説明

撮像装置、撮像方法

【課題】視聴覚特性に基づいて、撮影準備時間を短く知覚させることが可能な撮像装置、撮像方法を提供すること。
【解決手段】シャッターボタン押下からストロボ発光までに要する撮影準備時間を取得するステップ(S108、S110)と、ダミー音発生からストロボ発光までの時間は、視聴覚特性に基づいて、ダミー音発生とストロボ発光とが同時であると感知される検知限以内であるとして、シャッターボタン押下時を0に設定したダミー音を発生させる時刻を取得するステップ(S118)と、シャッターボタン押下からストロボ発光までに、ダミー音を発生するステップ(S120)と、撮影時にストロボ発光するステップと、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置を使用して静止画を撮影する際、通常、撮像装置は、使用者によってシャッターボタンが押し下げられて、そのシャッターボタンの押下を契機にシャッターが切られ、必要な場合はストロボ発光が行われる。このとき、シャッターボタンの押下と、シャッター動作及びストロボ発光との間には、時間差が生じる。この時間は、フォーカスレンズの位置設定や、絞り設定などの露光条件、ストロボ発光のための充電時間などが要因で生じる。
【0003】
一方、CCD等の光電変換素子を備えたディジタルカメラやカメラ付き携帯電話等の撮像装置では、撮影時に機械的なシャッター音やストロボ発生音は生じない。そのため、臨場感を得るためや、至近距離での盗撮防止のため、シャッターボタンが押し下げられたときに電子的に音を発生させる場合がある。例えば、以下の特許文献1では、カメラ付き携帯電話においてシャッター音を発生させる技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−217884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シャッターボタン押下から、シャッター動作やストロボ発光までの時間については、撮像装置に組み込まれた演算装置の高性能化や、撮像装置の機械的な性能が向上することなどで、時間の短縮化をある程度まで図ることができた。しかしながら、使用者にとって、未だ、シャッターボタン押下からシャッター動作やストロボ発光までの時間に時間差が知覚されることから、使用者は、撮像装置の動作が緩慢であると感じ、撮像装置を操作する際、ストレスを感じるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、視聴覚特性に基づいて、撮影準備時間を短く知覚させることが可能な、新規かつ改良された撮像装置、撮像方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、撮影時にストロボ発光するストロボ発光部と、シャッターボタン押下からストロボ発光までに、ダミー音を発生するダミー音発生部と、シャッターボタン押下からストロボ発光までに要する撮影準備時間を予め取得する撮影準備時間取得部と、ダミー音発生からストロボ発光までの時間は、視聴覚特性に基づいて、ダミー音発生とストロボ発光とが同時であると感知される検知限以内であるとして、シャッターボタン押下時を0に設定したダミー音を発生させる時刻を取得するダミー音発生時刻取得部を備えることを特徴とする、撮像装置が提供される。
【0008】
かかる構成により、シャッターボタン押下後、ストロボ発光までにダミー音が発生することから、ダミー音発生がストロボ発光に先行する。また、ダミー音発生からストロボ発光までの時間が検知限以内であるため、視聴覚特性に基づいて、例えば、使用者や被撮影者は、ダミー音発生とストロボ発光とが同時であると感知できる。従って、使用者や被撮影者は、検知限ほど、撮像装置が早く動作していると錯覚する。そのため、シャッターボタン押下からストロボ発生までの撮影準備時間に伴う遅延がある場合でも、撮影準備時間を短く感知させることができる。
【0009】
上記検知限は、視聴覚特性に基づいて250ミリ秒と設定されることができる。かかる構成により、使用者や被撮影者は、最大250ミリ秒ほど、撮像装置が早く動作していると錯覚する。
【0010】
上記撮影準備時間取得部は、撮影時のフォーカスレンズ位置合わせ条件、又は露光条件に基づいたシャッター遅延時間を取得するシャッター遅延時間取得部と、ストロボ発光部のチャージ状況に基づいたストロボ遅延時間を取得するストロボ遅延時間取得部と、シャッター遅延時間とストロボ遅延時間とを比較し、いずれか長いほうの値を撮影準備時間として判定する撮影準備時間判定部とを備えることができる。かかる構成により、シャッターボタン押下からストロボ発光までに要する撮影準備時間は、シャッター遅延時間又はストロボ遅延時間のいずれか長いほうに決定される。
【0011】
上記ダミー音発生時刻取得部は、検知限と撮影準備時間とを比較し、検知限と撮影準備時間とに基づいて、ダミー音発生時刻を取得することができる。かかる構成により、ダミー音発生時刻は、ダミー音発生からストロボ発光までの時間は、検知限又は撮影準備時間のいずれかに決定され、ダミー音発生からストロボ発光までの時間をもとにダミー音発生時刻が取得される。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、シャッターボタン押下からストロボ発光までに要する撮影準備時間を取得するステップと、ダミー音発生からストロボ発光までの時間は、視聴覚特性に基づいて、ダミー音発生とストロボ発光とが同時であると感知される検知限以内であるとして、シャッターボタン押下時を0に設定したダミー音を発生させる時刻を取得するステップと、シャッターボタン押下からストロボ発光までに、ダミー音を発生するステップと、撮影時にストロボ発光するステップと、を含むことを特徴とする、撮像方法が提供される。
【0013】
かかる構成により、シャッターボタン押下後、ストロボ発光までにダミー音が発生することから、ダミー音発生がストロボ発光に先行する。また、ダミー音発生とストロボ発光までの間が検知限以内であるため、視聴覚特性に基づいて、例えば、使用者や被撮影者は、ダミー音発生とストロボ発光とが同時であると感知できる。従って、使用者や被撮影者は、検知限ほど、撮像装置が早く動作していると錯覚する。そのため、シャッターボタン押下からストロボ発生までの撮影準備時間に伴う遅延がある場合でも、撮影準備時間を短く感知させることができる。
【0014】
上記撮影準備時間を取得するステップは、撮影時のフォーカス位置合わせ条件、又は露光条件に基づいたシャッター遅延時間を取得するステップと、ストロボ発光部のチャージ状況に基づいたストロボ遅延時間を取得するストロボ遅延時間を取得するステップと、シャッター遅延時間とストロボ遅延時間とを比較し、いずれか長いほうの値を撮影準備時間として判定するステップと、を含むことができる。かかる構成により、シャッターボタン押下からストロボ発光までに要する撮影準備時間は、シャッター遅延時間又はストロボ遅延時間のいずれか長いほうに決定される。
【0015】
上記ダミー音を発生させる時刻を取得するステップは、検知限と撮影準備時間とを比較し、検知限と撮影準備時間とに基づいて、ダミー音発生時刻を取得することができる。かかる構成により、ダミー音発生時刻は、ダミー音発生からストロボ発光までの時間は、検知限又は撮影準備時間のいずれかに決定され、ダミー音発生からストロボ発光までの時間をもとにダミー音発生時刻が取得される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、視聴覚特性に基づいて、撮影準備時間を短く知覚させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る撮像装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
【0019】
図1に示すように、撮像装置100は、OPS102(optical system)と、光電変換素子104(OEC:optoelectric converter)と、サンプラ・AD変換機106と、タイミング回路108と、DSP110(digital signal processor)と、DRAM112(dynamic random access memory)と、EEPROM114(electronically erasable and programmable read only memory)と、MCI116(memory card interface)と、マイクロコントローラ120と、レンズ駆動部122と、ストロボ制御部124と、ストロボ発光部126と、ユーザ入力ユニット128と、ディスプレイ駆動部130と、ディスプレイユーザ出力132と、マイクロフォン140と、AD変換機142と、エンコーダ144と、デコーダ150と、DA変換機152と、スピーカー154とを備える。
【0020】
OPS102は、外部の光情報を光電変換素子104に投射する光学系システムである。OPS102は、例えば、レンズを取り付ける筒状の鏡胴(図示せず。)と、光情報を光電変換素子104に結像させるレンズユニット(図示せず。)と、開口の大きさを変えて、光線束の方向や範囲を限定できる絞りなどを備える。レンズユニットは、例えば、単焦点レンズ、ズームレンズを含み、レンズの枚数は、1枚又は2枚以上である。
【0021】
光電変換素子104は、OPS102を経由して入射した光情報を電気信号に変換する光電変換が可能な素子から構成され、各素子が受光した光に応じた電気信号を生成する。光電変換素子104は、例えば、CCD(charge coupled device)、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)等を適用することができる。光電変換素子104の露光時間を制御するため、非撮影時に光を遮って撮影時のみ光が当たるように、メカニカルシャッター(図示せず。)を適用することができる。また、これに限定されず、電子シャッター(図示せず。)を適用してもよい。
【0022】
サンプラ・AD変換機106は、CDS/AMP(相関二重サンプリング回路(correlated double sampling)/増幅器(amplifier))(図示せず。)と、AGC(automatic gain control)(図示せず。)と、AD変換機などを有する。サンプラ・AD変換機106は、光電変換素子104から出力された電気信号を相関二重サンプリングし、その後AGCで信号に応じて利得を調整する。また、光電変換素子104で生成されたアナログの電気信号をデジタル信号に変換する。
【0023】
なお、サンプラ・AD変換機106は、一体型の回路とすることができるが、この例に限定されず、CDS回路と、AD変換機とが別の回路で構成されるとしてもよい。また、増幅器を設けない構成とすることもできる。
【0024】
タイミング回路108は、DSP110によって制御され、光電変換素子104やサンプラ・AD変換機106にタイミング信号を入力する。タイミング回路108からのタイミング信号によって、上述したメカニカルシャッターや電子シャッターなどのシャッターのシャッター速度が決定される。そして、タイミング回路108からのタイミング信号によって、光電変換素子104の駆動が制御される。その結果、光電変換素子104には、光電変換素子104が駆動する時間内に光情報が入射し、画像データのもととなる電気信号が生成される。
【0025】
DSP110は、画像音声処理をするためデジタル信号の処理を行うマイクロプロセッサである。マイクロコントローラ120は、撮像装置100の各構成部品に対して信号の送受信を行って、各構成部品を制御する。なお、本実施形態の撮像装置100は、DSP110と、マイクロコントローラ120と、別の2つのプロセッサを備えるとしたが、かかる例に限定されず、1つのプロセッサが、画像音声処理及び各構成部品の制御を行うとすることができる。
【0026】
DRAM112は、撮影が完了した画像を一時的に記憶する。なお、DRAM112を使用せず、撮影した画像を記憶できる容量を有する他のRAMなどの半導体記憶素子を使用することができる。
【0027】
EEPROM114は、DSP110やマイクロコントローラ120を制御する動作手順命令(コンピュータプログラムコード)を格納する。なお、EEPROM114を使用せず、動作手順命令を格納可能な他の記憶素子を使用することができる。
【0028】
MCI116は、画像、音声、動画などを記憶するための記憶媒体(図示せず。)と接続され、撮像装置100とのインターフェースを行う。
【0029】
レンズ駆動部122は、OPS102に備えられたレンズユニットの制御を行う。レンズ駆動部122は、レンズユニットを駆動して、光電変換素子104に結像する被写体の大きさやピントの調節を行う。
【0030】
ストロボ発光部126は、撮像装置100によって撮影する被写体を明るく照らすため、夜間や暗所での撮影時に発光する。ストロボ発光部126の発光制御は、ストロボ制御部124がマイクロコントローラ120からの信号を受信して、ストロボ発光部126に発光命令を出力することで行われる。
【0031】
ユーザ入力ユニット128は、撮像装置100の操作を行ったり、撮影時の各種の設定を行ったりする。ユーザ入力ユニット128には、撮像装置100の電源のオン・オフを行う電源ボタン(図示せず。)、撮影モードや撮影ドライブモードの選択を行う十字キーや選択ボタン(図示せず。)、画像や動画の撮影及び音声の収録を開始するシャッターボタン(図示せず。)などが配置される。ユーザ入力ユニット128の操作によって、信号がマイクロコントローラ120に出力され、この出力信号に応じて撮像装置100の各構成部材の制御が行われる。シャッターボタンは、2段階に押下可能に構成され、1段階目では、撮像装置100は、撮影時の撮影条件を取得して、後述するようにダミー音発生予定時刻を算出する。2段階目の押下は、実際にシャッター動作及びストロボ発光の契機となる。
【0032】
ディスプレイユーザ出力132は、例えば、撮影を行う前のライブビュー表示、撮像装置100の各種設定画面、撮影が完了した画像の表示などを行う。ディスプレイユーザ出力132への画像データの表示や、撮像装置100の各種情報の表示は、ディスプレイ駆動部130を介して行われる。
【0033】
マイクロフォン140は、撮像装置100によって動画の撮影や音声の録音を行う際に音声を収録する。マイクロフォン140で収録された音声は、AD変換機142でアナログの電気信号からデジタル信号に変換され、エンコーダ144で符号化される。
【0034】
スピーカー154は、撮像装置100によって撮影された動画や録音した音声の再生を行う際に音声を出力する。また、スピーカー154は、ダミー音を出力する。音声は、符号化されたデータをデコーダ150で復号化し、DA変換機152でデジタル信号からアナログ信号に変換され、スピーカー154から出力される。ダミー音は、シャッター動作、ストロボ発光を合図する音である。なお、ダミー音は、上述の電気信号による音声ではなく、別途、撮像装置100内に機械的な機構を設けて、この機構によって音が発生するとしてもよい。
【0035】
次に、図2を参照して、本実施形態に係る撮影時間処理部160について説明する。図2は、本実施形態に係る撮影時間処理部を示すブロック図である。
【0036】
撮影時間処理部160は、撮影準備時間取得部170と、ダミー音発生時刻取得部180とを備える。撮影時間処理部160は、例えば、DSP110に設けられるが、この例に限定されず、例えばマイクロコントローラ120に設けられてもよい。撮影時間処理部160は、シャッターボタンの2段階目の押下からシャッター動作、ストロボ発光までの時間を算出し、更にダミー音を発生させる時刻を算出する。なお、シャッター動作、ストロボ発光は、同時に行われるとする。
【0037】
次に、撮影時間処理部160の各構成要素について詳細に説明する。
【0038】
撮影準備時間取得部170は、図2に示すように、シャッター遅延時間取得部172と、ストロボ遅延時間取得部174と、撮影準備時間判定部176とを備える。撮影準備時間取得部170は、シャッターボタンの2段階目の押下からストロボ発光までに要する撮影準備時間を、例えばシャッターボタンの1段階目の押下を契機に予め取得する。
【0039】
即ち、撮像装置100を用いて撮影を行うとき、被写体を適切な明るさや色、ピント等で撮影するために、様々な撮影条件を考慮する必要がある。この撮影条件を把握して、撮像装置100のレンズユニットや絞りなどを調節するため、シャッターボタンの2段階目の押下から、実際にシャッターが動作し、ストロボが発光するまで、僅かであるが時間差が生じる。撮影準備時間取得部170は、この時間差を予め取得する。
【0040】
シャッター遅延時間取得部172は、撮影時の露光条件、フォーカスレンズ位置合わせ条件によってシャッター動作までに要する時間であるシャッター遅延時間Dsを取得する。露光条件は、レンズユニットを通して光電変換素子104に入射する光の総量によって異なり、この光の量に応じて、絞りやシャッタースピードが調節される。従って、予め絞りやシャッタースピードの調節に要する時間を記憶部(図示せず。)にテーブルとして記憶させておくことで、絞りやシャッタースピードの調節に関する遅延時間を取得することができる。
【0041】
また、フォーカスレンズ位置合わせ条件は、レンズユニットの絞り値、被写体までの距離、レンズの焦点距離の組合せによって異なり、これらの値に応じて、フォーカスレンズの位置が調節される。従って、予めフォーカスレンズの位置調節に要する時間を記憶部にテーブルとして記憶させておくことで、フォーカスレンズの位置調節に関する遅延時間を取得することができる。
【0042】
なお、絞りやシャッタースピードの調節や、フォーカスレンズの位置調節に要する時間をテーブルとして記憶させておくとしたが、かかる例に限定されない。例えば、撮影時の露光条件、フォーカスレンズ位置合わせ条件を取得して、シャッターボタンの1段階目の押下を契機に、絞りやシャッタースピードの調節、フォーカスレンズの位置調節に要する時間を計算してシャッター遅延時間Dsを取得するとしてもよい。
【0043】
ストロボ遅延時間取得部174は、撮影時のストロボのチャージ条件等によって生じるストロボ遅延時間Dfを取得する。チャージ条件は、ストロボの発光量や蓄電量によって異なり、チャージに要する時間も変化する。様々な条件下のチャージに要する時間を記憶部にテーブルとして記憶させておくことで、チャージ状況に関するストロボ遅延時間Dfを取得することができる。なお、撮影条件に応じたストロボ発光量や蓄電量を取得して、シャッターボタンの1段階目の押下を契機に、チャージに要する時間を計算してストロボ遅延時間Dfを取得するとしてもよい。
【0044】
撮影準備時間判定部176は、シャッター遅延時間Dsとストロボ遅延時間Dfとを比較し、いずれか長いほうの値を撮影準備時間Dとして判定する。具体的には、撮影準備時間判定部176は、シャッター遅延時間取得部172で取得されたシャッター遅延時間Dsと、ストロボ遅延時間取得部174で取得されたストロボ遅延時間Dfを受けて、シャッター遅延時間Dsとストロボ遅延時間Dfとを比較する。シャッター遅延時間Dsがストロボ遅延時間Df以上であれば、シャッター遅延時間Dsを撮影準備時間Dとし、シャッター遅延時間Dsがストロボ遅延時間Df未満であれば、ストロボ遅延時間Dfを撮影準備時間Dと判定する。
【0045】
以上より、撮影準備時間取得部170は、シャッターボタンの2段階目の押下からストロボ発光までに要する撮影準備時間Dを予め取得することができる。
【0046】
ダミー音発生時刻取得部180は、図2に示すように、ダミー音発生時間算出部182を備える。ダミー音発生時刻取得部180は、ダミー音の発生時刻S2を取得する。ダミー音は、シャッターボタンの2段階目の押下からシャッター動作及びストロボ発光までの間に発生され、ダミー音発生時刻S2は、2段階目のシャッターボタン押下S1時からY秒経過後の時刻である。ダミー音発生時刻取得部180は、ダミー音発生からストロボ発光までの時間が、検知限T以内となるように、ダミー音発生時刻S2を取得する。
【0047】
検知限Tは、視聴覚特性に基づいてダミー音発生とストロボ発光とがほぼ同時であると感知される時間である。一般に、音と光が時間的に近接して発生し、音の発生が先行している条件下では、音の発生と光の発生の間隔が250ミリ秒以内のとき、光の発光が音の発生時刻に近づいて、音と光の発生がほぼ同時であると感知されることが観察されている(例えば、上村俊介、他「視聴覚相互作用の時間特性」、基礎心理学研究、日本基礎心理学会、2006年9月、第25巻、第1号、p.134)。一方、音の発生と光の発生の間隔が250ミリ秒を超えると、音と光の発生が別々に生じていると感知される。本実施形態では、検知限Tを、例えば250ミリ秒とする。
【0048】
ダミー音発生時間算出部182は、撮影準備時間Dと検知限Tとを比較する。撮影準備時間Dは、撮影準備時間取得部170の撮影準備時間判定部176で取得された時間であり、検知限Tは、例えば記憶部に記憶されている。
【0049】
撮影準備時間Dが検知限T以上である場合は、ダミー音発生からストロボ発光までの時間は、検知限Tとする。従って、ダミー音が、シャッターボタン押下S1からY秒経過後に発生するとした場合、経過時間Yは、Y=撮影準備時間D−検知限Tとして算出される。
【0050】
一方、撮影準備時間Dが検知限T未満である場合、検知限Tよりも短い時間でストロボ発光をすることができるので、シャッターボタン押下S1と同時にダミー音を発生させることができる。シャッターボタン押下S1からストロボ発光までの経過時間Yは、Y=0である。
【0051】
次に、本実施形態に係る撮像装置の作用について説明する。図3は、本実施形態に係る撮像装置を用いた撮像方法を示すフローチャートである。
【0052】
まず、使用者は、撮影時、2段階押下できるシャッターボタンのうち1段階押し下げる。すると、撮像装置100は、撮影条件等を取得して、ダミー音発生時刻を算出する。その後、使用者がシャッターボタンの2段階目を押し下げると、撮像装置100は、実際にシャッター動作及びストロボ発光を行って、撮影が完了する。以下、シャッターボタン1段階目の押下によって、撮影条件等を取得して、ダミー音発生時刻を算出する過程を詳細に説明する。
【0053】
まず、シャッター遅延時間取得部172は、レンズユニットを通して入射される光情報から、撮影時の露光条件、フォーカスレンズ位置合わせ条件等を取得し、絞りやシャッタースピードの調節、フォーカスレンズの位置調節に関するシャッター遅延時間Dsを取得する(ステップS102)。また、ストロボ遅延時間取得部174は、ストロボの発光量や蓄電量等のシャッター条件を取得し、ストロボ遅延時間Dfを取得する(ステップS104)。図3に示すフローチャートは、シャッター遅延時間Dsを取得し(ステップS102)、ストロボ遅延時間Dfを取得する(ステップS104)としたが、本実施形態はこの順番に限定されない。ストロボ遅延時間Dfは、先に取得されるとしてもよいし、同時に取得されるとしてもよい。
【0054】
また、撮影準備時間判定部176は、シャッター遅延時間Dsとストロボ遅延時間Dfとを比較し、いずれが長い時間であるかを判定する(ステップS106)。シャッター遅延時間Dsがストロボ遅延時間Df以上であれば、シャッター遅延時間Dsを撮影準備時間Dと判定する(ステップS108)。一方、シャッター遅延時間Dsがストロボ遅延時間Df未満であれば、ストロボ遅延時間Dfを撮影準備時間Dと判定する(ステップS110)。
【0055】
次に、ダミー音発生時間算出部182は、撮影準備時間Dと検知限Tとを比較し、いずれが長い時間であるかを判定する(ステップS112)。撮影準備時間Dが検知限T以上である場合、シャッターボタン押下S1からストロボ音発生までの経過時間Yは、Y=撮影準備時間D−検知限Tとして算出される(ステップS114)。一方、撮影準備時間Dが検知限T未満である場合、シャッターボタン押下S1からストロボ発光までの経過時間Yは、Y=0として算出される(ステップS116)。
【0056】
そして、ダミー音発生時刻取得部180は、ダミー音発生時間算出部182によって算出された経過時間Yをもとに、2段階目のシャッターボタン押下S1時からのダミー音発生時刻S2を取得する(ステップS118)。以上より、撮像装置100は、撮影条件に基づいて、ダミー音発生時刻S2を取得することができる。その後、使用者によって、シャッターボタンの2段階目が押下されたとき、撮像装置100は、その押下時を0として、ダミー音発生時刻S2にダミー音を発生させる(ステップS120)。
【0057】
次に、シャッターボタン押下とダミー音発生時刻のタイミングについて、図4〜図6に示す実施例を参照して説明する。図4〜図6は、本実施形態に係る撮像装置の作用を示すシーケンス図である。
【0058】
シャッターボタン押下とダミー音発生時刻のタイミングは、ストロボ遅延時間Df、シャッター遅延時間Ds、検知限Tの関係によって異なる。
【0059】
まず、図4に示すように、ストロボ遅延時間Df>検知限T>シャッター遅延時間Dsである場合について説明する。このとき、ストロボ遅延時間Df>シャッター遅延時間Dsより、撮影準備時間判定部176は、ストロボ遅延時間Dfが、撮影準備時間Dであると判定する(ステップS108)。また、撮影準備時間D(ストロボ遅延時間Df)>検知限Tより、ダミー音発生時間算出部182は、シャッターボタン押下S1からストロボ音発生までの経過時間Yは、Y=撮影準備時間D−検知限Tとして算出する(ステップS114)。従って、ストロボ遅延時間Df>検知限T>シャッター遅延時間Dsである場合、シャッターボタン押下S1からY秒後にダミー音が発生する(ステップS120)。
【0060】
図5に示すように、検知限T>ストロボ遅延時間Df>シャッター遅延時間Dsである場合、ストロボ遅延時間Df>シャッター遅延時間Dsより、撮影準備時間判定部176は、ストロボ遅延時間Dfが、撮影準備時間Dであると判定する(ステップS108)。また、検知限T>撮影準備時間D(ストロボ遅延時間Df)より、ダミー音発生時間算出部182は、シャッターボタン押下S1からストロボ音発生までの経過時間Yは、Y=0として算出する(ステップS116)。従って、検知限T>ストロボ遅延時間Df>シャッター遅延時間Dsである場合、シャッターボタン押下S1と同時にダミー音が発生する(ステップS120)。
【0061】
図6に示すように、ストロボ遅延時間Df>シャッター遅延時間Ds>検知限Tである場合、ストロボ遅延時間Df>シャッター遅延時間Dsより、撮影準備時間判定部176は、ストロボ遅延時間Dfが、撮影準備時間Dであると判定する(ステップS108)。図4と異なり、シャッター遅延時間Dsは、検知限Tより長いが、撮影準備時間D(ストロボ遅延時間Df)>検知限Tより、ダミー音発生時間算出部182は、シャッターボタン押下S1からストロボ音発生までの経過時間Yは、Y=撮影準備時間D−検知限Tとして算出する(ステップS114)。従って、ストロボ遅延時間Df>検知限T>シャッター遅延時間Dsである場合、シャッターボタン押下S1からY秒後にダミー音が発生する(ステップS120)。
【0062】
以上説明したように、本実施形態によれば、シャッターボタン押下からシャッター動作及びストロボ発光までの間にダミー音が発生し、ダミー音は、シャッター動作及びストロボ発光よりも最大250ミリ秒先行して発生する。
【0063】
シャッターボタン押下からシャッター動作及びストロボ発光までの間には、時間差があるが、ダミー音が、シャッター動作及びストロボ発光よりも先行して発生する。また、その時間差は、視聴覚特性に基づいてダミー音発生とストロボ発光とがほぼ同時であると感知される時間である250ミリ秒という検知限以内である。従って、本実施形態に係る撮像装置100の使用者や、被写体である被撮影者は、視聴覚特性によって、ストロボ発光がダミー音発生時刻に近づいて、ダミー音の発生と同時にストロボ発光がされたと感知する。
【0064】
その結果、撮像装置100の使用者や、被撮影者は、最大250ミリ秒ほど、撮像装置100が早く動作していると錯覚する。そのため、シャッターボタン押下からストロボ発生までの撮影準備時間に伴う遅延がある場合でも、撮影準備時間を短く感知させることが可能となり、撮影時の遅延による体感的な遅延を軽減することができる。そして、この遅延低減効果により、遅延によって生じるストレスを低減することができる。
【0065】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0066】
例えば、上記実施形態では、光電変換素子を備えた撮像装置について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、レンズユニットを通して光情報をフィルムに結像する撮像装置に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態に係る撮影時間処理部を示すブロック図である。
【図3】同実施形態に係る撮像装置を用いた撮像方法を示すフローチャートである。
【図4】同実施形態に係る撮像装置の作用を示すシーケンス図である。
【図5】同実施形態に係る撮像装置の作用を示すシーケンス図である。
【図6】同実施形態に係る撮像装置の作用を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0068】
100 撮像装置
102 OPS
104 光電変換素子
106 サンプラ・AD変換機
108 タイミング回路
110 DSP
112 DRAM
114 EEPROM
116 MCI
120 マイクロコントローラ
122 レンズ駆動部
124 ストロボ制御部
126 ストロボ発光部
128 ユーザ入力ユニット
130 ディスプレイ駆動部
132 ディスプレイユーザ出力
140 マイクロフォン
142 AD変換機
144 エンコーダ
150 デコーダ
152 DA変換機
154 スピーカー
160 撮影時間処理部
170 撮影準備時間取得部
172 シャッター遅延時間取得部
174 ストロボ遅延時間取得部
176 撮影準備時間判定部
180 ダミー音発生時刻取得部
182 ダミー音発生時間算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影時にストロボ発光するストロボ発光部と、
シャッターボタン押下から前記ストロボ発光までに、ダミー音を発生するダミー音発生部と、
前記シャッターボタン押下から前記ストロボ発光までに要する撮影準備時間を予め取得する撮影準備時間取得部と、
前記ダミー音発生から前記ストロボ発光までの時間は、視聴覚特性に基づいて、前記ダミー音発生と前記ストロボ発光とが同時であると感知される検知限以内であるとして、前記シャッターボタン押下時を0に設定した前記ダミー音を発生させる時刻を取得するダミー音発生時刻取得部と、
を備えることを特徴とする、撮像装置。
【請求項2】
前記検知限は、視聴覚特性に基づいて250ミリ秒と設定されたことを特徴とする、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮影準備時間取得部は、
前記撮影時のフォーカスレンズ位置合わせ条件、又は露光条件に基づいたシャッター遅延時間を取得するシャッター遅延時間取得部と、
前記ストロボ発光部のチャージ状況に基づいたストロボ遅延時間を取得するストロボ遅延時間取得部と、
前記シャッター遅延時間と前記ストロボ遅延時間とを比較し、いずれか長いほうの値を撮影準備時間として判定する撮影準備時間判定部と、
を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記ダミー音発生時刻取得部は、
前記検知限と前記撮影準備時間とを比較し、
前記検知限と前記撮影準備時間とに基づいて、前記ダミー音発生時刻を取得することを特徴とする、請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
シャッターボタン押下からストロボ発光までに要する撮影準備時間を取得するステップと、
ダミー音発生から前記ストロボ発光までの時間は、視聴覚特性に基づいて、前記ダミー音発生と前記ストロボ発光とが同時であると感知される検知限以内であるとして、前記シャッターボタン押下時を0に設定した前記ダミー音を発生させる時刻を取得するステップと、
前記シャッターボタン押下から前記ストロボ発光までに、前記ダミー音を発生するステップと、
撮影時に前記ストロボ発光するステップと、
を含むことを特徴とする、撮像方法。
【請求項6】
前記撮影準備時間を取得するステップは、
前記撮影時のフォーカス位置合わせ条件、又は露光条件に基づいたシャッター遅延時間を取得するステップと、
ストロボ発光部のチャージ状況に基づいたストロボ遅延時間を取得するストロボ遅延時間を取得するステップと、
前記シャッター遅延時間と前記ストロボ遅延時間とを比較し、いずれか長いほうの値を撮影準備時間として判定するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項5に記載の撮像方法。
【請求項7】
前記ダミー音を発生させる時刻を取得するステップは、
前記検知限と前記撮影準備時間とを比較し、
前記検知限と前記撮影準備時間とに基づいて、前記ダミー音発生時刻を取得することを特徴とする、請求項6に記載の撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−166954(P2008−166954A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352066(P2006−352066)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(500548884)三星テクウィン株式会社 (156)
【Fターム(参考)】