説明

撮像装置、撮像方法及び撮像回路

【課題】一次元センサによって撮像した画像の走査方向に生じるボケを改善する
【解決手段】受光面上に配置され、撮像対象の画素エリアの走査方向の長さより走査方向の長さが短い光検出窓を有する第1の受光部11及び第2の受光部21は、当該光検出窓からの受光量に応じて電荷を蓄積し、出力制御部30は、第1の受光部11及び第2の受光部21が画素エリアの光学走査を終了した時に第1の受光部11及び第2の受光部21が蓄積した電荷を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の操作方向に移動することで撮像対象を光学走査し、当該撮像対象の撮像を行う撮像装置、撮像方法及び撮像回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スキャナによる撮像や、衛星の軌道を利用した衛星観測など、所定の走査方向に撮像対象を走査して撮像を行う場合、走査方向と直交する方向(以下、ライン方向と称する)に1画素に対応する受光素子を複数配列したラインCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)という光検出器を用いて撮像を行っている。
【0003】
以下に、図を用いて、ラインCCDを用いた撮像装置による従来の撮像方法を説明する。
図6は、従来の撮像装置による撮像方法を示す図である。
まず、撮像装置は、撮像を開始すると、図6(a)に示すように、走査方向に移動する。次に、ラインCCDの受光素子の各々は、撮像対象の1画素として取得するエリア(以降、画素エリアと称する)から受光し、図6(b)に示すように、光電変換によって受光した光量に対応する電荷を蓄積する。ラインCCDがある画素エリアの走査を終了すると、図6(c)に示すように、受光素子の各々は、蓄積した電荷を出力レジスタに出力し、図6(d)に示すように、次の画素エリアからの受光を開始する。これにより、ラインCCDは、順次ライン方向の画素エリアの光量に対応する電荷を出力する。そして、当該出力された電荷をライン方向の画素情報に変換し、当該画素情報を走査方向に並べることで、撮像対象の画像を得ることができる。
【0004】
また、特許文献1に、ラインCCDによって撮像した画像の走査方向に生じるボケを改善する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−57552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の撮像方法では、撮像対象の走査方向への移動または、操作方向へ移動する撮像装置からの撮像により、受光素子の各々に蓄積される電荷は2つの画素エリアにまたがる。このため取得した画像の走査方向にボケが生じ、鮮明な画像の取得ができないという問題があった。
【0007】
以下に、画像の走査方向にボケが生じる理由を、図を用いて説明する。
図7は、画像の走査方向にボケが生じる理由を示す図である。
画素エリアBの走査を行う場合、すなわち図7(a)から図7(b)に遷移する場合を例に説明すると、ラインCCDの受光素子の各々は、画素エリアAと画素エリアBとの2つの画素エリアにまたがって受光を行うこととなる。具体的には、図7(c)に示すように、画素エリアBの受光開始時(以下、時刻Tと称する)には、ラインCCDの受光素子の各々は、画素エリアBから受光する光は無く、移動に伴い、画素エリアBからの光量が増加し、画素エリアBの受光終了時(以下、時刻Tと称する)には、ラインCCDの受光素子の各々は、画素エリアBの全面から受光する。一方、図7(d)に示すように、時刻Tに、受光素子の各々は、画素エリアAの全面から受光し、移動に伴い、画素エリアAからの光量が減少し、時刻Tに、受光素子の各々は、画素エリアAから受光する光が無くなる。
【0008】
このように、受光素子は、走査する画素エリアからの光量と同じ光量を走査方向に隣接する他の画素エリアから受光することとなるため、ラインCCD等の一次元センサによって取得した画像には、走査方向にボケが生じることとなる。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、一次元センサによって撮像した画像の走査方向に生じるボケを改善する撮像装置、撮像方法及び撮像回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、所定の走査方向に移動することで撮像対象を光学走査し、当該撮像対象の撮像を行う撮像装置であって、前記撮像装置の受光面上に配置され、前記撮像対象の1画素として取得するエリアの前記走査方向の長さより前記走査方向の長さが短い光検出窓からの受光量に応じて電荷を蓄積する受光手段と、前記受光手段が1画素として取得する撮像対象のエリアの光学走査を終了した時に当該受光手段が蓄積した電荷を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、所定の走査方向に移動することで撮像対象を光学走査し、当該撮像対象の撮像を行う撮像装置を用いた撮像方法であって、前記撮像装置の受光面上に配置され、前記撮像対象の1画素として取得するエリアの前記走査方向の長さより前記走査方向の長さが短い光検出窓を有する受光手段は、当該光検出窓からの受光量に応じて電荷を蓄積し、出力手段は、前記受光手段が1画素として取得する撮像対象のエリアの光学走査を終了した時に当該受光手段が蓄積した電荷を出力する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、所定の走査方向に移動することで撮像対象を光学走査し、当該撮像対象の撮像を行う撮像回路であって、前記撮像装置の受光面上に配置され、前記撮像対象の1画素として取得するエリアの前記走査方向の長さより前記走査方向の長さが短い光検出窓からの受光量に応じて電荷を蓄積する受光回路と、前記受光手段が1画素として取得する撮像対象のエリアの光学走査を終了した時に当該受光手段が蓄積した電荷を出力する出力回路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、受光手段が有する検出窓の走査方向の長さは、画素エリアの走査方向の長さより短い。これにより、走査する画素エリアからの受光量が他の画素エリアからの受光量より多くなるため、取得した画像の走査方向のボケを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態による撮像装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】撮像装置の動作を示すシーケンス図である。
【図3】第1の受光部及び第2の受光部の受光量を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態による撮像装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図5】本発明の実施例を示す撮像装置の構成図である。
【図6】従来の撮像装置による撮像方法を示す図である。
【図7】画像の走査方向にボケが生じる理由を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第1の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による撮像装置の構成を示す概略ブロック図である。
撮像装置100は、所定の走査方向に移動することで撮像対象を光学走査し、当該撮像対象の撮像を行う装置であって、第1の受光部11(受光手段)、第1の電荷転送部12、第1の緩衝レジスタ13、第2の受光部21(受光手段)、第2の電荷転送部22、第2の緩衝レジスタ23、出力制御部30(出力手段)、出力レジスタ40を備える。
【0015】
第1の受光部11は、撮像装置100の受光面上に、走査方向に直交し、撮像対象に平行する方向(以下、ライン方向と称する)に複数配列された受光素子を備える一次元センサである。受光素子は、光電変換により、光検出窓からの受光量に応じて電荷を蓄積する。光検出窓は、フォトダイオードなどによって構成され、電荷の蓄積はCCDなどによって行われる。なお、光検出窓の走査方向の長さは、撮像対象の1画素とするエリア(以降、画素エリアと称する)の走査方向の長さの半分であるものとし、また光検出窓のライン方向の長さは、画素エリアのライン方向の長さと等しいものとする。
第1の電荷転送部12は、第1の受光部11が画素エリアからの受光を開始するタイミングで、第1の受光部11が蓄積している電荷を第1の緩衝レジスタ13に転送させるクロック信号を出力する。
【0016】
第2の受光部21は、第1の受光部11の走査方向の逆方向に隣接して配置され、第1の受光部11と同様にライン方向に複数配列された受光素子を備える一次元センサである。なお、第1の受光部11と同様に、光検出窓の走査方向の長さは、画素エリアの走査方向の長さの半分であるものとし、また光検出窓のライン方向の長さは、画素エリアのライン方向の長さと等しいものとする。
第2の電荷転送部22は、第2の受光部21が画素エリアからの受光を開始するタイミングで、第2の受光部21が蓄積している電荷を第2の緩衝レジスタ23に転送させるクロック信号を出力する。
出力制御部30は、第2の緩衝レジスタ23に電荷が転送されたタイミングで、第1の緩衝レジスタ13及び第2の緩衝レジスタ23が格納する電荷を出力レジスタ40に転送させるクロック信号を出力する。
【0017】
このような構成の撮像装置100によって、受光面上に配置され、撮像対象の画素エリアの走査方向の長さより走査方向の長さが短い光検出窓を有する第1の受光部11及び第2の受光部21は、当該光検出窓からの受光量に応じて電荷を蓄積し、出力制御部30は、第1の受光部11及び第2の受光部21が画素エリアの光学走査を終了した時に第1の受光部11及び第2の受光部21が蓄積した電荷を出力する。
これにより、一次元センサによって撮像した画像の走査方向に生じるボケを改善する。
【0018】
次に、撮像装置100の動作を説明する。
図2は、撮像装置の動作を示すシーケンス図である。
まず、撮像装置100が撮像対象の撮像を開始すると、撮像装置100は走査方向への移動を開始する。撮像装置100が移動を開始すると、第1の電荷転送部12は、第1の受光部11に電荷転送クロックを出力する。これにより、第1の受光部11は、受光素子の各々に蓄積された電荷を第1の緩衝レジスタ13に転送することで蓄積された電荷をリセットし、電荷の蓄積を開始する。このとき、第1の緩衝レジスタ13に転送された電荷は、撮像対象の光電変換によって蓄積された電荷ではなく、撮像開始以前に蓄積されたノイズであるため、緩衝レジスタ13による以降の処理は省略する。また、第1の電荷転送部12が電荷転送クロックを出力した時刻からt/2が経過すると、第2の電荷転送部22は、第2の受光部21に電荷転送クロックを出力し、第2の受光部21は、蓄積された電荷を第2の緩衝レジスタ23に転送する。このとき第2の緩衝レジスタ23に転送された電荷も撮像開始以前に蓄積されたノイズである。なお、第1の電荷転送部12が電荷転送クロックを出力した時刻からt/2が経過した時刻に第2の電荷転送部22が電荷転送クロックを出力する理由は後述する。
【0019】
次に、第1の電荷転送部12が初回の電荷転送クロックを出力してから、1つの画素エリアの走査を終了する時間tが経過すると、第1の電荷転送部12は再度電荷転送クロックを出力する(ステップS1)。なお、1つの画素エリアの走査を終了する時間tとは、画素エリアの走査方向の長さに撮像装置の移動速度(走査速度)を乗じて得られる時間である。なお、電荷転送クロックは、時間t間隔毎に出力される。これにより、第1の受光部11は、画素エリアの走査を終了する毎に蓄積された電荷をリセットすることができる。また、これにより、第1の緩衝レジスタ13は、画素エリアの操作を終了する毎に当該画素エリアの電荷を蓄積することができる。
【0020】
ステップS1で第1の電荷転送部12が電荷転送クロックを出力すると、第1の受光部11は、受光素子の各々に蓄積された電荷を第1の緩衝レジスタ13に転送する(ステップS2)。第1の受光部11が電荷を転送すると、第1の緩衝レジスタ13は、転送された電荷を格納する(ステップS3)。また、第1の受光部11は、電荷を転送すると、再度電荷の蓄積を開始する(ステップS4)。
【0021】
次に、ステップS1で第1の電荷転送部12が電荷転送クロックを出力した時刻からt/2が経過すると、第2の電荷転送部22は、第2の受光部21に電荷転送クロックを出力する(ステップS5)。第2の電荷転送部22が電荷転送クロックを出力するタイミングは、例えば、第1の電荷転送部12が出力する電荷転送クロックを取得し、その時刻から時間t/2を計時し、時間t/2の経過後に電荷転送クロックを出力しても良い。または、予め第1の電荷転送部12の電荷転送クロック出力から時間t/2だけずらして電荷転送クロックを出力するような回路によって出力させても良い。
【0022】
以下に、第1の電荷転送部12が電荷転送クロックを出力した時刻からt/2が経過した時刻に第2の電荷転送部22が電荷転送クロックを出力する理由について説明する。第2の受光部21の撮像素子の光検出窓の走査方向の長さは、画素エリアの走査方向の長さの半分である。また、第1の受光部11と第2の受光部21とは走査方向に隣接して配置されている。そのため、第1の電荷転送部12が電荷転送クロックを出力した時刻に第1の受光部11が存在する位置と、第1の電荷転送部12が電荷転送クロックを出力した時刻からt/2が経過した時刻に第2の受光部21が存在する位置とが同じとなる。これにより、第2の受光部21は、第1の受光部11が受光を開始した時刻からt/2が経過した時刻に受光を開始することで、第1の受光部11が受光を開始した位置と同じ位置で受光を開始することができる。
つまり、第1の電荷転送部12が電荷転送クロックを出力した時刻から、第1の受光部11の光検出窓の走査方向の上端と第2受光部21の光検出窓の走査方向の上端との間の距離に移動速度を乗じて得られる時間が経過した時刻に、第2の電荷転送部22が電荷転送クロックを出力することで、第2の受光部21は、第1の受光部11が受光を開始した位置と同じ位置で受光を開始することができる。
【0023】
ステップS5で、第2の電荷転送部22が電荷転送クロックを出力すると、第2の受光部21は、受光素子の各々に蓄積された電荷を第2の緩衝レジスタ23に転送する(ステップS6)。第2の受光部21は、電荷を転送すると、再度電荷の蓄積を開始する(ステップS7)。また、第2の緩衝レジスタ23は、転送された電荷を格納する(ステップS8)。
【0024】
ステップS8で、第2の緩衝レジスタ23が電荷の格納を完了した後、すなわち第2の電荷転送部22が電荷転送クロックを出力した時刻から、電荷の転送が終了するのに十分な時間Δtが経過すると、出力制御部30は、第1の緩衝レジスタ13及び第2の緩衝レジスタ23に電荷転送クロックを出力する(ステップS9)。出力制御部30が電荷転送クロックを出力すると、第1の緩衝レジスタ13及び第2の緩衝レジスタ23は、格納している電荷を出力レジスタ40に転送する(ステップS10)。第1の緩衝レジスタ13及び第2の緩衝レジスタ23が電荷を転送すると、出力レジスタ40は、転送された電荷を格納する(ステップS11)。これにより、第1の緩衝レジスタ13が格納していた電荷と第2の緩衝レジスタ23が格納していた電荷とを足し合わせた電荷が出力レジスタ40に格納される。
出力レジスタ40は、電荷を格納すると、当該格納した電荷を信号処理回路等に出力する(ステップS12)。これにより、出力レジスタ40は格納していた電荷をリセットし、次の電荷の転送を待機することができる。
【0025】
次に、ステップS1で第1の電荷転送部12が電荷転送クロックを出力した時刻からtが経過すると、第1の電荷転送部12は、第1の受光部11に電荷転送クロックを出力する。以降、撮像が終了するまで上述した処理を繰り返す。これにより、撮像装置100は、撮像対象を撮像することができる。
【0026】
次に、本実施形態によって画像の走査方向のボケを改善することができることを説明する。
図3は、第1の受光部及び第2の受光部の受光量を示す図である。
ここでは、図3(a)〜図3(d)に示す画素エリアBの走査を行う場合、すなわち図3(a)から図3(d)に遷移する場合を例に説明する。
第1の受光部11は、図3(a)に示すように、時刻Tで画素エリアBからの受光を開始し、図3(c)に示すように、時刻Tで画素エリアBからの受光を終了する。つまり、時刻Tから時刻Tまでの時間が時間tである。
図3(e)に示すように、時刻Tにおける第1の受光部11の受光量のうち、画素エリアBからの受光量は0であり、画素エリアAからの受光量は、画素エリアAの全体の光量の半分である。次に、移動に伴い、画素エリアBからの受光量が増加し、また画素エリアAからの受光量は減少する。時刻Tになると、第1の受光部11は画素エリアA上を離れるため、画素エリアBからの受光量は、画素エリアBの全体の光量の半分となり、画素エリアAからの受光量は0となる。その後、時刻Tに至るまで、第1の受光部11は画素エリアB上を移動するため、画素エリアBからの受光量は、画素エリアBの全体の光量の半分であり、画素エリアAからの受光量は0である。すなわち、時刻Tから時刻Tまでの間に、第1の受光部11は、画素エリアAからの受光量の3倍の光量を画素エリアBから受光できる。
【0027】
また、第2の受光部21は、図3(b)に示すように、時刻Tで画素エリアBからの受光を開始し、図3(d)に示すように、時刻Tで画素エリアBからの受光を終了する。
図3(f)に示すように、時刻Tにおける第2の受光部21の受光量のうち、画素エリアBからの受光量は0であり、画素エリアAからの受光量は、画素エリアAの全体の光量の半分である。次に、移動に伴い、画素エリアBからの受光量が増加し、また画素エリアAからの受光量は減少する。時刻Tになると、第2の受光部11は画素エリアA上を離れるため、画素エリアBからの受光量は、画素エリアBの全体の光量の半分となり、画素エリアAからの受光量は0となる。その後、時刻Tに至るまで、第2の受光部21は画素エリアB上を移動するため、画素エリアBからの受光量は、画素エリアBの全体の光量の半分であり、画素エリアAからの受光量は0である。すなわち、時刻Tから時刻Tまでの間に、第2の受光部21は、画素エリアAからの受光量の3倍の光量を画素エリアBから受光できる。
【0028】
第1の受光部11及び第2の受光部21の各々の受光量は、従来の手法によって蓄積される受光量の半分であるが、第1の受光部11及び第2の受光部21に蓄積された受光量を足し合わせることで、従来の手法によって蓄積される受光量と同じ受光量を得ることができる。したがって、本実施形態によれば、従来の手法によって蓄積される受光量と同じ受光量を得ることができ、さらに従来の手法より走査方向に生じるボケの度合いが少ない画像を出力することができる。
【0029】
ボケの度合いが少ないことを具体的に説明すると、本実施形態では、空間分解能の評価指標であるMTF(Modulation Transfer Function:光学伝達関数)の値が従来の手法と比較して高くなるという効果が得られる。
例えば、受光素子の光検出窓の走査方向の長さを、画素エリアの走査方向の長さのα分の1とすると、MTFは、式(1)によって求めることができる。
【0030】
MTF=sin(π/2α)/(π/2α) ・・・(1)
【0031】
したがって、本実施形態による撮像装置では、受光素子の光検出窓の走査方向の長さを、画素エリアの走査方向の長さの2分の1としているため、α=2となり、従来の手法(α=1)の場合と比較して、MTFが約1.41倍向上する。
【0032】
以上、図面を参照してこの発明の第1の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、本実施形態では、受光素子の光検出窓の走査方向の長さを、画素エリアの走査方向の長さの2分の1とする例を説明したが、これに限られず、受光素子の光検出窓の走査方向の長さを、画素エリアの走査方向の長さより短くすることで、同様の効果を得ることができる。なお、受光素子の光検出窓の走査方向の長さが短いほどボケの度合いは小さくなり、また、受光量は少なくなる。
【0033】
なお、本実施形態では、第1の受光部11、第2の受光部21を備える例、つまり受光部を2つ備える例を説明したが、これに限られず、例えば受光部を3つ以上備える構成としても良い。但し、この場合、受光部の数に相当する電荷転送部及び緩衝レジスタが必要となる。なお、受光部の数を多くすることで、より大きい信号レベルを出力することができる。
また、十分な光量を確保できる場合、受光部を1つだけ備える構成としてもよい。この場合、従来の手法と比較して受光量が少なくなるが、ボケの度合いを小さくするという効果は得ることができる。
【0034】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第2の実施形態について詳しく説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態による撮像装置の構成を示す概略ブロック図である。
第2の実施形態による撮像装置100は、第1の受光部11及び第2の受光部21がTDI(Time Delay Integration:遅延積算)機能を有するラインCCDとなっており、他の構成は第1の実施形態と同じである。ここで、TDI機能とは、撮像対象の光学走査と同期してCCDの走査方向の逆方向に電荷移動を行い、通常得られる電荷をTDIの段数に比例した倍率で積分することにより、より大きな電荷を得る機能である。そのため、第1の受光部11及び第2の受光部21は、それぞれ光検出窓と、当該光検出窓の受光量に応じた電荷を蓄積するCCD(電荷蓄積素子、垂直転送素子)とを、走査方向に複数備えている。
【0035】
第2の実施形態による撮像装置では、上述したステップS3で第1の受光部11が電荷の蓄積を行うにあたり、第1の受光部11のCCDは、電荷の蓄積開始から時間t/2が経過した時に走査方向の逆方向に隣接するCCDに蓄積した電荷を転送する。つまり、撮像装置が画素エリアの半分の距離を移動した時点で、電荷の転送が行われる。これにより、撮像装置が画素エリアを移動する間に、第1の受光部11のCCDは、電荷を2回に分けて次段のCCDに転送する。
同様に、上述したステップS7で第2の受光部21が電荷の蓄積を行う際、第2の受光部21のCCDは、電荷の蓄積開始から時間t/2が経過した時に走査方向の逆方向に隣接するCCDに蓄積した電荷を転送する。
【0036】
例えば、第1の受信部11が、走査方向に第1のCCD、第2のCCDを備える場合において、第1のCCDが画素エリアAの走査方向の上端から走査方向に画素エリアBを走査し、時間t/2が経過した時、第1のCCDが蓄積する電荷は、画素エリアBからの受光によって発生した電荷より画素エリアAからの受光によって発生した電荷のほうが多い。このとき、第1のCCDが第2のCCDに電荷を転送し、引き続き画素エリアBの受光を行うと、画素エリアBの走査を終了した時点で、第1のCCDが蓄積する電荷は、画素エリアAの受光量によって発生した電荷より画素エリアBの受光量によって発生した電荷のほうが多くなる。
これにより、受光を行う画素エリアでない他の画素エリアによる発生電荷との混在を低下させることができる。このように、走査方向の電荷転送を複数回に分割して行うことにより、得られる画像のボケの度合いを小さくすることができる。
【0037】
具体的には、MTFの値が第1の実施形態以上に、従来の手法と比較して高くなるという効果が得られる。
例えば、受光素子の光検出窓の走査方向の長さを、画素エリアの走査方向の長さのα分の1とし、CCDによる電荷の転送の分割回数をβとすると、MTFは、式(2)によって求めることができる。
【0038】
MTF=sin(π/2αβ)/(π/2αβ) ・・・(2)
【0039】
したがって、本実施形態による撮像装置では、受光素子の光検出窓の走査方向の長さを、画素エリアの走査方向の長さの2分の1とし、CCDは電荷を2回に分けて転送しているため、α=2、β=2となり、従来の手法(α=1、β=1)の場合と比較して、約1.53倍MTFが向上する。
【0040】
以上、図面を参照してこの発明の第2の実施形態について説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、本実施形態では、第1の受光部11、第2の受光部21のCCDが、蓄積した電荷を2回に分けて隣接するCCDに転送する場合を説明したが、これに限られず、CCDは、電荷転送を何回に分割して行っても良い。
【実施例1】
【0041】
図5は、本発明の実施例を示す撮像装置の構成図である。
図5に示すように、撮像装置200は、光学部201、グレーデッドプリズム202、光電変換部203、バイアス電圧発生部204、信号処理回路部205、CCD駆動信号発生部206、電源部207を備える。また、撮像装置200は、人工衛星(飛翔体)に搭載され、人工衛星の移動により、地表(撮像対象)の光学走査を行う。つまり、走査方向は、人工衛星の移動方向となる。
光学部201は、グレーデッドプリズム202を介して撮像対象の光像をラインCCD203の受光面に結像する。なお、光学部201は、レンズなどにより構成される。
グレーデッドプリズム202は、光学部201を通した光を複数のバンドの光に分光する。
光電変換部203は、グレーデッドプリズム202が分光した光のそれぞれに対応するラインCCDを複数備え、ラインCCDの各々は、受光面に結像された光像を光電変換する。なお、光電変換部203は、上述した第1の実施形態、第2の実施形態における第1の受光部11、第1の緩衝レジスタ13、第2の受光部21、第2の緩衝レジスタ23、出力レジスタ40を備える。
バイアス電圧発生部204は、光電変換部203のラインCCDに必要なバイアス電圧を発生させる。
信号処理回路部205は、光電変換部203が出力した撮像信号を増幅するなどの信号処理を行い、イメージセンサ出力として外部の装置へ出力する。
CCD駆動信号発生部206は、ラインCCDの駆動に必要なクロック信号を発生させる。CCD駆動信号発生部206は、上述した第1の実施形態、第2の実施形態における第1の電荷転送部12、第2の電荷転送部22、出力制御部30を備える。
電源部207は、外部電源の入力を電圧に変換し、各処理部に供給する。
【0042】
次に、撮像装置200の動作を説明する。
まず、光学部201により、撮像対象の光像がグレーデッドプリズム202に入射される。次に、グレーデッドプリズム202により、撮像対象の光像が異なる波長の光に分光され、それぞれが光電変換部203に入射される。光電変換部203により結像された受光量変化は電気信号に光電変換され、信号処理回路部205へ送られる。信号処理回路部205では、光電変換された撮像信号に対して増幅などの信号処理を行い、イメージセンサ出力として外部の装置へ出力する。
【0043】
また、CCD駆動信号発生部206が出力する電荷転送クロックは、例えば3相クロックであり、これにより、光電変換部203のラインCCDは、ポテンシャルレベルを順次可変させ、蓄積した電荷を出力側に転送する。
【0044】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、本実施例では、グレーデッドプリズム202が撮像対象の光像を分光し、それぞれを異なるラインCCDに入射させる場合を説明したが、これに限られず、例えば、グレーデッドプリズム202を備えず、光電変換部203が集光した単一バンドの光像を光電変換しても良い。
【0045】
また、本実施例では、撮像装置200が人工衛星に搭載される例を説明したが、これに限られず、例えば、航空機などの他の飛翔体に搭載しても良いし、スキャナなどの計測装置に搭載しても良い。
【符号の説明】
【0046】
11…第1の受光部 12…第1の電荷転送部 13…第1の緩衝レジスタ 21…第2の受光部 22…第2の電荷転送部 23…第2の緩衝レジスタ 30…出力制御部 40…出力レジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の走査方向に移動することで撮像対象を光学走査し、当該撮像対象の撮像を行う撮像装置であって、
前記撮像装置の受光面上に配置され、前記撮像対象の1画素とするエリアの前記走査方向の長さより該走査方向の長さが短い光検出窓からの受光量に応じて電荷を蓄積する受光手段と、
前記受光手段が1画素とするエリアの光学走査を終了した時に当該受光手段が蓄積した電荷を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記受光手段は、前記受光面上の前記走査方向に複数配列され、
前記複数の受光手段の各々は、前記走査方向の側に隣接する他の受光手段が電荷の蓄積を開始した時刻から、前記他の受光手段の光検出窓の前記走査方向の上端と自手段の光検出窓の前記走査方向の上端との間の距離に走査速度を乗じて得られる時間が経過した時刻になった時に電荷の蓄積を開始し、
前記出力手段は、前記受光面上の前記走査方向に複数配列された受光手段が蓄積した電荷を加算して出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記受光手段は、
前記走査方向に複数配列された前記光検出窓と、
前記光検出窓の各々に対応付けて配置され、当該対応する光検出窓からの受光量に応じて電荷を蓄積する複数の電荷蓄積素子と、
前記撮像対象の1画素とするエリアを撮像する間に、前記電荷蓄積素子が蓄積した電荷を前記走査方向の逆方向に配置された他の電荷蓄積素子に一定の間隔で複数回に分けて転送し、前記電荷蓄積素子によって逐次蓄積される電荷を加算する垂直転送素子と、
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
飛翔体に搭載され、前記走査方向は、前記飛翔体の進行方向であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
所定の走査方向に移動することで撮像対象を光学走査し、当該撮像対象の撮像を行う撮像装置を用いた撮像方法であって、
前記撮像装置の受光面上に配置され、前記撮像対象の1画素として取得するエリアの前記走査方向の長さより前記走査方向の長さが短い光検出窓を有する受光手段は、当該光検出窓からの受光量に応じて電荷を蓄積し、
出力手段は、前記受光手段が1画素として取得する撮像対象のエリアの光学走査を終了した時に当該受光手段が蓄積した電荷を出力する、
ことを特徴とする撮像方法。
【請求項6】
所定の走査方向に移動することで撮像対象を光学走査し、当該撮像対象の撮像を行う撮像回路であって、
前記撮像装置の受光面上に配置され、前記撮像対象の1画素として取得するエリアの前記走査方向の長さより前記走査方向の長さが短い光検出窓からの受光量に応じて電荷を蓄積する受光回路と、
前記受光手段が1画素として取得する撮像対象のエリアの光学走査を終了した時に当該受光手段が蓄積した電荷を出力する出力回路と、
を備えることを特徴とする撮像回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−9996(P2011−9996A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150811(P2009−150811)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託業務、産業技術力強化法19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(301072650)NEC東芝スペースシステム株式会社 (62)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】