説明

撒きだし装置

【課題】固形物を地盤に均一に設けることは難しかった。
【解決手段】撒きだし装置S1は、石炭灰造粒物1,1,…を供給口12から海底の上に撒くホッパー11を備えている。この供給口12には、2本の回転軸15,25が軸方向を互いに略平行にして配置されており、各回転軸15には軸本体17の周外面を周方向に6等分する位置から径方向外向きに延びるように6枚の羽根19,19,…が設けられている。6枚の羽根19,19,…は、それぞれ、軸本体17の一端からその軸本体17の他端にまで延びており、一端から他端にまで達する間に周外面上を周方向に沿って1/6周分ねじれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撒きだし装置に関し、特に、ホッパーを備えた撒きだし装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海底の軟弱地盤の上に敷砂・覆砂を施して、ヘドロ層のような軟弱地盤を封じ込めて海水の水質を改善浄化する工事は、以前より行われていた。また、最近では、失われた自然環境を取り戻すために、海底に土砂を入れて干潟を造成する工事も、行われている。これらの工事には、種々のやり方がある。例えば、底開パージやクレーン船のクラムシェルを用いて砂を海底へ投入する直接投入法、ベルトコンベアーを用いたスイング工法、マイクロポンプを用いた水搬工法やトレミー式による工法などがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−136533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の手法には、以下に示す問題がある。
【0004】
スイング工法では、ベルトコンベアーを左右にスイングさせながら砂を撒くが、1スイングでの施工幅が狭くなってしまう。そのため、一定の広さに砂を敷くためにはベルトコンベヤーを数回スイングさせなければならないが、ベルトコンベヤーを数回スイングさせて敷砂を施すと、海底には、スイング毎に砂が敷かれた場所や1回しか砂が敷かれていない場所が存在することになる。従って、スイング工法では、海底に均一な厚さの砂を敷くことは難しい。
【0005】
水搬工法およびトレミー式では、水流を利用して砂を敷くので、砂を一定範囲に拡散させて敷くことが難しく、よって、海底に均一な厚さの砂を敷くことが難しい。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、固形物を地盤に均一に薄く撒くことができる撒きだし装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の撒きだし装置は、地盤の上に固形物を撒く装置であり、固形物を供給口から地盤の上に撒くホッパーを備えている。供給口には、2本以上の回転軸が、軸方向を互いに略平行にして配置されている。回転軸ではそれぞれ、軸本体の周外面を周方向にn分する位置から径方向外向きに延びるようにn枚の羽根が設けられており、隣り合う回転軸が互いに逆向きに回転することにより固形物が地盤の上に撒かれる。n枚の羽根は、軸本体の周外面上を周方向に沿ってねじれながら、その軸本体の一端からその軸本体の他端までそれぞれ延びており、回転軸の一端側に視点をおいてその他端側へ視線を向けたときに、第1羽根と第1羽根の周方向隣りに配置された第2羽根とでは、その軸本体の一端における第1羽根がその軸本体の他端における第2羽根に重なっている。
【0008】
本発明の撒きだし装置はシュートを備えていても良く、その場合には、固形物は、ホッパーの供給口からシュートへ供給される。
【0009】
また、本発明の撒きだし装置では、n枚の羽根は、軸本体の周外面を周方向にn等分する位置から径方向外向きに延びるように設けられていてもよく、その場合には、それぞれ軸本体の一端からその軸本体の他端にまで延びており、一端から他端にまで達する間に周外面上を周方向に沿って1/n周分ねじれている。
【0010】
本発明の撒きだし装置では、羽根が上述のように設けられているので、1枚の羽根全体が供給口の一部分を塞ぐのではなく1枚の羽根の一部が供給口の一部分を塞ぐ。そのため、回転軸を回転させると、供給口のうち羽根に塞がれている部分の面積は常に略一定であるので、羽根に塞がれていない部分の面積は常に略一定である。
【0011】
また、回転軸が2本以上設けられているので、回転軸が1本しか設けられていない場合に比べて、固形物をホッパーから海底またはシュートへスムーズに供給できる。
【0012】
本発明の撒きだし装置では、供給口の上からその供給口を見ると、隣り合う回転軸では、そのうちの一方の回転軸における羽根は、隣り合う回転軸のうちの他方の回転軸における羽根とは周方向逆向きにねじれていることが好ましい。このような構成では、さらにスムーズに固形物をシュートへ供給することができる。
【0013】
後述の好ましい実施形態では、供給口は、上方からみると略矩形であり、回転軸は、供給口の長手方向に延びるように、供給口に配置されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、固形物を地盤に均一に薄く撒くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0016】
《実施形態1》
実施形態1では、石炭灰造粒物を海底に撒く際に用いる撒きだし装置を例に挙げて、その撒きだし装置の構成および動作を示す。
【0017】
撒きだし時には、本実施形態にかかる撒きだし装置を台船(不図示)の上に固定して、その台船を移動させながら石炭灰造粒物を海底の上に撒き出す。これにより、海底の広範囲に石炭灰造粒物を撒くことができる。
【0018】
海底に撒かれる石炭灰造粒物は、石炭灰約85%、セメント約15%の割合で混合して固められたものである。このような石炭灰造粒物は砂に比べて比重が小さいので、投入時に海底に与える衝撃を小さくすることができる。
【0019】
図1は、本実施形態にかかる撒きだし装置S1の構成を示す断面図である。
【0020】
この撒きだし装置S1は、ホッパー11を備えている。ホッパー11は、石炭灰造粒物1,1,…を一時貯留するとともに、底面に形成された供給口12から海底へ石炭灰造粒物1,1,…を供給する。
【0021】
ホッパー11について示す。図2は、供給口12を上方から見た平面図である。
【0022】
供給口12を上方から見ると、供給口12は図2に示すように略矩形である。その供給口12には、第1および第2回転軸15,25が供給口12の長手方向に延びるように設けられている。図2に示すように、供給口周縁と第1回転軸15との間および第2回転軸25と供給口周縁との間にすき間が存在するので、第1回転軸15および第2回転軸25を互いに逆向きに回転させることにより石炭灰造粒物1,1,…をそれらのすき間から海底へ落下させることができる。このように供給口12には2本の回転軸15,25が設けられているので、供給口に1本の回転軸しか設けられている場合とは異なり、石炭灰造粒物1,1,…が回転軸15,25の上に溜まってしまうことを防止でき、その結果、海底への供給が滞ることを防止できる。
【0023】
図3(a)および(b)は、第1および第2回転軸15,25の構成を示す図であり、図3(a)は、第1および第2回転軸15,25の斜視図であり、図3(b)は、第1および第2回転軸15,25における羽根のねじれ具合を説明する図である。なお、図3(b)におけるa〜fは6枚の羽根をそれぞれ区別するために付されており、例えばa[b]は一端側の羽根19aと他端側の羽根19bとが重なって見えることを示している。
【0024】
第1回転軸15は、第1軸本体17と6枚の羽根19,19,…とで構成されている。第2回転軸25は、第2軸本体27と6枚の羽根29,29,…とで構成されており、第1回転軸15と略同一の構成を有している。そのため、以下では、第1回転軸15の構成のみを示す。
【0025】
羽根19,19,…は、図3(b)に模式的に示すように第1軸本体17の周方向を6等分する位置にその周外面から径方向外向きに延びて設けられている。各羽根19は、図2および図3(a)に示すように周方向にねじれながら第1軸本体17の一端から第1軸本体17の他端まで延びており、図3(b)に示すように第1軸本体17の一端から第1軸本体17の他端まで達する間に周方向に1/6周分ねじれている。具体的には、図3(b)に示すように、第1回転軸17の一端側からその他端側を見ると、一端における第1羽根19aは他端における第2羽根19bと重なって見える。また、羽根のねじれる向きは、第1回転軸15と第2回転軸25とにおいて、互いに逆向きである。これにより、石炭灰造粒物1,1,…をスムーズに海底に撒くことができる。
【0026】
ここで、羽根が軸本体の軸方向に延びるように設けられている回転軸を供給口12に取り付けた場合と、本実施形態にかかる回転軸15を供給口12に取り付けた場合とにおいて、石炭灰造粒物1,1,…の供給具合の相違を示す。
【0027】
回転軸において羽根が軸本体の軸方向に延びて設けられている場合、その回転軸を回転させると、1枚の羽根全体がホッパー11の供給口周縁と面一となって供給口12を塞ぐ瞬間と、どの羽根も供給口12を塞がない瞬間とが存在する。そのため、回転軸の回転中において、羽根に塞がれていない供給口12の面積を一定にすることができないので、海底に単位時間当たり一定量の石炭灰造粒物1,1,…を供給できない。さらに、海底へ供給されていない石炭灰造粒物1,1,…が羽根の間に存在しながら回転軸が回転するので、回転軸を回転させにくく、よって、回転軸を回転させるモータには大きな負荷がかかってしまう。
【0028】
一方、本実施形態にかかる回転軸15では、羽根が上述のようにねじれて設けられているので、第1回転軸15を回転させると、1枚の羽根19の一部分がホッパー11の供給口周縁と面一となって供給口12の一部分を塞ぎその羽根19の残りの部分がホッパー11の供給口周縁よりも上方もしくは下方に配置される。このように、第1回転軸15の回転中において、1枚の羽根19の一部分が常に供給口12の一部分を塞ぐので、供給口12のうち羽根19に塞がれている部分の面積は常に一定となる。よって、供給口12のうち羽根19に塞がれていない部分の面積は常に一定となり、その結果、単位時間あたりの供給量を一定に保つことができる。従って、常に一定量の石炭灰造粒物1,1,…を海底に撒くことができる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態にかかる撒きだし装置S1では、ホッパー11の供給口12に2本の回転軸15,25が設けられているので、石炭灰造粒物1,1,…をスムーズに海底に供給することができる。また、第1および第2軸本体17,27のそれぞれ一端から他端まで達する間に各羽根19,29が周方向に1/6周分ねじれているので、一定量の石炭灰造粒物1,1,…を海底に供給することができ、石炭灰造粒物1,1,…を海底に略均一に撒くことができる。
【0030】
《実施形態2》
図4は、実施形態2にかかる撒きだし装置S2の構成を示す断面図である。この撒きだし装置S2では、上記実施形態1にかかるホッパー11が連結部材59を介してシュート51に連結されている。
【0031】
シュート51は、図4に示すように板状部材であり、鉛直方向から傾いて配置されている。そして、石炭灰造粒物1,1,…は、ホッパー11からシュートの表面51aに供給され、シュートの表面51aに沿って落下して海底に撒かれる。これにより、軟弱地盤であってもその地盤を壊すことなく石炭灰造粒物1,1,…を海底に撒くことができる。
【0032】
《その他の実施形態》
上記実施形態1および2に記載の構成は、以下に示す構成であってもよい。
【0033】
撒きだし装置として、石炭灰造粒物を海底に撒く装置を例に挙げたが、言うまでもなく、地盤は海底に限定されないし、固形物は石炭灰造粒物に限定されない。
【0034】
ホッパーについては、回転軸の本数および羽根の枚数は、上記記載に限定されない。しかし、石炭灰造粒物をスムーズにシュートに供給するためには、2本以上の回転軸が供給口に取り付けられていることが好ましく、2枚以上の羽根が軸本体に取り付けられていることが好ましい。
【0035】
また、n枚の羽根は、軸本体の周外面を周方向にn等分する位置に設けられていても良く、単にn分する位置に設けられていても良い。n枚の羽根がn分する位置に設けられている場合には、回転軸の一端側に視線をおきその他端側を見たときに、一端側における第1羽根は、他端側における第2羽根と重なっていればよい。
【0036】
また、供給口は平面視略矩形であるとしたが、その形状は特に限定されない。
【0037】
上記実施形態2に示す構成は、以下に示す構成であってもよい。
【0038】
シュートとホッパーとの相対的な位置関係は特に限定されない。例えば、撒きだし装置が石炭灰造粒物を搬送する手段を備えていれば、シュートをホッパーの供給口よりも上方に配置しても構わない。
【0039】
シュートは板状であるとしたが、石炭灰造粒物の落下に影響を与えない程度の凹凸が表面に形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上説明したように、本発明は、地盤に固形物を設ける際に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施形態1にかかる撒きだし装置の構成を示す断面図である。
【図2】開口を上方から見た図である。
【図3】(a)は回転軸の斜視図であり、(b)は回転軸の一端から見たときの羽根の位置を模式的に示す図である。
【図4】実施形態2にかかる撒きだし装置の構成を示す正面図である。
【符号の説明】
【0042】
11 ホッパー
12 供給口
15 第1回転軸
17 第1軸本体
19 羽根
19a 第1羽根
19b 第2羽根
25 第2回転軸
27 第2軸本体
29 羽根
29a 第1羽根
29b 第2羽根
S1,S2 撒きだし装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤の上に固形物を撒く撒きだし装置であって、
前記固形物を供給口から前記地盤の上に撒くホッパーを備え、
前記供給口には、2本以上の回転軸が、軸方向を互いに略平行にして配置されており、 前記回転軸ではそれぞれ、軸本体の周外面を周方向にn分する位置から径方向外向きに延びるようにn枚の羽根が設けられており、隣り合う該回転軸が互いに逆向きに回転することにより前記固形物が前記地盤の上に撒かれ、
前記n枚の羽根は、
それぞれ、前記軸本体の周外面上を周方向に沿ってねじれながら、当該軸本体の一端から当該軸本体の他端まで延びており、
前記回転軸の一端側に視点をおいてその他端側へ視線を向けたときに、第1羽根と該第1羽根の周方向隣りに配置された第2羽根とでは、当該軸本体の一端における該第1羽根が当該軸本体の他端における該第2羽根に重なっていることを特徴とする撒きだし装置。
【請求項2】
地盤の上に固形物を撒く撒きだし装置であって、
前記固形物を落下させて前記地盤に撒くシュートと、
前記固形物を供給口から前記シュートへ供給するホッパーとを備え、
前記供給口には、2本以上の回転軸が、軸方向を互いに略平行にして配置されており、 前記回転軸ではそれぞれ、軸本体の周外面を周方向にn分する位置から径方向外向きに延びるようにn枚の羽根が設けられており、隣り合う該回転軸が互いに逆向きに回転することにより前記固形物が前記ホッパーから前記シュートへ供給され、
前記n枚の羽根は、
それぞれ、前記軸本体の周外面上を周方向に沿ってねじれながら、当該軸本体の一端から当該軸本体の他端まで延びており、
前記回転軸の一端側に視点をおいてその他端側へ視線を向けたときに、第1羽根と該第1羽根の周方向隣りに配置された第2羽根とでは、当該軸本体の一端における該第1羽根が当該軸本体の他端における該第2羽根に重なっていることを特徴とする撒きだし装置。
【請求項3】
地盤の上に固形物を撒く撒きだし装置であって、
前記固形物を落下させて前記地盤に撒くシュートと、
前記固形物を供給口から前記シュートへ供給するホッパーとを備え、
前記供給口には、2本以上の回転軸が、軸方向を互いに略平行にして配置されており、 前記回転軸ではそれぞれ、軸本体の周外面を周方向にn等分する位置から径方向外向きに延びるようにn枚の羽根が設けられており、隣り合う該回転軸が互いに逆向きに回転することにより前記固形物が前記ホッパーから前記シュートへ供給され、
前記n枚の羽根は、それぞれ、前記軸本体の一端から当該軸本体の他端にまで延びており、該一端から該他端にまで達する間に周外面上を周方向に沿って1/n周分ねじれていることを特徴とする撒きだし装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の撒きだし装置において、
前記供給口を上方から見ると、隣り合う前記回転軸では、そのうち一方の回転軸における羽根は、該隣り合う回転軸のうちの他方の回転軸における羽根とは周方向逆向きにねじれていることを特徴とする撒きだし装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の撒きだし装置において、
前記供給口は、上方から見ると略矩形であり、
前記回転軸は、前記供給口の長手方向に延びるように、該供給口に配置されていることを特徴とする撒きだし装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−19572(P2008−19572A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190427(P2006−190427)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(504002193)株式会社エネルギア・エコ・マテリア (24)
【出願人】(594127330)中国高圧コンクリート工業株式会社 (37)
【Fターム(参考)】