説明

撮像装置及び制御方法

【課題】 露出制御に用いるデータに基づいて被写体追尾を行う場合に、精度よく被写体追尾を行うことができるようにする。
【解決手段】 撮像した被写体像に応じた信号を出力する撮像素子と、前記撮像素子から出力された信号に基づく画像データを用いて露出制御を行う露出制御手段と、前記露出制御に用いる複数の画像データを用いて所定の条件を満たす対象の追尾を行う追尾手段と、前記追尾に用いる複数の画像データのそれぞれの輝度に関する値が近づくように補正を行う補正手段と、を有し、前記追尾手段は、前記補正が行われた場合、補正した結果に基づいて前記追尾を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露出制御に用いるデータに基づいて被写体追尾を行う撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像画面内で主要被写体がどこにあるかを認識し、その位置を自動的に追尾する、いわゆる、被写体追尾機能を有する撮像装置が知られている。この被写体追尾機能を用いることで、動きのある主要被写体に対して連続的に自動焦点調節制御(AF制御)や露出制御(AE制御)を行うことが可能となる。
【0003】
このような被写体追尾機能を有する撮像装置の一例として、一眼レフカメラのような、撮像素子とは別に測光に用いる測光部を有する撮像装置において、測光部から出力される測光データに基づいて被写体追尾を行うものが特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−110429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された撮像装置のように、測光部から出力される測光データに基づいて被写体追尾を行う場合、以下のような問題が生じてしまう。
【0006】
測光部から出力される測光データは露出制御にも用いられるため、露出制御に適した測光データが出力されることを優先して測光部の蓄積時間などが制御される。そのため、被写体追尾処理において2つの測光データを相関演算する場合、2つの測光データが示すそれぞれの輝度値が大きく異なっていると相関演算の精度が低下してしまい、被写体追尾ができなかったり被写体追尾の精度が低下したりしてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、露出制御に用いるデータに基づいて被写体追尾を行う場合に、精度よく被写体追尾を行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る撮像装置は、撮像した被写体像に応じた信号を出力する撮像素子と、前記撮像素子から出力された信号に基づく画像データを用いて露出制御を行う露出制御手段と、前記露出制御に用いる複数の画像データを用いて所定の条件を満たす対象の追尾を行う追尾手段と、前記追尾に用いる複数の画像データのそれぞれの輝度に関する値が近づくように補正を行う補正手段と、を有し、前記追尾手段は、前記補正が行われた場合、補正した結果に基づいて前記追尾を行うことを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る撮像装置の制御方法は、撮像した被写体像に応じた信号を出力する撮像素子を有する撮像装置の制御方法であって、前記撮像素子から出力された信号に基づく画像データを用いて露出制御を行う露出制御ステップと、前記露出制御ステップでの露出制御に用いる複数の画像データを用いて所定の条件を満たす対象の追尾を行う追尾ステップと、前記ステップでの追尾に用いる複数の画像データのそれぞれの輝度に関する値が近づくように補正を行う補正ステップと、を有し、前記追尾ステップは、前記補正ステップでの補正が行われた場合、補正した結果に基づいて前記追尾を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、露出制御に用いるデータに基づいて被写体追尾を行う場合に、精度よく被写体追尾を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態にかかる撮像装置の構成を示したブロック図。
【図2】連写撮影シーケンスを示すタイミングチャート。
【図3】AE処理及び追尾処理の詳細に示したタイミングチャート。
【図4】AE処理及び追尾処理の詳細を示す図。
【図5】データの並び替え処理を示す図。
【図6】現像処理を行う前の撮像素子の出力に基づく輝度値を画像としての輝度値に変換する際の変換特性を示す図。
【図7】補正処理に用いる補正量を決定するための補正テーブルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置のブロック図であり、撮像装置は、カメラ本体100と、カメラ本体100に着脱可能な交換レンズであるレンズユニット200とで構成される。
【0013】
カメラ本体100の構成について説明する。制御部101は、各種の演算処理と撮像装置の全体を統括的に制御する。
【0014】
ミラー102はレンズユニット200の撮影レンズ202を通った被写体像を、ファインダー使用時にはファインダーと露出制御用の撮像素子B116(第1の撮像素子)に導き、撮影時には跳ね上がり被写体像を撮像素子A(第2の撮像素子)106へと導く。以下では、ミラー102の状態について、撮影レンズ202を通った被写体像をファインダーと撮像素子B116に導く状態のことをダウン状態、撮影レンズ202を通った被写体像を撮像素子A106に導く状態のことをアップ状態とする。また、ミラー102をダウン状態にするための動作をダウン動作、アップ状態にするための動作をアップ動作とする。ミラー駆動部103は、制御部101からの制御信号に従ってミラー102を駆動する。
【0015】
シャッタ機構104はフォーカルプレーン型の先幕/後幕に相当するシャッタ幕を有していて、撮影レンズ202を通ってきた被写体像が撮像素子A106に導かれる時間を制御する。シャッタ駆動部105は、制御部101からの制御信号に従ってシャッタ機構104の駆動を行う。
【0016】
撮像素子A106は撮影レンズ202により結像された被写像に応じた撮像信号を出力する(固体)撮像素子であり、例えば、CCDセンサやCMOSセンサなどである。
【0017】
撮像信号処理部A107は、撮像素子A106から出力される撮像信号の増幅処理や、アナログからデジタルへの変換を行うA/D変換処理、A/D変換後の画像データに対するキズ補正等の各種の補正処理、或いは、画像データを圧縮する圧縮処理等を行う。タイミング発生部A108は、撮像素子A106と撮像信号処理部A107に対して各種のタイミング信号を出力する。
【0018】
メモリ部109は、撮像信号処理部A107により処理された画像データ等を一時的に記憶し、また各種の調整値や制御部101による各種の制御を実行させるためのプログラムなどを記憶する。
【0019】
記録媒体制御インターフェース(I/F)部110は、記録媒体111に対する画像データ等の記録処理又は記録媒体111から画像データ等の読み出し処理を行うためのものである。記録媒体111は、画像データ等の各種のデータを記録する半導体メモリ等からなる着脱可能な記録媒体である。
【0020】
表示駆動部112は、制御部101からの制御信号に従って、撮影した静止画像や動画像等を表示する表示部113を駆動する。
【0021】
外部インターフェース(I/F)部114は、コンピュータやプリンタなどの外部機器115と画像データ、制御信号等の情報のやりとりを行う。
【0022】
撮像素子B116は、露出制御や光源検知に用いるデータを取得するための撮像素子であり、撮像した被写体像に応じた撮像信号を出力する。本実施の形態では、RGBがストライプ配列のCCDセンサを用いるものとする。なお、読み出し時間の短いセンサであればCMOSセンサを用いてもよい。
【0023】
撮像信号処理部B117は、撮像素子B116から出力される撮像信号の増幅処理や、アナログからデジタルへの変換を行うA/D変換処理、A/D変換後の画像データに対するキズ補正等の各種の補正処理、或いは、画像データを圧縮する圧縮処理等を行う。タイミング発生部B118は、撮像素子B116と撮像信号処理部B117に対して各種のタイミング信号を出力する。
【0024】
ペンタプリズム119は、ミラー102で曲げられた光線を不図示のファインダと撮像素子B116へ導く。
【0025】
焦点検出部121は、位相差方式により焦点検出を行うものであって、ミラー102を透過して反射された光線により1対の画像を取得する。制御部101は、この1対の画像のズレ量から被写体のデファーカス量を演算して撮影レンズ202の駆動量を求め、レンズ制御部201へ伝える。焦点検出駆動部120は、制御部101からの制御信号に従って焦点検出部121を駆動する。
【0026】
次に、レンズユニット200の構成について説明する。撮影レンズ202は被写体像を撮像素子A106に結像させる。レンズ駆動部203は、焦点調節や変倍を行うために、レンズ制御部201からの制御信号に従って撮影レンズ202を駆動する。絞り機構204は撮影レンズ202を通った光束の光量を制御する。絞り駆動部205は、レンズ制御部201からの制御信号に従って絞り機構を駆動する。
【0027】
カメラ本体100とレンズユニット200との間では、制御部101とレンズ制御部201が通信をしていて、送信/受信の管理を行っている。
【0028】
図2は、本実施の形態の撮像装置の連写撮影シーケンスを示すタイミングチャートであり、連写撮影におけるNフレーム目(N≧1)の本画像露光開始前からN+2目フレームの本画像露光終了後まで示している。
【0029】
連写撮影において、ダウン状態であったミラー102がアップ動作によりアップ状態となってから、ダウン動作が開始されるまでの間にNフレーム目の本画像露光を行う。すなわち、本画像を得るために撮像素子A106の蓄積を行う。
【0030】
続いて、ミラー102のダウン動作が完了しダウン状態となってから次にアップ動作が開始されるまでの間に、露出制御処理(以下、AE処理とする)の蓄積・演算及び被写体追尾処理(以下、追尾処理とする)の蓄積・演算を行う。追尾処理とは、連続する複数の画像において、撮像画面内で所定の条件を満たす追尾対象(主被写体など)の輝度パターン及び色パターンの分布からその追尾対象がどこに移動したかを演算する処理である。なお、ここでの蓄積は撮像素子B116による蓄積である。
【0031】
そして再び、ミラー102のアップ動作が完了しアップ状態となってから次にダウン動作が開始されるまでの間にN+1フレーム目の本画像露光を行う。
【0032】
この時、直前のダウン状態におけるAE処理の蓄積・演算の結果に基づいて露出制御を行って本画像露光を行う。また、N+1フレーム目の直前のダウン状態及びNフレーム目の直前のダウン状態における追尾処理の蓄積・演算の結果に基づいて、Nフレーム目で焦点調節の対象とした主被写体領域を追尾するようにN+1フレーム目の焦点調節処理を行う。
【0033】
続いて再び、ミラー102のダウン動作が完了しダウン状態となってから次にアップ動作が開始されるまでの間に、AE処理の蓄積・演算及び追尾処理の蓄積・演算を行う。その後、ミラー102のアップ動作が完了しアップ状態となってから次にダウン動作が開始されるまでの間にN+2フレーム目の本画像露光を行う。以降は上述のシーケンスが繰り返される。
【0034】
次に、本画像撮影に関する処理について説明する。ミラー102のアップ状態において本画像露光、すなわち、撮像素子A106の蓄積を行う。蓄積が完了すると、撮像信号処理部A107は、蓄積された撮像信号の読み出しを行う。タイミングチャートに示すように、蓄積された撮像信号の読み出しは、次の本画像の蓄積が開始するまでに完了しなければならない。
【0035】
撮像信号の読み出しが完了すると、撮像信号処理部A107は、読み出した撮像信号に対して現像処理及び圧縮処理を行う。現像処理及び圧縮処理が完了すると、記録媒体制御インターフェース(I/F)部110は、記録処理を開始する。このようにして、各種処理が行われた画像データは記録媒体111に記録される。
【0036】
上記では、本画像の蓄積から記録処理までを説明したが、図2に示すように、Nフレーム目の撮像信号に対する現像処理に並行して、撮像信号処理部A107は、N+1フレーム目の本画像露光により蓄積された撮像信号の読み出しを行う。また、撮像信号処理部A107は、Nフレーム目の画像データに対する記録処理に並行してN+1フレーム目の撮像信号に対する現像処理とN+2フレーム目の本画像露光により蓄積された撮像信号の読み出しを行うなど、複数の処理を並行して行う。
【0037】
図3は、図2にあるAE処理及び追尾処理の詳細に示したタイミングチャートである。
【0038】
ミラー102がダウン状態になると、撮像素子B116で追尾用の蓄積である蓄積1を行う。追尾処理は、追尾演算の結果を焦点調節に反映させるために、焦点調節処理のタイミングに基づいて設定される追尾リミットまでに完了しなければならない。そのため、この蓄積1は追尾演算に利用可能な信号を得ることができる最低限の蓄積時間となっている。
【0039】
蓄積1が完了すると、撮像信号処理部B117は、蓄積1で蓄積された撮像信号の読み出しを行う。読み出しが完了すると、撮像信号処理部B117は追尾演算を行うために現像処理を行う。現像処理が完了すると、撮像信号処理部B117は追尾演算を行う。追尾演算ではYUVと言われるデータ形式を用いるため、このYUV形式への変換を含む現像処理を行っている。このようにして得られた追尾演算の結果は次の本撮影のための焦点調節処理に用いられる。
【0040】
また、蓄積1が完了すると、蓄積1で蓄積された撮像信号の読み出しを行っているときに、撮像素子B116はAE用の蓄積である蓄積2を行う。蓄積2が完了すると、撮像信号処理部B117は蓄積2で蓄積された撮像信号の読出しを行い、蓄積1で蓄積された撮像信号に基づく画像データ(第1の画像データ)と蓄積2で蓄積された撮像信号に基づく画像データ(第2の画像データ)との加算平均演算を行う。
【0041】
第1の画像データと第2の画像データとの加算平均演算を行うことにより、蓄積1の蓄積時間と蓄積2の蓄積時間とを合計した蓄積時間で蓄積を行った場合と同程度にフリッカの影響が軽減された画像データが得られる。
【0042】
このように加算平均演算を行って得られた画像データは、蓄積1あるいは蓄積2で蓄積された撮像信号に基づく画像データよりも長い蓄積時間で蓄積された撮像信号に基づく画像データに相当する。そのため、第1の画像データあるいは第2の画像データよりも蛍光灯下等でのフリッカ光源の影響が軽減され、蓄積1あるいは蓄積2で蓄積された撮像信号に基づく画像データを用いて露出制御を行う場合よりもより正確に露出制御を行うことができる。
【0043】
読み出し及び加算平均演算が完了すると、撮像信号処理部B117は、加算平均演算をした画像データを撮像画面に対応させて複数領域に分割してそれぞれの領域で積分動作を行い、各領域の積分データを算出する。そして、撮像信号処理部B117はこの積分結果を用いてAE演算を行う。撮像信号処理部B117は、このAE演算により、本画像撮影時のシャッタスピード(露光時間)、絞り値、ISO値(撮像感度)などの露出制御値を決定し、制御部101はこれらの露出制御値に基づいて各部を制御し本画像撮影を行う。
【0044】
図4は、図3で示したAE処理及び追尾処理の詳細を示している。
【0045】
図4(a)は、蓄積1で蓄積された撮像信号の流れを示している。撮像信号処理部B117は、蓄積1で撮像素子B116に蓄積された撮像信号を読み出した後、読み出した撮像信号に基づく画像データをストライプデータ1としてメモリ部109に記憶する。
【0046】
図4(b)は、追尾処理における読み出し後から追尾演算までの詳細を示している。撮像信号処理部B117は現像処理を行う前に、メモリ部109に記憶されたストライプデータ1を読み出し、データの並び替え処理を行う。この並び替え処理の詳細については後述する。
【0047】
次に、撮像信号処理部B117は並び替え処理された画像データを現像処理して、YUV画像を生成する。また、撮像信号処理部B117は、現像処理と並行して、並び替え処理された画像データに対して、前述したAE処理の積分動作と同様にして積分データを算出する。
【0048】
撮像信号処理部B117は、この積分データを用いて、今回の蓄積1で蓄積された撮像信号に基づいて生成されたYUV画像データ(以下、今回のYUV画像とする)に対して補正処理を行う。この補正処理の詳細については後述する。
【0049】
次に、撮像信号処理部B117は、補正処理された今回のYUV画像と補正処理されていない前回のYUV画像とを比較する。そして、撮像信号処理部B117は、前回のYUV画像の主被写体領域に対して今回のYUV画像の主被写体領域が撮像画面のX方向・Y方向それぞれにどの位ずれているかを算出する。撮像信号処理部B117は、このずれ量を用いて主被写体領域が撮像画面内のどこに移動したかを求め、追尾演算を行う。制御部101は、この追尾結果を用いて、今回の本画像撮影のための焦点調節処理を行う。
【0050】
図4(c)は、蓄積1で蓄積された撮像信号に基づく画像データと蓄積2で蓄積された撮像信号に基づく画像データとの加重平均演算の流れを示している。撮像信号処理部B117は、蓄積2で撮像素子B116に蓄積された撮像信号を読み出した後、読み出した撮像信号に基づく画像データをストライプデータ2としてメモリ部109に記憶する。
【0051】
次に、撮像信号処理部B117は、メモリ部109に記憶されたストライプデータ1及びストライプデータ2を読み出し加算平均演算を行い、得られた画像データをストライプデータ3としてメモリ部109に記憶する。ストライプデータ1及びストライプデータ2を単純に加算すると、ストライプデータ3の積分データの値が大きくなりすぎることが考えられる。そこで、加算平均演算を行うことで、ストライプデータ3の積分データの値が大きくなりすぎないようにしている。なお、ストライプデータ3の積分データの値が所定値を超えない場合であれば、ストライプデータ1及びストライプデータ2を単純に加算するようにしても構わない。
【0052】
図4(d)は、加算平均演算後からAE演算までの詳細を示している。まず、撮像信号処理部B117は、メモリ部109に記憶されたストライプデータ3を読み出し、データの並び替え処理を行う。撮像信号処理部B117は、並び替え処理された画像データに対して、前述したAE処理の積分動作と同様にして積分データを算出する。
【0053】
撮像信号処理部B117はこの積分データを用いてAE演算を行い、今回の本画像撮影時に用いるシャッタスピード、絞り値、ISO値などの露出制御値を決定する。
【0054】
図5は、前述のストライプ配列の画像データをベイヤ配列の画像データへ並び替える並べ替え処理の例を示している。
【0055】
本実施の形態では、撮像素子B116は主として露出制御や光源検知に用いるデータを取得するために利用するので、ストライプ配列のCCDセンサを撮像素子B116に用いている。そのため、撮像素子B116から読み出された撮像信号は図5のAに示すようなストライプ配列になっている。
【0056】
撮像信号処理部B117は、この撮像信号を一般的な撮像信号の配列である図5のBに示すようなベイヤ配列となるように画像データの並べ替え処理を行う。なお、撮像素子B116にベイヤ配列の撮像素子を用いる場合には、このような画像データの並び替え処理を行う必要はない。
【0057】
図6は、現像処理を行う前の撮像素子の出力に基づく輝度値(現像前輝度値)をYUV画像の輝度値(現像後輝度値)に変換する際の変換特性(一般的にはガンマ特性と呼ばれている)を示した図である。図6に示されているように、現像前輝度値と現像後輝度値は比例関係にない。
【0058】
本実施の形態では、今回のYUV画像と前回のYUV画像とを用いて追尾演算を行う構成であるが、今回のYUV画像の輝度値と前回のYUV画像の輝度値が大きく異なる場合、被写体追尾ができなかったり被写体追尾の精度が低下したりしてしまう。具体的には、2つのYUV画像の輝度値が大きく異なる場合、同じ主被写体領域であっても前回のYUV画像と今回のYUV画像とで輝度パターン及び色パターンの分布が大きく異なるため、追尾演算において、同じ主被写体領域であると判定されなくなってしまう。あるいは、追尾演算において、今回のYUV画像における主被写体領域とは異なる領域を前回のYUV画像における主被写体領域に相当する領域と判定されてしまう。
【0059】
以上のような追尾精度の低下を軽減するために、本実施の形態では、撮像信号処理部B117は、今回のYUV画像の輝度値と前回のYUV画像の輝度値とを略同一にするための補正を行ってから、2つの画像の比較を行う。なお、追尾演算に用いる今回のYUV画像と前回のYUV画像は、ともに現像処理後の画像であるため、前回のYUV画像の輝度値と等しくなるように今回のYUV画像の輝度値を補正したとしても、正確に補正したことにはならない。そこで、撮像信号処理部B117は、YUV画像の輝度値、すなわち、現像後輝度値ではなく、現像前輝度値に基づいて今回のYUV画像の補正量を決定する。
【0060】
図7は、前回の現像前輝度値と今回の現像前輝度値とに基づいて適正な補正量を決定するための補正テーブルを示している。なお、図7の補正テーブルにおけるそれぞれの輝度値は、撮像画面の各領域の積分データを平均した輝度値である。本実施の形態では、説明を簡単にするため、各領域の積分データを単純に平均した輝度値を補正量の決定に用いるものとするが、撮影条件に応じた重み付けを各領域にかけて加重平均した輝度値を用いても構わない。
【0061】
図7に示した値は、前回の現像前輝度値と今回の現像前輝度値と上述した変換特性とに基づいて設定されたものである。そのため、撮像信号処理部B117は、図7に基づいて決定した補正量を用いて今回のYUV画像の補正処理を行うことで、前回の現像前輝度値と今回の現像前輝度値との差を正確に補正したYUV画像を得ることができる。
【0062】
このように補正処理された今回のYUV画像と前回のYUV画像とを用いて追尾演算を行うことで、異なる蓄積時間で得られた画像データに基づいて追尾演算を行う場合であっても、精度よく被写体追尾を行うことができる。
【0063】
また、蓄積時間が異ならなくても、フリッカの影響が大きくなるほど短い蓄積時間であれば、複数の画像データ間で輝度値に大きな差が生じてしまう。そのような場合であっても、上述のように補正処理を行った画像を用いて追尾処理を行うことで精度よく被写体追尾を行うことができる。
【0064】
なお、上記の実施の形態のように、現像処理後の画像データを用いて追尾演算を行うのではなく、現像処理前の画像データを用いて追尾演算を行う構成であれば、追尾演算に用いる2つの画像データの輝度値の差に基づいて補正処理の補正量を決定してもよい。また、現像処理前の画像データを用いて追尾演算を行う構成であれば、追尾演算に用いる2つの画像データの露光量の差に基づいて補正処理の補正量を決定してもよい。
【0065】
また、上記の実施の形態では、蓄積1で蓄積された撮像信号に基づく画像データと蓄積2で蓄積された撮像信号に基づく画像データとの加算平均演算した結果に基づいてAE演算を行っているが、2回蓄積を行わない場合にも本発明は適用できる。
【0066】
また、上記の実施の形態では、連写撮影時の被写体追尾について説明を行ったが、本画像撮影前に被写体追尾を行う場合においても本発明は適用できる。
【0067】
また、上記の実施の形態で撮像信号処理部B117が実行した処理の少なくとも一部を、撮像信号処理部A107及び制御部101の少なくとも一方で行う構成であってもよい。あるいは、撮像信号処理部B117がなく、撮像信号処理部B117が実行した全ての処理を撮像信号処理部A107及び制御部101の少なくとも一方で行う構成であってもよい。
【0068】
また、カメラ本体にレンズユニットが内蔵された構成であってもよい。
【0069】
また、補正処理では、前回の現像前輝度値と今回の現像前輝度値とが等しくなるように補正しなくてもよく、被写体追尾の精度が十分得られる程度に、追尾に用いる複数の画像データのそれぞれの輝度に関する値が近づくように補正すればよい。なお、ここでの輝度に関する値には輝度値や露光量などが含まれる。
【0070】
また、補正処理の補正量は、図7に示したような補正テーブルを用いて決定しなくてもよく、前回の現像前輝度値と今回の現像前輝度値とYUV形式に変換する際の変換特性とに基づいて演算するようにしても構わない。
【符号の説明】
【0071】
100 カメラ本体
101 制御部
106 撮像素子A
109 メモリ部
116 撮像素子B
117 撮像信号処理部B
121 焦点検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像した被写体像に応じた信号を出力する撮像素子と、
前記撮像素子から出力された信号に基づく画像データを用いて露出制御を行う露出制御手段と、
前記露出制御に用いる複数の画像データを用いて所定の条件を満たす対象の追尾を行う追尾手段と、
前記追尾に用いる複数の画像データのそれぞれの輝度に関する値が近づくように補正を行う補正手段と、を有し、
前記追尾手段は、前記補正が行われた場合、補正した結果に基づいて前記追尾を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
撮像した被写体像に応じた信号を出力する第2の撮像素子を有し、
前記露出制御手段は、前記第2の撮像素子で撮像を行う際に、前記撮像素子から出力された信号に基づく画像データを用いて前記露出制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第2の撮像素子で撮像を行う前に、前記追尾手段の追尾結果に基づいて焦点調節を行う焦点調節手段を有することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記追尾手段は、前記撮像素子から出力された信号に基づく連続した複数の画像データを用いて前記追尾を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記追尾手段は、現像処理を行った後の複数の画像データを用いて前記追尾を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記露出制御手段は、前記現像処理を行う前の画像データを用いて前記露出制御を行うことを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記補正手段は、前記現像処理を行う前の画像データを用いて決定した補正量に基づいて、前記現像処理を行った後の画像データの補正を行うことを特徴する請求項5または6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記現像処理は、前記撮像素子から出力された信号に基づく画像データをYUV形式に変換する処理を含むことを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
撮像した被写体像に応じた信号を出力する撮像素子を有する撮像装置の制御方法であって、
前記撮像素子から出力された信号に基づく画像データを用いて露出制御を行う露出制御ステップと、
前記露出制御ステップでの露出制御に用いる複数の画像データを用いて所定の条件を満たす対象の追尾を行う追尾ステップと、
前記ステップでの追尾に用いる複数の画像データのそれぞれの輝度に関する値が近づくように補正を行う補正ステップと、を有し、
前記追尾ステップは、前記補正ステップでの補正が行われた場合、補正した結果に基づいて前記追尾を行うことを特徴とする撮像装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−231324(P2012−231324A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98589(P2011−98589)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】