説明

撮像モジュール及び携帯端末

【課題】 2つの結像用のレンズを有するものであっても、撮像素子の厚さ方向にコンパクトに構成され、いずれのレンズで結像させても鮮明な画像を得ることができ、モジュール外に反射板等を設ける必要がないようにする。
【解決手段】 チップ状に形成され一面が受光面206aをなし他面が基板220に接続される撮像素子206と、撮像素子206の受光面206aに臨むよう配され受光面206aに被写体像を結像させるための第1レンズ204と、第1レンズ204と光の入射経路が異なるよう配され撮像素子206の受光面206aに被写体像を結像させるための第2レンズ202と、第1レンズ204の入射経路上に位置し第2レンズ202から入射した光を撮像素子206へ向けて反射させる反射板208と、を備え、反射板208は第1レンズ204の入射経路から退去自在に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに光の入射経路が異なる2つのレンズを有する撮像モジュール及びこれを備えた携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話機においては、正面用と背面用の2つのカメラを実装することが多いが、携帯電話機の小型化が進むにつれて、2つのカメラを実装させるための実装スペースを確保することが困難となっている。実装スペースの確保が困難な要因として、2つのカメラを制御する必要があることから、カメラ用の配線、部品等をカメラ毎に設けなければならないことがあげられる。また、2つのカメラごとに撮像素子やDSP等が必要となるため、コストが増加するという問題点もある。
【0003】
この問題点を解決すべく、1つの撮像素子で正面側と背面側の撮影を行うようにした撮像モジュールが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この撮像モジュールによれば、正面側と背面側にそれぞれレンズを光軸が一致するよう配し、各レンズの入射経路上に反射板を回動自在に設け、反射板の向きにより各レンズの一方の光を択一的に撮像素子へ反射させるよう構成されている。チップ状の撮像素子は、正面側のレンズの入射経路及び背面側のレンズの入射経路に対して平行となるように配され、反射板から入射する光に対して垂直となるよう配置される。すなわち、筐体の厚さ方向へ延びるように配され、撮像素子と筐体の厚さ方向が一致しなくなっている。
【0004】
また、特許文献1には、撮像素子と筐体の厚さ方向が一致する撮像モジュールも開示されている。この撮像モジュールは、一方のレンズの光を透過させ、全反射板で一旦反射された他方のレンズの光をさらに撮像素子側へ反射させるハーフミラーを備えている。
【0005】
さらに、撮像モジュールは結像レンズと撮像素子が一対一で対応するものとし、筐体側に反射機構を設けて正面側と背面側の撮像を可能としたものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−260413号公報
【特許文献2】特開2005−17569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の反射板が回動する撮像モジュールは、携帯電話機のような薄型の筐体に搭載する場合に、撮像素子を筐体の厚さ方向へ延びるような向きで配置せざるを得ない。これにより、筐体内部が厚さ方向にスペースが限られているにもかかわらず、撮像素子がその搭載位置で筐体内のスペースを厚さ方向に占有してしまい、設計自由度が低下するという問題点があった。また、筐体内では正面及び背面と平行に基板が配置されていることが多く、撮像素子が筐体内で厚さ方向に延びていると、レイアウト的にも不利となる。
【0007】
また、特許文献1に記載されたハーフミラーを用いた撮像モジュールは、一方の撮像状態でハーフミラーを透過させて結像させるため、ハーフミラー透過時にレンズから入射して光が減衰してしまい、鮮明な画像を得ることができないという問題点がある。
【0008】
さらに、特許文献2に記載された携帯電話機は、モジュール外の筐体側に移動機構を有する反射板を設けることから、筐体が大型化して重量及びコストが嵩むとともに、筐体の小型化に対応することが困難である。
【0009】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、2つの結像用のレンズを有するものであっても、撮像素子の厚さ方向にコンパクトに構成され、いずれのレンズで結像させても鮮明な画像を得ることができ、モジュール外に反射板等を設ける必要のない撮像モジュール及びこれを備えた携帯用電子機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決する本発明では、チップ状に形成され、一面が受光面をなし他面が基板に接続される撮像素子と、前記撮像素子の前記受光面に臨むよう配され、該受光面に被写体像を結像させるための第1レンズと、前記第1レンズと光の入射経路が異なるよう配され、前記撮像素子の受光面に被写体像を結像させるための第2レンズと、前記第1レンズの入射経路上に位置し、前記第2レンズから入射した光を前記撮像素子へ向けて反射させる反射板と、を備え、前記反射板は前記第1レンズの入射経路から退去自在に構成され、前記反射板が前記第1レンズの入射経路上に位置する状態で前記第2レンズを用いた結像が行われ、前記反射板が前記第1レンズの入射経路から退去した状態で前記第1レンズを用いた結像が行われることを特徴とする撮像モジュールが提供される。
【0011】
本発明の撮像モジュールによれば、撮像素子の受光面に臨むよう第1レンズが配されていることから、反射板が退去した状態では第1レンズからの入射光は直接的に受光面で結像される。これにより、第1レンズの入射経路と受光面とを略垂直とすることができ、撮像素子を第1レンズの入射経路に対して略垂直に配することができる。この結果、各結像レンズから入射した光を両方とも反射させる従来のものに比べて、モジュール全体を撮像素子の厚さ方向に小さく構成することができる。
【0012】
また、反射板を第1レンズの入射経路に位置させることにより、第2レンズからの入射光は反射板を介して受光面で結像される。このとき、一方のレンズを用いた結像時にハーフミラー等を用いる従来のもののように、撮像素子に到達するまでに入射光が減衰されるようなことはなく、いずれのレンズで結像させても鮮明な画像を得ることができる。また、1つの撮像素子で2つのレンズを用いて異なる方向に位置する被写体の撮像が可能となることから、撮像素子に加えてDSPのような周辺機器の共用化を図ることができ、大幅にコストを低減することができる。
【0013】
さらに、モジュール内に反射板を備えているので、モジュール外に反射板を設けたもののように、モジュールが取り付けられる携帯端末等の構造体が大型化するようなこともない。
【0014】
以上、本発明の構成について説明したが、本発明は、これに限られず様々な態様を含む。たとえば、本発明によれば、上記撮像モジュールと、前記撮像モジュールが内部に配され、前記第1レンズに対応して形成された第1開口部と前記第2レンズに対応した形成された第2開口部とを有する筐体と、を備えたことを特徴とする携帯端末が提供される。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明よれば、2つの結像用のレンズを有するものであっても、モジュール外に反射板等を設ける必要がなく、撮像素子の厚さ方向にコンパクトに構成され、いずれのレンズで結像させても鮮明な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1から図4は本発明の一実施形態を示すものであって、図1は携帯電話機の概略外観斜視図、図2は撮像モジュールの取付状態を示す携帯電話機の一部断面説明図、図3は内部構造を示し第2レンズにより結像を行う状態の撮像モジュールの断面説明図、図4は内部構造を示し第1レンズにより結像を行う状態の撮像モジュールの断面説明図である。
尚、図2から図4は、図1のA−A断面に関する。ここで、図1のA−A断面は、左右方向に離隔した各レンズがともに断面で示されるように、図中左側と右側で切り口の左右位置が異なるよう設定されている(図1参照)。
【0018】
図1に示すように、携帯端末としての携帯電話機100は、折り畳み自在に結合された第1筐体102及び第2筐体104を有する。また、携帯電話機100は、後述する撮像モジュール200を有する。第1筐体102及び第2筐体104は、それぞれ正面視で略長方形を呈し薄型に形成される。図1に示すように、第1筐体102には操作キー106が配され、第2筐体104には表示面108が形成される。操作キー106及び表示面108は、各筐体102,104を展開した状態で使用可能となる。
【0019】
また、図2に示すように、第2筐体104の内部には、第2レンズとしての正面撮像レンズ202と第1レンズとしての背面撮像レンズ204を備えた撮像モジュール200が配されている。第2筐体104は、正面撮像レンズ202に対応して第2筐体104の正面104aに形成された第1開口部としての正面開口部110と、背面撮像レンズ204に対応した第2筐体104の背面104bに形成された第2開口部としての背面開口部112と、を有する。図1に示すように、正面開口部110は、各筐体102,104を展開すると出現する。正面撮像レンズ202は携帯電話機100の使用者が主に自己を撮影するときに用いられ、背面撮像レンズ204は携帯電話機100の使用者が主に自己以外を撮影するときに用いられる。
【0020】
図2に示すように、第2筐体104の内部には、正面104a及び背面104bと略平行に延びるメイン基板114が配される。このメイン基板114に前述の撮像モジュール200が搭載される。
【0021】
図3に示すように、撮像モジュール200は、チップ状に形成され一面が受光面206aをなし他面がサブ基板220に接続される撮像素子206と、受光面に被写体像を結像させるための正面撮像レンズ202及び背面撮像レンズ204と、を備えている。正面撮像レンズ202は撮像素子206の受光面206aに臨むよう配され、背面撮像レンズ204は正面撮像レンズ202と光の入射経路が異なるよう配される。
【0022】
また、図3に示すように、撮像モジュール200は、正面撮像レンズ202の入射経路上に位置し、背面撮像レンズ204から入射した光を撮像素子206へ向けて反射させる反射板208を備えている。反射板208は、正面撮像レンズ202の入射経路から退去自在に構成されており、図示しないモータ等により駆動される。図3に示すように反射板208が正面撮像レンズ202の入射経路上に位置する状態で背面撮像レンズ204を用いた結像が行われ、図4に示すように反射板208が正面撮像レンズ202の入射経路から退去した状態で正面撮像レンズ202を用いた結像が行われる。
【0023】
ここで、図3に示すように、背面撮像レンズ204及び正面撮像レンズ202は入射経路が反対向きであり、正面撮像レンズ202から入射した光を、反射板208へ向けて反射させる補助反射板210が備えられている。すなわち、図3に示すように、背面側から入射した光を、補助反射板210を用いて一旦撮像素子206の受光面206aと平行な向きに反射し、この光をさらに反射板208を用いて撮像素子206へ反射させることとなる。尚、図3では同一断面で図示しているが、図中左側と右側では離隔した位置で断面の切り口が設定されており、実際には図1に示すように背面撮像レンズ204及び正面撮像レンズ202は左右に離隔している。
【0024】
また、撮像モジュール200は、正面撮像レンズ202及び背面撮像レンズ204が固定される開口212,214を有し、撮像素子206及び反射板208が内部に配されるハウジング216を具備している。さらに、撮像モジュール200は、反射板208が正面撮像レンズ202の入射経路上に位置するときに背面撮像レンズ204からハウジング216内への入射光を遮蔽する遮光板218を具備している。遮光板218も、反射板208と同様に図示しないモータ等により駆動される。
【0025】
ここで、図3に示すように、反射板208は、正面撮像レンズ202の入射経路上に位置するときに、正面撮像レンズ204からハウジング216内への入射光を遮蔽するよう構成される。そして、モータ等の駆動により、図4に示すように、ハウジング216内を後方へ移動して正面撮像レンズ202の入射経路から退去する。尚、図4においては反射板208と補助反射板210が側面視で重なっているが、前述のように反射板208及び補助反射板210は、左右方向に離隔していることから反射板208が後方へ移動したとしても互いに干渉するようなことはない。
【0026】
ここで、撮像素子206は、例えば、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等であり、サブ基板220における撮像素子206と反対側にはDSP222が搭載されている。また、撮像素子206の上方には、赤外光遮光用フィルタ224が配置されている。
【0027】
以上のように構成された撮像モジュール200では、使用者により正面側のカメラと背面側のカメラのいずれかを選択できるよう構成され、反射板208及び遮光板218は図示しない制御部により、カメラ選択に応じて適切な位置へ移動制御される。すなわち、使用者による操作キー106等から入力があり、正面側のカメラが選択された場合には、反射板208が背面撮像レンズ204の入射経路上に位置する状態で正面撮像レンズ202を用いた結像が行われる。また、背面側のカメラが選択された場合には、反射板208が背面撮像レンズ204の入射経路から退去した状態で背面撮像レンズ204を用いた結像が行われる。
【0028】
このように、本実施形態の撮像モジュール200によれば、撮像素子206の受光面206aに臨むよう背面撮像レンズ204が配されていることから、図4に示すように反射板208が退去した状態では背面撮像レンズ204からの入射光は直接的に受光面206aで結像される。これにより、背面撮像レンズ204の入射経路と受光面206aとを略垂直とすることができ、撮像素子206を第1レンズの入射経路に対して略垂直に配することができる。この結果、各結像レンズから入射した光を両方とも反射させる従来のものに比べて、モジュール全体を撮像素子206の厚さ方向に小さく構成することができる。
【0029】
また、反射板208を背面撮像レンズ204の入射経路に位置させることにより、正面撮像レンズ202からの入射光は反射板208を介して受光面206aで結像される。このとき、一方のレンズを用いた結像時にハーフミラー等を用いる従来のもののように、撮像素子206に到達するまでに入射光が減衰されるようなことはなく、いずれのレンズで結像させても鮮明な画像を得ることができる。また、1つの撮像素子206で2つのレンズ202,204を用いて異なる方向に位置する被写体の撮像が可能となることから、撮像素子206に加えてDSP222、赤外光遮光用フィルタ224等の周辺機器の共用化を図ることができ、大幅にコストを低減することができる。
【0030】
また、反射板208が、背面撮像レンズ204の入射経路上に位置するときに、背面撮像レンズ204からハウジング216内への入射光を遮蔽するようにしたので、背面撮像レンズ204の遮光板を別途設ける必要がなく、部品点数を低減して製造コストの低減を図るとともに、ハウジング216の小型化を図ることができる。
【0031】
また、本実施形態の携帯電話機100では、撮像モジュール200内に反射板208を備えているので、撮像モジュール200外に反射板を設けたもののように、撮像モジュール200が取り付けられる第2筐体104が大型化するようなこともない。
【0032】
尚、前記実施形態においては、携帯端末として携帯電話機100を例示したが、PDA、ノート型パソコン等のような他の携帯端末であっても前記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0033】
また、前記実施形態においては、背面撮像レンズ204及び正面撮像レンズ202は入射経路が反対向きであるものを示したが、例えば図5に示すように、各レンズ302,304の入射経路が略直交するものであってもよい。図5には、補助反射板210を備えず、側方のレンズ304から反射板208へ直接的に入射するものを示している。
【0034】
また、反射板208及び遮光板218の駆動方式、駆動タイミング等は、携帯電話機100の仕様等に応じて任意に設定することができるし、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態を示す携帯電話機の概略外観斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のA−A断面に関し、内部構造を示し第2レンズにより結像を行う状態の撮像モジュールの断面説明図である。
【図4】図1のA−A断面に関し、内部構造を示し第1レンズにより結像を行う状態の撮像モジュールの断面説明図である。
【図5】変形例を示す撮像モジュールの断面説明図である。
【符号の説明】
【0036】
100 携帯電話機
102 第1筐体
104 第2筐体
104a 正面
104b 背面
106 操作キー
108 表示面
110 正面開口部
112 背面開口部
114 メイン基板
200 撮像モジュール
202 正面撮像レンズ
204 背面撮像レンズ
206 撮像素子
206a 受光面
208 反射板
210 補助反射板
212 開口
214 開口
216 ハウジング
218 遮光板
220 サブ基板
224 赤外光遮光用フィルタ
302 レンズ
304 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ状に形成され、一面が受光面をなし他面が基板に接続される撮像素子と、
前記撮像素子の前記受光面に臨むよう配され、該受光面に被写体像を結像させるための第1レンズと、
前記第1レンズと光の入射経路が異なるよう配され、前記撮像素子の受光面に被写体像を結像させるための第2レンズと、
前記第1レンズの入射経路上に位置し、前記第2レンズから入射した光を前記撮像素子へ向けて反射させる反射板と、を備え、
前記反射板は前記第1レンズの入射経路から退去自在に構成され、
前記反射板が前記第1レンズの入射経路上に位置する状態で前記第2レンズを用いた結像が行われ、前記反射板が前記第1レンズの入射経路から退去した状態で前記第1レンズを用いた結像が行われることを特徴とする撮像モジュール。
【請求項2】
前記第1レンズ及び前記第2レンズが固定される開口を有し、前記撮像素子及び前記反射板が内部に配されるハウジングと、
前記反射板が前記第1レンズの入射経路上に位置するときに前記第2レンズから前記ハウジング内への入射光を遮蔽する遮光板と、を具備し、
前記反射板は、前記第1レンズの入射経路上に位置するときに、前記第1レンズから前記ハウジング内への入射光を遮蔽するよう構成されることを特徴とする請求項1に記載の撮像モジュール。
【請求項3】
前記第1レンズ及び前記第2レンズは入射経路が反対向きであり、
前記第2レンズから入射した光を、前記反射板へ向けて反射させる補助反射版を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の撮像モジュール。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の撮像モジュールと、
前記撮像モジュールが内部に配され、前記第1レンズに対応して形成された第1開口部と前記第2レンズに対応した形成された第2開口部とを有する筐体と、を備えたことを特徴とする携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−25312(P2007−25312A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208066(P2005−208066)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】