説明

撥水性微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体およびそれを含有する化粧料

【課題】凝集をほとんど起こすことなくシリカ被覆処理を行い、かつ撥水性があり表面活性を抑え、亜鉛の溶出も抑えることのできる撥水性微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体を提供する。
【解決手段】酸化亜鉛粉体を下記一般式(1)にて示されるアクリルシリコーン樹脂の溶液に分散させた後、揮発性のアルカリ物質を添加し、下記一般式(2)にて示される化合物の1種または2種以上を加え、アルコキシシランを加水分解して得る。
【化4】


(式中、Xは1以上の整数、R1,R2は水素原子、メチル基、エチル基、酢酸基または酢酸エステル基、R3は直鎖アルキル基、分岐アルキル基またはヒドロキシルアルキル基を表し、l,m,nはそれぞれモル比を表す。)
Si(OR4) ・・・(2)
(式中、R4は炭素数が1以上の飽和炭化水素基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水性微粒子シリカを被覆してなる酸化亜鉛粉体と、その被覆酸化亜鉛粉体を含有する化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、酸化亜鉛粉体は、紫外線遮断作用を有することから日焼け止め化粧料に配合されたり、肌への付着性が強い顔料としてファンデーションや化粧仕上げ時のおしろい類といったメイクアップ化粧料に配合されて使用されている。
【0003】
しかしながら、酸化亜鉛粉末は微粒子であるため表面活性が高く、そのままで使用すると、凝集を起こしたり、化粧料中の他の有機物質を変質させたり、肌荒れを起こすといった問題点が生じる。また、この酸化亜鉛粉末は、感触の悪さから化粧料中に多く配合することができず、紫外線遮断作用や肌への付着性の効果を十分に発揮できないといった問題点があった。
【0004】
また、現在、酸化亜鉛にシリカを被覆する方法として、例えばケイ酸ナトリウムの加水分解による方法などが提案されているが、これら従来方法では、被覆処理後に酸化亜鉛が凝集し、感触の低下や紫外線吸収特性の低下が起こるという問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、凝集をほとんど起こすことなくシリカ被覆処理を行うことができ、かつ撥水性があり表面活性を抑え、亜鉛の溶出も抑えることのできる撥水性微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体を提供し、併せてその撥水性微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体を含有してなる化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、酸化亜鉛粉体にアクリルシリコーン樹脂を分散させながらシリカ被覆処理を行うことにより、目的とする撥水性微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体が得られることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
要するに、第1発明による撥水性微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体は、
酸化亜鉛粉体を下記一般式(1)にて示されるアクリルシリコーン樹脂の溶液に分散させた後、揮発性のアルカリ物質を添加し、下記一般式(2)にて示される化合物の1種または2種以上を添加し、アルコキシシランを加水分解して得ることを特徴とするものである。
【化2】

(式中、Xは1以上の整数、R1,R2は水素原子、メチル基、エチル基、酢酸基または酢酸エステル基、R3は直鎖アルキル基、分岐アルキル基またはヒドロキシルアルキル基を表し、l,m,nはそれぞれモル比を表す。)
Si(OR4) ・・・(2)
(式中、R4は炭素数が1以上の飽和炭化水素基を表す。)
【0008】
第1発明において、前記一般式(1)にて示されるアクリルシリコーン樹脂と、前記一般式(2)にて示される化合物の1種または2種以上との重量比が0.1:9.9〜9.9:0.1であるのが好ましい(第2発明)。
【0009】
また、前記酸化亜鉛粉体の平均一次粒子径は5nm〜20μmの範囲であるのが好ましい(第3発明)。
【0010】
また、前記各発明において、前記一般式(2)にて示される化合物を添加した後に、下記一般式(3)にて示される化合物または下記一般式(4)にて示される化合物の1種または2種以上を添加することができる(第4発明)。
R5CHCHSi(OR6) ・・・(3)
(式中、R5は炭素数が1以上の飽和炭化水素基、または炭素数が1以上の飽和炭化フッ素基、R6は炭素数が1以上の飽和炭化水素基を表す。)
(R7COO)Ti(OR8) ・・・(4)
(式中、R7は炭素数が4以上の飽和炭化水素基、R8は炭素数が1以上の飽和炭化水素基を表す。)
【0011】
また、前記各発明において、前記一般式(2)にて示される化合物の添加と同時に、前記一般式(3)にて示される化合物または前記一般式(4)にて示される化合物の1種または2種以上を添加するようにしても良い(第5発明)。
【0012】
また、第6発明による化粧料は、
前記各発明の撥水性微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体を含有してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
第1発明および第2発明によれば、溶液中で酸化亜鉛粉体にアクリルシリコーン樹脂を吸着させ、さらに揮発性アルカリ下でアルコキシシランを添加することにより、加水分解による重合が起こり、サブミクロンサイズの微粒子シリカを酸化亜鉛粉体表面に被覆することができる。こうして、酸化亜鉛粉体の表面活性を抑え、亜鉛の溶出量を抑えることが可能となる。
【0014】
また、第3発明のように酸化亜鉛粉体の平均一次粒子径を5nm〜20μmの範囲とすることで、肌への付着性の良い微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体を得ることができる。
【0015】
さらに、第4発明または第5発明のように、一般式(3)にて示される化合物であるアルコシキシランまたは一般式(4)にて示される化合物であるアルキルチタネートの1種または2種以上の化合物を、一般式(2)にて示される化合物を添加した後に添加するか、または一般式(2)にて示される化合物と同時に添加して前記化合物を微粒子シリカ表面に導入することで、より撥水性の高い微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体を得ることができる。
【0016】
また、第6発明のように、前記各発明の撥水性微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体を化粧料に用いれば、紫外線を遮断し、かつ肌への付着性の良い撥水性のある化粧料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明による撥水性微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体およびそれを含有する化粧料の具体的な実施の形態について説明する。
【0018】
〔第1の実施形態〕
第1の実施形態による撥水性微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体は次のような手順で作製される。
1)水とアルコールの混合溶媒に酸化亜鉛粉末を分散させる。
2)溶液中に下記一般式(1)で示されるアクリルシリコーン樹脂を加え、酸化亜鉛に吸着させる。
【化3】

(式中、Xは1以上の整数、R1,R2は水素原子、メチル基、エチル基、酢酸基または酢酸エステル基、R3は直鎖アルキル基、分岐アルキル基またはヒドロキシルアルキル基を表し、l,m,nはそれぞれモル比を表す。)
3)溶液中に、揮発性のアルカリと、下記一般式(2)にて示されるアルコキシシランを加えて撹拌し、重合させることで、酸化亜鉛粉体表面をシリカで被覆する。
Si(OR4) ・・・(2)
(式中、R4は炭素数が1以上の飽和炭化水素基を表す。)
4)必要に応じて水洗、ろ過する。
【0019】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態による撥水性微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体の作製手順は、前記第1の実施形態における手順1)2)および4)については同様であるが、手順3)について、前記一般式(2)にて示されるアルコキシシランを添加し、撹拌、重合させた後、最後に下記一般式(3)にて示される化合物または下記一般式(4)にて示される化合物の1種または2種以上を添加したものである。
R5CHCHSi(OR6) ・・・(3)
(式中、R5は炭素数が1以上の飽和炭化水素基、または炭素数が1以上の飽和炭化フッ素基、R6は炭素数が1以上の飽和炭化水素基を表す。)
(R7COO)Ti(OR8) ・・・(4)
(式中、R7は炭素数が4以上の飽和炭化水素基、R8は炭素数が1以上の飽和炭化水素基を表す。)
【0020】
〔第3の実施形態〕
第3の実施形態による撥水性微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体の作製手順は、前記第1の実施形態における手順1)2)および4)については同様であるが、手順3)について、前記一般式(2)にて示されるアルコキシシランを添加するのと同じタイミングで、上記一般式(3)にて示される化合物または上記一般式(4)にて示される化合物の1種または2種以上を添加したものである。
【0021】
前記各実施形態で用いられる前記一般式(1)にて示される化合物の例としては、信越化学工業からKP−575、KP−576の名称で市販されているアクリルシリコーン樹脂溶液を挙げることができる。
【0022】
また、各実施形態にて使用できる溶剤は水溶性のものであれば良く、例として、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、水などが挙げられ、これらを単独もしくは2種以上併用することもできる。また、本発明で使用できるアルカリ物質としては、アルカリ性を示す揮発性のものであれば何でも良く、その典型例を挙げると、アンモニアや揮発性アミンなどがある。ここで、揮発性アミンの例としては、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。これらアンモニアや揮発性アミンは単独であっても2種以上併用しても良い。
【0023】
前記一般式(2)にて示されるアルコキシシランの代表的な例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
【0024】
前記第2、第3の実施形態で用いられる前記一般式(3)にて示されるアルコキシシランの例としては、プロピルメトキシシラン、プロピルエトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。また、前記一般式(4)にて示されるアルキルチタネートの例としては、イソプロピルイソステアロイルチタネートが挙げられる。
【0025】
各実施形態に係る微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体は、さらにそれ自体従来公知の各種の表面処理を施すことができる。この表面処理の例としては以下のようなものを挙げることができる。なお、これらの処理は複数組み合わせて用いることも可能である。
a)フッ素化合物処理・・・パーフルオロアルキルリン酸エステル処理もしくはパーフルオロアルキルシラン処理、パーフルオロポリエーテル処理、フルオロシリコーン処理、フッ素化シリコーン樹脂処理など
b)シリコーン処理・・・メチルハイドロジェンポリシロキサン処理、ジメチルポリシロキサン処理、気相法テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン処理など
c)ペンダント処理・・・気相法シリコーン処理後にアルキル鎖などを付加する方法
d)シランカップリング剤処理
e)チタンカップリング剤処理
f)アルミニウムカップリング剤処理
g)シラン処理・・・アルキル化シランもしくはアルキル化シラザン処理など
h)油剤処理
i)N−アシル化リジン処理
j)ポリアクリル酸処理
k)金属石鹸処理・・・ステアリン酸塩処理もしくはミリスチン酸塩処理など
l)アクリル樹脂処理
m)金属酸化物処理
【0026】
各実施形態の微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体は、化粧料に配合することにより、使用感が良く、肌への付着性、隠蔽性の良い化粧料を得ることができる。この場合、微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体の配合量としては、0.1〜100質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜60質量%である。また、化粧料の剤型としては、二層状、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、ジェル状、スプレー、ムース状、油性、固形状等、従来公知の剤型を使用することができる。勿論、本発明の化粧料を得るのに、他の公知の着色顔料、体質顔料、樹脂粉体、光輝性粉体、またはそれらの粉体の表面処理粉体と、界面活性剤、油剤を組み合わせることができるのは言うまでもない。
【実施例】
【0027】
次に、本発明による撥水性微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体およびそれを含有する化粧料の具体的な実施例について説明する。なお、本発明は、以下に述べる実施例に限定されるものではない。
【0028】
〔実施例1〕
50mlの水:イソプロピルアルコール=3:1(重量比)混合溶媒に、住友大阪セメント社からZnO350の名称で市販されている酸化亜鉛粉体5gを分散させた後、30重量%アクリルシリコーン樹脂溶液(KP−576)0.33gを溶解させ、1時間攪拌した。得られたスラリーに28重量%アンモニア水溶液4gと、テトラエトキシシラン4gを溶解させ、5時間攪拌した。その後、得られたスラリーに6000rpmで10分間遠心分離を行い、上澄み液を除去した後、減圧下35℃で乾燥させ、微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体を得た。
【0029】
〔実施例2〕
50mlの水:イソプロピルアルコール=3:1(重量比)混合溶媒に、住友大阪セメント社からZnO350の名称で市販されている酸化亜鉛粉体5gを分散させた後、30重量%アクリルシリコーン樹脂溶液(KP−576)0.33gを溶解させ、1時間攪拌した。得られたスラリーに28重量%アンモニア水溶液4gと、テトラエトキシシラン4gおよびn−オクチルトリエトキシシラン2gを溶解させ、5時間攪拌した。その後、得られたスラリーに6000rpmで10分間遠心分離を行い、上澄み液を除去した後、減圧下35℃で乾燥させ、微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体を得た。
【0030】
〔実施例3〕
50mlの水:イソプロピルアルコール=3:1(重量比)混合溶媒に、住友大阪セメント社からZnO350の名称で市販されている酸化亜鉛粉体5gを分散させた後、30重量%アクリルシリコーン樹脂溶液(KP−576)0.33gを溶解させ、1時間攪拌した。得られたスラリーに28重量%アンモニア水溶液4gと、テトラエトキシシラン4gを溶解させ、5時間攪拌した。さらに、n−オクチルトリエトキシシラン2gを溶解させ、2時間攪拌した。その後、得られたスラリーに6000rpmで10分間遠心分離を行い、上澄み液を除去した後、減圧下35℃で乾燥させ、微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体を得た。
【0031】
〔実施例4〕
50mlの水:イソプロピルアルコール=3:1(重量比)混合溶媒に、住友大阪セメント社からZnO350の名称で市販されている酸化亜鉛粉体5gを分散させた後、30重量%アクリルシリコーン樹脂溶液(KP−576)0.33gを溶解させ、1時間攪拌した。得られたスラリーに28重量%アンモニア水溶液4gと、テトラエトキシシラン4gおよびイソプロピルトリイソステアロイルチタネート1gを溶解させ、5時間攪拌した。その後、得られたスラリーに6000rpmで10分間遠心分離を行い、上澄み液を除去した後、減圧下35℃で乾燥させ、130℃で6時間熱処理を行って微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体を得た。
【0032】
〔実施例5〕
実施例1のZnO350を堺化学工業社から微細酸化亜鉛の名称で市販されている酸化亜鉛に変えた以外は実施例1と同様にして、微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体を得た。
【0033】
〔実施例6〕
実施例2のZnO350を堺化学工業社から微細酸化亜鉛の名称で市販されている酸化亜鉛に変えた以外は実施例2と同様にして、微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体を得た。
【0034】
〔比較例1〕
50mlの水:イソプロピルアルコール=3:1(重量比)混合溶媒に、住友大阪セメント社からZnO350の名称で市販されている酸化亜鉛粉体5gを分散させた後、28重量%アンモニア水溶液4gと、テトラエトキシシラン4gを溶解させ、5時間攪拌した。その後、得られたスラリーに6000rpmで10分間遠心分離を行い、上澄み液を除去した後、減圧下35℃で乾燥させ、シリカ被覆酸化亜鉛粉体を得た。
【0035】
〔比較例2〕
比較例1のZnO350を堺化学工業社から微細酸化亜鉛の名称で市販されている酸化亜鉛に変えた以外は比較例1と同様にして、シリカ被覆酸化亜鉛粉体を得た。
【0036】
〔比較例3〕
住友大阪セメント社からZnO350の名称で市販されている酸化亜鉛粉体5gを粉体の10倍量の水に分散させた後、5重量%ケイ酸ソーダ5gを滴下し、30分間攪拌した。次いで、2重量%硫酸でpH2にした後、80℃で1時間攪拌した。その後得られたスラリーをろ過、水洗し、100℃30時間、130℃5時間乾燥させ、シリカ被覆酸化亜鉛粉体を得た。
【0037】
〔実施例7〕
表1に示される成分に基づき、まず成分Aを粗混合した後、均一に溶解した成分Bを加えて良く攪拌し、次いで容器に充填してサンスクリーン剤を得た。
【0038】
【表1】

【0039】
〔実施例8〕
実施例1で作製した微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体を、実施例5で作製した微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体に変えた以外は、実施例7と同様にしてサンスクリーン剤を得た。
【0040】
〔比較例4〕
実施例7でサンスクリーン剤に配合した微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体の代わりに、比較例1で作成したシリカ被覆酸化亜鉛粉体を使用した以外は、すべて実施例7と同様にしてサンスクリーン剤を得た。
【0041】
〔比較例5〕
実施例7でサンスクリーン剤に配合した微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体の代わりに、比較例2で作成したシリカ被覆酸化亜鉛粉体を使用した以外は、すべて実施例7と同様にしてサンスクリーン剤を得た。
【0042】
〔比較例6〕
実施例7でサンスクリーン剤に配合した微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体の代わりに、比較例3で作成したシリカ被覆酸化亜鉛粉体を使用した以外は、すべて実施例7と同様にしてサンスクリーン剤を得た。
【0043】
以下に、微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体および化粧料の評価および各評価項目の測定方法等について説明する。
【0044】
(1) 接触角の測定
得られた粉体をプレス機によって200kg/cmの力でプレスして調整したプレートの上で、水との接触角を測定した。この接触角の数値が高いほど疎水性が高いことを示す。
【0045】
(2)溶出亜鉛の測定
得られた粉体5gを100mlビーカーに採取し、硝酸でpH4に調整した溶液を50ml加え、スターラで3時間攪拌した。抽出後、遠心分離を行い、その上澄みをさらに0.2μmのメンブランフィルターでろ過したろ液10mlを、正確に100mlメスフラスコに分取した。これに塩酸を加え、全量を100mlとしたものを試験溶液として原子吸光光度計のフレーム方式により定量し、溶出亜鉛量を算出した。
【0046】
(3)微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体の表面活性の測定
活性測定にはパルスリアクター法を用いた。反応管の底に約1cm角に切ったガラスウールを2枚詰め、その反応管に粉体0.2gを入れた。その上に1cm角のガラスウールを2枚詰め、前処理とした。下記条件でガスクロマトグラフィーにより測定を行い、プロピレン、アセトン、イソプロピルアルコール(以下「IPA」と略す。)のピークの面積比を計算し、IPA残存率を求めた。なお、このIPA残存率の値が高いほど、表面活性が低いことを示す。
ガスクロマトグラフィー条件
使用カラム・・・Propak R80/100 3mパックドカラム
注入量・・・IPA2μl
注入口温度・・・280℃
検出器温度・・・180℃
カラム温度・・・80℃(昇温速度7.5℃/min)−180℃(12min保持)
キャリアガス・・・ヘリウム(20ml/min)
【0047】
(4)サンスクリーン剤の官能評価
女性パネラー10名を用いて、試験品を使用してもらい、使用感をアンケート形式で回答してもらった。評価が悪い場合を0点、評価が良い場合を5点とし、パネラーの平均点数で評価結果とした。したがって、点数が高いほど評価が優れていることを示している。
【0048】
(5)サンスクリーン在のSPF(Sun Protection Factor)の測定
5cm×3cmのTranspore Tape上に均一に0.08gとなるように試験品を塗布し、SPFアナライザーを用いてSPFを測定した。この値が高いほど紫外線防御効果に優れていることを示している。
【0049】
以下、表2、表3、表4に評価結果が示されている。
【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
表2の結果から、アクリルシリコーン樹脂を含む実施例1および実施例5の水での接触角の値は127°と123°であり、アクリルシリコーン樹脂を含まない比較例1および比較例2と比較して、水への接触角の値が大きくなった。また、n−オクチルトリエトキシシランを含む実施例2、実施例3および実施例6の接触角の値はそれぞれ138°、130°、133°となり、良好な疎水性を示すことがわかった。これはシリカ微粒子の一部、あるいはシリカ微粒子表面に、アルキル鎖が加水分解により導入されるため、疎水性を有するものと考えられる。イソプロピルトリイソステアロイルチタネートを含む実施例4の接触角の値は115°となり、疎水性を示すことがわかった。
【0054】
また、表3の結果から、アクリルシリコーン樹脂を含む実施例1および実施例5は、アクリルシリコーン樹脂を含まない比較例1、比較例2およびケイ酸ソーダを用いた比較例3と比較して、溶出亜鉛の値が低く、溶出が抑えられていることがわかった。これは酸化亜鉛粉体にアクリルシリコーン樹脂が吸着していることで、シリカ微粒子が被覆し易くなるためと考えられる。一方、アクリルシリコーン樹脂を含まない場合、およびケイ酸ソーダを用いた場合には、シリカが薄い皮膜のようになっており、酸化亜鉛粉体表面に完全に被覆されていないため、溶出亜鉛が多くなるものと考えられる。表3の結果からアクリルシリコーン樹脂を含む実施例1および実施例5は、アクリルシリコーン樹脂を含まない比較例1、比較例2およびケイ酸ソーダを用いた比較例3と比較して、IPA残存率の値が高く、酸化亜鉛粉体の表面活性が抑えられていることがわかった。
【0055】
表4の結果から、微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体をサンスクリーン剤に配合した実施例7および実施例8は、比較例4、比較例5および比較例6と比較して、感触の評価が良く、SPFも高い値を示した。実施例7および実施例8に配合される球状のシリカ微粒子を被覆した酸化亜鉛粉体は、酸化亜鉛の凝集を起こりにくくするため、肌に塗布した場合の感触を向上させ、紫外線吸収特性にも優れることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化亜鉛粉体を下記一般式(1)にて示されるアクリルシリコーン樹脂の溶液に分散させた後、揮発性のアルカリ物質を添加し、下記一般式(2)にて示される化合物の1種または2種以上を添加し、アルコキシシランを加水分解して得ることを特徴とする撥水性微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体。
【化1】

(式中、Xは1以上の整数、R1,R2は水素原子、メチル基、エチル基、酢酸基または酢酸エステル基、R3は直鎖アルキル基、分岐アルキル基またはヒドロキシルアルキル基を表し、l,m,nはそれぞれモル比を表す。)
Si(OR4) ・・・(2)
(式中、R4は炭素数が1以上の飽和炭化水素基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)にて示されるアクリルシリコーン樹脂と、前記一般式(2)にて示される化合物の1種または2種以上との重量比が0.1:9.9〜9.9:0.1である請求項1に記載の撥水性微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体。
【請求項3】
前記酸化亜鉛粉体の平均一次粒子径が5nm〜20μmの範囲である請求項1または2に記載の撥水性微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体。
【請求項4】
前記一般式(2)にて示される化合物を添加した後に、下記一般式(3)にて示される化合物または下記一般式(4)にて示される化合物の1種または2種以上を添加する請求項1〜3のうちのいずれかに記載の撥水性微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体。
R5CHCHSi(OR6) ・・・(3)
(式中、R5は炭素数が1以上の飽和炭化水素基、または炭素数が1以上の飽和炭化フッ素基、R6は炭素数が1以上の飽和炭化水素基を表す。)
(R7COO)Ti(OR8) ・・・(4)
(式中、R7は炭素数が4以上の飽和炭化水素基、R8は炭素数が1以上の飽和炭化水素基を表す。)
【請求項5】
前記一般式(2)にて示される化合物の添加と同時に、下記一般式(3)にて示される化合物または下記一般式(4)にて示される化合物の1種または2種以上を添加する請求項1〜3のうちのいずれかに記載の撥水性微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体。
R5CHCHSi(OR6) ・・・(3)
(式中、R5は炭素数が1以上の飽和炭化水素基、または炭素数が1以上の飽和炭化フッ素基、R6は炭素数が1以上の飽和炭化水素基を表す。)
(R7COO)Ti(OR8) ・・・(4)
(式中、R7は炭素数が4以上の飽和炭化水素基、R8は炭素数が1以上の飽和炭化水素基を表す。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の撥水性微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体を含有してなることを特徴とする化粧料。

【公開番号】特開2009−23981(P2009−23981A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191690(P2007−191690)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(391015373)大東化成工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】