説明

撮像装置、方法およびプログラム

【課題】 被写体の動きを止めるために、個々の動く被写体に応じた適切なシャッタスピードその他の撮影条件を決定して被写体ぶれを防ぐ。
【解決手段】S2では、レリーズボタン46の半押しに応じて高速シャッタ・高解像度(フル画素ムービー撮影でも可)で複数の被写体スピード算出用画像の撮像を開始する。S4では、画像データ記憶部66に記憶された複数枚数の被写体スピード算出用画像とそれらの画像の撮影間隔に基づき、撮像素子16上の被写体の単位時間当たりの移動量(被写体スピードv)を算出する。特定被写体登録部30に被写体の登録がある場合は、特定被写体抽出部31がその登録された被写体を各被写体スピード算出用画像から特定し、その特定された被写体の被写体スピードvを算出する。S5では、被写体スピードvに応じた被写体ぶれを所定の許容範囲βに収めるシャッタスピードTvを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動く被写体を撮像可能な撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、焦点面のずれ量によるデフォーカス量により、被写体の移動方向を検出し、移動方向によって、連続撮影時に、自動露出ずらし機能を持ち被写界深度や被写体ぶれを最小限に抑える。
【0003】
特許文献2では、画像信号により動きベクトルを検出し、画像信号に対して動き補正を行う。光学的に補正をかけたり、出力画像に対して動き補正を行う。
【0004】
特許文献3では、画像より動きを検出し、光学的に補正し、ぶれを防ぐ。
【0005】
特許文献4では、被写体の動き量によって静止画撮影条件を変更する制御手段を持つ。
【特許文献1】特開平5−19326号公報
【特許文献2】特開平11−155006号公報
【特許文献3】特開平11−164188号公報
【特許文献4】特開平5−19326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術は、動きのある被写体を撮影する場合、予めスポーツモードなどに設定し、シャッタスピードが早くなるようにするシステムであった。このため、スポーツモードではシャッタスピードを早い設定にし、被写体ぶれを解決している。しかし、シャッタの高速化にシフトしているだけで、被写体の速さなどは考慮されないため、動きの遅い被写体に対しても速いシャッタスピードとなる場合がある。あるいは、予め決められたAEプログラム線図で決めたシャッタスピードでは、極端に速い被写体に追いつかない場合がある。
【0007】
また従来技術では、動体をモニタ表示中にシャッタスピードを設定するため、モニタ表示が暗くなり使い勝手が悪い。
【0008】
本発明は、被写体の動きを止めるために、個々の動く被写体に応じた適切なシャッタスピードその他の撮影条件を決定して被写体ぶれを防ぐ。また、本発明は、動く被写体のモニタ表示の適切な明るさを維持しながら露出演算処理を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る撮像装置は、撮像光学系を介して結像した被写体像を撮像素子により光電変換して複数の画像を出力する撮像部と、撮像部の撮影した複数の画像に基づいて被写体の移動速度を算出する被写体速度算出部と、被写体速度算出部の算出した被写体の移動速度に基づいて撮像部の撮影条件を決定する撮影条件決定部と、撮影条件決定部の決定した撮影条件に基づいて記録用の画像の撮影を開始するよう撮像部を制御する制御部と、を備える。
【0010】
この発明によると、被写体の移動速度に応じた適切なシャッタスピードその他の撮像条件を得ることができる。
【0011】
制御部は、レリーズボタンの全押しに応じ、撮影条件決定部の決定した撮影条件に基づいて記録用の画像の撮影を開始するよう撮像部を制御する。
【0012】
こうすれば、表示用モニタのスルー画の表示輝度が突然変化することもない。
【0013】
移動速度の算出対象となる被写体を登録する登録部を備え、被写体速度算出部は、撮像部の撮影した複数の画像に基づいて登録部に登録された被写体の移動速度を算出する。
【0014】
被写体を特定した上で速度を算出することで、撮影対象でない被写体の速度に基づいて誤った撮影条件が決定されるのを防げる。
【0015】
被写体速度算出部の算出した被写体の移動速度を通知する通知部を備えてもよい。
【0016】
ここで、通知はメッセージ表示や音声再生などで行うことができる。
【0017】
制御部は、被写体速度算出部の算出した被写体の移動速度を記録用の画像に対応づけて所定の記憶媒体に記憶する。
【0018】
撮影条件決定部は、被写体の移動速度に応じて被写体ぶれを所定の許容範囲内に収めるシャッタスピードを決定する。
【0019】
例えば、被写体の移動速度が速ければ速いほど、シャッタスピードを高速側にシフトさせることで、素早く動く被写体をぶれなく撮影することができる。また、被写体の移動速度が遅くても、シャッタスピードは所定の手ぶれ限界を下回らないようにしてもよい。
【0020】
本発明に係る撮像方法は、撮像光学系を介して結像した被写体像を撮像素子により光電変換して複数の画像を出力する撮像部を備えた撮像装置が、撮像部の撮影した複数の画像に基づいて被写体の移動速度を算出するステップと、算出した被写体の移動速度に基づいて撮像部の撮影条件を決定するステップと、決定した撮影条件に基づいて記録用の画像の撮影を開始するよう撮像部を制御するステップと、を実行する。
【0021】
この撮像方法を撮像装置に実行させるためのプログラムも本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によると、被写体の移動速度に応じた適切なシャッタスピードその他の撮像条件を得ることができる。特に、被写体の移動速度が速ければ速いほど、シャッタスピードを高速側にシフトさせることで、素早く動く被写体をぶれなく撮影することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1はデジタルカメラ10の構成を示したブロック図である。デジタルカメラ10は、フォーカスレンズ11およびズームレンズ12を含む撮影レンズ、撮影レンズのから固体撮像素子への光路を制限する絞り13とシャッタ14を有する撮像光学系を備える。撮影レンズの結像位置には固体撮像素子(CCDやCMOSなど)16が配置されている。固体撮像素子16は、例えば60fps〜300fpsの間で読み出しコマ数を低速から高速域に可変とする。
【0024】
ユーザがレリーズボタン46を半押しすることにより、AF処理が開始し、フォーカスレンズ11がフォーカスレンズ駆動部71によって駆動され、焦点合わせが行われる。また、ズーム/上下レバー51をテレ側あるいはワイド側に押下することにより、ズームレンズ12がズームレンズ駆動部72によって駆動され、ズームレンズ12をレンズ光軸に沿ってNEAR側(繰り出し側)、或いはINF側(繰り込み側)に移動させ、ズーム倍率を変化させるズーミングが行われる。
【0025】
CPU56は、AE(Auto Exposure)動作時に絞り駆動部73を制御して絞り13の開口値(絞り値)を変化させて光束を制限し、露出調整を行う。
【0026】
また、カメラ10の背面には、モニタ(画像表示部)36が設けられ、表示制御部35を介してこのモニタ36に撮影時のスルー画像、画像再生時の静止画や動画が表示される。
【0027】
このデジタルカメラ10は、CPU56によってその全体動作が統括制御されている。
【0028】
CPU56は、所定のプログラムに従ってカメラシステムを制御するシステム制御回路部として機能するとともに、自動露出(AE)演算、自動焦点調節(AF)演算、ホワイトバランス(WB)調整演算など、各種演算を実施する演算手段として機能する。
【0029】
バス58を介してCPU56と接続されたROM60には、CPU56が実行するプログラム及び制御に必要な各種データ、CCD画素欠陥情報、カメラ動作に関する各種定数/情報等が格納されている。
【0030】
また、メモリ(SDRAM)64は、プログラムの展開領域及びCPU56の演算作業用領域として利用されるとともに、画像データや音声データの一時記憶領域として利用される。画像データ記憶部66は画像データ専用の一時記憶メモリである。
【0031】
レリーズボタン46は、撮影開始の指示を入力する操作ボタンであり、半押し時にオンになるS1スイッチと、全押し時にオンになるS2スイッチとを有する二段ストローク式のスイッチで構成されている。
【0032】
モニタ36は、撮影時のスルー画像を表示する電子ビューファインダとして駆動されるとともに、再生時の静止画、動画を表示する画像再生用モニタとして駆動される。また、モニタ36は、ユーザインターフェース用表示画面としても利用され、必要に応じてメニュー情報や選択項目、設定内容などの情報が表示される。また、モニタ36には、画像データ記憶部66に記録された画像データが縮小されてサムネイル表示される。
【0033】
カメラ10は、その側部にメディアソケットを有し、メディアソケットには記録メディアが装着される。記録メディアの形態は特に限定されず、xD−ピクチャーカード、スマートメディア(商標)に代表される半導体メモリカード、可搬型小型ハードディスク、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクなど、種々の媒体を用いることができる。
【0034】
メディア記憶部91は、メディアソケットに装着される記録メディアに適した入出力信号の受渡しを行うために所要の信号変換を行う。
【0035】
フォーカスレンズ11、ズームレンズ12、絞り13、シャッタ14は、それぞれ、CPU56によって制御されるフォーカスレンズ駆動部71、ズームレンズ駆動部72、絞り駆動部73及びシャッタ駆動部74によって電動駆動され、ズーム制御、フォーカス制御、アイリス制御及びシャッタ制御が行われる。
【0036】
撮影レンズを通過した光は、撮像素子16の受光面に結像される。撮像素子16の受光面には多数のフォトダイオード(受光素子)が二次元的に配列されており、各フォトダイオードに対応して赤(R)、緑(G)、青(B)の原色カラーフィルタが所定の配列構造で配置されている。また、撮像素子16は、各フォトダイオードの電荷蓄積時間(シャッタースピード)を制御する電子シャッター機能を有している。CPU56は、タイミングジェネレータ82を介して撮像素子16での電荷蓄積時間を制御する。なお、撮像素子16に代えてMOS型など他の方式の撮像素子を用いてもよい。
【0037】
撮像素子16の受光面に結像された被写体像は、各フォトダイオードによって入射光量に応じた量の信号電荷に変換される。各フォトダイオードに蓄積された信号電荷は、CPU56の指令に従いタイミングジェネレータ82から与えられる駆動パルスに基づいて信号電荷に応じた電圧信号(画像信号)として順次読み出される。
【0038】
撮像素子16から出力された信号は信号処理部(CDS/AMP)84に送られ、ここで画素毎のR、G、B信号がサンプリングホールド(相関二重サンプリング処理)され、増幅された後、A/D変換器でデジタル信号に変換され、点順次のR、G、B信号は、画像入力コントローラ88を介してメモリ64に記憶される。
【0039】
画像処理部90は、メモリ64に記憶されたR、G、B信号をCPU56の指令に従って処理する。すなわち、画像処理部90は、同時化回路(単板CCDのカラーフィルタ配列に伴う色信号の空間的なズレを補間して色信号を同時式に変換する処理回路)、ホワイトバランス補正回路、ガンマ補正回路、輪郭補正回路、輝度・色差信号生成回路等を含む画像処理手段として機能し、CPU56からのコマンドに従ってメモリ64を活用しながら所定の信号処理を行う。
【0040】
画像処理部90に入力されたRGBの画像データは、画像処理部90において輝度信号及び色差信号に変換されるとともに、ガンマ補正等の所定の処理が施される。画像処理部90で処理された画像データは画像データ記憶部66に記録される。
【0041】
撮影再生画像をモニタ36に出力する場合、画像データ記憶部66から画像データが読み出され、バス58を介して表示制御部35に送信される。表示制御部35は、入力された画像データを表示用の所定方式の信号(例えば、NTSC方式のカラー複合映像信号)に変換してモニタ36に出力する。また、撮影時のスルー画像は、画像処理部90からバス58及び表示制御部35を介してモニタ36に表示される。
【0042】
レリーズボタン46が半押しされると、デジタルカメラ10はAE及びAF処理を開始する。すなわち、撮像素子16から出力された画像信号はA/D変換後に画像入力コントローラ88を介してAF検出回路94並びにAE/AWB検出回路96に入力される。
【0043】
AE/AWB検出回路96は、1画面を複数のエリア(例えば、16×16)に分割し、分割エリアごとにRGB信号を積算する回路を含み、その積算値をCPU56に提供する。CPU56は、AE/AWB検出回路96から得た積算値に基づいて被写体の明るさ(被写体輝度)を検出し、撮影に適した露出値(撮影EV値)を算出する。求めた露出値と所定のプログラム線図に従い、絞り値とシャッタースピードが決定され、これに従いCPU56は撮像素子16の電子シャッター及びアイリスを制御して適正な露光量を得る。
【0044】
また、AE/AWB検出回路96は、自動ホワイトバランス調整時には、分割エリアごとにRGB信号の色別の平均積算値を算出し、その算出結果をCPU56に提供する。CPU56は、Rの積算値、Bの積算値、Gの積算値を得て、各分割エリアごとにR/G及びB/Gの比を求め、これらR/G、B/Gの値のR/G、B/Gの色空間における分布等に基づいて光源種判別を行い、判別された光源種に適したホワイトバランス調整値に従って、例えば、各比の値がおよそ1になるように、ホワイトバランス調整回路のR、G、B信号に対するゲイン値(ホワイトバランス補正値)を制御し、各色チャンネルの信号に補正をかける。前述した各比の値を1以外の値になるようにホワイトバランス調整回路のゲイン値を調整すると、ある色味が残った画像を生成することができる。
【0045】
デジタルカメラ10におけるAF制御は、例えば映像信号のG信号の高周波成分が極大になるようにフォーカスレンズ11を移動させるコントラストAFが適用される。すなわち、AF検出回路94は、G信号の高周波成分のみを通過させるハイパスフィルタ、絶対値化処理部、画面内(例えば、画面中央部)に予め設定されているフォーカス対象エリア内の信号を切り出すAFエリア抽出部、及びAFエリア内の絶対値データを積算する積算部から構成される。
【0046】
AF検出回路94で求めた積算値のデータはCPU56に通知される。CPU56は、フォーカスレンズ駆動部71を制御してフォーカスレンズ11を移動させながら、複数のAF検出ポイントで焦点評価値(AF評価値)を演算し、評価値が極大となるレンズ位置を合焦位置として決定する。そして、求めた合焦位置にフォーカスレンズ11を移動させるようにフォーカスレンズ駆動部71を制御する。なお、AF評価値の演算はG信号を利用する態様に限らず、輝度信号(Y信号)を利用してもよい。
【0047】
レリーズボタン46が半押しされてAE/AF処理が行われ、レリーズボタン46が全押しされて記録用の撮影動作がスタートする。全押しに応動して取得された画像データは画像処理部90において輝度/色差信号(Y/C信号)に変換され、ガンマ補正等の所定の処理が施された後、メモリ64に格納される。
【0048】
メモリ64に格納されたY/C信号は、圧縮伸張回路によって所定のフォーマットに従って圧縮された後、メディア記憶部91を介して記録メディアに記録される。例えば、静止画についてはJPEG形式で記録される。
【0049】
カメラ10には、レリーズボタン46、電源スイッチ55、動作モードスイッチ48、メニュー/OKボタン50、ズーム/上下レバー51、左右ボタン52、バックボタン53、表示切替ボタン54が配置されている。
【0050】
CPU56の制御によってフラッシュ制御部216への給電を開始することで、フラッシュ発光部205の発光用コンデンサが充電され、所定のタイミングでCPU56からフラッシュ制御部216に発光信号が送られてキセノン管などで構成されたフラッシュ発光部205が発光する。
【0051】
バス58には特定被写体登録部30と特定被写体抽出部31と特定被写体認証部32とが接続されている。これらの機能は後述する。
【0052】
ROM60には、通常プログラムAEのプログラムラインが記憶されている。図2に示すように、通常プログラムAEのプログラムラインは、被写体輝度が上昇するにつれて、絞り13の開口径が約1/3絞りずつ段階的に小さくなる(絞り値が大きくなる)とともに、各絞り値毎にシャッタ速度が1/2Tv〜1Tv程度ずつ変位し、全体としては、被写体輝度が上昇するにつれて絞り値とシャッタ速度の両方が順次に上昇する。なお、F2.8とF4.0との間は1絞り(1Av)分変位する。また、被写体輝度が9.1Evより下がると、絞りF2.8,シャッタ速度1/60(秒)のままとなって、ストロボ撮影に切り換えられる。
【0053】
図3はCPU56が実行を制御する撮影処理のフローチャートである。
【0054】
S1では、被写体ぶれ検知モードまたは通常撮影モードの選択を、動作モードスイッチ48から受け付ける。被写体ぶれ検知モードが選択された場合はS2、通常撮影モードが選択された場合はS12に進む。なお、通常撮影モードでは、レリーズボタン46の半押しに応じてAF/AEが開始するが、このAEではROM60の通常プログラムAEのプログラムラインに基づいてシャッタスピードと絞り値が決定される。
【0055】
S2では、レリーズボタン46の半押しに応じて高速シャッタ・高解像度(フル画素ムービー撮影でも可)で複数の被写体スピード算出用画像の撮像を開始する。ただし、被写体ぶれ検知モードが選択されたことに応じて即座に当該画像の撮像を開始してもよい。スルー画出力自体を高フレームレート(例えば120fps)にすればそのスルー画自体が高速シャッタ・高解像度の複数画像の撮像に代替できる。あるいは、固体撮像素子16の撮像の際に画素間引きを行って間引画像データを取得し、周辺画素の画素値を用いるなどのデータ補間を当該間引画像データに施すことで、フル画素読み出しに相当する1枚の画像を作成し、これを所望のタイミングで繰り返せば、高フレームレート・高解像度の複数画素の取得を簡易に達成できる。ただし消費電力節約や発熱抑制のためには、所定の複数枚数(2枚以上であればその数は任意)の被写体スピード算出用画像の撮像後は、通常のフレームレート(例えば60fps)のスルー画出力に切り替える方がよい。同様の理由で、図示しない電池残量検出手段や発熱検知手段(サーミスタ)が、電池の所定量以上の消耗やカメラ10の自己発熱を検知した場合、被写体ぶれ検知モードの選択をロックし、通常撮影モードのみ選択可能にしてもよい。また、CPU56は、AE/AWB検出回路96から得た積算値に基づいて被写体輝度Evを検出する。
【0056】
S3では、S2で撮像した複数枚数の被写体スピード算出用画像とそれらの画像の撮影間隔を画像データ記憶部66に保存する。
【0057】
S4では、画像データ記憶部66に記憶された複数枚数の被写体スピード算出用画像とそれらの画像の撮影間隔に基づき、撮像素子16上の被写体の単位時間当たりの移動量(被写体スピードv)を算出する。高解像度を用いれば正確な被写体スピードの算出が可能である。図4では、S2で撮影間隔tの間に取得された2枚の被写体スピード算出用画像IAおよびIBから、被写体SBの被写体スピードvが求められる。もし、特定被写体登録部30に被写体の登録がある場合は、特定被写体抽出部31が所定の確からしさでその登録された被写体と一致する被写体を特徴情報(目、鼻、口などの顔パーツの位置関係など)のパターンマッチングなどで各被写体スピード算出用画像から特定し、その特定された被写体の被写体スピードvを算出する(S4−1)。
【0058】
図5では、撮影間隔tの間に取得された2枚の被写体スピード算出用画像IAおよびIBから、登録された被写体SB2の被写体スピードvが求められる。この図では、被写体SB1は登録されておらず、被写体スピードvは求められない。特定被写体登録部30への被写体の登録方法は任意であり、メディア記憶部91に接続された記録メディアあるいは画像データ記憶部66から読み出した所望の画像から所望の被写体を左右ボタン52およびメニュー/OKボタン50で選択すると、特定被写体認証部32がその選択された被写体を特定被写体登録部30へ登録する。
【0059】
算出された被写体スピードvをモニタ36に出力してもよい(図6参照)。この際、被写体スピードvをユーザに分かりやすい単位、例えばkm/hに換算して出力するとよい。被写体スピードvをモニタ36に出力するか否かを選択するメニューをモニタ36に表示し、表示切替ボタン54からのメニュー選択に従って被写体スピードvの表示をオンオフしてもよい。
【0060】
S5では、S4またはS4−1で算出された被写体スピードvに応じた被写体ぶれを所定の許容範囲βに収めるシャッタスピードTvを算出する。
【0061】
ここで、被写体スピードv[pixel/sec]、許容範囲β[pixel]、シャッタスピードTv[sec]との関係は、次式により与えられる。
【0062】
Tv=v/β
βは、仮に撮像素子16をCCDとすると、CCD上の被写体ぶれの許容値[pixel]である。被写体スピードがvである場合には、Tv=v/βとすると、被写体が許容範囲βの間で略静止した静止画像を撮影することができる。算出されたシャッタスピードTvはメモリ64に記憶される。
【0063】
S6では、算出したシャッタスピードTvが、所定のシャッタスピード設定可能範囲R内(例えば6.0〜9.3Tv(1/60〜1/500(秒)))に収まっているか、それを上回っているか、あるいは下回っているかを判断する。Tvが範囲R内に収まっている場合はS11、Tvが範囲Rを下回っている(Rの下限Rminよりも遅い)場合はS7、Tvが範囲Rを上回っている(Rの上限Rmaxよりも速い)場合(S8)はS9に進む。
【0064】
S7では、メモリ64のシャッタスピードをTv=Rminに更新する。例えばRmin=6.0Tvとすれば、シャッタ速度が1/60(秒)以上であるから、手ブレを起こしにくい。Rminは手ブレ限界として定めたシャッタ速度であるが、この手ブレ限界シャッタ速度Rminは、ズームレンズ12の焦点距離によって変化させてもよい。
【0065】
S9では、メモリ64のシャッタスピードをTv=Rmaxに更新する。
【0066】
S10では、被写体スピードvが速いためS9で設定したシャッタスピードによる撮影では被写体ぶれが生じる可能性がある旨のメッセージをモニタ36に出力する。
【0067】
S11では、シャッタスピードTvおよび被写体輝度Evに対応する絞り/撮影感度を決定する。被写体輝度をEv、シャッタスピードをTv、絞り値をAvとすると、Ev=Av+Tvであるから、Av=Ev−Evである。絞り値が全開に達しても(F2.8がほぼ開放絞り)この等式が満たされない場合は、図示しないオートゲインコントロールアンプ(AGCという)にて撮像信号の増幅のゲインを上げて、撮像素子16から出力される撮像信号を増幅し、撮影感度を上げる。こうして被写体輝度を確保する。このゲインによる露出制御は、比較的暗い撮影環境、例えば、5.1〜9.1Evの範囲で行われる。決定した絞り/撮影感度はメモリ64に記憶される。
【0068】
S12では、レリーズボタン46の全押しに応じて、メモリ64に記憶されたシャッタスピード、絞り、撮影感度で撮影を開始する。撮影された画像は画像データ記憶部66あるいはメディア記憶部91に保存される。レリーズボタン46の全押しに応じてシャッタスピード、絞り、撮影感度が設定されるため、撮影開始前にモニタ36のスルー画像の輝度が突然変化するようなことはない。
【0069】
撮影完了後は、被写体スピードv、メモリ64に記憶されたシャッタスピードTv、絞りAv、撮影感度その他の撮影条件を、画像の付帯情報(Exifファイルのタグ情報など)として画像に対応づけて保存してもよい。なお、通常撮影モードが設定されていても、被写体スピードなどを付帯情報として記録してもよい。付帯情報はプリンタにて画像とともに印刷させたり、パソコンの画像閲覧ソフトにて画像とともに表示させることもでき、写真を後で確認するときの楽しさが増す。例えば、子供の運動会の徒競走を毎年撮っておくと、走る速さが年々向上し、成長が一見して把握でき、動く被写体を継続的に撮る楽しみが増す。
【0070】
被写体の速度が速ければ速いほど、シャッタ速度Tvは高速側にシフトするが、上限Rmaxを超えることはない。また、被写体の動きが遅ければ遅いほど、シャッタ速度Tvは低速側にシフトするため、その分絞りを絞ることが可能となり、被写界深度が深くなり、ピント合わせ精度が向上し、よい写真が得られる。また、被写体のスピードが遅くても、シャッタ速度Tvは手ブレ限界Rminを下回ることはない。
【0071】
晴天時の公園など、被写体輝度が十分に明るい撮影条件下では、高速なシャッタ速度で撮影が行われるから、手ブレも被写体ブレも起こすことなく、動き回る被写体を確実に写し止めることができる。また、被写体輝度が十分に明るくない場合でも、ゲイン露出制御により、被写体輝度が確保される。この場合も手ブレ限界Rminは下回らず、動き回る被写体を追いかけて撮影する場合でも手ブレが起きにくい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】カメラのブロック図
【図2】通常プログラムAEのプログラムラインの一例を示す図
【図3】撮影処理のフローチャート
【図4】被写体スピードの算出対象となる被写体の一例を示す図
【図5】被写体スピードの算出対象となる登録被写体の一例を示す図
【図6】被写体スピードの出力例を示す図
【符号の説明】
【0073】
11:フォーカスレンズ、12:ズームレンズ、13:絞り、14:シャッタ、16:撮像素子、30:特定被写体登録部、31:特定被写体検出部、36:モニタ、56:CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系を介して結像した被写体像を撮像素子により光電変換して複数の画像を出力する撮像部と、
前記撮像部の撮影した複数の画像に基づいて被写体の移動速度を算出する被写体速度算出部と、
前記被写体速度算出部の算出した被写体の移動速度に基づいて前記撮像部の撮影条件を決定する撮影条件決定部と、
前記撮影条件決定部の決定した撮影条件に基づいて記録用の画像の撮影を開始するよう前記撮像部を制御する制御部と、
を備える撮像装置。
【請求項2】
前記制御部は、レリーズボタンの全押しに応じ、前記撮影条件決定部の決定した撮影条件に基づいて記録用の画像の撮影を開始するよう前記撮像部を制御する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
移動速度の算出対象となる被写体を登録する登録部を備え、
前記被写体速度算出部は、前記撮像部の撮影した複数の画像に基づいて前記登録部に登録された被写体の移動速度を算出する請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記被写体速度算出部の算出した被写体の移動速度を通知する通知部を備える請求項1〜3のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記被写体速度算出部の算出した被写体の移動速度を前記記録用の画像に対応づけて所定の記憶媒体に記憶する請求項1〜4のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項6】
前記撮影条件決定部は、被写体の移動速度に応じて被写体ぶれを所定の許容範囲内に収めるシャッタスピードを決定する請求項1〜5のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項7】
撮像光学系を介して結像した被写体像を撮像素子により光電変換して複数の画像を出力する撮像部を備えた撮像装置が、
前記撮像部の撮影した複数の画像に基づいて被写体の移動速度を算出するステップと、
前記算出した被写体の移動速度に基づいて前記撮像部の撮影条件を決定するステップと、
前記決定した撮影条件に基づいて記録用の画像の撮影を開始するよう前記撮像部を制御するステップと、
を実行する撮像方法。
【請求項8】
請求項7に記載の撮像方法を撮像装置に実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−206522(P2010−206522A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49748(P2009−49748)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】