説明

撮像装置、撮像装置の制御方法及びプログラム

【課題】安定したAF制御(焦点検出)を可能とする新たな技術を提供する。
【解決手段】被写体の画像信号から合焦状態を表す評価値を生成し、この評価値が最大となるようにレンズの位置を調整して焦点検出を行う調整手段とを備える撮像装置であって、前記画像信号に含まれる被写体のうち、合焦させる主被写体が選択されている場合に、主被写体が検出されたかどうかを判定し、検出された場合には、前記評価値を生成する領域として前記主被写体を中心とした領域を、前記主被写体が選択されていない場合及び前記主被写体が検出されていないと判定された場合には、前記評価値を生成する領域として予め定められた固定の領域を前記画像信号に対して設定し、前記主被写体が選択されている場合は、前記判定手段による判定が終了するまで、前記焦点検出を停止する、又は、前記焦点検出の応答性を他の期間より低下させる撮像装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、撮像装置の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルビデオカメラなどの撮像装置のオートフォーカス(AF)制御では、TV−AF方式が主流となっている。TV−AF方式とは、撮像素子で生成された映像信号の鮮鋭度(コントラスト)を示すAF評価値を生成し、AF評価値が最大となるフォーカスレンズの位置を探索するものである。
【0003】
TV−AF方式は、コントラストの大きな被写体に焦点を合わせるという特徴を有する。従って、人物を撮像する場合において、人物のコントラストと背景のコントラストとの関係から、主被写体である人物に焦点が合わず、背景に焦点が合ってしまうことがある。特に、主被写体が動いている場合には、かかる主被写体に対して合焦状態を維持することが非常に困難である。
【0004】
そこで、主被写体を検出して、検出された被写体の動きに追従して合焦状態を維持する被写体追尾機能が幾つか提案されている(特許文献1及び2参照)。例えば、特許文献1には、被写体の顔が検出された場合に、検出された顔を含む領域を合焦検出領域として設定する技術が提案されている。また、特許文献2には、被写体への合焦を行ってから被写体の検出を開始することで、被写体の検出精度を向上させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−215403号公報
【特許文献2】特開2002−051329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、被写体(主被写体)の顔が検出されるまでの期間は他の被写体への合焦が行われているため、他の被写体の動きに合焦位置が引きずられることになる。その結果、顔を検出すべき被写体が大きくボケてしまい、被写体の顔の検出が正常に行われなくなる場合がある。
【0007】
また、特許文献2は、被写体への合焦を行った後、かかる被写体を検出できなかった(即ち、被写体の検出に失敗した)場合には、フォーカス位置をプリセット状態に戻すようにしている。従って、ハンチングを起こしているような撮像者の予測困難な状態が発生してしまう。
【0008】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、安定したAF制御(焦点検出)を可能とする新たな技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての撮像装置は、撮像光学系で形成された被写体の像を光電変換して画像信号を生成する撮像手段と、前記画像信号のうち評価値を生成する領域として設定された領域に含まれる画像信号から前記撮像光学系の合焦状態を表す評価値を生成する生成手段と、前記生成手段によって生成された前記評価値が最大となるように前記撮像光学系に含まれる焦点調整レンズの位置を調整して焦点検出を行う調整手段とを備える撮像装置であって、前記画像信号に含まれる被写体のうち、前記撮像光学系を合焦させる主被写体が選択されている場合に、前記画像信号から前記主被写体を検出する検出手段と、前記検出手段によって前記主被写体が検出されたかどうかを判定する判定手段と、前記主被写体が検出されたと前記判定手段によって判定された場合には、前記評価値を生成する領域として前記主被写体を中心とした領域を、前記主被写体が選択されていない場合及び前記主被写体が検出されていないと前記判定手段によって判定された場合には、前記評価値を生成する領域として予め定められた固定の領域を前記画像信号に対して設定する設定手段と、前記主被写体が選択されている場合に、前記判定手段による判定が終了するまでの期間において、前記調整手段による前記焦点検出を停止する、又は、前記焦点検出の応答性を他の期間より低下させるように前記調整手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、安定したAF制御(焦点検出)を可能とする新たな技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一側面としての撮像装置の構成を示す概略図である。
【図2】従来の撮像装置(デジタルビデオカメラ)のAF制御の課題を説明するための図である。
【図3】従来の撮像装置(デジタルビデオカメラ)のAF制御の課題を説明するための図である。
【図4】第1の実施形態における撮像装置のAF制御を説明するためのフローチャートである。
【図5】図4に示すAF制御の動作を示す図である。
【図6】第1の実施形態における撮像装置の別のAF制御を説明するためのフローチャートである。
【図7】第2の実施形態における撮像装置のAF制御を説明するためのフローチャートである。
【図8】第2の実施形態における撮像装置の別のAF制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、本発明の一側面としての撮像装置1の構成を示す概略図である。撮像装置1は、本実施形態では、被写体の動画像及び被写体の静止画像を撮像することが可能なデジタルビデオカメラとして具現化される。但し、本発明は、デジタルビデオカメラに限定されるものではなく、デジタルスチルカメラなどの他の撮像装置にも適用することができる。
【0015】
撮像装置1は、第1の固定レンズ102と、光軸方向に移動して変倍を行う変倍レンズ104と、絞り106と、第2の固定レンズ108と、焦点調整レンズ(フォーカスコンペンセータレンズ)110とを備える。なお、焦点調整レンズ110は、本実施形態では、変倍に伴う焦点面の移動を補正する機能と、フォーカシングの機能とを有する。第1の固定レンズ102、変倍レンズ104、絞り106、第2の固定レンズ108及び焦点調整レンズ110は、被写体の像を形成する撮像光学系10を構成する。
【0016】
また、撮像装置1は、撮像素子15と、CDS/AGC回路部20と、信号処理部25と、モニタ部30と、記録部35とを備える。撮像素子15は、例えば、CCDセンサやCMOSセンサで構成され、撮像光学系10で形成された被写体の像を光電変換する。CDS/AGC回路部20は、撮像素子15からの出力をサンプリングし、ゲイン調整する。信号処理部25は、CDS/AGC回路部20からの出力信号に対して様々な画像処理を施して画像信号(映像信号)を生成する。モニタ部30は、例えば、LCDなどで構成され、信号処理部25から出力される画像信号に対応する画像を表示する。記録部35は、信号処理部25から出力される画像信号を磁気テープ、光ディスク、半導体メモリなどの記録媒体に記録する。
【0017】
また、撮像装置1は、変倍レンズ104を光軸方向に駆動する(移動させる)変倍レンズ駆動部40と、焦点調整レンズ110を光軸方向に駆動する(移動させる)焦点調整レンズ駆動部45とを備える。変倍レンズ駆動部40及び焦点調整レンズ駆動部45は、ステッピングモータ、DCモータ、振動型モータ及びボイスコイルモータなどのアクチュエータで構成される。
【0018】
また、撮像装置1は、AFゲート50と、生成部55とを備える。AFゲート50は、CDS/AGC回路部20から出力される全画素の出力信号のうち、焦点検出に用いられる領域(即ち、AF評価値を生成する領域)に含まれる出力信号のみを通過させる(抽出する)ゲートである。生成部55は、AFゲート50を通過した信号から高周波成分や輝度差成分(AFゲート50を通過した信号の輝度レベルの最大値と最小値との差分)などを抽出してAF評価値(AF評価値信号)を生成して制御部70に入力する。AF評価値は、撮像素子15からの出力信号に基づいて生成される画像の鮮鋭度(コントラスト)を表しているが、鮮鋭度は、撮像光学系10の合焦状態(焦点状態)に応じて変化する。従って、AF評価値は、撮像光学系10の合焦状態を表している。
【0019】
また、撮像装置1は、操作部60と、検出部65と、制御部70とを備える。操作部60は、例えば、撮像者からの操作(指示)を受け付ける各種のボタンやモニタ部30に設けられたタッチパネルを含む。本実施形態において、画像信号に含まれる被写体のうち、撮像光学系10を合焦させる主被写体の選択や撮像装置1の動作モードの選択などは、操作部60を介して、制御部70に入力される。検出部65は、操作部60を介して撮像光学系10を合焦させる主被写体が選択されている場合に、画像信号から選択された主被写体を検出し、その検出結果を制御部70に入力する。検出部65は、本実施形態では、主被写体の画像信号に対して顔検出処理を施し、撮像画面内の顔領域を検出することで主被写体を検出するが、主被写体を検出することが可能であれば、顔検出処理以外の処理を用いてもよい。なお、顔検出処理としては、例えば、画像データで表される各画素の階調色から肌色領域を抽出し、予め定められた顔の輪郭プレートとのマッチング度で顔を検出する処理を用いることが可能である。また、当業界で周知のパターン検出技術によって、目、鼻、口などの顔の特徴点を抽出することで顔を検出する処理を顔検出処理として用いることも可能である。
【0020】
制御部70は、撮像装置1の全体の動作を制御する。例えば、制御部70は、生成部55で生成されたAF評価値が最大となるように、焦点調整レンズ駆動部45を介して焦点調整レンズ110の位置を調整して焦点検出(AF制御)を行う。また、制御部70は、検出部65から入力される主被写体の検出結果に基づいて、検出部65によって主被写体が検出されたかどうかを判定する。そして、制御部70は、主被写体が検出されたかどうかの判定結果に基づいて、AF評価値を生成する領域をAFゲート50に設定する。具体的には、制御部70は、後述するように、検出部65によって主被写体が検出された場合には、AF評価値を生成する領域として、主被写体を中心とした領域をAFゲート50に設定する。一方、検出部65によって主被写体が検出されていない場合には、AF評価値を生成する領域として、予め定められた固定の領域をAFゲート50に設定する。なお、主被写体が選択されていない場合には、制御部70は、AF評価値を生成する領域として、予め定められた固定の領域をAFゲート50に設定する。また、制御部70は、主被写体が選択されている場合に、主被写体が検出されたかどうかの判定が終了するまでの期間において、焦点検出を停止する、又は、焦点検出の応答性を他の期間(例えば、通常のAF制御の期間)より低下させる。
【0021】
ここで、撮像装置1のAF制御(制御部70による焦点検出)を説明する前に、図2及び図3を参照して、被写体追尾機能を有する従来の撮像装置(デジタルビデオカメラ)のAF制御の課題について具体的に説明する。
【0022】
図2は、主被写体が選択された場合に、主被写体の顔検出が成功してから顔枠を移動(設定)するAF制御の動作を示している。焦点検出に用いられる領域を表すAF枠は、一般的に、顔枠と通常枠の2つの枠で構成され、AF制御では、顔枠及び通常枠のそれぞれでのAF評価値をサンプリングする。顔枠は、通常、予め定められた固定の領域として、撮像画面の中央部に設定されている。これは、撮像者が主被写体を撮像画面の中央部に位置させて撮像することが多いためである。一方、通常枠は、顔枠を含む広い領域で設定されている。これは、撮像画面の中央部に主被写体が存在しない場合にも、撮像画面上に存在する被写体のいずれかに合焦させるためである。また、被写体がボケている場合であっても、撮像者が被写体を検出できる程度の小ボケであれば、被写体の顔検出は可能であるものとする。
【0023】
図2(a)を参照するに、顔枠は撮像画面の中央部に設定されており、被写体Bに合焦されている。ここで、撮像者が主被写体として被写体Aを選択した場合を考える。この場合、被写体Aの顔検出に成功すると、図2(b)に示すように、顔枠が被写体Aを含む領域(即ち、顔検出位置を含む領域)に設定され、被写体Aに合焦される。但し、顔検出には所定の時間を要するため、この間に被写体Bが移動して合焦位置がずれてしまった場合には、図2(c)に示すように、合焦位置のずれに引きずられて被写体Aが大きくボケてしまうため、顔検出に失敗してしまう。
【0024】
図3は、主被写体が選択された場合に、主被写体の選択と同時に顔枠を移動(設定)するAF制御の動作を示している。図3に示すAF制御は、被写体Bの移動に起因して被写体Aが大きくボケてしまうことを回避することが可能である。
【0025】
図3(a)を参照するに、顔枠は撮像画面の中央部に設定されており、被写体Bに合焦されている。ここで、撮像者が主被写体として被写体Aを選択すると、図3(b)に示すように、顔枠が被写体Aに設定され、被写体Aに合焦される。そして、被写体Aの顔検出に成功すると、図3(c)に示すように、顔枠は被写体Aに設定されたまま、被写体Aへの合焦が維持される。一方、被写体Aの顔検出に失敗すると、主被写体の選択が解除されると共に、顔枠が撮像画面の中央部に設定されるため、図3(a)に示す状態に戻ってしまう。その結果、合焦させる主被写体が被写体Bから被写体Aに移り、再度、被写体Bに戻ってしまうため、ハンチングを起こしているような撮像者の予測困難な状態が発生してしまう。
【0026】
以下、第1の実施形態及び第2の実施形態において、撮像装置1のAF制御を説明する。なお、撮像装置1のAF制御は、上述したような、従来の撮像装置(デジタルビデオカメラ)のAF制御の課題を解決することができる。なお、撮像装置1のAF制御は、制御部70が撮像装置1の各部を統括的に制御することによって実行される。
<第1の実施形態>
図4は、第1の実施形態における撮像装置1のAF制御を説明するためのフローチャートである。
【0027】
S1002では、制御部70は、操作部60を介して、撮像光学系10を合焦させる主被写体が選択されたかどうかを判定する。主被写体が選択されていないと判定した場合には、S1004に移行する。
【0028】
S1004では、制御部70は、AF評価値を生成する領域としての顔枠を撮像画面の中央部に設定する。S1006では、制御部70は、生成部55で生成された顔枠及び通常枠のそれぞれでのAF評価値を取得する。S1008では、制御部70は、S1006で取得した顔枠及び通常枠のそれぞれでのAF評価値を加算する。S1010では、制御部70は、焦点調整レンズ駆動部45を介して、焦点調整レンズ110を光軸方向に移動させ、S1008で加算されるAF評価値が最大となるように焦点調整レンズ110の位置を調整する(即ち、TV−AF制御を行う)。このように、主被写体が選択されていない場合には、通常のTV−AF制御が行われる。
【0029】
一方、S1002において、主被写体が選択されていると判定した場合には、S1012に移行する。S1012では、制御部70は、検出部65による主被写体の顔検出処理の検出結果を取得する。S1014では、制御部70は、S1012で取得した検出結果に基づいて、主被写体が検出されたかどうか(即ち、主被写体の顔検出が成功したかどうか)を判定する。
【0030】
S1014において、主被写体が検出されたと判定した場合には、S1016に移行する。S1016では、制御部70は、主被写体の顔検出位置を含む領域に顔枠を設定して、顔枠及び通常枠のそれぞれでのAF評価値の取得(S1006)、AF評価値の加算(S1008)及びTV−AF制御(S1010)を行う。
【0031】
一方、S1014において、主被写体が検出されていないと判定した場合には、S1018に移行する。S1018では、制御部70は、検出部65による顔検出処理が開始されてから一定の時間が経過したかどうか(即ち、顔検出処理中であるかどうか)を判定する。一定の時間が経過していない場合には、S1012に移行し、AF制御を停止する(即ち、一定の時間が経過するまでは、S1010のTV−AF制御に移行しない)。また、一定の時間が経過している場合には、主被写体の顔検出が失敗したものとして、S1004に移行する(即ち、通常のTV−AF制御が行われる)。なお、主被写体の顔検出が失敗した場合には、操作部60にて選択された被写体も解除される。
【0032】
このように、図4に示すAF制御(焦点検出)では、主被写体が選択された場合に、かかる主被写体が検出されたかどうかの判定が終了するまでの期間において、AF制御(TV−AF制御)を停止している。従って、図4に示すAF制御では、上述した従来の撮像装置のAF制御の課題を解決し、主被写体が検出されたかどうかにかかわらず、常に安定したAF制御を行うことができる。
【0033】
なお、S1016の顔枠の設定は、S1002で被写体が選択されたと判定されてから、S1018で一定の時間の経過を待つ期間内であれば、どこで行ってもよい。この期間は、AF評価値の取得(S1006)、AF評価値の加算(S1008)、及び、フォーカスレンズの駆動を行うTV−AF制御(S1010)が行われないため、この期間のどこで顔枠の変更が発生してもフォーカス状態は変わらない。
【0034】
図5を参照して、図4に示すAF制御による効果を具体的に説明する。図5は、図4に示すAF制御の動作を示している。図5(a)を参照するに、主被写体が選択されておらず、顔枠は撮像画面の中央部に設定されており、被写体Bに合焦されている。ここで、主被写体として被写体Aが選択されると、上述したように、被写体Aが検出されたかどうか(即ち、被写体Aの顔検出が成功したか失敗したか)の判定が終了するまでの期間において、TV−AF制御を停止する。従って、図5(b)に示すように、合焦位置が維持される。これにより、被写体Bが移動した場合であっても、被写体Bの移動に合焦位置が引きずられて被写体Aが大きくボケてしまうこと(図3(c)参照)を防止することができる。そして、被写体Aの顔検出に成功すると、図5(c)に示すように、顔枠は被写体Aに設定され、被写体Aに合焦される。一方、被写体Aの顔検出に失敗すると、被写体の選択が解除されると共に、顔枠が撮像画面の中央部に設定され、図5(a)に示す状態となる。但し、主被写体が選択されてから、主被写体が検出されたかどうかの判定が終了するまでの期間においてはTV−AF制御を行っていないため、ハンチングを起こしているような撮像者の予測困難な状態を回避することができる。
【0035】
なお、図4に示すAF制御では、主被写体が検出されたかどうかの判定が終了するまでの期間は、顔枠及び通常枠のそれぞれでのAF評価値の取得(S1006)、AF評価値の加算(S1008)及びTV−AF制御(S1010)を行っていない。但し、主被写体が検出されたかどうかの判定が終了するまでの期間であっても、図6に示すように、AF制御の応答性を低下させてS1006乃至S1010の処理を行ってもよい。
【0036】
図6は、第1の実施形態における撮像装置1の別のAF制御を説明するためのフローチャートである。図6に示すS1102乃至S1110は、図4に示すS1002乃至S1010と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。図4に示すAF制御と同様に、主被写体が選択されていない場合には、通常のTV−AF制御が行われる。
【0037】
S1102において、主被写体が選択されていると判定した場合には、S1112に移行する。S1112では、制御部70は、検出部65による主被写体の顔検出処理の検出結果を取得する。S1114では、制御部70は、S1112で取得した検出結果に基づいて、主被写体が検出されたかどうか(即ち、主被写体の顔検出が成功したかどうか)を判定する。主被写体が検出されたと判定した場合には、S1116に移行し、制御部70は、主被写体の顔検出位置を含む領域に顔枠を設定して、顔枠及び通常枠のそれぞれでのAF評価値の取得、AF評価値の加算及びTV−AF制御(S1106乃至S1110)を行う。
【0038】
一方、S1114において、主被写体が検出されていないと判定した場合には、S1118に移行する。S1118では、制御部70は、検出部65による顔検出処理が開始されてから一定の時間が経過したかどうか(即ち、顔検出処理中であるかどうか)を判定する。一定の時間が経過している場合には、主被写体の顔検出が失敗したものとして、S1104に移行する(即ち、通常のTV−AF制御が行われる)。一方、一定の時間が経過していない場合には、S1120に移行する。S1120では、制御部70は、AF制御(焦点検出)の応答性を低下させるように(即ち、通常のAF制御の応答性よりも低くなるように)撮像装置1の各部を制御して、S1104に移行する。例えば、制御部70は、AF評価値から演算される焦点調整レンズ110の移動量が小さくなるように演算係数を変更したり、演算係数を所定範囲内に限定したりするなどして焦点調整レンズ110の移動速度を低下させることで、AF制御の応答性を低下させる。また、制御部70は、生成部55で生成されるAF評価値のサンプリングレートを低下させる(即ち、AF評価値の生成頻度を低下させる)、又は、AF制御の処理頻度を低下させることで、AF制御の応答性を低下させることも可能である。
【0039】
このように、図6に示すAF制御(焦点検出)では、主被写体が選択された場合に、かかる主被写体が検出されたかどうかの判定が終了するまでの期間において、AF制御(TV−AF制御)の応答性を低下させている。従って、図4に示すAF制御では、上述した従来の撮像装置のAF制御の課題を解決し、主被写体が検出されたかどうかにかかわらず、常に安定したAF制御を行うことができる。
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、主被写体が選択された場合に、かかる主被写体が検出されたかどうかの判定が終了するまでの期間において、AF制御を停止、又は、AF制御の応答性を低下させることで、安定したAF制御を行うことができることを説明した。
【0040】
本実施形態では、撮像装置1の動作状態(動作モード)に応じて、主被写体が検出されたかどうかの判定が終了するまでの期間におけるAF制御を切り替え可能にする(即ち、撮像装置1の動作状態に適したAF制御を選択する)場合について説明する。本実施形態では、主被写体の検出が失敗した際に発生する撮像者の予測困難な状態を回避するために、図4又は図6に示すAF制御(安定したAF制御)を行うか、被写体への合焦を最優先でAF制御(通常のAF制御)を行うかを切り替え可能にしている。
【0041】
図7は、第2の実施形態における撮像装置1のAF制御を説明するためのフローチャートである。なお、本実施形態では、画像信号を記録媒体に記録する場合、即ち、記録部35が画像信号の記録を行う場合には、安定したAF制御が選択され、記録部35が画像信号の記録を行わない場合には、通常のAF制御が選択されるものとする。
【0042】
まず、S1202では、制御部70は、操作部60を介して、撮像光学系10を合焦させる主被写体が選択されたかどうかを判定する。主被写体が選択されていないと判定した場合には、S1204に移行して、第1の実施形態と同様に、通常のTV−AF制御が行われる。なお、図7に示すS1204乃至S1210は、図4に示すS1002乃至S1010と同様であるため、ここでの詳しい説明は省略する。
【0043】
一方、S1202において、主被写体が選択されていると判定した場合には、S1216に移行する。S1216では、制御部70は、S1202において選択された主被写体の顔検出位置を含む領域に顔枠を設定する。
【0044】
S1212では、制御部70は、検出部65による主被写体の顔検出処理の検出結果を取得する。S1214では、制御部70は、S1212で取得した検出結果に基づいて、主被写体が検出されたかどうか(即ち、主被写体の顔検出が成功したかどうか)を判定する。
【0045】
S1214において、主被写体が検出されたと判定した場合には、S1206に移行して、上述したように、通常のTV−AF制御が行われる。一方、S1214において、主被写体が検出されていないと判定した場合には、S1220に移行する。
【0046】
S1220では、制御部70は、記録部35が画像信号の記録を行っているかどうかを判定する。記録部35が画像信号の記録を行っていないと判定した場合には、S1206に移行して、通常のTV−AF制御が行われる。一方、記録部35が画像信号の記録を行っていると判定した場合には、S1218に移行する。S1218では、制御部70は、検出部65による顔検出処理が開始されてから一定の時間が経過したかどうか(即ち、顔検出処理中であるかどうか)を判定する。一定の時間が経過していない場合には、S1212に移行し、AF制御を停止する(即ち、一定の時間が経過するまでは、S1210のTV−AF制御に移行しない)。また、一定の時間が経過している場合には、主被写体の顔検出が失敗したものとして、S1204に移行する(即ち、通常のTV−AF制御が行われる)。
【0047】
なお、図7に示すAF制御では、主被写体が検出されたかどうかの判定が終了するまでの期間は、顔枠及び通常枠のそれぞれでのAF評価値の取得(S1206)、AF評価値の加算(S1208)及びTV−AF制御(S1210)を行っていない。但し、主被写体が検出されたかどうかの判定が終了するまでの期間であっても、図8に示すように、AF制御の応答性を低下させてS1206乃至S1210の処理を行ってもよい。
【0048】
図8は、第2の実施形態における撮像装置1の別のAF制御を説明するためのフローチャートである。図8に示すAF制御は、図7に示すAF制御に対して、S1322の処理が加えられている。図8を参照するに、主被写体が検出されていない(顔検出に失敗した)と判定し、更に、画像信号の記録を行っていないと判定した場合には、S1322において、制御部70は、AF制御の応答性を低下させるように撮像装置1の各部を制御する。なお、図8に示すS1302乃至S1320は、図7に示すS1202乃至S1220と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0049】
このように、第2の実施形態におけるAF制御によれば、記録部35が画像信号の記録を行っている場合には、主被写体が検出されたかどうかにかかわらず、常に安定したAF制御を行うことができる。また、記録部35が画像信号の記録を行っていない場合には、選択された主被写体への合焦を優先させるAF制御を行うことができる。
【0050】
なお、本実施形態では、記録部35が画像信号の記録を行っているかどうかに応じて、AF制御を切り替えている。但し、撮像装置1が撮像する画像に応じて、AF制御を切り替えてもよい。例えば、連続した期間で撮像が行われる動作モードでは、主被写体が検出されたかどうかにかかわらず、常に安定したAF制御が求められるが、瞬間的な撮像が行われる動作モードでは、被写体への合焦を優先させるAF制御が求められる。従って、S1220及びS1320における「記録部35が画像信号の記録を行っているかどうか」の判定を、「動画モードであるかどうか」の判定に置き換えてもよい。即ち、被写体の動画像を撮像する場合には、図4又は図6に示すAF制御(安定したAF制御)を行い、被写体の静止画像を撮像する場合には、被写体への合焦を最優先でAF制御(通常のAF制御)を行うようにAF制御を切り替える。なお、撮像装置1の動作モードの選択(被写体の動画像を撮像するか、又は、静止画像を撮像するかの選択)は操作部60で行われ、制御部70は操作部60からの入力によって撮像装置1の動作モードを知ることができる。
【0051】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系で形成された被写体の像を光電変換して画像信号を生成する撮像手段と、前記画像信号のうち評価値を生成する領域として設定された領域に含まれる画像信号から前記撮像光学系の合焦状態を表す評価値を生成する生成手段と、前記生成手段によって生成された前記評価値が最大となるように前記撮像光学系に含まれる焦点調整レンズの位置を調整して焦点検出を行う調整手段とを備える撮像装置であって、
前記画像信号に含まれる被写体のうち、前記撮像光学系を合焦させる主被写体が選択されている場合に、前記画像信号から前記主被写体を検出する検出手段と、
前記検出手段によって前記主被写体が検出されたかどうかを判定する判定手段と、
前記主被写体が検出されたと前記判定手段によって判定された場合には、前記評価値を生成する領域として前記主被写体を中心とした領域を、前記主被写体が選択されていない場合及び前記主被写体が検出されていないと前記判定手段によって判定された場合には、前記評価値を生成する領域として予め定められた固定の領域を前記画像信号に対して設定する設定手段と、
前記主被写体が選択されている場合に、前記判定手段による判定が終了するまでの期間において、前記調整手段による前記焦点検出を停止する、又は、前記焦点検出の応答性を他の期間より低下させるように前記調整手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記生成手段による前記評価値の生成頻度を低下させること、前記調整手段による前記焦点検出の処理頻度を低下させること、又は、前記焦点調整レンズの移動速度を低下させることで、前記焦点検出の応答性を他の期間より低下させることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記被写体の動画像を撮像する場合には、前記判定手段による判定が終了するまでの期間において、前記調整手段による前記焦点検出を停止する、又は、前記焦点検出の応答性を他の期間より低下させるように前記調整手段を制御し、
前記被写体の静止画像を撮像する場合には、前記調整手段による前記焦点検出を停止する、又は、前記焦点検出の応答性を他の期間より低下させるように前記調整手段を制御することを停止することを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像手段で生成された画像信号の記録を行う記録手段を更に有し、
前記制御手段は、
前記記録手段が前記画像信号の記録を行う場合には、前記判定手段による判定が終了するまでの期間において、前記調整手段による前記焦点検出を停止する、又は、前記焦点検出の応答性を他の期間より低下させるように前記調整手段を制御し、
前記記録手段が前記画像信号が前記画像信号の記録を行わない場合には、前記調整手段による前記焦点検出を停止する、又は、前記焦点検出の応答性を他の期間より低下させるように前記調整手段を制御することを停止することを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項5】
撮像光学系で形成された被写体の像を光電変換して画像信号を生成する撮像手段と、前記画像信号のうち評価値を生成する領域として設定された領域に含まれる画像信号から前記撮像光学系の合焦状態を表す評価値を生成する生成手段と、前記生成手段によって生成された前記評価値が最大となるように前記撮像光学系に含まれる焦点調整レンズの位置を調整して焦点検出を行う調整手段とを備える撮像装置の制御方法であって、
検出手段が、前記画像信号に含まれる被写体のうち、前記撮像光学系を合焦させる主被写体が選択されている場合に、前記画像信号から前記主被写体を検出する検出ステップと、
判定手段が、前記検出手段によって前記主被写体が検出されたかどうかを判定する判定ステップと、
設定手段が、前記主被写体が検出されたと前記判定手段によって判定された場合には、前記評価値を生成する領域として前記主被写体を中心とした領域を、前記主被写体が選択されていない場合及び前記主被写体が検出されていないと前記判定手段によって判定された場合には、前記評価値を生成する領域として予め定められた固定の領域を前記画像信号に対して設定する設定ステップと、
制御手段が、前記主被写体が選択されている場合に、前記判定手段による判定が終了するまでの期間において、前記調整手段による前記焦点検出を停止する、又は、前記焦点検出の応答性を他の期間より低下させるように前記調整手段を制御する制御ステップと、
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の撮像装置が有する各手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−137886(P2011−137886A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296386(P2009−296386)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】