説明

撥水構造及び撥水成型品

【課題】パネル表面に十分な撥水性を持たせることができ、しかも布による拭き取りなどによって撥水性が容易に劣化することのない耐摩耗性を併せ持ち、特に自動車用撥水ガラスや自動車用塗膜に用いるのに好適な撥水構造と、このような構造を備えた撥水成型品を提供する。
【解決手段】水との接触角が90°以上の材料から成る表面を備えた無数の微細錐状突起1の間に、所定の間隔を置いて、この微細突起1よりも高さのある突起2を壁状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水滴の付着を防ぐ撥水機能と、布等による拭き取りに耐え得る耐摩耗性とを兼ね備えた微細凹凸構造を備えた撥水構造に関する。また、このような撥水構造を備え、撥水パネルとして、例えば建築用パネルや、車両、船舶、航空機などの各種ウィンドパネル、塗膜など、雨が直接、あるいは間接的に当たる箇所に好適に使用することができる撥水成型品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両、船舶、航空機などの各種ウィンドウパネルにおいては、雨を除去するためにワイパーシステムが備えられている。しかし、ウィンドウパネルの表面を撥水化することによって、ワイパーの要らないウィンドウパネルの実現が期待でき、部品数の削減や生産工数削減によるコスト削減が望まれている。また、ボディパネルにおいては、表面を撥水化することによって、水しみによる汚れを防ぐことができるものと期待されている。
【0003】
撥水化の方法としては、表面に微細な凹凸を形成することによって、蓮の葉に見られるような撥水性が発現することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−31538号公報(第8頁、段落[0039])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された方法では、雨の衝突や、表面の布拭き取りによって微細凹凸構造が容易に破壊され、短期間のうちに撥水性が損なわれてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、微細凹凸構造から成る従来の撥水構造における上記課題を解決すべくなされたものである。その目的とするところは、パネル表面に十分な撥水性を持たせることができ、しかも布による拭き取りなどによって撥水性が容易に劣化することのない撥水構造を提供することにある。特に自動車用撥水ガラスや自動車用塗膜に用いるのに好適な撥水構造と、このような構造を備えた撥水成型品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、水との接触角が90°以上の材料から成る表面を備えた無数の微細錐状突起の間に、これよりも高さのある突起を壁状に形成することによって、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0007】
すなわち、本発明は上記知見に基づくものであって、本発明の撥水構造は、無数の微細錐状突起(高さh)を備えた微細凹凸面が複数のブロックに分割され、分割されたこれらブロックの間に壁状突起(高さH)が形成される。さらに、これらの高さがH>hであると共に、少なくともその表面を構成する材料の水に対する接触角が90°以上であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の撥水成型品は、有機材料又は有機無機ハイブリット材料により本発明の上記撥水構造を形成して成ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水との接触角が90°以上の材料から成る表面を備えた無数の微細錐状突起を有し、複数のブロックに分割された微細凹凸面の各ブロック間に、微細錐状突起よりも高さのある壁状突起を形成するようにしたから、微細錐状突起間に空気層が保持されることによって撥水性が発現する。一方、ブロック間に立設された壁状突起によって拭き取り時などにおける耐摩耗性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の撥水構造やこれを適用した撥水成型品について、その製造方法や実施形態などと共に、さらに詳細に説明する。
【0011】
本発明の撥水構造体は、上記のように、水との接触角が90°以上の材料から成る表面を備えた微細錐状突起と、この微細錐状突起よりも高さのある壁状突起により構成されていることを要する。
すなわち、図1は本発明の撥水構造の基本構造を示す概念図である。本発明の撥水構造においては、当該撥水構造の少なくとも表面を構成する材料の水滴との接触角が90°以上であると共に、図1(a)と、図1(a)に示した単位ブロックの縦断面図である図1(c)に示すように、無数の微細錐状突起1の集合体である微細凹凸面が複数のブロックBに分割される。さらに、分割された各ブロック間に、微細錐状突起1の高さhよりも大きな高さHを有する壁状突起2が形成されている。従って、微細錐状突起1の集合によって撥水機能を発揮するブロック状の微細凹凸と、高さの高い壁状突起2の繰り返しによって構成されていることから、撥水性及び耐摩耗性を兼ね備えたものとなる。
【0012】
本発明の撥水構造においては、その少なくとも表面を構成する材料、すなわち構造全体の材料、あるいは表面に被覆する材料の水に対する接触角が90°以上であることが必要であるが、100°以上の接触角を示すものを用いることがより好ましい。このとき、構造体表面を構成する材料の水との接触角が90°に満たない場合には撥水性を示さなくなる。
【0013】
なお、本発明の撥水構造においては、主に雨滴に対する撥水性を考慮して、撥水構造の表面を構成する材料の塗れ性を水に対する接触角をもって規定している。一方、当該撥水構造を水以外の液体と接触するような用途、例えば各種プラント装置における反応器や蒸留塔などののぞき窓パネルや、内視鏡のレンズ表面などに適用する場合には、それぞれの用途に応じて、接触する液体に対する接触角を90°以上とすることが必要になる。
【0014】
本発明において、上記微細錐状突起1は、円錐形状や角錐形状をなすものに代表されるが、必ずしも正確な円錐や角錐のみに限定される訳ではない。つまり、釣り鐘形や椎の実形の変形円錐状や、曲面から成る側面を有する変形角錐状のもの、さらには先端突起のない円錐台や角錐台状のものや先端部を丸めたもの、傾斜したものを用いることができる。本発明において『錐状』とは、これらをも含めた形状を意味するものとする。
【0015】
隣接する微細錐状突起同士間のピッチPとしては、水滴(雨滴)径よりも小さければ、水滴との間に空気層を保持することができ、撥水性を確保することができる。具体的にはピッチPを1mm以下にすることが望ましい。
また、微細錐状突起1の配置状態としては、六方最密配列あるいは正方配列とすることが望ましい。これによって微細錐状突起1が密に存在することになり、表面粗さが増し、より優れた撥水性が得られるようになる。
【0016】
さらに、微細錐状突起1の形状としては、隣接する突起同士間のピッチPが50〜380nm、アスペクト比が2以上であると共に、壁状突起2の厚さtが50〜380nmであることが好ましい。
このとき、微細錐状突起1のアスペクト比とは、図1(c)に示すように、微細錐状突起1の高さhを底面径dで除した値(h/d)を意味する。なお、底面径dとは、微細錐状突起1の底面形状が円形の場合はその径、楕円形の場合は長径、多角形のときは当該多角形に外接する円の径をもって算出する。また、壁状突起2の厚さtについては、当該撥水構造を高さ方向から見た時の投影図において、壁状突起2の短軸長さを厚さとし、厚さが最も大きい箇所の値をもってtとする。
【0017】
上記のような条件を満たす場合、微細錐状突起1及び壁状突起2が、共に可視光によって認識できない大きさとなるため、光の干渉による発色がなくなり、透明材料として用いることができる。また、反射防止効果により景色の映り込みを減らすことができ、車両や船舶、航空機などのウィンドウパネルへの適用が可能になる。また、微細錐状突起間の隙間部が細長くなり、水滴衝突による水の浸入が抑制されることにより、水滴(雨)が全く付着しないほどの超撥水性を示すようになる。
【0018】
上記ブロックBの形状について、図1においては、亀甲状、すなわち正六角形に分割した例を示したが、本発明の撥水構造において、ブロックBの形状としては、図2(b)〜(e)の示すような正方形、円形、帯形、長方形なども例示される。一方、無数の微細錐状突起1から成る微細凹凸構造の中に壁状突起2が網目状、格子状、あるいは縞状に通過している限り、ブロックBの形状に限定はなく、同一形状の繰り返しである必要もない。
【0019】
なお、ブロックBの形状を円形や正方形、正六角形とし、この周囲を壁状突起2が取り囲むような配列、例えば図2(a)〜(c)のような配列を採用することによって、撥水性や耐摩耗性の発現状態に異方性が少ないものとなる。従って、水滴の当たる方向や、布による拭き取り方向によらず、優れた撥水性、耐摩耗性を示す。
一方、図2(d)に示すように、微細凹凸構造ブロックBが帯状をなし、壁状突起2とに交互に配列した場合には、帯の長さ方向と直角方向とで撥水性、耐摩耗性に異方性が生じる。従って、水滴の当たる方向や、布の拭き取り方向が限定されている場合に、より好適に用いることができる。
【0020】
本発明の撥水構造におけるブロックBと壁状突起2の投影面積の割合、すなわち無数の微細錐状突起1が形成された撥水機能部分と、壁状をなす強度保持部分との面積比については、撥水機能を有するブロックBの占有面積が50〜95%(壁状突起2の面積比では、5〜50%)であることが好ましい。さらには80〜95%であることが好ましい。
つまり、ブロックBの占有面積比が50%未満では、表面粗さが減少し、撥水効果が低下する。95%より大きくなると、全体に対する壁の割合が不足し、耐摩耗性が低下する傾向がある。一方、ブロックBの占有面積比が80%以上になると、さらに撥水性が向上し、水滴衝突時の反力によって水滴が跳ね返され、水滴の付着がより効果的に防止されるようになることから望ましい。
【0021】
また、ブロックBの投影面積については、それぞれ0.2〜2000μmであることが好ましい。すなわち、各ブロックの面積が0.2μm未満の場合には、製造が難しくなる一方、当該面積が2000μmより大きくなると、水滴の大きさよりも大きい可能性が生じ、十分な撥水性が得られないことがある。
【0022】
さらに、上記ブロックBの大きさについては、その径Dが壁状突起2の高さHの2倍以上であることが好ましい。これによって、布拭き取り時に壁状突起2にかかる応力がその破断応力に対して十分小さなものとなり、耐摩耗性がより向上することになる。
なお、ブロックBの径Dについては、ブロックBの形状が円形の場合はその径、多角形の場合には、図1(b)に示すように、その多角形に外接する円の径をもって、当該ブロックBの径Dとする。
【0023】
本発明の撥水構造を成形する方法としては、特に限定されるものではないが、熱プレス法(ホットエンボス法)、射出成形法などを挙げることができる。特に光の波長以下の微細構造を容易に成形できる方法として、ナノインプリントが好適に用いられる。このナノインプリントの方法としては、熱及び活性エネルギー線のどちらを用いる方法であってもよい。
【0024】
熱を用いる方法は、熱可塑性樹脂を加熱して、金型を押し当てることによって当該樹脂に所望の構造を転写する方法である。活性エネルギー線を用いる方法は、型に活性エネルギー線により重合し硬化するポリマーやオリゴマー、モノマーなどを入れ、紫外線やX線などの活性エネルギー線を照射することによって固化させる方法である。
【0025】
上記成形に用いるスタンパとしては、上記のような微細な構造を形成できる方法であれば、特にその製造方法に限定はなく、生産性やコストなどを考慮して適宜選択して適用することができる。
なお、本発明において、ナノインプリントとは、数nmから数10μm程度の範囲の転写を言う。
【0026】
成形に使用するプレス装置としては、加熱・加圧機構を有するものや、光透過性スタンパの上方より活性エネルギー線を照射できる機構を有するものがパターン転写を効率良く行う上で好ましい。
【0027】
上記スタンパは、転写されるべき微細なパターンを有するものであり、スタンパにパターンを形成する方法については、特に制限ななく、例えばフォトリソグラフィや電子線描画法等を、所望する加工精度に応じて選択することができる。
また、スタンパの材料としては、シリコンウエハ、各種金属材料、ガラス、セラミック、プラスチック、炭素材料等、強度と要求される精度の加工性を有するものであればよい。具体的には、Si、SiC、SiN、多結晶Si、ガラス、Ni、Cr、Cu、C、さらにはこれらを2種以上含む複合材料を例示することができる。
【0028】
上記構造を形成するための材料(基材)としては、上記に示すいずれかの方法により上記構造を付与できる基材であればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニール、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ガラス強化ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶性ポリマー、フッ素樹脂、ポリアレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアミドビスマレイミド、ポリビスアミドトリアゾール等の熱硬化性樹脂、およびこれらを2種以上ブレンドした材料、さらにはガラス、酸化ケイ酸、酸化アルミニウム等の透明無機材料や、上記樹脂に無機材料をコンポジット化した材料を用いることが可能である。
また、材料物性を向上させるために、例えば、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化インジウム合金等を添加して用いることが可能である。とりわけ透明性があるものは、例えば窓(ウインドシールド)や鏡(サイドミラー)の表面に好適に用いることができる。
【0029】
活性エネルギー線を用いる場合は、活性エネルギー線により重合を開始できる樹脂が用いられる。このような樹脂としては、例えば紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート樹脂、紫外線硬化型エポキシ樹脂などを例示することができる。必要に応じて、活性エネルギー線を照射することによりラジカルを発生する重合開始剤を用いることもでき、より強固に固めるためイソシアネートのような硬化剤を加えることもできる。
また、ここで用いられる活性エネルギー線としては、一般に紫外線やX線、その他電子線、電磁波などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0030】
上記構造を備えた撥水成型品の形成については、特に限定はなく、例えば、基材に直接形成する方法や、成形が容易な材料を塗布して薄膜を作り、そこに上記の構造を転写する方法などがある。
【0031】
本発明において、撥水構造の材料として水との接触角が90°に満たない材料を使用する場合、あるいは水との接触角をさらに大きくして撥水性をさらに向上させようとする場合には、上記のようにして得られた撥水構造の表面に被覆することになる。
このような被覆処理方法としては、このような微細な凹凸構造を被覆材料によって埋めてしまうことのない方法であれば特に限定されない。例えば、LB法、PVD法、CVD法、自己組織化法、スパッタ法、単分子を溶剤で希釈したものを塗布する方法などが挙げられる。
【0032】
上記のような被覆処理に用いられる材料、すなわち水に対する接触角が90°以上となる撥水材料としては、例えばCH−(Si(CH−O)n−Si(CHOCH(n>13)、CH−(Si(CH−O)n−SiCH(OCH(n>13)、CH−(Si(CH−O)n−Si(OCH(n>13)、CH−(Si(CH−O)n−Si(OC(n>13)、CH−(Si(CH−O)n−Si(CH(CHOCHCH(OH)CHNH(CHSi(OCH(n>13)、(CH−(Si(CH−O)n−Si(CH(CHOCHCH(OH)CHN(CHSi(OCH(n>13)、CH−(Si(CH−O)n−Si(OH)(n >13)、CH−(Si(CH−O)n−Si(CHCl(n >13)、CH−(Si(CH−O)n−Si(CH(CHSiCHCl(n >13)、CH−(Si(CH−O)n−SiCl(n >13)、CH−(Si(CH−O)n−Si(OCOCH(n >13)、CH−(Si(CH−O)n−Si(NCO)(n >13)、CH−(Si(CH−O)n−Si(CH(CHO(CHOCONHSi(NCO)(n >13)、Rf−(CH−(Si(CH−O)n−Si(CH(CHOCHCH(OH)CHNHSi(OCH(n>13)、(Rf−(CH−(Si(CH−O)n−Si(CH(CHOCHCH(OH)CHN(CHSi(OCHのようなシリコーン化合物を挙げることができる。
【0033】
なお、上記のような材料による任意の厚さの撥水処理を施したのち、上記のような撥水構造を形成するようになすことも可能である。
【0034】
本発明の撥水構造を備えた撥水成型品は、雨などの水に曝される可能性があるような箇所で好適に用いられる。特に、自動車、船舶、飛行機を始めとする各種輸送機器のウィンドシールドや、室外に取り付けられたミラーやパネルの表面に用いることによって、従来備え付けられていたワイパーシステムが不要になり、生産コスト、工数が削減する可能性もある。また、ボディパネルの表面に用いることで、水しみによる汚れを長期的に防ぐことができる。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明を実施例に基づいて、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されないことは言うまでもない。なお、本明細書において、濃度や含有量などについての「%」は、特記しない限り質量百分率を表すものとする。
【0036】
(実施例1)
ナノインプリント法により、PTFE(水との接触角:104°)の表面に、底面径d=200nm、高さh=400nmの円錐状の微細突起1がピッチP=200nmに配列された微細凹凸面が、図2(a)に示すように、1.6μmの面積を有する六角形のブロックBに分割される。さらに、これらブロックBの間に、高さH=0.6μm(600nm)、厚さt=0.09μm(90nm)の壁状突起2が形成されており、当該ブロックBによる専有面積が80%である本例の撥水構造を得た。
そして、得られた成型品に関して、後述する方法によって撥水性及び耐摩耗性について評価した。その結果を表1に示す。
【0037】
(実施例2)
ナノインプリント法により、フッ素基を導入したアクリル(水との接触角:94°)の表面に、底面径d=1000nm、高さh=3000nmの円錐状の微細突起1がピッチP=1000nmに配列された微細凹凸面が、図2(a)に示すように、1900μmの面積を有する六角形のブロックBに分割される。さらに、これらブロックBの間に、高さH=20μmの壁状突起2が厚さt=0.70μmに形成されており、当該ブロックBによる全体の専有面積が95%である本例の撥水構造を得た。
そして、得られた成型品について、撥水性及び耐摩耗性を同様に評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0038】
(実施例3)
ポリカーボネートにアルミナをコンポジットした基板に対し、フルオロアルキルシラン(CF(CFCHCHSi(OCH)を用いて表面処理した材料(水との接触角:112°)の表面に、ナノインプリント法により、底面径d=50nm、高さh=100nmの円錐状微細突起1がピッチP=50nmに配列された微細凹凸面が、図2(b)に示すように、0.1μmの面積を有す正方形のブロックBに分割される。さらに、これらブロックBの間に、高さH=0.2μm(200nm)、厚さt=0.08μmの壁状突起2が形成されることによって、当該ブロックBによる専有面積が50%である本例の撥水構造を得た。
そして、得られた成型品について、撥水性及び耐摩耗性を同様に評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0039】
(実施例4)
ポリカーボネートにアルミナをコンポジットした基板に対し、フルオロアルキルシラン(CF(CFCHCHSi(OCH)を用いて表面処理した材料(水との接触角:112°)の表面に、ナノインプリント法により、底面径d=100nm、高さh=200nmの円錐状微細突起1がピッチP=100nmに配列された微細凹凸面が、図2(a)に示すように、1000μmの面積を有す正方形のブロックBに分割されると共に、これらブロックBの間に、高さH=5μm、厚さt=4.8μmの壁状突起2が形成されることによって、当該ブロックBによる専有面積が45%である本例の撥水構造を得た。
そして、得られた成型品について、撥水性及び耐摩耗性を同様に評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0040】
(実施例5)
ナノインプリント法により、PTFE(水との接触角:104°)の表面に、底面径d=200nm、高さh=400nmの円錐状微細突起1がピッチP=200nmに配列された微細凹凸面が、図2(b)に示すように、0.8μmの面積を有する正方形のブロックBに分割される。さらに、これらブロックBの間に、高さH=0.5μm(500nm)、厚さt=0.11μmの壁状突起2が形成され、当該ブロックBによる全体に対する専有面積が80%である本例の撥水構造を得た。
そして、得られた成型品について、同様の方法によって撥水性及び耐摩耗性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0041】
(実施例6)
ナノインプリント法によって、PTFE(水との接触角:104°)の表面に、底面径d=200nm、高さh=400nmの円錐状微細突起1がピッチP=200nmに配列された微細凹凸面が、図2(d)に示すように、0.9μmの幅を有するブロックBに分割される。さらに、これらの間に、高さH=0.5μm(500nm)の壁状突起2が厚さt=0.1μm(100nm)に形成され、当該ブロックBによる全体に対する専有面積が90%となる本例の撥水構造を得た。
そして、得られた成型品について、撥水性及び耐摩耗性を同様の方法により評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0042】
ポリカーボネートにアルミナをコンポジットした基板に対し、フルオロアルキルシラン(CF(CFCHCHSi(OCH)を用いて表面処理した材料(水との接触角:112°)の表面に、ナノインプリント法により、底面径d=1000nm、高さh=1000nmの円錐状微細突起1がピッチP=1000nmに配列された微細凹凸面が、図2(a)に示すように、4000μmの面積を有す正方形のブロックBに分割されると共に、これらブロックBの間に、高さH=39.2μm、厚さt=2.31μmの壁状突起2が形成されることによって、当該ブロックBによる専有面積が80%である本例の撥水構造を得た。
そして、得られた成型品について、撥水性及び耐摩耗性を同様に評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0043】
(比較例1)
市販の撥水剤を塗布したガラスを用いて、その撥水性及び耐摩耗性について上記同様に評価した。その結果を表1に併せて示した。
【0044】
(比較例2)
フラクタル構造を形成したガラスに対して、上記同様の試験を実施し、その撥水性及び耐摩耗性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0045】
〔性能評価方法〕
上記実施例によって得られた各撥水成型品について、JIS L1092に規定された方法に基づき、スプレーテスタ(東洋精器製)を用いて、以下の基準によって撥水度を5段階評価した。
1:表面全体に濡れ広がるもの
2:表面に球状を保たずに濡れ広がるもの
3:表面に球状の液滴が付着するもの
4:表面に微小な球状の液滴がわずかに付着するもの
5:表面に液滴がつかないもの
【0046】
耐摩耗性の評価としては、トラバース式摩耗試験機を用いて、摩擦布をキャンバス布(JIS L 3102)とし、荷重9.8kPa、ストローク長100mm、摩擦速度30往復/分の条件のもとに、500往復させた後、上記した撥水評価を行い、撥水度が摩耗試験前と変化しなければ○、変化した場合を×として評価した。
【0047】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(a)本発明の撥水構造の形状例を示す概念図である。(b)図1(a)に示した単位ブロックの外接円径を示す説明図である。(c)図1(a)のに示した単位ブロックの構造を示す線C−Cについての縦断面図である。
【図2】(a)〜(e)は図1(a)に示した単位ブロックの形状及び配置例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1 微細錐状突起
2 壁状突起
B ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無数の微細錐状突起を備えた微細凹凸面が複数のブロックに分割されていると共に、各ブロック間に上記微細錐状突起の高さhよりも大きな高さHを有する壁状突起が形成され、少なくとも表面を構成する材料の水に対する接触角が90°以上であることを特徴とする撥水構造。
【請求項2】
上記ブロックの面積がそれぞれ0.1〜2000μmであることを特徴とする請求項1に記載の撥水構造。
【請求項3】
複数のブロックによる占有面積比が50〜95%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の撥水構造。
【請求項4】
上記微細錐状突起のピッチPが50〜380nm、アスペクト比が2以上であって、上記壁状突起の厚さtが50〜380nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の撥水構造。
【請求項5】
上記ブロックが多角形又は円形状をなし、多角形ブロックに外接する円又は円形ブロックの径Dが上記壁状突起の高さHの2倍以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の撥水構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の撥水構造を有機材料又は有機無機ハイブリット材料により形成して成ることを特徴とする撥水成型品。
【請求項7】
自動車用部材であることを特徴とする請求項6に記載の撥水成型品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−28994(P2009−28994A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194711(P2007−194711)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】