撮像光学系及び撮像装置
【課題】鮮明な画像及びコンパクトな形態を保持した上で、より広い画角を得ること、確実、かつ簡単に焦点調節をすることが可能な、より安価な撮像光学系を提供すること。
【解決手段】負の屈折力を有する屈折型光学素子群2と、正の屈折力を有する反射型光学素子群3とを備える。前記屈折型光学素子群2を被写体側に配置して回転対称軸S1に沿って移動可能に支持し、前記反射型光学素子群3を光軸Sが折り畳まれて反射するように配置する。
【解決手段】負の屈折力を有する屈折型光学素子群2と、正の屈折力を有する反射型光学素子群3とを備える。前記屈折型光学素子群2を被写体側に配置して回転対称軸S1に沿って移動可能に支持し、前記反射型光学素子群3を光軸Sが折り畳まれて反射するように配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話用、車載用、監視用、工業用等の、被写体を撮像する撮像装置に用いられる撮像光学系及びこの撮像光学系を用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CCDやCMOSといった撮像素子は、携帯電話用、車載用、監視用、工業用等に多く利用されている。これら各用途に組み合わされる光学系は、鮮明な画像であること、小型であること、低価格であること等が要求される。鮮明な画像を得るという点に関しては、低ノイズ光であり、色収差が発生しない反射面を採用することが好ましい。また、小型とする点についても、複数の反射面を光軸が折り畳まれるように配置することにより、レンズ等の屈折光学系に比べて光学系全体をコンパクトにすることができる。
【0003】
反射面の利点を備えた撮像光学系に関連する先行技術文献情報として、例えば、次の特許文献1、2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3043583号公報
【特許文献2】特開2005−62803号公報
【0005】
特許文献1、2には、複数の反射面を利用した反射型光学系の撮像装置が開示されている。このような撮像装置は、低ノイズ光(低フレア、低ゴースト)であって、色収差が発生しない反射面を使用しているため、鮮明な画像を得ることができる。さらに、複数の反射面が光軸を折り畳むように配置されているため、レンズ等の屈折光学系に比べて、撮像装置全体をコンパクトにすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2のような反射型光学系は、撮像装置全体をコンパクトにできるという反面、画角が狭いという問題があった。広い画角を得る手段として入射口を拡げることが挙げられる。ただし、入射口を拡げられる範囲は、入射口と反射面が光線の入射方向で重ならない範囲である。すなわち、入射口と反射面が光線の入射方向で重なってしまうと、重なった反射面に入射した光線が当たり、結像した画像に当たった部分の影が生じてしまうためである。また、この場合、反射面を拡げた入射口に対応させて径方向にずらして配置することで影の発生を防ぐことができるが、このずらした距離分、撮像装置が大きくなってしまう。すなわち、撮像装置の小型化という点を考慮すると、入射口を拡げて広い画角を得る手段には、おのずと限界がある。
【0007】
また、特許文献1、2には、焦点調節の構造について開示されていないが、このような反射型光学系の焦点調節構造として、一般的に用いられている、反射面を前後に移動させて焦点調節を行う全体操出法を用いた場合、繰出機構により撮像装置が大きくなる上に、重くなってしまう。さらに、反射面単体を移動させて焦点調節することが考えられるが、この場合、反射時において画像のずれが生じ、このずれを補正することが困難であった。
【0008】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、鮮明な画像及びコンパクトな形態を保持した上で、より広い画角を得ること、確実、かつ簡単に焦点調節をすること等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明による開閉装置及び開閉装置の基準位置補正方法は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0010】
本発明に係る撮像光学系は、負の屈折力を有する屈折型光学素子群と、正の屈折力を有する反射型光学素子群と、を備え、この屈折型光学素子群は、被写体側に配置されている。
【0011】
前述の反射型光学素子群が複数の反射鏡部材で構成され、この複数の反射鏡部材は、光軸を折り畳むように配置されている。
【0012】
前述の屈折型光学素子群は、アッベ数が異なる複数のレンズ部材である。
【0013】
前述の複数のレンズ部材は、互いに接合されている。
【0014】
前述の屈折型光学素子群は、共通する回転対称軸を有するとともに、この回転対称軸に沿って移動可能に支持されている。
【0015】
前述の撮像光学系を備えた撮像装置であって、この撮像光学系により被写体の光学像が結像される撮像素子を備えている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、鮮明な画像及びコンパクトな形態を保持でき、しかもより広い画角を得ることができるとともに、確実、かつ簡単に焦点調節をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る第1実施形態の撮像光学系を用いた撮像装置の断面図。
【図2】図1の撮像光学系の断面光路を示す模式図(側面視)。
【図3】図1の撮像光学系の断面光路を示す模式図(平面視)。
【図4】第1実施形態の撮像光学系の仕様諸元。
【図5】同、撮像光学系の構成データ。
【図6】同、撮像光学系の横収差。
【図7】第2実施形態の撮像光学系の断面光路を示す模式図(側面視)。
【図8】同、撮像光学系の断面光路を示す模式図(平面視)。
【図9】第2実施形態の撮像光学系の仕様諸元。
【図10】同、撮像光学系の構成データ。
【図11】同、撮像光学系の横収差。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る撮像光学系及び撮像装置の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る撮像光学系を用いた撮像装置の第1実施形態を示す断面図であり、図2及び図3は、図1の撮像光学系の断面光路を示す模式図であり、図2は側面視の光路を示し、図3は平面視の光路を示す。
【0019】
撮像装置Aは、筐体1に、負の屈折力を有する屈折型光学素子群2及び正の屈折力を有する反射型光学素子群3を内蔵してなる撮像光学系Bと、筐体1に内蔵され、撮像光学系Bにより被写体の光学像を結像する撮像素子4を備えている。
【0020】
筐体1は、屈折型光学素子群2を支持するとともに、光線Rを撮像光学系Bに取り込む入射口10と、入射口10から入射する光線Rが撮像素子4に到達するまで確保された光路空間11とが形成されている。入射口10の開口方向は、その軸線が中心の光線Rにおける光軸Sと同軸となる方向である。
【0021】
また、筐体1は、光路空間11の内面で、少なくとも、撮像素子4への反射成分に影響を与える内面を反射防止処理(図示せず)している。この反射防止処理により、反射成分を吸収し、撮像素子4へ到達させないようにしてフレアの低減を図っている。
【0022】
光路空間11内には、被写体に対して赤外光線又は可視光線を照射する光源12が設けられている。光源12は、この光源12からの光線(図示せず)が屈折型光学素子群2に向かうように配置してあり、この光線が屈折型光学素子郡2を通過して被写体(図示せず)に照射されるようにしている。屈折型光学素子郡2を通過する光線の光軸(図示せず)は、屈折型光学素子群2の負の屈折力により広がる方向に拡散するため、被写体に対する照射が広範囲に行われるようになっている。
【0023】
屈折型光学素子群2は、接合された2枚のレンズ部材20、21から構成される素子群である。レンズ部材20は、被写体側に配した平凸レンズであり、レンズ部材21は、撮像素子4側に配した平凹レンズであって、互いの平坦面を重ね合わせて接合することにより、負の屈折力を有した屈折型光学素子群2を構成している。すなわち、屈折型光学素子群2の負の屈折力により、入射する光軸Sを集束する方向に屈折させることができる(図2及び図3参照)。
【0024】
また、レンズ部材20、21同士の接合により空気界面数が減少するため、レンズ部材20、21の表面反射が低減してこの表面反射による光損失が抑制され、鮮明な画像を結像することができる。
【0025】
また、屈折型光学素子群2は、屈折による色収差の補正をするために、夫々、適切に選択された異なるアッベ数のレンズ部材20、21を用いており、この異なるアッベ数のレンズ部材20、21により色収差の補正を行って、赤外光線〜可視光線の広い波長域に亘って良好な画像を得るようにしている。
【0026】
さらに、屈折型光学素子群2は、レンズ部材20、21の回転対称軸S1を共通とするとともに、回転対称軸S1に沿って移動可能に支持されており、この回転対称軸S1に沿う移動により焦点調節を行うようにしている。
【0027】
屈折型光学素子群2の焦点調節構造を具体的に説明する。屈折型光学素子群2は、筐体1の入射口10に対し、入射口10の軸線と同軸として螺合取り付けされたレンズ鏡筒5内に嵌合支持されている。屈折型光学素子群2は、回転対称軸S1がレンズ鏡筒5の軸線に対して同軸線となるように配置され、レンズ鏡筒5の被写体側の内周に螺合されるレンズ押さえリング50により固定されている。レンズ鏡筒5は、入射口10の内周に螺合されるとともに、レンズ鏡筒5の外周に螺合された鏡筒固定リング51により固定されている。
【0028】
このような焦点調節構造によると、鏡筒固定リング51が締め付け螺合しているときには、レンズ鏡筒5が入射口10に対して固定状態である。この固定状態から鏡筒固定リング51を緩める方向(螺合を外す方向)に回転させることにより、レンズ鏡筒5のねじ回転が可能となる。そして、レンズ鏡筒5をねじ回転させることにより、このレンズ鏡筒5の繰出し量を調整して焦点を調節する。焦点調節後には、再度鏡筒固定リング51を締め付け方向に回転させて締め付け螺合することにより、レンズ鏡筒5が入射口10に対して固定状態となる。
【0029】
本実施形態では、入射口10とレンズ鏡筒5及びレンズ鏡筒5と鏡筒固定リング51の螺合に、ヘリコイドねじを用いている。ヘリコイドねじは送り動作が円滑で力も強く、一方送りから逆に戻すときにも「あそび」がないため、焦点調節のような精密な動きが要求される構造に適している。
【0030】
なお、本発明は、焦点調節を行う構成において例示したヘリコイドねじに限られず、ヘリコイドねじ以外の構成による焦点調節が含まれる。
【0031】
本実施形態では、レンズ鏡筒5に固定された屈折型光学素子群2で入射口10を閉塞することにより、光路空間11内への埃等の侵入を防いでいる。この構成により、光路空間11内に面するレンズ部材21の面、反射型光学素子群3、撮像素子4、光源12等の汚れを防ぎ、この汚れによる不鮮明な画像が発生しないようにしている。
【0032】
なお、屈折型光学素子群2は、レンズ部材20、21を接合してなる構成に限られず、レンズ部材20、21を離間させた構成も含まれる。この場合、レンズ部材20、21の表面に、表面反射を抑制するための多層膜コーティングを施すことにより、表面反射による光損失を抑制するとよい(図示せず)。前述の多層膜コーティングは、レンズ部材20、21同士を接合する構成に行ってもよい(図示せず)。
【0033】
反射型光学素子群3は、第1反射鏡部材30、第2反射鏡部材31、第3反射鏡部材32、第4反射鏡部材33の4枚の反射鏡部材から構成される素子群である。各反射鏡部材は、入射口10から入射した光軸Sが、第1反射鏡部材30〜第4反射鏡部材33へ順次折り畳まれるように反射して撮像素子4に到達するように、各反射鏡部材の反射面30A、31A、32A、33Aの反射面中心(中心の光線Rの光軸Sが反射する面)を合わせて配置されている。また、各反射鏡部材は、筐体1に形成された保持部13に、反射面30A、31A、32A、33Aの反射面中心の精度を確保できるように固定して保持されている。
【0034】
本実施形態では、入射口10に最も近い位置の第2反射鏡部材31の一部分を、入射口10と光線Rの入射方向で重なるように配置することにより、撮像装置Aの小型化に貢献している。通常であれば、入射する光線Rが第2反射鏡部材31の一部分に当たるが、本実施形態の撮像光学系Bにおいては、光軸Sが屈折型光学素子群2の負の屈折力により集束する方向に屈折して、重なっている第2反射鏡部材31の一部分をよけて第1反射鏡部材30に到達するようにしている(図2参照)。したがって、第2反射鏡部材31の一部分を、入射口10と光線Rの入射方向で重なるように配置しても結像した画像に影が生じない。
【0035】
本実施形態では、第1反射鏡部材30、第2反射鏡部材31、第4反射鏡部材33の反射面30A、31A、33Aをアナモルフィック非球面とし、第3反射鏡部材32の反射面32Aを球面としている。また、第3反射鏡部材32の反射面32Aは、絞り面を兼用しており、この絞り面によりコントラスト性能の向上を図っている。
【0036】
本実施形態の撮像素子4は、撮像光学系Bを通って撮像素子4に到達した光線を、電気信号に変換するCCDやCMOS等の感光素子である。そして、変換された電気信号は、筐体1に設けられた電気基板14で各種処理されるとともに、表示装置(図示せず)に送信されて画像として表示される。
【0037】
本実施形態の第1反射鏡部材30、第2反射鏡部材31、第4反射鏡部材33のアナモルフィック非球面は、次の数式1で定義される。
【0038】
【数1】
【0039】
ただし、数式1において各係数は次のとおりである。
Rx:面中心におけるX方向の曲率半径 Kx:X方向のコーニック係数
Ry:面中心におけるY方向の曲率半径 Ky:Y方向のコーニック係数
Ay:回転対称成分の4次非球面係数 Ax:非回転対称成分の4次非球面係数
By:回転対称成分の6次非球面係数 Bx:非回転対称成分の6次非球面係数
Cy:回転対称成分の8次非球面係数 Cx:非回転対称成分の8次非球面係数
Dy:回転対称成分の10次非球面係数 Dx:非回転対称成分の10次非球面係数
【0040】
図4は、撮像光学系Bの仕様諸元、図5は、撮像光学系Bの構成データ、図6は、撮像光学系Bの横収差である。
【0041】
本実施形態の撮像装置A及び撮像光学系Bによれば、鮮明な画像及びコンパクトな形態を保持でき、しかもより広い画角を得ることができるとともに、確実、かつ簡単に焦点調節をすることができる。
【0042】
すなわち、入射口10側に配置された負の屈折力を有する屈折型光学素子群2により、広い画角を得ることができ、光路空間11側に配置された正の屈折力を有する反射型光学素子群3により、光軸Sを折り畳みコンパクトな形態にできるとともに、低ノイズ光での鮮明な画像を結像できる。さらに、焦点調節が屈折型光学素子群2の回転対称軸S1に沿う移動によるものであり、しかも、この移動がねじ回転によるものであるので、焦点調節を簡単な構造で、確実に行うことができる上に、全体操出法のように撮像装置Aが大きくなったり、重くなったりするようなことも防ぐことができる。また、レンズ部材20、21におけるアッベ数の適切な選択やレンズ表面への多層膜コーティングにより、屈折面による色収差の補正、フレアの発生を最小限に抑制できる。
【0043】
図7〜図11は、本発明に係る撮像光学系の第2実施形態を示している。図7及び図8は、本実施形態の撮像光学系Cの断面光路を示す模式図である(図7は側面視、図8は平面視)。図9は、撮像光学系Cの仕様諸元、図10は、撮像光学系Cの構成データ、図11は、撮像光学系Cの横収差である。
【0044】
撮像光学系Cは、前述の撮像光学系Bよりも、屈折型光学素子群2及び反射型光学素子群3並びに撮像素子4の外形寸法を小さくして、よりコンパクトな形態にしたものである。これら、屈折型光学素子群2及び反射型光学素子群3並びに撮像素子4の構造は、第1実施形態の撮像光学系Bと同様であるので、同符号を付すことにより説明は省略する。
【0045】
本実施形態の撮像光学系Cによれば、第1実施形態の撮像光学系Bと同様の効果を有する上に、よりコンパクトな形態にできる。そして、第1実施形態の撮像装置Aと同構造、かつより小型の撮像装置(図示せず)に適用することができる。
【0046】
なお、本発明の撮像光学系は、例示したようなカメラ等の撮像装置に用いるのに限られず、プロジェクタ等の投影装置に用いることができる。また、撮像素子は、CCDやCMOSに限られず、これ以外の感光素子とすることができる。また、撮像装置及び撮像光学系は、例示した実施形態に限られず、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【符号の説明】
【0047】
A:撮像装置 B:撮像光学系 C:撮像光学系 2:屈折型光学素子群
3:反射型光学素子群 30〜33:反射鏡部材 20、21:レンズ部材
4:撮像素子 S:光軸 S1:回転対称軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話用、車載用、監視用、工業用等の、被写体を撮像する撮像装置に用いられる撮像光学系及びこの撮像光学系を用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CCDやCMOSといった撮像素子は、携帯電話用、車載用、監視用、工業用等に多く利用されている。これら各用途に組み合わされる光学系は、鮮明な画像であること、小型であること、低価格であること等が要求される。鮮明な画像を得るという点に関しては、低ノイズ光であり、色収差が発生しない反射面を採用することが好ましい。また、小型とする点についても、複数の反射面を光軸が折り畳まれるように配置することにより、レンズ等の屈折光学系に比べて光学系全体をコンパクトにすることができる。
【0003】
反射面の利点を備えた撮像光学系に関連する先行技術文献情報として、例えば、次の特許文献1、2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3043583号公報
【特許文献2】特開2005−62803号公報
【0005】
特許文献1、2には、複数の反射面を利用した反射型光学系の撮像装置が開示されている。このような撮像装置は、低ノイズ光(低フレア、低ゴースト)であって、色収差が発生しない反射面を使用しているため、鮮明な画像を得ることができる。さらに、複数の反射面が光軸を折り畳むように配置されているため、レンズ等の屈折光学系に比べて、撮像装置全体をコンパクトにすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2のような反射型光学系は、撮像装置全体をコンパクトにできるという反面、画角が狭いという問題があった。広い画角を得る手段として入射口を拡げることが挙げられる。ただし、入射口を拡げられる範囲は、入射口と反射面が光線の入射方向で重ならない範囲である。すなわち、入射口と反射面が光線の入射方向で重なってしまうと、重なった反射面に入射した光線が当たり、結像した画像に当たった部分の影が生じてしまうためである。また、この場合、反射面を拡げた入射口に対応させて径方向にずらして配置することで影の発生を防ぐことができるが、このずらした距離分、撮像装置が大きくなってしまう。すなわち、撮像装置の小型化という点を考慮すると、入射口を拡げて広い画角を得る手段には、おのずと限界がある。
【0007】
また、特許文献1、2には、焦点調節の構造について開示されていないが、このような反射型光学系の焦点調節構造として、一般的に用いられている、反射面を前後に移動させて焦点調節を行う全体操出法を用いた場合、繰出機構により撮像装置が大きくなる上に、重くなってしまう。さらに、反射面単体を移動させて焦点調節することが考えられるが、この場合、反射時において画像のずれが生じ、このずれを補正することが困難であった。
【0008】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、鮮明な画像及びコンパクトな形態を保持した上で、より広い画角を得ること、確実、かつ簡単に焦点調節をすること等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明による開閉装置及び開閉装置の基準位置補正方法は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0010】
本発明に係る撮像光学系は、負の屈折力を有する屈折型光学素子群と、正の屈折力を有する反射型光学素子群と、を備え、この屈折型光学素子群は、被写体側に配置されている。
【0011】
前述の反射型光学素子群が複数の反射鏡部材で構成され、この複数の反射鏡部材は、光軸を折り畳むように配置されている。
【0012】
前述の屈折型光学素子群は、アッベ数が異なる複数のレンズ部材である。
【0013】
前述の複数のレンズ部材は、互いに接合されている。
【0014】
前述の屈折型光学素子群は、共通する回転対称軸を有するとともに、この回転対称軸に沿って移動可能に支持されている。
【0015】
前述の撮像光学系を備えた撮像装置であって、この撮像光学系により被写体の光学像が結像される撮像素子を備えている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、鮮明な画像及びコンパクトな形態を保持でき、しかもより広い画角を得ることができるとともに、確実、かつ簡単に焦点調節をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る第1実施形態の撮像光学系を用いた撮像装置の断面図。
【図2】図1の撮像光学系の断面光路を示す模式図(側面視)。
【図3】図1の撮像光学系の断面光路を示す模式図(平面視)。
【図4】第1実施形態の撮像光学系の仕様諸元。
【図5】同、撮像光学系の構成データ。
【図6】同、撮像光学系の横収差。
【図7】第2実施形態の撮像光学系の断面光路を示す模式図(側面視)。
【図8】同、撮像光学系の断面光路を示す模式図(平面視)。
【図9】第2実施形態の撮像光学系の仕様諸元。
【図10】同、撮像光学系の構成データ。
【図11】同、撮像光学系の横収差。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る撮像光学系及び撮像装置の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る撮像光学系を用いた撮像装置の第1実施形態を示す断面図であり、図2及び図3は、図1の撮像光学系の断面光路を示す模式図であり、図2は側面視の光路を示し、図3は平面視の光路を示す。
【0019】
撮像装置Aは、筐体1に、負の屈折力を有する屈折型光学素子群2及び正の屈折力を有する反射型光学素子群3を内蔵してなる撮像光学系Bと、筐体1に内蔵され、撮像光学系Bにより被写体の光学像を結像する撮像素子4を備えている。
【0020】
筐体1は、屈折型光学素子群2を支持するとともに、光線Rを撮像光学系Bに取り込む入射口10と、入射口10から入射する光線Rが撮像素子4に到達するまで確保された光路空間11とが形成されている。入射口10の開口方向は、その軸線が中心の光線Rにおける光軸Sと同軸となる方向である。
【0021】
また、筐体1は、光路空間11の内面で、少なくとも、撮像素子4への反射成分に影響を与える内面を反射防止処理(図示せず)している。この反射防止処理により、反射成分を吸収し、撮像素子4へ到達させないようにしてフレアの低減を図っている。
【0022】
光路空間11内には、被写体に対して赤外光線又は可視光線を照射する光源12が設けられている。光源12は、この光源12からの光線(図示せず)が屈折型光学素子群2に向かうように配置してあり、この光線が屈折型光学素子郡2を通過して被写体(図示せず)に照射されるようにしている。屈折型光学素子郡2を通過する光線の光軸(図示せず)は、屈折型光学素子群2の負の屈折力により広がる方向に拡散するため、被写体に対する照射が広範囲に行われるようになっている。
【0023】
屈折型光学素子群2は、接合された2枚のレンズ部材20、21から構成される素子群である。レンズ部材20は、被写体側に配した平凸レンズであり、レンズ部材21は、撮像素子4側に配した平凹レンズであって、互いの平坦面を重ね合わせて接合することにより、負の屈折力を有した屈折型光学素子群2を構成している。すなわち、屈折型光学素子群2の負の屈折力により、入射する光軸Sを集束する方向に屈折させることができる(図2及び図3参照)。
【0024】
また、レンズ部材20、21同士の接合により空気界面数が減少するため、レンズ部材20、21の表面反射が低減してこの表面反射による光損失が抑制され、鮮明な画像を結像することができる。
【0025】
また、屈折型光学素子群2は、屈折による色収差の補正をするために、夫々、適切に選択された異なるアッベ数のレンズ部材20、21を用いており、この異なるアッベ数のレンズ部材20、21により色収差の補正を行って、赤外光線〜可視光線の広い波長域に亘って良好な画像を得るようにしている。
【0026】
さらに、屈折型光学素子群2は、レンズ部材20、21の回転対称軸S1を共通とするとともに、回転対称軸S1に沿って移動可能に支持されており、この回転対称軸S1に沿う移動により焦点調節を行うようにしている。
【0027】
屈折型光学素子群2の焦点調節構造を具体的に説明する。屈折型光学素子群2は、筐体1の入射口10に対し、入射口10の軸線と同軸として螺合取り付けされたレンズ鏡筒5内に嵌合支持されている。屈折型光学素子群2は、回転対称軸S1がレンズ鏡筒5の軸線に対して同軸線となるように配置され、レンズ鏡筒5の被写体側の内周に螺合されるレンズ押さえリング50により固定されている。レンズ鏡筒5は、入射口10の内周に螺合されるとともに、レンズ鏡筒5の外周に螺合された鏡筒固定リング51により固定されている。
【0028】
このような焦点調節構造によると、鏡筒固定リング51が締め付け螺合しているときには、レンズ鏡筒5が入射口10に対して固定状態である。この固定状態から鏡筒固定リング51を緩める方向(螺合を外す方向)に回転させることにより、レンズ鏡筒5のねじ回転が可能となる。そして、レンズ鏡筒5をねじ回転させることにより、このレンズ鏡筒5の繰出し量を調整して焦点を調節する。焦点調節後には、再度鏡筒固定リング51を締め付け方向に回転させて締め付け螺合することにより、レンズ鏡筒5が入射口10に対して固定状態となる。
【0029】
本実施形態では、入射口10とレンズ鏡筒5及びレンズ鏡筒5と鏡筒固定リング51の螺合に、ヘリコイドねじを用いている。ヘリコイドねじは送り動作が円滑で力も強く、一方送りから逆に戻すときにも「あそび」がないため、焦点調節のような精密な動きが要求される構造に適している。
【0030】
なお、本発明は、焦点調節を行う構成において例示したヘリコイドねじに限られず、ヘリコイドねじ以外の構成による焦点調節が含まれる。
【0031】
本実施形態では、レンズ鏡筒5に固定された屈折型光学素子群2で入射口10を閉塞することにより、光路空間11内への埃等の侵入を防いでいる。この構成により、光路空間11内に面するレンズ部材21の面、反射型光学素子群3、撮像素子4、光源12等の汚れを防ぎ、この汚れによる不鮮明な画像が発生しないようにしている。
【0032】
なお、屈折型光学素子群2は、レンズ部材20、21を接合してなる構成に限られず、レンズ部材20、21を離間させた構成も含まれる。この場合、レンズ部材20、21の表面に、表面反射を抑制するための多層膜コーティングを施すことにより、表面反射による光損失を抑制するとよい(図示せず)。前述の多層膜コーティングは、レンズ部材20、21同士を接合する構成に行ってもよい(図示せず)。
【0033】
反射型光学素子群3は、第1反射鏡部材30、第2反射鏡部材31、第3反射鏡部材32、第4反射鏡部材33の4枚の反射鏡部材から構成される素子群である。各反射鏡部材は、入射口10から入射した光軸Sが、第1反射鏡部材30〜第4反射鏡部材33へ順次折り畳まれるように反射して撮像素子4に到達するように、各反射鏡部材の反射面30A、31A、32A、33Aの反射面中心(中心の光線Rの光軸Sが反射する面)を合わせて配置されている。また、各反射鏡部材は、筐体1に形成された保持部13に、反射面30A、31A、32A、33Aの反射面中心の精度を確保できるように固定して保持されている。
【0034】
本実施形態では、入射口10に最も近い位置の第2反射鏡部材31の一部分を、入射口10と光線Rの入射方向で重なるように配置することにより、撮像装置Aの小型化に貢献している。通常であれば、入射する光線Rが第2反射鏡部材31の一部分に当たるが、本実施形態の撮像光学系Bにおいては、光軸Sが屈折型光学素子群2の負の屈折力により集束する方向に屈折して、重なっている第2反射鏡部材31の一部分をよけて第1反射鏡部材30に到達するようにしている(図2参照)。したがって、第2反射鏡部材31の一部分を、入射口10と光線Rの入射方向で重なるように配置しても結像した画像に影が生じない。
【0035】
本実施形態では、第1反射鏡部材30、第2反射鏡部材31、第4反射鏡部材33の反射面30A、31A、33Aをアナモルフィック非球面とし、第3反射鏡部材32の反射面32Aを球面としている。また、第3反射鏡部材32の反射面32Aは、絞り面を兼用しており、この絞り面によりコントラスト性能の向上を図っている。
【0036】
本実施形態の撮像素子4は、撮像光学系Bを通って撮像素子4に到達した光線を、電気信号に変換するCCDやCMOS等の感光素子である。そして、変換された電気信号は、筐体1に設けられた電気基板14で各種処理されるとともに、表示装置(図示せず)に送信されて画像として表示される。
【0037】
本実施形態の第1反射鏡部材30、第2反射鏡部材31、第4反射鏡部材33のアナモルフィック非球面は、次の数式1で定義される。
【0038】
【数1】
【0039】
ただし、数式1において各係数は次のとおりである。
Rx:面中心におけるX方向の曲率半径 Kx:X方向のコーニック係数
Ry:面中心におけるY方向の曲率半径 Ky:Y方向のコーニック係数
Ay:回転対称成分の4次非球面係数 Ax:非回転対称成分の4次非球面係数
By:回転対称成分の6次非球面係数 Bx:非回転対称成分の6次非球面係数
Cy:回転対称成分の8次非球面係数 Cx:非回転対称成分の8次非球面係数
Dy:回転対称成分の10次非球面係数 Dx:非回転対称成分の10次非球面係数
【0040】
図4は、撮像光学系Bの仕様諸元、図5は、撮像光学系Bの構成データ、図6は、撮像光学系Bの横収差である。
【0041】
本実施形態の撮像装置A及び撮像光学系Bによれば、鮮明な画像及びコンパクトな形態を保持でき、しかもより広い画角を得ることができるとともに、確実、かつ簡単に焦点調節をすることができる。
【0042】
すなわち、入射口10側に配置された負の屈折力を有する屈折型光学素子群2により、広い画角を得ることができ、光路空間11側に配置された正の屈折力を有する反射型光学素子群3により、光軸Sを折り畳みコンパクトな形態にできるとともに、低ノイズ光での鮮明な画像を結像できる。さらに、焦点調節が屈折型光学素子群2の回転対称軸S1に沿う移動によるものであり、しかも、この移動がねじ回転によるものであるので、焦点調節を簡単な構造で、確実に行うことができる上に、全体操出法のように撮像装置Aが大きくなったり、重くなったりするようなことも防ぐことができる。また、レンズ部材20、21におけるアッベ数の適切な選択やレンズ表面への多層膜コーティングにより、屈折面による色収差の補正、フレアの発生を最小限に抑制できる。
【0043】
図7〜図11は、本発明に係る撮像光学系の第2実施形態を示している。図7及び図8は、本実施形態の撮像光学系Cの断面光路を示す模式図である(図7は側面視、図8は平面視)。図9は、撮像光学系Cの仕様諸元、図10は、撮像光学系Cの構成データ、図11は、撮像光学系Cの横収差である。
【0044】
撮像光学系Cは、前述の撮像光学系Bよりも、屈折型光学素子群2及び反射型光学素子群3並びに撮像素子4の外形寸法を小さくして、よりコンパクトな形態にしたものである。これら、屈折型光学素子群2及び反射型光学素子群3並びに撮像素子4の構造は、第1実施形態の撮像光学系Bと同様であるので、同符号を付すことにより説明は省略する。
【0045】
本実施形態の撮像光学系Cによれば、第1実施形態の撮像光学系Bと同様の効果を有する上に、よりコンパクトな形態にできる。そして、第1実施形態の撮像装置Aと同構造、かつより小型の撮像装置(図示せず)に適用することができる。
【0046】
なお、本発明の撮像光学系は、例示したようなカメラ等の撮像装置に用いるのに限られず、プロジェクタ等の投影装置に用いることができる。また、撮像素子は、CCDやCMOSに限られず、これ以外の感光素子とすることができる。また、撮像装置及び撮像光学系は、例示した実施形態に限られず、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【符号の説明】
【0047】
A:撮像装置 B:撮像光学系 C:撮像光学系 2:屈折型光学素子群
3:反射型光学素子群 30〜33:反射鏡部材 20、21:レンズ部材
4:撮像素子 S:光軸 S1:回転対称軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負の屈折力を有する屈折型光学素子群と、
正の屈折力を有する反射型光学素子群と、
を備え、
前記屈折型光学素子群は、被写体側に配置されている撮像光学系。
【請求項2】
前記反射型光学素子群が複数の反射鏡部材で構成され、前記複数の反射鏡部材は、光軸を折り畳むように配置されている請求項1記載の撮像光学系。
【請求項3】
前記屈折型光学素子群は、アッベ数が異なる複数のレンズ部材である請求項1又は2記載の撮像光学系。
【請求項4】
前記複数のレンズ部材は、互いに接合されている請求項3記載の撮像光学系。
【請求項5】
前記屈折型光学素子群は、共通する回転対称軸を有するとともに、該回転対称軸に沿って移動可能に支持されている請求項1ないし4いずれか1項記載の撮像光学系。
【請求項6】
前記請求項1ないし5いずれか記載の撮像光学系を備えた撮像装置であって、該撮像光学系により被写体の光学像が結像される撮像素子を備えていることを特徴とする撮像装置。
【請求項1】
負の屈折力を有する屈折型光学素子群と、
正の屈折力を有する反射型光学素子群と、
を備え、
前記屈折型光学素子群は、被写体側に配置されている撮像光学系。
【請求項2】
前記反射型光学素子群が複数の反射鏡部材で構成され、前記複数の反射鏡部材は、光軸を折り畳むように配置されている請求項1記載の撮像光学系。
【請求項3】
前記屈折型光学素子群は、アッベ数が異なる複数のレンズ部材である請求項1又は2記載の撮像光学系。
【請求項4】
前記複数のレンズ部材は、互いに接合されている請求項3記載の撮像光学系。
【請求項5】
前記屈折型光学素子群は、共通する回転対称軸を有するとともに、該回転対称軸に沿って移動可能に支持されている請求項1ないし4いずれか1項記載の撮像光学系。
【請求項6】
前記請求項1ないし5いずれか記載の撮像光学系を備えた撮像装置であって、該撮像光学系により被写体の光学像が結像される撮像素子を備えていることを特徴とする撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−107594(P2011−107594A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265005(P2009−265005)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】
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