消耗可能であっても部分的に消耗可能であってもよい。図3は、どのようにこの工具を構成することができるかの例を示す。
【0023】
図3は、ショルダ領域32および分離可能かつ少なくとも部分的に消耗可能なピン34を有する摩擦攪拌リベット締結工具30を示す。この具体的な実施形態では、この分離可能かつ少なくとも部分的に消耗可能なピン34は、小さな隙間36を含む。この小さな隙間36は、ピン34のずっとより小さなピン直径部分42によって形成される。ピン34のこの小さなピン直径部分42は、破断するようにされるであろう。この小さな隙間36は、ピン34の分離可能な部分38が、リベットとして加工物内に埋め込まれて残ることを可能にする。ピン34の非分離部分40は、説明されるであろうように、別のピンセグメントの頂部でもあることができることにも留意する。
【0024】
説明として図4を使用すると、本発明のこの第1の実施形態の工具を使用して鋼または別の金属を摩擦リベット締結するために、この工具30は、工具のピン34が第1の加工物材料50をその中に穴54を形成するように取り除いて機械加工することができる、ある速度で回転させられる。所望の穴を機械加工するのを容易にするために、ピン34の端部に機構を加えることができる。例えば、切削機構44がこの第1の実施形態に示されている。
【0025】
この穴54の深さ56が第1の加工物材料50を完全に貫通し、少なくとも部分的に第2の加工物材料52内に延びることは好ましいが必須ではない。
【0026】
用途に応じて、この穴54は第1の加工物材料50内に部分的にのみ延び、または、第1の加工物材料を完全に貫通するが第2の加工物材料52内には延びず、または、第1の加工物材料を完全に貫通するが第2の加工物材料内に部分的にのみ延び、または、第1と第2の加工物材料の両方を実質的に貫通して延びるようにすることができることを理解されたい。最初の穴54が作られた後、次いで工具30は、ピン34に摩擦攪拌リベット締結の暗黙の原理に従った所望のレベルの貫通を行わせることができる。ピン34は、第1と第2の加工物材料50、52の両方を完全に貫通して延びることができ、あるいは、第1の加工物材料を完全に貫通するが第2の加工物材料内に部分的にのみ延びることができる。この場合も、これは使用者の用途によって変わる。
【0027】
この第1の実施形態では、穴54の深さ56が図4に示すように第2の加工物52内に延びた後、工具30の回転速度は、ピン30と、一緒に接合されつつある2つの第1と第2の加工物50、52との間に熱を発生させるように減速させられる。工具30を保持しかつ回転させているスピンドル(図示せず)は、直ちに停止させるか、それとも工具を回転させるために必要なトルクがより小さなピン直径部分42の剪断強度を超えるまで減速させることができる。より小さなピン直径部分42は、特定のトルクでピン34の分離可能な部分38を工具30から剪断して離すように設計される。
【0028】
この第1の実施形態では、ピン34の分離可能な部分38が工具30から剪断して離された後、この工具は後退させられ、新たなピン34と交換することができる。第1と第2の加工物材料50、52内に後に残されたピン34またはリベットの分離可能な部分38は、加工物内に摩擦溶接される。第1と第2の加工物50、52の間の工具ショルダの下のみならず、ピン34またはリベットの周りにも結合部が存在する。
【0029】
図5に示すような本発明の代替実施形態では、工具60は、中央軸を貫通して配設される穴62を有する。この穴62は、(ここではより小さな直径のピン部分72によって分離される3つのセグメントを有して示される)多重分割されたピン64が挿入され、必要に応じて穴62を通り押されることができるようにする。この多重分割されたピン64は、より小さな直径のピン部分72を有する複数の隙間66を含む。次いである種のプランジャー機構68が、この多重分割されたピン64を工具60を貫通して押し、加工端部70から外へ出すために使用される。多重分割されたピン64の各セグメントが破断して離されるとき、プランジャー機構68は、十分なピン64が次の摩擦攪拌リベット締結プロセスのために露出されるまで、多重分割されたピンを穴62を貫通して押し下げる。このような方法で、停止させかつ多重分割されたピン64を再装填しなければならないことなく、多数のリベットを加工物内に挿入することができる。
【0030】
多重分割されたピン64に使用できるセグメントの数は、3つに限られると見なすべきではない。図5は説明目的のためのみである。より多くのセグメントを多重分割されたピン64に配設することができる。分割数は、工具60の長さおよびプランジャー機構68の長さによっても変わる。
【0031】
図6は、自動的かつ迅速な摩擦攪拌リベット締結プロセスに使用できる多重分割されたピン64を図示するために提供される。多重分割されたピン64のセグメントは、摩擦攪拌リベット締結工具60の中央軸を貫通する穴内に配設できるように、同軸である。
【0032】
本発明に使用できるショルダを有する工具を作り出すために使用される材料は、本発明者のうちの何人かによって作り出され、摩擦攪拌溶接の固体接合プロセス中に鋼およびステンレス鋼などの高溶融温度材料を一緒に接合するのに使用できる工具に見出すことができる。
【0033】
この技術は、特別な摩擦攪拌溶接工具を使用することを含む。このショルダは、多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)および多結晶ダイヤモンド(PCD)などの材料を使用して作り出すことができる。含むことができる他の材料には、タングステン、レニウム、イリジウム、チタン、モリブデン等の難溶性物質が存在する。
【0034】
本発明の原理を使用して接合できる加工物には、青銅およびアルミニウムより高い溶融温度を有する材料が含まれる。この部類の材料には、金属マトリックス複合材料、鋼およびステンレス鋼などの鉄合金、非鉄材料、超合金、チタン、通常表面硬化に使用されるコバルト合金、および空気焼入れ鋼または高速度鋼が含まれるが、これらに限定されない。しかしながら本発明は、上記で説明したより高い溶融温度の定義内に含まれない、全ての他のより低い溶融温度材料と考えることができる材料に対しても使用することができる。
【0035】
工具30のショルダ32は、ショルダの第1の加工物50への接着を防止し、かつ優れた熱安定性および耐磨耗特性をもたらすことができる多結晶立方晶窒化ホウ素または同様に説明される材料から作ることができる。いくつかのショルダ形態をリベットヘッドの形状を形成するために、あるいはピン34が加工物50、52内に摩擦溶接された後で、リベットヘッドを切り離すためにさえ使用することができる。
【0036】
ピン34用に使用される材料は一般に、摩擦攪拌リベット締結プロセス中に消耗することができる材料になりそうなものである。そのような材料は、第1と第2の加工物材料の間の結合を好ましく高めるであろうし、摩擦攪拌溶接の分野の当業者に知られている。
【0037】
本発明の代替実施形態には、やはり重要な要素であると見なされるべき様々な態様が含まれる。第1に、リベットとして挿入されることになるピン34の端部に様々な切削構造または外形を使用できる。図3に示す機構の代わりに、代替の切削構造として螺旋状の刻み目の外形を使用することができる。
【0038】
別の代替実施形態では、アルゴンまたは二酸化炭素などの不活性ガスを、摩擦攪拌リベット締結中の酸化を防止するために工具30の中心を通り流れるようにすることができる。
【0039】
別の代替実施形態では、3つ以上の加工物を本発明の摩擦攪拌リベット締結プロセスを使用して接合することができる。したがって、ピン34のセグメントの長さは、それに準じて調整されるであろう。
【0040】
別の代替実施形態では、接合されつつある加工物は、用途に応じて同じ材料または異なる材料であり得ることに留意されたい。
【0041】
同様に、ピンに使用される材料は、加工物と異なる材料、または、加工物のうちの少なくとも1つと同じ材料、または、全ての加工物の材料と同じ材料とすることができる。
【0042】
ピン外形は大きく変更することができる。このピンの外形は、切削プロセスおよび摩擦攪拌リベット締結プロセスを実施するであろう、テーパの付いた形状、6角形状、または任意の所望の形状とすることができる。この形状は、所望の結合特性または使用される様々な材料の強度などの、様々な態様により変わるであろう。
【0043】
別の実施形態では、このピンは中空でもあり得る。このピンは、棒またはワイヤの形態であり、工具の中心を貫通して自動的に供給することができる。ピンのために正方形の形状が使用されるとき、これによって工具からのトルクをピンまたはリベットに伝達できるようになる。しかしながら、トルク伝達する他の外形も使用できる。ピン材料の外径上のクランプ力またはクランプ機構が、回転力が加えられるときにピンが工具内で滑るのを防ぐのに十分である限り、ピンのために丸い形状でさえ使用することができる。
【0044】
このピンまたはリベットは、加工物貫通を容易にするために、様々な硬度または硬度分布を有することができる。
【0045】
この工具は、特定の位置または荷重値に対して1から10,000RPMの範囲のRPMで作動させることができる。
【0046】
この工具は、融解スポット溶接と同じ構造で作動させることができる。例えば、C字形クランプ構造において溶接チップと一緒にクランプを利用するのではなく、直径が小さい回転工具(図3)をロボットの端部のC字形クランプ内に配置することができる。このC字形クランプ構造も手動で使用することができる。
【0047】
このピンは、機械的取付具をその位置で使用できるように、「ヘッド」に留め具を有することができる。例えば、摩擦リベットの端部は、加工物が接合された後で加工物の上方に突出するように残されるねじ切りされたスタブを有することができる。次いでナットを、加工物に別の構成部品を取り付けるために使用できる。
【0048】
この摩擦攪拌リベット締結プロセスの利点のうちのいくつかは、それらに限定されると見なすべきでないが、迅速で、エネルギ入力プロセス要件が低く、固体状態プロセスなので残留応力が低く、従来型のリベット締結のように事前にあけられた穴が全く必要なく、加工物の歪が低減されまたはなくされ、FSSWでのように加工物内に穴が全く残されておらず、プロセスを密閉された領域で使用でき、z軸の力が抵抗スポット溶接に必要な現行の力と同程度であり、ショルダ/ピン比率を接合部強度を最適化するために特定の熱分布を発生させるようなサイズにすることができ、耐食性ピン材料を使用でき、このプロセスがある高められた温度で完了するのでピンまたはリベットの形成が降伏せずより大きなエネルギ吸収特性を有し、このピンまたはリベット材料がより強い強度のために加工物材料に勝ることができ、かつ、加工物内のさらなる割れ伝播を防止するためにリベットまたはピンが割れの先端のところに使用できる、固体状態接合プロセスが含まれる。
【0049】
このピンは、接合される材料より硬い材料を使用して作られるのが一般的である。しかしながら、このピンは、より軟らかいが十分な力でおよび十分に迅速に押されることができ、それはより硬い加工物材料を接合するために使用することができる。
【0050】
本発明の別の態様は、ピンによって加工物の穴から切断され、形成される材料を取り除くというオプションがある。材料を取り除く1つの方法は、ペッキング・モーション(pecking motion)を使用することである。工具のペッキング・モーションは、この材料を取り除くために流体流と組み合わせることもできる。この流体は、圧縮性または非圧縮性であり、ガス、空気、ミスト、および水を含むことができる。
【0051】
前に述べたように、本発明は異なる材料を一緒に接合するために使用することができ、3つの物体(2つの加工物と1つのピン)という構成に限定されない。材料の多数の層を同時に接合することができる。結合される材料の溶融温度より低い温度勾配に材料が曝される限り、任意の数の材料を結合することができる。
【0052】
工具の表面移動速度の範囲は、毎分0.1mmから毎分10メートルであると見なされるべきである。工具の回転速度は、1rpmから100,000rpmまで変更することができる。
【0053】
被覆を工具に、または、接合される加工物に、または、工具および加工物の両方に、使用することができる。
【0054】
本発明の工具は、CBNショルダ、または結合される材料より高いまたは低い弾性率を有する異なる材料を有する工具などの、複合工具とすることができる。
【0055】
結合される材料の硬度は、ロックウエル・スケールA、BおよびC上の全ての材料を含むと見なすべきである。
【0056】
本発明のピンの切断縁部は、任意の適切な切断形状を有することができる。したがって、結合部を生じさせる目的で切断、切断と加熱、および加熱を可能にする任意の機構をピン上に含むことができる。このピンはねじを設けることもできる。したがって、このピンは切断形状を有さなければならないことはない。一つの代替実施形態は、他の加工物材料内に、またはそれを貫通して穴または開口部を作り出すことを可能にするために、ピンの加熱を使用する。
【0057】
本発明は、作り出される穴の軸方向にかつ側面を含む、複数の平面上の拡散結合を可能にする。
【0058】
上記で説明した構成は、本発明の原理の応用の例示でしかないことを理解されたい。多数の改変および代替構成は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく当業者によって考え出されることができる。添付の特許請求の範囲は、そのような改変および構成を包含することを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)少なくとも2つの加工物を重ね合わせるステップと、
(2)少なくとも部分的に消耗可能なピンを有する摩擦攪拌リベット締結工具を準備するステップであって、前記少なくとも部分的に消耗可能なピンがその作業端部に、前記少なくとも2つの加工物の少なくとも第1の加工物内に切り込むのに適した切断機構を含むステップと、
(3)前記少なくとも部分的に消耗可能なピンの前記切断機構が前記少なくとも第1の加工物内に所望の深さまで切り込むことを可能にするように前記工具を回転させるステップと、
(4)前記摩擦攪拌リベット締結工具をある異なる速度で回転させ、それによって前記少なくとも部分的に消耗可能なピンおよび前記少なくとも2つの加工物の可塑化を可能にするステップと、
(5)前記摩擦攪拌リベット締結工具をある異なる速度で回転させ、前記少なくとも部分的に消耗可能なピンと前記少なくとも2つの加工物の拡散結合を可能にするステップとを含む、摩擦攪拌リベット締結工具内に配設される少なくとも部分的に消耗可能なピンを使用して少なくとも2つの加工物を一緒に拡散結合する方法。
【請求項2】
少なくとも前記第1の加工物内に切り込む前記ステップが、前記第2の加工物材料内に切り込むステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも2つの加工物を重ね合わせる前記ステップが、複数の加工物を重ね合わせるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも部分的に消耗可能なピンが折ることができるより小さな直径を有する部分を有し、それによって前記少なくとも部分的に消耗可能なピンの一部分を前記少なくとも2つの加工物内に残すように、前記少なくとも部分的に消耗可能なピンを構築するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(1)前記摩擦攪拌リベット締結工具の中央軸に沿って穴を形成するステップと、
(2)前記穴内に前記少なくとも部分的に消耗可能なピンを配設するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも部分的に消耗可能なピンの形状が、前記摩擦攪拌リベット締結工具が回転させられるときの前記少なくとも部分的に消耗可能なピンの回転を防止するように、前記少なくとも部分的に消耗可能なピンを形成するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記摩擦攪拌リベット締結工具が回転させられるときの前記少なくとも部分的に消耗可能なピンの回転を防止するためのクランプ機構を設けるステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも部分的に消耗可能なピンを、より小さな直径のピン区画によって一緒に連結される複数の同軸のセグメントとして設けるステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
プランジャー機構を設けるステップをさらに含み、前記プランジャー機構が、前記複数の同軸のセグメントの各々のセグメントが前記少なくとも2つの加工物内に摩擦攪拌リベット締結された後で、前記複数の同軸のセグメントを前記穴を貫通して前進させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記摩擦攪拌リベット締結工具を前記少なくとも1つの加工物の切削を実施させるために第1の速度で回転させるステップと、摩擦攪拌リベット締結を実施するために前記摩擦攪拌リベット締結工具をより高速で回転させるステップと、前記摩擦攪拌リベット締結工具を低速で回転させまたは停止させ、それによって拡散結合を可能にするステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
(1)その加工端部に切断機構を含む消耗可能なピンを有する摩擦攪拌リベット締結工具を準備するステップと、
(2)複数の加工物を貫通する穴を形成するように、前記消耗可能なピンを前記複数の加工物に押し付けて回転させるステップと、
(3)前記消耗可能なピンを異なる速度で回転させ、それによって前記消耗可能なピンおよび前記複数の加工物の可塑化を可能にするステップと、
(4)前記消耗可能なピンと前記複数の加工物の拡散結合を可能にするように、前記消耗可能なピンの回転を停止させるステップとを含む、消耗可能なピンを使用して複数の加工物を一緒に摩擦攪拌リベット締結する方法。
【請求項12】
非消耗可能なショルダを有する軸部と、
前記非消耗可能なショルダの中央軸に沿った穴内に配設される消耗可能なピンであって、前記消耗可能なピンの一部分の破断を可能にするより小さな直径のピンの部分を含む消耗可能なピンとを備え、
前記消耗可能なピンが、前記軸部が回転させられるときの前記非消耗可能なショルダ内の前記穴内での回転が防止され、かつ
前記消耗可能なピンが、その加工端部に切断機構を含む、摩擦攪拌リベット締結工具。
【請求項13】
前記消耗可能なピンがリベット締結する加工物材料と拡散結合するのに適した材料からなる前記消耗可能なピンをさらに備える、請求項12に記載の摩擦攪拌リベット締結工具。
【請求項14】
前記非消耗可能なショルダまで前記軸部を完全に貫通して配設される穴と、
前記非消耗可能なショルダに対向する前記軸部の端部に配設されるプランジャー機構とを備え、前記プランジャー機構が前記摩擦攪拌リベット締結工具の加工端部に向かって前記消耗可能なピンを前進させる、請求項12に記載の摩擦攪拌リベット締結工具。
【請求項15】
それによって前記摩擦攪拌リベット締結工具が回転させられるときの前記消耗可能なピンの回転を防止するように非円形横断面を有して形成される前記消耗可能なピンをさらに備える、請求項12に記載の摩擦攪拌リベット締結工具。
【請求項16】
それによって前記摩擦攪拌リベット締結工具が回転させられるときの前記消耗可能なピンの回転を防止するように前記摩擦攪拌リベット締結工具上にクランプ機構をさらに備える、請求項12に記載の摩擦攪拌リベット締結工具。
【請求項17】
前記消耗可能なピンが複数の消耗可能なセグメントからさらに構成され、前記複数の消耗可能なセグメントが、破断させることができ、それによって前記複数の消耗可能なセグメントのうちの1つのセグメントを加工物内に残すことができる、より小さな直径のピン部分によって分離される、請求項12に記載の摩擦攪拌リベット締結工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−539621(P2009−539621A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515503(P2009−515503)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/014004
【国際公開番号】WO2007/146402
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(506039715)エスアイアイ・メガダイアモンド・インコーポレーテッド (6)
【出願人】(505289650)アドバンスト・メタル・プロダクツ・インコーポレーテッド (5)
【出願人】(592087647)ブリガム・ヤング・ユニバーシティ (34)
【氏名又は名称原語表記】BRIGHAM YOUNG UNIVERSITY
【Fターム(参考)】