説明

摩擦溶接による被加工物の安定性および/または耐荷量の増大方法

本発明は、少なくとも局部的に被加工物(10)の安定性および/または耐荷量を増大させる方法であって、まず第1の被加工物(11)が従来の製造法により製造される方法に関する。本発明の方法は、以下の工程を特徴とする:a)次に前記第1の被加工物(11)は、安定性および/または耐荷量が増大されるべき領域に穴(13)を設けられ;b)安定性および/または耐荷量を増大させる材料からなる第2の被加工物(12)は前記穴(13)に導入され;c)この状態において、前記二つの被加工物(11、12)の融点より低い溶接温度に達するまで前記第2の被加工物(12)は摩擦溶接法により前記第1の被加工物(11)に対し摺擦され、それにより前記第1の被加工物(11)と前記第2の被加工物(12)との間に摩擦溶接結合が得られ、前記被加工物(10)が製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも局部的に被加工物の安定性および/または耐荷量を増大させる方法であって、まず第1の被加工物が従来の製造法により製造される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば工業用鋳造法のような既知の従来の製造法により或る材料から製造される或る被加工物は、適切な組み込み場で用いられる場合の安定性および/または耐荷量について、および/または適切な組み込み目的について、軽金属加工用材料等の場合に遭遇するような所望の低重量等を持つ。
【0003】
しかしながら、被加工物を形成する加工用材料を選択すると、特に加工用材料について言えば、意図した目的に被加工物を使用する際に必要な又は望ましい安定性および/または耐荷量を示さないことが多い。
【0004】
このような場合、そのような加工用材料から製造されたそのような被加工物の、少なくとも高い応力に付される部位での低い安定性および/または低い耐荷量を相殺するために、これらの領域は製造工程においてできるだけ早く加工用材料により“補強される”。その結果、少なくともこれらの局部領域における、目的とした被加工物のより高い安定性および/または耐荷量が達成される。
【0005】
既知の冶金鋳造技術を用いて軽金属等から製造した被加工物の場合、安定性および/または耐荷量の少なくとも局部的増加が意図したように実際に達成されるように、鋳造挿入素子が鋳造工程中に金型の相当する部位に導入され、鋳造用材料は鋳造挿入素子の回りに鋳造される。
【0006】
特に金属被加工物の場合、被加工物の加工用材料と鋳造挿入素子の加工用材料との電気化学的電位についての、また固有応力についての、不適合性が通常もたらされる。これに起因して、そのような複合的被加工物での実際の結果が示すように、腐食現象が増々発生するだけでなく、二つの被加工物の二つの加工用材料が示す上述の不都合な固有応力の結果として亀裂の形成ももたらされる。
【0007】
そのような複合的被加工物が通常の環境、又は実際のところ、塩含有水溶液により引き起こされた応力に曝されると、そのような被加工物は非常に短時間以内に故障する。この点で、被加工物を形成する加工用材料と鋳造挿入素子を形成する加工用材料との著しく相違する物理的および機械的特性も幾つかの点で役割を果たす。最後に、用いられた実際の鋳造工程により起こされる不都合な内部応力も製造中に発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、被加工物、すなわち、基本的構成について、様々な一般的に知られた、必要であれば従来の製造法により製造された被加工物、の安定性および/または耐荷量の増大が少なくとも局部的に達成される上述のタイプの方法であって、従来用いられた製造法により製造された被加工物の場合の温度安定性の向上を達成することを目的とする方法を提供することであり、この方法は低い設備費で費用効果的に実現可能であることを意図するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、本発明によれば以下により達成される:
a. 次に第1の被加工物は、安定性および/または耐荷量を増大するべき領域に穴を設けられ、
b. 次に安定性および/または耐荷量を増大させる加工用材料からなる第2の被加工物が穴に導入され、
c. この状態で、二つの被加工物の融点より低い溶接温度に達するまで第2の被加工物は摩擦溶接法により第1の被加工物に対し摺擦され、それにより二つの被加工物の間に摩擦溶接結合が作られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る方法により、安定性、耐荷量、高温での耐久性、高い耐摩滅性についての特性を少なくとも局部的に示す複合被加工物が製造でき、このようにして製造された被加工物は、そのような被加工物が従来は全く利用不可能だった領域に使用できるようになったことは好都合である。この点で、例えば第1の被加工物が軽金属加工用材料からなる場合、低重量および/または低密度等の軽金属の全ての有利な特性が被加工物に全体として利用できるが、さらに、安定性および/または耐荷量および温度安定性特性も、少なくとも、高比重および/または高密度を持つ加工用材料の被加工物、又は極めて加工しにくい加工用材料や、高いコストでなければ提供できない加工用材料だけが従来利用可能であった被加工物の局部領域で達成できることが考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
基本的に、本発明に係る方法は摩擦溶接の全ての変形例を用いて実施できる。
本方法の好都合な実施形態によれば、第1の被加工物における穴は中ぐり穴であり、第2の被加工物は回転対称形を示し、この場合の摩擦溶接法は摩擦攪拌溶接法であり、この場合、摩擦攪拌溶接の特殊形である摩擦円錐溶接が使用できる。このように、第1の被加工物の或る局部領域において制御された形態で補強が達成可能であり、この補強で被加工物全体の安定性および/または耐荷量が増大される。このように、穴は円筒形または円錐形を持つことができ、この場合、回転対称形の第2の被加工物は相当する円筒形または円錐形を持つ。
【0012】
穴または中ぐり穴は、第1の被加工物の相当する部位で被加工物を貫通することができるが、底部が第1の被加工物に留まるように、穴または中ぐり穴を盲穴または盲中ぐり穴として形成することも可能である。
【0013】
本方法のさらに好都合な実施形態によれば、第1の被加工物における穴または中ぐり穴は、結合された状態の第2の被加工物により少なくとも部分的に埋められている。すなわち、第2の被加工物が第1の被加工物と摩擦溶接法により結合される前に、第2の被加工物の形に相当するように第2の被加工物に貫通穴または盲穴または盲中ぐり穴を形成することが可能である。
【0014】
基本的に、第1の被加工物は如何なる所望の適当な製造方法を用いることによっても製造することができる。しかしながら、第1の被加工物は1回鋳造製造法において製造されるのが好ましく、この方法は第1の被加工物が既知の工業用鋳造法を用いて高い費用効率で大量生産できるという利点がある。一方、第2の被加工物は、特に目的とした安定性および耐荷量特性を示すが、これらの安定性および耐荷量特性は二つの被加工物の複合材においても被加工物全体のために所望されており、例えば市販の半完成品も利用できる。このため、本発明にしたがい達成可能な複合被加工物では、工業的鋳造手段により製造される標準的な被加工物に比べごくわずかな費用増加を記録する必要があるだけである。
【0015】
本発明のさらに好都合な別の実施形態によれば、少なくとも第1の被加工物は軽金属または軽金属合金からなり、軽金属または軽金属合金はマグネシウムまたはマグネシウム合金が好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金が最終的に好都合である。
【0016】
アルミニウムおよびマグネシウム(相当する合金を含む)は、軽量建造産業、すなわち自動車の建造や、航空・宇宙産業、において増々強力な役割を果たしている。特に自動車建造領域においては、アルミニウムやマグネシウムの低密度を別にすれば、特にこの分野において被加工物が既知の工業用鋳造法により既に製造されているように、極めて費用有効的にこれらの加工用材料からなる被加工物や構造部品を提供できる必要性がある。それでも、これらの場合について、高い機械的応力や電気化学的応力に少なくとも局部的に耐えられるという必要性がある。本発明にしたがうと、マグネシウムまたはマグネシウム合金、あるいはアルミニウムまたはアルミニウム合金の良好な鋳造性、およびそれらの良好な機械的加工性と、高い機械的および電気化学的耐荷量を示すが、第1の被加工物よりも易加工性が低く、はるかに鋳造しにくい第2の被加工物の第2の加工用材料の特性とが組み合わされる。
【実施例】
【0017】
単一の図面を参照し実施例によりさらに詳細に本発明を説明する。これには以下を示す:
摩擦溶接法により互いに組み合わされる二つの被加工物からなる複合被加工物を得 るための方法を4段階で実施すること。
【0018】
はじめに、被加工物10を第1の被加工物11として示すが、この第1の被加工物11は図1〜図4により個々の製造工程において断面図として図示する。第1の被加工物11は、どのような所望の適当な被加工物でもよく、本発明の場合には、フランジ型突出物17を示している(図1参照)。第1の被加工物11は、例えば既知の工業用鋳造法により製造され、例えばアルミニウムまたはマグネシウム合金または望ましい他の適当な加工用材料からなることができる。
【0019】
穴13をフランジ型突出物17にドリル明けするか、または他の適当な方法で設ける。本発明の場合には、穴13は円錐形であり、穴底を示していない。穴または中ぐり穴13は、底が穴または中ぐり穴13に残るように(図示せず)第1の被加工物11に形成することもできる、ことが注目される。
【0020】
次に、図示した例では回転対称式かつ円錐形に形成される第2の被加工物12が、図示しない装置により回転され(矢印15参照)、絶えず回転運動を維持しながら運動方向16(矢印16参照)に穴13に挿入される。
【0021】
第1の被加工物11と第2の被加工物12との接触の結果、摩擦溶接法が行われ、二つの被加工物の融点より低い溶接温度に達するまで、この摩擦溶接法が維持される。
【0022】
このようにして、第1の被加工物11と第2の被加工物12との摩擦溶接結合を形成する第2の被加工物12で穴13が埋められた、図3にしたがう状態に到達する。
【0023】
図4によれば、第2の被加工物12は、第2の被加工物12が図4にしたがう最終位置または最終工程段階において貫通穴14を示すように、図2に示したような貫通穴14も備えることができる。この場合には、ドリル明けまたはフライス加工による貫通穴14の別個の形成は必要ない。
【0024】
しかしながら、図3にしたがい第2の被加工物12が形成された後に、すなわち、第1の被加工物11と第2の被加工物12との間に摩擦溶接結合が達成された後に、第2の被加工物12に貫通穴14をドリル明けまたはフライス加工することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例を示す個々の製造工程の断面図である。
【図2】本発明の実施例を示す個々の製造工程の断面図である。
【図3】本発明の実施例を示す個々の製造工程の断面図である。
【図4】本発明の実施例を示す個々の製造工程の断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 被加工物
11 第1の被加工物
12 第2の被加工物
13 穴/中ぐり穴
14 貫通穴
15 矢印(回転)
16 矢印(運動方向)
17 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
まず第1の被加工物が従来の製造法により製造される、被加工物の安定性および/または耐荷量を少なくとも局部的に増大させる方法であって、
a. 次に前記第1の被加工物は、安定性および/または耐荷量が増大されるべき領域に穴を設けられ、
b. 次に安定性および/または耐荷量を増大させる加工用材料からなる第2の被加工物は前記穴に導入され、
c. この状態において、前記二つの被加工物の融点より低い溶接温度に達するまで前記第2の被加工物は摩擦溶接法により前記第1の被加工物に対し摺擦され、それにより前記二つの被加工物の間に摩擦溶接結合が作られる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の被加工物における前記穴は中ぐり穴であり、前記第2の被加工物は回転対称形を示し、この場合の摩擦溶接法は摩擦攪拌溶接法または摩擦円錐溶接法である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の被加工物における前記穴または中ぐり穴は、結合された状態の前記第2の被加工物により少なくとも部分的に埋められる、ことを特徴とする請求項1または2の1つまたは両方に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の被加工物は鋳造製造法において製造される、ことを特徴とする請求項1乃至3の1つまたは幾つかに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも前記第1の被加工物は軽金属または軽金属合金からなる、ことを特徴とする請求項1乃至4の1つまたは幾つかに記載の方法。
【請求項6】
前記軽金属はマグネシウムまたはマグネシウム合金である、ことを特徴とする請求項1乃至5の1つまたは幾つかに記載の方法。
【請求項7】
前記軽金属はアルミニウムまたはアルミニウム合金である、ことを特徴とする請求項1乃至5の1つまたは幾つかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−502711(P2007−502711A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523514(P2006−523514)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【国際出願番号】PCT/DE2004/001521
【国際公開番号】WO2005/018865
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(504187593)ゲーカーエスエス・フォルシュングスツェントルム ゲーストアハト ゲーエムベーハー (14)
【Fターム(参考)】