説明

撮像システムのレーザスペックル低減

【課題】スペックル低減を、拡散板を動かすのではなく、ビームを動かして、質量及びモーメントだけでなく、付随する熱及び振動を低減することにより達成する。
【解決手段】コヒーレント光のスペックルを低減するシステム250において:拡散板286と;少なくとも1つのビームステアラー270および第1軸を有するビームステアリングシステムと;拡散板286とビームステアリングシステムとを相互接続する光学系であって、光を、少なくとも1つのビームステアラー270を介して拡散板286の連続する軸外領域に、そして拡散板286の連続する軸外領域から少なくとも1つのビームステアラー270に誘導することにより、拡散板286の連続する軸外領域からの光の角度分布が、第2軸を略中心とするようになり、かつ第2軸に略揃うようになって、スペックル低減システムから射出する光学系と;を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザによって生じるような、コヒーレント光の使用により生じるスペックルに関するものであり、特に撮像システムによって取得される画像のスペックルによる悪影響を低減するために考案されている。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィー及び干渉分光法のような光撮像用途では、画像を形成するために高コヒーレントな光が必要となる。画像品質を劣化させてしまうスペックルは、画像コントラストを高めるために利用される同じ干渉現象から生じる。コヒーレント撮像システム内の何れの光散乱によっても、局所的な位相相互作用が生じて、建設的干渉(強め合う干渉)及び破壊的干渉(弱め合う干渉)の外見上ランダムなパターンが生じ、これによって所望の干渉パターンを不鮮明にしてしまう。このような散乱は、塵、不完全な撮像光学系、及び迷反射を含む何れかの数の原因に起因するだけでなく、撮像対象の被写体に起因して生じ得る。
【0003】
拡散板表面が多くの場合、スペックルの原因となるが、拡散板表面を使用してスペックルを、拡散板表面を回転させ、そして撮像素子(ヒトの眼を含む)の積分時間を利用して、結果的に生じる異なるスペックルパターンの合計平均を時間軸でとることにより軽減することもできる。従来のスペックル低減システムは、レーザの出力ビームを回転拡散板に集光する。拡散板の拡散集光部は、照射システムの新規スポット光源を形成する。レーザビームを集光させる拡散板の直径、及び拡散板を回転させる速度(一括して、集光ビームに対する拡散板の局所線形速度として定量化することができる)を調整して、スペックルコントラストがカメラの積分時間内に十分低くなるようにする。一般的に、スペックルコントラストは、所定の積分時間内の無相関スペックルパターン群の数の平方根だけ低くなる。
【0004】
回転拡散板、特に高精度光学素子内の回転拡散板は、熱及び振動の発生を含む幾つかの不具合を有する。画像を、カメラのより短い積分時間内に取得するという継続的な需要から、拡散板の直径を更に長くして、または拡散板を更に高速に回転させて、所望のスペックル低減量を維持する必要がある。拡散板がより大きくなり、そしてより高速になるだけでなく、モータの駆動力がより大きくなると、不所望の熱及び振動が大きくなって、所望の撮像が高精度光学撮像素子内で行なえなくなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者らは、スペックル低減を、拡散板を動かすのではなく、ビームを動かして、質量及びモーメントだけでなく、付随する熱及び振動を低減することにより達成する構成を想到するに至った。しかしながら、軸に収集され、そして再集光されるときに拡散板の軸外照射が変化すると、システムのエテンデューが、各被照射位置から射出瞳を部分的にしか満たさないことにより大きくなってしまい、そして当該瞳を短い積分時間中に徐々に満たすためには完全に1回転する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、好適な態様では、スペックルが動的に拡散される度合いを、レーザビームの方向を操作して、該ビームが拡散板上を走査するようにし(例えば、拡散板上を周回するように)、そして再構成ビームの光の同心円状角度分布を維持しながら前記拡散光を再構成ビームとして収集することにより大きくする。前記拡散板の各位置から収集される光は、射出瞳を同心円状に満たすことにより所望通りに利用される。例えば、レーザビームをステアリングミラーに誘導することができ、このステアリングミラーが当該ビームの方向を操作して、当該ビームが拡散板上の略円形または略渦巻き状の光路を辿るようにする。当該拡散板上を周回する異なるスポット位置を通過する光がずれるのにも拘わらず、当該システムのエテンデューは、当該拡散板からの光の軸外分布が、共通光軸を再び中心とするようになり、かつ互いに対して共通光軸に沿って再び揃うので、小さく保つことができる。すなわち、当該拡散板の異なる被照射領域からの光であって、共役な位置にあるアパーチャストップの異なる限定領域を満たす光を単に光軸に集光するのではなく、これらの被照射領域の各被照射領域からの軸外分布を持つ光は、共役な位置にあるアパーチャストップの共通領域を満たす。当該拡散板とは共役関係にある構成では、これらのエネルギー重心は、光が当該拡散板から収集される軸外スポット位置が異なっているのにも拘わらず、再び略中心にくるようになる。当該拡散板とは共役関係が反転した構成では、これらのエネルギー重心は、光が当該拡散板から収集される軸外スポット位置が異なっているのにも拘わらず、再び略位置合わせされる(再分布が必ず拡散板自体に起因することを除いて)。
【0007】
例えば、当該拡散板から収集される光は、同じステアリングミラーに戻すことができる、または同期ステアリングミラーに誘導して、拡散光を再度中心に来るようにするとともに再度位置合わせすることができる。好適には、当該拡散板自体が屈折力を有するか、または介在光学素子が、拡散光を同じステアリングミラーに、または同期駆動されるステアリングミラーに再誘導する屈折力を有するかの何れかである。ステアリングミラーの運動は、光が光速で通過した後に生じるので、当該拡散光を、当該光の方向を最初に操作したときの位置の光軸に戻すことができる。
【0008】
ステアリングミラーは、特にレーザビームの焦点に配置される、または焦点の近傍に配置される場合に、サイズを小さくすることができるとともに、ステアリングミラーの中心周りを、またはほぼ中心周りを回転することができる。ビームステアリングミラーのサイズを小さく抑えて、当該ミラーの質量を小さく抑えることにより、そしてステアリングミラーを、当該ミラーの質量中心の近傍で回転させて、当該ミラーのモーメントを小さく抑えることにより、ずっと少ない熱及びずっと小さな振動しか発生しないようになる。スペックル低減システム全体を更にコンパクトに、低コストで形成することができ、かつスペックル低減システム全体は、動作するためにずっと少ない電力しか必要としない。
【0009】
ステアリングミラーの各角度位置において、光の所望の全体角度分布が維持されるので、カメラの所定の積分時間に対するステアリングミラーの回転量は、1回転サイクルに亘る光の所望の角度分布を最初に再構成するように選択するのではなく、所望のスペックル低減量を達成するように選択することができる。スペックル低減は、2つの主要な方法により達成される:まず、スペックルを発生させ得る表面アーチファクト群の間の最大間隔を小さくする空間コヒーレンスを低く抑えることにより;そして次に、非相関スペックルパターン群をカメラの積分時間内で平均して、当該スペックルを平均化してゼロにすることにより達成される。当該拡散板自体は、特に十分広い領域に亘って照射される場合に、空間コヒーレンスを低くすることができ、そしてスペックル低減システム内の光学素子群によって、拡散板の凹凸形状を分解して、拡散板によって可能になる角度拡散範囲を保持することが好ましい。凹凸のピッチを細かくするとまた、ビームが拡散板上を追従してこれらのスペックルパターンの相関性を無くすことができるので、1つのスペックルパターンを別のスペックルパターンから判別し易くすることができる。
【0010】
コヒーレント光のスペックルを低減するシステムとしての本発明の1つの態様は、拡散板と、少なくとも1つのビームステアラーを有するビームステアリングシステムと、そして前記拡散板と前記ビームステアリングシステムとを相互接続する光学系と、を含む。該光学系は、光を、前記少なくとも1つのビームステアラーから前記拡散板の連続する軸外領域に、そして前記拡散板の前記連続する軸外領域から前記少なくとも1つのビームステアラーに誘導することにより、前記拡散板の前記連続する軸外領域からの光の角度分布群の各角度分布が、共通軸を略中心とするようになり、かつ該共通軸に揃うようになって、光が前記スペックル低減システムから射出する。
【0011】
前記ビームステアラー(または、同期駆動される一対のビームステアラーの各ビームステアラー)は、1つの可動反射面を含むことができ、そして前記光学系は、1つの集光光学素子を含むことができ、該集光光学素子は、前記光を前記可動反射面に集光して、前記光を前記拡散板の前記連続する軸外領域に向けて反射する。同じ(または、異なる)集光光学素子は、前記拡散板の前記連続する軸外領域からの前記光を、前記同じ、または異なる可動反射面に集光することにより、前記拡散板の前記連続する軸外領域の各軸外領域からの前記光の分布が、前記共通軸を中心とするようになり、かつ前記共通軸に揃うようになる。別の構成として、前記集光光学素子は、前記可動反射面からの前記光を、前記拡散板の前記連続する軸外領域に再誘導し、そして集光することができ、そして前記同じ、または異なる集光光学素子は、前記拡散板からの前記集光光を、前記同じ、または異なる可動反射面に収集し、そして再誘導することができる。
【0012】
スペックルをスペックル低減システムで低減する方法としての本発明の別の態様は、コヒーレント光を第1軸に沿ってビームステアラーに誘導するステップと、前記ビームステアラーからの光を拡散板の連続する軸外領域に誘導するステップと、そして前記拡散板の前記連続する軸外領域からの前記光を、前記同じビームステアラーまたは同期して作動する別のビームステアラーに誘導して、前記拡散板の前記連続する軸外領域の各軸外領域からの前記光の角度分布が、第2軸を略中心とするようになり、かつ該第2軸に略揃うようになって、光を前記スペックル低減システムから射出するようにするステップと、を含む。
【0013】
コヒーレント光を前記第1軸に沿って前記ビームステアラーに誘導する前記ステップでは、前記光を1つの可動反射面に集光させることができ、前記ビームステアラーからの光を誘導する前記ステップでは、前記光を前記拡散板の前記連続する軸外領域に向けて反射することができ、そして前記拡散板の前記連続する軸外領域からの前記光を誘導する前記ステップでは、前記拡散板の前記連続する軸外領域からの前記光を前記同じ可動反射面に、または前記可動反射面と同期して動くことができる別の可動反射面に集光させて、前記拡散板の前記連続する軸外領域の各軸外領域からの前記光の分布が前記第2軸を中心とするようになり、かつ前記第2軸に揃うようになる。別の構成として、前記ビームステアラーからの光を誘導する前記ステップでは、可動反射面からの前記光を前記拡散板の連続する軸外領域に集光させることができ、そして前記拡散板の前記連続する軸外領域からの前記光を誘導する前記ステップでは、前記拡散板からの前記集光光を、前記同じ可動反射面に、または前記可動反射面と同期して動くことができる別の可動反射面に誘導して、前記拡散板の前記連続する軸外領域の各軸外領域からの前記光の分布が、前記第2軸を中心とするようになり、かつ前記第2軸に揃うようにすることができる。基準となる第1及び第2軸は種々の所定の関係を有することができるが、第1及び第2軸は一致することが好ましい、または例えば、光学設計全体を簡易化するために少なくとも同軸であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来のスペックル低減システムを搭載したフィゾー干渉計の模式図である。
【図2】揺動ミラーを集光光学素子と組み合わせて、コリメートビームを、反射型拡散板上を周回するように、かつ公称法線入射角で追従させる構成の本発明によるスペックル低減システムの模式図である。
【図3】揺動ミラーを球状反射型拡散板と組み合わせて、発散ビームを、反射型拡散板上を周回するように、かつ公称法線入射角で追従させる構成の本発明による別のスペックル低減システムの模式図である。
【図4】光を拡散板に誘導し、そして拡散板から誘導する機能を別々に実行する同期回転ミラーを特徴とする別のスペックル低減システムの模式図である。
【図5】光を共役関係が反転した構成で集光することができることを除いて、図4のスペックル低減システムと同様である別のスペックル低減システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すフィゾー(Fizeau)干渉計10には、従来のスペックル低減システムが搭載される。コヒーレント光源を用いた実質的に全ての干渉計だけでなく、コヒーレント光源を用いた他の撮像システムが、同様のスペックル低減システムの利点を生かすことができるので、このフィゾー干渉計10が純粋に例示として提示されている。
【0016】
恐らく、レーザ光源(図示せず)に接続されることになるファイバ端16は、初期のコヒーレント(時間及び空間)照射スポット光源18となる。レンズ20は、ファイバ端16からの出力を、円形拡散板22の拡散板表面24に集光する。拡散板の本体26は、光を透過するが、拡散板表面24を透過した光は、より広い範囲の角度に亘って散乱されて、新規スポット光源を形成する。モータ30は、円形拡散板22を、好適には高速で回転させて、新規スポット光源28の特定パターンの発散角が連続的に変化するようにする。
【0017】
ビームスプリッタ32を透過した後、レンズ34はスポット光源28から放出される光を収集し、そして収集光を平行化して干渉計10の測定アーム36を透過させる。コリメート光の第1部分は、フィゾー光学素子38の基準面40により反射され、そして当該コリメート光の第2部分は、測定対象のオブジェクト42の検査面44により反射される。検査面44及び基準面40の両方によって反射された光は、フィゾー光学素子38を透過し、そしてレンズ34により収束光路上で、新規スポット光源28に向かって再集光される。しかしながら、ビームスプリッタ32は、戻り光を干渉計10の記録アーム46に誘導し直す(すなわち、反射する)。記録アーム46内のレンズ48は、基準面40及び検査面44を、CCD(電荷結合素子)のような、更に広い意味では、カメラと表記されるような画像検出器50の表面52に結像する。
【0018】
基準面40と検査面44との間に違いがあると必ず、干渉縞が生成され、これらの干渉縞を分析することにより、検査面44における表面高さの変化を測定することができる(基準面は、所定の表面、例えば平坦な表面を有する)。干渉スペックルが干渉計10内で発生すると必ず、画像を局所的なスプリアス応答により劣化させる傾向がある。しかしながら、スペックルの影響を、円形拡散板22を回転させることにより低減させて、画像検出器表面52に現われるスペックルパターンをランダムに変動させる。円形拡散板22を回転させる速度は、画像検出器50の積分時間を基準に設定されて、画像検出器表面52に現われるスペックルパターンの変動が、画像検出器50により連続して取得される各画像内のスペックルの影響を軽減するために十分な大きさとなるようにする。
【0019】
スペックルパターンの変動を大きくしてスペックルを更に軽減するために、またはより短い積分時間に対応するために、円形拡散板22の回転速度、または新規スポット光源28が形成される円形拡散板22の半径の両方を大きくすることができる。両方のアプローチは、熱及び振動が大きくなるという不具合を有する。レンズ20を、当該レンズの軸に沿って、拡散板表面24に集光部が合わない位置に並進移動させ、そして新規スポット光源28を大きくすることにより、空間コヒーレンスを低減させる。
【0020】
図2のスペックル低減システム60において最初に具体化される形態の本発明によって、図1の上述の従来のスペックル低減システム12に関連する問題の多くを解決することができる。スペックル低減システム60しか図2に示していないが、スペックル低減システム60だけでなく、以下に示す他の新規のスペックル低減システムが、スペックルの影響を受ける多種多様なコヒーレント撮像システムの新規スポット光源(例えば、106)を提供することを理解することができる。
【0021】
レーザ光源(図示せず)からのコヒーレント光のコリメートビーム64は、光軸62に沿って、ビームスプリッタ66、及び反射型拡散板68を貫通するアパーチャ70の両方を通って伝搬して、第1集光光学素子76に到達し、この第1集光光学素子76がコリメートビーム(平行化ビーム)64を収束ビーム78として、集光部84に位置する揺動ミラー80(すなわち、ステアリングミラー)の反射面82に集光する。テキサスインスツルメンツ社製の2軸アナログMEMSポインティングミラーTALP1000Bのようなマイクロ電気機械システム(MEMS)素子とすることができる揺動ミラー80は、反射面82を2軸(例えば、正弦波で駆動される軸)周りに同時に回動させて、反射面82を、光軸62に一致する軸86の回りを効果的に回転させる。揺動状態では、揺動ミラー80の反射面82は、収束ビーム78を異なる光路上の発散ビーム88として偏向させて(すなわち、角度反射して)、第1集光光学素子76に戻し、この第1集光光学素子76が次に、発散ビーム88を、光軸62に平行であるが光軸からずれている再平行化ビーム90として再平行化する。再平行化ビーム90で反射型拡散板68の反射型拡散板表面72の軸外領域74を照射し、この軸外領域74によって、再平行化ビーム90が拡散コリメートビーム92として反射されて第1集光光学素子76に戻る。第1集光光学素子76は、拡散コリメートビーム92を拡散収束ビーム94として、初期集光部84に重なる拡散集光部96に位置する揺動ミラー80の反射面82に集光する。拡散集光部96のサイズは、拡散板表面72の拡散角に比例する。集光部96は拡散性であり、かつ揺動ミラー80の反射面82は運動している(この運動は、光速に対して無視できる)が、戻り拡散収束ビーム94のエネルギー重心95は、揺動ミラー80の反射面82に、発散ビーム88が最初に、反射面82により反射されたとされる角度と略同じ角度で入射する。従って、揺動ミラー80の反射面82は、拡散収束ビーム94を戻り光路上の拡散発散ビーム98として、光軸62に沿って反射する。
【0022】
このように、スペックル低減システム60では、反射型拡散板68から戻ってくるエネルギー重心99は、反射面82を傾ける角度に関係なく、拡散発散ビーム98内の光軸62を中心とし、かつ当該光軸62に一致するとされる状態を保持するが、その理由は、反射型拡散板68からの拡散光が反射面82に、当該光の元の光路に略沿うようにして戻るからである。照射される拡散板表面72上のスポット位置、例えば軸外領域74に関係なく、拡散収束ビーム94は、異なる方向から同じ拡散集光部96に収束し、そして反射面82の向きは必ず、拡散収束ビーム94が収束するときの到来方向に応じて変化している。すなわち、発散ビーム88が反射型拡散板68に近付くときの方向を制御する反射面82の向きを同じにすることによって、拡散収束ビーム94を重なり拡散発散ビーム98として再配向させるときの方向も制御する。その結果、拡散発散ビーム98の重心99は、収束ビーム78の重心79に、光軸62に沿って略一致する。何れの単一の瞬間においても、重心79に対する重心99の位置及び方向は、反射型拡散板表面72の局所的な特徴に起因して、ごく僅かにずれる可能性があるが、これらの変化は、拡散板凹凸形状サイズが、拡散板表面72のうち、瞬間的に照射される領域74に対して小さい場合に、ほとんど感知することができず、そして凹凸形状サイズが比較的大きい場合でも、積分時間で平均化されてゼロになる傾向にある。
【0023】
第1集光光学素子76は、拡散発散ビーム98を拡散コリメートビーム100として、戻り光路に沿って、反射型拡散板68のアパーチャ70を通って、ビームスプリッタ66に到達するように再平行化し、この場合、拡散コリメートビーム100は、第2集光光学素子102を通るように誘導される。スペックル低減システム60の出口に近付くと、第2集光光学素子102は拡散コリメートビーム100を、拡散集光部104を通過するように収束させ、この拡散集光部104は、揺動ミラー80の反射面82の初期集光部84及び拡散集光部96の両方と光学的共役関係にあるが、反射型拡散板68の拡散板表面72とは共役関係が反転した構成になっている。反射型拡散板表面72の軸外領域群74の各軸外領域は、拡散板表面上を周回する軸外領域群74の角度位置に関係なく、反射型拡散板68のアパーチャ70と共役関係のままであり、そして拡散板表面72の異なる軸外領域74からの拡散コリメートビーム群100の各拡散コリメートビームは、アパーチャ70の共通領域群をほぼ満たす。
【0024】
共役拡散集光部104は、スペックルの影響を受けるコヒーレント撮像システムの新規スポット光源106を形成する。虹彩絞り108を新規スポット光源106の位置に配置して、スペックル低減システム60から射出されるスペックル除去ビーム110の空間コヒーレンスを調整する。スペックル低減システム60の開口数に対して、虹彩絞り108のサイズを小さくすることにより、空間コヒーレンスを、後続の撮像システムの要求に従って向上させることができる。
【0025】
揺動ミラー80の反射面82は、第1集光光学素子76の後方焦点に位置することが好ましく、そして反射型拡散板68の拡散板表面72は、第1集光光学素子76の前方焦点に位置することが好ましく、これにより、関連する集光機能及び平行化機能を実行する。この実施形態の揺動ミラー80の反射面82は、2つの直交軸の回りを回動することが好ましく、第1直交軸は、反射面82の平面内に、または平面の近傍に位置し、そして第2直交軸は、直交平面内に位置し、2つの回動軸の運動が組み合わされると、主として、光軸62に一致する軸86周りの回転を生み出す。しかしながら、第2軸の自由度が追加されると、極角を調整することができ、この極角を利用して、反射面82を光軸62に対して傾斜させる。従って、揺動ミラー80によって反射され、そしてコリメートビーム90として第1集光光学素子76によって再平行化される発散ビーム88は、反射型拡散板68の拡散板表面72上を周回するように、光軸62から異なる半径位置で追従させることができる。例えば、コリメートビーム90は、拡散板表面72上を可動渦巻き状に追従して、拡散板表面72のより広い領域を照射することにより、拡散パターンが各1回転中に繰り返されないようにすることができる。この機能を利用して、拡散特性を変えることもできる。例えば、拡散板表面72の拡散特性は、光軸62からの半径方向距離とともに徐々に変化させるか、または徐々に強くなるように変化させることができ、そしてコリメートビーム90を調整して、特定の半径方向位置で追従させて、所望の拡散特性を示すことができる。
【0026】
反射型拡散板68の拡散板表面72は、入射コリメート光を或る範囲の角度で反射する粒状形を有することが好ましいが、拡散板表面72は、この目的を達成するために多くの異なる形状を採ることができ、従って、より高次の鏡面形状を含む、種々の傾斜のより高次の面形状を有するものとして表わすことができる。コリメートビーム90が局所的に反射されるときの異なるビーム角度によって、位相を光線間で相対的に概略ビーム伝搬方向に、不所望の破壊的干渉(スペックル)が発生し得る変化する照野位置に対応して変化させる。拡散板表面72を反射板(拡散反射板を形成する)に直接内蔵することができるが、拡散機能及び反射機能は、例えば拡散面及び反射面を同じ光学素子の内部に個別に設けることにより、またはこのような個別の面を異なる光学素子に設けることにより分離することができる。拡散は、屈折率傾斜型ゾーンプレートのような拡散光学素子の本体の内部で行なうこともできる。スペックルコントラストを、最大拡散角度領域群を集めることにより低下させる場合、入力ビーム64を、反射面82の微小な点状集光部84に集光させることが好ましい。拡散板表面72及び反射面82が、共役関係が反転した構成である場合、拡散板表面72により反射される拡散光の角度限界は、反射面82の外部アパーチャによって定義される。微小な点状集光部84によって、拡散板表面72に入射するビーム90の平行度を高めて、拡散コリメートビーム92内の光の角度分布、及び反射面82の拡散点状集光部96に収まる光の対応する空間分布が共に、拡散板表面72の拡散性に更に強く関連付けられて、反射面82によって拡散板表面72から収集される拡散光の実効開口数が大きくなることが保証される。
【0027】
拡散板表面72の拡散特性を高める(例えば、粒子サイズを小さくすることにより)と、拡散コリメートビーム92が反射型拡散板68によって反射されるときの角度範囲を広くすることができる。戻り拡散ビーム90の角度範囲が広くなると、揺動ミラー80の反射面82の拡散集光部96のサイズが大きくなる。好適には、揺動ミラー80の反射面82は、質量及びモーメントを小さく抑えるために出来る限り小さいサイズとし、かつ反射型拡散板68で捕捉されるように構成される所望の最大画角に対応するために十分なサイズとする。
【0028】
拡散板表面72の拡散特性を高める他に、スペックル低減率は、揺動ミラー80の反射面82を、出来る限り速い速度で、かつ最大の極角で回転させて、拡散板表面72上を最大可能半径で追従させて入射コリメートビーム90が拡散板表面72を最大可能線形速度で移動するようにすることにより最大にすることができる。テキサスインスツルメンツ社製の基準揺動ミラーは、約3ミリメートルの直径、約±5度の両軸周りの傾斜角範囲、及び約130ヘルツの直交光軸周りの回転速度を有する。反射面82を傾斜させることができる角度がプラスまたはマイナス5度であるとすると、光は鏡面反射によって入射角の2倍の角度方向に反射されるので、光軸62に対してプラスまたはマイナス10度の範囲の公称傾斜角で反射発散ビーム88が伝搬することができる。第1集光光学素子76の焦点距離を長くして、光を、反射型拡散板上を周回するように、反射面82が最大傾斜角のときに追従させるときの半径を長くすることができるが、開口数がそれに応じて小さくなることによって、拡散板表面72の凹凸形状を分解することができる角度範囲が狭くなる(すなわち、拡散パターンを捕捉することができる画角範囲が狭くなる)。線形速度を速くすると、所定の積分時間内に捕捉することができる異なるスペックルパターンの数が増え、そして画角が大きくなると(そのように捕捉される場合)、異なるスペックルパターンを判別する能力が高くなる(すなわち、スペックルパターンを分解することができる可能な照野位置の数が増える)。
【0029】
従来の常法に従って、ビームスプリッタ66は偏光ビームスプリッタとすることができ、この偏光ビームスプリッタを1/4波長板(図示せず)と一緒に使用して、光がビームスプリッタ66に到達して透過するときの損失を最小にする。例えば、コリメート光ビーム64が、直線偏光ビームとして放出される場合、偏光ビームスプリッタの偏光軸の向きを調整して、直線偏光ビームがビームスプリッタ66を透過することができるようにする。しかしながら、1/4波長板を通過したコリメートビーム64及び100が連続して衝突すると、直線偏光ビームの偏光軸が90度だけ回転して、偏光ビームスプリッタが、戻り拡散コリメートビーム100を、別の光路に沿って、スペックル低減システム60の出口に向かって反射するようになる。同等の偏光ビームスプリッタ構成配置を用いて、円偏光光ビームを含む他の極性配向を判別することができる。部分反射率及び他の公知のビーム分割方式を利用して、ビームを伝搬させてスペックル低減システム60に入射させ、そしてスペックル低減システム60から射出させることもできる。
【0030】
拡散発散ビーム98の重心99を、収束ビーム78の重心79と光軸62に沿って一致させることが好ましいが、拡散発散ビーム98の重心99は、拡散収束ビーム94の拡散集光部96が収束ビーム78の初期集光部84から比較的ずれている場合に、異なる軸に一致させることができる。例えば、拡散板表面72が仮に、わずかに傾斜して、コリメートビーム90が拡散板表面72に入射法線角から外れて衝突するとした場合、拡散集光部96は、集光部84に対してわずかにシフトすることになる。コリメートビーム64及び100の光路が結果的に異なることを利用して、これらのビームを分離するビームスプリッタ66を無くすことができる。
【0031】
反射型拡散板68は固定されることが好ましいが、反射型拡散板68をコリメートビーム90が追従する方向とは反対の方向に回転させて、コリメートビーム90を拡散板表面72に対して移動させるときの相対的な線形速度を速くすることもできる。
【0032】
図3に示す別の実施形態は、集光光学素子76の集光機能群のうちの幾つかの集光機能を球状反射型拡散板128に取り込んでいる。前の実施形態と同様に、別のスペックル低減システム120は、コリメート光ビーム122を受光し、このコリメート光ビーム122はビームスプリッタ124を光軸138に沿って透過する。球状反射型拡散板128のアパーチャ130の内部(または、少なくとも近傍)に位置する第1集光光学素子(例えば、レンズ)126は、コリメートビーム122を収束ビーム134として、揺動ミラー140の反射面142の初期集光部136に集光する。光軸138に一致する有効回転軸144周りの反射面142の瞬時方位角では、収束ビーム134が、球状反射型拡散板128の軸外領域147に入射する発散ビーム146として軸外に反射される。球状反射型拡散板表面132を、初期集光部136を中心にして有する球状反射型拡散板128は、発散ビーム146を軸外領域147で、拡散収束ビーム148として、初期集光部136に一致するとされる拡散集光部150に向けて反射する。反射面142の同じ瞬時方位角では、拡散収束ビーム148は、これもまた収束ビーム134に一致するとされる拡散発散ビーム152として反射される。
【0033】
前の実施形態と同様に、揺動ミラー140はビームステアラーとして機能し、このビームステアラーは、発散ビーム146を、球状反射型拡散板表面132上を回転軸144周りの反射面142の有効回転により生じる円形軌跡にほぼ従って追従させる。しかしながら、拡散板表面132の球形の形状は、反射拡散収束ビーム148を拡散集光部150の反射面142に戻す屈折力を与える。
【0034】
反射面142の方位角、及び拡散板表面132が照射される軸外スポット位置に関係なく、異なる方位の拡散収束ビーム148は全て、同じ拡散集光部150に戻る。更に、かつ光速の観点から、反射面142が所望通りに運動するのではあるが、拡散板表面132の軸外スポットが照射されるときの反射面142の方位角は、拡散光が同じ方位に収集されるときの反射面142の方位角と同じ方位角である。スペックル低減システム120は対称設計になっているので、個々の発散ビーム146のエネルギー重心147は、これらの発散ビームのその瞬間の相手方の拡散収束ビーム148の重心149に一致し、そして反射面142で反射されると、拡散収束ビーム148は重なり拡散発散ビーム152に変換され、この拡散発散ビーム152の内部では、拡散収束ビーム148の重心149は、収束ビーム134の重心135を光軸138に沿って同じく中心とし、かつ当該重心135に光軸138に沿って一致する。
【0035】
第1集光光学素子126は、拡散発散ビーム152を拡散コリメートビーム154として平行化し、これらの拡散コリメートビーム154は、光路上のビームスプリッタ124によってスペックル低減システム120の出口に向かって反射される。第2集光光学素子156は、拡散コリメートビーム154を、拡散スポット光源160をスペックル低減システム120の出口で形成する拡散集光部158を通過するように収束させて、スペックルの影響を受けるコヒーレント撮像システムに送出する。新規スポット光源160を取り囲む虹彩絞り164は、スペックル低減システム120から射出するスペックル除去ビーム162の空間コヒーレンスを調整する。新規スポット光源160を形成する拡散集光部158は、揺動ミラー140の反射面142の初期集光部136及び拡散集光部150の両方と光学的共役関係にある。従って、反射面142の各角度位置では、虹彩絞り164が角度空間的に満たされる割合は、略一定のままである。
【0036】
拡散板表面132の連続する軸外領域147の各軸外領域との光学的共役関係を設定するために、第2集光光学素子156は第1集光光学素子126から、第1集光光学素子126の焦点距離の2倍に等しい光学距離に位置することが好ましい。そのようなことから、拡散コリメートビーム群154の各拡散コリメートビームは、第2集光光学素子156のアパーチャ166の殆どの共通領域を、拡散板表面132の被照射軸外領域群147の各被照射軸外領域と共役関係にある領域として満たす。スペックル除去ビーム162は、当該ビームの所望の全体形状を反射面142の各角度位置に有するので、ビーム送出先の撮像システムのカメラの所定の積分時間内の反射面142の回転量は、要求スペックル低減量に応じて、ビーム再構成を更に考慮する必要を生じることなく設定することができる。拡散ビーム群154は略平行化されるので、かなり高い柔軟性に、第2集光光学素子156を光軸186に沿って位置決めする際に対応することができるが、より大きな光学素子が必要になる。
【0037】
球状反射型拡散板128の拡散機能、反射機能、及びべき乗機能は、単一の表面に取り入れることができる、または多数の表面または光学素子に分割することができる。ビームステアラーとして機能する揺動ミラー140は、より少ない軸の周りを、または異なる軸の周りを回転(すなわち、回動)させることができる。例えば、1つの所定の極角の方位角では、反射面142を回転軸144周りに直接回転させることができる。
【0038】
2軸揺動ミラー80及び140は、これまでの実施形態におけるビームステアラーとして特徴付けられているが、他の形態のビームステアラーを使用することもできる。基本的には、傾斜反射面は、単一軸(例えば、86または144)周りに回転させることができ、例えばモータシャフトの一方の端部の傾斜面を研磨することにより得られる。可動ミラーの代わりに、他のビームステアラーとして、可動プリズム、レンズ、または回折格子を利用することができる。更に、ビーム操作は、ビームが透過する媒質の屈折率を変化させることにより行なうことができる。例えば、音響−光学変調器をビームステアラーとして使用することができる。
【0039】
上に説明した実施形態は、単一のビームステアラー(例えば、揺動ミラー80または140)を用いて、光を拡散板(例えば、68または128)の連続する軸外領域に誘導するとともに、これらの軸外領域から誘導する。しかしながら、第1ビームステアラーを、光を拡散板の連続する軸外領域に誘導するように配置することができ、そして第2ビームステアラーを使用して、拡散板の連続する軸外領域の各軸外領域からの光の分布が、共通軸を再び中心とするようにし、そして当該共通軸に揃うようにすることができる。第1及び第2ビームステアラーを同期して動作させることにより、拡散板の連続する軸外領域を、第1の連続する瞬時ビーム角で照射する光が、同じ方位軸及び位置に、同等の連続する瞬時ビーム角で戻るようにする。
【0040】
図4に示す実施形態は、共通のモータシャフト180の両端に位置する2つの傾斜反射面174及び176の形態の2つの同期ビームステアラーを有するスペックル低減システム170の1つの例を示している。スペックル低減システム170は、コリメート光ビーム182をコヒーレント光源(図示せず)から受光する。第1集光光学素子(例えば、レンズ)184は、コリメートビーム182を収束ビーム188として光軸186に沿って集光する。収束ビーム188は、第1反射集光光学素子190のアパーチャ192を通過して傾斜反射面174の焦点196に到達する。第1集光光学素子184は、アパーチャ192内の箇所を含む光軸186に沿った種々の箇所に配置することにより、所望の集光特性を実現することができる。傾斜面としてモータシャフト180の一方の端部に形成される反射面174は、モータ178によって、モータシャフト180と一緒に、光軸186に一致する軸198の周りを回転する。
【0041】
反射面174の瞬時方位角において、収束ビーム188は反射面174により、第1反射集光光学素子190の反射面194に入射する軸外発散ビーム202として反射される。好適には、第1反射集光光学素子190の反射面194は、放物面の形状を有し(少なくともこれらの領域において、すなわち照射のために用いられる環状領域において)、そして回転シャフト180の反射面174の集光部196に一致する幾何学焦点を有する。そのようなことから、発散ビーム202は、放物状反射面194により、光軸186に平行に、かつ光軸186から外れた位置で伝搬するコリメートビーム204として反射される。光軸186の法線方向を向いた1つ以上の拡散板表面208を有する透過型拡散板206は、コリメートビーム204を拡散コリメートビーム212に変換する。同様の放物状反射面218を含むことが好ましい第2反射集光光学素子216は、拡散コリメートビーム212を反射時に再成形して拡散収束ビーム222とする。放物状反射面218の幾何学焦点に一致する拡散収束ビーム222の拡散集光部224は、モータシャフト180の反対側端部の反射面176に形成される。反射面176は、モータシャフト180の何れの瞬時回転位置においても、反射面174の向きと同様の向きになっており、そして拡散収束ビーム222を拡散発散ビーム226として、光軸186に沿って反射する。第1反射集光光学素子190と同じように、第2反射集光光学素子216はアパーチャ220を含み、このアパーチャ220を通って、拡散発散ビーム226がスペックル低減システム170の出口に向かって伝搬する。第2集光光学素子228は、拡散発散ビーム226を、光軸186に沿って伝搬する拡散コリメートビーム230として平行化する。
【0042】
シャフト180がモータ178によって回転すると、軸外コリメートビーム204は、拡散板表面208の連続領域群210上を追従して、透過型拡散板206上を周回する環状光路を形成する。環状光路に沿った各連続軸外領域210は、異なる拡散パターンを、対応する連続拡散コリメートビーム212内に生成する。モータシャフト180または反射面174及び176の端面取り付け部の何れかを変化させて、コリメートビーム204を、透過型拡散板206上を異なる半径(すなわち、光軸186からの距離)で周回するように追従させることができる。
【0043】
スペックル低減システム170の出口に近付くと、第3集光光学素子232は、拡散コリメートビーム230を、新規スポット光源236をスペックル低減システム170の出口で形成する拡散集光部234を通過するように収束させて、スペックルの影響を受けるコヒーレント撮像システムに送出する。新規スポット光源236を取り囲む虹彩絞り238は、スペックル低減システム170から射出するスペックル除去ビーム240の空間コヒーレンスを調整する。拡散集光部234(新規スポット光源236)は、第1反射面174の初期集光部196、及び第2反射面176の拡散集光部224の両方と光学的共役関係にあるが、透過型拡散板206の拡散板表面208とは共役関係が反転した構成になっている。しかしながら、第3集光光学素子232のアパーチャ242は、拡散板表面208の軸外領域群210の各軸外領域210と共役関係にあることが好ましく、そのような場合には、拡散板表面208の異なる軸外領域210からの拡散コリメートビーム群230の各拡散コリメートビーム230は、スペックル除去ビーム240用に設計される全体形状のアパーチャ242の共通領域群をほぼ満たす。拡散コリメートビーム230を破断線として示すことにより、第3集光光学素子232を、当該光学素子のアパーチャ242と一緒に拡散板表面208の軸外領域210と共役関係にある位置に光軸186に沿って配置するために実際に必要な追加の光学距離を表わすことができる。拡散ビーム群230は略平行化されるので、特に第3集光光学素子232のサイズを拡大することができる場合、かなり高い柔軟性に、第3集光光学素子232を光軸186に沿って位置決めする際に対応することができる。
【0044】
図5に示す別のスペックル低減システム250は、スペックル低減システム170と同様の構成要素群を含むが、光学的な共役関係が反転した構成になるように配置される。コヒーレント光源(図示せず)からのコリメートビーム252は、光軸254に沿って第1反射集光光学素子256のアパーチャ258を通過するように伝搬し、そしてビームステアラー270の反射面272に入射する。図4の実施形態と同様に、ビームステアラー270は、2つの相互に傾斜した反射面、すなわち光軸254に一致する軸280周りをモータ278によって回転するモータシャフト276の反対側端部に位置する反射面272及び別の反射面274により形成される。反射面272の傾斜に起因して、コリメートビーム252は、同様に平行化されるビーム264として軸外に反射され、このビーム264は、第1反射集光光学素子256の反射面260に入射する。好適には、反射面260は、放物面の形状を有する、または傾斜反射面272が、一致するモータ軸、及び光軸280及び254の周りを回転することによってコリメートビーム264で掃引される領域の放物面に少なくとも略一致する。傾斜反射面272は、基準放物面の幾何学焦点に配置されて、軸外コリメートビーム264が放物状反射面260によりビーム266として反射され、このビーム266は、光軸に平行に伝搬し、かつ透過型拡散板284の拡散板表面286の集光部268を通るように収束する。放物状反射面260から焦点距離に相当する位置にある集光部268の位置は、放物状反射面260の被照射軸外放物面部分の局所曲率から求めることができ、そして集光部268の位置によって、第1反射集光光学素子256の放物状反射面260と透過型拡散板284の拡散板表面286との間の間隔が設定される。反射面272を他の傾斜にすると、放物状反射面260と拡散板表面286との間の間隔を、放物状反射面260の異なる被照射軸外放物面部分の焦点距離に応じて異ならせる必要がある。
【0045】
最良の集光位置268を通過して伝搬すると、ビーム266は、透過型拡散板284から拡散発散ビーム288として射出し、この拡散発散ビーム288は、第2反射集光光学素子290の同様の放物状反射面294に入射する。放物状反射面294は、拡散発散ビーム288を拡散コリメートビーム298として、ビームステアラー270の傾斜反射面274に入射する方向に平行化するものとされる。拡散コリメートビーム298は、傾斜反射面274により、光軸254の方向に拡散コリメートビーム300として反射される。傾斜反射面274は、放物状反射面294の幾何学焦点に位置することが好ましく、そして放物状反射面294は、放物状反射面294の被照射軸外放物面部分の焦点距離に相当する位置の拡散板表面286の集光部268から離間していることが好ましい。
【0046】
モータシャフト276が回転すると、2つの傾斜反射面272及び274が同期して光軸254周りを回転することにより、収束ビーム266の集光点268を、透過型拡散板286上を周回する軸外環状光路に沿って追従させるとともに、透過型拡散板284から射出する拡散発散ビーム288を、一連の拡散コリメートビーム300として光軸254に沿って、再配向させ、再センタリングし、そして再平行化する。拡散コリメートビーム300は、反射集光光学素子290のアパーチャ292を通過して、スペックル低減システム250の出口に向かって伝搬する。
【0047】
集光光学素子304は、拡散発散ビーム300を、拡散集光部306を通るように収束させ、この拡散集光部306は、スペックル除去出力ビーム310の新規スポット光源308として機能することができる。これまでの実施形態とは異なり、拡散集光部306及び新規スポット光源308は、透過型拡散板286の拡散集光部268と共役関係にある。従って、新規スポット光源308は、高い空間コヒーレンスを実現し、そして虹彩絞りは普通、空間コヒーレンスを更に高くするためには必要ではない。元のコリメートビーム252を焦点から外して集光して、空間コヒーレンスを低下させることができる。
【0048】
拡散集光部268は、何れの1つの瞬間においても、拡散板表面286の非常に小さい領域しか占有しないので、新規スポット光源308の共役拡散集光部306内のエネルギー重心の方向の非常に小さいずれを、拡散板表面286の局所勾配に応じて予測することができる。拡散集光部306及び新規スポット光源308内の重心の方向のこれらのずれは普通、拡散コリメートビーム298が、反射面274に接近するときに光軸254に傾斜して入射するときの角度に比較して小さい。更に、拡散板表面286のうち、何れの1つの瞬間において照射される領域も、非常に小さいので、エネルギー重心の方向の無相関なずれを生じるために必要な拡散板表面286における追従距離は、非常に短くて済む。従って、元のビーム径と同程度に短い追従距離を含む区間に亘って、拡散板表面の平均勾配はゼロであり、そして区間群の各区間に亘って測定することができる拡散ビーム群300のエネルギー重心は、拡散集光部306及び新規スポット光源308内の中心に位置したままである。
【0049】
すなわち、拡散板206は、光の瞬時空間分布または角度分布に、拡散板の性質に従って影響を及ぼし得るが、拡散板206を瞬時軸外照射する役割を担うスペックル低減システム250の残りの部分は、残りの部分の総合的な性質の結果として必ずしも、スペックル低減システム250を通過して伝搬する光の角度分布または空間分布に影響する訳ではない。従って、スペックル低減システム250の射出瞳を、例えば光源のアパーチャの像として、拡散板206の軸外照射によって所望通りに満たすことができなくなることがなく、そしてその結果、スペックル低減システム250のエテンデューは、これまでの実施形態におけるスペックル低減システム60,120,及び170と同じように、低いままの状態を保持することができる。
【0050】
2つの直ぐ前の実施形態における反射集光光学素子190,216,及び256,290は、放物状反射面194,218,及び260,294を有するものとして説明されているが、これらの反射面は、概球面形状または概非球面形状を含む、または局部的な回転面を方向操作されるビーム202及び264で照射される反射光路に沿って含む多種多様な他の形態を採ることができる。透過型拡散板206または284の代わりに、または透過型拡散板206または284の他に、何れかの対の反射面194,218,及び260,294のうちの一方の対の反射面、または両方の対の反射面を、拡散反射面として形成することができる。更に、透過型拡散板206及び284は、反射型拡散板として形成することができるので、拡散軸外ビームを共通光路に沿って再誘導して、光源に向かって戻すためのビームステアラー及び反射(放物面)光学素子が1つだけ必要になる。ビームスプリッタ66及び124と同様のビームスプリッタを使用して、戻り拡散ビームを出口に向かって誘導することができる。
【0051】
ビーム群を、同期して回転させる反射面により反射させようとする場合の形態は、集光型の例と非集光型の例との間で変えることができる。集光型によって、より小さい反射面を使用することができるのに対し、非集光型によって、拡散板への集光が可能になる。
【0052】
同期駆動される反射面だけでなく、他の形態のビームステアラー(例えば、音響光学ビームステアラー)は、物理的に分離することができ、かつ例えば、同じドライバまたは同期ドライバを使用することにより電子的に同期させることができる。透過型として動作するビームステアリングペアは、これもまた透過型として使用される集光光学素子群と一緒に使用することができる。
【0053】
本発明について、現時点で好適であるとされる実施形態を含む特定の実施形態に関連して説明してきたが、この技術分野の当業者であれば、本発明は、更に多くの形態で本発明における全ての教唆に基づいて具体化することができることを理解できるであろう。本明細書において記載されるスペックル低減システムの出力として表記されるスペックル除去ビームは、コヒーレント撮像システムに極めて有用であると考えられ、かつスペックル低減または同様に変化するビーム組成の利点を生かすことができる他のシステムにおいて使用することもできる。
【符号の説明】
【0054】
10 フィゾー干渉計
12、60、120、170、250 スペックル低減システム
16 ファイバ端
18 照射スポット光源
20、34、48 レンズ
22 円形拡散板
24、72、132、208、286 拡散板表面
26 拡散板の本体
28、106、160、236、308 新規スポット光源
30 モータ
32、66、124 ビームスプリッタ
36 測定アーム
38 フィゾー光学素子
40 基準面
42 オブジェクト
44 検査面
46 記録アーム
50 画像検出器
52 画像検出器表面
62、138、186、254、280 光軸
64、122、182、252 コリメートビーム、入力ビーム、コリメート光ビーム
66 ビームスプリッタ
68、128 反射型拡散板
70、130、166、192、220、242、258、292 アパーチャ
74、147 軸外領域
76、126、184 第1集光光学素子
78、134、188、266 収束ビーム
79,99、135、149 重心
80、140 揺動ミラー、2軸揺動ミラー
82、142、194、260、272、274 反射面
84、136、196、268 集光部、初期集光部、点状集光部、集光位置、集光点
86、198、280 軸
88、146 発散ビーム
90、204、252、264、266 再平行化ビーム、コリメートビーム
92、100、154、204、212、230、298、300 拡散コリメートビーム、拡散ビーム
94、148、222 拡散収束ビーム
95、147 エネルギー重心
96、104、150、158、224、234、268、306 拡散集光部、拡散点状集光部
98、152、226、288 拡散発散ビーム、重なり拡散発散ビーム
102、156 第2集光光学素子
108、164、238 虹彩絞り
110、162、240 スペックル除去ビーム
144 有効回転軸
156 拡散スポット光源
174、176、272、274 傾斜反射面
178、278 モータ
180、276 モータシャフト、回転シャフト
190 第1反射集光光学素子
194、218、260、294 放物状反射面
196 焦点
202 軸外発散ビーム
204 軸外コリメートビーム
206、284、286 透過型拡散板
210 連続領域、連続軸外領域
216 第2反射集光光学素子
232 第3反射集光光学素子
256 第1反射集光光学素子
270 ビームステアラー
290 反射集光光学素子
304 集光光学素子
310 スペックル除去出力ビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレント光のスペックルを低減するシステムにおいて:
拡散板と、
少なくとも1つのビームステアラーおよび第1軸を有するビームステアリングシステムと、
前記拡散板と前記ビームステアリングシステムとを相互接続する光学系であって、光を、前記少なくとも1つのビームステアラーを介して前記拡散板の連続する軸外領域に、そして前記拡散板の前記連続する軸外領域から前記少なくとも1つのビームステアラーに誘導することにより、前記拡散板の前記連続する軸外領域からの前記光の角度分布が、第2軸を略中心とするようになり、かつ該第2軸に略揃うようになって、前記スペックル低減システムから射出する光学系と、
を備えたスペックル低減システム。
【請求項2】
前記拡散板の前記連続する軸外領域からの前記光の前記角度分布は、それぞれのエネルギー重心を有し、これらのエネルギー重心は、前記少なくとも1つのビームステアラーに異なる方向範囲で接近するように位置し、そして前記少なくとも1つのビームステアラーによって、これらのエネルギー重心が前記第2軸を中心とするようになり、かつ前記第2軸に位置合わせされるようになる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのビームステアラーは、少なくとも1つの可動反射面を含み、そして前記光学系は、少なくとも1つの集光光学素子を含み、該集光光学素子は、(a)前記光を前記少なくとも1つの可動反射面に集光させて、前記光を前記拡散板の前記連続する軸外領域に向けて反射し、そして(b)前記拡散板の前記連続する軸外領域からの前記光を、前記少なくとも1つの可動反射面に集光させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つのビームステアラーは、少なくとも1つの可動反射面を含み、そして前記光学系は、少なくとも1つの集光光学素子を含み、該集光光学素子は、(a)前記少なくとも1つの可動反射面からの前記光を、前記拡散板の前記連続する軸外領域に集光させ、そして(b)前記拡散板の前記連続する軸外領域からの前記光を収集し、そして前記収集光を前記少なくとも1つの可動反射面に誘導する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのビームステアラーは、1つの可動反射面を含み、そして前記光学系は、幾何学焦点を前記可動反射面に持つ放物状反射面を有する第1集光光学素子を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記拡散板の異なる軸外領域は、異なる拡散特性を有し、そして前記少なくとも1つのビームステアラーは、光を前記異なる軸外領域に選択的に誘導するように制御可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
スペックルをスペックル低減システムで低減する方法であって:
コヒーレント光を第1軸に沿ってビームステアラーに誘導するステップと、
前記ビームステアラーからの光を拡散板の連続する軸外領域に誘導するステップと、
前記拡散板の前記連続する軸外領域からの前記光を、(a)前記ビームステアラー及び(b)別のビームステアラーのうちの1つのビームステアラーに誘導して、前記拡散板の前記連続する軸外領域からの前記光の角度分布が、第2軸を略中心とするようになり、かつ該第2軸に略揃うようになって、光が前記スペックル低減システムから射出するようにするステップと、
を含む、方法。
【請求項8】
前記拡散板と共役なアパーチャを満たすステップを含み、前記拡散板の前記連続する軸外領域からの前記角度分布群の各角度分布を持つ前記光は、前記共役なアパーチャの略共通領域を満たす、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
コヒーレント光を前記第1軸に沿って前記ビームステアラーに誘導する前記ステップでは、前記光を第1可動反射面に誘導し、前記ビームステアラーからの光を誘導する前記ステップでは、前記第1可動反射面からの前記光を前記拡散板の前記連続する軸外領域に向かって反射し、そして前記拡散板の前記連続する軸外領域からの前記光を誘導する前記ステップでは、前記拡散板の前記連続する軸外領域からの前記光を前記第1可動反射面に誘導して、前記拡散板の前記連続する軸外領域からの前記光の分布が、前記第2軸を中心とするようになり、かつ前記第2軸に揃うようになる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
コヒーレント光を前記第1軸に沿って前記ビームステアラーに誘導する前記ステップでは、前記光を第1可動反射面に誘導し、前記ビームステアラーからの光を誘導する前記ステップでは、前記第1可動反射面からの前記光を前記拡散板の前記連続する軸外領域に向かって反射し、そして前記拡散板の前記連続する軸外領域からの前記光を誘導する前記ステップでは、前記拡散板の前記連続する軸外領域からの前記光を、前記第1可動反射面と同期して動くことができる第2可動反射面に誘導して、前記拡散板の前記連続する軸外領域からの前記光の分布が、前記第2軸を中心とするようになり、かつ前記第2軸に揃うようになる、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−247424(P2012−247424A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−120466(P2012−120466)
【出願日】平成24年5月28日(2012.5.28)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】