説明

撮像装置、および画像処理方法、並びにプログラム

【課題】ワンショット型の広ダイナミックレンジ撮影画像に対する高精度なブルーミング補正を実現する装置、方法を提供する。
【解決手段】高感度画素信号と低感度画素信号を出力する撮像素子からの出力画素信号を入力して、画素信号のブルーミング補正を実行する。補正処理部は、撮像素子からの入力画素値と、ブルーミングの影響のない理想画素値との差分または比率に応じて、入力画素の画素値補正を実行する。例えば、補正対象画素の近傍画素からの電荷漏れに相当するブルーミング量を、低感度画素信号を利用して推定し、推定したブルーミング量を入力画素値から減算する。具体的には、数式モデルやLUTを適用した処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像装置、および画像処理方法、並びにプログラムに関する。さらに詳細には、例えばブルーミングによる画像劣化の補正を行う撮像装置、および画像処理方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビデオカメラやデジタルスチルカメラなどの固体撮像素子としてCCDイメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが用いられている。これらのイメージセンサは、画素数の増加やサイズ縮小が急激に進んでいる。
【0003】
しかし、このような画素数の増加やサイズ縮小に伴い、撮像素子における隣接画素との間隔が小さくなり、画素間の電荷漏れ、いわゆるブルーミングという新たな問題が発生している。
ブルーミングとは、隣接する画素間において、一方の画素が飽和状態となり電荷が溢れ出し、溢れ出した電荷が隣接する画素に漏れ込む現象である。
【0004】
図1を参照して、ブルーミングの現象について説明する。
隣接する画素の一方に強い光が入射し、他方に弱い光が入射し、強い光が入射している受光部1が飽和状態となっている場合、受光部1に入射した光によって発生した電荷が受光部1に蓄積されず、その一部が隣接する受光部2に漏れ込む。この現象をブルーミングと呼ぶ。
【0005】
ここでは、
電荷溢れを発生させる画素、すなわちブルーミング発生画素をAggressor画素、
Aggressor画素から溢れた電荷を蓄積してしまう画素、すなわちブルーミング受容画素をVictim画素、
として画素を区別する。
【0006】
このようなブルーミングが発生すると、
電荷溢れを発生させる画素、すなわちブルーミングを発生させるAggressor画素の画素値は飽和値となり、一方、溢れた電荷を蓄積してしまう画素、すなわちブルーミングを受けるVictim画素の画素値は、溢れ電荷による誤った画素値に設定される。
【0007】
図2は、ブルーミングによるAggressor画素とVictim画素の蓄積電荷の推移を説明する図である。
隣接するAggressor画素とVictim画素に光が入射したときの電荷量の時間変化を示している。
時間t1において、Aggressor画素が飽和し、電荷溢れを発生させている。この溢れた電荷が隣接するVictim画素に流れこみ、Victim画素の蓄積電荷量を変動させている。
図に示すVictim画素に対応する点線がブルーミングのない場合の正常な蓄積電荷の推移であり、実線がブルーミングによって変動した蓄積電荷の推移を示している。
【0008】
入射する光の波長とカラーフィルタの特性によって、隣接する画素毎に感度は異なっているが、感度の強い画素(Aggressor)が飽和すると、感度の弱い画素(Victim)は影響を受ける。
入射する光が一定の時、電荷量の変化は線形性を持つはずであるが、Victim画素はブルーミングの影響により、非線形性を持つ。結果として、画像に着色が起こるなどの問題が起こる。
一般に、ブルーミングの影響は画像の飽和付近で発生するため、飽和付近の色成分を薄くするような対策処理によってブルーミングの影響を目立たせなくする手法が取られることもある。
【0009】
このブルーミングに対する対策の一例が、例えば特許文献1(特開2008−294698)に記載されている。
特許文献1(特開2008−294698)は、広ダイナミックレンジ画像の撮影画像に対するブルーミング対策について説明している。
【0010】
広ダイナミックレンジ画像について簡単に説明する。撮像装置による画像撮影環境は、屋内や野外、昼間や夜間といった多様な環境が想定され、このような様々な環境下で撮像素子(イメージセンサ)を使用する場合、撮影環境の明るさに応じて、光電変換素子の電荷蓄積時間の制御、すなわち露光時間を調整し、感度を最適値にする必要がある。
【0011】
例えば、明るい環境では露光時間を短くし、暗い環境では露光時間を長くすることで、画素値の飽和や感度不足等の発生を抑制して各画素から有効画素値を出力させることができる。
【0012】
しかし、例えば明るい被写体と暗い被写体が混在する画像を撮影する場合に、ある一定の露光時間で撮影を行うと、明るい被写体の撮影画素は電荷の蓄積が早く飽和しやすくなる。しかし、暗い被写体の撮影画素は十分な電荷の蓄積がなされないといったアンバランスが発生することがある。
【0013】
明るい被写体から暗い被写体まで有効画素値を出力させるための手法がダイナミックレンジの拡大処理であり、このような画像の撮像処理は、高ダイナミックレンジ(HDR:High Dynamic Range)撮像、あるいは、広ダイナミックレンジ(WDR:Wide Dynamic Range)撮像などと呼ばれる。
【0014】
以下、明るい被写体から暗い被写体まで有効画素値を出力させるための画像撮影手法をHDR画像撮影手法として説明する。
HDR画像撮影手法として、以下の2つの手法が提案されている。
(手法1)マルチショット手法:複数の異なる露光時間で連続撮影した複数の画像を利用し、長時間露光画像と短時間露光画像との合成処理によってダイナミックレンジ拡大画像を生成する手法。
(手法2)ワンショット手法:複数の画像の連続撮影を行うことなく、例えば画素配列の行単位に異なる露光時間を設定し、1枚の画像に含まれる長時間露光画素と短時間露光画素を合成してダイナミックレンジ拡大画像を生成する手法。
【0015】
マルチショット手法については、例えば特許文献2(特開平2−174470号公報)、特許文献3(特開平7−95481号公報)、特許文献4(特開平11−75118号公報)等に記載がある。
具体的には、図3に示すように、露光時間の短い短時間露光画像(低感度画像)と、露光時間の長い長時間露光画像(高感度画像)をフレームごとに交互に撮像する。
これらの異なる露光時間の撮影画像をフレームメモリに蓄積し、各画像から有効画素値を選択取得するなどの信号処理を実行する。例えば明るい被写体領域については短時間露光画像(低感度画像)の画素値を優先取得し、暗い被写体領域については長時間露光画像(高感度画像)の画素値を優先取得するなどの信号処理によってダイナミックレンジの高い画像を生成する。
【0016】
前述の特許文献1(特開2008−294698号公報)には、このようなマルチショットによるHDR画像に対するブルーミング補正処理について説明している。
図4には、マルチショットによって連続撮影された、
(a)短時間露光画像
(b)長時間露光画像
を示している。
特許文献1(特開2008−294698号公報)は、この図4に示すように、1つの画像すべてが同じ露光時間、すなわち隣接する画素の露光時間がすべて等しい中でのブルーミング補正について説明するものである。
長時間露光画素の隣接画素間で起こるブルーミングの量を、短時間露光画像の画素値を利用して推定して、この推定に基づいて長時間露光画像の画素値の補正を行う構成を開示している。
【0017】
長時間露光画像においてブルーミングが発生している場合でも、連続撮影される短時間露光画像では、露光時間が十分に短いため、飽和やブルーミングなどの非線形性を持っていない。
この特徴により、マルチショットによるHDR撮像画像の場合、短時間露光画像の画素値に基づいて、長時間露光画像の隣接画素間で発生するブルーミングの量を推定し、この推定値に基づいて長時間露光画素の補正を行うことが可能となる。
特許文献1(特開2008−294698号公報)は、このようなマルチショットによるHDR画像に対するブルーミング補正処理について説明している。
【0018】
しかし、この特許文献1(特開2008−294698号公報)に記載のブルーミング補正処理は、前述のHDR画像撮影手法の(手法2)ワンショット手法によって撮影された画像に対しては適用できない。
(手法2)ワンショット手法は、複数の画像の連続撮影を行うことなく、例えば画素配列の行単位に異なる露光時間を設定し、1枚の画像に含まれる長時間露光画素と短時間露光画素を合成してダイナミックレンジ拡大画像を生成する手法である。
【0019】
なお、ワンショット手法によるHD画像の撮影処理については、例えば、特許文献5(特開2006−253876号公報)、特許文献6(特願2006−542337号公報)等に記載されている。
【0020】
このワンショット手法による撮影画像は、1枚の画像内に長時間露光画素と短時間露光画素が混在することになる。
従って、図4に示すような、
(a)短時間露光画像
(b)長時間露光画像
これらの2つの画像を用いた処理ができない。
【0021】
例えば1枚の撮影画像は、図5に示すように、短時間露光画素である低感度画素と、長時間露光画素である高感度画素が混在する画像となる。
このように、ワンショット手法による撮影画像では、複数の感度の画素が混在し、このような画像には、ブルーミングは極めて複雑な形態で発生する。
【0022】
すなわち、このような画像では、
・長時間露光画素から長時間露光画素へのブルーミング
・短時間露光画素から短時間露光画素へのブルーミング
のみならず、さらに、
・長時間露光画素から短時間露光画素へのブルーミング、
・短時間露光画素から長時間露光画素へのブルーミング、
これらの様々な画素間のブルーミングが発生する。したがってブルーミング補正は、これらのブルーミング発生形態を考慮して、補正することが必要となる。
【0023】
先に説明した特許文献1(特開2008−294698)は、マルチショットによるHDR撮像画像に対して、ブルーミングの影響を受けていない短時間露光画像を利用して、ブルーミングの補正量を推定していた。
しかし、ワンショットによるHDR撮像画像の場合、ブルーミングの影響を受けていない短時間露光画像を利用してブルーミング補正を行わなければならないため、補正量の誤差を小さくするための処理等が必要となる。
【0024】
なお、特許文献7(特開2008−147818号公報)は、信号処理ではなく、イメージセンサの読み出しタイミング制御を変えることで、ブルーミングの発生を最小限にする方法を開示している。
この方法では、画像の位置によって読み出しタイミングが不連続であるため、連続したデータにするためにはフレームメモリなどを必要とする。さらに、露光時間を変化させようとした場合、露光時間に応じて、データの読み出しタイミングが変化し、後段の信号処理のための制御が困難となるという問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開2008−294698号公報
【特許文献2】特開平2−174470号公報
【特許文献3】特開平7−95481号公報
【特許文献4】特開平11−75118号公報
【特許文献5】特開2006−253876号公報
【特許文献6】特願2006−542337号公報
【特許文献7】特開2008−147818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本開示は、例えば上記の問題点に鑑みてなされたものであり、画素間の電荷漏れによるブルーミングの補正処理を実行する撮像装置、および画像処理方法、並びにプログラムを提供することを目的とする。
【0027】
本開示は、例えば1つの撮影画像に基づいて生成されるワンショット型の広ダイナミックレンジ(HDR)画像を生成する撮像装置に適したブルーミング補正処理を実行する撮像装置、および画像処理方法、並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本開示の第1の側面は、
長時間露光画素からの高感度画素信号と短時間露光画素からの低感度画素信号を出力する撮像素子と、
前記撮像素子からの出力画素信号を入力して、画素信号のブルーミング補正を実行するブルーミング補正処理部を有し、
前記ブルーミング補正処理部は、
前記撮像素子からの入力画素値と、ブルーミングの影響のない理想画素値との差分または比率に応じて、前記撮像素子からの入力画素の画素値補正を実行する撮像装置にある。
【0029】
さらに、本開示の撮像装置の一実施態様において、前記ブルーミング補正処理部は、ブルーミング補正対象となる注目画素の近傍画素からの電荷漏れに相当するブルーミング量を、前記撮像素子から入力する低感度画素信号を利用して推定するブルーミング量推定部と、前記ブルーミング量推定部の推定したブルーミング量を前記撮像素子からの入力画素値から減算する演算部を有する。
【0030】
さらに、本開示の撮像装置の一実施態様において、前記ブルーミング補正処理部は、ブルーミング補正対象となる注目画素の近傍画素からの電荷漏れに相当するブルーミング量を、撮像素子の画素配列と、撮像素子の高感度画素と低感度画素の露光制御パターンとを考慮した数式モデルに基づいて算出するブルーミング量推定部を有する。
【0031】
さらに、本開示の撮像装置の一実施態様において、前記ブルーミング補正処理部は、ブルーミング補正対象となる注目画素の画素位置に対応する各色の高感度画素値および低感度画素値を生成する信号生成部と、前記信号生成部の生成した信号を入力して前記注目画素のブルーミング補正を実行する補正処理部を有する。
【0032】
さらに、本開示の撮像装置の一実施態様において、前記ブルーミング補正処理部は、前記撮像素子からの入力画素値と、ブルーミングの影響のない理想画素値とを対応付けたテーブルを適用して、前記撮像素子からの入力画素の画素値補正を実行する。
【0033】
さらに、本開示の撮像装置の一実施態様において、前記ブルーミング補正処理部は、前記撮像素子からの入力画素値と、該入力画素値とブルーミングの影響のない理想画素値との差分とを対応付けたテーブルを適用して、前記撮像素子からの入力画素に含まれるブルーミング量を推定する。
【0034】
さらに、本開示の撮像装置の一実施態様において、前記ブルーミング補正処理部は、ブルーミング補正対象となる注目画素の近傍画素からの電荷漏れに相当するブルーミング量を、前記撮像素子から入力する低感度画素信号を利用して推定するブルーミング量推定部と、前記ブルーミング量推定部の推定したブルーミング量に、予め規定した減衰パラメータを乗算して減衰ブルーミング量を算出する乗算部と、前記乗算部の算出した減衰ブルーミング量を前記撮像素子からの入力画素値から減算する演算部を有する。
【0035】
さらに、本開示の撮像装置の一実施態様において、前記ブルーミング補正処理部は、ブルーミング補正対象となる注目画素の近傍画素からの電荷漏れに相当するブルーミング量を、前記撮像素子から入力する低感度画素信号を利用して推定し、さらに、該推定結果に基づいてブルーミング量を減算した低感度画素信号を利用して、再度、ブルーミング量の推定を実行する構成を有する。
【0036】
さらに、本開示の撮像装置の一実施態様において、前記ブルーミング補正処理部は、ブルーミング補正対象となる注目画素が動き領域であるか否かを判定する動き検出部を有し、前記動き検出部の検出情報に応じてブルーミング補正態様を変更する構成を有する。
【0037】
さらに、本開示の撮像装置の一実施態様において、前記ブルーミング補正処理部は、ブルーミング補正対象となる注目画素がエッジ領域であるか否かを判定するエッジ検出部を有し、前記エッジ検出部の検出情報に応じてブルーミング補正態様を変更する構成を有する。
【0038】
さらに、本開示の撮像装置の一実施態様において、前記ブルーミング補正処理部は、ブルーミング補正対象となる注目画素が動き領域またはエッジ領域である場合、該注目画素に対応する推定ブルーミング量を減少させる過補正対策部を有する。
【0039】
さらに、本開示の撮像装置の一実施態様において、前記ブルーミング補正処理部は、入力画素値が飽和しているか否かを判定し、飽和値である場合にはブルーミング補正を実行しない構成である。
【0040】
さらに、本開示の撮像装置の一実施態様において、前記撮像装置は、さらに、前記ブルーミング補正処理部の生成したブルーミング補正画像を入力して広ダイナミックレンジ画像を生成する広ダイナミックレンジ(HDR)画像生成部を有する。
【0041】
さらに、本開示の第2の側面は、
長時間露光画素からの高感度画素信号と短時間露光画素からの低感度画素信号を出力する撮像素子と、
前記撮像素子からの出力画素信号を入力して、画素信号の補正を実行する補正処理部を有し、
前記補正処理部は、
前記撮像素子からの入力画素値と、前記撮像素子に対する入射光量と出力値との理想的な線形特性に従った理想画素値との差分または比率に応じて、前記撮像素子からの入力画素の画素値補正を実行する撮像装置にある。
【0042】
さらに、本開示の撮像装置の一実施態様において、前記補正処理部は、前記撮像素子からの入力画素値に含まれる非線形特性を、前記理想的な線形特性に従った理想画素値を適用して補正する。
【0043】
さらに、本開示の撮像装置の一実施態様において、前記補正処理部は、複数回の撮影処理によって取得した前記撮像素子の前記理想画素値、または、該理想画素値に基づく補正画素値算出に適用するルックアップテーブル(LUT)を記憶部から取得して画素値補正を実行する。
【0044】
さらに、本開示の第3の側面は、
撮像装置において実行する画像処理方法であり、
前記撮像装置は、長時間露光画素からの高感度画素信号と短時間露光画素からの低感度画素信号を出力する撮像素子と、
前記撮像素子からの出力画素信号を入力して、画素信号のブルーミング補正を実行するブルーミング補正処理部を有し、
前記ブルーミング補正処理部において、
前記撮像素子からの入力画素値と、ブルーミングの影響のない理想画素値との差分または比率に応じて、前記撮像素子からの入力画素の画素値補正を実行する画像処理方法にある。
【0045】
さらに、本開示の第4の側面は、
撮像装置において画像処理を実行させるプログラムであり、
前記撮像装置は、長時間露光画素からの高感度画素信号と短時間露光画素からの低感度画素信号を出力する撮像素子と、
前記撮像素子からの出力画素信号を入力して、画素信号のブルーミング補正を実行するブルーミング補正処理部を有し、
前記ブルーミング補正処理部に、前記撮像素子からの入力画素値と、ブルーミングの影響のない理想画素値との差分または比率に応じて、前記撮像素子からの入力画素の画素値補正を実行させるプログラムにある。
【0046】
なお、本開示のプログラムは、例えば、様々なプログラム・コードを実行可能な情報処理装置やコンピュータ・システムに対して例えば記憶媒体によって提供されるプログラムである。このようなプログラムを情報処理装置やコンピュータ・システム上のプログラム実行部で実行することでプログラムに応じた処理が実現される。
【0047】
本開示のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本開示の実施例や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。なお、本明細書においてシステムとは、複数の装置の論理的集合構成であり、各構成の装置が同一筐体内にあるものには限らない。
【発明の効果】
【0048】
本開示の一実施例によれば、ワンショット型の広ダイナミックレンジ撮影画像に対する高精度なブルーミング補正を実現する装置、方法が実現される。
具体的には、高感度画素信号と低感度画素信号を出力する撮像素子からの出力画素信号を入力して、画素信号のブルーミング補正を実行する。補正処理部は、撮像素子からの入力画素値と、ブルーミングの影響のない理想画素値との差分または比率に応じて、入力画素の画素値補正を実行する。例えば、補正対象画素の近傍画素からの電荷漏れに相当するブルーミング量を、低感度画素信号を利用して推定し、推定したブルーミング量を入力画素値から減算する。具体的には、数式モデルやLUTを適用した処理を行う。
本開示の構成によれば、ブルーミングを被った画素のブルーミング量を抑圧することによって、ブルーミングによる非線形性補正し、正しい色再現や、画像の階調を正確に表現でき、画質を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】ブルーミングの発生原理について説明する図である。
【図2】ブルーミングによるAggressor画素とVictim画素の蓄積電荷の推移について説明する図である。
【図3】露光時間の短い短時間露光画像(低感度画像)と、露光時間の長い長時間露光画像(高感度画像)をフレームごとに交互に撮像する処理シーケンスについて説明する図である。
【図4】マルチショットによって連続撮影された短時間露光画像と長時間露光画像に対するブルーミング補正処理について説明する図である。
【図5】短時間露光画素である低感度画素と、長時間露光画素である高感度画素が混在する画像におけるブルーミング補正処理について説明する図である。
【図6】撮像素子の特性情報の計測処理について説明する図である。
【図7】撮像素子の特性情報について説明する図である。
【図8】撮像素子の画素配列パターンと露光制御パターンの例について説明する図である。
【図9】長時間露光と短時間露光における電荷の蓄積のシーケンスについて説明する図である。
【図10】長時間露光画素から長時間露光画素へのブルーミング量(LL)の算出処理例について説明する図である。
【図11】長時間露光画素から短時間露光画素へのブルーミング量(LS)の算出処理例について説明する図である。
【図12】短時間露光画素から長時間露光画素へのブルーミング量(SL)の算出処理例について説明する図である。
【図13】短時間露光画素から短時間露光画素へのブルーミング量(SS)の算出処理例について説明する図である。
【図14】長時間露光と短時間露光における電荷の蓄積のシーケンスについて説明する図である。
【図15】ブルーミング受容画素(V:Victim画素)に対して、縦横斜めの8画素が、ブルーミング発生画素(Aggressor画素)となることを説明する図である。
【図16】撮像素子の画素配列と露光制御設定例について説明する図である。
【図17】ブルーミングの発生態様について説明する図である。
【図18】ブルーミング補正を行う補正処理部の構成例について説明する図である。
【図19】過補正対策を施したブルーミング補正処理例について説明する図である。
【図20】ブルーミング補正量の推定処理を繰り返し処理として実行する処理例について説明する図である。
【図21】ブルーミング補正量の推定処理を繰り返し処理として実行する処理例について説明する図である。
【図22】LUT(ルックアップテーブル)を利用したブルーミング補正を実行する補正処理部の構成例について説明する図である。
【図23】LUT(ルックアップテーブル)を利用したブルーミング補正を実行する補正処理部の構成例について説明する図である。
【図24】LUT(ルックアップテーブル)を利用したブルーミング補正を実行する補正処理部の構成例について説明する図である。
【図25】LUT(ルックアップテーブル)を利用したブルーミング補正を実行する補正処理部の構成例について説明する図である。
【図26】LUT(ルックアップテーブル)を利用したブルーミング補正を実行する補正処理部の構成例について説明する図である。
【図27】LUT(ルックアップテーブル)を利用したブルーミング補正を実行する補正処理部の構成例について説明する図である。
【図28】短時間露光画素の明るさが変化したときの、実測値(ブルーミングの影響を受けた画素値)と理想値(真の画素値)の変化を表したグラフについて説明する図である。
【図29】図28に示す特性に基づいて、図27に示す1次元LUTで使用する対応データの関係を表した図である。
【図30】図29に示す関係データを単純な折れ線データとした近似処理を実行した結果を示す図である。
【図31】倍列近似部を有する補正処理部の構成例について説明する図である。
【図32】3次元LUTを用いた構成において近似データを用いた補正処理部の構成例について説明する図である。
【図33】ある画素の短時間露光画素(低感度画素):Rd,Gd,Bdの明るさ(輝度)と画素出力値の変化について説明する図である。
【図34】数式モデルに基づく補正と、予め取得したデータに基づく補正の両方を組み合わせることで、各処理の欠点を補い、各処理の利点を利用した補正処理部の構成例について説明する図である。
【図35】過補正対策を行った補正処理部の構成例について説明する図である。
【図36】ブルーミング補正した結果の補正画素値がどんどん小さくなるという問題野具体例について説明する図である。
【図37】ブルーミング補正処理を実行する撮像装置200の構成例について説明する図である。
【図38】ブルーミング補正処理部の全体構成例について説明する図である。
【図39】信号生成部における信号生成処理例について、周辺画素を用いて線形補間によって画素値を生成する手法について説明する図である。
【図40】HDR(広ダイナミックレンジ画像)合成処理部の詳細構成例について説明する図である。
【図41】高感度低周波信号生成部と、低感度低周波信号生成部における、注目画素の周辺画素を利用した処理によって低周波信号を生成する処理について説明する図である。
【図42】HDR全帯域信号生成部の構成例について説明する図である。
【図43】撮像装置の第2構成例について説明する図である。
【図44】統合処理部の具体例について説明する図である。
【図45】統合処理部の具体例について説明する図である。
【図46】統合処理部の具体例について説明する図である。
【図47】ブルーミング補正部の入出力関係について説明する図である。図である。
【図48】図46に示すブルーミング補正部内に構成される画素生成部の処理例について説明する図である。
【図49】Knee特性について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、図面を参照しながら本開示の撮像装置、および画像処理方法、並びにプログラムの詳細について説明する。説明は、以下の項目に従って行う。
1.撮像素子の特性の計測処理について
2.ブルーミングの数式モデルを利用した補正処理例
2−1.長時間露光画素から長時間露光画素へのブルーミング量(LL)
2−2.長時間露光画素から短時間露光画素へのブルーミング量(LS)
2−3.短時間露光画素から長時間露光画素へのブルーミング量(SL)
2−4.短時間露光画素から短時間露光画素へのブルーミング量(SS)
3.複数のブルーミング発生画素からの相互作用を考慮した実施例
4.ブルーミング補正処理の実施例
4−1.数式モデルを利用した基本的なブルーミング補正処理例
4−2.数式モデルを利用し、過補正対策を施したブルーミング補正処理例
4−3.数式モデルを利用し、繰り返し補正を行う処理例
4−4.LUT等、予め取得したデータに基づく補正処理例
4−5.異なる補正手法の組み合わせによるブルーミング補正処理について
4−6.動被写体やエッジによる過補正の対策を施した補正処理例
5.撮像装置の構成例
5−1.撮像装置の構成例1
5−2.撮像装置の構成例2
6.その他の実施例:ブルーミング以外のセンサ特性に基づく画像の補正
7.本開示の構成のまとめ
【0051】
[1.撮像素子の特性の計測処理について]
以下に説明する本開示の撮像装置の一実施例では、撮像素子の特性を利用して、ブルーミング補正を行う。
まず、図6以下を参照して撮像素子の特性情報の計測処理について説明する。
図6は、撮像素子の特性情報の計測を行うためのシステム構成の一例を示している。
撮影対象とする被写体102は、例えば様々な色や輝度領域を設定したテストパターンであり、具体的には、例えばカラーチェック処理などにおいて利用されるマクベスチャートなどが利用可能である。
この被写体102に照明101を照射して、特性計測用の撮像素子(イメージセンサ)104を備えた撮像装置(カメラ)において画像を撮影する。
なお、図6に示す特性計測に適用する装置としては、RAW画像を取得可能なカメラを適用してもよいが、一般的なカメラの構成を備えることは必須ではなく、撮像素子であるセンサの生データを取得可能な構成を持つ基盤や装置を適用してもよい。
【0052】
照明101、被写体102の条件・位置などを固定し、撮像素子(イメージセンサ)104についても同じ条件で撮影するなら、ノイズを無視すれば同一の画像を取得できる。
撮像素子(イメージセンサ)104は、画素毎に露光時間を変えて撮影できるセンサである。図に示す制御部105の生成する制御情報である露光時間情報106に基づいて画素単位で露光時間を設定して撮影を行うことができる。
【0053】
まず、すべての画素の露光時間を同一にして撮影する。
制御部105により、撮像素子104の全体の露光時間を短〜長間で細かく変化させながら取得するセンサ画像107を、順次、記憶装置108に記録する。
【0054】
図7(A)測定結果は、露光時間を変化させながら取得したセンサ画像107の中の、ある隣接したR,G,B画素値の変化を表す。
一般に被写体の変化がないときには、露光時間と画素値は比例の関係を持つ。
しかし、図7(A)に示すように、露光時間が短い時には線形性があるものの、露光時間が長くなり特定の画素が飽和レベルに近づいてくると非線形性が発生する。これらが飽和やブルーミングによる非線形性である。
【0055】
時間t1において、G画素が飽和し、この飽和に基づいてG画素で溢れた電荷が隣接するB画素、R画素に流れ込むブルーミングが発生する。このブルーミングによって、B画素とR画素の線形性が崩れている。すなわち、蓄積電荷ペースが増加している。
さらに、時間t2において、B画素が飽和し、この飽和に基づいてB画素で溢れた電荷が隣接するR画素に流れ込むブルーミングが発生する。このブルーミングによって、R画素の線形性が再度崩れ、蓄積電荷ペースがさらに増加している。
【0056】
図7(B)理想特性は、図7(A)測定データにおける線形性のある区間のデータ(時間t0〜t1)だけを利用して線形回帰を行った結果である。線形回帰は例えば最小二乗法などで行う。これにより、ある画素のブルーミングのない理想的なデータ[理想特性]を取得できる。例えば、露光時間がEX1であるときのR画素の理想画素値はR1,B画素の理想画素値はG1と求めることができる。
【0057】
この露光時間EX1では、例えばB画素、R画素はブルーミングの影響をうけている区間であるが、それぞれブルーミングの影響がない理想特性(B)、理想特性(R)を得られる。同様にG画素は飽和しているが、飽和を無視したときの理想特性(G)を得ることができる。
【0058】
このように、測定データにおける線形性のある区間のデータ(時間t0〜t1)を利用した線形回帰を行って、図7(B)に示す実線データ理想的なデータ(理想特性)を求める。
理想特性は、撮像素子の画素配列パターンと、撮像素子において実際の撮影で利用する露光制御パターンに応じて算出し、撮影画像の補正処理には、配列パターンと露光制御パターンの一致する設定の理想特性を適用することが好ましい。
【0059】
なお、撮像素子104の画素配列パターンと露光制御パターンの例を図8に示す。
図8には、(A)〜(M)の13種類の画素配列パターンと露光制御パターンを示している。
白い画素が長時間露光画素(高感度画素)、
グレーの画素が短時間露光画素(低感度画素)、
である。
【0060】
例えば、図8に示す(A)〜(M)のパターンごと、各色(R,G,B)あるいは(R,G,B,W)単位の理想特性を算出する。算出した理想特性は、ブルーミング補正を行う画像処理装置や撮像装置の記憶部に格納する。
【0061】
ブルーミングの補正は、この理想データである理想特性と、実際の撮影処理によって得られる実測データを利用した補正処理として行われる。
具体的には実測データから理想データを算出する処理として実行する。
具体的な補正処理の方法としては例えば以下の方法がある。
(a)ブルーミングの数式モデルを導出し、その逆関数によって補正する方法
(b)実測データと理想データの1対1対応データをテーブル(LUT:Look Up Table)として保持して、テーブルを参照して補正する方法
(c)上記LUTの代表点のみ利用して、近似して補正する方法
(d)上記の各方法を組み合わせて利用した補正方法
例えばこれらの方法がある。
【0062】
撮像素子104の画素配列や露光制御態様は、先に図8を参照して説明したように、様々であり、この種類によって理想特性と実測データとの対応関係も異なってくる。以下の実施例では、一例として図8(A)に示す画素配列と露光制御構成に従った撮像素子104を利用して処理例について説明する。
なお、この図8(A)以外の画素配列と露光制御構成であっても、理想特性と実測データとの対応関係データが異なるのみであり、以下に示す本開示の処理が適用可能である。
【0063】
[2.ブルーミングの数式モデルを利用した補正処理例]
まず、ブルーミングの数式モデルを利用した補正処理例について説明する。
ブルーミングの数式モデルの導出
ブルーミングの現象を最も単純に記述する方法を示す。
【0064】
単純なモデル:1画素から1画素へのブルーミング
ここでは、ある1画素(Aggressor)から、ある1画素(Victim)へのブルーミングについてのみ考慮し、相互作用や複数の画素からのブルーミングについては考慮しない。
【0065】
ブルーミングの量の要因には、入射する光の波長や、温度特性などによる変動なども考えられるが、ここではそれらの要因を考慮せず、一定であるとして簡単なモデルを示す。
【0066】
発生するブルーミングの種類は露光時間に応じてパターンがある。
なお、長時間露光と短時間露光における電荷の蓄積については、図9に示すような撮影処理に伴う電荷蓄積動作を想定して数式モデルを導出する。
図9には、
(a)読み出しタイミング
(b)長時間露光リセットタイミング
(c)長時間露光電荷量
(d)短時間露光リセットタイミング
(e)短時間露光電荷量
これらの時間推移を示している。
【0067】
長時間露光画素は、長時間露光リセットタイミング(t1)を電荷蓄積開始時間として、次の読み出しタイミング(tr)まで(露光時間:tb)、画素に電荷蓄積を行って電荷量に応じた信号量を画素値として読み取る。
短時間露光画素は、短時間露光リセットタイミング(t2)を電荷蓄積開始時間として、次の読み出しタイミング(tr)まで(露光時間:td)、画素に電荷蓄積を行って電荷量に応じた信号量を画素値として読み取る。
なお、短時間露光のリセットタイミングの前には電荷が溜まっていることを想定する。
【0068】
数式モデル導入のために下記のように各パラメータを定義する。
Ai:ブルーミングを発生する画素(Aggressor画素)が時間Tbだけ露光したときの理想値(飽和しない場合の値)
As:Aggressor画素のセンサ出力値
Vi:ブルーミングを受ける画素(Victim画素)が時間Tbだけ露光したときの理想値(ブルーミングの影響なし)
Vs:Victim画素のセンサ出力値
Tb:高感度(長時間露光)の露光時間
Td:低感度(短時間露光)の露光時間
bth:Aggressor画素がブルーミングを発生させる信号レベル
brt:Aggressor画素からのブルーミング比率
R :長時間露光画素と短時間露光画素との露光比(Tb/Td)
【0069】
なお、bth(ブルーミング発生信号レベル),brt(ブルーミング比率)は、実際にはセンサ特性や、温度特性、入射光の波長によって変化することがあるが、ここでは簡易的に、センサによって一意に求まるパラメータであるとする。
【0070】
以下、図10〜図13を参照して、以下の各ブルーミング態様に応じたブルーミング量、すなわち電荷溢れによる流入電荷量の算出式例について説明する。以下の4種類のブルーミング量について説明する。
(1)長時間露光画素から長時間露光画素へのブルーミング量(LL)
(2)長時間露光画素から短時間露光画素へのブルーミング量(LS)
(3)短時間露光画素から長時間露光画素へのブルーミング量(SL)
(4)短時間露光画素から短時間露光画素へのブルーミング量(SS)
【0071】
なお、以下では、
ブルーミングを発生させ、電荷溢れを起す画素をブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)、
隣接画素から溢れた電荷を流入してしまう画素をブルーミング受容画素(V:Victim画素)、
として説明する。
【0072】
[2−1.長時間露光画素から長時間露光画素へのブルーミング量(LL)]
まず、図10を参照して長時間露光画素から長時間露光画素へのブルーミング量(LL)の算出式について説明する。
図10に示す例は、
ブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)=長時間露光画素、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)=長時間露光画素、
この設定である。
【0073】
時間を横軸とし、蓄積電荷量を縦軸として、各画素、すなわち
ブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)=長時間露光画素、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)=長時間露光画素、
これらの蓄積電荷の時間推移を示している。
実線が実際の蓄積電荷の推移データであり、点線が理想特性である。
【0074】
露光時間はTb、
ブルーミング発生信号レベル=bth、
である。
なお、ブルーミング発生信号レベル=bthは、飽和信号レベルより高い信号レベルとしている。
【0075】
時間(t1)において、ブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)が飽和し、点線で示す理想特性の信号レベルがブルーミング発生信号レベル(bth)となる時間(t2)においてブルーミングが発生する。すなわち画素間の電荷溢れと電荷流入が開始する。
【0076】
時間(t2)のブルーミング発生タイミング以降において、ブルーミング受容画素(V:Victim画素)の電荷量は点線で示す理想特性からはずれた直線を描く。
最終的な露光終了時間(tr)において、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)の実電荷量(Vs)と、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)の理想特性上の電荷量(Vi)と、
の差分がブルーミング量となる。
【0077】
ブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)=長時間露光画素、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)=長時間露光画素、
これら長時間露光画素間におけるブルーミング量(LL)は以下のように算出される。
【0078】
まず、ブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)の理想特性(Ai)に基づいて算出されるブルーミング量(brt)をLL(Ai,brt)とすると、
最終的な露光終了時間(tr)における、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)の実電荷量(Vs)と、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)の理想特性上の電荷量(Vi)と、
の関係式は、以下の関係式(式1)となる。
【0079】
【数1】

・・・(式1)
【0080】
また、露光時間:X=0〜trにおけるブルーミング量(brt)をLL(X,brt)とすると、
ブルーミング量LL(X,brt)の算出式は、以下の(式2)によって示される。
【0081】
【数2】

・・・(式2)
【0082】
[2−2.長時間露光画素から短時間露光画素へのブルーミング量(LS)]
次に、図11を参照して長時間露光画素から短時間露光画素へのブルーミング量(LS)の算出式について説明する。
図11に示す例は、
ブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)=長時間露光画素、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)=短時間露光画素、
この設定である。
【0083】
時間を横軸とし、蓄積電荷量を縦軸として、各画素、すなわち
ブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)=長時間露光画素、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)=短時間露光画素、
これらの蓄積電荷の時間推移を示している。
実線が実際の蓄積電荷の推移データであり、点線が理想特性である。
【0084】
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)=短時間露光画素は、時間(t2)においてリセットされ、時間(t2)後の電荷蓄積量を出力画素値(Vs)としている。
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)の理想特性に従った点線は時間(Tr)においてViとなるラインと、(Vi/R)となる2つのラインを示している。
時間(tr)においてViとなるラインは、時間0から継続して電荷蓄積が実行された場合の理想特性ラインである。
一方、時間(tr)において(Vi/R)となるラインは、時間(t2)から露光が実行された場合の理想特性ラインである。
Rは、長時間露光画素と短時間露光画素との露光比(Tb/Td)である。
【0085】
露光時間は、
長時間露光画素がTb、
短時間露光画素がTd、
ブルーミング発生信号レベル=bth、
である。
【0086】
時間(t1)において、長時間露光画素であるブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)が飽和し、点線で示す理想特性の信号レベルがブルーミング発生信号レベル(bth)となる時間(t3)においてブルーミングが発生する。すなわち画素間の電荷溢れと電荷流入が開始する。
【0087】
なお、時間(t1)〜時間(t3)間の時間(t2)において、短時間露光画素であるブルーミング受容画素(V:Victim画素)の電荷蓄積が開始される設定としている。
【0088】
短時間露光画素であるブルーミング受容画素(V:Victim画素)は、時間(t2)〜(t3)までは、ブルーミングの影響のない電荷蓄積が実行される。
しかし、時間(t3)のブルーミング発生タイミング以降において、ブルーミング受容画素(V:Victim画素)の電荷量は点線で示す理想特性からはずれた直線を描く。
最終的な露光終了時間(tr)において、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)の実電荷量(Vs)と、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)の理想特性上の電荷量(Vi/R)と、
の差分がブルーミング量となる。
【0089】
ブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)=長時間露光画素、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)=短時間露光画素、
この長時間露光画素から短時間露光画素へのブルーミング量(LS)は以下のように算出される。
【0090】
まず、ブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)の理想特性(Ai)に基づいて算出されるブルーミング量(brt)をLS(Ai,brt)とすると、
最終的な露光終了時間(tr)における、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)の実電荷量(Vs)と、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)の理想特性上の電荷量(Vi/R)と、
の関係式は、以下の関係式(式3)となる。
【0091】
【数3】

・・・(式3)
【0092】
また、露光時間:X=0〜trにおけるブルーミング量(brt)をLS(X,brt)とすると、
ブルーミング量LS(X,brt)の算出式は、以下の(式4)によって示される。
【0093】
【数4】

・・・(式4)
【0094】
[2−3.短時間露光画素から長時間露光画素へのブルーミング量(SL)]
次に、図12を参照して短時間露光画素から長時間露光画素へのブルーミング量(SL)の算出式について説明する。
図12に示す例は、
ブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)=短時間露光画素、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)=長時間露光画素、
この設定である。
【0095】
時間を横軸とし、蓄積電荷量を縦軸として、各画素、すなわち
ブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)=短時間露光画素、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)=長時間露光画素、
これらの蓄積電荷の時間推移を示している。
実線が実際の蓄積電荷の推移データであり、点線が理想特性である。
【0096】
ブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)=短時間露光画素は、時間(t3)においてリセットされ、時間(t3)後の電荷蓄積量を出力画素値(Vs)としている。
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)の理想特性に従った点線は時間(Tr)においてViとなるラインと、(Vi/R)となる2つのラインを示している。
時間(tr)においてViとなるラインは、時間0から継続して電荷蓄積が実行された場合の理想特性ラインである。
一方、時間(tr)において(Vi/R)となるラインは、時間(t2)から露光が実行された場合の理想特性ラインである。
Rは、長時間露光画素と短時間露光画素との露光比(Tb/Td)である。
【0097】
露光時間は、
長時間露光画素がTb、
短時間露光画素がTd、
ブルーミング発生信号レベル=bth、
である。
【0098】
時間(t1)において、短時間露光画素であるブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)が飽和し、点線(AL1)で示す理想特性の信号レベルがブルーミング発生信号レベル(bth)となる時間(t2)においてブルーミングが発生する。すなわち画素間の電荷溢れと電荷流入が開始する。
なお、短時間露光画素であるブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)の撮影処理に基づく電荷蓄積処理は、時間(t3)〜(tr)間の露光時間(td)に実行され、時間0〜t3の間の露光によって短時間露光画素に蓄積される電荷は撮影開始(t3)時点でリセットされる電荷である。
このリセット対象の電荷によってブルーミングが発生してしまう例を示している。
【0099】
長時間露光画素であるブルーミング受容画素(V:Victim画素)は、時間(0)〜(t2)までは、ブルーミングの影響のない電荷蓄積が実行される。
しかし、時間(t2)のブルーミング発生タイミング以降において、ブルーミング受容画素(V:Victim画素)の電荷量は点線(VL1)で示す理想特性からはずれた直線を描く。
【0100】
その後、時間(t3)において、短時間露光画素であるブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)はリセット処理が行われ、被写体の撮影に応じた露光時間(td)の露光処理が開始される。
この露光処理が開始時点で、短時間露光画素に蓄積された電荷はリセットされ、新たに被写体輝度に応じた電荷の蓄積を開始するため、電荷溢れは停止する。すなわちブルーミング発生は停止することになる。
しかし、この時間(t3)において、長時間露光画素であるブルーミング受容画素(V:Victim画素)には、すでに図に示す理想特性ライン(VL1)と実線で示す実電荷ラインとの差分(SLF)に相当するブルーミング電荷量が、被写体輝度と無関係な余分な電荷として蓄積されている。
【0101】
さらに、時間(t3)以降の短時間露光画素であるブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)の露光時間(td)において、短時間露光画素は、時間(t4)において、再度、飽和し、点線(AL2)で示す理想特性の信号レベルがブルーミング発生信号レベル(bth)となる時間(t5)においてブルーミングを発生させる。すなわち画素間の電荷溢れと電荷流入が再び発生する。
【0102】
長時間露光画素であるブルーミング受容画素(V:Victim画素)は、時間(t5)以降、点線(VL2)で示す理想特性からはずれた直線を描く。この時間(t5)以降のブルーミング量は図に示す(SLB)となる。
【0103】
最終的な露光終了時間(tr)において、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)の実電荷量(Vs)と、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)の理想特性上の電荷量(Vi)と、
の差分がブルーミング量となる。
最終的なブルーミング量は、(SLA)と(SLB)の加算結果に相当する。
【0104】
ブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)=短時間露光画素、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)=長時間露光画素、
この短時間露光画素から長時間露光画素へのブルーミング量(SL)は以下のように算出される。
【0105】
まず、ブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)の理想特性(Ai)に基づいて算出されるブルーミング量(brt)をSL(Ai,brt)とすると、
最終的な露光終了時間(tr)における、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)の実電荷量(Vs)と、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)の理想特性上の電荷量(Vi)と、
の関係式は、以下の関係式(式5)となる。
【0106】
【数5】

・・・(式5)
【0107】
また、露光時間:X=0〜trにおけるブルーミング量(brt)をSL(X,brt)とすると、
ブルーミング量SL(X,brt)の算出式は、以下の(式6)によって示される。
【0108】
【数6】

・・・(式6)
【0109】
[2−4.短時間露光画素から短時間露光画素へのブルーミング量(SS)]
次に、図13を参照して短時間露光画素から短時間露光画素へのブルーミング量(SS)の算出式について説明する。
図13に示す例は、
ブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)=短時間露光画素、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)=短時間露光画素、
この設定である。
【0110】
時間を横軸とし、蓄積電荷量を縦軸として、各画素、すなわち
ブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)=短時間露光画素、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)=短時間露光画素、
これらの蓄積電荷の時間推移を示している。
実線が実際の蓄積電荷の推移データであり、点線が理想特性である。
【0111】
ブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)=短時間露光画素、およびブルーミング受容画素(V:Victim画素)=短時間露光画素とも、時間(t3)においてリセットされ、時間(t3)後の電荷蓄積量を出力画素値(As,Vs)としている。
【0112】
露光時間は、
長時間露光画素がTb、
短時間露光画素がTd、
ブルーミング発生信号レベル=bth、
である。
【0113】
時間(t1)において、短時間露光画素であるブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)が飽和し、点線(AL1)で示す理想特性の信号レベルがブルーミング発生信号レベル(bth)となる時間(t2)においてブルーミングが発生する。すなわち画素間の電荷溢れと電荷流入が開始する。
なお、短時間露光画素であるブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)の撮影処理に基づく電荷蓄積処理は、時間(t3)〜(tr)間の露光時間(td)に実行され、時間0〜t3の間の露光によって短時間露光画素に蓄積される電荷は撮影開始(t3)時点でリセットされる電荷である。
このリセット対象の電荷によってブルーミングが発生してしまう例を示している。
【0114】
短時間露光画素であるブルーミング受容画素(V:Victim画素)は、時間(0)〜(t2)までは、ブルーミングの影響のない電荷蓄積が実行される。
しかし、時間(t2)のブルーミング発生タイミング以降において、ブルーミング受容画素(V:Victim画素)の電荷量は点線(VL1)で示す理想特性からはずれた直線を描く。
【0115】
その後、時間(t3)において、短時間露光画素であるブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)、ブルーミング受容画素(V:Victim画素)とも、リセット処理が行われ、被写体の撮影に応じた露光時間(td)の露光処理が開始される。
この露光処理が開始時点で、短時間露光画素に蓄積された電荷はリセットされ、新たに被写体輝度に応じた電荷の蓄積を開始するため、電荷溢れは停止する。すなわちブルーミング発生は停止することになる。
【0116】
しかし、この露光時間(td)において、短時間露光画素であるブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)は、時間(t4)において、再度。飽和し、点線(AL2)で示す理想特性の信号レベルがブルーミング発生信号レベル(bth)となる時間(t5)においてブルーミングを発生させる。すなわち画素間の電荷溢れと電荷流入が再び発生する。
【0117】
短時間露光画素であるブルーミング受容画素(V:Victim画素)は、時間(t5)以降、点線(VL2)で示す理想特性からはずれた直線を描く。
【0118】
最終的な露光終了時間(tr)において、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)の実電荷量(Vs)と、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)の理想特性上の電荷量(Vi/R)と、
の差分がブルーミング量となる。
【0119】
ブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)=短時間露光画素、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)=短時間露光画素、
この短時間露光画素間のブルーミング量(SS)は以下のように算出される。
【0120】
まず、ブルーミング発生画素(A:Aggressor画素)の理想特性(Ai)に基づいて算出されるブルーミング量(brt)をSS(Ai,brt)とすると、
最終的な露光終了時間(tr)における、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)の実電荷量(Vs)と、
ブルーミング受容画素(V:Victim画素)の理想特性上の電荷量(Vi)と、
の関係式は、以下の関係式(式5)となる。
【0121】
【数7】

・・・(式7)
【0122】
また、露光時間:X=0〜trにおけるブルーミング量(brt)をSS(X,brt)とすると、
ブルーミング量SS(X,brt)の算出式は、以下の(式8)によって示される。
【0123】
【数8】

・・・(式8)
【0124】
ここまで、露光時間の異なる画素が隣接する場合のブルーミングの数式モデルを示してきた。この数式モデルは、あくまでも、例えば図9に示すセンサ駆動方式など特定のセンサの駆動方式における数式モデルの適用例であるが、ブルーミング量の算出処理は他の様々なセンサ駆動方式に対応して設定することが可能である。
【0125】
例えば、先に説明した図9に示すセンサ駆動方式と異なる図14に示すセンサ駆動方式に対応する数式モデルの設定について説明する。
図14に示すセンサ駆動方式では、短時間露光画素が露光開始するまで常にリセットがかかっており、電荷が蓄積しない=ブルーミングが発生しないようになっている。
この駆動方式における、数式モデルは、前述したブルーミング量SL(X,brt)の算出式(式6)において、
SLF(X,brt)=0
と置き換えたものに相当する。
【0126】
さらに、露光時間は同じで感度が異なる画素間での従来のブルーミングについても、前述の(式1)で包含している。これにより、露光時間で感度差をつけるのではなく、露光時間は一定で、画素ごとの感度が異なるようなセンサに対するブルーミングの数式モデルについても算出可能である。
【0127】
[3.複数のブルーミング発生画素からの相互作用を考慮した実施例]
上述した実施例では、
ブルーミング発生画素(Aggressor画素)を1画素、
ブルーミング受容画素(Victim画素)を1画素、
このようにそれぞれを1画素のみとした設定として単純化したモデルにおけるブルーミング電荷量の算出処理例について説明してきた。
【0128】
しかし、実際には、撮像素子を構成する各画素がブルーミングを発生させるブルーミング発生画素(Aggressor画素)になり得るとともに、ブルーミング受容画素(Victim画素)にもなり得る。
このような複雑な構成のモデル化は困難であるが、近似的に下記のようにモデルを設定する。
【0129】
図15には3×3の画素領域を示している。注目画素を中央の画素として、この中央画素をブルーミング受容画素(V:Victim画素)とする。
このブルーミング受容画素(V:Victim画素)に対して、縦横斜めの8画素が、ブルーミング発生画素(Aggressor画素)となる可能性があり、これら8画素からの影響を受ける。
【0130】
一般に、縦横に比べ、斜め方向のブルーミングは比率(前述のbrt)が小さくなる。以降、図16に示す画素配列と露光制御設定の場合、各感度・色の画素のブルーミングによる影響について説明する。
図16に示す画素配列において、
白い画素が長時間露光画素(高感度画素)、
グレーの画素が短時間露光画素(低感度画素)、
である。
【0131】
具体的には、以下の表記としている。
Rb:Red(赤)の高感度画素(長時間露光画素)
Gb:Green(緑)の高感度画素
Bb:Blue(青)の高感度画素
Rd:Red(赤)の低感度画素(短時間露光画素)
Gd:Green(緑)の低感度画素
Bd:Blue(青)の低感度画素
【0132】
さらに、各画素の理想的な画素値、すなわちブルーミングの発生がない場合のRGB各画素の画素値を以下のように表記する。
Ri:Rbの理想値(飽和やブルーミングのない線形性をもつ)
Gi:Gbの理想値(飽和やブルーミングのない線形性をもつ)
Bi:Bbの理想値(飽和やブルーミングのない線形性をもつ)
【0133】
上記の設定において、飽和やブルーミングのない状況において、ノイズを無視すれば、各画素の画素値は、以下のような画素値となる。
Rb=Ri
Gb=Gi
Bb=Bi
Rd=Ri/R=Rb/R
Gd=Gi/R=Gb/R
Bd=Bi/R=Bb/R
が成り立つ。
なお、
R:長時間露光画素と短時間露光画素との露光比(Tb/Td)
である。
【0134】
例えば、図16に示すRb画素150の周辺8画素を見てみると、
・縦横に、Gbが3画素、Gdが1画素あり
・斜めに、Bdが2画素、Bbが2画素存在する。
このように合計8画素からブルーミングの影響を受けるとして、各感度、色画素のブルーミング量をモデル化する。
【0135】
理想画素値Ri,Gi,Biを適用して算出する各画素のブルーミング量を以下のように表記する。
高感度画素Rbのブルーミング量:blmRb(Ri,Gi,Bi)
高感度画素Gbのブルーミング量:blmGb(Ri,Gi,Bi)
高感度画素Bbのブルーミング量:blmBb(Ri,Gi,Bi)
低感度画素Rdのブルーミング量:blmRd(Ri,Gi,Bi)
低感度画素Gdのブルーミング量:blmGd(Ri,Gi,Bi)
低感度画素Bdのブルーミング量:blmBd(Ri,Gi,Bi)
【0136】
各画素のブルーミング量は以下の式によって算出できる。
(a)高感度画素のブルーミング量
blmRb(Ri,Gi,Bi)=3・LL(Gi,brt_hv)+SL(Gi,brt_hv)+2・SL(Bi,brt_ad)+2・LL(Bi,brt_ad)
blmGb(Ri,Gi,Bi)=2・LL(Ri,brt_hv)+LL(Bi,brt_hv)+SL(Bi,brt_hv)
+2・SL(Gi,brt_ad)+2・LL(Gi,brt_ad)
blmBb(Ri,Gi,Bi)=3・LL(Gi+,brt_hv)+SL(Gi,brt_hv)+2・SL(Ri,brt_ad)+2・LL(Ri,brt_ad)
・・・・・(式A)
【0137】
(b)低感度画素のブルーミング量
blmRd(Ri,Gi,Bi)=3・SS(Gi,brt_hv)+LS(Gi,brt_hv)+2・LS(Bi,brt_ad)+2・SS(Bi,brt_ad)
blmGd(Ri,Gi,Bi)=2・SS(Ri,brt_hv)+SS(Bi,brt_hv)+LS(Bi,brt_hv)+2・LS(Gi,brt_ad)+2・SS(Gi,brt_ad)
blmBd(Ri,Gi,Bi)=3・SS(Gi+,brt_hv)+LS(Gi,brt_hv)+2・LS(Ri,brt_ad)+2・SS(Ri,brt_ad)
・・・・・(式B)
【0138】
なお、上記式A,Bにおいて、
pq(xi,brt_yy)の表記は、
pq=LL,LS,SL,SSの4種類であり、
LL:長時間露光画素から長時間露光画素へのブルーミング
LS:長時間露光画素から短時間露光画素へのブルーミング
SL:短時間露光画素から長時間露光画素へのブルーミング
SS:短時間露光画素から短時間露光画素へのブルーミング
xは、RGBのいずれかであり、xiは、各画素の理想特性データを参照していることを意味している。
yyはhv,adのいずれかであり、
brt_hvは縦横に隣接した画素から漏れるブルーミング比率。
brt_adは斜めに隣接した画素から漏れるブルーミング比率。
これらを意味する。
【0139】
ただし、実際には、ブルーミングは、隣接画素間で相互に発生するものもあり、正確なモデル化は難しい。
すなわち、図17に示すように、
時間t1において、
長時間露光画素がブルーミング発生画素(A:Aggressor1)となり。短時間露光画素がブルーミング受容画素(V:Victim1)となり、
その後、
時間t2において、
短時間露光画素がブルーミング発生画素(A:Aggressor2)となり。長時間露光画素がブルーミング受容画素(V:Victim2)となる、
といった隣接画素間で相互にブルーミングの発生と受容が行われる場合もある。
従って、正確なモデル化は難しい。
【0140】
さらに、縦横と斜めの画素に対して相互にブルーミングは発生するため、正確なモデル化は非常に複雑である。
しかし、上記の(式A)、(式B)により、ブルーミングの量のうちの大部分をモデル化することが可能であり、ブルーミング率(brt)の値が小さい時には誤差として無視できる。
【0141】
[4.ブルーミング補正処理の実施例]
次に、上述したブルーミング補正量の算出処理によって求めたブルーミング量を適用した画素値の補正、すなわちブルーミング補正処理の具体的な実施例について説明する。
【0142】
[4−1.数式モデルを利用した基本的なブルーミング補正処理例]
まず、数式モデルを利用したブルーミング補正処理例について、図18を参照して説明する。
図18は、ブルーミング量を低感度画素の画素値(Rd,Gd,Bd)から推定して、センサ出力信号から引くことによって、ブルーミング補正を行う補正処理部130の構成例を示す図である。
【0143】
図18に示す補正処理部130は、ブルーミング量推定部131と演算部132を有する。
図18に示す補正処理部130に対する入力は、撮像素子(イメージセンサ)からの出力または出力に基づいて生成される信号である。
【0144】
撮像素子(イメージセンサ)には、例えば図16に示す長時間露光画素(高感度画素)と短時間露光画素(低感度画素)が混在する。
すなわち、
Rb:Rの高感度画素の出力
Gb:Gの高感度画素の出力
Bb:Bの高感度画素の出力
Rd:Rの低感度画素の出力
Gd:Gの低感度画素の出力
Bd:Bの低感度画素の出力
これらの各出力である。
【0145】
図18に示す補正処理部130は、撮像素子の構成画素の各々を、ブルーミング補正の対象となる注目画素として、順次、選択して補正を行う。この補正処理に際して、例えば、補正対象として選択した注目画素の画素位置に対応する上記の6種類の画素値を入力してブルーミング補正を行うことになる。
なお、この注目画素の画素位置に対応する上記の6種類の画素値の生成処理は、撮像素子からの信号を入力する信号生成部(図38に示す信号生成部251)において実行される。例えば注目画素の周辺画素の画素値を参照した線形補間処理によって、各画素値の生成が行われる。
この処理の詳細はについては、図38等を参照して後段で説明する。
【0146】
図18に示す補正処理部130は、信号生成部(図38に示す信号生成部251)の生成した注目画素に対応する上記各画素値:Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bdを入力しこれらの入力値を用いて、注目画素のブルーミング補正結果として、注目画素位置における出力画素の補正画素値:Rb'、Gb'、Bb'、Rd'、Gd'、Bd'を生成して出力する。
なお、注目画素は撮像素子の構成画素から、順次、1つずつ選択され、すべての画素について同様のブルーミング補正が実行されることになる。
【0147】
補正処理部130に対する入力画素値:Rb、Gb、Bb、Rd、Gd、Bdは、ノイズや、図17のような相互依存関係を無視すれば、下記の式(式11)によって示すことができる。
Rb=Ri+blmRb(Ri,Gi,Bi)
Gb=Gi+blmGb(Ri,Gi,Bi)
Bb=Bi+blmBb(Ri,Gi,Bi)
Rd=Ri/R+blmRd(Ri,Gi,Bi)
Gd=Gi/R+blmGd(Ri,Gi,Bi)
Bd=Bi/R+blmBd(Ri,Gi,Bi)
・・・・・・(式11)
ただし、
Ri,Gi,Biは、ブルーミングのない理想特性に従って出力される画素値、
blmxx(Ri,Gi,Bi)は、各画素(xx=Rb,Gb,Bb,Rd,Gd.Bd)におけるブルーミング量であり、先に説明した(式A)、(式B)によって算出されるブルーミング量、
Rは、長時間露光画素と短時間露光画素との露光比(Tb/Td)、
である。
【0148】
上記の(式11)に基づいて、ブルーミングのない理想特性に従って各画素から出力される画素値:Ri,Gi,Bi,Ri/R,Gi/R,Bi/Rは、下記式(式22)のように表現できる。
Ri=Rb−blmRb(Ri,Gi,Bi)
Gi=Gb−blmGb(Ri,Gi,Bi)
Bi=Bb−blmBb(Ri,Gi,Bi)
Ri/R=Rd−blmRd(Ri,Gi,Bi)
Gi/R=Gd−blmGd(Ri,Gi,Bi)
Bi/R=Bd−blmBd(Ri,Gi,Bi)
・・・・・・(式12)
【0149】
上記(式12)に従って算出される理想値を、図18に示す補正処理部130の出力である補正画素値::Rb'、Gb'、Bb'、Rd'、Gd'、Bd'として算出して出力すればよいことになる。
【0150】
しかし、実際には、上記(式12)の右辺のRi,Gi,Biは理想値であることから求められないため、ブルーミング量推定部131は、近似処理として、撮像素子の出力に相当する補正処理部の入力である低感度画素の画素値:Rd,Gd,Bdを利用して理想画素値の推定値を以下の近似式(式13)に従って算出する。
ブルーミング量推定部131は、
Ri≒Rd×R,
Gi≒Gd×R,
Bi≒Bd×R、
・・・・・・(式13)
上記の近似式(式13)に従って、理想画素値:Ri,Gi,Biの推定値を算出する。
【0151】
図18に示すブルーミング量推定部131は、補正処理部に対する入力画素値である低感度画素の画素値:Rd,Gd,Bdを利用して、上記の近似式(式13)に従って、理想画素値:Ri,Gi,Biの推定値を算出し、さらに、前述した(式A)、(式B)に従って、各画素対応のブルーミング量:blmxx(Rd×R,Gd×R,Bd×R)を算出する。なお、xxは、Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bdである。
さらに、図18に示す演算部132は、撮像素子からの出力に相当する補正処理部に対する入力値:Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bdから、ブルーミング量推定部131の算出した各画素対応のブルーミング量:blmxx(Rd×R,Gd×R,Bd×R)を減算する処理を実行する。
【0152】
この演算処理の結果として、各入力画素値からブルーミング量を除去した出力値である補正画素値::Rb'、Gb'、Bb'、Rd'、Gd'、Bd'を出力する。
すなわち、以下の算出式(式14)に従って、補正画素値:Rb'、Gb'、Bb'、Rd'、Gd'、Bd'を算出して出力する。
Rb'≒Rb−blmRb(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
Gb'≒Gb−blmGb(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
Bb'≒Bb−blmBb(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
Rd'≒Rd−blmRd(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
Gd'≒Gd−blmGd(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
Bd'≒Bd−blmBd(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
・・・・・・(式14)
【0153】
図18に示す補正処理部130はこのようにして入力画素値:Rb、Gb、Bb、Rd、Gd、Bdに含まれるブルーミング量を推定し、推定したブルーミング量の除去を行い、除去した結果としての画素値を補正画素値:Rb'、Gb'、Bb'、Rd'、Gd'、Bd'として出力する。
【0154】
[4−2.数式モデルを利用し、過補正対策を施したブルーミング補正処理例]
次に、図19を参照して、過補正対策を施したブルーミング補正処理例について説明する。前述の[4−1.数式モデルを利用した基本的なブルーミング補正処理例]において説明した補正処理では、図18に示すブルーミング量推定部201が、近似処理として、撮像素子からの出力に相当する補正処理部に対する入力画素値である低感度画素の画素値:Rd,Gd,Bdを利用して理想画素値の推定値を以下の近似式に従って算出していた。
Ri≒Rd×R,
Gi≒Gd×R,
Bi≒Bd×R、
【0155】
しかし、実際には、撮像素子からの短時間露光画素(低感度画素)の入力画素値であるRd,Gd,Bd画素もブルーミングの影響を受けており、これらの画素のブルーミングの影響を考慮すると、多くの場合、以下の関係式が成立する。
Ri≦Rd×R
Gi≦Gd×R
Bb≦Bd×R
【0156】
従って、各画素のブルーミング量:blmxxは、
blmxx(Ri,Gi,Bi)≦blmxx(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
上記関係式が成立する。
ただし、xx=Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bd、
【0157】
上記のように、ブルーミング量を推定するための短時間露光画素(低感度画素)の入力画素値自体のブルーミング量を考慮すると、先に説明した[4−1.数式モデルを利用した基本的なブルーミング補正処理例]における補正処理は、過補正を行ってしまう場合がある。
【0158】
その対策として、下記のように、入力画素値である短時間露光画素(低感度画素)に基づいて推定するブルーミング量に対して、予め規定した減衰パラメータ:attxx:0≦attxx≦1を乗算して以下の式(式21)に従って、補正画素値:Rb'、Gb'、Bb'、Rd'、Gd'、Bd'を算出して出力する。
【0159】
Rb'≒Rb−attRb×blmRb(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
Gb'≒Gb−attGb×blmGb(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
Bb'≒Bb−attBb×blmBb(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
Rd'≒Rd−attRd×blmRd(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
Gd'≒Gd−attGd×blmGd(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
Bd'≒Bd−attBd×blmBd(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
・・・・・(式21)
ただし、
attxxは減衰パラメータで0≦attxx≦1の任意の係数
xx=Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bd、
【0160】
上記(式21)において、減衰パラメータ:attxxは、実際の補正量を抑制する役割を示す。
なお、減衰パラメータは、事前に、特定の光源下の特定の色におけるブルーミング量の推定値と実測値を測定しておき、その差を小さくするように調整することが好ましい。
【0161】
図19に示す補正処理部135はこのようにして入力画素値:Rb、Gb、Bb、Rd、Gd、Bdに含まれるブルーミング量を推定し、推定したブルーミング量の除去を行い、除去した結果としての画素値を補正画素値:Rb'、Gb'、Bb'、Rd'、Gd'、Bd'として出力する。
【0162】
まず、ブルーミング量推定部136は、撮像素子からの出力に相当する補正処理部に対する入力画素値である低感度画素の画素値:Rd,Gd,Bdを利用して、先に、[4−1.数式モデルを利用した基本的なブルーミング補正処理例]において説明した近似式(式13)に従って、理想画素値:Ri,Gi,Biの推定値を算出し、さらに、前述した(式A)、(式B)に従って、各画素対応のブルーミング量:blmxx(Rd×R,Gd×R,Bd×R)を算出する。なお、xxは、Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bdである。
【0163】
次に、図19に示す乗算部137は、ブルーミング量推定部131の算出した各画素対応のブルーミング量:blmxx(Rd×R,Gd×R,Bd×R)に対して、
減衰パラメータ:attxx、
ただし、
0≦attxx≦1、
xx=Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bd、
この減衰パラメータを乗算する。
【0164】
乗算部137の出力は、以下の各値となる。
attRb×blmRb(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
attGb×blmGb(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
attBb×blmBb(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
attRd×blmRd(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
attGd×blmGd(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
attBd×blmBd(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
【0165】
次に、図19に示す演算部138は、撮像素子からの出力に相当する補正処理部に対する入力値:Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bdから、乗算部137の出力を減算する処理を実行する。
すなわち、以下の演算により、各入力画素値からブルーミング量を除去した出力値である補正画素値::Rb'、Gb'、Bb'、Rd'、Gd'、Bd'を出力する。
【0166】
Rb'≒Rb−attRb×blmRb(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
Gb'≒Gb−attGb×blmGb(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
Bb'≒Bb−attBb×blmBb(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
Rd'≒Rd−attRd×blmRd(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
Gd'≒Gd−attGd×blmGd(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
Bd'≒Bd−attBd×blmBd(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
ただし、
attxxは減衰パラメータで0≦attxx≦1の任意の係数
xx=Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bd、
【0167】
[4−3.数式モデルを利用し、繰り返し補正を行う処理例]
先に説明した処理例では、ブルーミング量の推定値に基づいて、推定したブルーミング量を入力画素値から減算する処理を1回実行して補正画素値を出力する構成としていた。以下に説明する処理は、補正処理結果に対して、さらに補正画素値を用いて繰り返し補正を実行する処理例である。、
【0168】
例えば、前述の処理例[4−1]において、補正前の短時間露光画素(低感度画素)であるRdは、補正処理によって補正後の画素値Rd'が得られる。この補正前の画素値:Rdと、補正後の画素値:Rd'を比較すると、1度、補正を行った補正後の画素値:Rd'の方が真の値に近いはずである。
【0169】
すなわち、下記式が成立する。
|Rd−Ri/R|>|Rd'−Ri/R|
これは、Rdのみならず、Gd,Bdについても同様である。
【0170】
そこで、短時間露光画素(低感度画素)の補正後の画素値:Rd',Gd',Bd'を利用して、繰り返し、ブルーミング補正量を推定する。
【0171】
図20に示す補正処理部140は、2回の繰り返し処理によるブルーミング量の推定に基づく画素値補正を行う構成例であり、図21に示す補正処理部150は、3回の繰り返し処理によるブルーミング量の推定に基づく画素値補正を行う構成例である。
【0172】
図20に示す補正処理部140において、第1ブルーミング量推定部141は、補正処理部に対する入力画素値である低感度画素の画素値:Rd,Gd,Bdを利用して、先に、[x−1.数式モデルを利用した基本的なブルーミング補正処理例]において説明した近似式(式13)に従って、理想画素値:Ri,Gi,Biの推定値を算出し、さらに、前述した(式A)、(式B)に従って、各画素対応のブルーミング量:blmxx(Rd×R,Gd×R,Bd×R)を算出する。なお、xxは、Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bdである。
【0173】
次に、演算部142は、補正処理部に対する入力値:Rd,Gd,Bdから、第1ブルーミング量推定部131の算出した各画素対応のブルーミング量:blmxx(Rd×R,Gd×R,Bd×R)を減算する処理を実行して、第1補正画素値Rd',Gd',Bd'を算出する。
【0174】
さらに、第2ブルーミング量推定部143は、第1補正画素値Rd',Gd',Bd'を利用して、第1ブルーミング量推定部141と同様、先に、[4−1.数式モデルを利用した基本的なブルーミング補正処理例]において説明した近似式(式13)に従って、理想画素値:Ri,Gi,Biの推定値を算出し、さらに、前述した(式A)、(式B)に従って、各画素対応のブルーミング量:blmxx'(Rd×R,Gd×R,Bd×R)を算出する。なお、xxは、Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bdである。
【0175】
さらに、図20に示す演算部144は、補正処理部に対する入力値:Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bdから、第2ブルーミング量推定部143の算出した各画素対応のブルーミング量:blmxx'(Rd×R,Gd×R,Bd×R)を減算する処理を実行する。
この演算処理の結果として、各入力画素値からブルーミング量を除去した出力値である補正画素値::Rb"、Gb"、Bb"、Rd"、Gd"、Bd"を出力する。
【0176】
一方、図21に示す補正処理部150において、第1ブルーミング量推定部151は、補正処理部に対する入力画素値である低感度画素の画素値:Rd,Gd,Bdを利用して、先に、[4−1.数式モデルを利用した基本的なブルーミング補正処理例]において説明した近似式(式13)に従って、理想画素値:Ri,Gi,Biの推定値を算出し、さらに、前述した(式A)、(式B)に従って、各画素対応のブルーミング量:blmxx(Rd×R,Gd×R,Bd×R)を算出する。なお、xxは、Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bdである。
【0177】
次に、演算部152は、補正処理部に対する入力値:Rd,Gd,Bdから、第1ブルーミング量推定部151の算出した各画素対応のブルーミング量:blmxx(Rd×R,Gd×R,Bd×R)を減算する処理を実行して、第1補正画素値Rd',Gd',Bd'を算出する。
【0178】
さらに、第2ブルーミング量推定部153は、第1補正画素値Rd',Gd',Bd'を利用して、第1ブルーミング量推定部151と同様、先に、[4−1.数式モデルを利用した基本的なブルーミング補正処理例]において説明した近似式(式13)に従って、理想画素値:Ri,Gi,Biの推定値を算出し、さらに、前述した(式A)、(式B)に従って、各画素対応のブルーミング量:blmxx'(Rd×R,Gd×R,Bd×R)を算出する。なお、xxは、Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bdである。
【0179】
次に、演算部154は、補正処理部に対する入力値:Rd,Gd,Bdから、第2ブルーミング量推定部151の算出した各画素対応のブルーミング量:blmxx'(Rd×R,Gd×R,Bd×R)を減算する処理を実行して、第2補正画素値Rd",Gd",Bd"を算出する。
【0180】
さらに、第3ブルーミング量推定部155は、第2補正画素値Rd",Gd",Bd"を利用して、第1ブルーミング量推定部151と同様、先に、[4−1.数式モデルを利用した基本的なブルーミング補正処理例]において説明した近似式(式13)に従って、理想画素値:Ri,Gi,Biの推定値を算出し、さらに、前述した(式A)、(式B)に従って、各画素対応のブルーミング量:blmxx"(Rd×R,Gd×R,Bd×R)を算出する。なお、xxは、Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bdである。
【0181】
さらに、図21に示す演算部156は、補正処理部に対する入力値:Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bdから、第3ブルーミング量推定部155の算出した各画素対応のブルーミング量:blmxx"(Rd×R,Gd×R,Bd×R)を減算する処理を実行する。
この演算処理の結果として、各入力画素値からブルーミング量を除去した出力値である補正画素値::Rb"'、Gb"'、Bb"'、Rd"'、Gd"'、Bd"'を出力する。
【0182】
なお、2回、3回のブルーミング量推定の繰り返し処理のみならず、さらに多くの回数のブルーミング量推定処理を実行して補正処理を行う構成としてもよい。
【0183】
[4−4.LUT等、予め取得したデータに基づく補正処理例]
次に、ルックアップテーブル(LUT)など、予め取得したブルーミング補正データに基づく補正処理例について説明する。図18〜図21を参照して説明した処理例は、いずれも、入力画素値に基づいてブルーミング量を逐次算出し、算出したブルーミング量を利用した処理例としていた。
【0184】
しかし、この逐次算出手法の問題点として、ブルーミングの推定のためにブルーミングの影響を受けた画素値を使用している可能性があるということがある。
そのため、個別に異なるブルーミングの影響を受けた画素の画素値に基づいて、ある1つの算出モデルを利用した1回の演算処理で真の画素値を算出することは困難であると言える。
【0185】
しかし、前述した[1.撮像素子の特性の計測処理について]の項目において説明したように、事前計算であれば、
真の画素値から、ブルーミングの影響を受けた画素の画素値
を算出することは可能である。
しかも画素の信号値とブルーミングの影響は単調増加の関係があるため、逆関数が存在することも容易に想像できる。
【0186】
そこで、予めブルーミング量を測定し、ブルーミングの影響のない「真の画素値」と「ブルーミングの影響をうけた画素の画素値」との対応関係データを設定したLUT(ルックアップテーブル)を作成する。
【0187】
LUT(ルックアップテーブル)を利用したブルーミング補正を実行する補正処理部の構成を図22に示す。
図22に示す補正処理部160は、撮像素子から、長時間露光画素(高感度画素)の画素値:Rb,Gb,Bbと、短時間露光画素(低感度画素)の画素値:Rd,Gd,Bdを入力し、6次元ルックアップテーブル161による画素値補正を実行して、補正画素値:Rb',Gb',Bb'Rd',Gd',Bd'を出力する。
【0188】
6次元テーブル161は、
ブルーミングの影響をうけた画素の画素値:Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bdと、
ブルーミングの影響のない真の画素値:Rb',Gb',Bb'Rd',Gd',Bd'との対応関係を保持した6次元のルックアップテーブルである。
この6次元LUTに記録された対応関係データに従って、入力画素値(=ブルーミングの影響をうけた画素の画素値)に対する補正画素値(=ブルーミングの影響のない真の画素値)を取得して、出力する。
【0189】
ただし、6次元のLUTは、データ量が膨大になるという問題がある。
この問題点を解決する構成として、この結果を保持しながら軽量化する方法が考えられる。
【0190】
図23は、LUTを3次元化した構成例である。
図22に示す補正処理部165は、撮像素子から、長時間露光画素(高感度画素)の画素値:Rb,Gb,Bbと、短時間露光画素(低感度画素)の画素値:Rd,Gd,Bdを入力する。
長時間露光画素(高感度画素)の画素値:Rb,Gb,Bbについては、第1−3次元LUT166を利用して補正値の取得を実行して、補正画素値:Rb',Gb',Bbを出力する。
また、短時間露光画素(低感度画素)の画素値:Rd,Gd,Bdについては、第2−3次元LUT167を利用して補正値の取得を実行して、補正画素値:Rd',Gd',Bdを出力する。
【0191】
第1−3次元テーブル166は、
ブルーミングの影響をうけた長時間露光画素(高感度画素)の画素値:Rb,Gb,Bbと、
ブルーミングの影響のない真の長時間露光画素(高感度画素)の画素値:Rb',Gb',Bb'との対応関係を保持した3次元のルックアップテーブルである。
また、第2−3次元テーブル167は、
ブルーミングの影響をうけた短時間露光画素(低感度画素)の画素値:Rd,Gd,Bdと、
ブルーミングの影響のない真の短時間露光画素(低感度画素)の画素値:Rd',Gd',Bd'との対応関係を保持した3次元のルックアップテーブルである。
【0192】
これら2つの3次元LUTに記録された対応関係データに従って、入力画素値(=ブルーミングの影響をうけた画素の画素値)に対する補正画素値(=ブルーミングの影響のない真の画素値)を算出して、出力する。
【0193】
また、短時間露光画素(低感度画素)に対応する3次元ルックアップテーブルを利用した補正処理部の構成として、図24に示す補正処理部170の構成がある。
図24に示す補正処理部170は、先に図18を参照して説明した補正処理部130におけるブルーミング量推定部131を3次元LUT171に置き換えた構成である。
【0194】
ここで、3次元LUT171は、
ブルーミングの影響をうけた短時間露光画素(低感度画素)の画素値:Rd,Gd,Bdと、
各画素のブルーミング量との対応関係データを保持したテーブルである。
3次元LUT171の出力は、補正処理部に対する入力画素値である、短時間露光画素(低感度画素)の画素値:Rd,Gd,Bdに対応してLUTに従って求められる各画素のブルーミング量:BlmRb,BlmGb,BlmBb,BlmRd,BlmGd,BlmBdである。
【0195】
演算部172は、補正処理部に対する入力値:Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bdから、3次元LUT171の出力である各画素対応のブルーミング量:blmxx(Rd×R,Gd×R,Bd×R)を減算する処理を実行して、補正画素値::Rb'、Gb'、Bb'、Rd'、Gd'、Bd'を出力する。
【0196】
さらに、図25に示す補正処理部173のように、6つの1次元LUTを利用した構成としてもよい。
図25に示す1次元LUTは、以下のテーブル(T1)〜(T6)によって構成される。
(T1)ブルーミングの影響をうけた短時間露光画素(低感度画素)の画素値:Rbと、ブルーミングの影響のない真の短時間露光画素(低感度画素)の画素値:Rb'との対応関係を保持した1次元のルックアップテーブル。
(T2)ブルーミングの影響をうけた短時間露光画素(低感度画素)の画素値:Gbと、ブルーミングの影響のない真の短時間露光画素(低感度画素)の画素値:Gb'との対応関係を保持した1次元のルックアップテーブル。
(T3)ブルーミングの影響をうけた短時間露光画素(低感度画素)の画素値:Bbと、ブルーミングの影響のない真の短時間露光画素(低感度画素)の画素値:Bb'との対応関係を保持した1次元のルックアップテーブル。
(T4)ブルーミングの影響をうけた短時間露光画素(低感度画素)の画素値:Rdと、ブルーミングの影響のない真の短時間露光画素(低感度画素)の画素値:Rd'との対応関係を保持した1次元のルックアップテーブル。
(T5)ブルーミングの影響をうけた短時間露光画素(低感度画素)の画素値:Gdと、ブルーミングの影響のない真の短時間露光画素(低感度画素)の画素値:Gd'との対応関係を保持した1次元のルックアップテーブル。
(T6)ブルーミングの影響をうけた短時間露光画素(低感度画素)の画素値:Bdと、ブルーミングの影響のない真の短時間露光画素(低感度画素)の画素値:Bd'との対応関係を保持した1次元のルックアップテーブル。
これらの6つのテーブルである。
【0197】
さらに、1次元ルックアップテーブルを、各種の画素単位で、
ブルーミングの影響を受けた画素の画素値と、ブルーミング量との対応関係データとして設定すれば、図26に示す設定とした補正処理部174を構成することができる。
図26に示す補正処理部174は、Rbのみの処理構成として示しているがその他の画素についても同様の構成によって実現される。
補正処理部に対する入力画素値Rbは、1次元LUT176に入力され、1次元LUT175から、入力画素値Rbに対応するブルーミング量BlmRbが取得される。
【0198】
1次元LUT175から出力されるブルーミング量BlmRbは、演算部176において、補正処理部に対する入力画素値:Rbから減算され、補正画素値Rb'を出力する。すなわち、
Rb'=Rb−BrmRb
上記処理によってブルーミング量を除去した補正画素値を出力する。
【0199】
さらに、1次元ルックアップテーブルを、各種の画素単位で、
ブルーミングの影響を受けた画素の画素値と、
ブルーミングの影響を受けた画素の画素値とブルーミングの影響を受けない真の画素値との比率:k、
これらの対応関係データを設定した構成とすれば、図27に示す補正処理部177を構成することができる。
【0200】
具体的には、例えば、入力画素値をRbとした場合、1次元ルックアップテーブルは、
ブルーミングの影響を受けた画素の画素値:Rbと、
ブルーミングの影響を受けた画素の画素値:Rbとブルーミングの影響を受けない真の画素値:(Rb−blmRb)との比率:k=(Rb−blmRb)/Rb
これらの対応関係データを格納する。
Rb以外の画素についても同様の関係データを設定した1次元LUTを作成して利用する。
【0201】
図27に示す補正処理部177は、このような1次元LUT178を用いた構成である。なお、図27は、Rbのみの処理構成として示しているがその他の画素についても同様の構成によって実現される。
補正処理部に対する入力画素値Rbに基づいて、1次元LUT178からは、ブルーミングの影響を受けた画素の画素値:Rbとブルーミングの影響を受けない真の画素値:(Rb−blmRb)との比率:K=(Rb−blmRb)/Rbが出力される。
【0202】
1次元LUT178から出力される比率:k=(Rb−blmRb)/Rbは、乗算部179において、補正処理部に対する入力画素値:Rbに乗算され、補正画素値Rb'を出力する。すなわち、
Rb'=Rb×((Rb−blmRb)/Rb)
上記処理によってブルーミング量を除去した補正画素値を出力する。
【0203】
図28は、ある短時間露光画素の明るさが変化したときの、実測値(ブルーミングの影響を受けた画素値)と理想値(真の画素値)の変化を表したグラフである。
図29は、図28に示す特性に基づいて、図27に示す1次元LUTで使用する対応データの関係を表した図である。
すなわち、
画素値:ブルーミングの影響を受けた画素の画素値:xxと、
ブルーミング補正倍率:ブルーミングの影響を受けた画素の画素値:xxとブルーミングの影響を受けない真の画素値:(xx−blmxx)との比率k=(xx−blmxx)/xx
これらの対応関係データを示したグラフである。
ただし、xx=Rb,Gb,Bb,Rd,Gd.Bdである。
【0204】
図29に示すように、
縦軸に示すブルーミング補正倍率は、最大値=1であり、横軸に示す画素値(入力画素値)に応じて1以下の値を推移する。
領域は、大きく分けて、画素値が小〜大(右方向)に向けて、以下の3種類に区分される。
ブルーミングの発生していない画素値領域、
一部の画素からブルーミングが発生している領域、
すべての高感度画素が飽和している領域、
【0205】
ブルーミングの発生していない画素値領域では、
画素Rbを例として説明すると、
ブルーミング補正倍率:k=(Rb−blmRb)/Rb=1
であり、図27に示す補正処理部177の構成において出力画素値Rb'は、入力画素値Rbと同一に設定される。
【0206】
一部の画素からブルーミングが発生している領域では、
ブルーミング補正倍率:k=(Rb−blmRb)/Rb<1
であり、図27に示す補正処理部177の構成において出力画素値Rb'は、入力画素値Rb以下の画素値に設定される。
【0207】
すべての高感度画素が飽和している領域では、
ブルーミング補正倍率:k=(Rb−blmRb)/Rb<1
であり、図27に示す補正処理部177の構成において出力画素値Rb'は、入力画素値Rb以下の画素値に設定される。この場合、周囲の隣接高感度画素からのブルーミングの発生に基づくブルーミング量に基づいて倍率が算出されることになる。
【0208】
図29に示す対応データ(LUT)を、Rb,Gb,Bb,Rd,Gd.Bdの各々について生成し、各入力画素の種類に応じて利用するLUTを選択して利用する。
この処理により、各入力画素値:Rb,Gb,Bb,Rd,Gd.Bdに基づいてブルーミング量を除去した補正画素値を算出して出力することができる。
【0209】
なお、図27を参照して説明した補正処理部177では、1次元LUT178として、
ブルーミングの影響を受けた画素の画素値:Rbと、
ブルーミングの影響を受けた画素の画素値:Rbとブルーミングの影響を受けない真の画素値:(Rb−blmRb)との比率K=(Rb−blmRb)/Rb
これらの対応関係データを格納した例を説明した。
具体的には、図29に示す対応関係データである。
【0210】
この図29に示す対応関係データは、例えば、一部の画素からブルーミングが発生している領域では、複雑な折れ線または曲線として設定されるため、LUTとして構成するとデータ量が増大してしまう。
【0211】
そこで、図29に示す関係データを図30に示すような単純な折れ線データとした近似処理を実行し、この近似結果を反映させる処理を行う構成としてもよい。
具体的には、例えば図31に示すような倍率近似部181を有する補正処理部180を構成することができる。
【0212】
図31に示す補正処理部180は、先に図27を参照して説明した補正処理部177の1次元LUT178の代わりに倍率近似部181を設定した構成である。
倍率近似部181は、図30に示すような単純な折れ線データに従って、入力画素の画素値に応じたブルーミング補正倍率を出力する。
具体的には、例えば、入力画素値が図30に示す、
領域aでは,ブルーミング補正倍率=1、
領域bでは、図30に示す領域bの近似直線に従ったブルーミング補正倍率(1〜p)、
領域cでは、ブルーミング補正倍率=p、
これらの倍率を出力する。
乗算部182は、この倍率を入力画素値に乗算して補正画素値Rb'を出力する。
このような構成とすることで、ハードウェア構成を簡略化することが可能となる。
【0213】
同様に、先に図23を参照して説明した3次元LUTを用いた構成についても、近似データを用いた補正部を構成することが可能である。
図32を参照して、この構成例について説明する。
【0214】
図32に示す補正処理部185は、輝度生成部186、マトリクス係数生成部197、マトリクス処理部188を有する。
輝度生成部186では、補正処理部に対する入力画素値である短時間眼露光画素(低感度画素)の画素値:Rd,Gd,Bdから輝度情報:Ldを生成する。
例えば、下記のような加重平均を用いる。
Ld=(Crd×Rd+Cgd×Gd+Cbd×Bd)/(Crd+Cgd+Cbd)
ただし、Crd,Cgd,Cbdは任意の係数である。
【0215】
マトリクス係数生成部187では、輝度生成部186の生成した輝度Ldに依存する係数:a(Ld),b(Ld),…,i(Ld)を生成して、マトリクス処理部188に出力する。
【0216】
マトリクス処理部188では、マトリクス係数生成部187の生成した係数:a(Ld),b(Ld),…,i(Ld)を用いて、入力画素値:Rd,Gd.Bdのマトリクス演算を実行して補正画素値:Rd',Gd',Bd'を生成して出力する。
マトリクス処理部188の実行するマトリクス演算は、例えば以下の(式9)に示す演算である。
【0217】
【数9】

・・・(式9)
【0218】
なお、上記のマトリクス演算は、輝度生成部186の生成する輝度情報:Ldが固定値の場合、通常のセンサにおける混色の問題を補正するリニアマトリクスと呼ばれる処理と同様である。すなわち、ブルーミングの問題をリニアマトリクス処理の拡張処理として補正することができる。
【0219】
図33は、ある画素の、短時間露光画素(低感度画素):Rd,Gd,Bdの明るさ(輝度)と画素出力値の変化を示している。
点線が理想特性で、実線がブルーミングの影響を受けた実特性である。
明るさが小さい所(低輝度領域)では、高感度画素の飽和が発生しておらず、ブルーミングが起こっていないため、理想特性と実特性は同じであるが、明るくなるにつれて、すなわち高輝度領域に進むに従って、理想特性と実特性のずれが大きくなる。
【0220】
上記のマトリクス処理による補正方法では、明るさが増すに従って混色を補正する係数を大きくすることによってブルーミングを補正しようとするものである。
【0221】
[4−5.異なる補正手法の組み合わせによるブルーミング補正処理について]
これまでの説明において、
4−1.数式モデルを利用した基本的なブルーミング補正処理例
4−2.数式モデルを利用し、過補正対策を施したブルーミング補正処理例
4−3.数式モデルを利用し、繰り返し補正を行う処理例
4−4.LUT等、予め取得したデータに基づく補正処理例
これらのブルーミング補正処理例について説明してきた。
【0222】
これらの各補正処理のうち、(4−2)〜(4−4)の各処理例は、数式モデルを利用した手法であり、最終的には理想特性に近づけることが可能なものの、一度の演算で真の値に近づけるのが難しいといえる。
一方で(4−4)のLUT等、予め取得したデータに基づく補正処理は、実測値と理想特性の対応関係を事前に取得することによって、1度で理想特性に補正する手法である。しかしながらLUTの実装はコストがかかり、LUTを数式近似した場合には、補正誤差が残ってしまう。
【0223】
数式モデルに基づく補正と、予め取得したデータに基づく補正の両方を組み合わせることで、各処理の欠点を補い、各処理の利点を利用した構成が実現可能である。
例えば1つの組み合わせ構成例を、図34に示す。
【0224】
図34に示す補正処理部190は、先に、図31を参照して説明した倍率近似部をと乗算部からなる演算部191と、ブルーミング量推定部192と、演算部193を有する。
【0225】
演算部191は、先に、図31を参照して説明した処理と同様、短時間露光画素(低感度画素)の各画素値:Rd,Gd,Bdを入力して、図30に示す近似直線に応じたブルーミング補正倍率に基づく補正画素値を生成してブルーミング量推定部192に入力する。
【0226】
ブルーミング量推定部192は、この補正画素値に基づいて、各画素:Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bdに対応するブルーミング量:Blmrb,BlmGb,BlmBb,BlmRd,BlmGd,BlmBdを生成して演算部193に出力する。
【0227】
演算部193は、入力画素値:Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bdの各々について、ブルーミング量推定部192から出力されるブルーミング量:Blmrb,BlmGb,BlmBb,BlmRd,BlmGd,BlmBdを減算する演算処理を実行して、ブルーミング量を除去した補正画素値:Rb'、Gb'、Bb'、Rd'、Gd'、Bd'を出力する。
【0228】
この補正処理部190は、演算部191では、LUT等の既算出データに基づく補正値を算出し、この補正値を利用して、後段のブルーミング量推定部において、数式モデルを適用したブルーミング量の推定を実行して、推定したブルーミング量を入力画素値から減算して補正画素値を生成して出力する構成である。
すなわち、LUT等の既算出データに基づく補正値によって、誤差を持ちながらも理想値に近い特性に収束させ、その後、数式モデルを利用したブルーミング量を算出して、より正確な理想特性に収束させる補正値を生成して出力する構成である。
【0229】
[4−6.動被写体やエッジによる過補正の対策を施した補正処理例]
次に、動被写体やエッジによる過補正の対策を施した補正処理例について説明する。
これまでに説明した補正方法は、画像が平坦で、動きがないことを想定してモデル化してきた。
しかしながら、実際には画像の画像には、様々な被写体があり、エッジのある被写体や、動きのある被写体が含まれる。
【0230】
これまでに説明してきたブルーミング補正処理例は、ブルーミング量の推定のために短時間露光画素(低感度画素)の画素値:Rd,Gd,Bdを利用している。従って、画像のエッジや動被写体の影響により以下のような問題が発生することがある。
低感度画素の画素値が高感度画素の画素値よりも相対的に大きな値になると、ブルーミング補正量を大きめに見積もってしまうことよる過補正が発生する。
高感度画素の画素値が低感度画素の画素値よりも相対的に大きな値になると、ブルーミング補正量を小さめに見積もってしまうことによる補正残りが発生する。
このような問題が発生する場合がある。
【0231】
この問題の対策例について、図35を参照して説明する。
先に、図18を参照して説明した[4−1.数式モデルを利用した基本的なブルーミング補正処理例]においては、
長時間露光画素(高感度画素):Rb,Gb,Bbの補正画素値:Rb',Gb',Bb'の算出は以下の処理によって行うものとして説明した。
Rb'=Rb−blmRb(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
Gb'=Gb−blmGb(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
Bb'=Bb−blmBb(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
上記のように高感度画素:Rb,Gb,Bbの補正値は、低感度画素:Rd,Gd,Bdの画素値を利用して算出していた。
【0232】
しかし、動被写体やエッジの影響により、低感度画素の画素値が高感度画素の画素値よりも相対的に大きくなってしまう場合、高感度画素は飽和していないためブルーミングを発生していないにもかかわらず、上記の補正画素値算出処理に従うと、低感度画素の画素値からの推定処理によって、高感度画素にブルーミングによる画素値変化があるとみなされ、実際はブルーミングの影響の無い高感度画素に対して、上記の式に従った補正をかけてしまうという過補正が起こりうる。
【0233】
このような高感度画素に対する過補正を防止する構成を持つ補正処理部の構成例を図35に示す。
図35に示す補正処理部195は、図18に示す補正処理部のブルーミング量推定部の後段に過補正対策部197を設けた構成である。
【0234】
図35に示す補正処理部195は、撮像素子から長時間露光画素(高感度画素)の画素値:Rb,Gb,Bb,短時間露光画素(低感度画素)の画素値:Rd,Gd,Bdの各画素値を入力する。
【0235】
ブルーミング量推定部196は、先に図18を参照して説明したブルーミング量推定部131と同様の処理を実行する。すなわち、
ブルーミング量推定部196は、
Ri≒Rd×R,
Gi≒Gd×R,
Bi≒Bd×R、
上記の近似式に従って、理想画素値:Ri,Gi,Biの推定値を算出し、前述した(式A)、(式B)に従って、各画素対応のブルーミング量:blmxx(Rd×R,Gd×R,Bd×R)を算出して、この算出したブルーミング量を過補正対策部197に出力する。なお、xxは、Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bdである。
【0236】
過補正対策部197は、ブルーミング量推定部196から各画素対応のブルーミング量を入力し、さらに、補正処理部に対する入力画素値:Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bdを入力して、ブルーミング量推定部196の算出したブルーミング量の補正を行う。
【0237】
過補正対策部197は、予め設定したしきい値(Th)と入力画素の画素値とを比較して、演算部に出力するブルーミング量を補正し、補正したブルーミング量:Blm'xxを生成して演算部198に出力する。
【0238】
具体的には、例えば、以下のような処理を実行する。Rbを例として説明するが
他の画素についても同様に処理を行う。
・Rb<Thの場合、
補正ブルーミング量:Blm'Rb=0、
とする。
・Rb≧Thの場合、
補正ブルーミング量:Blm'Rb=BlmRb、
とする。
【0239】
すなわち、補正処理部に対する入力画素値がしきい値(Th)より小さい場合は、ブルーミング量推定部196の算出したブルーミング量を0に補正して演算部198に出力する。
また、補正処理部に対する入力画素値がしきい値(Th)以上である場合は、ブルーミング量推定部196の算出したブルーミング量をそのまま演算部198に出力する。
【0240】
図35に示す演算部198は、補正処理部に対する入力値:Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bdから、ブルーミング量推定部131の算出した各画素対応のブルーミング量:blmxx(Rd×R,Gd×R,Bd×R)を減算する処理を実行する。
【0241】
なお、しきい値(Th)は、画素の飽和値レベルに設定する。この処理によって、例えば、補正処理部に対する入力画素の画素値が飽和していない場合、その色画素からのブルーミングは発生していないとの判定に基づく過補正が防止される。
【0242】
なお、上記処理は例えばブルーミング補正対象となる注目画素が動きのある画像領域である場合やエッジ領域である場合にブルーミング量を0にセットする処理として行われる。
【0243】
この処理のため、例えば、補正処理部195に、注目画素が動き領域であるか否かを示す動き情報、エッジ領域であるか否かを示すエッジ情報を入力して、これらの情報に応じて処理を切り替える構成としてもよい。なお、これらの構成を備えたブルーミング補正処理部の構成例については、図38を参照して後段で説明する。
【0244】
なお、先に図18を参照して説明した補正画素値の算出は、前述のように、以下の補正画素値算出式に従って行われていた。
Rb'≒Rb−blmRb(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
Gb'≒Gb−blmGb(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
Bb'≒Bb−blmBb(Rd×R,Gd×R,Bd×R)
【0245】
上記式の適用において、補正処理部に対する入力画素値である高感度画素の画素値:Rb,Gb,Bbが飽和している場合がある。
高感度画素が飽和して最大値を一定に出力していても、低感度画素Rd,Gd,Bdは大きくなり、上記の補正画素値算出式に含まれるブルーミング量:blmRb,blmGb,blmBbの値は大きくなる。
【0246】
従って、ブルーミング補正した結果の補正画素値がどんどん小さくなるという問題が発生することがある。
具体例について図36(A)を参照して説明する。
図36(A)は、横軸が被写体の明るさ、縦軸が画素の出力信号値(画素値)を示している。
実線がブルーミング補正を実行した場合の出力信号であるブルーミング補正信号、
細かい点線がブルーミング補正を実行しない場合の撮像素子からの出力であるセンサ信号、
粗い点線が理想信号を示している。
【0247】
前述のように、ブルーミング補正を行うと、前記の補正画素値算出式に含まれるブルーミング量の分、信号値が減少することになる。
短時間露光画素(低感度画素)の画素値は、被写体明るさが高くなると画素値が大きくなり、その結果として算出されるブルーミング量も大きくなる。
この結果、例えば、図36(A)に示すセンサ出力信号の飽和点を超えた明るさ領域において、明るさが増すほどブルーミング補正信号は、低下してしまうことになる。
【0248】
これは、被写体明るさを反映しない結果となる。このような事態の発生を防止するための処置として、飽和を検出した時には補正をやめるという設定としてもよい。
飽和の検出は、例えば、以下の2通りの方法(a),(b)のいずれかを採用可能である。
(a)補正処理部に対する入力画素値である高感度画素の画素値を使用して、高感度画素の飽和を検出する方法。具体的には、予め設定した閾値(Th1)と高感度画素の入力画素値、例えばRbとの比較を以下のように行う。
・Rb>Th
上記式を満足する場合は飽和していると判定し、ブルーミング補正を行わず、上記式を満足しない場合は飽和していないと判定してブルーミング補正を実行する。
【0249】
(b)補正処理部に対する入力画素値である低感度画素の画素値を使用して、高感度画素の飽和を検出する方法。具体的には、予め設定した閾値(Th2)と低感度画素の入力画素値、例えばRdとの比較を以下のように行う。
・Rd>Th
上記式を満足する場合は飽和していると判定し、ブルーミング補正を行わず、上記式を満足しない場合は飽和していないと判定してブルーミング補正を実行する。
【0250】
図36(B)は低感度画素を利用して高感度画素の飽和を検出し、検出部の補正を行わない場合の例を示しており、実線で示すブルーミング補正信号が、理想信号の飽和レベルを超えた位置において、低下することなく一定のレベルを保持した信号値として出力される。
【0251】
[5.撮像装置の構成例]
次に、上述したブルーミング補正処理を実行する撮像装置の全体構成例について説明する。
【0252】
[5−1.撮像装置の構成例1]
図37は、上述したブルーミング補正処理を実行する撮像装置200の構成例を示す図である。
撮像装置200は、レンズ201を介して被写体光を入力し、撮像素子(イメージセンサ)202に被写体光を入力する。
撮像素子(イメージセンサ)202は、例えば、先に図8を参照して説明したように画素毎に異なる露光時間となるような露光制御可能な撮像素子である。この露光制御信号は制御部205から入力される。なお、画素領域単位の露光制御処理については、例えば前述の特許文献5に記載があり、この記載の手法が適用可能である。
【0253】
制御部205は、撮像装置200の全体的な制御を実行する。制御部205はCPU等のプログラム実行機能を備え、例えば図示しない記憶部に格納されたプログラムに従って各構成部の制御を実行し、画像撮影、画像補正等、撮像装置において実行するデータ処理の制御を行う。
【0254】
なお。長時間露光と短時間露光の設定による画像撮影処理は、例えば先に図9を参照して説明した処理シーケンスに従って実行される。
先に図9を参照して説明したように、露光時間は、画素のリセットと読み出しのタイミングによって決まる。
読み出しタイミングを一定とすると、
・リセットタイミングをより早い時刻にすることにより露光時間は長くなり、
・リセットタイミングをより遅い時刻にすることにより露光時間は短くなる。
画素毎(あるいは行毎、など)に上記制御を行うことにより、例えば図8に示すような、様々なパターンの感度配列を実現することができる。

図37に示すように、撮像素子202における光電変換処理によって生成される各画素の信号はセンサ画像203としてブルーミング補正処理部204に入力される。
ブルーミング補正処理部203は、上述したブルーミング補正処理をほ実行する。
【0255】
ブルーミング補正処理部203の全体構成例について図38を参照して説明する。
ブルーミング補正処理部204は、信号生成部251、動き検出部252、エッジ検出部253、補正処理部254を有する。
【0256】
信号生成部251は、補正処理部254において補正対象とする1つの注目画素の画素位置に対応する6つの画素値、すなわち、
長時間露光画素(高感度画素)のRGB各画素値:Rb,Gb,Bb、
短時間露光画素(低感度画素)のRGB各画素値:Rd,Gd,Bd、
これらの各画素値を取得または生成する。
【0257】
具体的には注目画素の周辺画素から各色・感度の画素値を取得する。
Rb:Redの長時間露光画素(高感度画素)の画素値
Gb:Greenの長時間露光画素(高感度画素)の画素値
Bb:Blueの長時間露光画素(高感度画素)の画素値
Rd:Redの短時間露光画素(低感度画素)の画素値
Gd:Greenの短時間露光画素(低感度画素)の画素値
Bd:Blueの短時間露光画素(低感度画素)の画素値
である。
【0258】
信号生成部251における信号生成処理例について、周辺画素を用いて線形補間によって画素値を生成する手法について図39を参照して説明する。
図39は、ブルーミング補正処理の実行対象とする注目画素を図39に示す5×5画素の中央のRb33としたときの処理例について説明する図である。
【0259】
信号生成部251は、図39に示すように注目画素Rb33を中心とした5×5画素を参照画素領域として設定し、Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bdを以下の式(式31)に従って算出する。
Rb=(c31×Rb31+c33×Rb33+c35×Rb35)/(c31+c33+c35)
Gb=(c32×Gb32+c34×Gb34+c41×Gb41+c43×Gb43+c45×Gb45)/(c32+c34+c41+c43+c45)
Bb=(c41×Bb42+c44×Bb44)/(c41+c44)
Rd=(c11×Rd11+c13×Rd13+c15×Rd15+c51×Rd51+c53×Rd53+c55×Rd55)/(c11+c13+c15+c51+c53+c55)
Gd=(c12×Gd12+c14×Gd14+c21×Gd21+c23×Gd23+c25×Gd25+c52×Gd52+c54×Gd54)/(c12+c14+c21+c23+c25+c52+c54)
Bd=(c22×Bd22+c24×Bd24)/(c22+c24)
・・・・・・(式31)
ただし、c11〜c55はフィルタ係数
【0260】
上記式(式31)は、注目画素を中心とした5×5画素領域に含まれるRb,Gb,Bb.Rd,Gd,Bdの各画素を参照画素として適用し、これらの参照画素に基づいて、注目画素位置の各画素値を線形補間処理によって算出する処理を基本とした処理である。なお、フィルタ係数は注目画素から参照画素間の距離や、画素値勾配に応じて決定するといった構成が可能である。
【0261】
信号生成部251の生成した注目画素位置におけるRb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bdの各画素値は、補正処理部254に入力される。
【0262】
補正処理部254は、上述のブルーミング補正、すなわち、項目[x.ブルーミング補正処理の実施例]において説明した以下のブルーミング補正処理、すなわち、
4−1.数式モデルを利用した基本的なブルーミング補正処理例
4−2.数式モデルを利用し、過補正対策を施したブルーミング補正処理例
4−3.数式モデルを利用し、繰り返し補正を行う処理例
4−4.LUT等、予め取得したデータに基づく補正処理例
4−5.異なる補正手法の組み合わせによるブルーミング補正処理について
4−6.動被写体やエッジによる過補正の対策を施した補正処理例
これらのいずれかの処理態様に従ったブルーミング補正処理を実行する。
【0263】
動き検出部252、エッジ検出部253は、上記の[4−6.動被写体やエッジによる過補正の対策を施した補正処理例]に対応する処理を行う場合に利用される。
前述したように、画像のエッジ部分や動被写体があると、ブルーミング過剰に補正したり、補正不足になることがある。そうした副作用を最小限に留めるために、動き検出部252、エッジ検出部253において検出を行い、これらの検出情報が補正処理部254に提供される。
【0264】
動き検出部252は、画像のその領域が動被写体であるかどうかを検出する。
撮像素子202から入力するセンサ画像203に含まれるG画素の低感度画像Gd,高感度画像Gb,露光時間の比率をRとすると、理想的には次の関係が成り立つ。
Gb=Gd×R、
ただしRは、長時間露光画素と短時間露光画素との露光比(Tb/Td)である。
【0265】
そこで、この前提を利用して、以下の式によって低感度画像Gdと高感度画像Gbとの差分(Mdet0)を算出して、差分が所定のしきい値以上である場合に動きありと判定する動き検出方法が適用できる。
Mdet0=|Gb−Gd×R|
【0266】
あるいは、低感度画像Gdと高感度画像Gbとの比(Mdet1)を以下の式に従って算出して、比(Mdet1)が所定のしきい値以上である場合に動きありと判定する動き検出方法が適用できる。
GMax=Max(Gb,Gd×R)
GMin=Min(Gb,Gd×R)
Mdet1=GMax/GMin
【0267】
Max(A,B)はAとBのうち大きいものを返す関数を意味し、Min(A,B)はAとBのうち小さいものを返す関数を意味する。上記の差分(Mdet0)や比(Mde1)が、ノイズやブルーミングの影響を考慮した上で、十分に大きい値である場合、画像に動きがあったと判定し、動き検出情報を補正処理部254に提供する。
【0268】
エッジ検出部253は、ブルーミング補正対象となる注目画素領域がエッジ領域であるかどうかを検出する。
例えば、図39に示す注目画素Rb33についてのエッジ判定処理は、周囲の画素値を用いて以下のようにエッジ判定値(Edet)を算出する。
Edet=|Gb32-Gb34|+|Gb32-Gb43|+|Gb43-Gb34|+|Gb12-Gd23|+|Gd23-Gd14|
上記の様に近隣の同色画素の差分絶対値を足し合わせることによってエッジ判定値(Edet)を算出する。
【0269】
エッジ判定値(Edet)の値がノイズを考慮した値よりも、十分に大きい場合、そこにエッジがあると判定する。
このエッジ判定情報は、補正処理部254に提供される。
【0270】
補正処理部254は、処理対象となる注目画素に対応する動き検出部252からの情報が動きありの情報である場合、または、エッジ検出部253からの情報がエッジ領域であるとの情報である場合は、上述の[4−6.動被写体やエッジによる過補正の対策を施した補正処理例]に従ったブルーミング補正を実行する。
【0271】
図37に戻り、撮像装置200の構成と処理についての説明を続ける。
ブルーミング補正処理部204は、上述したように、項目[x.ブルーミング補正処理の実施例]において説明した以下のブルーミング補正処理、すなわち、
4−1.数式モデルを利用した基本的なブルーミング補正処理例
4−2.数式モデルを利用し、過補正対策を施したブルーミング補正処理例
4−3.数式モデルを利用し、繰り返し補正を行う処理例
4−4.LUT等、予め取得したデータに基づく補正処理例
4−5.異なる補正手法の組み合わせによるブルーミング補正処理について
4−6.動被写体やエッジによる過補正の対策を施した補正処理例
これらのいずれかの処理態様に従ったブルーミング補正処理を実行する。
【0272】
このブルーミング補正結果としてブルーミング補正画像206を生成してHDR(広ダイナミックレンジ画像)合成処理部207に出力する。
HDR(広ダイナミックレンジ画像)合成処理部207は、画像に含まれる長時間露光画素(高感度画素)と短時間露光画素(低感度画素)を利用した合成処理を実行して広ダイナミックレンジ画像を生成する。
【0273】
HDR(広ダイナミックレンジ画像)合成処理部207の詳細構成例を図40に示す。
高感度全帯域信号生成部301、低感度全帯域信号生成部302は、ごく近傍の画素のみを用いて高周波成分も含むG画素の画素全帯域信号を生成する。この全帯域信号生成処理に際しては、線形補間やエッジ方向判定を使用する。一例として、図41に示す7×7画素の中心画素Bb44を注目画素として、注目画素位置に、線形補間でG画素の全帯域信号を生成する式を示す。
Gb=(3・Gb34+2・Gb43+2・Gb45+Gb74)/8・・・(式32)
Gd=(4・Gd54+Gd23+Gd25)/6・・・(式33)
【0274】
高感度全帯域信号生成部301は上記(式32)に従って、G画素の高感度全帯域信号を生成する。
低感度全帯域信号生成部302は上記(式33)に従って、G画素の低感度全帯域信号を生成する。
【0275】
高感度低周波信号生成部303、低感度低周波信号生成部304は、やはり注目画素の周辺画素を利用した処理によって低周波信号を生成する。図41に示す7×7画素の中心画素Bb44を注目画素として、注目画素位置のRb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bdに対応する低周波信号:mRb,mGb,mBb,mRd,mGd,mBdを生成する式を示す。
周辺の画素を利用して低周波成分のみを含むR,G,Bの各信号を生成する。
mRb=Σ(Crbij×Rbij)/ΣCrbij・・・(式34)
mGb=Σ(Cgbij×Gbij)/ΣCgbij・・・(式35)
mBb=Σ(Cbbij×Bbij)/ΣCbbij・・・(式36)
mRd=Σ(Crdij×Rdij)/ΣCrdij・・・(式37)
mGd=Σ(Cgdij×Gdij)/ΣCgdij・・・(式38)
mBd=Σ(Cbdij×Bdij)/ΣCbdij・・・(式39)
ただし、Crbij,Cgbij,Cbbij,Crdij,Cgdij,Cbdijは係数。
【0276】
高感度低周波信号生成部203は、上記の(式34)、(式35)、(式36)に従って、注目画素位置のRb,Gb,Bbに対応する低周波信号:mRb,mGb,mBbを生成する。
低感度低周波信号生成部204は、上記の(式37)、(式38)、(式39)に従って、注目画素位置のRd,Gd,Bdに対応する低周波信号:mRd,mGd,mBdを生成する。
【0277】
次に、HDR全帯域信号生成部305、HDR低周波信号生成部306の構成と処理について説明する。
図42は、HDR全帯域信号生成部305の構成の一例を示す図である。
HDR全帯域信号生成部305は、高感度全帯域信号生成部301の生成したGの高感度画像と、低感度全帯域信号生成部302の生成したGの低感度画像を合成し、HDR画像を生成する。
感度比R401は、低感度画像と高感度画像の感度比、露光時間の比率を表す。低感度画像に対して感度比R401を乗算した感度調整低感度画像と高感度画像をブレンド処理部404に入力してブレンドする。
【0278】
ブレンド処理部404は、ブレンド率算出部403の算出したブレンド率に応じて、低感度画像と高感度画像の対応画素のブレンド処理を実行する。
ブレンド率算出部403は、処理対象画素(注目画素)の明るさに応じたブレンド率を設定してブレンド処理部404に出力する。
具体的には、注目画素が明るい時には、高感度画素Gdは飽和しており、飽和していない低感度画素Gdの重みを上げ、暗い時には、低感度画素Gdはノイズに埋もており、ノイズの少ない高感度画素Gdの重みを上げるように、ブレンド率を決定する。
【0279】
図42に示す処理構成を式で表すと、次のように記述できる。
If(Gb<Th)
G=Gb
Else
G=Gd×R
【0280】
HDR低周波信号生成部306も、
mRbと、mRdとの処理、
mGbと、mGdとの処理、
mBbと、mBdとの処理、
これらの各信号の組み合わせに対して、図42を参照して説明した処理と同様の処理を実行する。
【0281】
相関処理部307は、Gの高周波成分を使用して、R,B信号を生成する処理を実行する。例えば次の式(式40)、(式41)に従ってGの高周波成分を使用して、R,B信号を生成する。
R=mR×G/mG・・・(式40)
B=mB×G/mG・・・(式41)
【0282】
図37に戻り、撮像装置20の構成と処理についての説明を続ける。
HDR合成処理部207の生成したHDR画像208は、諧調変換部209に入力され、諧調変換処理が実行される。具体的には、例えばHDR画像208の各画素の構成ビット数を削減する処理、例えば10bitデータを8bitデータに設定する処理等を実行する。
この処理は、次段のカメラ信号処理部210において処理可能なビット数への変換処理として実行される処理である。
【0283】
カメラ信号処理部210は、一般的なカメラ信号処理、例えばホワイトバランス調整処理やガンマ補正処理等の信号処理を実行して出力画像211を生成して出力する。
【0284】
[5−2.撮像装置の構成例2]
次に、図43を参照して撮像装置の第2構成例について説明する。
図43に示す撮像装置500は、図37を参照して説明した撮像装置200のブルーミング補正処理部204とHDR合成処理部207を1つの統合処理部504として構成したものである。
【0285】
この構成により、ブルーミング補正処理,HDR合成処理を、併せて行うことにより、処理の共通化を行い、演算にかかる時間あるいや、ハードウェアの実装コストを削減できる。
【0286】
撮像装置500は、レンズ501を介して被写体光を入力し、撮像素子(イメージセンサ)502に被写体光を入力する。
撮像素子(イメージセンサ)502は、例えば、先に図8を参照して説明したように画素毎に異なる露光時間となるような露光制御可能な撮像素子である。この露光制御信号は制御部509から入力される。
【0287】
撮像素子502における光電変換処理によって生成される各画素の信号はセンサ画像503として統合処理部504に入力される。
統合処理部504は、ブルーミング補正および広ダイナミックレンジ(HDR)画像生成処理を実行する。
図44に統合処理部504の具体例について示す。
ブルーミング補正のためには、各感度・色のデータが必要であるが、ここでは、高感度低周波信号生成部603,低感度低周波信号生成部604の生成する低周波信号(mRb,mGb,mBb,mRd,mGd,mBd)を利用してブルーミング補正を行なう構成としている。
【0288】
高感度全帯域信号生成部601、低感度全帯域信号生成部602は、ごく近傍の画素のみを用いて高周波成分も含むG画素の画素全帯域信号を生成する。
高感度全帯域信号生成部601は前述の(式32)に従って、G画素の高感度全帯域信号を生成する。
低感度全帯域信号生成部602は前述の(式33)に従って、G画素の低感度全帯域信号を生成する。
高感度低周波信号生成部603、低感度低周波信号生成部604は、やはり注目画素の周辺画素を利用した処理によって低周波信号を生成する。
先に説明した(式34)〜(式39)に従って低周波信号(mRb,mGb,mBb,mRd,mGd,mBd)を生成する。
【0289】
補正処理部605が、先に説明した図38に示す補正処理部254と同様のブルーミング補正を実行する補正処理部であり、感度低周波信号生成部603,低感度低周波信号生成部604の生成する低周波信号(mRb,mGb,mBb,mRd,mGd,mBd)を利用してブルーミング補正を行なう。
図44に示すその他の構成部は、図40を参照して説明した各構成部の処理と同様の処理となる。
HDR全帯域信号生成部606、HDR低周波信号生成部607,608は各入力信号に基づく広ダイナミックレンジ画像を生成する。
相関処理部609は、Gの高周波成分を使用して、R,B信号を生成する処理を実行する。例えば前述の式(式40)、(式41)に従ってGの高周波成分を使用して、R,B信号を生成する。
【0290】
先に図37以下を参照して説明した第1構成例では、ブルーミング補正処理、HDR合成処理の両方でラインメモリを使用する必要があったが、この図43、図44に示す構成例ではHDR合成処理分のラインメモリだけで済む点メリットがある。
【0291】
図45は、図44と同様にHDR合成とブルーミング補正処理を行う統合処理部504の別の構成例である。
図44に示す統合処理部504は、低周波信号(mRb,mGb,mBb,mRd,mGd,mBd)に対してブルーミング補正を行っていたが、図45に示す統合処理部504は、一度、相関処理部611,612において、各色の全帯域周波信号(Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bd)を生成し、この全帯域周波信号(Rb,Gb,Bb,Rd,Gd,Bd)をブルーミング補正を実行する補正処理部605に入力して、これらの入力信号に基づいてブルーミング補正を行なう構成としている。
【0292】
図46は、図44、図45と同様にHDR合成とブルーミング補正処理を行う統合処理部504の別の構成例である。
図46に示す構成は、さらに最小限のコストで、ブルーミング補正とHDR合成処理を行う構成例である。
【0293】
撮像素子からの出力であるセンサ画像503は、例えば、図8(A)の配列を持つ場合、2行ごとに高感度画素と低感度画素が切り替わる。すなわち、2つの画素を合成してHDR画像を生成する場合、2ライン分の画素値データをメモリで蓄えて処理することが要請される。ラインメモリ610に、2ライン分の画素値データを記憶する。
【0294】
図46に示すラインメモリ620に格納され、遅延されたラインの画素値データが例えば図46に示す上ライン画像621、中心画像622として、ブルーミング補正部624に入力され、これと並列にリアルタイムでセンサ画像503として下ライン画像623がブルーミング補正部624に入力される。
【0295】
図47がブルーミング補正部624の入出力関係を示す図である。
左側が撮像素子の出力であり、
中間が、ブルーミング補正部624に対する3ライン分の入力データであり、
右端が最終的に生成されるHDR画像の画素値である。
【0296】
HDR画像は、感度の異なる同色画素を合成することで生成することができるが、その手前の部分でブルーミング補正を施す。
これまでの補正方法に示してきたように、ある画素のブルーミング補正を行う場合、その画素に対してブルーミングの影響を与えている色画素の低感度画素を参照する必要がある。しかし、図47では、それが取得できない。
例えば、図47の下段のG画素を補正するときには低感度のR画素の情報を取得したいが、図47の下段の3ラインに低感度のR画素は含まれないため、この処理は不可能である。
【0297】
このような場合、低感度のR画素の画素値Rdを他の画素の画素値に基づいて推定する。すなわち、図46に示すブルーミング補正部624は、以下の式に従った推定処理を実行する。
Rd_est=Gd×WbR/WbG
上記式に従って、低感度のR画素の画素値(Rd_est)を推定する。
ただし、
WbRはRのホワイトバランス係数、
WbGはGのホワイトバランス係数、
である。
【0298】
このような処理を実行することで、無彩色の状態で、ブルーミングが正常に動作する。すなわち、図46に示す統合処理部504のように2ライン分のメモリ620を有する構成でもブルーミング補正を行うことが可能となる。
【0299】
図48は、図46に示すブルーミング補正部624内に構成される画素生成部の処理例を説明する図である。
図48(A)が図47の上段の処理であり、3ラインデータに含まれないBb画素の生成、
図48(B)が図47の下段の処理であり、3ラインデータに含まれないRd画素の生成、
これらの処理例を示している。
【0300】
図46に示すブルーミング補正部624の出力は、上ライン画像625、下ライン画像626としてHDR合成処理部627に入力され、HDR合成処理部627において、ブルーミング補正後の異なる感度の画素を適用した画素合成処理により、広ダイナミックレンジ(HDR)画像505が生成されて出力される。
【0301】
[6.その他の実施例:ブルーミング以外のセンサ特性に基づく画像の補正]
上述した実施例では、主にブルーミングによって起こるセンサの非線形特性を補正する処理について言及してきた。しかしながら、本開示の方法を用いてブルーミング以外の非線形性を補正することが可能である。
【0302】
例えば、センサの持つ非線形特性として、図49に示すようなKnee特性がある。図49に示すように、画素に電荷が蓄積され飽和が近づくにつれ、徐々に電荷が蓄えられなくなっていく特性である。このようなKnee特性による非線形特性も、本開示による理想特性の取得方法および、LUTを使用した方法、あるいはその近似を用いることによって補正することが可能である。
【0303】
さらに、本開示の構成は、混色補正にも適用することが可能である。
混色には、カラーフィルタの特性によるものや、画素間のクロストークによるものが存在する。
このような混色が発生した画像に対して、本開示による理想特性の取得と、それを利用した前述の(式9)を適用した演算を行うことで混色を補正することが可能である。
【0304】
本実施例における撮像装置は、例えば、長時間露光画素からの高感度画素信号と短時間露光画素からの低感度画素信号を出力する撮像素子と、撮像素子からの出力画素信号を入力して、画素信号の補正を実行する補正処理部を有する。補正処理部は、撮像素子からの入力画素値と、撮像素子に対する入射光量と出力値との理想的な線形特性に従った理想画素値との差分または比率に応じて、撮像素子からの入力画素の画素値補正を実行する。
補正処理部は、撮像素子からの入力画素値に含まれる非線形特性を、前記理想的な線形特性に従った理想画素値を適用して補正する、さらに具体的には、補正処理部は、複数回の撮影処理によって取得した前記撮像素子の前記理想画素値、または、該理想画素値に基づく補正画素値算出に適用するルックアップテーブル(LUT)を記憶部から取得して画素値補正を実行する。
【0305】
[7.本開示の構成のまとめ]
以上、特定の実施例を参照しながら、本開示の構成について詳解してきた。しかしながら、本開示の要旨を逸脱しない範囲で当業者が実施例の修正や代用を成し得ることは自明である。すなわち、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、限定的に解釈されるべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲の欄を参酌すべきである。
【0306】
なお、本明細書において開示した技術は、以下のような構成をとることができる。
(1) 長時間露光画素からの高感度画素信号と短時間露光画素からの低感度画素信号を出力する撮像素子と、
前記撮像素子からの出力画素信号を入力して、画素信号のブルーミング補正を実行するブルーミング補正処理部を有し、
前記ブルーミング補正処理部は、
前記撮像素子からの入力画素値と、ブルーミングの影響のない理想画素値との差分または比率に応じて、前記撮像素子からの入力画素の画素値補正を実行する撮像装置。
【0307】
(2)前記ブルーミング補正処理部は、ブルーミング補正対象となる注目画素の近傍画素からの電荷漏れに相当するブルーミング量を、前記撮像素子から入力する低感度画素信号を利用して推定するブルーミング量推定部と、前記ブルーミング量推定部の推定したブルーミング量を前記撮像素子からの入力画素値から減算する演算部を有する前記(1)に記載の撮像装置。
(3)前記ブルーミング補正処理部は、ブルーミング補正対象となる注目画素の近傍画素からの電荷漏れに相当するブルーミング量を、撮像素子の画素配列と、撮像素子の高感度画素と低感度画素の露光制御パターンとを考慮した数式モデルに基づいて算出するブルーミング量推定部を有する前記(1)または(2)に記載の撮像装置。
【0308】
(4)前記ブルーミング補正処理部は、ブルーミング補正対象となる注目画素の画素位置に対応する各色の高感度画素値および低感度画素値を生成する信号生成部と、
前記信号生成部の生成した信号を入力して前記注目画素のブルーミング補正を実行する補正処理部を有する前記(1)〜(3)いずれかに記載の撮像装置。
(5)前記ブルーミング補正処理部は、前記撮像素子からの入力画素値と、ブルーミングの影響のない理想画素値とを対応付けたテーブルを適用して、前記撮像素子からの入力画素の画素値補正を実行する前記(1)〜(4)いずれかに記載の撮像装置。
【0309】
(6)前記ブルーミング補正処理部は、前記撮像素子からの入力画素値と、該入力画素値とブルーミングの影響のない理想画素値との差分とを対応付けたテーブルを適用して、前記撮像素子からの入力画素に含まれるブルーミング量を推定する前記(1)〜(5)いずれかに記載の撮像装置。
(7)前記ブルーミング補正処理部は、ブルーミング補正対象となる注目画素の近傍画素からの電荷漏れに相当するブルーミング量を、前記撮像素子から入力する低感度画素信号を利用して推定するブルーミング量推定部と、前記ブルーミング量推定部の推定したブルーミング量に、予め規定した減衰パラメータを乗算して減衰ブルーミング量を算出する乗算部と、前記乗算部の算出した減衰ブルーミング量を前記撮像素子からの入力画素値から減算する演算部を有する前記(1)〜(6)いずれかに記載の撮像装置。
【0310】
(8)前記ブルーミング補正処理部は、ブルーミング補正対象となる注目画素の近傍画素からの電荷漏れに相当するブルーミング量を、前記撮像素子から入力する低感度画素信号を利用して推定し、さらに、該推定結果に基づいてブルーミング量を減算した低感度画素信号を利用して、再度、ブルーミング量の推定を実行する構成を有する前記(1)〜(7)いずれかに記載の撮像装置。
(9)前記ブルーミング補正処理部は、ブルーミング補正対象となる注目画素が動き領域であるか否かを判定する動き検出部を有し、前記動き検出部の検出情報に応じてブルーミング補正態様を変更する構成を有する前記(1)〜(8)いずれかに記載の撮像装置。
【0311】
(10)前記ブルーミング補正処理部は、ブルーミング補正対象となる注目画素がエッジ領域であるか否かを判定するエッジ検出部を有し、前記エッジ検出部の検出情報に応じてブルーミング補正態様を変更する構成を有する前記(1)〜(9)いずれかに記載の撮像装置。
(11)前記ブルーミング補正処理部は、ブルーミング補正対象となる注目画素が動き領域またはエッジ領域である場合、該注目画素に対応する推定ブルーミング量を減少させる過補正対策部を有する前記(1)〜(10)いずれかに記載の撮像装置。
【0312】
(12)前記ブルーミング補正処理部は、入力画素値が飽和しているか否かを判定し、飽和値である場合にはブルーミング補正を実行しない構成である前記(1)〜(11)いずれかに記載の撮像装置。
(13)前記撮像装置は、さらに、前記ブルーミング補正処理部の生成したブルーミング補正画像を入力して広ダイナミックレンジ画像を生成する広ダイナミックレンジ(HDR)画像生成部を有する前記(1)〜(12)いずれかに記載の撮像装置。
【0313】
(14)長時間露光画素からの高感度画素信号と短時間露光画素からの低感度画素信号を出力する撮像素子と、
前記撮像素子からの出力画素信号を入力して、画素信号の補正を実行する補正処理部を有し、
前記補正処理部は、
前記撮像素子からの入力画素値と、前記撮像素子に対する入射光量と出力値との理想的な線形特性に従った理想画素値との差分または比率に応じて、前記撮像素子からの入力画素の画素値補正を実行する撮像装置。
【0314】
(15)前記補正処理部は、前記撮像素子からの入力画素値に含まれる非線形特性を、前記理想的な線形特性に従った理想画素値を適用して補正する前記(14)に記載の撮像装置。
(16)前記補正処理部は、複数回の撮影処理によって取得した前記撮像素子の前記理想画素値、または、該理想画素値に基づく補正画素値算出に適用するルックアップテーブル(LUT)を記憶部から取得して画素値補正を実行する前記(14)または(15)に記載の撮像装置。
【0315】
さらに、上記した装置等において実行する処理の方法や、処理を実行させるプログラムも本開示の構成に含まれる。
【0316】
また、明細書中において説明した一連の処理はハードウェア、またはソフトウェア、あるいは両者の複合構成によって実行することが可能である。ソフトウェアによる処理を実行する場合は、処理シーケンスを記録したプログラムを、専用のハードウェアに組み込まれたコンピュータ内のメモリにインストールして実行させるか、あるいは、各種処理が実行可能な汎用コンピュータにプログラムをインストールして実行させることが可能である。例えば、プログラムは記録媒体に予め記録しておくことができる。記録媒体からコンピュータにインストールする他、LAN(Local Area Network)、インターネットといったネットワークを介してプログラムを受信し、内蔵するハードディスク等の記録媒体にインストールすることができる。
【0317】
なお、明細書に記載された各種の処理は、記載に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。また、本明細書においてシステムとは、複数の装置の論理的集合構成であり、各構成の装置が同一筐体内にあるものには限らない。
【産業上の利用可能性】
【0318】
以上、説明したように、本開示の一実施例の構成によれば、ワンショット型の広ダイナミックレンジ撮影画像に対する高精度なブルーミング補正を実現する装置、方法が実現される。
具体的には、高感度画素信号と低感度画素信号を出力する撮像素子からの出力画素信号を入力して、画素信号のブルーミング補正を実行する。補正処理部は、撮像素子からの入力画素値と、ブルーミングの影響のない理想画素値との差分または比率に応じて、入力画素の画素値補正を実行する。例えば、補正対象画素の近傍画素からの電荷漏れに相当するブルーミング量を、低感度画素信号を利用して推定し、推定したブルーミング量を入力画素値から減算する。具体的には、数式モデルやLUTを適用した処理を行う。
本開示の構成によれば、ブルーミングを被った画素のブルーミング量を抑圧することによって、ブルーミングによる非線形性補正し、正しい色再現や、画像の階調を正確に表現でき、画質を向上できる。
【符号の説明】
【0319】
101 照明
102 被写体
103 レンズ
104 撮像素子
105 制御部
106 露光時間情報
107 センサ画像
108 記憶装置
130 補正処理部
131 ブルーミング量推定部
132 演算部
135 補正処理部
136 ブルーミング量推定部
137 乗算部
138 演算部
140 補正処理部
141 第1ブルーミング量推定部
142 演算部
143 第2ブルーミング量推定部
144 演算部
150 補正処理部
151 第1ブルーミング量推定部
152 演算部
153 第2ブルーミング量推定部
154 演算部
155 第3ルーミング量推定部
156 演算部
160 補正処理部
161 6次元LUT
165 補正処理部
166 第1−3次元LUT
167 第2−3次元LUT
170 補正処理部
171 3次元LUT
172 演算部
173 補正処理部
174 補正処理部
175 1次元LUT
176 演算部
177 補正処理部
178 1次元LUT
179 演算部
180 補正処理部
181 倍率近似部
182 演算部
185 補正処理部
186 輝度生成部
187 マトリクス係数生成部
188 マトリクス処理部
190 補正処理部
191 演算部
192 ブルーミング量推定部
193 演算部
195 補正処理部
196 ブルーミング量推定部
197 過補正対策部
198 演算部
200 撮像装置
201 レンズ
202 撮像素子
203 センサ画像
204 ブルーミング補正処理部
205 制御部
206 ブルーミング補正画像
207 HDR合成処理部
208 HDR画像
209 諧調変換処理部
210 カメラ信号処理部
211 出力画像
251 信号生成部
252 動き検出部
253 エッジ検出部
254 補正処理部
301 高感度全帯域信号生成部
302 低感度全帯域信号生成部
303 高感度低周波信号生成部
304 低感度低周波信号生成部
305 HDR全帯域信号生成部
306 HDR低周波信号生成部
307 相関処理部
401 感度比R
402 乗算部
403 ブレンド率算出部
404 ブレンド処理部
500 撮像装置
501 レンズ
502 撮像素子
503 センサ画像
504 統合処理部
505 HDR画像
506 諧調変換処理部
507 カメラ信号処理部
508 出力画像
509 制御部
601 高感度全帯域信号生成部
602 低感度全帯域信号生成部
603 高感度低周波信号生成部
604 低感度低周波信号生成部
605 補正処理部
606 HDR全帯域信号生成部
607,608 HDR低周波信号生成部
609 相関処理部
611,612 相関処理部
613 HDR全帯域信号生成部
620 ラインメモリ部
621 上ライン画像
622 中心画像
623 下ライン画像
624 ブルーミング補正部
625 上ライン画像
626 下ライン画像
627 HDR合成処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長時間露光画素からの高感度画素信号と短時間露光画素からの低感度画素信号を出力する撮像素子と、
前記撮像素子からの出力画素信号を入力して、画素信号のブルーミング補正を実行するブルーミング補正処理部を有し、
前記ブルーミング補正処理部は、
前記撮像素子からの入力画素値と、ブルーミングの影響のない理想画素値との差分または比率に応じて、前記撮像素子からの入力画素の画素値補正を実行する撮像装置。
【請求項2】
前記ブルーミング補正処理部は、
ブルーミング補正対象となる注目画素の近傍画素からの電荷漏れに相当するブルーミング量を、前記撮像素子から入力する低感度画素信号を利用して推定するブルーミング量推定部と、
前記ブルーミング量推定部の推定したブルーミング量を前記撮像素子からの入力画素値から減算する演算部を有する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記ブルーミング補正処理部は、
ブルーミング補正対象となる注目画素の近傍画素からの電荷漏れに相当するブルーミング量を、撮像素子の画素配列と、撮像素子の高感度画素と低感度画素の露光制御パターンとを考慮した数式モデルに基づいて算出するブルーミング量推定部を有する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記ブルーミング補正処理部は、
ブルーミング補正対象となる注目画素の画素位置に対応する各色の高感度画素値および低感度画素値を生成する信号生成部と、
前記信号生成部の生成した信号を入力して前記注目画素のブルーミング補正を実行する補正処理部を有する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記ブルーミング補正処理部は、
前記撮像素子からの入力画素値と、ブルーミングの影響のない理想画素値とを対応付けたテーブルを適用して、前記撮像素子からの入力画素の画素値補正を実行する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記ブルーミング補正処理部は、
前記撮像素子からの入力画素値と、該入力画素値とブルーミングの影響のない理想画素値との差分とを対応付けたテーブルを適用して、前記撮像素子からの入力画素に含まれるブルーミング量を推定する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記ブルーミング補正処理部は、
ブルーミング補正対象となる注目画素の近傍画素からの電荷漏れに相当するブルーミング量を、前記撮像素子から入力する低感度画素信号を利用して推定するブルーミング量推定部と、
前記ブルーミング量推定部の推定したブルーミング量に、予め規定した減衰パラメータを乗算して減衰ブルーミング量を算出する乗算部と、
前記乗算部の算出した減衰ブルーミング量を前記撮像素子からの入力画素値から減算する演算部を有する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記ブルーミング補正処理部は、
ブルーミング補正対象となる注目画素の近傍画素からの電荷漏れに相当するブルーミング量を、前記撮像素子から入力する低感度画素信号を利用して推定し、
さらに、該推定結果に基づいてブルーミング量を減算した低感度画素信号を利用して、再度、ブルーミング量の推定を実行する構成を有する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記ブルーミング補正処理部は、
ブルーミング補正対象となる注目画素が動き領域であるか否かを判定する動き検出部を有し、
前記動き検出部の検出情報に応じてブルーミング補正態様を変更する構成を有する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記ブルーミング補正処理部は、
ブルーミング補正対象となる注目画素がエッジ領域であるか否かを判定するエッジ検出部を有し、
前記エッジ検出部の検出情報に応じてブルーミング補正態様を変更する構成を有する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記ブルーミング補正処理部は、
ブルーミング補正対象となる注目画素が動き領域またはエッジ領域である場合、該注目画素に対応する推定ブルーミング量を減少させる過補正対策部を有する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記ブルーミング補正処理部は、
入力画素値が飽和しているか否かを判定し、飽和値である場合にはブルーミング補正を実行しない構成である請求項1に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記撮像装置は、さらに、
前記ブルーミング補正処理部の生成したブルーミング補正画像を入力して広ダイナミックレンジ画像を生成する広ダイナミックレンジ(HDR)画像生成部を有する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項14】
長時間露光画素からの高感度画素信号と短時間露光画素からの低感度画素信号を出力する撮像素子と、
前記撮像素子からの出力画素信号を入力して、画素信号の補正を実行する補正処理部を有し、
前記補正処理部は、
前記撮像素子からの入力画素値と、前記撮像素子に対する入射光量と出力値との理想的な線形特性に従った理想画素値との差分または比率に応じて、前記撮像素子からの入力画素の画素値補正を実行する撮像装置。
【請求項15】
前記補正処理部は、
前記撮像素子からの入力画素値に含まれる非線形特性を、前記理想的な線形特性に従った理想画素値を適用して補正する請求項14に記載の撮像装置。
【請求項16】
前記補正処理部は、
複数回の撮影処理によって取得した前記撮像素子の前記理想画素値、または、該理想画素値に基づく補正画素値算出に適用するルックアップテーブル(LUT)を記憶部から取得して画素値補正を実行する請求項14に記載の撮像装置。
【請求項17】
撮像装置において実行する画像処理方法であり、
前記撮像装置は、長時間露光画素からの高感度画素信号と短時間露光画素からの低感度画素信号を出力する撮像素子と、
前記撮像素子からの出力画素信号を入力して、画素信号のブルーミング補正を実行するブルーミング補正処理部を有し、
前記ブルーミング補正処理部において、
前記撮像素子からの入力画素値と、ブルーミングの影響のない理想画素値との差分または比率に応じて、前記撮像素子からの入力画素の画素値補正を実行する画像処理方法。
【請求項18】
撮像装置において画像処理を実行させるプログラムであり、
前記撮像装置は、長時間露光画素からの高感度画素信号と短時間露光画素からの低感度画素信号を出力する撮像素子と、
前記撮像素子からの出力画素信号を入力して、画素信号のブルーミング補正を実行するブルーミング補正処理部を有し、
前記ブルーミング補正処理部に、前記撮像素子からの入力画素値と、ブルーミングの影響のない理想画素値との差分または比率に応じて、前記撮像素子からの入力画素の画素値補正を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図40】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図6】
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【図8】
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【図16】
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【図39】
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【図41】
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【公開番号】特開2013−38504(P2013−38504A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171040(P2011−171040)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】