説明

摩擦特性が改善された機能液

【課題】湿潤クラッチ及び/又は湿潤ブレーキ系統、例えば自動変速機やトラクタに有用な機能液のブレーキ能力とクラッチ能力を改善する方法を提供する。
【解決手段】機能液のブレーキ能力とクラッチ能力が改善された、ポリアルケニルスルホネートを含有する機能液であって、該ポリアルケニルスルホネートが、アルキルビニリデン及び1,1−ジアルキル異性体を約20モル%以上含むポリアルキレンの混合物から誘導されたポリアルキレンスルホン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結液、油圧作動液および/または相対的可動部分の潤滑を必要とする系に有用な機能液に関するものである。特には、本発明は、湿潤クラッチおよび/または湿潤ブレーキ系統、例えば自動変速機やトラクタに有用な機能液のブレーキ能力及びクラッチ能力を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の潤滑油配合物は、往々にして独自の装置製造業者によって設定された厳密な規格に沿うように配合されている。そのような規格を満たすために、潤滑粘度の基油と一緒に各種の添加剤が使用される。用途にもよるが、代表的な潤滑油組成物には、分散剤、清浄剤、酸化防止剤、摩耗防止剤、錆防止剤、腐食防止剤、そして消泡剤が僅かな量で含まれている。用途の違いが、潤滑油組成物に導入される添加剤の種類を支配することになる。
【0003】
機能液とは、下記のものに限定されるものではないが、トラクタ用油圧作動液、連続可変変速機液を含む自動変速機液、手動変速機液、油圧作動液、パワー・ステアリング液、パワー・トレーン構成部分に関係する液、および種々の異なった能力で作用可能な液を含む、各種の液を包含する用語である。これらの液の各々、例えば自動変速機液の中にも、著しく異なった機能特性を持つ液の必要性を招いている設計の異なる様々な変速機のために、多数の異なった種類の液が存在することに留意すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トラクタ用油圧作動油および自動変速機液は、摩擦に対して非常に特異的な要求がある機能液の例である。そのような液は湿潤ブレーキおよび/または湿潤クラッチ系統で作用するので、液は、これらブレーキとクラッチの滑らかなかみ合いを助長する一方で、有効なブレーキとクラッチのために所望の高い摩擦特性を保持しなければならない。これらの液には高い摩擦係数が要求される。例えば、湿潤ブレーキ系統を含むトラクタ用油圧作動油は、クラッチ板が動力を伝達するのに充分な摩擦を有する必要がある。しかしながら、作動中液が昇温するにつれて、液の摩擦係数は温度効果のために低下する傾向にある。トラクタ用油圧作動油および自動変速機液は、高温でその高い摩擦係数を保持することが重要であり、さもないとブレーキ系統または自動変速機が破損する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、機能液、特にトラクタ用油圧作動液、連続可変変速機液を含む自動変速機液のブレーキ能力及びクラッチ能力を改善する方法であり、機能液に、全塩基価(TBN)が約0乃至約60であって、アルキルビニリデン及び1,1−ジアルキル異性体を約20モル%以上含むポリアルキレンの混合物から誘導されたポリアルキレンスルホン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩であるポリアルケニルスルホネートを、摩擦を緩和することのできる量にて添加することからなる方法を提供するものである。
【0006】
さらに、本発明は、機能液、特にトラクタ用油圧作動液、連続可変変速機液を含む自動変速機液のブレーキ能力及びクラッチ能力を改善する方法であって、機能液に、TBNが約60より大きく約400までであって、アルキルビニリデン及び1,1−ジアルキル異性体を約20モル%以上含むポリアルキレンの混合物から誘導されたポリアルキレンスルホン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩であるポリアルケニルスルホネートを、摩擦を緩和することができる量にて添加することからなる方法も提供する。
【0007】
アルキルビニリデン異性体はメチルビニリデン異性体であり、そして1,1−ジアルキル異性体は1,1−ジメチル異性体であることが好ましい。
【0008】
使用されるポリアルキレン(ポリアルケンともいう)の数平均分子量は、約168乃至約5000である。ポリアルケンはポリイソブテンであることが好ましい。より好ましくは、ポリアルケンはポリイソブテンであり、そしてポリイソブテニルスルホン酸の分子量分布は、約56ダルトンの偶数倍で分離された分子量のポリイソブテニルスルホン酸を少なくとも約80%有する。最も好ましくは、ポリアルケンはポリイソブテンであり、そしてポリイソブテニルスルホン酸の分子量分布において約20%以下のポリイソブテニルスルホン酸は、約4で均等に割れない総数の炭素原子を含む。
【0009】
本発明の別の態様では、機能液がトラクタ用油圧作動液または自動変速機液である方法を提供する。
【0010】
数ある因子の中でも、本発明は、摩擦を緩和できる量の本発明のポリアルケニルスルホネートが、機能液中で使用したときにブレーキ能力及びクラッチ能力の改善をもたらすという驚くべき発見に基づいている。相対的可動部分の連結と潤滑を必要とする系、例えば自動変速機やトラクタにおけるような湿潤クラッチ及び/又はブレーキ系統、に有用な機能液において本発明の利点は明らかである。本発明によってもたらされるその他の有利な特性は、良好な安定性、水分散性、低い泡立ち度、および錆防止である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、摩擦緩和量の本発明のポリアルケニルスルホネートが、機能液中で使用したときにブレーキ及びクラッチ能力の改善をもたらすという驚くべき発見に基づいている。相対可動部分の連結と潤滑を必要とする系、例えば自動変速機やトラクタにおけるような湿潤クラッチ及び/又はブレーキ系統に有用な機能液において本発明の利点は明らかである。本発明によってもたらされるその他の有利な特性は、良好な安定性、水分散性、低い泡立ち度、および錆防止である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について詳しく述べる前に、下記の用語は特に断わらない限りは下記の意味を有する。
【0013】
[定義]
「アルカリ土類金属」は、カルシウム、バリウム、マグネシウム、ストロンチウム、またはそれらの混合物を意味する。
【0014】
「アルキル」は、直鎖および分枝鎖のアルキル基両方を意味する。
「アルキレン(もしくはアルケン)」は、炭素原子数が少なくとも2の直鎖および分枝鎖のアルキレン基を意味する。代表的なアルキレン基としては例えば、エチレン(−CH2CH2−)、プロピレン(−CH2CH2CH2−)、イソプロピレン(−CH(−CH3)CH2−)、n−ブチレン(−CH2CH2CH2CH2−)、sec−ブチレン(−CH(−CH2CH3)CH2−)、およびn−ペンチレン(−CH2CH2CH2CH2CH2−)等が挙げられる。
【0015】
「金属」は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの混合物を意味する。
【0016】
「ポリアルキル」または「ポリアルケニル(ポリアルケン)」は、一般的にはポリオレフィンから誘導されたアルキル基またはアルケニル基を意味し、そしてモノ−オレフィン、特に1−モノ−オレフィン、例えばエチレン、プロピレンおよびブチレン等の重合体ま
たは共重合体である。使用されるモノ−オレフィンは、炭素原子数約2〜約24であることが好ましく、より好ましくは炭素原子数約3〜約12である。より好ましいモノ−オレフィンとしては、プロピレン、ブチレン、特にイソブチレン、1−オクテン、および1−デセンが挙げられる。このようなモノ−オレフィンから合成されたポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリブテン、特にポリイソブテン、および1−オクテンや1−デセンから生成したポリアルファオレフィンが挙げられる。
【0017】
「全塩基価」または「TBN」は、試料1グラムにおけるKOHのミリグラムと等価な塩基の量を意味する。よって、TBN価が高いほど、生成物のアルカリ性が強く、従ってアルカリ保有度が大きいことを反映している。試料のTBNは、ASTM試験第D2869番またはその他任意の同等の方法により決定することができる。一般的には、TBNは、同等の中和を与える水酸化カリウムのmgに等しい価数として表される潤滑組成物1グラムの中和能力である。よって、TBN10は、1グラムの組成物が10mgの水酸化カリウムに等しい中和能力を有することを意味する。
【0018】
上述したように、本発明は、機能液に摩擦を緩和することのできる量のポリアルケニルスルホネートを添加することによって、機能液のブレーキ能力及びクラッチ能力を改善する方法を提供する。ポリアルケニルスルホネートは、アルキルビニリデン及び1,1−ジアルキル異性体を約20モル%以上含むポリアルキレンの混合物から誘導されたポリアルキレンスルホン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩である。
【0019】
[ポリアルケニルスルホネート]
本発明のポリアルケニルスルホネートは、ポリアルケニルスルホン酸(後述するようにして製造される)を、アルカリ金属またはアルカリ土類金属原料と反応させることにより製造される。アルカリ金属またはアルカリ土類金属は、任意の適当な手段によりスルホネートに導入することができる。一つの方法は、金属の塩基的反応化合物、例えば水酸化物とポリアルケニルスルホン酸とを反応させることからなる。これは一般に、ヒドロキシル促進剤、例えば水、2−エチルヘキサノール、メタノールまたはエチレングリコールなどのアルコール、およびスルホネートに不活性な溶媒を存在させ、通常は加熱しながら行われる。これらの条件下で、塩基的反応化合物は金属スルホネートを生じる。次いで、ヒドロキシル促進剤と溶媒を除去して金属スルホネートが生成する。
【0020】
ある一定の環境下では、アルカリ金属ポリアルケニルスルホネートを製造し、この物質を複分解によってアルカリ土類金属スルホネートに変換する方が都合が良いかもしれない。この方法を用いて、スルホン酸を水酸化ナトリウム又はカリウムなどの塩基性アルカリ金属化合物と反応させる。得られたナトリウム又はカリウムスルホネートは水性抽出により精製することができる。次いで、ナトリウム又はカリウムスルホネートをアルカリ土類金属と反応させて、アルカリ土類金属スルホネートが生成する。最も普通に用いられるアルカリ土類金属化合物はハロゲン化物であり、特には塩化物である。一般的には、ナトリウムもしくはカリウムスルホネートをアルカリ土類金属の塩化物水溶液と化合させ、複分解の発生に充分な時間撹拌する。そののち、水相を取り除き、所望により、溶媒を蒸発させる。
【0021】
好ましいスルホネートは、アルカリ土類金属スルホネートであり、特にはカルシウム、バリウムおよびマグネシウムのスルホネートである。最も好ましいのは、カルシウム及びマグネシウムスルホネートである。
【0022】
本発明のポリアルケニルスルホネートは、中性スルホネートであっても、あるいは過塩基性スルホネートであってもよい。過塩基性物質は、過塩基性と言われるスルホネート中における、金属カチオンの化学量論に従って存在するであろう量よりも過剰な金属含量に
よって特徴付けられる。よって、カルシウム化合物などのアルカリ土類金属化合物で中和したとき、モノスルホン酸は、各当量の酸に対して1当量のカルシウムを含む中性スルホネートを生成することになる。言い換えれば、中性金属スルホネートは、各2モルのモノスルホン酸に対して1モルのカルシウムを含んでいる。
【0023】
公知の方法を使用することにより、スルホン酸の過塩基性又は塩基性複合体を得ることができる。これらの過塩基性物質は、スルホン酸を中和するのに必要な量よりも過剰な量の金属を含んでいる。高過塩基性スルホネートは、反応条件下で過塩基性スルホネートと二酸化炭素を反応させることによって製造することができる。過塩基性スルホネートおよび他の過塩基性生成物の一般的な製造方法の記述については、1970年2月17日発行の米国特許第3496105号(ルシュール)に開示されており、従って、その内容も全て参照として本明細書の記載とする。
【0024】
過塩基性の量は、全塩基価(「TBN」)として表すことができ、スルホネート1グラム中のKOHのミリグラムと等価な塩基の量を意味する。よって、TBN価が高いほど、生成物のアルカリ性が強く、従ってアルカリ保有度が大きいことを反映している。組成物のTBNは、ASTM試験法D664または他の同等の方法により容易に決定される。本発明の過塩基性ポリアルケニルスルホネートは、比較的低いTBN、すなわち約0乃至約60、より好ましくは約0乃至約30を有するか、あるいは比較的高いTBN、すなわち約60より大きく約400まで、より好ましくは約250乃至約350を有することができる。
【0025】
本発明のポリアルケニルスルホネートは、機能液の添加剤として、ブレーキ及びクラッチ能力の改善をもたらすのに充分な量にて有用である。ポリアルケニルスルホネートは良好な水分散性を示し、色が薄く、そして良好な性能特性をもたらす。
【0026】
[ポリアルケニルスルホン酸]
本発明のポリアルケニルスルホン酸は、アルキルビニリデンおよび1,1−ジアルキルの異性体を約20モル%以上含むポリアルケンの混合物を、三酸化硫黄−SO3−原料と
反応させることにより製造される。−SO3−原料は、三酸化硫黄と空気の混合物、水和三酸化硫黄、三酸化硫黄アミン錯体、三酸化硫黄エーテル錯体、三酸化硫黄リン酸塩錯体、アセチル硫酸塩、三酸化硫黄と酢酸の混合物、スルファミド酸、アルキル硫酸塩、またはクロロスルホン酸であってもよい。反応は、それだけであるいは任意の不活性な無水溶媒中で行うことができる。スルホン化の条件は決定的なものではない。反応温度は、約−30℃乃至約200℃の範囲にあり、使用する特定のスルホン化試薬に依存する。例えば、アセチル硫酸塩は反応するのに低温が必要であり、生成物の分解を防ぐために高温は避けるべきである。反応時間は、反応温度など他の条件にもよるが、数分から数時間まで変化しうる。反応の程度は、如何なる遊離硫酸も洗い出した後にスルホン化ポリアルケンの滴定によって決定することができる。スルホン化試薬とポリアルケンの一般的なモル比は、約1:1乃至約2:1である。
【0027】
好ましいスルホン化試薬は、直接にポリアルケニルスルホン酸を生成するアセチル硫酸塩(または、その場でアセチル硫酸塩を生じる硫酸と無水酢酸の混合物)である。その他のスルホン化試薬、例えば三酸化硫黄と空気の混合物も、加水分解してスルホン酸にする必要があるスルホン中間体を生成させることができる。この加水分解工程は非常に緩やかである。
【0028】
ポリアルケニルスルホン酸を製造するのに使用されるポリアルケンは、炭素原子数約12〜約350のポリアルケンの混合物である。混合物は、アルキルビニリデン及び1,1−ジアルキル異性体を、約20モル%以上含み、好ましくは約50モル%以上、そしてより好ましくは約70モル%以上含む。好ましいアルキルビニリデン異性体はメチルビニリデン異性体であり、そして好ましい1,1−ジアルキル異性体は1,1−ジメチル異性体である。
【0029】
ポリアルケンの数平均分子量は、約168乃至約5000の範囲にある。好ましくは、ポリアルケンの数平均分子量は約350乃至約2300であり、より好ましくは約350乃至約1000であり、そして最も好ましくは約350乃至約750である。
【0030】
好ましいポリアルケンはポリイソブテンである。特に好ましいのは、触媒としてBF3を用いて製造されたポリイソブテンである。
【0031】
1995年4月18日発行の米国特許第5408018号(ラス)、その内容も全て参照として本明細書の記載とする。なお、これに記載されている参考文献には、アルキルビニリデン及び1,1−ジアルキル異性体を約20モル%以上含むポリイソブテンの好適な製造方法が記載されている。
【0032】
一般に、ポリイソブテニルスルホン酸又はスルホネートが、アルキルビニリデン及び1,1−ジアルキル異性体を約20モル%以上含むポリイソブテンから製造されるとき、得られた生成物の分子量分布は、その分子量が約56ダルトンの偶数倍で分離されたポリイソブテニルスルホン酸もしくはスルホネートを少なくとも約80%有する。言い換えれば、ポリイソブテニルスルホン酸又はスルホネートの分子量分布において、約20%以下のポリイソブテニルスルホン酸又はスルホネートは、約4で均等に割れない総数の炭素原子を含んでいる。
【0033】
[機能液]
本発明の機能液には、鉱油、合成油または植物油から誘導された基油が使用される。40℃での粘度が少なくとも約2.5cStで、流動点が約20℃未満、好ましくは0℃かそれ未満である基油が望ましい。基油は、合成または天然の原料から誘導してもよい。基油は、アメリカ石油協会公報1509に定義されているようなI種からV種までの基油原料のうちの任意の一つまたは組合せから誘導してもよい。なお、この公報もあらゆる目的で本明細書の記載とする。
【0034】
本発明において基油として使用される鉱油としては例えば、パラフィン系、ナフテン系、および通常潤滑油組成物に使用されるその他の油を挙げることができる。
植物油としては例えば、カノーラ油または大豆油を挙げることができる。
【0035】
合成油としては例えば、炭化水素合成油と合成エステルの両方、および所望の粘度を有するそれらの混合物を挙げることができる。炭化水素合成油としては例えば、エチレンの重合から合成した油、すなわちポリアルファオレフィンまたはPAO、あるいはフィッシャー・トロプシュ法など、一酸化炭素と水素ガスを用いる炭化水素合成法から合成した油を挙げることができる。使用できる合成炭化水素油としては、適正な粘度を有するアルファオレフィンの液体重合体が挙げられる。特に有用なものはC6〜C12のアルファオレフィンの水素化液体オリゴマー、例えば1−デセン三量体である。同様に、適正な粘度のアルキルベンゼン、例えばジドデシルベンゼンも使用することができる。使用できる合成エステルとしては、モノカルボン酸およびポリカルボン酸と、モノヒドロキシアルカノールおよびポリオールとのエステルが挙げられる。代表的な例としては、ジドデシルアジペート、ペンタエリトリトールテトラカプロエート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、およびジラウリルセバケート等がある。モノ及びジカルボン酸とモノ及びジヒドロキシアルカノールとの混合物から合成した複合エステルも使用することができる。鉱油と合成油のブレンドも使用できる。
【0036】
[その他の添加剤成分]
以下の添加剤成分は、本発明に好ましく使用することができる成分の幾つかの例である。これら添加剤の例は、本発明を説明するために記されるのであって本発明を限定するものではない:
【0037】
A)金属清浄剤
硫化又は未硫化のアルキル又はアルケニルフェネート、合成又は天然の原料油から誘導されたスルホネート、カルボキシレート、サリチレート、フェノラート、多ヒドロキシアルキル又はアルケニル芳香族化合物の硫化又は未硫化金属塩、アルキル又はアルケニルヒドロキシ芳香族スルホネート、硫化又は未硫化のアルキル又はアルケニルナフテネート、アルカノール酸の金属塩、アルキル又はアルケニル多酸の金属塩、およびそれらの化学的および物理的混合物。
【0038】
B)酸化防止剤
酸化防止剤は、鉱油がサービス内で劣化する傾向を低減するものであり、その劣化は、金属表面に生じるスラッジやワニス状堆積物などの酸化生成物によって、また粘度の増加によって実証される。酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、フェノール型(フェノール系)酸化防止剤のような酸化防止剤、例えば4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−1−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)−スルフィド、およびビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−スルフィドを挙げることができる。ジフェニルアミン型酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、およびアルキル化−α−ナフチルアミンを挙げることができる。その他の型の酸化防止剤としては、金属ジチオカルバメート(例えば、亜鉛ジチオカルバメート)、およびメチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)を挙げることができる。酸化防止剤は一般に、油にエンジン油の全量当り約0乃至約10重量%、好ましくは0.05乃至約3.0重量%の量で混ぜ合わされる。
【0039】
C)耐摩耗/極圧剤
その名称が示すように、これらの添加剤は可動金属部分の摩耗を低減するものである。そのような添加剤の例としては、以下に限定されるものではないが、リン酸塩、亜リン酸塩、カルバメート、エステル、硫黄含有化合物、モリブデン錯体、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(第一級アルキル、第二級アルキルおよびアリール型)、硫化油、硫化イソブチレン、硫化ポリブテン、硫化ジフェニル、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、弗化アルキルポリシロキサン、およびナフテン酸鉛を挙げることができる。
【0040】
D)錆止め添加剤(錆止め剤)
1)非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエート。
2)その他の化合物:ステアリン酸およびその他の脂肪酸、ジカルボン酸、金属石鹸、脂肪酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステル。
【0041】
E)抗乳化剤
アルキルフェノールと酸化エチレンの付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンソルビタンエステル。
【0042】
F)摩擦緩和剤
脂肪アルコール、1,2−ジオール、ホウ酸化1,2−ジオール、脂肪酸、アミン、脂肪酸アミド、ホウ酸化エステル、およびその他のエステル。
【0043】
G)多機能添加剤
硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデン有機リンジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン−モリブデン錯化合物、および硫黄含有モリブデン錯化合物。
【0044】
H)粘度指数向上剤
ポリメタクリレート型重合体、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、水素化スチレン−イソプレン共重合体、ポリイソブチレン、および分散剤型粘度指数向上剤。
【0045】
I)流動点降下剤
ポリメチルメタクリレート。
【0046】
J)消泡剤
アルキルメタクリレート重合体、およびジメチルシリコーン重合体。
【実施例】
【0047】
本発明について、以下の実施例により更に説明するが、これらの実施例は特に有利な方法の態様を示すものである。なお、実施例は本発明を説明するために記されるのであって、それによって本発明が限定されるものではない。本出願は、添付した特許請求の真意および範囲から逸脱することなしに、当該分野の熟練者によってなされうる様々な変更や置換を包含するものである。
【0048】
[実施例1] 試験油の調製
SAE30W鉱油基油に表1に説明したスルホネートを4.0重量%溶解して、試験液を調製した。試験液の組成を表2に示す。
【0049】
[表1]
表 1 スルホネートの説明
────────────────────────────────────
種類 原料油 %Ca TBN
────────────────────────────────────
本発明の 平均分子量550の
LOBスルホネートI LOBスルホネート ポリイソブテン 2.55 14
比較例A LOBスルホネート 天然 2.33 19
比較例B LOBスルホネート 混合(天然と合成) 2.34 14
本発明の 平均分子量550の
HOBスルホネート HOBスルホネート ポリイソブテン 12.3 296
比較例C HOBスルホネート 合成 12.7 320
比較例D HOBスルホネート 天然 12.5 320
────────────────────────────────────
【0050】
【表2】

【0051】
[実施例2] 摩擦係数の測定
小松製作所(株)により製作されたマイクロクラッチ装置を用いてコマツKES 07.802方法に従って、実施例1で調製した試験液の摩擦係数を測定した。すなわち、その方法に明記されたディスクとプレートを、鉱油に溶解した添加剤成分の存在下で、20rpmで回転するディスクに対して4kgf/cm2の圧力で接触させた。室温(25℃)、60℃、80℃、100℃、120℃および140℃にて摩擦係数を測定した。その結果を表3に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
これらの結果から、試験液1及び4における本発明のPIBスルホネートは、市販の比較のためのLOB又はHOBスルホネート(試験液2、3、5及び6)および基油(スルホネート無し)(試験液7)に比べて、高い摩擦特性をもたらすことが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ能力及びクラッチ能力が改善された、ポリアルケニルスルホネートを含む機能液であって、該ポリアルケニルスルホネートのTBNが0乃至60であり、該ポリアルケニルスルホネートが、アルキルビニリデンと1,1−ジアルキル異性体とを20モル%以上含むポリアルキレンの混合物から誘導されたポリアルキレンスルホン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩であることを特徴とする機能液。
【請求項2】
ポリアルケニルスルホネートのTBNが0乃至30である請求項1に記載の機能液。
【請求項3】
ブレーキ能力及びクラッチ能力が改善された、ポリアルケニルスルホネートを含む機能液であって、該ポリアルケニルスルホネートのTBNが60より大きく400迄であり、該ポリアルケニルスルホネートが、アルキルビニリデンと1,1−ジアルキル異性体とを20モル%以上含むポリアルキレンの混合物から誘導されたポリアルキレンスルホン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩であることを特徴とする機能液。
【請求項4】
ポリアルケニルスルホネートのTBNが250乃至350である請求項3に記載の機能液。
【請求項5】
ポリアルキレンの混合物が、アルキルビニリデン及び1,1−ジアルキル異性体を50モル%以上含む請求項1もしくは3に記載の機能液。
【請求項6】
ポリアルキレンの混合物が、アルキルビニリデン及び1,1−ジアルキル異性体を70モル%以上含む請求項1もしくは3に記載の機能液。
【請求項7】
アルキルビニリデン異性体がメチルビニリデン異性体であり、そして1,1−ジアルキル異性体が1,1−ジメチル異性体である請求項1乃至6のうちのいずれか1項に記載の機能液。
【請求項8】
ポリアルキレンの数平均分子量が168乃至5000である請求項1もしくは3に記載の機能液。
【請求項9】
ポリアルキレンの数平均分子量が350乃至2300である請求項1もしくは3に記載の機能液。
【請求項10】
ポリアルキレンの数平均分子量が350乃至1000である請求項1もしくは3に記載の機能液。
【請求項11】
ポリアルキレンの数平均分子量が350乃至750である請求項1もしくは3に記載の機能液。
【請求項12】
ポリアルキレンがポリイソブテンである請求項1もしくは3に記載の機能液。
【請求項13】
ポリイソブテンがBF3触媒を用いて製造されたものである請求項1もしくは3に記載の機能液。
【請求項14】
ポリアルキレンがポリイソブテンであり、そしてポリイソブテニルスルホン酸の分子量分布が、56ダルトンの偶数倍で分離された分子量のポリイソブテニルスルホン酸を少なくとも80%有する請求項1もしくは3に記載の機能液。
【請求項15】
ポリアルキレンがポリイソブテンであり、そしてポリイソブテニルスルホン酸の分子量分布において20%以下のポリイソブテニルスルホン酸が、4で均等に割れない総数の炭素原子を含んでいる請求項1もしくは3に記載の機能液。
【請求項16】
自動変速機液または油圧作動液である請求項1もしくは3に記載の機能液。
【請求項17】
油圧作動液である請求項16に記載の機能液。
【請求項18】
油圧作動液がトラクタ用油圧作動液である請求項17に記載の機能液。

【公開番号】特開2010−265475(P2010−265475A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167293(P2010−167293)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【分割の表示】特願2003−280200(P2003−280200)の分割
【原出願日】平成15年7月25日(2003.7.25)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】