説明

摺動型スイッチ

【課題】接点の摩耗を抑制して耐久性に富む摺動型スイッチを提供する。
【解決手段】摺動型スイッチは、第1固定端子50Bと、第1固定端子50Bに対して移動可能な第1可動端子60と、第1可動端子60に設置され、第1固定端子50Bに対して摺動接触および非接触が可能な第1接触片63および第2接触片62とを有し、オン動作するときに、第1のステップで第1接触片63のみが第1固定端子50Bの前端部51Bに摺動接触し、第2のステップで第1接触片63から遅れて第2接触片62が第1固定端子50Bの前端部51Bに摺動接触して第1接触片63と第2接触片62が共に第1固定端子50Bの前端部51Bに摺動接触し、第3のステップで第1接触片63が第1固定端子50Bの前端部51Bに対して非接触となり第2接触片62のみが第1固定端子50Bの前端部51Bに摺動接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、摺動型スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のストップランプは、ブレーキペダルが踏まれたときにスイッチがオンされて点灯するように構成されている。従来、このストップランプにはバルブが用いられていた。バルブはフィラメントを高温に熱することで光を発生させる方式であるため、スイッチをオンした当初はバルブが低温であるため大電流(ラッシュ電流)が流れ、次第に温度が上がることで定格電流に落ち着くという負荷特性がある。
【0003】
このようにバルブの場合には流れる電流が多いため、従来は前記スイッチに突き当て型のスイッチが多く採用されている。突き当て型のスイッチでは、接点に酸化がしづらい材料(例えば銀系材料)を用いるとともに、十分な接圧とアークによる溶損に対し十分なタフネスを持たせるために、接点の厚みを厚くしている。
【0004】
しかしながら、このように構成された突き当て型スイッチであっても、接点の接圧が低い状態(例えばブレーキペダルに足を軽く載せて保持している状態)でオンとなると、バルブが低温であるためラッシュ電流が流れ、接点が劣化する。また、突き当て型スイッチの場合には、オフ時に接点間に空気が入るため、接点にシリコンが付着したときにシリコン障害(接触障害)が起きる可能性がある。
【0005】
そこで、突き当て型スイッチに代えて摺動型スイッチ(例えば、特許文献1参照)を採用することが考えられている。摺動型スイッチの場合には、接点にグリースを常時付けておくことができるため酸化が阻止されて、シリコン障害を起こりにくくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−273199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、摺動型スイッチに大電流が流れると、接点が溶損するという課題がある。この課題に対処するためには、接点の厚みを厚くするとともに、溶損により接点の厚みが薄くなったときにも摺動接点の接圧が変化しないように、接点のバネを設計する必要がある。しかしながら、このようなバネに設計すると、摺動型スイッチが大型化し、車両への取り付けが難しくなるという課題が生じる。
【0008】
そこで、この発明は、接点の溶損を抑制して耐久性に富む摺動型スイッチを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る摺動型スイッチでは、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、固定基板(例えば、後述する実施例における第1固定端子50B)と、前記固定基板に対して移動可能な可動基板(例えば、後述する実施例における第1可動端子60)と、前記固定基板と前記可動基板のいずれか一方の基板に設置され、他方の基板に対して摺動接触および非接触が可能な第1の接触部(例えば、後述する実施例における第1接触片63)と、前記固定基板と前記可動基板のいずれか一方の基板に設置され、他方の基板に対して摺動接触および非接触が可能な第2の接触部(例えば、後述する実施例における第2接触片62)と、を有し、オン動作するときに、第1のステップで前記第1の接触部のみが前記固定基板あるいは前記可動基板に摺動接触し、第2のステップで前記第1の接触部から遅れて前記第2の接触部が前記固定基板あるいは前記可動基板に摺動接触して前記第1の接触部と前記第2の接触部が共に前記固定基板あるいは前記可動基板に摺動接触し、第3のステップで前記第1の接触部が前記固定基板および前記可動基板に対して非接触となり前記第2の接触部のみが前記固定基板あるいは前記可動基板に摺動接触するように、前記固定基板と前記可動基板と前記第1の接触部と前記第2の接触部が構成されていることを特徴とする摺動型スイッチ(例えば、後述する実施例における摺動型スイッチ1)である。
このように構成することにより、摺動型スイッチがオン動作するときには、初めに第1の接触部が接触し、その際にラッシュ電流が流れて第1の接触部が温度上昇するが、この第1の接触部は第2の接触部が接触した後には非接触となるので、第1の接触部の温度を低下させることができる。したがって、第1の接触部が高温状態且つ導通状態を保持したまま摺動するのを防止することができ、第1の接触部の異常摩耗を防止することができる。一方、第2の接触部が接触するときには第1の接触部が既に接触しているので、第2の接触部にラッシュ電流が流れることは殆どなく、第2の接触部が温度上昇を抑制することができ、第2の接触部の異常摩耗を防止することができる。したがって、第1の接触部と第2の接触部の温度上昇を両方共に抑制することができ、第1の接触部と第2の接触部の異常摩耗を防止することができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記可動基板に、前記固定基板に対して接触摺動する前記第1の接触部と前記第2の接触部が設けられ、前記固定基板に、前記第1の接触部のみが摺動接触する領域(例えば、後述する実施例における第1ステップ領域S1)と、前記第1の接触部および前記第2の接触部が共に摺動接触する領域(例えば、後述する実施例における第2ステップ領域S2)と、前記第1の接触部が非接触となって前記第2の接触部のみが摺動接触する領域(例えば、後述する実施例における第3ステップ領域S3)が形成されていることを特徴とする。
このように構成することにより、前述した第1のステップから第3のステップに従ってオン動作を行う摺動型スイッチを容易に構成することができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記第1の接触部と前記第2の接触部が一体に形成されていることを特徴とする。
このように構成することにより、接触片の組み付けの効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、第1の接触部と第2の接触部の異常摩耗を防止することができるので、摺動型スイッチの寿命を十分長く確保することができ、耐久性が向上する。
請求項2に係る発明によれば、前述した第1のステップから第3のステップに従ってオン動作を行う摺動型スイッチを容易に構成することができる。
請求項3に係る発明によれば、接触片の組み付けの効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明に係るスイッチにおいてストップランプ用スイッチがオフ状態のときを示す断面図である。
【図2】前記ストップランプ用スイッチがオン状態のときを示す断面図である。
【図3】前記ストップランプ用スイッチのオン動作を時系列的に示す要部拡大図である。
【図4】前記ストップランプ用スイッチにおける第1固定端子の前端部の拡大図である。
【図5】前記スイッチを車両のストップランプ用スイッチに用いた場合の回路図である。
【図6】前記スイッチのストップランプ用スイッチとクルーズコントロール用スイッチのオン/オフタイミングを示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明に係る摺動型スイッチの実施例を図1から図6の図面を参照して説明する。
この実施例における摺動型スイッチは、自動車のブレーキペダルの動作に連動してオン/オフ動作するスイッチに用いられる態様である。
図5に示すように、摺動型スイッチ(以下、スイッチという)1は、ストップランプ用スイッチ2とクルーズコントロール用スイッチ3とを備えている。ストップランプ用スイッチ2は、バッテリー4とストップランプ5の間を接続および遮断するスイッチであり、クルーズコントロール用スイッチ3は、バッテリー4とクルーズコントロールユニット6の間を接続及び遮断するスイッチである。なお、ストップランプ5とクルーズコントロールユニット6はバッテリー4に対して並列に接続されている。また、バッテリー4とクルーズコントロール用スイッチ3との間にはイグニッションスイッチ7が設けられている。なお、この実施例においてストップランプ5はバルブにより構成されている。
【0015】
次に、図1から図4の図面を参照してスイッチ1の構造を説明する。
スイッチ1は、ハウジング20と、スライダー40と、ストップランプ用スイッチ2を構成する第1固定端子50および第1可動端子(可動基板)60と、クルーズコントロール用スイッチ3を構成する第2固定端子70および第2可動端子80と、スプリング90と、を備えて構成されている。ハウジング20とスライダー40は絶縁性材料で構成されており、第1固定端子50、第1可動端子60、第2固定端子70、第2可動端子80は導電性材料で構成されている。
なお、以下の説明においては、図1、図2において左側を前方、右側を後方とし、図3(A)〜(D)の各図において下側を左方、上側を右方とし、上下方向は図1、図2における上下方向と同一とする。
【0016】
ハウジング20は、ハウジング本体21と、ハウジング蓋体30とからなる。ハウジング本体21は、矩形筒状の箱部22から中空円筒状の軸部23が突出しており、箱部22内の下部には前壁部24から後方に突出する突出壁25が設けられ、箱部22内の上部には前壁部24から後方に向かって延びる平板状の受け板26が設けられている。受け板26は箱部22の軸方向略中央まで延びているが、突出壁25の突出寸法は受け板26よりも十分に小さく、突出壁25の後端面は前壁部24の直ぐ近くに位置している。
【0017】
ハウジング蓋体30は、ハウジング本体21の箱部22内に嵌合固定される矩形筒状の箱部31と、箱部31の後壁32から後方に突出する矩形筒状のコネクタ受け部33とを備えている。
箱部31の内部には、後壁32の中央から前方に向かって延びるスプリング取付軸34と、後壁32の下部からハウジング本体21の突出壁25に向かって真っ直ぐに延びる板状の下側支持板35と、後壁32の上部からハウジング本体21の受け板26に向かって真っ直ぐに延びる平板状の上側支持板36が設けられている。
【0018】
下側支持板35には第1固定端子50が固定されている。図3に示すように、第1固定端子50は、平面視において左右に分かれて配置された左側の第1固定端子50Aと右側の第1固定端子(固定基板)50Bとから構成されている。そして、例えば、左側の第1固定端子50Aはストップランプ5に接続され、右側の第1固定端子50Bはバッテリー4に接続される。左側の第1固定端子50Aと右側の第1固定端子50Bが接続されると、ストップランプ用スイッチ2はオンとなってストップランプ5が点灯し、左側の第1固定端子50Aと右側の第1固定端子50Bが遮断されると、ストップランプ用スイッチ2はオフとなってストップランプ5が消灯する。
【0019】
第1固定端子50A,50Bの前端部51A,51Bは平板状をなし、下側支持板35の上面から露出して配置されていて、前端部51A,51Bの上面は下側支持板35の上面と面一となっている。この前端部51A,51Bはそれぞれ、ハウジング蓋体30の箱部31の左内側壁または右内側壁に沿って後方へ延びる中間部52A,52Bに連なり、中間部52A,52Bの後端に後端部53A,53Bが連なっている。後端部53A,53Bは、中間部52A,52Bとの連結部から上方に延び、下側支持板35の上に出た後に箱部31の内方へと曲がり、さらに後方に曲がって、箱部31の後壁32を貫通して、コネクター受け部33内に突出している。第1固定端子50A,50Bの前端と下側支持板35の前端はハウジング本体21の突出壁25に突き当たっている。
【0020】
ここで、第1固定端子50A,50Bの前端部51A,51Bは平面視形状を異にしている。詳述すると、左側の第1固定端子50Aの前端部51Aは平面視長方形をなしているが、右側の第1固定端子50Bの前端部51Bは、平面視において左側部分(以下、左前端部という)54が右側部分(以下、右前端部という)55よりも後方に下がって段違いに連結された形状をなしていて、左前端部54の前端部分と右前端部55の後端部分を前後方向に重複させるようにして接続されている。そして、右前端部55の前端は下側支持板35の前端と重合しているが、左前端部54の前端は下側支持板35の前端よりも後方に位置しており、つまり、左前端部54よりも前方には下側支持板35の上面が露出している。また、左前端部54の後端は左側の第1固定端子50Aの前端部51Bの後端よりも前方に位置している。
【0021】
上側支持板36には第2固定端子70が固定されている。図示を省略するが、第2固定端子70も平面視において左右に分かれて配置された左右2つの第2固定端子70,70から構成されているが、第1固定端子50Aとの相違点は、左側の第2固定端子70と右側の第2固定端子70が左右対称形をなしていることである。
【0022】
以下、右側の第2固定端子70について説明し、左側の第2固定端子70の説明は省略する。左側の第2固定端子70の前端部71は平板状をなし、上側支持板36の下面の下側に露出して配置されており、その前端を上側支持板36の前端よりも前方に突出させている。上側支持板36の前端はハウジング本体21の受け板26の後端に突き当たっており、左側の第2固定端子70の前端部71において上側支持板36よりも突出した部分は、受け板26の下面から露出して配置され、前端部71の下面は受け板26の下面と面一となっている。
前端部71の後端は、ハウジング蓋体30の箱部31の後壁32に沿って下方に延びる起立部72に連なり、起立部72の下端は、後壁32を貫通してコネクター受け部33内に突出する後端部73に連なっている。
【0023】
そして、例えば、左側の第2固定端子70はクルーズコントロールユニットに接続され、右側の第2固定端子70はバッテリー4に接続される。左側の第2固定端子70と右側の第2固定端子70が接続されると、クルーズコントロール用スイッチ3はオンとなってクルーズコントロールユニットは通電状態となり、左側の第2固定端子70と右側の第2固定端子70が遮断されると、クルーズコントロール用スイッチ3はオフとなってクルーズコントロールユニットは非通電状態となる。
【0024】
ハウジング本体21の軸部23には軸心に沿って貫通孔27が設けられており、貫通孔27にはスライダー40が軸方向へ摺動可能に取り付けられている。スライダー40の前部は軸部23から突出し、後部はハウジング蓋体30の箱部31内に突出し、ハウジング本体21の受け板26とハウジング蓋体30の下側支持板35との間に位置している。
【0025】
スライダー40の後部側には、径方向外側に突出するストッパ部41が環状に設けられ、ストッパ部41の後方上部に端子取付台42が設けられ、端子取付台42の後方下部に別の端子取付台43が設けられている。
スライダー40の後端にはスプリング受け板44が固定されており、スプリング受け板44とハウジング蓋体30の後壁32との間にスプリング90が介装されている。なお、スプリング90の内側にはハウジング蓋体30のスプリング取付軸34が挿入されている。このスプリング90によってスライダー40は前方へ付勢されている。また、スライダー40の内部も中空になっていて、この内部にもスプリング受け板44との間に介装されてスライダー40を前方へ付勢するスプリング91が収容されている。なお、スプリング91のバネ係数はスプリング90のバネ係数よりも小さく設定されている。
スライダー40のストッパ部41は、ハウジング本体21の前壁部24に設けられた係止凹部28に係止可能となっていて、これによりとスライダー40の前方移動が規制され、スライダー40のハウジング20からの離脱が防止されている。
【0026】
スライダー40の下側の端子取付台43には第1可動端子60が取り付けられている。図3に示すように、第1可動端子60は、端子取付台43に埋設されて固定された基部61と、基部61から斜め下前方に延びる4本の接触片62,63,64,65を備えている。接触片62〜65は同一長さに形成されていて、これらの接点は左右方向同一線上に配置されている。接触片62〜65は、以下の説明の都合上、右側から左側へ順に、第2接触片(第2の接触部)62、第1接触片(第1の接触部)63、第3接触片64、第4接触片65と称す。
【0027】
第3接触片64と第4接触片65の接点は常に左側の第1固定端子50Aにおける前端部51Aの上面に接触し該上面を摺動するように配置されており、第1接触片63の接点は右側の第1固定端子50Bの左前端部54の上面および下側支持板35の上面を摺動するように配置され、第2接触片62の接点は右側の第1固定端子50Bの右前端部55の上面および下側支持板35の上面を摺動するように配置されている。
そして、第1接触片63は、その接点が右側の第1固定端子50Bの左前端部54の上面を摺動しているときには右側の第1固定端子50Bに対して摺動接触しており、下側支持板35の上面を摺動しているときには右側の第1固定端子50Bに対して非接触となる。
また、第2接触片62は、その接点が右側の第1固定端子50Bの右前端部55の上面を摺動しているときには右側の第1固定端子50Bに対して摺動接触しており、下側支持板35の上面を摺動しているときには右側の第1固定端子50Bに対して非接触となる。
【0028】
スライダー40の上側の端子取付台42には第2可動端子80が取り付けられている。第2可動端子80は、端子取付台42に埋設されて固定された基部(図示略)の左右から、各1本ずつ接触片(第3の接触片)81が斜め上後方に延びている。左右の接触片81の接点はそれぞれ左側と右側の第2固定端子70の前端部71の下面およびハウジング本体21の受け板26の下面を摺動するように配置されている。
接触片81は、その接点が第2固定端子70の前端部71の下面を摺動しているときには第2固定端子70に対して摺動接触しており、受け板26の下面を摺動しているときには第2固定端子70に対して非接触となる。
【0029】
そして、スイッチ1は車両のボディであってブレーキペダル100の近傍に固定されていて、ブレーキペダル100の可動範囲において常にスライダー40の前端面45がブレーキペダル100に突き当たるように設置されている。
図1および図3(A)は、ブレーキペダル100が踏み込まれていない状態を示しており、このときには、第1可動端子60の第3接触片64の接点と第4接触片65の接点は左側の第1固定端子50Aにおける前端部51Aの上面に接触しているが、第1接触片63の接点および第2接触片64の接点は下側支持板35の上面に接触しているので、ストップランプ用スイッチ2はオフとなる。
なお、このとき、第2可動端子80の接触片81の接点は第2固定端子70の前端部71の下面に接触しており、したがって、クルーズコントロール用スイッチ3はオンである。
【0030】
この状態からブレーキペダル100が踏み込まれブレーキペダル100が前方に移動すると、スイッチ1のスライダー40はスプリング90のバネ力によって常に前方へ付勢されているので、ブレーキペダル100の前進に同調してスライダー40も前進する。
このときに、スイッチ1は図6に示されるタイミングで第1可動端子60および第2可動端子80がオン/オフ動作するように、各部の長さや位置等が設定されている。
【0031】
以下、スイッチ1のオン動作を図3,図6を参照して説明する。
前述したスイッチ1のオフ状態からスライダー40が前進すると、図3(B)に示すように、まず、第1可動端子60の第1接触片63の接点が下側支持板35の上面から第1固定端子50Bの左前端部54の上面に乗り移り、第1接触片63の接点が第1固定端子50Bと接触し、導通するので、ストップランプ用スイッチ2はオンとなってストップランプ5が点灯する。そして、第1接触片63の接点が第1固定端子50Bに接触したときに、第1接触片63の接点にラッシュ電流が流れ、該接点は温度上昇する。
なお、このとき、第1可動端子60の第2接触片62の接点は第1固定端子50Bの右前端部55に乗り移る前であり、下側支持板35の上面を摺動している。また、クルーズコントロール用スイッチ3はオン状態を維持している。
【0032】
この状態からさらにスライダー40が前進すると、図3(C)に示すように、第1可動端子60の第1接触片63の接点が第1固定端子50Bの左前端部54の上面を摺動している間に、第1可動端子60の第2接触片62の接点が下側支持板35の上面から第1固定端子50Bの右前端部55に乗り移り、第2接触片62の接点が第1固定端子50Bと接触し、導通する。このときには第1接触片63が第1固定端子50Bと導通しているので、第2接触片62が第1固定端子50Bに接触したときに、第2接触片62の接点にラッシュ電流が流れることは殆どない。したがって、第2接触片62の接点の温度上昇を抑制することができる。
なお、第2接触片62の接点が下側支持板35の上面から第1固定端子50Bの右前端部55に乗り移る前に、第2可動端子80の接触片81の先端部が第2固定端子70の前端部71から受け板26に乗り移り、クルーズコントロール用スイッチ3はオフとなる。
【0033】
さらにスライダー40が前進すると、図3(D)に示すように、第2接触片62の接点は第1固定端子50Bの右前端部55の上面を摺動し続けるが、第1接触片63の接点は第1固定端子50Bの左前端部54を通り越して下側支持板35の上面に乗り移り、第1接触片63の接点は第1固定端子50Bと非接触な状態となる。なお、図2はこの状態を示している。これにより、第2接触片62と第1固定端子50Bの導通によりストップランプ用スイッチ2はオン状態に保持されるとともに、第1接触片63を非導通状態とすることで第1接触片63の接点温度が低下する。
【0034】
このように第1接触片63と第2接触片62が動作することから、図4に示すように、前述した右側の第1固定端子50Bの前端部51Bには、第1接触片63のみが摺動接触する第1ステップ領域S1と、第1接触片63および第2接触片62が共に摺動接触する第2ステップ領域S2と、第1接触片63が非接触となって第2接触片62のみが摺動接触する第3ステップ領域S3が形成されていると言うことができる。
【0035】
このスイッチ1によれば、第1接触片63の接点が第1固定端子50Bに最初に接触したときにラッシュ電流が流れるので第1接触片63の接点が温度上昇するが、その後、ストップランプ用スイッチ2をオン状態に保持したときには、第1接触片63は第1固定端子50Bに対し非接触となるので、第1接触片63の接点温度を低下させることができる。したがって、第1接触片63の接点が高温状態且つ導通状態を保持したまま摺動するのを防止することができ、その結果、第1接触片63の接点の異常摩耗を防止することができ、劣化を抑制することができる。
一方、第2接触片62の接点は、第1接触片63と第1固定端子50Bが導通している間に第1固定端子50Bと接触するので、第2接触片62の接点にラッシュ電流が流れることが殆どなく、第2接触片62の接点の温度上昇が抑制される。その結果、第2接触片62の接点の異常摩耗を防止することができ、劣化を抑制することができる。
すなわち、第1接触片63の接点の温度上昇と第2接触片62の接点の温度上昇の両方を抑制することができ、両接点の異常摩耗を防止することができるので、ストップランプ用スイッチ2の寿命を十分長く確保することができ、耐久性が向上する。
【0036】
また、第1接触片63と第2接触片62の各接点と第1固定端子50A,50Bとが摺動する部位にグリースを塗布することにより、第1接触片63と第2接触片62の各接点が非接触となったときに空気中の酸素と接することがなくなるので、シリコン障害(接触不良)の発生を防止することができる。
【0037】
また、この実施例では、第1接触片63と第2接触片62と第3接触片64と第4接触片65を一体に形成し、第1可動端子60としているので、接触片の組み付けの効率化を図ることができる。
【0038】
〔他の実施例〕
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
例えば、前述した実施例では、接触片62〜65を第1可動端子60に設けたが、これら接触片を第1固定端子50に設け、第1可動端子60を平板状に形成して、接触片を第1可動端子60に摺動接触可能としてもよい。同様に、実施例では、接触片81を第2可動端子80に設けたが、接触片を第2固定端子70に設け、平板状の第2可動端子80に摺動接触可能としてもよい。
【0039】
また、第1固定端子50と第1可動端子60により構成されるスイッチはストップランプ用スイッチに限るものではない。また、ストップランプ用スイッチの場合においても、ストップランプはバルブに限らずLEDで構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 摺動型スイッチ
2 ストップランプ用スイッチ
50B 第1固定端子(固定基板)
60 第1可動端子(可動基板)
63 第1接触片(第1の接触部)
62 第2接触片(第2の接触部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定基板と、
前記固定基板に対して移動可能な可動基板と、
前記固定基板と前記可動基板のいずれか一方の基板に設置され、他方の基板に対して摺動接触および非接触が可能な第1の接触部と、
前記固定基板と前記可動基板のいずれか一方の基板に設置され、他方の基板に対して摺動接触および非接触が可能な第2の接触部と、
を有し、
オン動作するときに、第1のステップで前記第1の接触部のみが前記固定基板あるいは前記可動基板に摺動接触し、第2のステップで前記第1の接触部から遅れて前記第2の接触部が前記固定基板あるいは前記可動基板に摺動接触して前記第1の接触部と前記第2の接触部が共に前記固定基板あるいは前記可動基板に摺動接触し、第3のステップで前記第1の接触部が前記固定基板および前記可動基板に対して非接触となり前記第2の接触部のみが前記固定基板あるいは前記可動基板に摺動接触するように、前記固定基板と前記可動基板と前記第1の接触部と前記第2の接触部が構成されていることを特徴とする摺動型スイッチ。
【請求項2】
前記可動基板に、前記固定基板に対して接触摺動する前記第1の接触部と前記第2の接触部が設けられ、
前記固定基板に、前記第1の接触部のみが摺動接触する領域と、前記第1の接触部および前記第2の接触部が共に摺動接触する領域と、前記第1の接触部が非接触となって前記第2の接触部のみが摺動接触する領域が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の摺動型スイッチ。
【請求項3】
前記第1の接触部と前記第2の接触部が一体に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の摺動型スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−205602(P2010−205602A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50833(P2009−50833)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】