説明

撮像装置および光学機器

【課題】フィルタ表面に付着したゴミなどを除去する除塵能力に優れる撮像装置と、その撮像装置を有する光学機器とを提供する。
【解決手段】像を撮像する撮像素子と12、前記撮像素子12と対向して備えられる透明部材18と、前記透明部材18の前記撮像素子12が備えられた側とは反対側に備えられ、当該透明部材18を振動させる振動部材20とを有し、前記透明部材18と前記振動部材20とをエポキシ系紫外線硬化型接着剤で固定することを特徴とする撮像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴミの除去効果に優れた撮像装置および光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レンズ交換式デジタルカメラなどでは、撮像素子のフィルタ表面にゴミが付着し、撮影した映像にゴミが写りこむなどの問題がある。このような問題を解消するために、防塵部材を、撮像素子と光学系との間に配置し、撮像素子およびフィルタなどの防塵を図ると共に、防塵部材に付着したゴミなどを振動により除去するシステムが開発されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来のシステムでは、防塵部材を振動させる圧電素子が、防塵部材における撮像素子側の面に取り付けられている。したがって、圧電素子自体が発塵することによって発生した塵埃が、防塵部材と撮像素子との間に配置された光学フィルタ等に付着し、これを除去することが困難であるという問題が発生していた。
【特許文献1】特開2005−20078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、フィルタ表面に付着したゴミなどを除去する除塵能力に優れる撮像装置と、その撮像装置を有する光学機器とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る撮像装置は、
像を撮像する撮像素子と(12)、
前記撮像素子(12)と対向して備えられる透明部材(18)と、
前記透明部材(18)に備えられ、当該透明部材(18)を振動させる振動部材(20)とを有し、
前記透明部材(18)と前記振動部材(20)とをエポキシ系紫外線硬化型接着剤で固定することを特徴とする。
【0006】
また、例えば、前記振動部材(20)は、前記透明部材(18)の前記撮像素子(12)が備えられた側とは反対側に備えられていてもよい。
【0007】
また、例えば、前記透明部材(18)の前記撮像素子(12)が備えられた側とは反対側には、溶剤による洗浄が行われる清掃領域(32)が設けられていてもよい。
【0008】
また、例えば、前記エポキシ系紫外線硬化型接着剤は、当該エポキシ系紫外線硬化型接着剤を着色する添加剤を含んでいてもよい。
【0009】
また、例えば、前記透明部材(18)の少なくとも一部は、光学ローパスフィルタであってもよい。
【0010】
また、例えば、前記透明部材(18)は、前記撮像素子(12)を封止する封止面(18b)と当該封止面(18b)と対向する外部面(18a)とを有する封止部材であり、
前記外部面(18a)には、前記エポキシ系紫外線硬化型接着剤が硬化した硬化物層(21)が備えられており、当該硬化物層(21)は前記外部面(18a)に前記振動部材(20)を固定していてもよい。
【0011】
また、例えば、本発明に係る撮像装置は、
像を撮像する撮像素子(12)と、
前記撮像素子(12)と対向して備えられる透明部材(18)と、
前記透明部材(18)に備えられ、当該透明部材(18)を振動させる振動部材(20)とを有し、
前記透明部材(18)と前記振動部材(20)とをカチオン重合型紫外線硬化型接着剤で固定することを特徴とするものであってもよい。
【0012】
また、例えば、前記振動部材(20)は、前記透明部材(18)の前記撮像素子(12)が備えられた側とは反対側に備えられていてもよい。
【0013】
また、例えば、前記透明部材(18)の前記撮像素子(12)が備えられた側とは反対側には、溶剤による洗浄が行われる清掃領域(32)が設けられていてもよい。
【0014】
また、例えば、前記硬化物層(21)は、当該硬化物層(21)を着色する添加剤を含んでいてもよい。
【0015】
本発明に係る光学機器は、上記いずれかに記載の撮像装置を有する。
【0016】
なお、上述の説明では、本発明をわかりやすく説明するために、実施形態を示す図面の符号に対応つけて説明したが、本発明は、これに限定されるものでない。後述の実施形態の構成を適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させてもよい。更に、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るカメラの全体ブロック図、
図2は図1に示す撮像装置の平面図、
図3は図2に示すIII−III線に沿う概略断面図、
図4は図2に示すIV−IV線に沿う概略断面図、
図5は図3に示す撮像装置断面の要部拡大図、
図6(A)〜図6(E)は振動モードを示す概略図である。
【0018】
まず、図1に基づき、本実施形態のカメラの全体構成について説明する。撮像素子ユニット4は、カメラボディ40の内部に、光学レンズ群48の光軸αに対して撮像素子ユニット4の撮像素子12が略垂直に交差するように配置される。撮像素子12の光軸α方向の前方には、当該撮像素子12と対向して防塵フィルタ18が備えられている。防塵フィルタ18については後述する。なお、本明細書中では、撮像素子12からレンズ鏡筒42の光学レンズ群48に向かう方向を、光軸αの前方側として説明を行う。
【0019】
図1に示すように、カメラボディ40には、レンズ鏡筒42が着脱自在に装着される。なお、コンパクトカメラなどでは、レンズ鏡筒42とカメラボディ40とが一体であるカメラもあり、カメラの種類は特に限定されない。また、スチルカメラに限らず、ビデオカメラ、顕微鏡、携帯電話などの光学機器にも適用できる。以下の説明では、説明の容易化のために、レンズ鏡筒42とカメラボディ40とが着脱自在となる一眼レフカメラについて説明する。
【0020】
カメラボディ40の内部において、撮像素子ユニット4の光軸α方向の前方には、シャッタ部材44が配置してある。シャッタ部材44の光軸α方向の前方には、ミラー46が配置してあり、その光軸α方向の前方には、レンズ鏡筒42に内蔵してある絞り部47および光学レンズ群48が配置してある。
【0021】
カメラボディ40には、ボディCPU50が内蔵してあり、レンズ接点54を介してレンズCPU58に接続してある。レンズ接点54は、カメラボディ40に対してレンズ鏡筒42を連結することで、ボディCPU50と、レンズCPU58とを電気的に接続するようになっている。ボディCPU50には、電源52が接続してある。電源52は、カメラボディ40に内蔵してある。
【0022】
ボディCPU50には、レリーズスイッチ51、ストロボ53、表示部55、ジャイロセンサ70、EEPROM(メモリ)60、防振スイッチ62、防塵フィルタ駆動回路56、画像処理コントローラ59、AFセンサ72、防振追随制御IC74などが接続してある。画像コントローラ59には、インターフェース回路57を介して、撮像素子ユニット4の撮像素子12が接続してあり、撮像素子12にて撮像された画像の画像処理を制御可能になっている。撮像素子12は、たとえばCCDやCMOS等の固体撮像素子で構成される。
【0023】
ボディCPU50は、レンズ鏡筒42との通信機能と、カメラボディ40の制御機能を有している。また、ボディCPU50はEEPROM60から入力された情報と、ジャイロセンサ70からの出力を受けて算出したブレの角度、焦点距離情報、距離情報から、防振駆動部目標位置を算出し、その防振駆動部目標位置を防振追従制御IC74へ出力する。また、ボディCPU50は、ジャイロセンサ70のセンサ出力を図示しないアンプを介して取得し、ジャイロセンサ70の角速度を積分することによって、振れ角度を求める。
【0024】
また、ボディCPU50は、レンズ鏡筒42との装着が完全であるか否かの通信を行い、レンズCPU58から入力された焦点距離、距離情報とジャイロセンサから目標位置を演算する。レリーズスイッチ51が半押し時であれば、AE、AFなどの状況に応じて、防振駆動等の撮影準備動作の指示を、レンズCPU58と、防振追従制御IC74とに出力する。全押し時にはミラー駆動、シャッタ駆動、絞り駆動等の指示を出力する。
【0025】
表示部55は、主として液晶表示装置などで構成され、出力結果やメニューなどを表示する。レリーズスイッチ51は、シャッタ駆動のタイミングを操作するスイッチであり、ボディCPU50にスイッチの状態を出力し、半押し時にはAF、AE、状況により防振駆動を行い、全押し時には、ミラーアップ、シャッタ駆動等を行う。
【0026】
ミラー46は、構図決定の際にファインダーに像を映し出すためのもので、露光中は光路から退避する。ボディCPU50からレリーズスイッチ51の情報が入力され、全押し時にミラーアップ、露光終了後にミラーダウンを行う。不図示のミラー駆動部(例えばDCモータ)により駆動される。ミラー46には、サブミラー46aが連結してある。
【0027】
サブミラー46aは、AFセンサに光を送るためのミラーであり、ミラーを通過した光束を反射してAFセンサに導く。このサブミラー46aは、露光中は光路から退避する。
【0028】
シャッタ部材44は、露光時間を制御する機構である。ボディCPU50からレリーズスイッチ51の情報が入力され、全押し時にシャッタ駆動を行う。不図示のシャッタ駆動部(例えばDCモータ)により駆動される。
【0029】
AFセンサ72は、オートフォーカス(AF)を行うためのセンサである。このAFセンサ72としては、通常CCDが用いられる。防振スイッチ62は、防振ON、OFFの状態をボディCPU50に出力する。ジャイロセンサ70は、ボディに生じるブレの角速度を検出し、ボディCPU50に出力する。EEPROM60は、ジャイロセンサのゲイン値、角度調整値などの情報を有し、ボディCPU50に出力する。
【0030】
防振追従制御IC74は、防振制御を行うためのICである。ボディCPU50から入力された防振駆動部目標位置と、位置検出部から入力された防振駆動部位置情報から、防振駆動部移動量を算出し、防振駆動ドライバ76へ出力する。ボディCPU50では、ジャイロセンサ70の出力を受けて算出したブレの角度、焦点距離エンコーダ66で検出された焦点距離情報、距離エンコーダ64で検出された距離情報などから、防振駆動部目標位置を算出し、その防振駆動部目標位置を防振追従制御IC74へ出力する。
【0031】
防振駆動ドライバ76は、防振駆動部を制御するためのドライバであり、防振追従制御IC74から駆動量の入力を受けて、不図示の防振駆動部の駆動方向、駆動量を制御し、像ブレ補正制御を行う。
【0032】
図1に示すレンズ鏡筒42には、焦点距離エンコーダ66、距離エンコーダ64、絞り部47、絞り部47を制御する駆動モータ68、レンズCPU58、ボディ部とのレンズ接点54、及び、複数のレンズ群48が具備してある。レンズ接点54には、カメラボディ40からレンズ駆動系電源を供給するための接点と、レンズCPU58を駆動するためのCPU電源の接点とデジタル通信用の接点がある。
【0033】
駆動系電源およびCPU電源はカメラボディ40の電源52から供給され、レンズCPU58や駆動系の電源を供給している。デジタル通信用接点ではレンズCPU58から出力された焦点距離、被写体距離、フォーカス位置情報等のデジタル情報をボディCPU50に入力するための通信と、ボディCPU50から出力されたフォーカス位置や絞り量等のデジタル情報をレンズCPU58に入力するための通信を行う。ボディCPU50からのフォーカス位置情報や絞り量情報を受けて、レンズCPU58がAF、絞り制御を行う。
【0034】
焦点距離エンコーダ66は、ズームレンズ群の位置情報より焦点距離を換算する。すなわち、焦点距離エンコーダ66は、焦点距離をエンコードし、レンズCPUに出力する。
【0035】
距離エンコーダ64は、フォーカシングレンズ群の位置情報より被写体距離を換算する。すなわち、距離エンコーダ64は、被写体距離をエンコードし、レンズCPUに出力する。
【0036】
レンズCPU58は、カメラボディ40との通信機能、レンズ群48の制御機能を有している。レンズCPUには、焦点距離、被写体距離等が入力され、レンズ接点を介してボディCPU50に出力する。ボディCPU50からレンズ接点54を介して、レリーズ情報、AF情報が入力される。
【0037】
防塵フィルタ駆動回路56は、後述する図2および図3に示す圧電素子20に接続してあり、所定条件を満足する場合に、圧電素子20を駆動し、図6(B)〜図6(E)に示すように、防塵フィルタ18を振動させ、防塵フィルタ18の表面に付着している塵埃などを飛ばして除去する動作を行う。なお図6(A)は、圧電素子20を駆動していない状態を示しており、図6(A)〜図6(E)では圧電素子20と防塵フィルタ18との間の硬化物層は図示を省略している。
【0038】
たとえば圧電素子20には、周期的な矩形波もしくはサイン波等の電圧を印加する。このように防塵フィルタ駆動回路56を制御して圧電素子20に周期的な電圧を印加することにより、防塵フィルタ18が振動し、塵埃が防塵フィルタ18の表面から受けた慣性力が塵の付着力を上回ると、塵埃は防塵フィルタ18の表面から離れる。
【0039】
圧電素子20の周期的な駆動は、低電圧でなるべく大きな振幅を得るために、防塵フィルタ18の表面を共振させる振動数で圧電素子20を駆動させることが好ましい。共振する周波数は、形状と材質と支持の方法と振動モードによって決まる。防塵フィルタ18を支持する部分では振幅0となる節位置にて支持するようにすることが好ましい。
【0040】
本実施形態に係る撮像素子ユニット4では、図6(B)〜図6(E)に示すように、振動モードに応じて圧電素子20に印加する電圧の周波数等を変化させることにより、防塵フィルタ18における節22の位置を変化させることができる。その結果、ある特定の振動モードでは、防塵フィルタ18の表面において、節22の位置に吹き飛ばされずに残っていた塵埃などが、他の振動モードでは、節22の位置が変化することから振動の加速度で吹き飛ばされることになる。その結果として、防塵フィルタ18の外面全域に渡りゴミ除去が可能になる。
【0041】
本実施形態では、図1に示すように、防塵フィルタ駆動回路56には、振動モード選択回路80が接続してある。振動モード選択回路80は、ボディCPU50を通して、防塵フィルタ駆動回路56を制御する。
【0042】
図2および図3に示すように、本実施形態に係る撮像素子ユニット4は、基板10を有し、基板10の光軸αの前方側の表面中央部には、撮像素子12が固定してある。図3に示すように、撮像素子12の周囲には、ケース17が配置してあり、基板10の光軸αの前方側の表面に、着脱自在に、あるいは着脱不可に固定してある。
【0043】
図3および図4に示すケース17は、たとえば合成樹脂あるいはセラミックなどの絶縁体などで構成され、その光軸αの前方側の表面には、内周側取付部17aと、外周側取付部17bとが段差状に形成してある。ケース17の内周側取付部17aには、光透過性を有する光学部材要素30の外周が取り付けられる。その結果、撮像素子12の周囲は、基板10、ケース17および光学部材要素30により密封される。
【0044】
ケース17の外周側取付部17bには、気密シール部材16を介して防塵フィルタ18が配置され、加圧部材19によって気密シール部材16へと押圧されている。本実施形態では、加圧部材19として金属板を用い、加圧部材19の変形に起因する弾性力により、防塵フィルタ18を気密シール部材16方向へと付勢している。防塵フィルタ18の撮像素子12が備えられた側の表面である封止面18bは、加圧部材19を、当該封止面18bとケース17の外周側取付部17bとの間に挟んで押しつぶすことによって、光学部材要素30等が配置された空間を封止している。
【0045】
その結果、撮像素子12および光学部材要素30が設けられた収納空間が気密状態となり、塵埃がケース外部から収納空間に入るのを防止することができる。また、圧電素子20は脆性材料を含む場合があるため、圧電素子20を駆動すると、当該圧電素子20自体が発塵することがある。しかし、本実施形態では圧電素子20が収納空間の外部に配置されているため、圧電素子20自体から発塵した塵埃が、収納空間に侵入することがほとんどなく、光学部材要素30の表面への塵埃付着がさらに効果的に防止されている。
【0046】
さらに、本実施形態では、圧電素子20を、防塵フィルタ18の撮像素子12が備えられた側とは反対側の面である外部面18aに接着している。したがって、圧電素子20と気密シール部材16との位置関係を考慮しなくても、圧電素子20を、光学部材要素30が設けられた収納空間の外部に配置することができる。このように、圧電素子20を防塵フィルタ18の外部面18aに接着することで、圧電素子20を、光学部材要素30が設けられた収納空間の外部に配置しつつ、撮像素子ユニット4全体を小型化することが可能である。
【0047】
図2に示す加圧部材19は、ケース17の外周側取付部17bに、たとえば着脱自在にビス止めされており、ケース17の上面に形成してある位置決めピン17cにより、長方形状の防塵フィルタ18の長手方向の位置決めが成されている。なお、図3および図4に示す気密シール部材16は、たとえば発泡樹脂、ゴムなどの剛性の低い材料で構成してあり、気密を確保しながら、後述する防塵フィルタ18の曲げ振動の動きを吸収するようになっている。
【0048】
光学部材要素30は、この実施形態では、複数の光学板の積層構造であり、水晶板13と、赤外線吸収ガラス板14と、水晶波長板(λ/4波長板)15との積層板で構成してある。これらの積層板で構成される光学部材要素30は、防塵フィルタ18よりも小さな面積の長方形であり、しかも、撮像素子12の平面側面積よりも大きく、撮像素子12を全て覆う面積を有する。
【0049】
水晶波長板15は、直線偏光を円偏向に変えることができる光学板であり、赤外線吸収ガラス板14は、赤外線を吸収する機能を有する。また、水晶板13は、防塵フィルタ18を構成する水晶板に対して、相互に複屈折の方向が90度異なる水晶板であり、一方が90度方向(短辺方向)の複屈折を有する水晶板であれば、他方の水晶板は、0度方向(長辺方向)の複屈折を有する水晶板である。本実施形態では、防塵フィルタ18が0°方向(長辺方向)の複屈折を有する水晶板であり、水晶板13が90°方向(短辺方向)の複屈折を有する水晶板である。
【0050】
すなわち、本実施形態では、相互に離れて配置された水晶板13および防塵フィルタ18と、これらの間に配置された赤外線吸収ガラス14および水晶波長板15とによって、光学ローパスフィルタ(OLPF)を構成している。ただし、本願の発明に係る透光部材としては、光学ローパスフィルタの一部である防塵フィルタ18に限られない。たとえば、本発明に係るその他の実施形態としては、光学部材要素30のみで光学ローパスフィルタを構成し、当該光学ローパスフィルタに対して、光軸αの前方側に配置された封止用ガラス等を透光部材とするものが挙げられる。
【0051】
図2および図3に示すように、防塵フィルタ18の外部面18aには、励振部材としての一対の圧電素子20が、長方形状の防塵フィルタ18の長辺方向Lに沿って両側位置に、短辺方向Sに平行に延在するように接着してある。圧電素子20は、たとえばPZT素子で構成される。
【0052】
本実施形態では、防塵フィルタ18の長辺方向Lの両側に配置してある各圧電素子20の外側に位置する節22(図6参照)の近くにおいて、図2に示す加圧部材19が、防塵フィルタ18の外部面18aから気密シール部材16の方向に押圧している。加圧部材19は、防塵フィルタ18の長辺方向Lの両側を、振動の節22に平行に加圧するのみであり、防塵フィルタ18における曲げ振動の節22と直交する方向の両端部は加圧しない。防塵フィルタ18の曲げ振動を抑制しないようにするためである。
【0053】
また、本実施形態では、図3に示す圧電素子20は、防塵フィルタ18の外部面18aに、エポキシ系紫外線硬化型接着剤によって固定されている。図5の拡大図に示すように、防塵フィルタ18の外部面18aには、エポキシ系紫外線硬化型接着剤が硬化した硬化物層21が、圧電素子20との間に形成されている。このように、硬化物層21は、圧電素子20を防塵フィルタ18の外部面18aに固定している。
【0054】
エポキシ系紫外線硬化型接着剤は、例えばアクリル系接着剤等にくらべて収縮率が小さいため、圧電素子20を精度良く接着することが可能である。また、本実施形態では、表面硬化性に優れたエポキシ系紫外線硬化型接着剤を使用しているため、圧電素子20と防塵フィルタ18との接着面からはみ出している硬化物層21のはみ出し部21aについても、接着剤が十分に硬化している。したがって本実施形態に係る撮像素子ユニット4では、はみ出し部等に残存した未硬化の接着剤が、防塵フィルタ18の清掃作業時等に染み出し、防塵フィルタ18を汚してしまうことを防止している。
【0055】
また、エポキシ系紫外線硬化型接着剤を用いることによって、防塵フィルタ18の封止面18b側から紫外線を照射することによって、圧電素子20を容易に接着することができる。さらに、本実施形態では、紫外線硬化型接着剤を用いているため、熱硬化型接着剤を用いる場合にくらべて、接着時に防塵フィルタ18が受ける熱負荷が抑制される。
【0056】
本実施形態に用いるエポキシ系紫外線硬化型接着剤は、当該エポキシ系紫外線硬化型接着剤を着色する着色剤を含んでいてもよい。エポキシ系紫外線硬化型接着剤に着色剤が含まれていると、硬化物層21も着色する。したがって、圧電素子20を接着した後であっても、硬化物層21を防塵フィルタ18の封止面18b側から観察することによって、硬化物層21の形状や硬化物層21中に存在する気泡等を比較的容易に認識することが可能である。したがって、圧電素子20と防塵フィルタ18との接着状態の検査を、簡単に行うことができる。
【0057】
また、硬化物層21を着色することにより、当該硬化物層21が不要な反射を起こすことを防止し、硬化物層が反射した光によって、撮像する像が劣化したり、撮像する像に不要な像が混入することを防止できる。さらに、着色剤が含まれる硬化物層21が、圧電素子20の少なくとも一部を覆っていてもよい。これによって、圧電素子が不要な反射を起こすことを防止し、圧電素子が反射した光によって、撮像する像が劣化したり、撮像する像に不要な像が混入することを防止できる。
【0058】
さらに、本実施形態に係る防塵フィルタ18の外部面18aには、図2において2点鎖線で示す清掃領域32が設けられている。清掃領域32は、外部面18aのうち、少なくとも撮像素子12へ入射する光が当該防塵フィルタ18を透過する透過領域12a含むように形成されている。
【0059】
カメラの組み立て時や、ユーザーメンテナンスの際には、アルコール等の溶剤を含ませた洗浄紙等を、清掃領域32に押し当てて拭くことによって、当該清掃領域32に付着した塵埃を除去する清掃作業が行われる。防塵フィルタ18について、溶剤を用いた清掃作業を行うことによって、圧電素子20によって当該防塵フィルタ18を振動させただけでは除去しきれない塵埃を除去することが可能である。
【0060】
本実施形態に係る防塵フィルタ18では、清掃領域32の長辺方向Lの両端部は、圧電素子20に接しており、光学部材要素30へ入射する光が当該防塵フィルタ18を透過する透過領域30aを含むように清掃領域32が形成されている。清掃領域32は、撮像素子12へ入射する光が当該防塵フィルタ18を透過する透過領域12aを含み、透過領域12aに対して十分に広い領域にすることが好ましい。それによって、撮像素子12への塵埃の写り込みを、より確実に防止することができる。なお、清掃領域は、撮像素子12へ入射する光が当該防塵フィルタ18を透過する透過領域12aを含んでいればよく、たとえば、硬化物層21および加圧部材19との接触面を除く外部面18a全体であってもよい。
【0061】
ここで、溶剤を用いて防塵フィルタ18の外部面18aの清掃作業を行う際には、清掃作業で用いる溶剤が、硬化物層21に接触する場合がある。その場合、圧電素子を接着する接着剤として、アクリル系接着剤等を用いる従来技術では、耐溶剤性が劣るため、接着剤が硬化した硬化物が、溶剤と接触した際に溶け出して、防塵フィルタを汚すという問題が発生していた。
【0062】
また、従来技術では、接着剤が硬化した硬化物が、溶剤と接触した際に溶け出して、接着強度の低下または圧電素子の剥がれが発生するという問題が発生していた。しかし、本実施形態では、耐溶剤性の良いエポキシ系紫外線硬化型接着剤によって圧電素子20を固定しているため、硬化物層21が溶剤と接触した際に、硬化物層21が溶け出すことを防止している。したがって、本実施形態に係る撮像素子ユニット4では、硬化物層21が溶け出すことに起因する防塵フィルタ18の汚れ、圧電素子20の接着強度の低下または圧電素子20の剥がれ等を防止することができる。
【0063】
このように、本実施形態に係る撮像ユニット4では、エポキシ系紫外線硬化型接着剤を使用しているため、洗浄領域32が形成されている外部面32aに、圧電素子20を、高い接着信頼性およびメンテナンス性を確保した状態で接着することができる。
【0064】
なお実施形態では、圧電素子20を防塵フィルタ18に接着する接着剤として、エポキシ系紫外線硬化型接着剤を用いているが、その他の実施形態として、活性種としてプロトン酸を有するカチオン重合型紫外線硬化型接着剤を用いても良い。カチオン重合型紫外線硬化型接着剤についても、エポキシ系紫外線硬化型接着剤と同様にして、圧電素子20を防塵フィルタ18に接着する接着剤として用いることができる。カチオン重合型紫外線硬化型接着剤を用いた場合でも、従来技術との比較において、上述の実施形態で述べたエポキシ系紫外線硬化型接着剤を用いる場合と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係るカメラの全体ブロック図である。
【図2】図2は図1に示す撮像装置の平面図である。
【図3】図3は図2に示すIII−III線に沿う概略断面図である。
【図4】図4は図2に示すIV−IV線に沿う概略断面図である。
【図5】図5は図3に示す撮像装置断面の要部拡大図である。
【図6】図6(A)〜図6(E)は振動モードを示す概略図である。
【符号の説明】
【0066】
4… 撮像素子ユニット
12… 撮像素子
13… 水晶板
14… 赤外線吸収ガラス板
15… 水晶波長板
16… 気密シール部材
17… ケース
18… 防塵フィルタ
18a… 外部面
18b… 封止面
20… 圧電素子
21… 硬化物層
30… 光学部材要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像を撮像する撮像素子と、
前記撮像素子と対向して備えられる透明部材と、
前記透明部材に備えられ、当該透明部材を振動させる振動部材とを有し、
前記透明部材と前記振動部材とをエポキシ系紫外線硬化型接着剤で固定することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載された撮像装置であって、
前記振動部材は、前記透明部材の前記撮像素子が備えられた側とは反対側に備えられていることを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の撮像装置であって、
前記透明部材の前記撮像素子が備えられた側とは反対側には、溶剤による洗浄が行われる清掃領域が設けられていることを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の撮像装置であって、
前記エポキシ系紫外線硬化型接着剤は、当該エポキシ系紫外線硬化型接着剤を着色する添加剤を含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の撮像装置であって、
前記透明部材の少なくとも一部は、光学ローパスフィルタであることを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の撮像装置であって、
前記透明部材は、前記撮像素子を封止する封止面と当該封止面と対向する外部面とを有する封止部材であり、
前記外部面には、前記エポキシ系紫外線硬化型接着剤が硬化した硬化物層が備えられており、当該硬化物層は前記外部面に前記振動部材を固定していることを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
像を撮像する撮像素子と、
前記撮像素子と対向して備えられる透明部材と、
前記透明部材に備えられ、当該透明部材を振動させる振動部材とを有し、
前記透明部材と前記振動部材とをカチオン重合型紫外線硬化型接着剤で固定することを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
請求項7に記載された撮像装置であって、
前記振動部材は、前記透明部材の前記撮像素子が備えられた側とは反対側に備えられていることを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の撮像装置であって、
前記透明部材の前記撮像素子が備えられた側とは反対側には、溶剤による洗浄が行われる清掃領域が設けられていることを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の撮像装置であって、
前記カチオン型紫外線硬化型接着剤は、当該カチオン型紫外線硬化型接着剤を着色する添加剤を含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の撮像装置を有する光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−130615(P2009−130615A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303292(P2007−303292)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】