説明

撮像装置、その制御方法及びプログラム

【課題】ネットワークの帯域を抑えつつ、監視をおろそかにしないようにする。
【解決手段】制御部4は、n番目のプリセット位置とn+1番目のプリセット位置との間にサブ・プリセット位置を設定する。制御部4は、プリセット位置及びサブ・プリセット位置以外の位置では、撮像手段により得られる画像データを配信しないように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各プリセット位置において撮像手段により得られる画像データを配信する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像装置からの映像をネットワーク経由でPC(Personal Computer)に転送し、モニタに表示させるネットワークカメラシステムが知られている。また、モニタを確認しながらパン(水平)方向とチルト(垂直)方向との回転が制御される撮像装置を有するネットワークカメラシステムもある。
【0003】
この種のネットワークシステムは、例えばコンビニエンスストアやスーパー等の商業施設や駅や公園といった公共施設、駐車場や高速道路等の交通機関等、様々なシチュエーションで使用されている。遠隔地に撮像装置を設置しておき、離れた場所から撮像装置を操作することが可能であるため、監視員1人によって複数の場所を監視できるといった特徴がある。
【0004】
複数の場所を監視する場合には、各場所のパン方向及びチルト方向の設定情報を記憶させておき、各場所を順次巡回するプリセット機能が知られている。この機能を用いることにより、監視員は手動で撮像装置を動かすことなく目的の場所を常に監視することができる。しかし、プリセット機能を用いる場合、第1の指定位置から第2の指定位置に移動する間の各駆動スピードは高速動作を行うのが一般的であり、その間は動きの速い映像となり、ユーザにとっては不快感を覚える。
【0005】
また、プリセット機能で指定した場所以外で異常が発生したとき、ユーザはその異常に気がつかない場合が発生してしまう。その対策としてプリセットの指定位置を増やすことが考えられるが、設定する場所が多ければ、ユーザが本当に監視したい位置の注意がおろそかになってしまう。
【0006】
上記のような問題を解決するために、特許文献1には、パン又はチルトを行っている期間は静止画を送信する技術が開示されている。また特許文献2には、自動監視中の監視カメラによって撮影される画像から動きが検出された場合、静止監視の動作に切り換える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−86486号公報
【特許文献2】特開2009−188975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示される技術は、停止位置での静止画を流し続けるので停止位置以外では画像の更新が行われないため、注意が甘くなってしまう。また、特許文献2に開示される技術は、自動監視中のプリセット位置で動きが検出された場合、静止監視の動作に切り換えられるが、プリセット位置以外の監視がおろそかになってしまう懸念がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、ネットワークの帯域を抑えつつ、監視をおろそかにしないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の撮像装置は、撮像方向を停止した状態で撮像手段により得られる画像データを配信するn(n:任意の自然数)番目のプリセット位置とn+1番目のプリセット位置との間に、撮像方向を停止しない状態で前記撮像手段により得られる画像データを配信するサブ・プリセット位置を設定する設定手段と、前記プリセット位置及び前記サブ・プリセット位置以外の位置では、前記撮像手段により得られる画像データを配信しないように制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ネットワークの帯域を抑えつつ、監視をおろそかにしないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置を備えたネットワークカメラシステムの構成を示す図である。
【図2】図1に示すネットワークカメラシステムによる巡回の一例を説明するための図である。
【図3】画像配信リセット信号の波形と画像データ配信タイミングとの関係を示す図である。
【図4】プリセット設定処理及びサブ・プリセット設定処理を示すフローチャートである。
【図5】第2の記憶部において記憶されるプリセット位置に関する設定データ及びサブ・プリセット位置に関する設定データの例を示す図である。
【図6】図2の移動区間の照度に応じて、撮像装置のパン方向及びチルト方向の駆動スピードを設定する方法について説明するための図である。
【図7】移動区間の照度とパン方向及びチルト方向の駆動スピードとの関係を示す図である。
【図8】画像配信リセット信号の波形と画像データ配信タイミングとの関係を示す図である。
【図9】動き検知処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】撮像装置がプリセット機能による巡回を数往復し、撮像装置の撮像方向によって取得される画像データに流れが生じることを説明するための図である。
【図11】第2の記憶部に記憶されるサブ・プリセット位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した好適な実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る撮像装置を備えたネットワークカメラシステムの構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る撮像装置19は、撮像光学系1、入射光を電荷に変換する撮像素子2、A/D変換部3、画像処理部5及び信号制御部6を含む制御部4、エンコーダ7、コマンド受信部8、ネットワーク通信部9、第1の記憶部12及び第2の記憶部13を含む記憶部11、パン・チルト制御部14、並びに、パン機構17及びチルト機構16を含む機構部15を備える。また、撮像装置19はネットワーク18を介して入出力機器10と接続されている。
【0015】
撮像光学系1で集められた光を受光する撮像素子2は、光電変換により受光量に応じた電荷を蓄積する。A/D変換部3は、撮像素子2から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。A/D変換部3により出力されるデジタル信号の画像データは、制御部4に出力される。制御部4の画像処理部5は、A/D変換部3から入力された画像データの画質を高める処理等を行う。また画像処理部5は、撮像素子2に対して、蓄積した電荷をクリアするリセット信号を出力する。
【0016】
信号制御部6は、入出力機器10において表示させるために必要なサイズの画像データを生成する。エンコーダ7は、画像データの圧縮処理等の符号化処理を行い、符号化処理後の画像データをネットワーク通信部9に出力する。ネットワーク通信部9は、撮像装置19によって生成された画像データをネットワーク18に出力する。ネットワーク18に出力された画像データは入出力機器10に入力される。入出力機器10は表示装置を備えており、表示装置に画像データを表示させることにより、ユーザに当該画像データを提示するビューワとして機能する。
【0017】
また、ユーザが入出力機器10上の操作画面を操作することによって発生したコマンドは、入出力機器10からネットワーク18を介して撮像装置19のネットワーク通信部9に入力され、コマンド受信部8を介して信号制御部6に出力される。信号制御部6は、入力したコマンドに応じて撮像素子2を制御する。
【0018】
記憶部11は、第1の記憶部12と第2の記憶部13とを備える。第1の記憶部12は、指定されたアドレスにデータが書き込まれるとともに、指定されたアドレスからデータが読み出される記憶部である。第2の記憶部13は、不揮発性のデータを保持するとともに、当該不揮発性のデータの中から指定されたアドレスのデータが読み出される記憶部である。
【0019】
本実施形態においては、第1の記憶部12をSDRAMで構成している。SDRAMは高速な書き込みと読み出しとが可能であるため、各制御部において実行されるプログラムやデータが記憶され、各種のプログラムを実行するための作業領域としても使用される。また本実施形態においては、第2の記憶部13をFlashメモリ等の不揮発性記憶素子で構成している。不揮発性記憶素子は各種プログラムやデータの永続的な記憶領域として使用される。
【0020】
パン・チルト制御部14は、機構部15に対してパン及びチルト制御を行う。即ち、パン・チルト制御部14は、信号制御部6から与えられたデータに基づいて、パン(左右)方向及びチルト(上下)方向に駆動させるよう機構部15に指示を与える。なお、パン方向の指示は、機構部15のパン機構17に対して与えられ、チルト方向の指示は、機構部15のチルト機構16に対して与えられる。
【0021】
図2は、図1に示すネットワークカメラシステムによる巡回の一例を説明するための図である。図2において、領域“A”201及び領域“B”202はプリセット位置であり、領域“1”211、領域“2”212及び領域“3”213はサブ・プリセット位置である。プリセット位置では、撮像装置19が巡回を停止した状態で画像データを配信することによって監視が行われ、サブ・プリセット位置では、撮像装置19が巡回を停止しない状態で画像データを配信することによって監視が行われる。以下では、プリセット位置における監視機能をプリセット機能と称し、サブ・プリセット位置における監視機能をサブ・プリセット機能と称す。なお、図2においては、プリセット位置を領域“A”201と領域“B”202との2か所にしているが、第3以降のプリセット位置を設定可能なことはいうまでもない。
【0022】
スーパー等の監視を行う場合において、図2の231に示す位置に撮像装置19が設置されていて、ドア部である領域“A”201及び領域“B”202を監視したいと考えた場合、ユーザは領域“A”201及び領域“B”202をプリセット位置として登録する。その際、ユーザは、PCモニタ等の入出力機器10において表示されている画像データ上の任意の箇所を、プリセット位置として指定することが可能である。ここで撮像装置19は、領域“A”201を監視して所定の時間が経過すると、撮像方向を領域“B”202に移動させる。このとき、領域“A”201から領域“B”202に撮像方向が移動する間は、図2の221の移動区間を移動するように、撮像装置19のパン動作及びチルト動作が制御される。また、この移動区間221内においてサブ・プリセット位置の指定が行われる。図2の例では、窓のように注意すべき領域(図2の領域“1”211、領域“2”212及び領域“3”213)がサブ・プリセット位置として指定される。なお、サブ・プリセット位置においては、撮像装置19のパン動作及びチルト動作を止めることなく撮影が行われる。
【0023】
図3(A)は、通常の画像配信リセット信号の波形と画像データ配信タイミングとの関係の一例を示している。本例においては、図3の301に示すように、画像配信リセット信号がHighとなるタイミングで画像データが配信される。一方、図3(B)は、本実施形態におけるサブ・プリセット位置での画像配信リセット信号の波形と画像データ配信タイミングとの関係を示している。即ち、図3(B)の302、303及び304はそれぞれ、図2の移動区間221中の領域“1”211、領域“2”212及び領域“3”213での画像配信リセット信号の状態を示している。また、305は各サブ・プリセット位置での画像データ配信タイミングを示している。図3(B)に示すように、移動区間221は、サブ・プリセット位置である領域“1”211、領域“2”212及び領域“3”213でのみ画像データを配信することにより、ネットワーク帯域を抑えることが可能となる。また、入出力機器10における表示装置では、プリセット位置及びサブ・プリセット位置で配信された画像データのみが表示される。
【0024】
次に、図4を参照しながら、プリセット設定処理及びサブ・プリセット設定処理について説明する。ステップS401において、制御部4は、プリセット位置又はサブ・プリセット位置に関する既存の設定データが第2の記憶部13に記憶されているか否かを判定する。プリセット位置又はサブ・プリセット位置に関する既存の設定データが記憶されている場合、処理はステップS402に移行する。一方、既存の設定データが記憶されていない場合、処理はステップS403に移行する。
【0025】
ステップS402において、制御部4は、既存の設定データを使用するか否かを判定する。例えば、入出力機器10に既存の設定データを使用するか否かを選択させるためのGUI(Graphic User Interface)を表示させ、GUI上で既存の設定データを使用するか否かをユーザに選択させる。そして、ユーザによって既存の設定データを使用することが選択された場合、ステップS402において、既存の設定データを使用すると判定され、処理はステップS410に移行する。一方、ユーザによって既存の設定データを使用しないことが選択された場合、ステップS402において、既存の設定データを使用しないと判定され、処理はステップS403に移行する。ステップS410において、制御部4は、既存の設定データに基づいて巡回を開始する。
【0026】
ステップS403において、ユーザは、入出力機器10に表示されている設定画面上において、不図示のカーソルキーを用いてプリセット位置を指定する。制御部4は、撮像方向が指定されたプリセット位置となるように撮像装置19のパン方向及びチルト方向を制御する。ステップS404において、制御部4は、プリセット機能を設定する。即ち、制御部4は、ステップS403において制御した撮像装置19のパン方向の角度及びチルト方向の角度をパン・チルト制御部14から取得して第2の記憶部13に記憶させる。それとともに、制御部4は、プリセット位置に撮像装置19を停止させておく時間と、撮像装置19がプリセット位置から動作を開始してからのパン方向及びチルト方向の駆動スピード(移動速度)とを第2の記憶部13に記憶させる。例えば、入出力機器10に表示されている画像データの周囲に、プリセット位置における撮像装置19の停止時間と、撮像装置19がプリセット位置から動作を開始してからのパン方向及びチルト方向の駆動スピードとの設定が行えるようなGUIを備える。そして、ユーザがこのGUIを操作することにより、撮像装置19のプリセット位置における停止時間と、撮像装置19がプリセット位置から動作を開始してからのパン方向及びチルト方向の駆動スピードとを指定することが可能となる。上記のようにプリセット位置に関する設定データが第2の記憶部13において記憶されることにより、プリセット機能が設定される。
【0027】
図5(A)は、第2の記憶部13において記憶されるプリセット位置に関する設定データの一例を示している。図5(A)に示すように、第2の記憶部13においては、プリセット位置毎に、撮像装置19のパン方向及びチルト方向の角度、プリセット位置における撮像装置19の停止時間、並びに、撮像装置19がプリセット位置から動作を開始してからのパン方向及びチルト方向の駆動スピードが記憶されている。
【0028】
ステップS405において、制御部4は、ユーザによるプリセット位置の指定が終了したか否かを判定する。ユーザによって引き続きプリセット位置の指定が行われた場合、処理はステップS403に戻り、プリセット位置の設定が行われる。一方、ユーザによるプリセット位置の指定が終了した場合、処理はステップS406に移行する。ステップS406において、制御部4は、サブ・プリセット機能を使用するか否かを判定する。例えば、入出力機器10にサブ・プリセット機能を使用するか否かを選択させるためのGUIを表示させ、GUI上でサブ・プリセット機能を使用するか否かをユーザに選択させる。そして、ユーザによってサブ・プリセット機能を使用することが選択された場合、ステップS406において、サブ・プリセット機能を使用すると判定され、処理はステップS407に移行する。一方、ユーザによってサブ・プリセット機能を使用しないことが選択された場合、ステップS406において、サブ・プリセット機能を使用しないと判定され、処理はステップS410に移行する。ステップS410において、制御部4は、ステップS404において設定したプリセット機能で巡回を開始する。
【0029】
ステップS407において、ユーザは、入出力機器10に表示されている設定画面上において、不図示のカーソルキーを用いてサブ・プリセット位置を指定する。制御部4は、撮像方向が指定されたサブ・プリセット位置となるように撮像装置19のパン方向及びチルト方向を制御する。ステップS408において、制御部4は、サブ・プリセット機能を設定する。即ち、制御部4は、ステップS407において制御した撮像装置19のパン方向の角度及びチルト方向の角度をパン・チルト制御部14から取得して第2の記憶部13に記憶させる。このようにサブ・プリセット位置に関する設定データが第2の記憶部13において記憶されることにより、サブ・プリセット機能が設定される。
【0030】
図5(B)は、第2の記憶部13において記憶されるサブ・プリセット位置に関する設定データの一例を示している。図5(B)に示すように、第2の記憶部13においては、サブ・プリセット位置毎に、撮像装置19のパン方向及びチルト方向の角度が記憶されている。
【0031】
ステップS409において、制御部4は、ユーザによるサブ・プリセット位置の指定が終了したか否かを判定する。ユーザによって引き続きサブ・プリセット位置の指定が行われた場合、処理はステップS407に戻り、サブ・プリセット位置の設定が行われる。一方、ユーザによるサブ・プリセット位置の指定が終了した場合、処理はステップS410に移行する。ステップS410において、制御部4は、プリセット機能及びサブ・プリセット機能による巡回を開始する。
【0032】
次に、図6を参照しながら、図2の移動区間221の照度に応じて、撮像装置19のパン方向及びチルト方向の駆動スピードを設定する方法について説明する。
【0033】
ステップS601において、制御部4は、既にプリセット機能及びサブ・プリセット機能が設定されている状況で照度を判定する。図1には示していないが、本実施形態に係る撮像装置19は照度計を具備しており、照度を測定することができる。ここでは照度をあるレベル(閾値)によって分割する。ここでは3段階で分割した場合を例に挙げる。具体的には、照度1を0.1〜100[Lux]、照度2を100〜1000[Lux]、照度3を1000〜10000[Lux]と設定する。なお、最も低い0.1Luxは飽くまでも一例であり、撮像装置19が認識できる最低照度とする。照度が0.1〜100[Lux]である場合、処理はステップS602に移行する。照度が100〜1000[Lux]である場合、処理はステップS603に移行する。照度が1000〜10000[Lux]である場合、処理はステップ604に移行する。
【0034】
図7は、移動区間221の照度とパン方向及びチルト方向の駆動スピードとの関係を示す図である。図7に示すように、本実施形態においては、照度が低い程、遅い駆動スピードを設定し、照度が高い程、速い駆動スピードを設定するようにしている。このように移動区間221の照度に応じて、パン方向及びチルト方向の駆動スピードを設定することにより、撮像装置19の駆動スピードに制限をかけている。本来、低照度で撮像装置19をパン方向及びチルト方向に高速駆動させてしまうと、露光時間を長くして撮像素子2の受光量を増やす必要がある。但し、その影響として画像データが流れてしまったり、画像データにノイズが多く発生してしまう等の現象が発生する。そこで、本実施形態では、照度に閾値を定め、照度に応じて撮像装置19のパン方向及びチルト方向の駆動スピードを設定することによって、どの照度でも安定した画像データを確保することができる。
【0035】
ステップS602において、制御部4は、パン方向及びチルト方向の駆動スピードを低速に設定する。ステップS603において、制御部4は、パン方向及びチルト方向の駆動スピードを中速に設定する。ステップS604にいて、制御部4は、パン方向及びチルト方向の駆動スピードを高速に設定する。ステップS605において、制御部4は、ステップS601において判定された照度に基づいてシャッタスピードを設定する。ステップS606において、制御部4は、ステップS601において判定された照度に基づいて画像データのゲインを設定する。なお、図5(A)に示すプリセット位置に関する設定データがステップS602、S603又はS604で設定された駆動スピードで更新されることにより、駆動スピードが設定される。
【0036】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態におけるネットワークカメラシステムの構成は、図1に示した第1の実施形態におけるネットワークカメラシステムの構成と同様である。
【0037】
上述した第1の実施形態では、画像配信リセット信号の波形を変更することにより、画像データ配信タイミングを制御していた。これに対し、第2の実施形態では、通常の画像配信リセット信号を用いるが、配信する画像データを選択する。なお、プリセット機能及びサブ・プリセット機能による巡回に関しては、第1の実施形態における図4に示す処理と同様である。
【0038】
図8は、第2の実施形態における画像配信リセット信号の波形と画像データ配信タイミングとの関係を示す図である。第2の実施形態では、図8に示すように、図3(A)に示す通常の画像配信リセット信号と同様の画像配信リセット信号が用いられる。但し、画像データ配信タイミングとしては、図8の804、805及び806に示すタイミングが選択される。なお、図8に示す画像配信リセット信号における801、802及び803は、図2における領域“1”211、領域“2”212及び領域“3”213に対応するタイミングとなる。
【0039】
画像データ配信タイミングの制御は、図1の信号制御部6によって行われる。第1の実施形態では、信号制御部6によって画像配信リセット信号を制御していたが、第2の実施形態では、図2における領域“1”211、領域“2”212及び領域“3”213の画像データのみを配信する。これにより、通常の画像配信リセット信号を用いながら、配信対象の画像データを選択することが可能になり、ネットワーク帯域を抑えることができる。
【0040】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態におけるネットワークカメラシステムの構成は、図1に示した第1の実施形態におけるネットワークカメラシステムの構成と同様であるが、後述する画像比較部が追加されている点で異なる。第3の実施形態は、サブ・プリセット位置において取得された画像データに対して動き検知を行い、画像データから動きが検知されたサブ・プリセット位置を、プリセット位置に指定するかどうかの選択をさせるものである。
【0041】
以下、図9を参照しながら、動き検知処理について説明する。第3の実施形態におけるプリセット機能及びサブ・プリセット機能による巡回に関しては、第1の実施形態として説明した図4に示す処理を適用することが可能である。
【0042】
ステップS901において、制御部4は、プリセット機能及びサブ・プリセット機能による巡回を開始する。ステップS902において、画像比較部は、画像データの差分を検出する。
【0043】
図2において、プリセット機能による巡回を1往復行い、撮像装置19の撮像方向が領域“A”201から領域“B”202へ移動し、更に領域“A”201に戻る際に、撮像装置19は、移動区間221のサブ・プリセット位置で画像データを取得する。ここで取得される画像データは、撮像装置19の撮像方向が移動中であることから、画像データの流れに違いが生じる。仮に高速なシャッタスピードであっても、画像データの流れは発生してしまう。このため、移動方向が右(R)か左(L)かによって、第1の記憶部12に保存する画像データを区別する。
【0044】
図10は、撮像装置19がプリセット機能による巡回を数往復し、撮像装置19の撮像方向によって取得される画像データに流れが生じることを説明するための図である。即ち、撮像方向が右回りのときの1011、1012及び1013のサブ・プリセット位置においては、1001のような右に流れた画像データが取得される。撮像方向が左回りのときの1014、1015及び1016のサブ・プリセット位置においては、1003のような左に流れた画像データが取得される。
【0045】
なお、図10の1011は、1往復目(巡回番号1)、2往復目(巡回番号2)、・・・に撮像方向が右回りのときに領域“1”211の画像データを取得するサブ・プリセット位置を示している。1012は、1往復目(巡回番号1)、2往復目(巡回番号2)、・・・に撮像方向が右回りのときに領域“2”212の画像データを取得するサブ・プリセット位置を示している。1013は、1往復目(巡回番号1)、2往復目(巡回番号2)、・・・に撮像方向が右回りのときに領域“3”213の画像データを取得するサブ・プリセット位置を示している。1014は、1往復目(巡回番号1)、2往復目(巡回番号2)、・・・に撮像方向が左回りのときに領域“3”213の画像データを取得するサブ・プリセット位置を示している。1015は、1往復目(巡回番号1)、2往復目(巡回番号2)、・・・に撮像方向が左回りのときに領域“2”212の画像データを取得するサブ・プリセット位置を示している。1016は、1往復目(巡回番号1)、2往復目(巡回番号2)、・・・に撮像方向が左回りのときに領域“1”211の画像データを取得するサブ・プリセット位置を示している。
【0046】
図11は、第2の記憶部13に記憶されるサブ・プリセット位置を示す図である。図11に示すように、第2の記憶部13においては、サブ・プリセット位置毎に、パン方向及びチルト方向の角度、巡回番号、並びに、移動方向(右回り、左回り)が記憶される。画像比較部は、各サブ・プリセット位置において前回取得された画像データと新たに取得された画像データとを随時比較していく。図10の例においては、画像比較部は、1往復目と2往復目とでサブ・プリセット位置1011において得られた画像データを比較し、1往復目と2往復目とでサブ・プリセット位置1012において得られた画像データを比較し、・・・、1往復目と2往復目とでサブ・プリセット位置1016において得られた画像データを比較し、と順次各サブ・プリセット位置で取得される画像データを比較していく。比較手法としては、背景差分を用いるものとする。各サブ・プリセット位置で前回取得された画像データを背景画像データとして使用し、各サブ・プリセット位置で今回取得された画像データと画素単位で比較することによって、各サブ・プリセット位置での画像データから動きが検出される。
【0047】
ステップS903において、制御部4は、画像比較部によって画像データから動きが検出されたか否かを判定する。画像データから動きが検出されなかった場合、処理はステップS901に戻り、巡回を継続する。一方、画像データから動きが検出された場合、処理はステップS904に移行する。ステップS904において、制御部4は、警告イベントの通知を行う。
【0048】
警告イベントの通知に関しては、異常が発生したことをユーザが認識できるよう、入出力機器10において異常発生を示す表示を行う。例えば表示させる画像データの一部にマークを表示したり、画像データの色を変更したりする。またブザーを鳴らしてユーザに通知するようにしてもよい。また、この警告イベントが発生したときの時刻や位置を画像データとともに第1の記憶部12に保持させ、後からユーザによって探し出せるようにしてもよい。
【0049】
ステップS905において、制御部4は、ユーザによって画像データから動きが検出された位置がプリセット位置として指定されたか否かを判定する。ユーザは、画像データから動きが検出された位置が今後も異常が発生しやすい位置であると判断した場合、動きが検出された位置をプリセット位置に決定する。プリセット位置に指定されなかった場合、処理はステップS906に移行する。一方、プリセット位置に指定された場合、処理はステップS907に移行する。ステップS906において、制御部4は、処理を終了するか否かを判定する。処理を終了すると判定された場合、制御部4は処理を終了させる。一方、処理を終了しないと判定された場合、処理はステップS901に戻る。
【0050】
ステップS907において、制御部4は、動きが検出された位置をプリセット位置として決定する。ステップS908において、制御部4は、巡回順番や駆動スピードを設定する。ステップS909において、制御部4は、ステップS907で設定されたプリセット位置に基づいて、プリセット位置に関する設定データを更新する。これにより、動きが検出された位置が新たなプリセット位置として追加設定されることになる。
【0051】
上述した実施形態は、n(n:任意の自然数)番目のプリセット位置とn+1番目のプリセット位置との間にサブ・プリセット位置を設定し、プリセット位置及びサブ・プリセット位置以外の位置においては画像データを配信させないようにしている。これにより、ネットワークの帯域を抑えつつ、監視をおろそかにしないようにすることができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態を図に基づいて詳述してきたが、本発明はこれらの特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態の一部を適宜組み合わせてもよい。
【0053】
本実施形態では、ネットワークカメラを例に取り上げて説明しているが、本発明は、ネットワークカメラに限定するものではなく、ネットワークにつないで映像の配信が可能なビデオカメラや旋回機能の備えたカメラに対しても適応することが可能である。
【0054】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0055】
1:撮像光学系、2:撮像素子、3:A/D変換部、4:制御部、5:画像処理部、6:信号制御部、7:エンコーダ、8:コマンド受信部、9:ネットワーク通信部、10:入出力機器、11:記憶部、12:第1の記憶部、13:第2の記憶部、14:パン・チルト制御部、15:機構部、16:チルト機構、17:パン機構、18:ネットワーク、19:撮像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像方向を停止した状態で撮像手段により得られる画像データを配信するn(n:任意の自然数)番目のプリセット位置とn+1番目のプリセット位置との間に、撮像方向を停止しない状態で前記撮像手段により得られる画像データを配信するサブ・プリセット位置を設定する設定手段と、
前記プリセット位置及び前記サブ・プリセット位置以外の位置では、前記撮像手段により得られる画像データを配信しないように制御する制御手段とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記撮像手段により得られる画像データの配信タイミングを制御することにより、前記プリセット位置及び前記サブ・プリセット位置以外の位置では、前記撮像手段により得られる画像データを配信しないように制御することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記撮像手段により得られる画像データから、配信対象の画像データを選択することにより、前記プリセット位置及び前記サブ・プリセット位置以外の位置では、前記撮像手段により得られる画像データを配信しないように制御することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
照度を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された照度に基づいて、前記撮像手段の撮像方向の移動速度を変更する変更手段とを更に有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記測定手段により測定された照度に基づいて、前記撮像手段のシャッタスピード、及び、前記撮像手段により得られる画像データのゲインのうちの少なくとも何れか一方を決定する決定手段を更に有することを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記サブ・プリセット位置において前記撮像手段により得られる画像データから動きを検出する検出手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記検出手段は、前記サブ・プリセット位置において前記撮像手段により得られた時間が異なる第1の画像データと第2の画像データとを比較することにより動きを検出することを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記第1の画像データと前記第2の画像データとは、前記撮像手段の撮像方向が第1の方向から前記サブ・プリセット位置まで移動してきたときに得られた画像データであることを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記検出手段により動きが検出された場合、警告を行う警告手段を更に有することを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記検出手段により動きが検出された画像データが前記撮像手段により得られた前記サブ・プリセット位置をプリセット位置として設定することを特徴とする請求項6乃至9の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項11】
撮像装置の制御方法であって、
撮像方向を停止した状態で撮像手段により得られる画像データを配信するn(n:任意の自然数)番目のプリセット位置とn+1番目のプリセット位置との間に、撮像方向を停止しない状態で前記撮像手段により得られる画像データを配信するサブ・プリセット位置を設定する設定ステップと、
前記プリセット位置及び前記サブ・プリセット位置以外の位置では、前記撮像手段により得られる画像データを配信しないように制御する制御ステップとを有することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項12】
撮像方向を停止した状態で撮像手段により得られる画像データを配信するn(n:任意の自然数)番目のプリセット位置とn+1番目のプリセット位置との間に、撮像方向を停止しない状態で前記撮像手段により得られる画像データを配信するサブ・プリセット位置を設定する設定ステップと、
前記プリセット位置及び前記サブ・プリセット位置以外の位置では、前記撮像手段により得られる画像データを配信しないように制御する制御ステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−30929(P2013−30929A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164693(P2011−164693)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】