撮像レンズおよびこの撮像レンズを用いた撮像装置
【課題】撮像レンズにおいて、レンズ性能を低下させたり製作コストを増大させることなく耐環境性を高める。
【解決手段】物体側から順に、負のパワーを持つ前群G1、絞りSt、正のパワーを持つ後群G2を備え、前群G1を、物体側から順に、像側に凹面を向けたメニスカス形状をなす負の第1レンズL1、物体側の方が像側よりもレンズ面の曲率半径の絶対値が大きい負の第2レンズL2、正の第3レンズL3を備えたものとし、後群を、物体側から順に、正の第4レンズL4、物体側に凹面を向けたメニスカス形状をなす負の第5レンズL5、正の第6レンズL6を備えたものとする。第1レンズL1、第2レンズL2、第4レンズL4、および第6レンズL6のd線に対するアッベ数をいずれも40以上、第3レンズL3および第5レンズL5のd線に対するアッベ数をいずれも40以下とし、前群G1および後群G2を構成するレンズをいずれも単レンズとする。
【解決手段】物体側から順に、負のパワーを持つ前群G1、絞りSt、正のパワーを持つ後群G2を備え、前群G1を、物体側から順に、像側に凹面を向けたメニスカス形状をなす負の第1レンズL1、物体側の方が像側よりもレンズ面の曲率半径の絶対値が大きい負の第2レンズL2、正の第3レンズL3を備えたものとし、後群を、物体側から順に、正の第4レンズL4、物体側に凹面を向けたメニスカス形状をなす負の第5レンズL5、正の第6レンズL6を備えたものとする。第1レンズL1、第2レンズL2、第4レンズL4、および第6レンズL6のd線に対するアッベ数をいずれも40以上、第3レンズL3および第5レンズL5のd線に対するアッベ数をいずれも40以下とし、前群G1および後群G2を構成するレンズをいずれも単レンズとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を撮像する撮像レンズおよびこの撮像レンズを用いた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車載用カメラや監視カメラ等の撮像装置に使用される小型の撮像レンズが知られている。このような撮像装置に使用される小型で高画素数のCCDやCMOS等からなる撮像素子やこの撮像素子と組み合わされる小型の撮像レンズ等も知られている。
【0003】
さらに、そのような撮像装置に使用される撮像レンズとして、接合レンズを用いて小型化を実現した特許文献1,2,3,4,5に記載の撮像レンズも知られている。
【0004】
特許文献1に記載の撮像レンズは、Fナンバーが2.0の明るいレンズであるが、屈折率が1.9を超える材料からなるレンズを多用しているためコストが高くなってしまう。特許文献2及び特許文献4に記載の撮像レンズは、非球面レンズを用いて構成したものである。この撮像レンズを、例えば車載カメラ用レンズや監視カメラ用レンズとして使用する際、レンズにプラスチックを使用した場合には温度による性能変化が大きくなってしまう。また、レンズにガラスモールドを使用した場合にはコストが高くなってしまう。特許文献3に記載の撮像レンズはFナンバーが2.8から4.0のレンズであり、車載カメラや監視カメラとしては暗すぎる。また、特許文献1から4に記載のレンズはいずれも接合レンズを備えており、耐環境性の面で改善の余地がある。
【0005】
特許文献5に記載のレンズは、非球面を多用しており、さらにレンズ面のうち一面を回折光学面としているため、レンズにプラスチックを使用した場合には温度による性能変化が大きくなってしまう。また、レンズにガラスモールドを使用した場合にはコストが高くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7023628B1号明細書
【特許文献2】特許公報第2599312号
【特許文献3】特開昭61−123810号公報、
【特許文献4】特開2007−279632号公報
【特許文献5】特開2007−139985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このような、車載用カメラや監視カメラに適用される撮像レンズとしては、例えば、真夏の赤道直下で利用される自動車の車内においても、あるいは真冬の寒冷地の戸外においても使用可能な、温度変化による性能低下が少なく耐候性に優れた、明るく(Fナンバーが小さく)小型で安価なレンズが求められている。
【0008】
しかしながら、接合レンズを用いた撮像レンズは、接合層を形成している接合材料が、長期間に亘って厳しい環境下に置かれたときに変質したり変形したりして、撮像レンズの光学性能を低下させるという問題がある。
【0009】
なお、接合レンズを厳しい環境下での使用に耐えられるようにするために特別な加工を施すことも考えられるが、コストが高くなるという問題が生じる。
【0010】
上記問題は、車載用カメラや監視カメラに限らず、接合レンズを用いた撮像レンズを厳しい環境下で使用する際に一般に生じる問題である。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、レンズ性能を低下させたり製作コストを増大させることなく耐環境性を高めることができる撮像レンズおよびこの撮像レンズを用いた撮像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の撮像レンズは、物体側から順に、負のパワーを持つ前群、絞り、正のパワーを持つ後群を備え、前群が、物体側から順に、像側に凹面を向けた負の第1レンズ、物体側の方が像側よりもレンズ面の曲率半径の絶対値が大きい負の第2レンズ、正の第3レンズを備えたものであり、後群が、物体側から順に、正の第4レンズ、物体側に凹面を向けたメニスカス形状をなす負の第5レンズ、正の第6レンズを備えたものであり、第1レンズ、第2レンズ、第4レンズ、および第6レンズそれぞれのd線に対するアッベ数がいずれも40以上、第3レンズおよび第5レンズそれぞれのd線に対するアッベ数がいずれも40以下であり、前群および後群を構成するレンズが、いずれも単レンズであることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第2の撮像レンズは、物体側から順に、負のパワーを持つ前群、絞り、正のパワーを持つ後群を備え、前群が、物体側から順に、像側に凹面を向けた負の第1レンズ、負の第2レンズ、正の第3レンズを備えたものであり、後群が、2枚の正のレンズと1枚の負のレンズとを備えたものであり、第1レンズおよび第2レンズのd線に対するアッベ数がいずれも45以上、第3レンズのd線に対するアッベ数が25以下であり、後群を構成する負のレンズのd線に対するアッベ数が25以下、正のレンズのd線に対するアッベ数がいずれも45以上であり、前群および後群を構成するレンズが、いずれも単レンズであり、第1レンズの物体側のレンズ面から撮像レンズの結像面までの距離が18mm以下であることを特徴とするものである。
【0014】
前記第3レンズは、物体側の方が像側よりもレンズ面の曲率半径の絶対値が小さい両凸形状をなすものとすることが望ましい。
【0015】
前記後群を構成する前記2枚の正のレンズは、いずれも両凸形状をなすものとすることが望ましい。
【0016】
前記第2レンズは、物体側に平面を向けた平凹形状をなすレンズ、もしくは物体側の方が像側よりもレンズ面の曲率半径の絶対値が大きいメニスカスレンズとすることが望ましい。
【0017】
前記撮像レンズは、条件式(1):0.5<R10/R9<1.0を満足するものとすることが望ましい。ここで、R9は、後群を構成するレンズのうち、最も物体側に位置するレンズにおける像側のレンズ面の曲率半径、また、R10は、後群を構成するレンズのうち、最も物体側に位置するレンズの像側に隣り合うレンズにおける物体側のレンズ面の曲率半径である。
【0018】
前記撮像レンズは、条件式(2):0.8<|f12/f|<1.8を満足するものとすることが望ましい。ここで、fはレンズ全系の焦点距離、f12は第1レンズと第2レンズの合成焦点距離である。
【0019】
前記撮像レンズは、条件式(3):1.0<|f123/f456|<2.2を満足するものとすることが望ましい。ここで、f123:前群の合成焦点距離、f456:後群の合成焦点距離である。
【0020】
前記撮像レンズは、条件式(4):5<L/f<18を満足するものとすることが望ましい。ここで、fはレンズ全系の焦点距離、Lは第1レンズの物体側のレンズ面から撮像レンズの結像面までの距離である。
【0021】
なお、Lの値の算出において、撮像レンズを構成するレンズ面のうち最も像側に位置するレンズ面から、この撮像レンズの結像面までの距離(バックフォーカス)は空気換算した値を用いるものとする。
【0022】
前記撮像レンズは、条件式(5):0.5<Bf/f<3.0を満足するものとすることが望ましい。ここで、fはレンズ全系の焦点距離、Bfはバックフォーカスである。
【0023】
なお、バックフォーカスは、撮像レンズを構成するレンズ面のうち最も像側に位置するレンズ面から、この撮像レンズの結像面までの光軸上の距離であり、撮像レンズと結像面の間にカバーガラスや各種フィルタなどがあった場合には、Bfはそれらを空気換算した値を用いるものとする。
【0024】
前記撮像レンズは、条件式(6):2.0<f45/f<6.5を満足するものとすることが望ましい。ここで、f:レンズ全系の焦点距離、f45:後群を構成するレンズのうち、最も物体側に位置する互に隣り合う2枚のレンズの合成焦点距離である。
【0025】
前記第1レンズから第6レンズは、いずれもガラスレンズであることが望ましい。
【0026】
本発明の撮像装置は、請求項1から12のいずれか1項記載の撮像レンズと、この撮像レンズにより形成される光学像を電気信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の第1の撮像レンズおよび撮像装置によれば、物体側から順に、負パワーを持つ前群、絞り、正のパワーを持つ後群を備え、前群を、物体側から順に、像側に凹面を向けた負の第1レンズ、物体側の方が像側よりもレンズ面の曲率半径の絶対値が大きい負の第2レンズ、正の第3レンズを備えたものとし、後群を、物体側から順に、正の第4レンズ、物体側に凹面を向けたメニスカス形状をなす負の第5レンズ、正の第6レンズを備えたものとし、第1レンズ、第2レンズ、第4レンズ、および第6レンズそれぞれのd線に対するアッベ数をいずれも40以上、第3レンズおよび第5レンズそれぞれのd線に対するアッベ数をいずれも40以下とし、前群および後群を構成する全てのレンズをいずれも単レンズとしたので、レンズ性能を低下させたり製作コストを増大させることなく耐環境性を高めることができる。
【0028】
より詳しくは、本発明の第1の撮像レンズおよび撮像装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0029】
すなわち、前群および後群を構成する全てのレンズをいずれも単レンズとし、接合レンズを使用しないようにしたので、レンズ接合に関する特別な加工を施す必要が無く、レンズ接合に起因する不具合の発生も無くなるので、レンズ性能を低下させたり製作コストを増大させることなく耐環境性を高めることができる。
【0030】
さらに、レンズ系の最も物体側に配置された、第1レンズ、第2レンズを負のパワーを持つレンズとすることで、レンズ系全体を広角化することが容易となる。第1レンズを像側に凹面を向けたレンズとし、第2レンズを物体側に曲率半径の絶対値の大きい側を向けた負レンズとすることで、例えば130°を超えるような広い画角からの入射光線もとらえるようにすることができる。
【0031】
第1レンズと第2レンズのd線に対するアッベ数を40以上とすることで、レンズ系を広角化しながら色収差の発生を抑えることができる。
【0032】
第3レンズを正のレンズとすることで、像面湾曲を良好に補正することが可能となる。また、第3レンズのd線に対するアッベ数を40以下とすることで、倍率の色収差を良好に補正することが可能となる。
【0033】
第4レンズを正、第5レンズを負のレンズとし、第4レンズのd線に対するアッベ数を40以上、第5レンズのd線に対するアッベ数を40以下とすることで、軸上色収差と倍率の色収差を良好に補正することが可能となる。
【0034】
第5レンズを物体側に凹面を向けた負のメニスカスレンズとすることで、像面湾曲を良好に補正することが可能となる。
【0035】
第6レンズを正のパワーを持つレンズとすることで、周辺の光線が撮像レンズの結像面に入射する角度を小さくすることができ、いわゆるテレセントリック性の良いレンズにすることができる。
【0036】
本発明の第2の撮像レンズおよび撮像装置によれば、物体側から順に、負のパワーを持つ前群、絞り、正のパワーを持つ後群を備え、前群を、物体側から順に、像側に凹面を向けた負の第1レンズ、負の第2レンズ、正の第3レンズを備えたものとし、後群を、2枚の正のレンズと1枚の負のレンズとを備えたものとし、第1レンズおよび第2レンズのd線に対するアッベ数をいずれも45以上、第3レンズのd線に対するアッベ数を25以下とし、後群を構成する前記1枚の負のレンズのd線に対するアッベ数を25以下、前記2枚の正のレンズのd線に対するアッベ数をいずれも45以上とし、前群および後群を構成する全てのレンズを、いずれも単レンズとし、第1レンズの物体側のレンズ面から撮像レンズの結像面までの距離を18mm以下としたので、レンズ性能を低下させたり製作コストを増大させることなく耐環境性を高めることができる。
【0037】
より詳しくは、本発明の第2の撮像レンズおよび撮像装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0038】
すなわち、前群および後群を構成する全てレンズをいずれも単レンズとし、接合レンズを使用しないようにしたので、レンズ接合に関する特別な加工を施す必要が無く、レンズ接合に起因する不具合の発生も無くなるので、レンズ性能を低下させたり製作コストを増大させることなく耐環境性を高めることができる。また、前群および後群を構成するレンズを、いずれも単レンズとしたので、接合面における物理的および化学的刺激による変質や変形を抑制することができ、さらに耐環境性を高めることができる。
【0039】
また、第1レンズL1、第2レンズL2を負のパワーを持つレンズとすることで、レンズ系全体を広角化することが容易となる。なお、第1レンズを像側に凹面を向けたレンズとし、第2レンズを負のレンズとすれば、例えば130°を超えるような広い画角からの入射光線をもとらえることができる。さらに、第2レンズを物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズとすれば、ディストーションを抑えながらレンズ径を広角化することが容易となる。
【0040】
第3レンズを正のレンズとすることで、像面湾曲を良好に補正することが可能となる。
【0041】
絞りの後に2枚の正レンズと1枚の負レンズを配置することで、像面湾曲と球面収差を良好に補正することが可能となる。
【0042】
前群のうち負のパワーを持つレンズのd線に対するアッベ数が45以上とすることで、レンズ系を広角化しながら色収差の発生を抑えることができる。
【0043】
前群のうち正のパワーを持つレンズのd線に対するアッベ数を25以下とすることで、倍率の色収差を良好に補正することが可能となる。
【0044】
後群のうち負のパワーを持つレンズのd線に対するアッベ数を25以下、後群のうち正のパワーを持つレンズのd線に対するアッベ数を45以上とすることで、軸上の色収差と倍率の色収差を良好に補正することが可能となる。
【0045】
第1レンズの物体側のレンズ面から結像面までの距離を18mm以下とすることで、レンズ系を小型にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の撮像レンズおよび撮像装置の概略構成を示す断面図
【図2】実施例1の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図3】実施例2の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図4】実施例3の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図5】実施例4の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図6】実施例5の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図7】実施例6の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図8】実施例7の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図9】実施例8の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図10】実施例9の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図11】実施例10の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図12】実施例1の撮像レンズの諸収差を示す図
【図13】実施例2の撮像レンズの諸収差を示す図
【図14】実施例3の撮像レンズの諸収差を示す図
【図15】実施例4の撮像レンズの諸収差を示す図
【図16】実施例5の撮像レンズの諸収差を示す図
【図17】実施例6の撮像レンズの諸収差を示す図
【図18】実施例7の撮像レンズの諸収差を示す図
【図19】実施例8の撮像レンズの諸収差を示す図
【図20】実施例9の撮像レンズの諸収差を示す図
【図21】実施例10の撮像レンズの諸収差を示す図
【図22】本発明の撮像装置を備えた車載機器が搭載されている自動車を示す図
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は本発明の撮像レンズおよびこの撮像レンズを用いた撮像装置の実施の形態の概略構成を示す断面図である。
【0048】
図示の撮像装置100は、自動車の前方、側方、後方などを撮影するための車載用カメラ等に適用されるものである。この撮像装置100は、CCDやCMOS等からなる撮像素子10と撮像レンズ20とを備えている。
【0049】
撮像レンズ20は、撮像素子10の受光面Jk上に被写体の光学像を結像させる。この撮像素子10は、撮像レンズ20によって受光面Jk上に結像された被写体の光学像を電気信号に変換して、この光学像を示す画像信号を出力するものである。
【0050】
<撮像レンズの基本構成およびその作用、効果について>
はじめに、撮像レンズ20が兼ね備えている2種類の基本構成である第1の基本構成および第2の基本構成について説明する。
【0051】
以下の第1の基本構成を備えた撮像レンズ20は、光軸Z1に沿って物体側(図中矢印−Z方向の側)から順に、負のパワーを持つ前群G1、開口絞りSt、正のパワーを持つ後群G2を備えたものである。
【0052】
前群G1は、物体側から順に、像側(図中矢印+Z方向の側)に凹面を向けたメニスカス形状をなす負の第1レンズL1、物体側の方が像側よりもレンズ面の曲率半径の絶対値が大きい負の第2レンズL2、正の第3レンズL3を備えたものである。
【0053】
後群G2は、物体側から順に、正の第4レンズL4、物体側に凹面を向けたメニスカス形状をなす負の第5レンズL5、正の第6レンズL6を備えたものである。
【0054】
第1レンズL1、第2レンズL2、第4レンズL4、および第6レンズL6それぞれのd線に対するアッベ数はいずれも40以上、第3レンズL3および第5レンズL5それぞれのd線に対するアッベ数はいずれも40以下である。
【0055】
前群G1および後群G2を構成するレンズは、いずれも単レンズである。
【0056】
また、以下の第2の基本構成を備えた撮像レンズ20は、物体側から順に、負のパワーを持つ前群G1、開口絞りSt、正のパワーを持つ後群G2を備えたものである。
【0057】
前群G1は、物体側から順に、像側に凹面を向けたメニスカス形状をなす負の第1レンズL1、物体側の方が像側よりもレンズ面の曲率半径の絶対値が大きいメニスカス形状をなす負の第2レンズL2、正の第3レンズL3を備えたものである。
【0058】
後群G2は、2枚の正のレンズと1枚の負のレンズとを備えたものである。
【0059】
第1レンズL1および第2レンズL2のd線に対するアッベ数がいずれも45以上、第3レンズL3のd線に対するアッベ数が25以下であり、後群G2を構成する前記1枚の負のレンズのd線に対するアッベ数が25以下、前記2枚の正のレンズのd線に対するアッベ数がいずれも45以上である。
【0060】
第1レンズL1の物体側のレンズ面S1から撮像レンズ20の結像面S16までの距離は21mm以下とすることが望ましく、18mm以下とすることがより望ましい。
【0061】
この撮像レンズ20を通して被写体を表す光学像が結像される結像面S16には、上記のように撮像素子10の受光面Jkが配置されている。
【0062】
さらに、この撮像レンズ20は、第1および第2のいずれの基本構成においても、後群G2と撮像素子10との間に、例えば赤外線カットフィルタや受光面Jkを保護するカバーガラスなどの平板状の光学部材Cg1を備えることができる。この光学部材Cg1は、撮像装置100の仕様に応じて選択されたものが配置される。
【0063】
なお、図1中の符号S1〜S16は以下の構成を指している。
【0064】
符号S1とS2は第1レンズL1の物体側(図中矢印−Z方向の側)のレンズ面と像側(図中矢印+Z方向の側)のレンズ面、符号S3とS4は第2レンズL2の物体側のレンズ面と像側のレンズ面、符号S5とS6は第3レンズL3の物体側のレンズ面と像側のレンズ面、S7は開口絞りStの開口部、符号S8とS9は第4レンズL4の物体側のレンズ面と像側のレンズ面、符号S10とS11は第5レンズL5の物体側のレンズ面と像側のレンズ面、符号S12とS13は第6レンズL6の物体側のレンズ面と像側のレンズ面、符号S14とS15は光学部材Cg1の物体側の面と像側の面、符号S16は上記のように撮像素子10の受光面Jkと一致する撮像レンズ20の結像面を示している。
【0065】
また、符号Sk1は、第1レンズL1の像側の表面に配された遮光板、Sk2は第2レンズL2の像側の表面に配された遮光板を示している。さらに、符号2ωは撮像レンズ20の全画角を示している。
【0066】
なお、撮像レンズ20は、第1の基本構成あるいは第2の基本構成のいずれか1つのみを満足するものとしてもよい。
【0067】
<第1の基本構成あるいは第2の基本構成に付加される構成、およびその作用、効果>
次に、この撮像レンズ20の備える上記第1の基本構成あるいは第2の基本構成に付加される構成、およびその作用、効果について以下に説明する。
【0068】
なお、本実施の形態の撮像レンズ20は、第1の基本構成や第2の基本構成に付加することができる複数の構成のうちの1つのみを満足するものとしてもよいし、あるいは、上記第1の基本構成や第2の基本構成に付加することができる複数の構成のうちの2つ以上の組合わせを満足するものとしてもよい。
【0069】
なお、上記撮像レンズの基本構成にさらに付加する構成を示す条件式(1)〜(13)中に記号で示す各パラメータ等の意味をまとめて以下に示す。なお、既に説明済みのパラメータ等の意味についてもまとめて以下に示す。
【0070】
f;レンズ全系の焦点距離
f12:第1レンズと第2レンズの合成焦点距離
f123:前群G1の合成焦点距離
f456:後群G2の合成焦点距離
f45:後群G2中の、最も物体側に位置する互に隣り合う2枚のレンズの合成焦点距離
R9:後群G2中の、最も物体側に位置する第4レンズL4の像側のレンズ面S9の曲率半径
R10:後群中の最も物体側に位置する第4レンズL4の像側に隣り合う第5レンズL5の物体側のレンズ面S10の曲率半径
L:第1レンズL1の物体側のレンズ面S1から撮像レンズの結像面S16(撮像素子10の受光面Jk)までの距離(バックフォーカス分は空気換算)
Bf:バックフォーカス(第6レンズL6の像側のレンズ面S13から結像面S16までの空気換算した距離(空気換算長))
Nd1:第1レンズL1を構成する材料のd線に対する屈折率
Nd3:第3レンズL3に適用する材料のd線に対する屈折率
Nd5:第5レンズL5に適用する材料のd線に対する屈折率
IH:最大像高
ν1:第1レンズL1に適用する材料のd線に対するアッベ数
ν2:第2レンズL2に適用する材料のd線に対するアッベ数
ν3:第3レンズL3に適用する材料のd線に対するアッベ数
ν4:第4レンズL4に適用する材料のd線に対するアッベ数
ν5:第5レンズL5に適用する材料のd線に対するアッベ数
ν6:第6レンズL6に適用する材料のd線に対するアッベ数
D1:第1レンズL1の光軸上における厚み(以後、中心厚ともいう)
D8:第4レンズL4の中心厚
D9:第4レンズL4と第5レンズL5との間隔(空気間隔)
なお、f1〜f6それぞれは、第1レンズL1〜第6レンズL6それぞれの焦点距離を示している。
【0071】
第3レンズL3は両凸レンズであることが望ましい。第3レンズL3を両凸形状をなすものとすることで、第3レンズL3に正の強いパワーを持たせることが可能となり、像面湾曲と倍率の色収差の補正が容易となる。
【0072】
さらに、この第3レンズL3は、物体側のレンズ面S5の曲率半径の絶対値が像側のレンズ面S6の曲率半径の絶対値よりも小さい両凸形状をなすものとすることが望ましい。第3レンズL3をそのようにすることで、像面湾曲の補正がさらに容易となる。
【0073】
後群G2中の2枚の正レンズは両凸レンズであることが望ましい。後群G2中の2枚の正のパワーを持つレンズを両凸形状をなすものとすることで、テレセントリック性を確保しながら色収差を良好に補正することが可能となる。
【0074】
後群G2の最も物体側に位置するレンズ、ここでは第4レンズL4、を両凸レンズとすることが望ましい。第4レンズL4を両凸形状をなすものとすることで、第4レンズL4に正の強いパワーを持たせることができるので、第5レンズL5との組み合わせで色収差を良好に補正することが可能となる。
【0075】
後群G2の最も像側に位置するレンズ、ここでは第6レンズL6、を両凸レンズとすることが望ましい。第6レンズL6を両凸形状をなすものとすることで、第6レンズL6に正の強いパワーを持たせることができるので、良好なテレセントリック性を容易に得ることができる。
【0076】
また、第6レンズL6は物体側のレンズ面S12を像側のレンズ面S13をよりも曲率半径の絶対値を小さくした両凸レンズとすることが望ましい。そのようにすることで、球面収差を良好に補正することが可能となる。
【0077】
第2レンズL2は、物体側のレンズ面S3が平面をなす平凹レンズ、もしくは物体側のレンズ面S3の曲率半径の絶対値が像側のレンズ面S4の曲率半径の絶対値よりも大きい負のパワーを持つメニスカスレンズとすることが望ましい。第2レンズL2をそのようにすることにより、第2レンズL2に強い負のパワーを持たせることができるため、広角化に有利である。
【0078】
後群G2における最も物体側に位置するレンズから2番目のレンズ、ここでは第5レンズL5は、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであることが望ましい。第5レンズL5をそのようにすることで、像面湾曲を良好に補正することが可能となる。
【0079】
後群G2中の、最も物体側に位置するレンズの像側のレンズ面、ここでは第4レンズL4のレンズ面S9の曲率半径R9と、後群G2中の最も物体側に位置するレンズから2番目のレンズである上記第4レンズL4と隣り合うレンズの物体側のレンズ面、ここでは第5レンズL5のレンズ面S10の曲率半径R10とが、条件式(1):0.5<R10/R9<1.0を満足することが望ましい。
【0080】
しかしながら、R10/R9の値が条件式(1)の上限以上になると、R9が小さくなりすぎてしまい、第4レンズのコバを確保することが困難となるか、あるいは、R10が大きくなり過ぎてしまい、第5レンズのパワーが弱くなり、色収差の補正が困難となる。またR10/R9の値が条件式(1)の下限以下になると、R10が小さくなりすぎてしまい、加工が困難となる。
【0081】
条件式(2):0.8<|f12/f|<1.8は、広角化や像面湾曲に関連するものである。条件式(2)を満足するようにレンズ系を構成すれば、レンズの大型化を抑制しつつ広角化することが可能となり、像面湾曲も抑制することができる。
【0082】
しかしながら、f12/fの値が条件式(2)の上限以上になると、レンズを大型化することなく広角化を達成することが困難となる。またf12/fの値が条件式(2)の下限以下になると、広角化は容易に達成できるが像面湾曲が大きくなって良好な像を得ることが難しくなる。
【0083】
なお、|f12/f|は、f12/fの値の絶対値を意味する。
【0084】
また、条件式(2′):0.8<|f12/f|<1.5を満足するようにレンズ系を構成することがより望ましい。この条件式(2′)の上限を満足するようにレンズ系を構成すれば、レンズを大型化することなく広角化を達成することがさらに容易となる。
【0085】
条件式(3):1.0<|f123/f456|<2.2は、広角化や像面湾曲に関連するものである。条件式(3)を満足するようにレンズ系を構成すれば、レンズの大型化を抑制しつつ広角化が可能となり、さらに像面湾曲も抑制することができる。
【0086】
しかしながら、|f123/f456|の値が条件式(3)の上限以上になると、レンズを大型化することなく広角化を達成することが困難となる。また、|f123/f456|の値が条件式(3)の下限以下になると、像面湾曲を良好に補正することが困難になる。
【0087】
条件式(4):5<L/f<18は、レンズ系のサイズや広角化に関連するものである。条件式(4)を満足するようにレンズ系を構成すれば、レンズ系の大型化を抑制しつつ広角化を実現することができる。
【0088】
しかしながら、L/fの値が条件式(4)の上限以上になると、レンズが大型化してしまう。また、L/fの値が条件式(4)の下限以下になると広角化が困難となる。
【0089】
レンズ系を小型化するためには、距離Lが22mm以下であることが望ましい。距離Lを18mm以下にすればより小型化することができ、距離Lを16mm以下にすればさらなる小型化が可能である。
【0090】
なお、条件式(4′):5<L/f<13を満足するようにレンズ系を構成することがより望ましい。この条件式(4′)の上限を満足するようにレンズ系を構成すれば、レンズの小型化がさらに容易となる。
【0091】
撮像レンズ20の全画角2ωは130°以上とすることが望ましい。全画角2ωを130°以上とすることにより、撮像レンズ20を、車載カメラや監視カメラにより適した性能を有するものとすることができる。
【0092】
条件式(5):0.8<Bf/f<3.0は、バックフォーカスの大きさに関連するものである。条件式(5)を満足するようにレンズ系を構成すれば、バックフォーカスの大きさを適切に定めることができる。
【0093】
しかしながら、Bf/fの値が条件式(5)の上限以上になると、バックフォーカスが大きくなりすぎて、レンズ系が大型化してしまう。また、Bf/fの値が条件式(5)の下限以下になると、バックフォーカスが小さくなりすぎてしまい、レンズ系と撮像素子との間にカバーガラスや各種フィルターを挿入することが困難となる。
【0094】
レンズ系と撮像素子との間にカバーガラスや各種フィルターを挿入するためには、バックフォーカスBfの値が2.5mm以上であることが望ましい。
【0095】
条件式(6):2.0<f45/f<6.5は、色収差や像面湾曲に関連するものである。条件式(6)を満足するようにレンズ系を構成すれば、色収差および像面湾曲を良好に補正することができる。
【0096】
しかしながら、f45/fの値が条件式(6)の上限以上になると、色収差の補正が困難となる。また、f45/fの値が条件式(6)の下限以下になると、像面湾曲を良好に補正することが困難となる。
【0097】
なお、条件式(6′):2.0<f45/f<5.2を満足するようにレンズ系を構成することがより望ましい。この条件式(6′)の上限を満足するようにレンズ系を構成すれば、色収差の補正がさらに容易となる。
【0098】
条件式(7)0.5<f1/f2<2.8は、コマ収差やディストーションに関連するものである。条件式(7)を満足するようにレンズ系を構成すれば、コマ収差およびディストーションを良好に補正することができる。
【0099】
しかしながら、f1/f2の値が条件式(7)の上限以上になると、コマ収差を良好に補正することが困難となる。また、f1/f2の値が条件式(7)の下限以下になると、第1レンズL1の像側のレンズ面S2の曲率半径が小さくなりすぎて加工が困難となったり、第1レンズL1のパワーが強くなりすぎて周辺の光線が急激に曲げられて生じるディストーションの補正が困難となる。
【0100】
なお、条件式(7′):0.5<f1/f2<2.5を満足するようにレンズ系を構成することがより望ましい。この条件式(7′)の上限を満足するようにレンズ系を構成すれば、コマ収差の補正がさらに容易となる。
【0101】
条件式(8):2.0<f3/f<10.0は、像面湾曲や組立性に関連するものである。条件式(8)を満足するようにレンズ系を構成すれば、像面湾曲を抑制しつつ良好な組立性を得ることができる。
【0102】
しかしながら、f3/fの値が条件式(8)の上限以上になると、像面湾曲を良好に補正することが困難となる。また、f3/fの値が条件式(8)の下限以下になると、第3レンズL3のパワーが強くなりすぎて、偏心による性能変化が大きくなるため製造誤差及び組み立て誤差の許容量が小さくなり、組立が難しくなるとともにコストアップの原因となる。
【0103】
なお、条件式(8′):2.0<f3/f<4.7を満足するようにレンズ系を構成することがより望ましい。この条件式(8′)の上限をを満足するようにレンズ系を構成すれば、像面湾曲の補正がさらに容易となる。
【0104】
条件式(9):2.0<|f6/f|<5.8は、テレセントリック性や組立性に関連するものである。条件式(9)を満足するようにレンズ系を構成すれば、良好なテレセントリック性と組立性を得ることができる。
【0105】
しかしながら、|f6/f|の値が条件式(9)の上限以上になると、周辺の光線が像面に入射する角度が大きくなってしまい、いわゆるテレセントリック性のよいレンズを作製することが困難となる。また、|f6/f|の値が条件式(9)の下限以下になると、第6レンズL6のパワーが強くなりすぎて、偏心に対する感度が過敏になり、撮像レンズの組立てが困難となる。
【0106】
なお、条件式(9′):2.0<|f6/f|<4.5を満足するようにレンズ系を構成することがより望ましい。この条件式(9′)の上限を満足するようにレンズ系を構成すれば、周辺の光線が撮像素子へ入射する角度を小さくすることがさらに容易となる。
【0107】
条件式(10):0.40<D1/fは、第1レンズL1の物理的な強度に関するものである。条件式(10)を満足するようにレンズ系を構成すれば、例えばこの撮像レンズが車載カメラなどに適用される場合に、第1レンズL1について所望の耐衝撃性を得ることができる。
【0108】
しかしながら、D1/fの値が条件式(10)の下限以下になると、第1レンズが薄くなり所望の耐衝撃性を得ることが困難となる。
【0109】
条件式(11):0.80<D8/f<2.40は、レンズ系のサイズや組立性に関連するものである。条件式(11)を満足するようにレンズ系を構成すれば、レンズ系のサイズを大型化することなく良好な組立性を得ることができる。
【0110】
しかしながら、D8/fの値が条件式(11)の上限以上になると、後群の最も物体側のレンズ、ここでは第4レンズL4が大型化してしまい、小型化を達成することが困難となる。また、D8/fの値が条件式(11)の下限以下になると、後群の最も物体側のレンズが薄くなりすぎて、コバが確保できなくなるため、撮像レンズの組立てが困難となる。
【0111】
なお、条件式(11′):0.80<D8/f<1.80を満足するようにレンズ系を構成することがより望ましい。この条件式(11′)の上限を満足するようにレンズ系を構成すれば、小型化がさらに容易となる。
【0112】
条件式(12):0.10<D9/f<1.00は、レンズ系のサイズや色収差や光線ケラレに関連するものである。条件式(12)を満足するようにレンズ系を構成すれば、レンズ系の大型化や光線ケラレを発生させることなく色収差を補正することができる。
【0113】
しかしながら、D9/fの値が条件式(12)の上限以上になると、後群の最も物体側の第4レンズL4と物体側から2番目の第5レンズL5の間隔が大きくなり、レンズ系が大型化してしまうと共に色収差の補正が困難となる。また、D9/fの値が条件式(12)の下限以下になると、後群の最も物体側の第4レンズL4と物体側から2番目の第5レンズL5の間隔が小さくなりすぎてしまい、第4レンズと第5レンズをエッジで接触させることになり、レンズのカケなどが発生しやすくなったり、間隔環を入れた際に周辺から入射する光線にケラレが生じてしまう。
【0114】
条件式(13):2.0<f6/IH<4.0は、テレセントリック性や組立性に関連するものである。条件式(13)を満足するようにレンズ系を構成すれば、良好なテレセントリック性と組立性を得ることができる。
【0115】
しかしながら、f6/IHの値が条件式(13)の上限以上になると、周辺から入射した光線の結像面への入射角度が大きくなり、いわゆるテレセントリック性のよいレンズを製作することが困難となる。また、f6/IHの値が条件式(13)の下限以下になると、第6レンズL6のパワーが強くなりすぎて、偏心による性能変化が大きくなるため製造誤差及び組み立て誤差の許容量が少なくなり、組立が難しくなるとともにコストアップの原因となる。
【0116】
前群G1と後群G2を構成するすべてのレンズは、いずれもガラスレンズであることが望ましい。このように、前群および後群を構成する全てのレンズを、いずれもガラスレンズとすることで、レンズ系が厳しい環境下で使用される場合でも、ピントズレを抑えることが可能となる。
【0117】
本実施の形態の撮像レンズが、例えば車載カメラや監視カメラの撮像レンズに適用された場合には、この撮像レンズは広い温度範囲で使用されるためレンズ系を構成する材料はすべてガラスであることが望ましい。
【0118】
第1レンズL1を構成する材料のd線に対する屈折率Nd1は1.7以上であることが望ましい。
【0119】
屈折率Nd1を1.7未満とした場合には、第1レンズL1に強いパワーを持たせるために第1レンズL1の後面であるレンズ面S2の凹形状を深くする加工が難しくなるとともに、周辺部の画像が小さくなるようなディストーションが発生してしまう。
【0120】
第3レンズL3を構成するレンズ材料のd線に対する屈折率Nd3は1.8以上であることが望ましい。
【0121】
第3レンズL3を構成するレンズ材料のd線に対する屈折率Nd3を1.8以上とすることで、第3レンズのパワーを強くすることが容易になると共に、上記レンズ材料としてアッベ数の小さな材質を選ぶことができるため、倍率の色収差の補正に有利である。また、第3レンズのコバを確保することが容易となる。
【0122】
第3レンズL3に適用するレンズ材料のd線に対するアッベ数ν3は40以下であることが望ましい。
【0123】
第3レンズL3に適用するレンズ材料のd線に対するアッベ数ν3を40以下とすることで、倍率の色収差を良好に補正することが可能となる。
【0124】
第3レンズL3に適用するレンズ材料のd線に対するアッベ数ν3を25以下とすることで、倍率の色収差をさらに良好に補正することが可能となる。
【0125】
後群G2の物体側から2番目のレンズ、ここでは第5レンズL5、を構成するレンズ材料のd線に対する屈折率Nd5は1.8以上であることが望ましい。
【0126】
第1レンズL1に適用するレンズ材料のd線に対するアッベ数ν1は75以下であることが望ましい。
【0127】
レンズ材料のアッベ数ν1が75を超えると材料コストが高くなってしまい、レンズ系を安価に提供することが困難となる。
【0128】
なお、この第1レンズL1のレンズ材料のアッベ数ν1は70以下であってもよい。
【0129】
第2レンズL2に適用するレンズ材料のd線に対するアッベ数ν2は75以下であることが望ましい。
【0130】
このレンズ材料のアッベ数ν2が75を超えると材料コストが高くなってしまい、レンズ系を安価に提供することが困難となる。
【0131】
なお、このレンズ材料のアッベ数ν2は70以下としてもよい。
【0132】
後群G2の最も物体側のレンズ、ここでは第4レンズL4、に適用するレンズ材料のd線に対するアッベ数ν4は75以下であることが望ましい。
【0133】
このレンズ材料のアッベ数ν4が75を超えると材料コストが高くなってしまい、レンズ系を安価に提供することが困難となる。
【0134】
なお、このレンズ材料のアッベ数ν4は70以下としてもよい。
【0135】
後群G2の最も像側のレンズ、ここでは第6レンズL6、に適用するレンズ材料のd線に対するアッベ数ν6は75以下であることが望ましい。
【0136】
このレンズ材料のアッベ数ν6が75を超えると材料コストが高くなってしまい、レンズ系を安価にすることが困難となる。
【0137】
なお、このレンズ材料のアッベ数ν6は70以下としてもよい。
【0138】
また、第2レンズは両凹レンズであっても良い。第2レンズを両凹レンズとすることで、レンズ系を広角化することが容易となる。
【0139】
また、第3レンズは物体側に凹面を向けたメニスカス形状や平凹レンズとしても良い。第3レンズを物体側に凹面を向けたメニスカス形状とすることで、像面湾曲とコマ収差を良好に補正することが可能となり、例えば180°を超えるような広い画角のレンズも作製することが容易となる。
【0140】
撮像レンズ20が例えば車載用カメラ等の厳しい環境において使用される場合には、最も物体側に配置される第1レンズL1は、風雨による表面劣化、直射日光による温度変化に強く、さらには油脂・洗剤等の化学薬品に強い材質、すなわち耐水性、耐候性、耐酸性、耐薬品性等の高い材料を用いることが好ましい。また、最も物体側に配置される第1レンズL1には、堅く、割れにくい材料を用いることが好ましい。
【0141】
以上のことから第1レンズL1には、具体的にはガラスを用いることが好ましく、あるいは透明なセラミックスを用いてもよい。セラミックスは通常のガラスに比べて強度が高く、耐熱性が高いという性質を有する。
【0142】
また、第1レンズL1の中心厚D1は、0.8mm以上とすることが望ましい。第1レンズL1の中心厚D1を0.8mm以上とすることで、第1レンズL1を割れにくくすることが可能となる。
【0143】
また、上記のように撮像レンズ20を車載用カメラに適用する場合には、寒冷地の外気から熱帯地方の夏の車内まで広い温度範囲で使用可能なことが要求される。広い温度範囲で使用される場合には、レンズの材料としては線膨張係数の小さいものを用いることが好ましい。車載用カメラ等に適用され、広い温度範囲でも使用可能なことが要求される場合には、全てのレンズを、ガラスレンズとすることが好ましい。
【0144】
また、激しい温度変化、湿度変化により内部に曇りが生じないように、第1レンズに防水構造を施して外界との間の空気や湿気の出入りを遮断するようにしても良い。防水構造としては、第1レンズL1とこの第1レンズL1を収容するレンズ枠を接着して密封構造としても良いし、第1レンズL1とレンズ枠との間にOリングなどを入れて密封構造としても良い。
【0145】
また、レンズ系が激しい温度環境下、湿度環境下で使用される場合にはレンズ系には接合レンズを用いないことが望ましい。本発明の撮像レンズは、全レンズが単レンズとして構成されており、全系において接合レンズを用いない構成となっている。
【0146】
また、安価な撮像レンズを提供するためには、全てのレンズを球面レンズとすることが好ましい。あるいは、性能が重視される場合など、各収差をより良好に補正するためには、非球面レンズを用いてもよい。そして、非球面を精度良く低コストで形成するためには、レンズ材料としてプラスチックを用いてもよい。
【0147】
なお、各レンズ間の有効径外を通過する光束は、迷光となって結像面に達し、ゴーストが発生するおそれがある。そのため、必要に応じて、この迷光を遮光する遮光手段を設けることが好ましい。この遮光手段としては、例えばレンズの像側の有効径外の部分に不透明な塗料を施したり、不透明な板材(例えば図1に示す遮光板Sk1、Sk2)を設けたりしてもよい。または、迷光となる光束の光路に不透明な板材を設けて遮光手段としてもよい。あるいは、最も物体側のレンズのさらに物体側に迷光を遮断するフードのようなものを配置してもよい。一例として、図1では、第1レンズL1の像側のレンズ面S2と第2レンズL2の像側のレンズ面S4に遮光手段Sk1、Sk2をそれぞれ設けた例を示しているが、遮光手段を設ける場所は、図1に示す場所に限定されず、他のレンズ、あるいはレンズ間に配置してもよい。
【0148】
さらに、各レンズの間にFナンバーを決める開口絞りとは別に、周辺光線を遮断する別の絞りを配置してもよい。周辺光線とは、軸外光であってレンズ系の入射瞳内の周縁部を通る光線のことである。周辺光量比が実用上問題の無い範囲となるように周辺光線を遮断することにより、結像面S16の周辺部の画質を向上させることができる。また、この周辺光線の遮断、すなわちゴーストを発生させる光の遮断により、ゴーストを目立たなくすることが可能となる。
【0149】
前記周辺光線を周辺光量比が問題無い範囲で遮断する別の絞りは開口絞りと第4レンズの間に配置することが望ましい。
【0150】
前記周辺光線を周辺光量比が問題無い範囲で遮断する別の絞りは第3レンズと開口絞りの間に配置することが望ましい。
【0151】
第3レンズと開口絞りの間、開口絞りと第4レンズの間は周辺光線と軸外光線が集まっているため、この位置で光線を遮断することで、最外周光線の周辺光量比低下を最小限に抑えながら比較的内側の光線も遮断することが可能となる。そのため前記周辺光線を周辺光量比が実用上問題無い範囲で遮断する別の絞りを第3レンズと開口絞りの間、または開口絞りと第4レンズの間に配置することで、周辺部の画質を向上させることが容易となる。
【0152】
<具体的な実施例>
次に、図2〜図21および表1〜表11を参照し、実施例1〜実施例10の各撮像レンズに係る数値データ等についてまとめて説明する。なお、図2〜図11は、実施例1〜実施例10の撮像レンズそれぞれの概略構成を示す断面図であり、図1中の符号と一致する図2〜11中の符号は、互に対応する構成を示している。
【0153】
また、以下に示す表1〜表11は、実施例1〜実施例10の撮像レンズそれぞれの基本的なデータを示す表である。
【0154】
表1〜表10中の左部(図中符号(a)で示す)にレンズデータを、右部(図中符号(b)で示す)に撮像レンズの概略仕様を示す。
【0155】
表1〜表10中の左部のレンズデータにおいて、レンズ等の光学部材の面番号を物体側から像側に向かうに従い順次増加するi番目(i=1、2、3、…)の面番号として示す。なお、これらのレンズデータには、開口絞りStの面番号(i=7)、および平行平面板である光学部材Cg1の物体側の面と像側の面の面番号(i=14,15)、結像面の面番号(i=16)等も含めて記載している。
【0156】
Riはi番目(i=1、2、3、…)の面の曲率半径を示し、Di(i=1、2、3、…)はi番目の面とi+1番目の面との光軸Z1上の面間隔を示す。なお、レンズデータの曲率半径を示す符号Riは、図1中のレンズ面を示す符号Si(i=1、2、3、…)と対応している。
【0157】
また、各レンズデータ中の、Ndjは物体側から像側に向かうに従い順次増加するj番目(j=1、2、3、…)の光学要素のd線(波長587.6nm)に対する屈折率を示し、νdjはj番目の光学要素のd線に対するアッベ数を示す。
【0158】
また、曲率半径および面間隔の単位はmmであり、曲率半径は物体側に凸の場合を正、像側に凸の場合を負としている。
【0159】
表1〜表10中の右部の概略仕様において、以下の各値を示す。
【0160】
第1レンズの物体側のレンズ面から結像面までの距離:L(in Air)、バックフォーカス:Bf(in Air)、レンズ全系の焦点距離(第1レンズ〜第6レンズの合成焦点距離):f、第1レンズの焦点距離:f1、第2レンズの焦点距離:f2、第3レンズの焦点距離:f3、第4レンズの焦点距離:f4、第5レンズの焦点距離:f5、第6レンズの焦点距離:f6それぞれの値を概略仕様として示す。さらに、第1レンズと第2レンズの合成焦点距離:f12、第4レンズと第5レンズの合成焦点距離:f45、前群の焦点距離:f123、後群の焦点距離:f456、最大像高:IH、それぞれの値を概略仕様として示す。
【0161】
表11は、条件式(1)〜(13)の各パラメータの値を1〜10の各実施例毎に示すものである。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【0162】
図12〜21は、実施例1〜実施例10の撮像レンズそれぞれの諸収差を示す図である。図12〜21それぞれは、各実施例の撮像レンズ毎の、d線(波長587.6nm)、F線(波長486.1nm)、C線(波長656.3nm)についての収差を示している。また、2点鎖線は正弦条件(図中に記号SNCで示す)を表している。
【0163】
なお、ディストーションの図は、全系の焦点距離f、半画角θ(変数扱い、0≦θ≦ω)を用いて、理想像高をf×tanθとし、それからのずれ量を示す。
【0164】
収差図中においてd線(587.6nm)は実線で表示し、F線(486.1nm)は破線で表示し、C線(656.3nm)は1点鎖線で表示している。
【0165】
実施例1〜10の基本的なデータおよび諸収差を示す図等から分かるように、本発明の撮像レンズによれば、レンズそれぞれの形状や材質の最適化を図ることで、レンズ性能を低下させたり製作コストを増大させることなく耐環境性を高めることができる。
【0166】
なお、本発明は、上記実施の形態および各実施例に限定されず種々の変形実施が可能である。例えば、各レンズ成分の曲率半径、面間隔および屈折率の値などは、上記各図中に示した数値に限定されず、他の値を取り得る。
【0167】
図22は、本発明の撮像レンズと、この撮像レンズによって受光面上に結像された光学像を形成する光を受光し電気信号に変換して出力する撮像素子とを備えた、本発明の撮像装置の1例である車載カメラを搭載した自動車を示す図である。
【0168】
図22に示すように、本発明の撮像装置を備えた車載機器502〜504は、自動車501等に搭載して使用することができる。車載機器502は、助手席側の側面の死角範囲を撮像するための車外カメラであり、車載機器503は、自動車501の後側の死角範囲を撮像するための車外カメラである。また、車載機器504は、ルームミラーの背面に取り付けられ、ドライバーと同じ視野範囲を撮影するための車内カメラである。
【符号の説明】
【0169】
10 撮像素子
20 撮像レンズ
100 撮像装置
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
L6 第6レンズ
St 開口絞り
G1 前群
G2 後群
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を撮像する撮像レンズおよびこの撮像レンズを用いた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車載用カメラや監視カメラ等の撮像装置に使用される小型の撮像レンズが知られている。このような撮像装置に使用される小型で高画素数のCCDやCMOS等からなる撮像素子やこの撮像素子と組み合わされる小型の撮像レンズ等も知られている。
【0003】
さらに、そのような撮像装置に使用される撮像レンズとして、接合レンズを用いて小型化を実現した特許文献1,2,3,4,5に記載の撮像レンズも知られている。
【0004】
特許文献1に記載の撮像レンズは、Fナンバーが2.0の明るいレンズであるが、屈折率が1.9を超える材料からなるレンズを多用しているためコストが高くなってしまう。特許文献2及び特許文献4に記載の撮像レンズは、非球面レンズを用いて構成したものである。この撮像レンズを、例えば車載カメラ用レンズや監視カメラ用レンズとして使用する際、レンズにプラスチックを使用した場合には温度による性能変化が大きくなってしまう。また、レンズにガラスモールドを使用した場合にはコストが高くなってしまう。特許文献3に記載の撮像レンズはFナンバーが2.8から4.0のレンズであり、車載カメラや監視カメラとしては暗すぎる。また、特許文献1から4に記載のレンズはいずれも接合レンズを備えており、耐環境性の面で改善の余地がある。
【0005】
特許文献5に記載のレンズは、非球面を多用しており、さらにレンズ面のうち一面を回折光学面としているため、レンズにプラスチックを使用した場合には温度による性能変化が大きくなってしまう。また、レンズにガラスモールドを使用した場合にはコストが高くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7023628B1号明細書
【特許文献2】特許公報第2599312号
【特許文献3】特開昭61−123810号公報、
【特許文献4】特開2007−279632号公報
【特許文献5】特開2007−139985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このような、車載用カメラや監視カメラに適用される撮像レンズとしては、例えば、真夏の赤道直下で利用される自動車の車内においても、あるいは真冬の寒冷地の戸外においても使用可能な、温度変化による性能低下が少なく耐候性に優れた、明るく(Fナンバーが小さく)小型で安価なレンズが求められている。
【0008】
しかしながら、接合レンズを用いた撮像レンズは、接合層を形成している接合材料が、長期間に亘って厳しい環境下に置かれたときに変質したり変形したりして、撮像レンズの光学性能を低下させるという問題がある。
【0009】
なお、接合レンズを厳しい環境下での使用に耐えられるようにするために特別な加工を施すことも考えられるが、コストが高くなるという問題が生じる。
【0010】
上記問題は、車載用カメラや監視カメラに限らず、接合レンズを用いた撮像レンズを厳しい環境下で使用する際に一般に生じる問題である。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、レンズ性能を低下させたり製作コストを増大させることなく耐環境性を高めることができる撮像レンズおよびこの撮像レンズを用いた撮像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の撮像レンズは、物体側から順に、負のパワーを持つ前群、絞り、正のパワーを持つ後群を備え、前群が、物体側から順に、像側に凹面を向けた負の第1レンズ、物体側の方が像側よりもレンズ面の曲率半径の絶対値が大きい負の第2レンズ、正の第3レンズを備えたものであり、後群が、物体側から順に、正の第4レンズ、物体側に凹面を向けたメニスカス形状をなす負の第5レンズ、正の第6レンズを備えたものであり、第1レンズ、第2レンズ、第4レンズ、および第6レンズそれぞれのd線に対するアッベ数がいずれも40以上、第3レンズおよび第5レンズそれぞれのd線に対するアッベ数がいずれも40以下であり、前群および後群を構成するレンズが、いずれも単レンズであることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第2の撮像レンズは、物体側から順に、負のパワーを持つ前群、絞り、正のパワーを持つ後群を備え、前群が、物体側から順に、像側に凹面を向けた負の第1レンズ、負の第2レンズ、正の第3レンズを備えたものであり、後群が、2枚の正のレンズと1枚の負のレンズとを備えたものであり、第1レンズおよび第2レンズのd線に対するアッベ数がいずれも45以上、第3レンズのd線に対するアッベ数が25以下であり、後群を構成する負のレンズのd線に対するアッベ数が25以下、正のレンズのd線に対するアッベ数がいずれも45以上であり、前群および後群を構成するレンズが、いずれも単レンズであり、第1レンズの物体側のレンズ面から撮像レンズの結像面までの距離が18mm以下であることを特徴とするものである。
【0014】
前記第3レンズは、物体側の方が像側よりもレンズ面の曲率半径の絶対値が小さい両凸形状をなすものとすることが望ましい。
【0015】
前記後群を構成する前記2枚の正のレンズは、いずれも両凸形状をなすものとすることが望ましい。
【0016】
前記第2レンズは、物体側に平面を向けた平凹形状をなすレンズ、もしくは物体側の方が像側よりもレンズ面の曲率半径の絶対値が大きいメニスカスレンズとすることが望ましい。
【0017】
前記撮像レンズは、条件式(1):0.5<R10/R9<1.0を満足するものとすることが望ましい。ここで、R9は、後群を構成するレンズのうち、最も物体側に位置するレンズにおける像側のレンズ面の曲率半径、また、R10は、後群を構成するレンズのうち、最も物体側に位置するレンズの像側に隣り合うレンズにおける物体側のレンズ面の曲率半径である。
【0018】
前記撮像レンズは、条件式(2):0.8<|f12/f|<1.8を満足するものとすることが望ましい。ここで、fはレンズ全系の焦点距離、f12は第1レンズと第2レンズの合成焦点距離である。
【0019】
前記撮像レンズは、条件式(3):1.0<|f123/f456|<2.2を満足するものとすることが望ましい。ここで、f123:前群の合成焦点距離、f456:後群の合成焦点距離である。
【0020】
前記撮像レンズは、条件式(4):5<L/f<18を満足するものとすることが望ましい。ここで、fはレンズ全系の焦点距離、Lは第1レンズの物体側のレンズ面から撮像レンズの結像面までの距離である。
【0021】
なお、Lの値の算出において、撮像レンズを構成するレンズ面のうち最も像側に位置するレンズ面から、この撮像レンズの結像面までの距離(バックフォーカス)は空気換算した値を用いるものとする。
【0022】
前記撮像レンズは、条件式(5):0.5<Bf/f<3.0を満足するものとすることが望ましい。ここで、fはレンズ全系の焦点距離、Bfはバックフォーカスである。
【0023】
なお、バックフォーカスは、撮像レンズを構成するレンズ面のうち最も像側に位置するレンズ面から、この撮像レンズの結像面までの光軸上の距離であり、撮像レンズと結像面の間にカバーガラスや各種フィルタなどがあった場合には、Bfはそれらを空気換算した値を用いるものとする。
【0024】
前記撮像レンズは、条件式(6):2.0<f45/f<6.5を満足するものとすることが望ましい。ここで、f:レンズ全系の焦点距離、f45:後群を構成するレンズのうち、最も物体側に位置する互に隣り合う2枚のレンズの合成焦点距離である。
【0025】
前記第1レンズから第6レンズは、いずれもガラスレンズであることが望ましい。
【0026】
本発明の撮像装置は、請求項1から12のいずれか1項記載の撮像レンズと、この撮像レンズにより形成される光学像を電気信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の第1の撮像レンズおよび撮像装置によれば、物体側から順に、負パワーを持つ前群、絞り、正のパワーを持つ後群を備え、前群を、物体側から順に、像側に凹面を向けた負の第1レンズ、物体側の方が像側よりもレンズ面の曲率半径の絶対値が大きい負の第2レンズ、正の第3レンズを備えたものとし、後群を、物体側から順に、正の第4レンズ、物体側に凹面を向けたメニスカス形状をなす負の第5レンズ、正の第6レンズを備えたものとし、第1レンズ、第2レンズ、第4レンズ、および第6レンズそれぞれのd線に対するアッベ数をいずれも40以上、第3レンズおよび第5レンズそれぞれのd線に対するアッベ数をいずれも40以下とし、前群および後群を構成する全てのレンズをいずれも単レンズとしたので、レンズ性能を低下させたり製作コストを増大させることなく耐環境性を高めることができる。
【0028】
より詳しくは、本発明の第1の撮像レンズおよび撮像装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0029】
すなわち、前群および後群を構成する全てのレンズをいずれも単レンズとし、接合レンズを使用しないようにしたので、レンズ接合に関する特別な加工を施す必要が無く、レンズ接合に起因する不具合の発生も無くなるので、レンズ性能を低下させたり製作コストを増大させることなく耐環境性を高めることができる。
【0030】
さらに、レンズ系の最も物体側に配置された、第1レンズ、第2レンズを負のパワーを持つレンズとすることで、レンズ系全体を広角化することが容易となる。第1レンズを像側に凹面を向けたレンズとし、第2レンズを物体側に曲率半径の絶対値の大きい側を向けた負レンズとすることで、例えば130°を超えるような広い画角からの入射光線もとらえるようにすることができる。
【0031】
第1レンズと第2レンズのd線に対するアッベ数を40以上とすることで、レンズ系を広角化しながら色収差の発生を抑えることができる。
【0032】
第3レンズを正のレンズとすることで、像面湾曲を良好に補正することが可能となる。また、第3レンズのd線に対するアッベ数を40以下とすることで、倍率の色収差を良好に補正することが可能となる。
【0033】
第4レンズを正、第5レンズを負のレンズとし、第4レンズのd線に対するアッベ数を40以上、第5レンズのd線に対するアッベ数を40以下とすることで、軸上色収差と倍率の色収差を良好に補正することが可能となる。
【0034】
第5レンズを物体側に凹面を向けた負のメニスカスレンズとすることで、像面湾曲を良好に補正することが可能となる。
【0035】
第6レンズを正のパワーを持つレンズとすることで、周辺の光線が撮像レンズの結像面に入射する角度を小さくすることができ、いわゆるテレセントリック性の良いレンズにすることができる。
【0036】
本発明の第2の撮像レンズおよび撮像装置によれば、物体側から順に、負のパワーを持つ前群、絞り、正のパワーを持つ後群を備え、前群を、物体側から順に、像側に凹面を向けた負の第1レンズ、負の第2レンズ、正の第3レンズを備えたものとし、後群を、2枚の正のレンズと1枚の負のレンズとを備えたものとし、第1レンズおよび第2レンズのd線に対するアッベ数をいずれも45以上、第3レンズのd線に対するアッベ数を25以下とし、後群を構成する前記1枚の負のレンズのd線に対するアッベ数を25以下、前記2枚の正のレンズのd線に対するアッベ数をいずれも45以上とし、前群および後群を構成する全てのレンズを、いずれも単レンズとし、第1レンズの物体側のレンズ面から撮像レンズの結像面までの距離を18mm以下としたので、レンズ性能を低下させたり製作コストを増大させることなく耐環境性を高めることができる。
【0037】
より詳しくは、本発明の第2の撮像レンズおよび撮像装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0038】
すなわち、前群および後群を構成する全てレンズをいずれも単レンズとし、接合レンズを使用しないようにしたので、レンズ接合に関する特別な加工を施す必要が無く、レンズ接合に起因する不具合の発生も無くなるので、レンズ性能を低下させたり製作コストを増大させることなく耐環境性を高めることができる。また、前群および後群を構成するレンズを、いずれも単レンズとしたので、接合面における物理的および化学的刺激による変質や変形を抑制することができ、さらに耐環境性を高めることができる。
【0039】
また、第1レンズL1、第2レンズL2を負のパワーを持つレンズとすることで、レンズ系全体を広角化することが容易となる。なお、第1レンズを像側に凹面を向けたレンズとし、第2レンズを負のレンズとすれば、例えば130°を超えるような広い画角からの入射光線をもとらえることができる。さらに、第2レンズを物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズとすれば、ディストーションを抑えながらレンズ径を広角化することが容易となる。
【0040】
第3レンズを正のレンズとすることで、像面湾曲を良好に補正することが可能となる。
【0041】
絞りの後に2枚の正レンズと1枚の負レンズを配置することで、像面湾曲と球面収差を良好に補正することが可能となる。
【0042】
前群のうち負のパワーを持つレンズのd線に対するアッベ数が45以上とすることで、レンズ系を広角化しながら色収差の発生を抑えることができる。
【0043】
前群のうち正のパワーを持つレンズのd線に対するアッベ数を25以下とすることで、倍率の色収差を良好に補正することが可能となる。
【0044】
後群のうち負のパワーを持つレンズのd線に対するアッベ数を25以下、後群のうち正のパワーを持つレンズのd線に対するアッベ数を45以上とすることで、軸上の色収差と倍率の色収差を良好に補正することが可能となる。
【0045】
第1レンズの物体側のレンズ面から結像面までの距離を18mm以下とすることで、レンズ系を小型にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の撮像レンズおよび撮像装置の概略構成を示す断面図
【図2】実施例1の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図3】実施例2の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図4】実施例3の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図5】実施例4の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図6】実施例5の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図7】実施例6の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図8】実施例7の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図9】実施例8の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図10】実施例9の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図11】実施例10の撮像レンズの概略構成を示す断面図
【図12】実施例1の撮像レンズの諸収差を示す図
【図13】実施例2の撮像レンズの諸収差を示す図
【図14】実施例3の撮像レンズの諸収差を示す図
【図15】実施例4の撮像レンズの諸収差を示す図
【図16】実施例5の撮像レンズの諸収差を示す図
【図17】実施例6の撮像レンズの諸収差を示す図
【図18】実施例7の撮像レンズの諸収差を示す図
【図19】実施例8の撮像レンズの諸収差を示す図
【図20】実施例9の撮像レンズの諸収差を示す図
【図21】実施例10の撮像レンズの諸収差を示す図
【図22】本発明の撮像装置を備えた車載機器が搭載されている自動車を示す図
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は本発明の撮像レンズおよびこの撮像レンズを用いた撮像装置の実施の形態の概略構成を示す断面図である。
【0048】
図示の撮像装置100は、自動車の前方、側方、後方などを撮影するための車載用カメラ等に適用されるものである。この撮像装置100は、CCDやCMOS等からなる撮像素子10と撮像レンズ20とを備えている。
【0049】
撮像レンズ20は、撮像素子10の受光面Jk上に被写体の光学像を結像させる。この撮像素子10は、撮像レンズ20によって受光面Jk上に結像された被写体の光学像を電気信号に変換して、この光学像を示す画像信号を出力するものである。
【0050】
<撮像レンズの基本構成およびその作用、効果について>
はじめに、撮像レンズ20が兼ね備えている2種類の基本構成である第1の基本構成および第2の基本構成について説明する。
【0051】
以下の第1の基本構成を備えた撮像レンズ20は、光軸Z1に沿って物体側(図中矢印−Z方向の側)から順に、負のパワーを持つ前群G1、開口絞りSt、正のパワーを持つ後群G2を備えたものである。
【0052】
前群G1は、物体側から順に、像側(図中矢印+Z方向の側)に凹面を向けたメニスカス形状をなす負の第1レンズL1、物体側の方が像側よりもレンズ面の曲率半径の絶対値が大きい負の第2レンズL2、正の第3レンズL3を備えたものである。
【0053】
後群G2は、物体側から順に、正の第4レンズL4、物体側に凹面を向けたメニスカス形状をなす負の第5レンズL5、正の第6レンズL6を備えたものである。
【0054】
第1レンズL1、第2レンズL2、第4レンズL4、および第6レンズL6それぞれのd線に対するアッベ数はいずれも40以上、第3レンズL3および第5レンズL5それぞれのd線に対するアッベ数はいずれも40以下である。
【0055】
前群G1および後群G2を構成するレンズは、いずれも単レンズである。
【0056】
また、以下の第2の基本構成を備えた撮像レンズ20は、物体側から順に、負のパワーを持つ前群G1、開口絞りSt、正のパワーを持つ後群G2を備えたものである。
【0057】
前群G1は、物体側から順に、像側に凹面を向けたメニスカス形状をなす負の第1レンズL1、物体側の方が像側よりもレンズ面の曲率半径の絶対値が大きいメニスカス形状をなす負の第2レンズL2、正の第3レンズL3を備えたものである。
【0058】
後群G2は、2枚の正のレンズと1枚の負のレンズとを備えたものである。
【0059】
第1レンズL1および第2レンズL2のd線に対するアッベ数がいずれも45以上、第3レンズL3のd線に対するアッベ数が25以下であり、後群G2を構成する前記1枚の負のレンズのd線に対するアッベ数が25以下、前記2枚の正のレンズのd線に対するアッベ数がいずれも45以上である。
【0060】
第1レンズL1の物体側のレンズ面S1から撮像レンズ20の結像面S16までの距離は21mm以下とすることが望ましく、18mm以下とすることがより望ましい。
【0061】
この撮像レンズ20を通して被写体を表す光学像が結像される結像面S16には、上記のように撮像素子10の受光面Jkが配置されている。
【0062】
さらに、この撮像レンズ20は、第1および第2のいずれの基本構成においても、後群G2と撮像素子10との間に、例えば赤外線カットフィルタや受光面Jkを保護するカバーガラスなどの平板状の光学部材Cg1を備えることができる。この光学部材Cg1は、撮像装置100の仕様に応じて選択されたものが配置される。
【0063】
なお、図1中の符号S1〜S16は以下の構成を指している。
【0064】
符号S1とS2は第1レンズL1の物体側(図中矢印−Z方向の側)のレンズ面と像側(図中矢印+Z方向の側)のレンズ面、符号S3とS4は第2レンズL2の物体側のレンズ面と像側のレンズ面、符号S5とS6は第3レンズL3の物体側のレンズ面と像側のレンズ面、S7は開口絞りStの開口部、符号S8とS9は第4レンズL4の物体側のレンズ面と像側のレンズ面、符号S10とS11は第5レンズL5の物体側のレンズ面と像側のレンズ面、符号S12とS13は第6レンズL6の物体側のレンズ面と像側のレンズ面、符号S14とS15は光学部材Cg1の物体側の面と像側の面、符号S16は上記のように撮像素子10の受光面Jkと一致する撮像レンズ20の結像面を示している。
【0065】
また、符号Sk1は、第1レンズL1の像側の表面に配された遮光板、Sk2は第2レンズL2の像側の表面に配された遮光板を示している。さらに、符号2ωは撮像レンズ20の全画角を示している。
【0066】
なお、撮像レンズ20は、第1の基本構成あるいは第2の基本構成のいずれか1つのみを満足するものとしてもよい。
【0067】
<第1の基本構成あるいは第2の基本構成に付加される構成、およびその作用、効果>
次に、この撮像レンズ20の備える上記第1の基本構成あるいは第2の基本構成に付加される構成、およびその作用、効果について以下に説明する。
【0068】
なお、本実施の形態の撮像レンズ20は、第1の基本構成や第2の基本構成に付加することができる複数の構成のうちの1つのみを満足するものとしてもよいし、あるいは、上記第1の基本構成や第2の基本構成に付加することができる複数の構成のうちの2つ以上の組合わせを満足するものとしてもよい。
【0069】
なお、上記撮像レンズの基本構成にさらに付加する構成を示す条件式(1)〜(13)中に記号で示す各パラメータ等の意味をまとめて以下に示す。なお、既に説明済みのパラメータ等の意味についてもまとめて以下に示す。
【0070】
f;レンズ全系の焦点距離
f12:第1レンズと第2レンズの合成焦点距離
f123:前群G1の合成焦点距離
f456:後群G2の合成焦点距離
f45:後群G2中の、最も物体側に位置する互に隣り合う2枚のレンズの合成焦点距離
R9:後群G2中の、最も物体側に位置する第4レンズL4の像側のレンズ面S9の曲率半径
R10:後群中の最も物体側に位置する第4レンズL4の像側に隣り合う第5レンズL5の物体側のレンズ面S10の曲率半径
L:第1レンズL1の物体側のレンズ面S1から撮像レンズの結像面S16(撮像素子10の受光面Jk)までの距離(バックフォーカス分は空気換算)
Bf:バックフォーカス(第6レンズL6の像側のレンズ面S13から結像面S16までの空気換算した距離(空気換算長))
Nd1:第1レンズL1を構成する材料のd線に対する屈折率
Nd3:第3レンズL3に適用する材料のd線に対する屈折率
Nd5:第5レンズL5に適用する材料のd線に対する屈折率
IH:最大像高
ν1:第1レンズL1に適用する材料のd線に対するアッベ数
ν2:第2レンズL2に適用する材料のd線に対するアッベ数
ν3:第3レンズL3に適用する材料のd線に対するアッベ数
ν4:第4レンズL4に適用する材料のd線に対するアッベ数
ν5:第5レンズL5に適用する材料のd線に対するアッベ数
ν6:第6レンズL6に適用する材料のd線に対するアッベ数
D1:第1レンズL1の光軸上における厚み(以後、中心厚ともいう)
D8:第4レンズL4の中心厚
D9:第4レンズL4と第5レンズL5との間隔(空気間隔)
なお、f1〜f6それぞれは、第1レンズL1〜第6レンズL6それぞれの焦点距離を示している。
【0071】
第3レンズL3は両凸レンズであることが望ましい。第3レンズL3を両凸形状をなすものとすることで、第3レンズL3に正の強いパワーを持たせることが可能となり、像面湾曲と倍率の色収差の補正が容易となる。
【0072】
さらに、この第3レンズL3は、物体側のレンズ面S5の曲率半径の絶対値が像側のレンズ面S6の曲率半径の絶対値よりも小さい両凸形状をなすものとすることが望ましい。第3レンズL3をそのようにすることで、像面湾曲の補正がさらに容易となる。
【0073】
後群G2中の2枚の正レンズは両凸レンズであることが望ましい。後群G2中の2枚の正のパワーを持つレンズを両凸形状をなすものとすることで、テレセントリック性を確保しながら色収差を良好に補正することが可能となる。
【0074】
後群G2の最も物体側に位置するレンズ、ここでは第4レンズL4、を両凸レンズとすることが望ましい。第4レンズL4を両凸形状をなすものとすることで、第4レンズL4に正の強いパワーを持たせることができるので、第5レンズL5との組み合わせで色収差を良好に補正することが可能となる。
【0075】
後群G2の最も像側に位置するレンズ、ここでは第6レンズL6、を両凸レンズとすることが望ましい。第6レンズL6を両凸形状をなすものとすることで、第6レンズL6に正の強いパワーを持たせることができるので、良好なテレセントリック性を容易に得ることができる。
【0076】
また、第6レンズL6は物体側のレンズ面S12を像側のレンズ面S13をよりも曲率半径の絶対値を小さくした両凸レンズとすることが望ましい。そのようにすることで、球面収差を良好に補正することが可能となる。
【0077】
第2レンズL2は、物体側のレンズ面S3が平面をなす平凹レンズ、もしくは物体側のレンズ面S3の曲率半径の絶対値が像側のレンズ面S4の曲率半径の絶対値よりも大きい負のパワーを持つメニスカスレンズとすることが望ましい。第2レンズL2をそのようにすることにより、第2レンズL2に強い負のパワーを持たせることができるため、広角化に有利である。
【0078】
後群G2における最も物体側に位置するレンズから2番目のレンズ、ここでは第5レンズL5は、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであることが望ましい。第5レンズL5をそのようにすることで、像面湾曲を良好に補正することが可能となる。
【0079】
後群G2中の、最も物体側に位置するレンズの像側のレンズ面、ここでは第4レンズL4のレンズ面S9の曲率半径R9と、後群G2中の最も物体側に位置するレンズから2番目のレンズである上記第4レンズL4と隣り合うレンズの物体側のレンズ面、ここでは第5レンズL5のレンズ面S10の曲率半径R10とが、条件式(1):0.5<R10/R9<1.0を満足することが望ましい。
【0080】
しかしながら、R10/R9の値が条件式(1)の上限以上になると、R9が小さくなりすぎてしまい、第4レンズのコバを確保することが困難となるか、あるいは、R10が大きくなり過ぎてしまい、第5レンズのパワーが弱くなり、色収差の補正が困難となる。またR10/R9の値が条件式(1)の下限以下になると、R10が小さくなりすぎてしまい、加工が困難となる。
【0081】
条件式(2):0.8<|f12/f|<1.8は、広角化や像面湾曲に関連するものである。条件式(2)を満足するようにレンズ系を構成すれば、レンズの大型化を抑制しつつ広角化することが可能となり、像面湾曲も抑制することができる。
【0082】
しかしながら、f12/fの値が条件式(2)の上限以上になると、レンズを大型化することなく広角化を達成することが困難となる。またf12/fの値が条件式(2)の下限以下になると、広角化は容易に達成できるが像面湾曲が大きくなって良好な像を得ることが難しくなる。
【0083】
なお、|f12/f|は、f12/fの値の絶対値を意味する。
【0084】
また、条件式(2′):0.8<|f12/f|<1.5を満足するようにレンズ系を構成することがより望ましい。この条件式(2′)の上限を満足するようにレンズ系を構成すれば、レンズを大型化することなく広角化を達成することがさらに容易となる。
【0085】
条件式(3):1.0<|f123/f456|<2.2は、広角化や像面湾曲に関連するものである。条件式(3)を満足するようにレンズ系を構成すれば、レンズの大型化を抑制しつつ広角化が可能となり、さらに像面湾曲も抑制することができる。
【0086】
しかしながら、|f123/f456|の値が条件式(3)の上限以上になると、レンズを大型化することなく広角化を達成することが困難となる。また、|f123/f456|の値が条件式(3)の下限以下になると、像面湾曲を良好に補正することが困難になる。
【0087】
条件式(4):5<L/f<18は、レンズ系のサイズや広角化に関連するものである。条件式(4)を満足するようにレンズ系を構成すれば、レンズ系の大型化を抑制しつつ広角化を実現することができる。
【0088】
しかしながら、L/fの値が条件式(4)の上限以上になると、レンズが大型化してしまう。また、L/fの値が条件式(4)の下限以下になると広角化が困難となる。
【0089】
レンズ系を小型化するためには、距離Lが22mm以下であることが望ましい。距離Lを18mm以下にすればより小型化することができ、距離Lを16mm以下にすればさらなる小型化が可能である。
【0090】
なお、条件式(4′):5<L/f<13を満足するようにレンズ系を構成することがより望ましい。この条件式(4′)の上限を満足するようにレンズ系を構成すれば、レンズの小型化がさらに容易となる。
【0091】
撮像レンズ20の全画角2ωは130°以上とすることが望ましい。全画角2ωを130°以上とすることにより、撮像レンズ20を、車載カメラや監視カメラにより適した性能を有するものとすることができる。
【0092】
条件式(5):0.8<Bf/f<3.0は、バックフォーカスの大きさに関連するものである。条件式(5)を満足するようにレンズ系を構成すれば、バックフォーカスの大きさを適切に定めることができる。
【0093】
しかしながら、Bf/fの値が条件式(5)の上限以上になると、バックフォーカスが大きくなりすぎて、レンズ系が大型化してしまう。また、Bf/fの値が条件式(5)の下限以下になると、バックフォーカスが小さくなりすぎてしまい、レンズ系と撮像素子との間にカバーガラスや各種フィルターを挿入することが困難となる。
【0094】
レンズ系と撮像素子との間にカバーガラスや各種フィルターを挿入するためには、バックフォーカスBfの値が2.5mm以上であることが望ましい。
【0095】
条件式(6):2.0<f45/f<6.5は、色収差や像面湾曲に関連するものである。条件式(6)を満足するようにレンズ系を構成すれば、色収差および像面湾曲を良好に補正することができる。
【0096】
しかしながら、f45/fの値が条件式(6)の上限以上になると、色収差の補正が困難となる。また、f45/fの値が条件式(6)の下限以下になると、像面湾曲を良好に補正することが困難となる。
【0097】
なお、条件式(6′):2.0<f45/f<5.2を満足するようにレンズ系を構成することがより望ましい。この条件式(6′)の上限を満足するようにレンズ系を構成すれば、色収差の補正がさらに容易となる。
【0098】
条件式(7)0.5<f1/f2<2.8は、コマ収差やディストーションに関連するものである。条件式(7)を満足するようにレンズ系を構成すれば、コマ収差およびディストーションを良好に補正することができる。
【0099】
しかしながら、f1/f2の値が条件式(7)の上限以上になると、コマ収差を良好に補正することが困難となる。また、f1/f2の値が条件式(7)の下限以下になると、第1レンズL1の像側のレンズ面S2の曲率半径が小さくなりすぎて加工が困難となったり、第1レンズL1のパワーが強くなりすぎて周辺の光線が急激に曲げられて生じるディストーションの補正が困難となる。
【0100】
なお、条件式(7′):0.5<f1/f2<2.5を満足するようにレンズ系を構成することがより望ましい。この条件式(7′)の上限を満足するようにレンズ系を構成すれば、コマ収差の補正がさらに容易となる。
【0101】
条件式(8):2.0<f3/f<10.0は、像面湾曲や組立性に関連するものである。条件式(8)を満足するようにレンズ系を構成すれば、像面湾曲を抑制しつつ良好な組立性を得ることができる。
【0102】
しかしながら、f3/fの値が条件式(8)の上限以上になると、像面湾曲を良好に補正することが困難となる。また、f3/fの値が条件式(8)の下限以下になると、第3レンズL3のパワーが強くなりすぎて、偏心による性能変化が大きくなるため製造誤差及び組み立て誤差の許容量が小さくなり、組立が難しくなるとともにコストアップの原因となる。
【0103】
なお、条件式(8′):2.0<f3/f<4.7を満足するようにレンズ系を構成することがより望ましい。この条件式(8′)の上限をを満足するようにレンズ系を構成すれば、像面湾曲の補正がさらに容易となる。
【0104】
条件式(9):2.0<|f6/f|<5.8は、テレセントリック性や組立性に関連するものである。条件式(9)を満足するようにレンズ系を構成すれば、良好なテレセントリック性と組立性を得ることができる。
【0105】
しかしながら、|f6/f|の値が条件式(9)の上限以上になると、周辺の光線が像面に入射する角度が大きくなってしまい、いわゆるテレセントリック性のよいレンズを作製することが困難となる。また、|f6/f|の値が条件式(9)の下限以下になると、第6レンズL6のパワーが強くなりすぎて、偏心に対する感度が過敏になり、撮像レンズの組立てが困難となる。
【0106】
なお、条件式(9′):2.0<|f6/f|<4.5を満足するようにレンズ系を構成することがより望ましい。この条件式(9′)の上限を満足するようにレンズ系を構成すれば、周辺の光線が撮像素子へ入射する角度を小さくすることがさらに容易となる。
【0107】
条件式(10):0.40<D1/fは、第1レンズL1の物理的な強度に関するものである。条件式(10)を満足するようにレンズ系を構成すれば、例えばこの撮像レンズが車載カメラなどに適用される場合に、第1レンズL1について所望の耐衝撃性を得ることができる。
【0108】
しかしながら、D1/fの値が条件式(10)の下限以下になると、第1レンズが薄くなり所望の耐衝撃性を得ることが困難となる。
【0109】
条件式(11):0.80<D8/f<2.40は、レンズ系のサイズや組立性に関連するものである。条件式(11)を満足するようにレンズ系を構成すれば、レンズ系のサイズを大型化することなく良好な組立性を得ることができる。
【0110】
しかしながら、D8/fの値が条件式(11)の上限以上になると、後群の最も物体側のレンズ、ここでは第4レンズL4が大型化してしまい、小型化を達成することが困難となる。また、D8/fの値が条件式(11)の下限以下になると、後群の最も物体側のレンズが薄くなりすぎて、コバが確保できなくなるため、撮像レンズの組立てが困難となる。
【0111】
なお、条件式(11′):0.80<D8/f<1.80を満足するようにレンズ系を構成することがより望ましい。この条件式(11′)の上限を満足するようにレンズ系を構成すれば、小型化がさらに容易となる。
【0112】
条件式(12):0.10<D9/f<1.00は、レンズ系のサイズや色収差や光線ケラレに関連するものである。条件式(12)を満足するようにレンズ系を構成すれば、レンズ系の大型化や光線ケラレを発生させることなく色収差を補正することができる。
【0113】
しかしながら、D9/fの値が条件式(12)の上限以上になると、後群の最も物体側の第4レンズL4と物体側から2番目の第5レンズL5の間隔が大きくなり、レンズ系が大型化してしまうと共に色収差の補正が困難となる。また、D9/fの値が条件式(12)の下限以下になると、後群の最も物体側の第4レンズL4と物体側から2番目の第5レンズL5の間隔が小さくなりすぎてしまい、第4レンズと第5レンズをエッジで接触させることになり、レンズのカケなどが発生しやすくなったり、間隔環を入れた際に周辺から入射する光線にケラレが生じてしまう。
【0114】
条件式(13):2.0<f6/IH<4.0は、テレセントリック性や組立性に関連するものである。条件式(13)を満足するようにレンズ系を構成すれば、良好なテレセントリック性と組立性を得ることができる。
【0115】
しかしながら、f6/IHの値が条件式(13)の上限以上になると、周辺から入射した光線の結像面への入射角度が大きくなり、いわゆるテレセントリック性のよいレンズを製作することが困難となる。また、f6/IHの値が条件式(13)の下限以下になると、第6レンズL6のパワーが強くなりすぎて、偏心による性能変化が大きくなるため製造誤差及び組み立て誤差の許容量が少なくなり、組立が難しくなるとともにコストアップの原因となる。
【0116】
前群G1と後群G2を構成するすべてのレンズは、いずれもガラスレンズであることが望ましい。このように、前群および後群を構成する全てのレンズを、いずれもガラスレンズとすることで、レンズ系が厳しい環境下で使用される場合でも、ピントズレを抑えることが可能となる。
【0117】
本実施の形態の撮像レンズが、例えば車載カメラや監視カメラの撮像レンズに適用された場合には、この撮像レンズは広い温度範囲で使用されるためレンズ系を構成する材料はすべてガラスであることが望ましい。
【0118】
第1レンズL1を構成する材料のd線に対する屈折率Nd1は1.7以上であることが望ましい。
【0119】
屈折率Nd1を1.7未満とした場合には、第1レンズL1に強いパワーを持たせるために第1レンズL1の後面であるレンズ面S2の凹形状を深くする加工が難しくなるとともに、周辺部の画像が小さくなるようなディストーションが発生してしまう。
【0120】
第3レンズL3を構成するレンズ材料のd線に対する屈折率Nd3は1.8以上であることが望ましい。
【0121】
第3レンズL3を構成するレンズ材料のd線に対する屈折率Nd3を1.8以上とすることで、第3レンズのパワーを強くすることが容易になると共に、上記レンズ材料としてアッベ数の小さな材質を選ぶことができるため、倍率の色収差の補正に有利である。また、第3レンズのコバを確保することが容易となる。
【0122】
第3レンズL3に適用するレンズ材料のd線に対するアッベ数ν3は40以下であることが望ましい。
【0123】
第3レンズL3に適用するレンズ材料のd線に対するアッベ数ν3を40以下とすることで、倍率の色収差を良好に補正することが可能となる。
【0124】
第3レンズL3に適用するレンズ材料のd線に対するアッベ数ν3を25以下とすることで、倍率の色収差をさらに良好に補正することが可能となる。
【0125】
後群G2の物体側から2番目のレンズ、ここでは第5レンズL5、を構成するレンズ材料のd線に対する屈折率Nd5は1.8以上であることが望ましい。
【0126】
第1レンズL1に適用するレンズ材料のd線に対するアッベ数ν1は75以下であることが望ましい。
【0127】
レンズ材料のアッベ数ν1が75を超えると材料コストが高くなってしまい、レンズ系を安価に提供することが困難となる。
【0128】
なお、この第1レンズL1のレンズ材料のアッベ数ν1は70以下であってもよい。
【0129】
第2レンズL2に適用するレンズ材料のd線に対するアッベ数ν2は75以下であることが望ましい。
【0130】
このレンズ材料のアッベ数ν2が75を超えると材料コストが高くなってしまい、レンズ系を安価に提供することが困難となる。
【0131】
なお、このレンズ材料のアッベ数ν2は70以下としてもよい。
【0132】
後群G2の最も物体側のレンズ、ここでは第4レンズL4、に適用するレンズ材料のd線に対するアッベ数ν4は75以下であることが望ましい。
【0133】
このレンズ材料のアッベ数ν4が75を超えると材料コストが高くなってしまい、レンズ系を安価に提供することが困難となる。
【0134】
なお、このレンズ材料のアッベ数ν4は70以下としてもよい。
【0135】
後群G2の最も像側のレンズ、ここでは第6レンズL6、に適用するレンズ材料のd線に対するアッベ数ν6は75以下であることが望ましい。
【0136】
このレンズ材料のアッベ数ν6が75を超えると材料コストが高くなってしまい、レンズ系を安価にすることが困難となる。
【0137】
なお、このレンズ材料のアッベ数ν6は70以下としてもよい。
【0138】
また、第2レンズは両凹レンズであっても良い。第2レンズを両凹レンズとすることで、レンズ系を広角化することが容易となる。
【0139】
また、第3レンズは物体側に凹面を向けたメニスカス形状や平凹レンズとしても良い。第3レンズを物体側に凹面を向けたメニスカス形状とすることで、像面湾曲とコマ収差を良好に補正することが可能となり、例えば180°を超えるような広い画角のレンズも作製することが容易となる。
【0140】
撮像レンズ20が例えば車載用カメラ等の厳しい環境において使用される場合には、最も物体側に配置される第1レンズL1は、風雨による表面劣化、直射日光による温度変化に強く、さらには油脂・洗剤等の化学薬品に強い材質、すなわち耐水性、耐候性、耐酸性、耐薬品性等の高い材料を用いることが好ましい。また、最も物体側に配置される第1レンズL1には、堅く、割れにくい材料を用いることが好ましい。
【0141】
以上のことから第1レンズL1には、具体的にはガラスを用いることが好ましく、あるいは透明なセラミックスを用いてもよい。セラミックスは通常のガラスに比べて強度が高く、耐熱性が高いという性質を有する。
【0142】
また、第1レンズL1の中心厚D1は、0.8mm以上とすることが望ましい。第1レンズL1の中心厚D1を0.8mm以上とすることで、第1レンズL1を割れにくくすることが可能となる。
【0143】
また、上記のように撮像レンズ20を車載用カメラに適用する場合には、寒冷地の外気から熱帯地方の夏の車内まで広い温度範囲で使用可能なことが要求される。広い温度範囲で使用される場合には、レンズの材料としては線膨張係数の小さいものを用いることが好ましい。車載用カメラ等に適用され、広い温度範囲でも使用可能なことが要求される場合には、全てのレンズを、ガラスレンズとすることが好ましい。
【0144】
また、激しい温度変化、湿度変化により内部に曇りが生じないように、第1レンズに防水構造を施して外界との間の空気や湿気の出入りを遮断するようにしても良い。防水構造としては、第1レンズL1とこの第1レンズL1を収容するレンズ枠を接着して密封構造としても良いし、第1レンズL1とレンズ枠との間にOリングなどを入れて密封構造としても良い。
【0145】
また、レンズ系が激しい温度環境下、湿度環境下で使用される場合にはレンズ系には接合レンズを用いないことが望ましい。本発明の撮像レンズは、全レンズが単レンズとして構成されており、全系において接合レンズを用いない構成となっている。
【0146】
また、安価な撮像レンズを提供するためには、全てのレンズを球面レンズとすることが好ましい。あるいは、性能が重視される場合など、各収差をより良好に補正するためには、非球面レンズを用いてもよい。そして、非球面を精度良く低コストで形成するためには、レンズ材料としてプラスチックを用いてもよい。
【0147】
なお、各レンズ間の有効径外を通過する光束は、迷光となって結像面に達し、ゴーストが発生するおそれがある。そのため、必要に応じて、この迷光を遮光する遮光手段を設けることが好ましい。この遮光手段としては、例えばレンズの像側の有効径外の部分に不透明な塗料を施したり、不透明な板材(例えば図1に示す遮光板Sk1、Sk2)を設けたりしてもよい。または、迷光となる光束の光路に不透明な板材を設けて遮光手段としてもよい。あるいは、最も物体側のレンズのさらに物体側に迷光を遮断するフードのようなものを配置してもよい。一例として、図1では、第1レンズL1の像側のレンズ面S2と第2レンズL2の像側のレンズ面S4に遮光手段Sk1、Sk2をそれぞれ設けた例を示しているが、遮光手段を設ける場所は、図1に示す場所に限定されず、他のレンズ、あるいはレンズ間に配置してもよい。
【0148】
さらに、各レンズの間にFナンバーを決める開口絞りとは別に、周辺光線を遮断する別の絞りを配置してもよい。周辺光線とは、軸外光であってレンズ系の入射瞳内の周縁部を通る光線のことである。周辺光量比が実用上問題の無い範囲となるように周辺光線を遮断することにより、結像面S16の周辺部の画質を向上させることができる。また、この周辺光線の遮断、すなわちゴーストを発生させる光の遮断により、ゴーストを目立たなくすることが可能となる。
【0149】
前記周辺光線を周辺光量比が問題無い範囲で遮断する別の絞りは開口絞りと第4レンズの間に配置することが望ましい。
【0150】
前記周辺光線を周辺光量比が問題無い範囲で遮断する別の絞りは第3レンズと開口絞りの間に配置することが望ましい。
【0151】
第3レンズと開口絞りの間、開口絞りと第4レンズの間は周辺光線と軸外光線が集まっているため、この位置で光線を遮断することで、最外周光線の周辺光量比低下を最小限に抑えながら比較的内側の光線も遮断することが可能となる。そのため前記周辺光線を周辺光量比が実用上問題無い範囲で遮断する別の絞りを第3レンズと開口絞りの間、または開口絞りと第4レンズの間に配置することで、周辺部の画質を向上させることが容易となる。
【0152】
<具体的な実施例>
次に、図2〜図21および表1〜表11を参照し、実施例1〜実施例10の各撮像レンズに係る数値データ等についてまとめて説明する。なお、図2〜図11は、実施例1〜実施例10の撮像レンズそれぞれの概略構成を示す断面図であり、図1中の符号と一致する図2〜11中の符号は、互に対応する構成を示している。
【0153】
また、以下に示す表1〜表11は、実施例1〜実施例10の撮像レンズそれぞれの基本的なデータを示す表である。
【0154】
表1〜表10中の左部(図中符号(a)で示す)にレンズデータを、右部(図中符号(b)で示す)に撮像レンズの概略仕様を示す。
【0155】
表1〜表10中の左部のレンズデータにおいて、レンズ等の光学部材の面番号を物体側から像側に向かうに従い順次増加するi番目(i=1、2、3、…)の面番号として示す。なお、これらのレンズデータには、開口絞りStの面番号(i=7)、および平行平面板である光学部材Cg1の物体側の面と像側の面の面番号(i=14,15)、結像面の面番号(i=16)等も含めて記載している。
【0156】
Riはi番目(i=1、2、3、…)の面の曲率半径を示し、Di(i=1、2、3、…)はi番目の面とi+1番目の面との光軸Z1上の面間隔を示す。なお、レンズデータの曲率半径を示す符号Riは、図1中のレンズ面を示す符号Si(i=1、2、3、…)と対応している。
【0157】
また、各レンズデータ中の、Ndjは物体側から像側に向かうに従い順次増加するj番目(j=1、2、3、…)の光学要素のd線(波長587.6nm)に対する屈折率を示し、νdjはj番目の光学要素のd線に対するアッベ数を示す。
【0158】
また、曲率半径および面間隔の単位はmmであり、曲率半径は物体側に凸の場合を正、像側に凸の場合を負としている。
【0159】
表1〜表10中の右部の概略仕様において、以下の各値を示す。
【0160】
第1レンズの物体側のレンズ面から結像面までの距離:L(in Air)、バックフォーカス:Bf(in Air)、レンズ全系の焦点距離(第1レンズ〜第6レンズの合成焦点距離):f、第1レンズの焦点距離:f1、第2レンズの焦点距離:f2、第3レンズの焦点距離:f3、第4レンズの焦点距離:f4、第5レンズの焦点距離:f5、第6レンズの焦点距離:f6それぞれの値を概略仕様として示す。さらに、第1レンズと第2レンズの合成焦点距離:f12、第4レンズと第5レンズの合成焦点距離:f45、前群の焦点距離:f123、後群の焦点距離:f456、最大像高:IH、それぞれの値を概略仕様として示す。
【0161】
表11は、条件式(1)〜(13)の各パラメータの値を1〜10の各実施例毎に示すものである。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【0162】
図12〜21は、実施例1〜実施例10の撮像レンズそれぞれの諸収差を示す図である。図12〜21それぞれは、各実施例の撮像レンズ毎の、d線(波長587.6nm)、F線(波長486.1nm)、C線(波長656.3nm)についての収差を示している。また、2点鎖線は正弦条件(図中に記号SNCで示す)を表している。
【0163】
なお、ディストーションの図は、全系の焦点距離f、半画角θ(変数扱い、0≦θ≦ω)を用いて、理想像高をf×tanθとし、それからのずれ量を示す。
【0164】
収差図中においてd線(587.6nm)は実線で表示し、F線(486.1nm)は破線で表示し、C線(656.3nm)は1点鎖線で表示している。
【0165】
実施例1〜10の基本的なデータおよび諸収差を示す図等から分かるように、本発明の撮像レンズによれば、レンズそれぞれの形状や材質の最適化を図ることで、レンズ性能を低下させたり製作コストを増大させることなく耐環境性を高めることができる。
【0166】
なお、本発明は、上記実施の形態および各実施例に限定されず種々の変形実施が可能である。例えば、各レンズ成分の曲率半径、面間隔および屈折率の値などは、上記各図中に示した数値に限定されず、他の値を取り得る。
【0167】
図22は、本発明の撮像レンズと、この撮像レンズによって受光面上に結像された光学像を形成する光を受光し電気信号に変換して出力する撮像素子とを備えた、本発明の撮像装置の1例である車載カメラを搭載した自動車を示す図である。
【0168】
図22に示すように、本発明の撮像装置を備えた車載機器502〜504は、自動車501等に搭載して使用することができる。車載機器502は、助手席側の側面の死角範囲を撮像するための車外カメラであり、車載機器503は、自動車501の後側の死角範囲を撮像するための車外カメラである。また、車載機器504は、ルームミラーの背面に取り付けられ、ドライバーと同じ視野範囲を撮影するための車内カメラである。
【符号の説明】
【0169】
10 撮像素子
20 撮像レンズ
100 撮像装置
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
L6 第6レンズ
St 開口絞り
G1 前群
G2 後群
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、負のパワーを持つ前群、絞り、正のパワーを持つ後群を備え、
前記前群が、物体側から順に、像側に凹面を向けた負の第1レンズ、物体側の方が像側よりもレンズ面の曲率半径の絶対値が大きい負の第2レンズ、正の第3レンズを備えたものであり、
前記後群が、物体側から順に、正の第4レンズ、物体側に凹面を向けたメニスカス形状をなす負の第5レンズ、正の第6レンズを備えたものであり、
前記第1レンズ、第2レンズ、第4レンズ、および第6レンズそれぞれのd線に対するアッベ数がいずれも40以上、前記第3レンズおよび第5レンズそれぞれのd線に対するアッベ数がいずれも40以下であり、
前記前群および後群を構成するレンズが、いずれも単レンズであることを特徴とする撮像レンズ。
【請求項2】
物体側から順に、負のパワーを持つ前群、絞り、正のパワーを持つ後群を備え、
前記前群が、物体側から順に、像側に凹面を向けた負の第1レンズ、負の第2レンズ、正の第3レンズを備えたものであり、
前記後群が、2枚の正のレンズと1枚の負のレンズとを備えたものであり、
前記第1レンズおよび第2レンズのd線に対するアッベ数がいずれも45以上、前記第3レンズのd線に対するアッベ数が25以下であり、
前記後群を構成する負のレンズのd線に対するアッベ数が25以下、正のレンズのd線に対するアッベ数が45以上であり、
前記前群および後群を構成するレンズが、いずれも単レンズであり、
前記第1レンズの物体側のレンズ面から撮像レンズの結像面までの距離が18mm以下であることを特徴とする撮像レンズ。
【請求項3】
前記第3レンズが、物体側の方が像側よりもレンズ面の曲率半径の絶対値が小さい両凸形状をなすものであることを特徴とする請求項1または2記載の撮像レンズ。
【請求項4】
前記後群を構成する前記2枚の正のレンズが、いずれも両凸形状をなすものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の撮像レンズ。
【請求項5】
前記第2レンズが、物体側に平面を向けた平凹形状をなすレンズ、もしくは物体側の方が像側よりもレンズ面の曲率半径の絶対値が大きいメニスカスレンズであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の撮像レンズ。
【請求項6】
以下の条件式(1)を満足するものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の撮像レンズ。
0.5<R10/R9<1.0 ・・・(1)
ここで、
R9:前記後群を構成するレンズのうち、最も物体側に位置するレンズにおける像側のレンズ面の曲率半径
R10:前記後群を構成するレンズのうち、最も物体側に位置するレンズの像側に隣り合うレンズにおける物体側のレンズ面の曲率半径
【請求項7】
以下の条件式(2)を満足することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の撮像レンズ。
0.8<|f12/f|<1.8 ・・・(2)
ここで、
f:レンズ全系の焦点距離
f12:第1レンズと第2レンズの合成焦点距離
【請求項8】
以下の条件式(3)を満足することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の撮像レンズ。
1.0<|f123/f456|<2.2 ・・・(3)
ここで、
f123:前記前群の合成焦点距離
f456:前記後群の合成焦点距離
【請求項9】
以下の条件式(4)を満足することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の撮像レンズ。
5<L/f<18 ・・・(4)
ここで、
f:レンズ全系の焦点距離
L:前記第1レンズの物体側のレンズ面から前記撮像レンズの結像面までの距離
【請求項10】
下記条件式(5)を満足することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の撮像レンズ。
0.5<Bf/f<3.0 ・・・(5)
ここで、
f:レンズ全系の焦点距離
Bf:バックフォーカス
【請求項11】
下記条件式(6)を満足することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載の撮像レンズ。
2.0<f45/f<6.5 ・・・(6)
ここで、
f:レンズ全系の焦点距離
f45:前記後群を構成するレンズのうち、最も物体側に位置する互に隣り合う2枚のレンズの合成焦点距離
【請求項12】
前記第1レンズから第6レンズが、いずれもガラスレンズであることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項記載の撮像レンズ。
【請求項13】
前記請求項1から12のいずれか1項記載の撮像レンズと、該撮像レンズにより形成される光学像を電気信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項1】
物体側から順に、負のパワーを持つ前群、絞り、正のパワーを持つ後群を備え、
前記前群が、物体側から順に、像側に凹面を向けた負の第1レンズ、物体側の方が像側よりもレンズ面の曲率半径の絶対値が大きい負の第2レンズ、正の第3レンズを備えたものであり、
前記後群が、物体側から順に、正の第4レンズ、物体側に凹面を向けたメニスカス形状をなす負の第5レンズ、正の第6レンズを備えたものであり、
前記第1レンズ、第2レンズ、第4レンズ、および第6レンズそれぞれのd線に対するアッベ数がいずれも40以上、前記第3レンズおよび第5レンズそれぞれのd線に対するアッベ数がいずれも40以下であり、
前記前群および後群を構成するレンズが、いずれも単レンズであることを特徴とする撮像レンズ。
【請求項2】
物体側から順に、負のパワーを持つ前群、絞り、正のパワーを持つ後群を備え、
前記前群が、物体側から順に、像側に凹面を向けた負の第1レンズ、負の第2レンズ、正の第3レンズを備えたものであり、
前記後群が、2枚の正のレンズと1枚の負のレンズとを備えたものであり、
前記第1レンズおよび第2レンズのd線に対するアッベ数がいずれも45以上、前記第3レンズのd線に対するアッベ数が25以下であり、
前記後群を構成する負のレンズのd線に対するアッベ数が25以下、正のレンズのd線に対するアッベ数が45以上であり、
前記前群および後群を構成するレンズが、いずれも単レンズであり、
前記第1レンズの物体側のレンズ面から撮像レンズの結像面までの距離が18mm以下であることを特徴とする撮像レンズ。
【請求項3】
前記第3レンズが、物体側の方が像側よりもレンズ面の曲率半径の絶対値が小さい両凸形状をなすものであることを特徴とする請求項1または2記載の撮像レンズ。
【請求項4】
前記後群を構成する前記2枚の正のレンズが、いずれも両凸形状をなすものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の撮像レンズ。
【請求項5】
前記第2レンズが、物体側に平面を向けた平凹形状をなすレンズ、もしくは物体側の方が像側よりもレンズ面の曲率半径の絶対値が大きいメニスカスレンズであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の撮像レンズ。
【請求項6】
以下の条件式(1)を満足するものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の撮像レンズ。
0.5<R10/R9<1.0 ・・・(1)
ここで、
R9:前記後群を構成するレンズのうち、最も物体側に位置するレンズにおける像側のレンズ面の曲率半径
R10:前記後群を構成するレンズのうち、最も物体側に位置するレンズの像側に隣り合うレンズにおける物体側のレンズ面の曲率半径
【請求項7】
以下の条件式(2)を満足することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の撮像レンズ。
0.8<|f12/f|<1.8 ・・・(2)
ここで、
f:レンズ全系の焦点距離
f12:第1レンズと第2レンズの合成焦点距離
【請求項8】
以下の条件式(3)を満足することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の撮像レンズ。
1.0<|f123/f456|<2.2 ・・・(3)
ここで、
f123:前記前群の合成焦点距離
f456:前記後群の合成焦点距離
【請求項9】
以下の条件式(4)を満足することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の撮像レンズ。
5<L/f<18 ・・・(4)
ここで、
f:レンズ全系の焦点距離
L:前記第1レンズの物体側のレンズ面から前記撮像レンズの結像面までの距離
【請求項10】
下記条件式(5)を満足することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の撮像レンズ。
0.5<Bf/f<3.0 ・・・(5)
ここで、
f:レンズ全系の焦点距離
Bf:バックフォーカス
【請求項11】
下記条件式(6)を満足することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載の撮像レンズ。
2.0<f45/f<6.5 ・・・(6)
ここで、
f:レンズ全系の焦点距離
f45:前記後群を構成するレンズのうち、最も物体側に位置する互に隣り合う2枚のレンズの合成焦点距離
【請求項12】
前記第1レンズから第6レンズが、いずれもガラスレンズであることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項記載の撮像レンズ。
【請求項13】
前記請求項1から12のいずれか1項記載の撮像レンズと、該撮像レンズにより形成される光学像を電気信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【公開番号】特開2010−160479(P2010−160479A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273449(P2009−273449)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】
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