説明

播種育成緑化工法及びその播種育成用竹製ポット

【目的】 本発明は、播種育成緑化工法及びその播種育成用竹製ポットに関する。繁殖してその処分に難儀する真竹のような細径の竹を活用し、一方、産業廃棄物として発生する樹木の根株に付着している土をふるい落としたり掻き落としたりして、多量に貯まる土を客土として有効利用できるようにした。
【構成】
内径が2.5〜4.0cm以内を可とする竹筒を節部(9)が中間位置になるようにして長さが20cm〜25cm程度の本体(1)とし、本体の下端部位を鋭角に斜断して鋭角切り口(2)とし、上端部位も下端の鋭角切り口と同じ向きで斜断して鋭角切口(3)とし、下端の最長の鋭角先端部(21)を除く鋭角切り口の直径方向に上端の鋭角切り口(3)に所定幅(w)の繋ぎ部(5)を残して複数のスリット(4)を形成し、本体(1)の節部(9)より上側の筒内(6)に客土(7)を敷き詰め、その客土の上に種子(8)を発芽と発根し易い向きに置くと共に、その上から客土(7′)を覆土した構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、播種育成緑化工法及びその播種育成用竹製ポットに関するもので、繁殖してその処分に難儀する真竹のような細径の竹を活用し、一方では、産業廃棄物として発生する樹木の根株に付着している土をふるい落としたり掻き落としたりして、多量に貯まる土を播種用の客土として有効利用できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
最近は地方によって、竹の繁殖でその処分に苦慮している自治体や作物専業家や地主が多く存在する。これ等竹材のうち孟宗竹のような太径であれば活用の途もあるが、真竹のような細い内径のものは、活用の途がない。
【0003】
ところで、最近は植栽用ポットとして、竹筒を用いて下端を鋭角に斜断して植栽が困難な場所に打ち込んで苗木の活着と、成長を図る発明は知られている。(例えば、特許文献1〜特許文献3)
【特許文献1】実用新案登録第3083663号の発明
【特許文献2】実用新案登録第3091130号の発明
【特許文献3】実用新案登録第3114416号の発明
【0004】
上記特許文献1にあっては、竹製を含む中空体の底部を斜断して成るポットであって筒体の内径を20mm以上とし、中空部の容積を100〜2000mlとした植栽用ポットの構成である。
【0005】
特許文献2にあっては、竹の節部の仕切り壁を横切るようにして竹を斜断し、その斜断部を底部とする竹製筒体で成る植栽用ポットの構成である。
【0006】
特許文献3にあっては、上下貫通した開放端を有する竹材を含む生分解性素材よりなる筒状体の上端を軸心に対し直交方向に近い切り口の加圧端とし、下端を軸心方向に対し鋭角に交差する切り口の差込端とし、且つ下半部に無数のこ孔をあけた植栽ポットの構成である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1は、中間に底となる節がない中空筒体であるから、地山に打ち込む前に客土や種子を筒内に入れておくと下端側からこぼれ落ちてしまって不適である。どうしても打ち込む前に客土や種子を入れようとするときは、下端の斜断した鋭角切り口にネット状物をで被覆しなければ用をなさない。
【0008】
上記の特許文献2は、下端部近くに節を斜めに横切って斜断した形状であるから、筒内に底の一部となる節が半分あるため、あらじめ筒内に客土や苗木を入れて置くことは可能ではあるが、その底部が下端に近いため、全長が20cm以上もある筒体にあっては、客土を詰める深さが必要以上に深くなり、播種の場合は発芽の効率が悪くなる。
【0009】
上記の特許文献3の請求項1は、全長の中間に節を位置させてあるが、節部の内部の節(横隔壁)は切除されて上下貫通した形状であり、施工に当たっては、植栽ポットを植栽したい場所に打ち込み、下端側の周壁が土中に埋まる位置まで圧入すると、植栽ポット内の土高さが節部の位置になるようにしてある。したがって、地面に打ち込む前に竹筒内に客土を種子や苗木等と共に入れると下側からこぼれ落ちてしまい、不適である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は従来の課題を解決し、予め多数の筒体に客土と種子を均一に詰めておき、これを施工現場に運搬して順次に一挙に打設して発芽と根活着の効率が図れるようにして、竹材の積極的且つ有効活用を図ることを目的とする。
【0011】
本発明の第1は、播種育成緑化工法において、内径が3〜4cm以内を可とする竹筒を用い、その竹筒の節が中間に位置するようにして20cm〜25cm程度の長さに切り揃えて本体とし、その本体の下端部位を鋭角に斜断して鋭角切り口とし、且つ上端部位も下端の鋭角切り口と同じ向きで斜断して鋭角切り口とし、下端の最長の鋭角先端部を除く鋭角切り口から上方に向かって直径方向に鋸目の切り溝を入れて上端の鋭角切り口に所定幅の繋ぎ部を残して複数のスリットを形成し、本体の節部より上側の筒内に客土を敷き詰め、その客土の上にドングリその他の在来種等の種子を発芽と発根し易い向きに置くと共に、その上から客土を覆土しておき、地山に客土を吹き付けて植生基盤層とした法面の所定個所に下端の最長の鋭角先端部を法先(法面の下部)に位置させて鋭角切り口を法肩(法面の上部)に向け、且つ上端の鋭角切り口の最短部位が法面の表面に接する程度まで打ち込んだものである。
【0012】
本発明の第2は、播種育成ポットにおいて、内径が3〜4cm以内を可とする竹筒を節部が中間位置になるようにして長さが20cm〜25cm程度の本体とし、その本体の下端部位を鋭角に斜断して鋭角切り口とし、且つ上端部位も下端の鋭角切り口と同じ向きで斜断して鋭角切り口とし、下端の最長の鋭角先端部を除く鋭角切り口の直径方向に鋸目の切り溝を入れて上端の鋭角切り口に所定幅の繋ぎ部を残して複数のスリットを形成し、本体の節部より上側の筒内に客土を敷き詰め、その客土の上にコナラ、ミズナラ、クヌギ等のドングリ又は在来種等の種子を発芽と発根し易い向きに置くと共に、その上から客土を覆土したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記の構成であるから、次のような効果がある。第1に竹筒製の本体の全長の中間に位置する節部で鋸によりスリット部位を除いて略全面の底部が形成されているから、あらかじめ客土を敷き詰め、そのドングリ等の種子を発芽と発根しやすい向きに置き、その上から客土を詰めておくことにより工場生産に適する。また、これを現場に運搬して即座に打設施工することができ、竹材の有効活用と共に、播種によって、苗木の養成を省くことができる。
【0014】
本体の下端から上方に向かって繋ぎ部を残して直径方向にスリットが形成されているから節部による底部がありながら、当該スリットが発根した根が伸びていく隙間となり、且つ水抜き孔の役割を果たしている。また、本体周面のスリットにより土中の水分を保水し、過剰な水分を排出する効果がある。
【0015】
さらに、本体の内径を3〜4cm程に設定したから、ハタネズミ、リス等野性小動物が筒内の種子を食い漁ろうとしても頭が入らず、且つ種子を収容してある位置が上端の切り口から6cmほどの深さであるから手足が届くことがなく、捕食被害を防ぐことができる。
【0016】
そして、本体下端の斜断した切り口を法肩に向けて下端の最長の鋭角先端部を法面に打ち込むことによって、当該鋭角先端部も法肩方向に向くから地中において、上部から流下してくる水分を受け止めて保水機能を高めることができる。
また、上端の斜断した切り口も法肩に向くから、上端の最長の鋭角先端部によって、法面を伝わって流下する水分を受け止め、保水性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態は次のとおりである。すなわち、内径が3cm程度の多数本の竹筒を用い、その竹筒の節部が中間に位置するようにして20cm〜25cm程度の長さに切り揃えて本体とする。
【0018】
次に、その本体の下端部位を鋭角に斜断して鋭角の切り口とし、且つ上端部位も下端の鋭角切り口と同じ向きに斜断して鋭角切り口とする。そして、本体下端の切り口から上方に向け、丸鋸機械の鋸刃で当該最長の鋭角先端部側を残して切り溝を入れ、上端から所定幅の繋ぎ部を残して3本のスリットを形成する。
【0019】
本体の節部より上側の筒内にを敷き詰め、その客土の上にコナラ、ミズナラ、クヌギ等のドングリその他在来種等の種子を発芽と発根し易い向きに横向き置くと共に、その上から客土を覆土する。
【0020】
この状態で、地山に客土を吹き付けて植生基盤層とした法面の所定個所に下端の最長の鋭角先端部を法先に位置させ、斜断切り口を法肩(法面の上端部位)に向けて打ち込み、上端の鋭角切り口の最短部位が法面の面位置に接する程度まで打ち込む。
【実施例】
【0021】
本発明の実施例を図面に即して説明する。1は内径Rが2.5〜4.0cm以内で好ましくは3.0cm程度を可とする竹筒を用い、その竹筒の節が中間に位置するようにして20cm〜25cm程度の長さに切り揃えて成る本体である。2は本体1の下端部位を鋭角に斜断して成形した鋭角な切り口、3は本体1の上端部位を下端の鋭角切り口2と同じ向きで斜断して成形した鋭角な切り口、4は下端の最長の鋭角先端部21を除くと共に、その最長の鋭角先端部に平行する二方向と直交する一方向に丸鋸機械の鋸刃Sによって本体上方に向かって切り溝を入れて上端の鋭角切口3に所定幅w(図示例で2cm)の繋ぎ部5を残して形成した3本のスリットであり、そのスリット幅は任意であるが1.5〜5.0mm程度に設定してある。
6は本体1の節部9より上側の筒体の内部、7はその内部に敷き詰めた客土、8はその客土7の上に発芽と発根がし易いように配置したドングリその他の在来種等の種子、7′はその種子の上から覆い被せた客土である。
前記の客土は、台風や道路の新規建設や拡幅工事などで発生する倒木や伐採樹木を自治体の要請で産業廃棄物として本件出願人らが受け入れた根株に付着している土をふるい落としたり、掻き落としたものを使用することによって大量に貯まる土の再利用として消費することができる。
【0022】
「具体的な施工例」
次に本発明に係る播種育成ポット及びその播種育成ポットを使って法面の緑化の具体的な施工例を次の通り説明する。
(1) 竹繁殖地から土砂と共に、又は根元付近から切り出して枝葉を切り払う。
(2) 竹の幹を内径が2.5〜4.0cm、好ましくは3.0cm程度の太さのものを選び出し、且つ節部9をほぼ中間に位置するようにして所定の高さH=20〜25cmに切り揃えて本体1とする。その下半部の高さH1=10.0cm、上半部H2=20・0〜22.0cmに設定する。
(3) 本体1の下端部を斜めに切り落として鋭角な切り口2を形成する。
(4) 本体1の上端部を下端の切り口2と同じ向きで斜めに切り落として鋭角切り口3を形成する。
(5) 本体1の下端切り口2の最長の鋭角先端部21の高さ面側を避けた直径方向に向かって二方から丸鋸機械の鋸刃S支持部材を介してで切り溝を入れ、本体1の上方に向かって所定の幅wの繋ぎ部5を残してスリット4を形成する。
(6) 続いて、最長の鋭角先端部21の対向側から丸鋸Sで切れ目を入れ、最長の鋭角先端部21側の高さ面を残してスリット4を形成する。
(7) これによって、筒体内6の節部9にも十字形のスリットが形成される。
(8) 本体1の節部を境にしてその上半部の筒体内6に客土7を厚さ4cmで敷き詰める。
(9) 上記の客土7の上にドングリその他の種子8を発芽や発根し易い向き(図示で横向き)に置く。
(10) その種子8の上から客土7′を約6cm程の厚さで覆土する。
(11) 上記の(1)から(10)までの作業は、予め工場で製造しておく。
(12) 客土・種子を詰めた必要数量の本体1を目的の造林地現場まで運搬する。
(13) 施工現場は、予め別途の工事で地山Aに植生基盤材を吹き付けて約20cmの厚さで植生基盤層A2を成形する。
(14) 所定の個所に本体1の下端の最長先端部位21を法先(法面の下端)側に位置すると共に、下端切り口2を法肩に向けて起立させて押し込む。
(15) 植生基盤層A2は比較的軟質であるから本体1を手足で押し込むことができるが、それでも硬いときは、傾斜頭部専用の叩打用キャップ10を用い、且つハンマ又は太棒等で叩いて植生基盤層A2に打ち込んでいく。
(16) 打ち込む量は、上端の最短部位32が法面Aに接する程度に設定する。
(17) 打ち込み施工後に法面Aに降った雨等による水分は、地中にあっては、下端部の最長先端部位21で受け止めて保水する。また、地上にあっては上端部位の最長先端部位31で法面を伝わって流下する水分を受け止めて保水する。
(18) 期間の経過によって、種子8の発芽8′は客土7′を通って上方に伸びていき、発根(図示省略)した根は、節部9に形成されたスリット4を通じて筒内の下方に伸びていく。また、本体1の周面に形成した3本のスリット4からも発根の根がはみ出して活着する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る播種育成ポットの側面図である。
【図2】図1の中央縦断側面図である。
【図3】図1の3−3線に沿う断面図である。
【図4】図3の打ち込みによる下端部位の変形断面図である。
【図5】本体の直径二方向へのスリット成形加工図である。
【図6】図5の本体を軸心を中心に90度回転した状態で直径一方向へのスリット成形加工図である。
【図7】ポット内に播種した種子から発芽した状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1…竹筒製本体
2…本体下端の鋭角切り口
3…本体上端の鋭角切り口
4…スリット
5…繋ぎ部
6…竹製本体の上半部の筒内
7・7′…客土
8…種子
9…底部を成す節部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内径(R)が2.5〜4.0cm以内を可とする竹筒を用い、その竹筒の節が中間に位置するようにして20cm〜25cm程度の長さに切り揃えて本体(1)とし、その本体の下端部位を鋭角に斜断して鋭角切り口(2)とし、且つ上端部位も下端の鋭角切り口と同じ向きで斜断して鋭角切り口(3)とし、下端の最長の鋭角先端部(21)を除く鋭角切り口から上方に向かって直径方向に鋸目の切り溝を入れて上端の鋭角切り口に所定幅の繋ぎ部(5)を残して複数のスリット(4)を形成し、本体(1)の節部(9)より上側の筒内(6)に客土(7)を敷き詰め、その客土の上に植物の種子(8)を発芽と発根し易い向きに置くと共に、その上から客土(7′)を覆土しておき、地山(A)に客土を吹き付けて植生基盤層(A2)とした法面(A)の所定個所に下端の最長の鋭角先端部(21)を法先に位置させて鋭角切り口(2)を法肩に向け、且つ上端の鋭角切り口(3)の最短部位(32)が法面の面(A)に接する程度まで打ち込んだことを特徴とする播種育成緑化工法。
【請求項2】
内径(R)が2.5〜4.0cm以内を可とする竹筒を節部(9)が中間位置になるようにして長さが20cm〜25cm程度の本体(1)とし、その本体の下端部位を鋭角に斜断して鋭角切り口(2)とし、且つ上端部位も下端の鋭角切り口と同じ向きで斜断して鋭角切口(3)とし、下端の最長の鋭角先端部(21)を除く鋭角切り口の直径方向に鋸目の切り溝を入れて上端の鋭角切り口(3)に所定幅(w)の繋ぎ部(5)を残して複数のスリット(4)を形成し、本体(1)の節部(9)より上側の筒内(6)に客土(7)を敷き詰め、その客土の上にドングリその他の在来種等の種子(8)を発芽と発根し易い向きに置くと共に、その上から客土(7′)を覆土したことを特徴とする播種育成ポット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−138637(P2007−138637A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336431(P2005−336431)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(591028810)上毛緑産工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】