撮像装置及び撮像方法
【課題】 第1の処理領域では、第2の処理領域に対して相対的な拡大処理を行いつつ、撮像した画像に比べて解像度の低下を抑止する撮像装置及び撮像方法等を提供すること。
【解決手段】 撮像装置は、撮像光学系により結像される被写体像から画像信号を生成する複数の画素を有する撮像素子240と、複数の画素分の画像信号からなる原画像に対して変倍処理を施す変倍処理部340と、変倍処理後の画像を変倍画像として出力する出力部350と、を含み、変倍処理部340は変倍画像上の注目画素の位置に応じて異なる変倍率で変倍処理を行い、撮像素子240は、複数の画素として、変倍画像の画素数よりも多い画素を有する。
【解決手段】 撮像装置は、撮像光学系により結像される被写体像から画像信号を生成する複数の画素を有する撮像素子240と、複数の画素分の画像信号からなる原画像に対して変倍処理を施す変倍処理部340と、変倍処理後の画像を変倍画像として出力する出力部350と、を含み、変倍処理部340は変倍画像上の注目画素の位置に応じて異なる変倍率で変倍処理を行い、撮像素子240は、複数の画素として、変倍画像の画素数よりも多い画素を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び撮像方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡システムのような撮像装置においては、例えば大腸の診断時にヒダの裏側にある病変等を見逃さないため、出来るだけ広角な光学系が望ましい。従来の内視鏡システムで使用される光学系の画角は一般的に140〜170度程度であるが、例えば特許文献1に示すような、180度以上の画角を持つ超広角の光学系を使用することで、より病変の見逃しを少なくすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−345577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、前述したような超広角の光学系においては、一般的に歪曲収差が非常に大きくなる。この結果、画像周辺部での局所的な倍率が画像中心部と比較して小さくなるため、例えば画像の周辺部に病変等が存在する場合はそのサイズが非常に小さくなってしまい、観察が困難になる。このような問題を避けるには、例えば画像の周辺部を画像処理で拡大することが考えられるが、この場合、病変のサイズは大きくなるが画像がボケてしまうため、画質が悪化するという課題があった。
【0005】
本発明の幾つかの態様によれば、第1の処理領域では、第2の処理領域に対して相対的な拡大処理を行いつつ、撮像した画像に比べて解像度の低下を抑止する撮像装置及び撮像方法等を提供することができる。
【0006】
また、本発明の幾つかの態様によれば、撮像した画像に比べて解像度を落とすことなく、局所倍率の小さい領域を局所倍率の大きい領域に対して相対的に拡大する撮像装置及び撮像方法等を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、撮像光学系により結像される被写体像から画像信号を生成する複数の画素を有する撮像素子と、前記複数の画素分の画像信号からなる原画像に対して変倍処理を施す変倍処理部と、前記変倍処理後の画像を変倍画像として出力する出力部と、を含み、前記変倍処理部は、前記変倍画像上の注目画素の位置に応じて異なる変倍率で前記変倍処理を行い、前記撮像素子は、前記複数の画素として、前記変倍画像の画素数よりも多い画素を有する撮像装置に関係する。
【0008】
本発明の一態様では、変倍処理部は変倍画像上の注目画素の位置に応じて異なる変倍率で変倍処理を行い、撮像素子は変倍画像の画素数よりも多い画素を有する。よって、原画像として変倍画像よりも画素数の多い画像を取得しつつ、位置に応じて変倍率を異ならせて変倍処理を行うことになるため、歪みを解消するとともに、位置によっては解像度を原画像に比べて落とすことなく変倍画像を取得すること等が可能になる。
【0009】
また、本発明の他の態様は、撮像光学系により結像される被写体像から画像信号を生成する複数の画素での、前記画像信号に基づいて原画像を取得し、前記原画像に対して、注目画素の位置に応じて異なる変倍率で変倍処理を行うことで、前記原画像の画素数よりも少ない画素数の画像である変倍画像を取得し、前記変倍処理後の画像を前記変倍画像として出力する撮像方法に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態のシステム構成例。
【図2】被写界深度を説明する図。
【図3】球面上の病変部1及び病変部2を撮像する例。
【図4】病変部1及び病変部2を撮像した原画像の例。
【図5】病変部1及び病変部2を撮像した原画像に対して変倍処理を施した変倍画像の例。
【図6】画像左上の点を原点に取った場合の変倍画像の例。
【図7】光軸に対応する点を原点に取った場合の変倍画像の例。
【図8】光軸に対応する点を原点に取った場合の原画像の例。
【図9】ihOutとihRatioの関係を説明する図。
【図10】shiftYとinShiftYの関係を説明する図。
【図11】バイリニア法を説明する図。
【図12】shiftX=0の場合の処理を説明するための変倍画像の例。
【図13】shiftX=0の場合の処理を説明するための原画像の例。
【図14】本実施形態における局所倍率を説明するための図。
【図15】shiftYとinShiftYの関係を説明する他の図。
【図16】従来の光学系と本実施形態の広角の光学系の特性を説明する図。
【図17】撮像光学系の光軸に対する前方領域、側方領域及び後方領域を説明する図。
【図18】画素間引き処理における対象画素を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0012】
1.本実施形態の手法
【0013】
まず、本実施形態の手法について説明する。内視鏡装置等の撮像装置では、従来の撮像光学系の画角(例えば140°〜170°)に比べて広い画角(180°以上)の光学系が用いることが考えられる。これは、大腸等の撮影を行う際に、ヒダの裏側等まで十分に撮像範囲に収まるようにすることで、従来の光学系では撮像が困難だった部位にある病変部等を撮像可能にするためのものである。
【0014】
画角の広い光学系を用いた場合には、歪曲収差等の影響が大きくなり、画像に歪みが生じる。例えば、画像の中心部に比べて周辺部がつぶれてしまうようなケースが考えられる。これに対処するため、例えば局所倍率が小さい領域(例えば周辺部)を拡大することにより、画像の歪みを解消し、見やすい画像を取得する手法が考えられる。
【0015】
しかし、このような手法ではつぶれた領域を拡大することになるため、病変サイズは大きくなるものの、拡大対象となる領域での画像の解像度が低下することになり、ボケ等の要因になってしまうという問題がある。
【0016】
そこで、本出願人は以下の手法を提案する。まず、撮像素子により撮像する画像(原画像)は、表示部に表示される画像(変倍画像)に比べて解像度が高い(画素数が多い)ものとする。そして、局所倍率が小さくつぶれてしまった領域に対しては、ほぼ1倍の倍率で変倍処理を行う。それに対して、局所倍率が大きくつぶれていない領域に対しては、β倍の倍率で縮小処理を行う。ここで、変倍画像に対する原画像の1辺の長さの比をα(上述の設定よりα>1)とすると、β<(1/α)となる。つまり、原画像の全領域に対して均等に1/α倍の縮小処理を行ったときに、変倍画像と原画像の歪み具合が同等になるのであるが、本実施形態では、周辺部では縮小度合いを小さく(望ましくは1倍に)し、中心部では1/α倍よりも縮小度合いを大きくすることで、歪みを解消している。中心部に対して周辺部を相対的に拡大するという点では、上述の手法と同様であるが、本実施形態では、原画像を解像度の高い画像としているため周辺部の倍率を等倍に近い値に設定できることになり、結果として周辺部の解像度を落とすことを抑止できるという利点がある。なお、周辺部の倍率(変倍率)は1倍そのものに限定されるわけではない。
【0017】
以下、システム構成例、画角と被写界深度の関係について説明した後、変倍処理について詳しく説明する。
【0018】
2.システム構成例
【0019】
本実施形態に係る撮像装置の具体例である内視鏡システムについて、図1を参照して説明する。本実施形態に係る内視鏡システムは、光源部100と、撮像部200と、処理部300と、表示部400と、外部I/F部500を備えている。
【0020】
光源部100は、白色光を発生する白色光源110と白色光をライトガイドファイバ210に集光するための集光レンズ120を備えている。
【0021】
撮像部200は、例えば体腔への挿入を可能にするため細長くかつ湾曲可能に形成されている。撮像部200には、光源部で集光された光を導くためのライトガイドファイバ210と、該ライトガイドファイバにより先端まで導かれてきた光を拡散させて観察対象に照射する照明レンズ220と、観察対象から戻る反射光を集光する対物レンズ230と、集光した反射光を検出するための撮像素子240を備えている。本実施の形態において、対物レンズ230は例えば画角が220度程度の超広角レンズである。撮像素子240は例えばベイヤ配列の色フィルタを持つ撮像素子である。
【0022】
処理部300はAD変換部310と、画像処理部320と、制御部330と、変倍処理部340と、出力部350を備えている。ただし、処理部300は図1の構成に限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。AD変換部310は、撮像素子240から出力されるアナログ信号をデジタルの画像信号(以下、単に画像と呼ぶ)に変換して画像処理部320に出力する。画像処理部320は、AD変換部310から出力された画像に対してホワイトバランス、デモザイキング処理、色変換、階調変換等の各種の画像処理を施し、変倍処理部340に画像を出力する。変倍処理部340は、画像処理部320から出力された画像に対して変倍処理を行い、出力部350に画像を出力する。変倍処理部340の詳細については後述する。出力部350は、変倍処理部340から出力された画像を、表示部400に対応した画像の形式(デジタル信号、アナログ信号のどちらでもよい)に変換し、表示部400に出力する。表示部400は例えば液晶モニタであり、出力部350から出力される画像を表示する。
【0023】
制御部330は、画像処理部320、変倍処理部340、外部I/F部500と双方向に接続されており、外部I/F部500からの入力情報に従ってこれらを制御する。外部I/F部500は、この撮像装置に対するユーザからの入力等を行うためのインターフェースであり、撮影の開始/終了を行うためのスタートボタンや、各種の撮影条件、表示条件を調整するための調整ボタンなどを含んで構成されている。
【0024】
3.画角と被写界深度の関係
【0025】
ここで内視鏡システムにおける、対物レンズ(以下、光学系と呼ぶ)の画角と被写界深度の関係について説明する。
【0026】
内視鏡システムにおいては、ドクターの診断に支障をきたさないため、広い被写界深度が必要である。このため、従来の内視鏡システムでは比較的Fナンバーが大きい光学系を使用して、被写界深度を広くすることでこのような性能を達成している。しかし近年、内視鏡システムにおいても数十万画素程度の高画素の撮像素子が使用されるようになっている。光学系が一定の場合、その被写界深度は許容錯乱円の大きさによって決定されるが、高画素の撮像素子では画素ピッチと共に許容錯乱円も小さくなるため撮像装置の被写界深度は狭くなる。また、被写界深度を広くするために光学系のFナンバーを大きくすると、回折の影響により光学系の結像性能が劣化する。このため、ドクターの診断に支障をきたさない被写界深度を維持するには、撮像素子の画素数にある程度の上限が存在する。
【0027】
一方、被写界深度は撮像素子の画素数や光学系のFナンバーだけでなく、光学系の焦点距離によっても大きく変動し、焦点距離が短くなるほど被写界深度は広くなる。本実施形態が備えるような超広角の光学系では、撮像素子のサイズが同じと仮定した場合、画角が140〜170度程度の従来の光学系に対して焦点距離が2/3程度になることが経験的に知られている。この結果、本実施形態のような超広角の光学系を備える内視鏡システムでは、ドクターの診断に支障をきたさない被写界深度を維持しながら、従来の内視鏡システムと比較して画素ピッチの小型化(撮像素子の高画素化)が可能になる。
【0028】
このことを説明するため、まず被写界深度について図2を用いて詳細に説明する。ここで右向きの矢印は正の値のベクトルを表し、左向きの矢印は負の値のベクトルを表している。まず光学系の後側焦点位置からXB’の位置に画素ピッチ(1画素の縦横の寸法)がPの撮像素子を配置した場合を考える。この時、撮像素子の撮像面上で光学系の結像性能が最も良くなる被写体の位置(フォーカス位置)は、光学系の前側焦点位置からXBの位置として表される。XBは以下のニュートンの結像式からXB’が決まると一義的に算出される。ここでfは光学系の焦点距離である。
【0029】
XB・XB’=-f2 ・・・・・(1)
【0030】
被写体をXBからXNの位置まで移動させると、その時の像面位置XN’は撮像面から光学系と反対方向に移動する。しかし撮像面における錯乱円の直径が、撮像装置の分解能K・P(ただしKはフィルタ配列や補間処理によって決まる係数)より小さい場合、XNの物体はピントが合っていると見なすことができる。撮像面における錯乱円の直径がK・P以下になる範囲を近点側の被写界深度と定義し、錯乱円の直径がK・Pと一致する被写体の位置を近点と呼ぶことにする。今後は近点の位置を、前側焦点位置からXNの位置として表す。遠点側も被写界深度の定義は同様であり、遠点側で錯乱円の直径がK・Pと一致する被写体の位置を遠点と呼ぶ。今後は遠点の位置を、前側焦点位置からXFの位置として表す。
【0031】
被写体が近点にある時の撮像面における錯乱円の直径は、光学系の開口数NA’ = sin u’(ここでu’は図2に示す撮像面へ入射する光線と光軸のなす角)を用いて下式(2)のように近似できる。
【0032】
錯乱円の直径=2(XN’-XB’)×NA’ ・・・・・(2)
【0033】
近点で錯乱円の直径はK・Pに一致するため、下式(3)が成り立つ。
2(XN’-XB’)・NA’=K・P ・・・・・(3)
【0034】
Fナンバーと開口数の関係式である下式(4)を用いて式(3)を変形すると、下式(5)となる。ここでFは光学系のFナンバーである。
【数1】
XN’-XB’=K・P・F ・・・・・(5)
【0035】
さらに上式(1)で示したニュートンの式を用いて上式(5)を変形すると、下式(6)に示す近点側の被写界深度の関係式が成立する。
【数2】
【0036】
近点側と同様の方法で遠点側の被写界深度の関係式を算出すると下式(7)のようになる。
【数3】
【0037】
式(6)、(7)はさらに下式(8)、(9)のように変形でき、これらを用いて近点の位置XN及び遠点の位置XFを算出できる。以下ではこの近点と遠点の間の範囲を被写界深度と呼ぶことにする。
【数4】
【数5】
【0038】
図16に上式(8)、(9)を用いて被写界深度を算出した一例を示す。ここでは従来の内視鏡システムにおける光学系の焦点距離を1.8mm、超広角の内視鏡システムにおける光学系の焦点距離を1.2mm(従来の光学系の焦点距離の2/3に相当)として計算を行った。その他の値は図16に示すとおりである。この結果、超広角の内視鏡システムでは画素ピッチが従来の内視鏡システムの半分になっているにもかかわらず、より広い被写界深度を達成できていることがわかる。ここで厳密には、画素ピッチを小さくした場合は回折の影響が大きくなるため、光学系が十分な結像性能を得るにはFナンバーを小さくする必要がある。しかし、このような調整を行った場合も、超広角の内視鏡システムでは、従来の内視鏡システムと比較して画素ピッチの小型化(撮像素子の高画素化)が可能であるという定性的な結果に変わりはない。
【0039】
4.変倍処理
【0040】
次に、本実施形態における変倍処理部340の詳細について説明する。ここでは説明を簡易にするため、撮像素子240の水平および垂直方向の画素数をα・N画素、出力部350から出力される画像の水平および垂直方向の画素数をN画素として説明を行う。出力部350から出力される画像の画素数(N画素×N画素)は、例えば表示装置400で最終的に表示される画像の画素数などから決まる値である。また、αは1よりも大きい任意の値であり、このため撮像素子240で取得される画像(α・N画素×α・N画素)は、出力部350から出力される画像(出力画像)よりも解像度の高い画像となる。
【0041】
図3は球面状の被写体の上に位置する病変部1と病変部2を、撮像部200で撮影している状態を表した図である。また、図4はこの状態で画像処理部320から変倍処理部340に出力される画像を表した図である。画像処理部320から変倍処理部340に出力される画像の画素数は、撮像素子240の画素数と同じα・N×α・N画素である。本実施形態で使用されているような超広角の光学系では、歪曲収差が非常に大きいため、画像周辺部の局所的倍率は画像中心部と比較して小さくなる。この結果、画像の周辺部に位置する病変部2は、画像の中心に位置する病変部1と比較して、画像上のサイズが非常に小さくなる。
【0042】
図14は前述した局所倍率の概念を示した図である。ここでは例えば対物レンズの入射瞳を球面状の被写体の中心付近に配置し、球面状の被写体上での微小な距離Δd1およびΔd2と、これに対応する撮像素子上の距離Δd’1およびΔd’2の比を局所倍率とすればよい。ここでΔd1とΔd2は同じ距離である。本実施形態では前述のように歪曲収差が非常に大きいため、画像周辺部の局所倍率Δd’2/Δd2は、画像中心部の局所倍率Δd’1/Δd1と比較して小さくなる。
【0043】
変倍処理部340はまず変倍処理後の画像に対して、画素値を算出したい注目画素の座標(outX,outY)を取得する。ここで変倍処理後の画像は図6に示すようにN×N画素の画像であり、(outX,outY)は左上画素を基準とした座標である。次に変倍処理部340は図7に示すように、注目画素の座標(outX,outY)を、下式(10)を用いて画像中心(光学系の光軸に対応する画像上の点)を基準とした座標(shiftX,shiftY)に変換する。ここで(outCentX,outCentY)は、変倍処理後の画像中心の座標である。
【0044】
shiftX=outX-outCentX
shiftY=outY-outCentY ・・・・・(10)
【0045】
次に変倍処理部340は、下式(11)を用いてihOutを算出する。ここでihOut_maxは変倍処理後の画像における画像中心からの最大距離であり、ihOutは画像中心から注目画素までの距離とihOut_maxとの比である。
【数6】
【0046】
次に変倍処理部340は、ihOutを用いてihRatioを算出する。ihRatioはihOutで決まる値であり、例えば図9に示すようなihOutとihRatioの関係を表すデータがLUTとしてメモリに保存されている。このLUT用いて線形補間等の処理を行うことで、すべてのihOutの値に対応するihRatioを算出することができる。
【0047】
次に変倍処理部340は、算出したihRatioから下式(12)を用いて、変倍処理後の画像の座標(shiftX,shiftY)に対応する変倍処理前の画像の座標(inShiftX,inShiftY)を算出する。(inShiftX,inShiftY)は、図8に示すように変倍処理前の画像中心を基準とした座標である。
【0048】
inShiftX=shiftX*ihRatio*α
inShiftY=shiftY*ihRatio*α ・・・・・(12)
【0049】
次に変倍処理部340は、算出した座標(inShiftX,inShiftY)を、下式(13)を用いて、画像の左上画素を基準とした座標(inX,inY)に変換する。ここで(inCentX,inCentY)は、変倍処理前の画像の中心座標である。この座標(inX,inY)が、変倍処理後の注目画素の座標(outX,outY)に対応する変倍処理前の画像の座標である。
【0050】
inX=inShiftX+inCentX
inY=inShiftY+inCentY ・・・・・(13)
【0051】
次に変倍処理部340は、算出した変倍処理前の画像の座標(inX,inY)から、変倍処理後の注目画素(outX,outY)の画素値I(outX,outY)を算出する。ここでは例えばニアレストネイバー法やバイリニア法など補間処理を用いて注目画素の画素値を算出すればよい。ニアレストネイバー法では、例えば図11に示すように変倍処理前の画像において、算出した(inX,inY)からの距離が最も近い画素p11の画素値を変倍処理後の注目画素の画素値I(outX,outY)とすればよい。また、バイリニア法では変倍処理前の画像において、算出した(inX,inY)の周辺4画素の画素値を用いて以下の(14)式で注目画素の画素値I(outX,outY)を算出すればよい。さらに、その他の既存の補間処理を用いても、注目画素の画素値I(outX,outY)を算出することが可能であることは言うまでもない。
I(outX,outY)=(floor(inX)+1-inX)*(floor(inY)+1-inY)*p00
+(floor(inX)+1-inX)*(inY-floor(inY))*p10
+(inX-floor(inX))*(floor(inY)+1-inY)*p01
+(inX-floor(inX))*(inY-floor(inY))*p11 ・・・・・(14)
【0052】
ここで、図9に示したihOutとihRatioの関係を表すデータを算出するための手法について説明する。ここでは説明を簡単にするため、shiftX=0とした場合のshiftYと、それに対応するinShiftYを用いて説明を行う。図10は本実施形態において、shiftX=0とした場合のshiftYと、それに対応するinShiftYの関係を示した図である。式(12)から分かるようにshiftX=0とした場合はinShiftX=0となる。このため図10は図12と図13に示すように画像中心を基準とした垂直方向の直線上でのshiftYとinShiftYの関係を示している。ここでshiftYは、画像中心を基準とした変倍処理後の画像の座標であるから、取りうる値は0からN/2の範囲の値である。またinShiftYは、画像中心を基準とした変倍処理前の画像の座標であるから、取りうる値は0から(α・N)/2の範囲の値である。
【0053】
本実施形態では、画像の周辺部に位置する病変部2の画像上のサイズが相対的に拡大され、なおかつ拡大処理に伴う解像力の劣化がほとんど無い出力画像を得ることを目的としている。この様な目的を達成するため、本実施形態では、図9に示す画像周辺部においては変倍率が1となるように、画像中心部においては変倍率がβとなるように、ihOutに対応するihRatioの値を決定している。ここでβは1/αよりも小さな任意の正の値である。また、変倍率とは、変倍処理後の画像に対する変倍処理前の画像の、半径方向(注目画素から画像中心に向かう方向)における画素数の比を示している。すなわち、例えば変倍率が1であれば変倍処理後の画像と変倍処理前の画像の半径方向の画素数は同じであり、変倍率が0.5であれば変倍処理後の画像の半径方向の画素数は変倍処理前の画像の半分となる。
【0054】
まず画像周辺部では、shiftYの値がN/2-iの時にinShiftYの値が(α・N)/2-iとなるようにihRatioの値を算出する。ここでiは任意の正の数である。このようにihRatioを算出することで、画像周辺部においては変倍処理前の画像の半径方向の画素数と、変倍処理後の画像の半径方向の画素数が等しくなるため、変倍処理後の画像の解像力は変倍処理前の画像の解像力と等しくなる。具体的には、式(12)のinShiftYに(α・N)/2-iを代入し、shiftYにN/2-iを代入して式の変形を行うことで、任意の値iに対するihRatioは下式(15)で与えられる。
【数7】
【0055】
次に画像中心部では、shiftYの値がβ・iの時にinShiftYの値がiとなるようにihRatioの値を算出する。ここでiは任意の正の数である。このようにihRatioを算出することで、画像中心部においては変倍処理後の画像の半径方向の画素数が、変倍処理前の画像の半径方向の画素数のβ倍になる(β倍の縮小処理が行われる)ため、変倍処理後の画像の解像力は変倍処理前の画像の解像力のβ倍になる。具体的には、(12)式のinShiftYにiを代入し、shiftYにβ・iを代入して式の変形を行うことで、任意の値iに対するihRatioは下式(16)で与えられる。
【数8】
【0056】
また、画像中心部と画像周辺部の間の範囲におけるihRatioの値は、変倍処理後の画像が不自然な画像とならないように、例えば図9に示したようにihRatioが連続的に変化するような直線でつなげばよい。
【0057】
本実施形態では、画像中心に対して軸対象に同様の処理が行われるため、変倍処理後の画像は図5に示すように画像中心部では変倍処理前の画像が縮小され、画像周辺部では変倍処理前の解像力が維持されたような画像となる。このため表示部400で表示される画像は、画像中心部と比べて相対的に画像周辺部が拡大されながら、拡大処理に伴う解像力の劣化が無い画像となる。この結果、画像周辺部に病変が位置する場合も、ユーザは光学系の歪曲収差の影響が低減された、高画質な画像を観察することが可能になる。
【0058】
さらに本実施形態では、図9に示したihOutとihRatioの関係を表すLUTの値を調整することで、変倍処理後の画像中心部と画像周辺部の倍率をそれぞれ調整することが可能である。ここでは例えば画像周辺部において、変倍処理後の画像が変倍処理前の画像よりも大きく拡大されるような(変倍率が1より大きくなるような)変倍処理を行っても良い。この場合は、画像周辺部の解像力が変倍前の画像の解像力よりも向上することは無いが、本実施形態のように出力部350から出力される画像の画素数よりも十分に画素数の多い撮像素子を使用することで、出力部350から出力される画像の画素数と同等以下の画素数の撮像素子を使用する場合に比べて、変倍処理後の画像周辺部の画質の劣化を低減することができる。また、本実施形態では画像中心部および画像周辺部の境界で変倍率が急峻に変化するような変倍処理となっているが、変倍率がなだらかに変化するようにihRatioの値を調整してもよい。
【0059】
さらに本実施形態では、例えば予めihOutに対するihRatioの特性が異なる幾つかのLUTを用意しておき、ユーザが外部I/F部500からモードを選択することで、異なるLUTが選択されるようにしても良い。このような処理を行うことで、ユーザの好みに応じた異なる変倍処理を行うことが可能になる。
【0060】
また、以上の説明では画像周辺部の変倍率を1倍として説明したが、これに限定されるものではない。画像周辺部の変倍率をγ倍(γは例えば0.8〜1.2倍程度の任意の値)としてもよい。この場合、画像の最周辺部(i=0の部分)では、γの値にかかわらずihRatio=1となるため、上式(12)はそのまま用いることができる。また、画像周辺部では、shiftYの値がN/2-γ・iの時にinShiftYの値が(α・N)/2-iとなるようにihRatioの値を算出する。ここでiは任意の正の数である。このようにihRatioを算出することで、画像周辺部においては変倍処理後の画像の半径方向の画素数が、変倍処理前の画像の半径方向の画素数のγ倍になる(γ倍の拡大もしくは縮小処理が行われる)。具体的には、(12)式のinShiftYに(α・N)/2-iを代入し、shiftYにN/2-γ・iを代入して式の変形を行うことで、任意の値iに対するihRatioは下式(17)で与えられる。
【数9】
【0061】
この時のshiftYとinShiftYの関係は図15のようになる。
【0062】
以上の本実施形態では、撮像装置は、図1に示したように撮像光学系により結像される被写体像から画像信号を生成する複数の画素を有する撮像素子240と、複数の画素分の画像信号からなる原画像に対して変倍処理を施す変倍処理部340と、変倍処理後の画像を変倍画像として出力する出力部350と、を含む。そして変倍処理部340は、変倍画像上の注目画素の位置に応じて異なる変倍処理を行う。また、撮像素子240は、複数の画素として変倍画像の画素数よりも多い画素を有する。
【0063】
これにより、出力される変倍画像(例えば図5)に比べて画素数の多い原画像(例えば図6)を撮像した上で、原画像に対して変倍処理を施すことで、変倍画像を取得することが可能になる。変倍処理の際に注目画素の位置に応じて異なる変倍処理(例えば変倍処理に用いられる倍率である変倍率を異ならせる等の処理)を行うことで、画像上における注目画素の位置に基づいた処理が可能になる。これは例えば、画像中心部では変倍率を小さくし、画像周辺部では変倍率を大きくする(例えば1倍等)処理等が考えられる。つまり、注目画素の位置に応じた処理を行うことで、原画像における歪みを解消した変倍画像を取得すること等が可能になる。
【0064】
その際、原画像を変倍画像よりも大きいものとしておけば、歪みによりつぶれてしまった領域を相対的に拡大する場合に、絶対的な拡大処理を行わなくてもよくなるため、対象領域の画質の劣化を抑止することができる。もし、原画像と変倍画像が同じ大きさであったら、つぶれた領域を大きく表示しようとした場合、例えば50ピクセルの領域を100ピクセルに引き延ばすような処理が必要になる。しかし、元々50ピクセル分の情報しか持っていないものを100ピクセルに引き延ばしたのでは画質が劣化することになる。その点、原画像において100ピクセルの大きさを持っていれば(原画像全体が大きいので画像の中では小さくつぶれて見える)、100ピクセルの領域をそのまま用いれば、変倍画像において100ピクセルの大きさで表示することができる(変倍画像全体が小さいので相対的に拡大される)ため、画質の劣化はない。
【0065】
また、変倍画像上の任意の一辺における画素数に対する、原画像上の対応する一辺における画素数の比をαとし、β及びγをβ<(1/α)<γを満たす値とする。この場合、変倍処理部340は、変倍画像内の第1の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率をγ倍に設定するとともに、第1の処理領域とは異なる第2の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率をβ倍に設定してもよい。
【0066】
ここでαは原画像と変倍画像の一辺の長さの比を表し、例えば原画像が200ピクセル×200ピクセルの正方形であり、変倍画像が100ピクセル×100ピクセルの正方形であるとすればαは200/100=2となる。
【0067】
これにより、第1の処理領域においては、変倍率を1/αよりも大きく設定するとともに、第2の処理領域においては、変倍率を1/αよりも小さく設定することが可能になる。原画像と変倍画像の一辺の長さの比がαであるから、原画像の全領域に対して1/α倍の倍率で変倍処理(α>1であるから実際には縮小処理)を行うことで、原画像の大きさを変倍画像にあわせることが可能になる。しかし、全体を同じ変倍率で変倍処理しても、歪みを解消することはできない。そこで、1/α倍に対して、それよりも小さい倍率での変倍処理(強い縮小処理)をかける第2の処理領域を設けるとともに、1/α倍よりも大きい倍率での変倍処理(弱い縮小処理或いは拡大処理)をかける第1の処理領域を設ける。これにより、第1の処理領域は第2の処理領域に比べて相対的に拡大されることになり、歪みを解消することができる。
【0068】
また、δをγ>δ>βを満たす値とする。この場合、第1の処理領域及び第2の処理領域とは異なる第3の処理領域に対応する変倍率をδ倍に設定してもよい。
【0069】
これにより、変倍率を2通りに限定することなく、領域の位置に応じて柔軟に設定することが可能になる。よって、領域の境目等における画像の急激な変化等を抑止し、見やすい画像を提供すること等ができる。
【0070】
また、変倍処理部340は、第1の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率γとして、1を含む所定の数値範囲において設定される値を用いてもよい。具体的には例えば、0.5〜2.0の範囲において設定される値を用いてもよい。望ましくは例えば、0.8〜1.2の範囲において設定される値を用いる。
【0071】
これにより、γとして1或いはそれに近い値を用いることが可能になる。γ=1とは第1の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率を1とすることであるから、第1の処理領域では、原画像と変倍画像で半径方向の画素数が等しくなる。このため、画質の劣化や情報の欠落を抑止することができる。ただし、γは1に限定されるものではなく、変倍画像の画質が大きく劣化しない範囲において変更可能である。例えば、ある程度の縮小(捨てられる画素が生じるため、情報の欠落につながる)を行ってもよいし、ある程度の拡大(画像を引き延ばすことになるため、画質の劣化につながる)を行ってもよい。
【0072】
また、変倍処理部340は、注目画素と、撮像光学系の光軸に対応する変倍画像上の点との間の距離に基づいて、注目画素の位置における変倍率を設定してもよい。
【0073】
ここで、撮像光学系の光軸に対応する変倍画像上の点とは、一般的には変倍画像の中心点に相当する。図6における(outCentX,outCentY)或いは、図7における(0,0)のことである。ただし、これに限定されるものではない。
【0074】
これにより、光軸に対応する点と、注目画素との間の距離に応じて変倍率を設定することが可能になる。現在用いられる画角の広い光学系(例えば魚眼レンズ等)では、光軸に対応する点に近い領域に比べて、遠い領域の方が歪曲収差等の影響を受け小さくつぶれてしまう。例えば、本来同じ大きさの病変部が図4に示したように、中心部では適切に表示されるのに対して、周辺部では小さくつぶれることになる。つまり、光軸に対応する点からの距離に応じて変倍率を設定することで、通常用いられる光学系に即した変倍率の設定が可能になる。
【0075】
また、変倍処理部340は、撮像光学系の光軸に対応する点との間の距離が大きい領域を画像周辺部領域とし、撮像光学系の光軸に対応する点との間の距離が画像周辺部領域よりも小さい領域を画像中心部領域としてもよい。そして、画像周辺部領域と画像中心部領域とで異なる変倍率を設定する。
【0076】
これにより、画像周辺部領域及び画像中心部領域という2つの領域を、光軸に対応する点からの距離という観点から定義することが可能になる。つまり、図6や図7において、画像中心部領域であるか、画像周辺部領域であるかは、あくまで光軸に対応する点(outCentX,outCentY)や(0,0)に基づいて決定されるものであり、見かけ上の中心である(N/2,N/2)とは関係がないものである。これは、画像の歪みは、(outCentX,outCentY)や(0,0)に基づいて決定され、(N/2,N/2)とは関係がないことによる。
【0077】
また、上述したようにα及びγを(1/α)<γを満たす値とする。この場合、変倍処理部340は、画像周辺部領域に対応する原画像上の領域に属する画素のうち、1/γ画素に1画素の割合で抽出した画素の画素値に基づいて、変倍画像上の画像周辺部領域に属する注目画素の画素値を決定する処理を行うことで、画像周辺部領域での変倍率をγ倍に設定する。
【0078】
ここで、γは(1/α)<γという設定であるため、1より大きい可能性もあり、その場合1/γは1以下の値となる。そのためここでは、「1/γ画素に1画素の割合で抽出」する処理を以下のように定義する。まず(1/γ)>1の時には、そのまま間引き処理を行う。そして、(1/γ)<1の時には、1画素をγ画素に引き延ばす拡大処理を行う。例えばγ=2である場合には、「0.5画素に1画素の割合で抽出する」ことになるため、これは1画素を2画素に引き延ばす拡大処理を行えばよい。なお、これらの処理は、上述したようにニアレストネイバー法等を用いて行えばよい。
【0079】
これにより、具体的な処理として、画素間引き(或いは引き延ばしによる拡大)を行うことで、変倍処理を実現することが可能になる。なお、ここで「1/γ画素に1画素の割合で抽出」する際の1/γ画素の数え方は、光軸に対応する原画像上の点から、注目画素に対応する原画像上の点を結ぶベクトル方向に算出するものとする。よって例えば、図12、図13のように光軸に対応する原画像上の点も、注目画素に対応する原画像上の点も、同一の縦軸上にあるとすれば、当該縦軸上に沿った方向において、1/γ画素に1画素の割合で抽出した画素を用いることになる。斜め方向においては例えば図18に示したように、光軸に対応する点をB1、画像周辺部領域をB2、光軸に対応する点と注目画素に対応する点を結ぶベクトルをB3とした場合には、色をつけた画素の中から、1/γ画素に1画素を抽出することになる。実際の処理は上述したように例えば、ニアレストネイバー法等を用いればよい。なお、γは上述したように1を想定しており、γ=1が成り立つ場合には、1画素あたり1画素を抽出することになり、原画像と変倍画像において画像周辺部領域の半径方向の大きさが同じ(等倍)になる。
また、上述したようにα及びβをβ<(1/α)を満たす値とする。この場合、変倍処理部340は、画像周辺部領域に対応する原画像上の領域に属する画素のうち、1/β画素に1画素の割合で抽出した画素の画素値に基づいて、変倍画像上の画像周辺部領域に属する注目画素の画素値を決定する処理を行うことで、画像周辺部領域での変倍率をβ倍に設定する。
【0080】
ここで、β<(1/α)<1であるため、上述したγのような拡大処理を考慮する必要はない。
【0081】
これにより、具体的な処理として、画素間引きを行うことで、変倍処理を実現することが可能になる。具体的な手法については、上述したγのケースと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0082】
また、撮像素子240は、原画像に対応する画像信号として、撮像光学系の歪曲収差の影響によって、原画像上の位置に応じて局所倍率が異なる画像信号を取得する。そして、変倍処理部340は、変倍画像上の注目画素に対応する原画像上の注目点の局所倍率に基づいて変倍率を設定する。
【0083】
ここで、局所倍率は、図14におけるΔd1とΔd’1の比、或いはΔd2とΔd’2の比として定義される。図14の例では実線で描かれたΔd1に関する局所倍率に比べて、点線で描かれたΔd2に関する局所倍率の方が小さくなる。
【0084】
これにより、局所倍率に基づいた変倍処理が可能になる。局所倍率の大小により、対象領域が大きく表示されるか、小さくつぶれてしまうかが決まるため、局所倍率に基づく処理を行うことで、つぶれた領域に対して適切な歪み補正を行うことが可能になる。
【0085】
また、変倍処理部340は、局所倍率が他の領域に比べて小さい領域における変倍率を、当該他の領域における変倍率に比べて大きく設定する。
【0086】
これにより、局所倍率が相対的に小さい領域、つまり小さくつぶれてしまっている領域では、局所倍率が相対的に大きい領域、つまりあまりつぶれていない領域に比べて変倍率を大きく設定できる。そのため、つぶれた領域に対して適切な歪み補正を行うことが可能になる。
【0087】
また、画像周辺部領域に対応する原画像上の注目点の局所倍率が、画像中心部領域に対応する原画像上の注目点の局所倍率に比べて小さい場合に、変倍処理部340は、画像周辺部領域の変倍率を画像中心部領域の変倍率に比べて大きく設定する。
【0088】
これにより、画像周辺部領域を画像中心部領域に比べて相対的に拡大することが可能になり、歪みを解消することができる。これは言い換えれば、局所倍率の大小によって、画像周辺部領域と画像中心部領域を定義しているとも言える。
【0089】
また、撮像装置は表示部400をさらに含んでもよい。そして変倍処理部340は、表示部に変倍画像の全体を表示する場合であっても、第1の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率をγ倍に設定する。
【0090】
これにより、画像全体を表示した上で、特定の領域(第1の処理領域)の倍率をγ倍に設定することが可能になる。γは上述してきたように1程度の値を想定している。デジタルスチルカメラの背面液晶のように、撮像光学系で取得された画像の画素数に比べて、表示部での画素数が少なくなるシステムは知られている。しかし、そのようなシステムでは、画像全体を縮小する程度は大きく(つまり変倍率はかなり小さく)、1倍に近い倍率の領域を設定することは考えられない。1倍に近い画像(撮像光学系で得られたものと同等に高精細な画像)を表示するためには当該領域のみを表示部全体に拡大して表示する等の処理が必要であった。その点、本実施形態の手法では、1倍に近い倍率の領域を設定しつつも、特定の領域だけを表示するのではなく、画像全体を表示するように他の領域の変倍率を調整することが可能である。
【0091】
また、撮像素子240は、原画像に対応する画像信号として、撮像光学系の歪曲収差の影響により歪みが生じた画像信号を取得してもよい。
【0092】
これにより、撮像素子240において、歪曲収差の影響による歪みを持つ画像を取得することが可能になる。歪曲収差については樽型等、その歪み方について広く知られているため、そのような光学的な特性を考慮することで、効率的に歪み補正を行うことが可能になる。
【0093】
また、撮像光学系は、画角が180°以上であってもよい。
【0094】
これにより、従来より広い画角の撮像光学系を用いることが可能になる。例えば内視鏡用途に用いるのであれば、大腸等のヒダの裏側にある病変部等の探索に効果を発揮する。
【0095】
また、撮像光学系の光軸を含む領域を前方領域とし、光軸に直交する軸を含む領域を側方領域とした場合に、撮像光学系は前方領域又は側方領域に設定される撮像領域を撮像可能な光学系であってもよい。
【0096】
ここで、前方領域及び側方領域は図17のように定義される。図17のC1が前方領域となり、C2及びC3が側方領域である。また、図17では平面的に描いたが、当然領域は3次元的な広がりを持っていてもよい。
【0097】
これにより、前方のみならず、側方に対しても撮像領域を設定可能になるため、広い領域を撮像することができる。
【0098】
また、撮像光学系の光軸方向と反対方向の軸を含む領域を後方領域とした場合に、撮像光学系は後方領域内に設定される撮像領域を撮像可能な光学系であってもよい。
【0099】
ここで、後方領域は図17のC4のように定義される。後方領域が3次元的な広がりを持ってもよいのは上述した例と同様である。
【0100】
これにより、後方に対しても撮像領域を設定可能になる。より広い範囲を撮像可能になるため、例えば内視鏡用途等では、病変部のサーチ等を効率的に行うことができる。
【0101】
また、変倍処理部340は、ユーザによる変倍モード切替指示に基づいて、変倍処理における処理内容を切り替えてもよい。
【0102】
これにより、ユーザの操作指示を反映した変倍処理を行うことが可能になり、より柔軟に変倍処理を行うことができる。例えば、変倍処理により画質が劣化したとしても、人の目で見てその劣化を認識できないレベルであれば、当該変倍処理は妥当なものと言える。よって、ユーザの変倍処理後の変倍画像を試験的に提示し、ユーザが許容できる範囲をユーザの目で認識した結果に基づいて設定させるような処理を行ってもよい。
【0103】
また、撮像装置は内視鏡装置であってもよい。
【0104】
これにより、上述してきた撮像装置として内視鏡装置を用いることが可能になる。内視鏡装置においては、病変部のサーチ等が行われるため、広範囲を観察することによるメリットが大きい。また、大腸のヒダ構造のように、視界を遮蔽するような構造を持つ部位が生体内にはあるため、そのような部位を観察する際には、それぞれのヒダの裏側に撮像部を挿入しなくても済むように広い画角を撮像可能であることが望ましい。本実施形態の撮像装置を内視鏡装置に用いることで上述したような要望に応えることが可能になる。
【0105】
また、以上の本実施形態は、撮像光学系により結像される被写体像から画像信号を生成する複数の画素での画像信号に基づいて原画像を取得し、原画像に対して、注目画素の位置に応じて異なる変倍率で変倍処理を行うことで、原画像の画素数よりも少ない画素数の画像である前記変倍画像を取得し、変倍処理後の画像を変倍画像として出力する撮像方法に関係する。
【0106】
これにより、撮像装置に限定されず、本実施形態の手法を用いた撮像方法を実現することが可能になる。
【0107】
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また撮像装置等の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0108】
100 光源部、110 白色光源、120 集光レンズ、200 撮像部、
210 ライトガイドファイバ、220 照明レンズ、230 対物レンズ、
240 撮像素子、300 処理部、310 AD変換部、320 画像処理部、
330 制御部、340 変倍処理部、350 出力部、400 表示部、
500 外部I/F部
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び撮像方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡システムのような撮像装置においては、例えば大腸の診断時にヒダの裏側にある病変等を見逃さないため、出来るだけ広角な光学系が望ましい。従来の内視鏡システムで使用される光学系の画角は一般的に140〜170度程度であるが、例えば特許文献1に示すような、180度以上の画角を持つ超広角の光学系を使用することで、より病変の見逃しを少なくすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−345577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、前述したような超広角の光学系においては、一般的に歪曲収差が非常に大きくなる。この結果、画像周辺部での局所的な倍率が画像中心部と比較して小さくなるため、例えば画像の周辺部に病変等が存在する場合はそのサイズが非常に小さくなってしまい、観察が困難になる。このような問題を避けるには、例えば画像の周辺部を画像処理で拡大することが考えられるが、この場合、病変のサイズは大きくなるが画像がボケてしまうため、画質が悪化するという課題があった。
【0005】
本発明の幾つかの態様によれば、第1の処理領域では、第2の処理領域に対して相対的な拡大処理を行いつつ、撮像した画像に比べて解像度の低下を抑止する撮像装置及び撮像方法等を提供することができる。
【0006】
また、本発明の幾つかの態様によれば、撮像した画像に比べて解像度を落とすことなく、局所倍率の小さい領域を局所倍率の大きい領域に対して相対的に拡大する撮像装置及び撮像方法等を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、撮像光学系により結像される被写体像から画像信号を生成する複数の画素を有する撮像素子と、前記複数の画素分の画像信号からなる原画像に対して変倍処理を施す変倍処理部と、前記変倍処理後の画像を変倍画像として出力する出力部と、を含み、前記変倍処理部は、前記変倍画像上の注目画素の位置に応じて異なる変倍率で前記変倍処理を行い、前記撮像素子は、前記複数の画素として、前記変倍画像の画素数よりも多い画素を有する撮像装置に関係する。
【0008】
本発明の一態様では、変倍処理部は変倍画像上の注目画素の位置に応じて異なる変倍率で変倍処理を行い、撮像素子は変倍画像の画素数よりも多い画素を有する。よって、原画像として変倍画像よりも画素数の多い画像を取得しつつ、位置に応じて変倍率を異ならせて変倍処理を行うことになるため、歪みを解消するとともに、位置によっては解像度を原画像に比べて落とすことなく変倍画像を取得すること等が可能になる。
【0009】
また、本発明の他の態様は、撮像光学系により結像される被写体像から画像信号を生成する複数の画素での、前記画像信号に基づいて原画像を取得し、前記原画像に対して、注目画素の位置に応じて異なる変倍率で変倍処理を行うことで、前記原画像の画素数よりも少ない画素数の画像である変倍画像を取得し、前記変倍処理後の画像を前記変倍画像として出力する撮像方法に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態のシステム構成例。
【図2】被写界深度を説明する図。
【図3】球面上の病変部1及び病変部2を撮像する例。
【図4】病変部1及び病変部2を撮像した原画像の例。
【図5】病変部1及び病変部2を撮像した原画像に対して変倍処理を施した変倍画像の例。
【図6】画像左上の点を原点に取った場合の変倍画像の例。
【図7】光軸に対応する点を原点に取った場合の変倍画像の例。
【図8】光軸に対応する点を原点に取った場合の原画像の例。
【図9】ihOutとihRatioの関係を説明する図。
【図10】shiftYとinShiftYの関係を説明する図。
【図11】バイリニア法を説明する図。
【図12】shiftX=0の場合の処理を説明するための変倍画像の例。
【図13】shiftX=0の場合の処理を説明するための原画像の例。
【図14】本実施形態における局所倍率を説明するための図。
【図15】shiftYとinShiftYの関係を説明する他の図。
【図16】従来の光学系と本実施形態の広角の光学系の特性を説明する図。
【図17】撮像光学系の光軸に対する前方領域、側方領域及び後方領域を説明する図。
【図18】画素間引き処理における対象画素を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0012】
1.本実施形態の手法
【0013】
まず、本実施形態の手法について説明する。内視鏡装置等の撮像装置では、従来の撮像光学系の画角(例えば140°〜170°)に比べて広い画角(180°以上)の光学系が用いることが考えられる。これは、大腸等の撮影を行う際に、ヒダの裏側等まで十分に撮像範囲に収まるようにすることで、従来の光学系では撮像が困難だった部位にある病変部等を撮像可能にするためのものである。
【0014】
画角の広い光学系を用いた場合には、歪曲収差等の影響が大きくなり、画像に歪みが生じる。例えば、画像の中心部に比べて周辺部がつぶれてしまうようなケースが考えられる。これに対処するため、例えば局所倍率が小さい領域(例えば周辺部)を拡大することにより、画像の歪みを解消し、見やすい画像を取得する手法が考えられる。
【0015】
しかし、このような手法ではつぶれた領域を拡大することになるため、病変サイズは大きくなるものの、拡大対象となる領域での画像の解像度が低下することになり、ボケ等の要因になってしまうという問題がある。
【0016】
そこで、本出願人は以下の手法を提案する。まず、撮像素子により撮像する画像(原画像)は、表示部に表示される画像(変倍画像)に比べて解像度が高い(画素数が多い)ものとする。そして、局所倍率が小さくつぶれてしまった領域に対しては、ほぼ1倍の倍率で変倍処理を行う。それに対して、局所倍率が大きくつぶれていない領域に対しては、β倍の倍率で縮小処理を行う。ここで、変倍画像に対する原画像の1辺の長さの比をα(上述の設定よりα>1)とすると、β<(1/α)となる。つまり、原画像の全領域に対して均等に1/α倍の縮小処理を行ったときに、変倍画像と原画像の歪み具合が同等になるのであるが、本実施形態では、周辺部では縮小度合いを小さく(望ましくは1倍に)し、中心部では1/α倍よりも縮小度合いを大きくすることで、歪みを解消している。中心部に対して周辺部を相対的に拡大するという点では、上述の手法と同様であるが、本実施形態では、原画像を解像度の高い画像としているため周辺部の倍率を等倍に近い値に設定できることになり、結果として周辺部の解像度を落とすことを抑止できるという利点がある。なお、周辺部の倍率(変倍率)は1倍そのものに限定されるわけではない。
【0017】
以下、システム構成例、画角と被写界深度の関係について説明した後、変倍処理について詳しく説明する。
【0018】
2.システム構成例
【0019】
本実施形態に係る撮像装置の具体例である内視鏡システムについて、図1を参照して説明する。本実施形態に係る内視鏡システムは、光源部100と、撮像部200と、処理部300と、表示部400と、外部I/F部500を備えている。
【0020】
光源部100は、白色光を発生する白色光源110と白色光をライトガイドファイバ210に集光するための集光レンズ120を備えている。
【0021】
撮像部200は、例えば体腔への挿入を可能にするため細長くかつ湾曲可能に形成されている。撮像部200には、光源部で集光された光を導くためのライトガイドファイバ210と、該ライトガイドファイバにより先端まで導かれてきた光を拡散させて観察対象に照射する照明レンズ220と、観察対象から戻る反射光を集光する対物レンズ230と、集光した反射光を検出するための撮像素子240を備えている。本実施の形態において、対物レンズ230は例えば画角が220度程度の超広角レンズである。撮像素子240は例えばベイヤ配列の色フィルタを持つ撮像素子である。
【0022】
処理部300はAD変換部310と、画像処理部320と、制御部330と、変倍処理部340と、出力部350を備えている。ただし、処理部300は図1の構成に限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。AD変換部310は、撮像素子240から出力されるアナログ信号をデジタルの画像信号(以下、単に画像と呼ぶ)に変換して画像処理部320に出力する。画像処理部320は、AD変換部310から出力された画像に対してホワイトバランス、デモザイキング処理、色変換、階調変換等の各種の画像処理を施し、変倍処理部340に画像を出力する。変倍処理部340は、画像処理部320から出力された画像に対して変倍処理を行い、出力部350に画像を出力する。変倍処理部340の詳細については後述する。出力部350は、変倍処理部340から出力された画像を、表示部400に対応した画像の形式(デジタル信号、アナログ信号のどちらでもよい)に変換し、表示部400に出力する。表示部400は例えば液晶モニタであり、出力部350から出力される画像を表示する。
【0023】
制御部330は、画像処理部320、変倍処理部340、外部I/F部500と双方向に接続されており、外部I/F部500からの入力情報に従ってこれらを制御する。外部I/F部500は、この撮像装置に対するユーザからの入力等を行うためのインターフェースであり、撮影の開始/終了を行うためのスタートボタンや、各種の撮影条件、表示条件を調整するための調整ボタンなどを含んで構成されている。
【0024】
3.画角と被写界深度の関係
【0025】
ここで内視鏡システムにおける、対物レンズ(以下、光学系と呼ぶ)の画角と被写界深度の関係について説明する。
【0026】
内視鏡システムにおいては、ドクターの診断に支障をきたさないため、広い被写界深度が必要である。このため、従来の内視鏡システムでは比較的Fナンバーが大きい光学系を使用して、被写界深度を広くすることでこのような性能を達成している。しかし近年、内視鏡システムにおいても数十万画素程度の高画素の撮像素子が使用されるようになっている。光学系が一定の場合、その被写界深度は許容錯乱円の大きさによって決定されるが、高画素の撮像素子では画素ピッチと共に許容錯乱円も小さくなるため撮像装置の被写界深度は狭くなる。また、被写界深度を広くするために光学系のFナンバーを大きくすると、回折の影響により光学系の結像性能が劣化する。このため、ドクターの診断に支障をきたさない被写界深度を維持するには、撮像素子の画素数にある程度の上限が存在する。
【0027】
一方、被写界深度は撮像素子の画素数や光学系のFナンバーだけでなく、光学系の焦点距離によっても大きく変動し、焦点距離が短くなるほど被写界深度は広くなる。本実施形態が備えるような超広角の光学系では、撮像素子のサイズが同じと仮定した場合、画角が140〜170度程度の従来の光学系に対して焦点距離が2/3程度になることが経験的に知られている。この結果、本実施形態のような超広角の光学系を備える内視鏡システムでは、ドクターの診断に支障をきたさない被写界深度を維持しながら、従来の内視鏡システムと比較して画素ピッチの小型化(撮像素子の高画素化)が可能になる。
【0028】
このことを説明するため、まず被写界深度について図2を用いて詳細に説明する。ここで右向きの矢印は正の値のベクトルを表し、左向きの矢印は負の値のベクトルを表している。まず光学系の後側焦点位置からXB’の位置に画素ピッチ(1画素の縦横の寸法)がPの撮像素子を配置した場合を考える。この時、撮像素子の撮像面上で光学系の結像性能が最も良くなる被写体の位置(フォーカス位置)は、光学系の前側焦点位置からXBの位置として表される。XBは以下のニュートンの結像式からXB’が決まると一義的に算出される。ここでfは光学系の焦点距離である。
【0029】
XB・XB’=-f2 ・・・・・(1)
【0030】
被写体をXBからXNの位置まで移動させると、その時の像面位置XN’は撮像面から光学系と反対方向に移動する。しかし撮像面における錯乱円の直径が、撮像装置の分解能K・P(ただしKはフィルタ配列や補間処理によって決まる係数)より小さい場合、XNの物体はピントが合っていると見なすことができる。撮像面における錯乱円の直径がK・P以下になる範囲を近点側の被写界深度と定義し、錯乱円の直径がK・Pと一致する被写体の位置を近点と呼ぶことにする。今後は近点の位置を、前側焦点位置からXNの位置として表す。遠点側も被写界深度の定義は同様であり、遠点側で錯乱円の直径がK・Pと一致する被写体の位置を遠点と呼ぶ。今後は遠点の位置を、前側焦点位置からXFの位置として表す。
【0031】
被写体が近点にある時の撮像面における錯乱円の直径は、光学系の開口数NA’ = sin u’(ここでu’は図2に示す撮像面へ入射する光線と光軸のなす角)を用いて下式(2)のように近似できる。
【0032】
錯乱円の直径=2(XN’-XB’)×NA’ ・・・・・(2)
【0033】
近点で錯乱円の直径はK・Pに一致するため、下式(3)が成り立つ。
2(XN’-XB’)・NA’=K・P ・・・・・(3)
【0034】
Fナンバーと開口数の関係式である下式(4)を用いて式(3)を変形すると、下式(5)となる。ここでFは光学系のFナンバーである。
【数1】
XN’-XB’=K・P・F ・・・・・(5)
【0035】
さらに上式(1)で示したニュートンの式を用いて上式(5)を変形すると、下式(6)に示す近点側の被写界深度の関係式が成立する。
【数2】
【0036】
近点側と同様の方法で遠点側の被写界深度の関係式を算出すると下式(7)のようになる。
【数3】
【0037】
式(6)、(7)はさらに下式(8)、(9)のように変形でき、これらを用いて近点の位置XN及び遠点の位置XFを算出できる。以下ではこの近点と遠点の間の範囲を被写界深度と呼ぶことにする。
【数4】
【数5】
【0038】
図16に上式(8)、(9)を用いて被写界深度を算出した一例を示す。ここでは従来の内視鏡システムにおける光学系の焦点距離を1.8mm、超広角の内視鏡システムにおける光学系の焦点距離を1.2mm(従来の光学系の焦点距離の2/3に相当)として計算を行った。その他の値は図16に示すとおりである。この結果、超広角の内視鏡システムでは画素ピッチが従来の内視鏡システムの半分になっているにもかかわらず、より広い被写界深度を達成できていることがわかる。ここで厳密には、画素ピッチを小さくした場合は回折の影響が大きくなるため、光学系が十分な結像性能を得るにはFナンバーを小さくする必要がある。しかし、このような調整を行った場合も、超広角の内視鏡システムでは、従来の内視鏡システムと比較して画素ピッチの小型化(撮像素子の高画素化)が可能であるという定性的な結果に変わりはない。
【0039】
4.変倍処理
【0040】
次に、本実施形態における変倍処理部340の詳細について説明する。ここでは説明を簡易にするため、撮像素子240の水平および垂直方向の画素数をα・N画素、出力部350から出力される画像の水平および垂直方向の画素数をN画素として説明を行う。出力部350から出力される画像の画素数(N画素×N画素)は、例えば表示装置400で最終的に表示される画像の画素数などから決まる値である。また、αは1よりも大きい任意の値であり、このため撮像素子240で取得される画像(α・N画素×α・N画素)は、出力部350から出力される画像(出力画像)よりも解像度の高い画像となる。
【0041】
図3は球面状の被写体の上に位置する病変部1と病変部2を、撮像部200で撮影している状態を表した図である。また、図4はこの状態で画像処理部320から変倍処理部340に出力される画像を表した図である。画像処理部320から変倍処理部340に出力される画像の画素数は、撮像素子240の画素数と同じα・N×α・N画素である。本実施形態で使用されているような超広角の光学系では、歪曲収差が非常に大きいため、画像周辺部の局所的倍率は画像中心部と比較して小さくなる。この結果、画像の周辺部に位置する病変部2は、画像の中心に位置する病変部1と比較して、画像上のサイズが非常に小さくなる。
【0042】
図14は前述した局所倍率の概念を示した図である。ここでは例えば対物レンズの入射瞳を球面状の被写体の中心付近に配置し、球面状の被写体上での微小な距離Δd1およびΔd2と、これに対応する撮像素子上の距離Δd’1およびΔd’2の比を局所倍率とすればよい。ここでΔd1とΔd2は同じ距離である。本実施形態では前述のように歪曲収差が非常に大きいため、画像周辺部の局所倍率Δd’2/Δd2は、画像中心部の局所倍率Δd’1/Δd1と比較して小さくなる。
【0043】
変倍処理部340はまず変倍処理後の画像に対して、画素値を算出したい注目画素の座標(outX,outY)を取得する。ここで変倍処理後の画像は図6に示すようにN×N画素の画像であり、(outX,outY)は左上画素を基準とした座標である。次に変倍処理部340は図7に示すように、注目画素の座標(outX,outY)を、下式(10)を用いて画像中心(光学系の光軸に対応する画像上の点)を基準とした座標(shiftX,shiftY)に変換する。ここで(outCentX,outCentY)は、変倍処理後の画像中心の座標である。
【0044】
shiftX=outX-outCentX
shiftY=outY-outCentY ・・・・・(10)
【0045】
次に変倍処理部340は、下式(11)を用いてihOutを算出する。ここでihOut_maxは変倍処理後の画像における画像中心からの最大距離であり、ihOutは画像中心から注目画素までの距離とihOut_maxとの比である。
【数6】
【0046】
次に変倍処理部340は、ihOutを用いてihRatioを算出する。ihRatioはihOutで決まる値であり、例えば図9に示すようなihOutとihRatioの関係を表すデータがLUTとしてメモリに保存されている。このLUT用いて線形補間等の処理を行うことで、すべてのihOutの値に対応するihRatioを算出することができる。
【0047】
次に変倍処理部340は、算出したihRatioから下式(12)を用いて、変倍処理後の画像の座標(shiftX,shiftY)に対応する変倍処理前の画像の座標(inShiftX,inShiftY)を算出する。(inShiftX,inShiftY)は、図8に示すように変倍処理前の画像中心を基準とした座標である。
【0048】
inShiftX=shiftX*ihRatio*α
inShiftY=shiftY*ihRatio*α ・・・・・(12)
【0049】
次に変倍処理部340は、算出した座標(inShiftX,inShiftY)を、下式(13)を用いて、画像の左上画素を基準とした座標(inX,inY)に変換する。ここで(inCentX,inCentY)は、変倍処理前の画像の中心座標である。この座標(inX,inY)が、変倍処理後の注目画素の座標(outX,outY)に対応する変倍処理前の画像の座標である。
【0050】
inX=inShiftX+inCentX
inY=inShiftY+inCentY ・・・・・(13)
【0051】
次に変倍処理部340は、算出した変倍処理前の画像の座標(inX,inY)から、変倍処理後の注目画素(outX,outY)の画素値I(outX,outY)を算出する。ここでは例えばニアレストネイバー法やバイリニア法など補間処理を用いて注目画素の画素値を算出すればよい。ニアレストネイバー法では、例えば図11に示すように変倍処理前の画像において、算出した(inX,inY)からの距離が最も近い画素p11の画素値を変倍処理後の注目画素の画素値I(outX,outY)とすればよい。また、バイリニア法では変倍処理前の画像において、算出した(inX,inY)の周辺4画素の画素値を用いて以下の(14)式で注目画素の画素値I(outX,outY)を算出すればよい。さらに、その他の既存の補間処理を用いても、注目画素の画素値I(outX,outY)を算出することが可能であることは言うまでもない。
I(outX,outY)=(floor(inX)+1-inX)*(floor(inY)+1-inY)*p00
+(floor(inX)+1-inX)*(inY-floor(inY))*p10
+(inX-floor(inX))*(floor(inY)+1-inY)*p01
+(inX-floor(inX))*(inY-floor(inY))*p11 ・・・・・(14)
【0052】
ここで、図9に示したihOutとihRatioの関係を表すデータを算出するための手法について説明する。ここでは説明を簡単にするため、shiftX=0とした場合のshiftYと、それに対応するinShiftYを用いて説明を行う。図10は本実施形態において、shiftX=0とした場合のshiftYと、それに対応するinShiftYの関係を示した図である。式(12)から分かるようにshiftX=0とした場合はinShiftX=0となる。このため図10は図12と図13に示すように画像中心を基準とした垂直方向の直線上でのshiftYとinShiftYの関係を示している。ここでshiftYは、画像中心を基準とした変倍処理後の画像の座標であるから、取りうる値は0からN/2の範囲の値である。またinShiftYは、画像中心を基準とした変倍処理前の画像の座標であるから、取りうる値は0から(α・N)/2の範囲の値である。
【0053】
本実施形態では、画像の周辺部に位置する病変部2の画像上のサイズが相対的に拡大され、なおかつ拡大処理に伴う解像力の劣化がほとんど無い出力画像を得ることを目的としている。この様な目的を達成するため、本実施形態では、図9に示す画像周辺部においては変倍率が1となるように、画像中心部においては変倍率がβとなるように、ihOutに対応するihRatioの値を決定している。ここでβは1/αよりも小さな任意の正の値である。また、変倍率とは、変倍処理後の画像に対する変倍処理前の画像の、半径方向(注目画素から画像中心に向かう方向)における画素数の比を示している。すなわち、例えば変倍率が1であれば変倍処理後の画像と変倍処理前の画像の半径方向の画素数は同じであり、変倍率が0.5であれば変倍処理後の画像の半径方向の画素数は変倍処理前の画像の半分となる。
【0054】
まず画像周辺部では、shiftYの値がN/2-iの時にinShiftYの値が(α・N)/2-iとなるようにihRatioの値を算出する。ここでiは任意の正の数である。このようにihRatioを算出することで、画像周辺部においては変倍処理前の画像の半径方向の画素数と、変倍処理後の画像の半径方向の画素数が等しくなるため、変倍処理後の画像の解像力は変倍処理前の画像の解像力と等しくなる。具体的には、式(12)のinShiftYに(α・N)/2-iを代入し、shiftYにN/2-iを代入して式の変形を行うことで、任意の値iに対するihRatioは下式(15)で与えられる。
【数7】
【0055】
次に画像中心部では、shiftYの値がβ・iの時にinShiftYの値がiとなるようにihRatioの値を算出する。ここでiは任意の正の数である。このようにihRatioを算出することで、画像中心部においては変倍処理後の画像の半径方向の画素数が、変倍処理前の画像の半径方向の画素数のβ倍になる(β倍の縮小処理が行われる)ため、変倍処理後の画像の解像力は変倍処理前の画像の解像力のβ倍になる。具体的には、(12)式のinShiftYにiを代入し、shiftYにβ・iを代入して式の変形を行うことで、任意の値iに対するihRatioは下式(16)で与えられる。
【数8】
【0056】
また、画像中心部と画像周辺部の間の範囲におけるihRatioの値は、変倍処理後の画像が不自然な画像とならないように、例えば図9に示したようにihRatioが連続的に変化するような直線でつなげばよい。
【0057】
本実施形態では、画像中心に対して軸対象に同様の処理が行われるため、変倍処理後の画像は図5に示すように画像中心部では変倍処理前の画像が縮小され、画像周辺部では変倍処理前の解像力が維持されたような画像となる。このため表示部400で表示される画像は、画像中心部と比べて相対的に画像周辺部が拡大されながら、拡大処理に伴う解像力の劣化が無い画像となる。この結果、画像周辺部に病変が位置する場合も、ユーザは光学系の歪曲収差の影響が低減された、高画質な画像を観察することが可能になる。
【0058】
さらに本実施形態では、図9に示したihOutとihRatioの関係を表すLUTの値を調整することで、変倍処理後の画像中心部と画像周辺部の倍率をそれぞれ調整することが可能である。ここでは例えば画像周辺部において、変倍処理後の画像が変倍処理前の画像よりも大きく拡大されるような(変倍率が1より大きくなるような)変倍処理を行っても良い。この場合は、画像周辺部の解像力が変倍前の画像の解像力よりも向上することは無いが、本実施形態のように出力部350から出力される画像の画素数よりも十分に画素数の多い撮像素子を使用することで、出力部350から出力される画像の画素数と同等以下の画素数の撮像素子を使用する場合に比べて、変倍処理後の画像周辺部の画質の劣化を低減することができる。また、本実施形態では画像中心部および画像周辺部の境界で変倍率が急峻に変化するような変倍処理となっているが、変倍率がなだらかに変化するようにihRatioの値を調整してもよい。
【0059】
さらに本実施形態では、例えば予めihOutに対するihRatioの特性が異なる幾つかのLUTを用意しておき、ユーザが外部I/F部500からモードを選択することで、異なるLUTが選択されるようにしても良い。このような処理を行うことで、ユーザの好みに応じた異なる変倍処理を行うことが可能になる。
【0060】
また、以上の説明では画像周辺部の変倍率を1倍として説明したが、これに限定されるものではない。画像周辺部の変倍率をγ倍(γは例えば0.8〜1.2倍程度の任意の値)としてもよい。この場合、画像の最周辺部(i=0の部分)では、γの値にかかわらずihRatio=1となるため、上式(12)はそのまま用いることができる。また、画像周辺部では、shiftYの値がN/2-γ・iの時にinShiftYの値が(α・N)/2-iとなるようにihRatioの値を算出する。ここでiは任意の正の数である。このようにihRatioを算出することで、画像周辺部においては変倍処理後の画像の半径方向の画素数が、変倍処理前の画像の半径方向の画素数のγ倍になる(γ倍の拡大もしくは縮小処理が行われる)。具体的には、(12)式のinShiftYに(α・N)/2-iを代入し、shiftYにN/2-γ・iを代入して式の変形を行うことで、任意の値iに対するihRatioは下式(17)で与えられる。
【数9】
【0061】
この時のshiftYとinShiftYの関係は図15のようになる。
【0062】
以上の本実施形態では、撮像装置は、図1に示したように撮像光学系により結像される被写体像から画像信号を生成する複数の画素を有する撮像素子240と、複数の画素分の画像信号からなる原画像に対して変倍処理を施す変倍処理部340と、変倍処理後の画像を変倍画像として出力する出力部350と、を含む。そして変倍処理部340は、変倍画像上の注目画素の位置に応じて異なる変倍処理を行う。また、撮像素子240は、複数の画素として変倍画像の画素数よりも多い画素を有する。
【0063】
これにより、出力される変倍画像(例えば図5)に比べて画素数の多い原画像(例えば図6)を撮像した上で、原画像に対して変倍処理を施すことで、変倍画像を取得することが可能になる。変倍処理の際に注目画素の位置に応じて異なる変倍処理(例えば変倍処理に用いられる倍率である変倍率を異ならせる等の処理)を行うことで、画像上における注目画素の位置に基づいた処理が可能になる。これは例えば、画像中心部では変倍率を小さくし、画像周辺部では変倍率を大きくする(例えば1倍等)処理等が考えられる。つまり、注目画素の位置に応じた処理を行うことで、原画像における歪みを解消した変倍画像を取得すること等が可能になる。
【0064】
その際、原画像を変倍画像よりも大きいものとしておけば、歪みによりつぶれてしまった領域を相対的に拡大する場合に、絶対的な拡大処理を行わなくてもよくなるため、対象領域の画質の劣化を抑止することができる。もし、原画像と変倍画像が同じ大きさであったら、つぶれた領域を大きく表示しようとした場合、例えば50ピクセルの領域を100ピクセルに引き延ばすような処理が必要になる。しかし、元々50ピクセル分の情報しか持っていないものを100ピクセルに引き延ばしたのでは画質が劣化することになる。その点、原画像において100ピクセルの大きさを持っていれば(原画像全体が大きいので画像の中では小さくつぶれて見える)、100ピクセルの領域をそのまま用いれば、変倍画像において100ピクセルの大きさで表示することができる(変倍画像全体が小さいので相対的に拡大される)ため、画質の劣化はない。
【0065】
また、変倍画像上の任意の一辺における画素数に対する、原画像上の対応する一辺における画素数の比をαとし、β及びγをβ<(1/α)<γを満たす値とする。この場合、変倍処理部340は、変倍画像内の第1の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率をγ倍に設定するとともに、第1の処理領域とは異なる第2の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率をβ倍に設定してもよい。
【0066】
ここでαは原画像と変倍画像の一辺の長さの比を表し、例えば原画像が200ピクセル×200ピクセルの正方形であり、変倍画像が100ピクセル×100ピクセルの正方形であるとすればαは200/100=2となる。
【0067】
これにより、第1の処理領域においては、変倍率を1/αよりも大きく設定するとともに、第2の処理領域においては、変倍率を1/αよりも小さく設定することが可能になる。原画像と変倍画像の一辺の長さの比がαであるから、原画像の全領域に対して1/α倍の倍率で変倍処理(α>1であるから実際には縮小処理)を行うことで、原画像の大きさを変倍画像にあわせることが可能になる。しかし、全体を同じ変倍率で変倍処理しても、歪みを解消することはできない。そこで、1/α倍に対して、それよりも小さい倍率での変倍処理(強い縮小処理)をかける第2の処理領域を設けるとともに、1/α倍よりも大きい倍率での変倍処理(弱い縮小処理或いは拡大処理)をかける第1の処理領域を設ける。これにより、第1の処理領域は第2の処理領域に比べて相対的に拡大されることになり、歪みを解消することができる。
【0068】
また、δをγ>δ>βを満たす値とする。この場合、第1の処理領域及び第2の処理領域とは異なる第3の処理領域に対応する変倍率をδ倍に設定してもよい。
【0069】
これにより、変倍率を2通りに限定することなく、領域の位置に応じて柔軟に設定することが可能になる。よって、領域の境目等における画像の急激な変化等を抑止し、見やすい画像を提供すること等ができる。
【0070】
また、変倍処理部340は、第1の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率γとして、1を含む所定の数値範囲において設定される値を用いてもよい。具体的には例えば、0.5〜2.0の範囲において設定される値を用いてもよい。望ましくは例えば、0.8〜1.2の範囲において設定される値を用いる。
【0071】
これにより、γとして1或いはそれに近い値を用いることが可能になる。γ=1とは第1の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率を1とすることであるから、第1の処理領域では、原画像と変倍画像で半径方向の画素数が等しくなる。このため、画質の劣化や情報の欠落を抑止することができる。ただし、γは1に限定されるものではなく、変倍画像の画質が大きく劣化しない範囲において変更可能である。例えば、ある程度の縮小(捨てられる画素が生じるため、情報の欠落につながる)を行ってもよいし、ある程度の拡大(画像を引き延ばすことになるため、画質の劣化につながる)を行ってもよい。
【0072】
また、変倍処理部340は、注目画素と、撮像光学系の光軸に対応する変倍画像上の点との間の距離に基づいて、注目画素の位置における変倍率を設定してもよい。
【0073】
ここで、撮像光学系の光軸に対応する変倍画像上の点とは、一般的には変倍画像の中心点に相当する。図6における(outCentX,outCentY)或いは、図7における(0,0)のことである。ただし、これに限定されるものではない。
【0074】
これにより、光軸に対応する点と、注目画素との間の距離に応じて変倍率を設定することが可能になる。現在用いられる画角の広い光学系(例えば魚眼レンズ等)では、光軸に対応する点に近い領域に比べて、遠い領域の方が歪曲収差等の影響を受け小さくつぶれてしまう。例えば、本来同じ大きさの病変部が図4に示したように、中心部では適切に表示されるのに対して、周辺部では小さくつぶれることになる。つまり、光軸に対応する点からの距離に応じて変倍率を設定することで、通常用いられる光学系に即した変倍率の設定が可能になる。
【0075】
また、変倍処理部340は、撮像光学系の光軸に対応する点との間の距離が大きい領域を画像周辺部領域とし、撮像光学系の光軸に対応する点との間の距離が画像周辺部領域よりも小さい領域を画像中心部領域としてもよい。そして、画像周辺部領域と画像中心部領域とで異なる変倍率を設定する。
【0076】
これにより、画像周辺部領域及び画像中心部領域という2つの領域を、光軸に対応する点からの距離という観点から定義することが可能になる。つまり、図6や図7において、画像中心部領域であるか、画像周辺部領域であるかは、あくまで光軸に対応する点(outCentX,outCentY)や(0,0)に基づいて決定されるものであり、見かけ上の中心である(N/2,N/2)とは関係がないものである。これは、画像の歪みは、(outCentX,outCentY)や(0,0)に基づいて決定され、(N/2,N/2)とは関係がないことによる。
【0077】
また、上述したようにα及びγを(1/α)<γを満たす値とする。この場合、変倍処理部340は、画像周辺部領域に対応する原画像上の領域に属する画素のうち、1/γ画素に1画素の割合で抽出した画素の画素値に基づいて、変倍画像上の画像周辺部領域に属する注目画素の画素値を決定する処理を行うことで、画像周辺部領域での変倍率をγ倍に設定する。
【0078】
ここで、γは(1/α)<γという設定であるため、1より大きい可能性もあり、その場合1/γは1以下の値となる。そのためここでは、「1/γ画素に1画素の割合で抽出」する処理を以下のように定義する。まず(1/γ)>1の時には、そのまま間引き処理を行う。そして、(1/γ)<1の時には、1画素をγ画素に引き延ばす拡大処理を行う。例えばγ=2である場合には、「0.5画素に1画素の割合で抽出する」ことになるため、これは1画素を2画素に引き延ばす拡大処理を行えばよい。なお、これらの処理は、上述したようにニアレストネイバー法等を用いて行えばよい。
【0079】
これにより、具体的な処理として、画素間引き(或いは引き延ばしによる拡大)を行うことで、変倍処理を実現することが可能になる。なお、ここで「1/γ画素に1画素の割合で抽出」する際の1/γ画素の数え方は、光軸に対応する原画像上の点から、注目画素に対応する原画像上の点を結ぶベクトル方向に算出するものとする。よって例えば、図12、図13のように光軸に対応する原画像上の点も、注目画素に対応する原画像上の点も、同一の縦軸上にあるとすれば、当該縦軸上に沿った方向において、1/γ画素に1画素の割合で抽出した画素を用いることになる。斜め方向においては例えば図18に示したように、光軸に対応する点をB1、画像周辺部領域をB2、光軸に対応する点と注目画素に対応する点を結ぶベクトルをB3とした場合には、色をつけた画素の中から、1/γ画素に1画素を抽出することになる。実際の処理は上述したように例えば、ニアレストネイバー法等を用いればよい。なお、γは上述したように1を想定しており、γ=1が成り立つ場合には、1画素あたり1画素を抽出することになり、原画像と変倍画像において画像周辺部領域の半径方向の大きさが同じ(等倍)になる。
また、上述したようにα及びβをβ<(1/α)を満たす値とする。この場合、変倍処理部340は、画像周辺部領域に対応する原画像上の領域に属する画素のうち、1/β画素に1画素の割合で抽出した画素の画素値に基づいて、変倍画像上の画像周辺部領域に属する注目画素の画素値を決定する処理を行うことで、画像周辺部領域での変倍率をβ倍に設定する。
【0080】
ここで、β<(1/α)<1であるため、上述したγのような拡大処理を考慮する必要はない。
【0081】
これにより、具体的な処理として、画素間引きを行うことで、変倍処理を実現することが可能になる。具体的な手法については、上述したγのケースと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0082】
また、撮像素子240は、原画像に対応する画像信号として、撮像光学系の歪曲収差の影響によって、原画像上の位置に応じて局所倍率が異なる画像信号を取得する。そして、変倍処理部340は、変倍画像上の注目画素に対応する原画像上の注目点の局所倍率に基づいて変倍率を設定する。
【0083】
ここで、局所倍率は、図14におけるΔd1とΔd’1の比、或いはΔd2とΔd’2の比として定義される。図14の例では実線で描かれたΔd1に関する局所倍率に比べて、点線で描かれたΔd2に関する局所倍率の方が小さくなる。
【0084】
これにより、局所倍率に基づいた変倍処理が可能になる。局所倍率の大小により、対象領域が大きく表示されるか、小さくつぶれてしまうかが決まるため、局所倍率に基づく処理を行うことで、つぶれた領域に対して適切な歪み補正を行うことが可能になる。
【0085】
また、変倍処理部340は、局所倍率が他の領域に比べて小さい領域における変倍率を、当該他の領域における変倍率に比べて大きく設定する。
【0086】
これにより、局所倍率が相対的に小さい領域、つまり小さくつぶれてしまっている領域では、局所倍率が相対的に大きい領域、つまりあまりつぶれていない領域に比べて変倍率を大きく設定できる。そのため、つぶれた領域に対して適切な歪み補正を行うことが可能になる。
【0087】
また、画像周辺部領域に対応する原画像上の注目点の局所倍率が、画像中心部領域に対応する原画像上の注目点の局所倍率に比べて小さい場合に、変倍処理部340は、画像周辺部領域の変倍率を画像中心部領域の変倍率に比べて大きく設定する。
【0088】
これにより、画像周辺部領域を画像中心部領域に比べて相対的に拡大することが可能になり、歪みを解消することができる。これは言い換えれば、局所倍率の大小によって、画像周辺部領域と画像中心部領域を定義しているとも言える。
【0089】
また、撮像装置は表示部400をさらに含んでもよい。そして変倍処理部340は、表示部に変倍画像の全体を表示する場合であっても、第1の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率をγ倍に設定する。
【0090】
これにより、画像全体を表示した上で、特定の領域(第1の処理領域)の倍率をγ倍に設定することが可能になる。γは上述してきたように1程度の値を想定している。デジタルスチルカメラの背面液晶のように、撮像光学系で取得された画像の画素数に比べて、表示部での画素数が少なくなるシステムは知られている。しかし、そのようなシステムでは、画像全体を縮小する程度は大きく(つまり変倍率はかなり小さく)、1倍に近い倍率の領域を設定することは考えられない。1倍に近い画像(撮像光学系で得られたものと同等に高精細な画像)を表示するためには当該領域のみを表示部全体に拡大して表示する等の処理が必要であった。その点、本実施形態の手法では、1倍に近い倍率の領域を設定しつつも、特定の領域だけを表示するのではなく、画像全体を表示するように他の領域の変倍率を調整することが可能である。
【0091】
また、撮像素子240は、原画像に対応する画像信号として、撮像光学系の歪曲収差の影響により歪みが生じた画像信号を取得してもよい。
【0092】
これにより、撮像素子240において、歪曲収差の影響による歪みを持つ画像を取得することが可能になる。歪曲収差については樽型等、その歪み方について広く知られているため、そのような光学的な特性を考慮することで、効率的に歪み補正を行うことが可能になる。
【0093】
また、撮像光学系は、画角が180°以上であってもよい。
【0094】
これにより、従来より広い画角の撮像光学系を用いることが可能になる。例えば内視鏡用途に用いるのであれば、大腸等のヒダの裏側にある病変部等の探索に効果を発揮する。
【0095】
また、撮像光学系の光軸を含む領域を前方領域とし、光軸に直交する軸を含む領域を側方領域とした場合に、撮像光学系は前方領域又は側方領域に設定される撮像領域を撮像可能な光学系であってもよい。
【0096】
ここで、前方領域及び側方領域は図17のように定義される。図17のC1が前方領域となり、C2及びC3が側方領域である。また、図17では平面的に描いたが、当然領域は3次元的な広がりを持っていてもよい。
【0097】
これにより、前方のみならず、側方に対しても撮像領域を設定可能になるため、広い領域を撮像することができる。
【0098】
また、撮像光学系の光軸方向と反対方向の軸を含む領域を後方領域とした場合に、撮像光学系は後方領域内に設定される撮像領域を撮像可能な光学系であってもよい。
【0099】
ここで、後方領域は図17のC4のように定義される。後方領域が3次元的な広がりを持ってもよいのは上述した例と同様である。
【0100】
これにより、後方に対しても撮像領域を設定可能になる。より広い範囲を撮像可能になるため、例えば内視鏡用途等では、病変部のサーチ等を効率的に行うことができる。
【0101】
また、変倍処理部340は、ユーザによる変倍モード切替指示に基づいて、変倍処理における処理内容を切り替えてもよい。
【0102】
これにより、ユーザの操作指示を反映した変倍処理を行うことが可能になり、より柔軟に変倍処理を行うことができる。例えば、変倍処理により画質が劣化したとしても、人の目で見てその劣化を認識できないレベルであれば、当該変倍処理は妥当なものと言える。よって、ユーザの変倍処理後の変倍画像を試験的に提示し、ユーザが許容できる範囲をユーザの目で認識した結果に基づいて設定させるような処理を行ってもよい。
【0103】
また、撮像装置は内視鏡装置であってもよい。
【0104】
これにより、上述してきた撮像装置として内視鏡装置を用いることが可能になる。内視鏡装置においては、病変部のサーチ等が行われるため、広範囲を観察することによるメリットが大きい。また、大腸のヒダ構造のように、視界を遮蔽するような構造を持つ部位が生体内にはあるため、そのような部位を観察する際には、それぞれのヒダの裏側に撮像部を挿入しなくても済むように広い画角を撮像可能であることが望ましい。本実施形態の撮像装置を内視鏡装置に用いることで上述したような要望に応えることが可能になる。
【0105】
また、以上の本実施形態は、撮像光学系により結像される被写体像から画像信号を生成する複数の画素での画像信号に基づいて原画像を取得し、原画像に対して、注目画素の位置に応じて異なる変倍率で変倍処理を行うことで、原画像の画素数よりも少ない画素数の画像である前記変倍画像を取得し、変倍処理後の画像を変倍画像として出力する撮像方法に関係する。
【0106】
これにより、撮像装置に限定されず、本実施形態の手法を用いた撮像方法を実現することが可能になる。
【0107】
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また撮像装置等の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0108】
100 光源部、110 白色光源、120 集光レンズ、200 撮像部、
210 ライトガイドファイバ、220 照明レンズ、230 対物レンズ、
240 撮像素子、300 処理部、310 AD変換部、320 画像処理部、
330 制御部、340 変倍処理部、350 出力部、400 表示部、
500 外部I/F部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系により結像される被写体像から画像信号を生成する複数の画素を有する撮像素子と、
前記複数の画素分の画像信号からなる原画像に対して変倍処理を施す変倍処理部と、
前記変倍処理後の画像を変倍画像として出力する出力部と、
を含み、
前記変倍処理部は、
前記変倍画像上の注目画素の位置に応じて異なる変倍率で前記変倍処理を行い、
前記撮像素子は、
前記複数の画素として、前記変倍画像の画素数よりも多い画素を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記変倍画像上の任意の一辺における画素数に対する、前記原画像上の対応する一辺における画素数の比をαとし、β及びγをβ<(1/α)<γを満たす値とした場合に、
前記変倍処理部は、
前記変倍画像内の第1の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率をγ倍に設定するとともに、前記第1の処理領域とは異なる前記変倍画像内の第2の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率をβ倍に設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項2において、
δをγ>δ>βを満たす値とした場合に、
前記変倍処理部は、
前記第1の処理領域及び前記第2の領域以外の領域である第3の処理領域に対応する変倍率をδ倍に設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記変倍処理部は、
前記第1の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率γとして、1を含む所定の数値範囲において設定される値を用いることを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記変倍処理部は、
前記第1の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率γとして、0.5〜2.0の範囲において設定される値を用いることを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記変倍処理部は、
前記第1の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率γとして、0.8〜1.2の範囲において設定される値を用いることを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記変倍処理部は、
前記注目画素と前記撮像光学系の光軸に対応する変倍画像上の点との間の距離に基づいて、前記注目画素の位置での変倍率を設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記変倍処理部は、
前記注目画素と前記撮像光学系の光軸に対応する前記変倍画像上の点との間の距離が大きい領域を画像周辺部領域とし、前記注目画素と前記撮像光学系の光軸に対応する変倍画像上の点との間の距離が前記画像周辺部領域に比べて小さい領域を画像中心部領域として、前記画像周辺部領域と前記画像中心部領域とで異なる変倍率を設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記変倍画像上の任意の一辺における画素数に対する、前記原画像上の対応する一辺における画素数の比をαとし、γを(1/α)<γを満たす値とした場合に、
前記変倍処理部は、
前記画像周辺部領域に対応する前記原画像上の領域に属する画素のうち、1/γ画素に1画素の割合で抽出した画素の画素値に基づいて、前記変倍画像上の前記画像周辺部領域に属する注目画素の画素値を決定する処理を行うことで、前記画像周辺部領域での変倍率をγ倍に設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項8において、
前記変倍画像上の任意の一辺における画素数に対する、前記原画像上の対応する一辺における画素数の比をαとし、βをβ<(1/α)を満たす値とした場合に、
前記変倍処理部は、
前記画像中心部領域に対応する前記原画像上の領域に属する画素のうち、1/β画素に1画素の割合で抽出した画素の画素値に基づいて、前記変倍画像上の前記画像中心部領域に属する注目画素の画素値を決定する処理を行うことで、前記画像中心部領域での変倍率をβ倍に設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項11】
請求項1において、
前記撮像素子は、
前記原画像に対応する画像信号として、前記撮像光学系の歪曲収差の影響によって、前記原画像上の位置に応じて前記撮像光学系の局所的な倍率である局所倍率が異なる画像信号を取得し、
前記変倍処理部は、
前記変倍画像上の注目画素に対応する前記原画像上の注目点の局所倍率に基づいて、前記注目画素の変倍率を設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項12】
請求項11において、
前記変倍処理部は、
前記変倍画像上の注目画素に対応する前記原画像上の注目点の局所倍率が、前記原画像上の他の領域での前記局所倍率より小さい場合に、前記変倍処理の前記変倍率を前記原画像上の他の領域に比べて大きく設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項13】
請求項12において、
前記変倍画像上の周辺部に位置する注目画素に対応する前記原画像上の注目点の局所倍率が、前記変倍画像上の中心部に位置する注目画素に対応する前記原画像上の注目点の局所倍率よりも小さい場合に、
前記変倍処理部は、
前記変倍画像の周辺部に位置する前記注目画素の変倍率の値を、前記変倍画像の中央部に位置する前記処理領域の変倍率の値よりも大きくすることを特徴とする撮像装置。
【請求項14】
請求項2において、
前記変倍画像を表示する表示部をさらに含み、
前記変倍処理部は、
前記表示部に前記変倍画像の全体を表示する場合であっても、前記第1の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率を前記γ倍に設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項15】
請求項1において、
前記撮像素子は、
前記原画像に対応する画像信号として、前記撮像光学系の歪曲収差の影響により歪みが生じた画像信号を取得することを特徴とする撮像装置。
【請求項16】
請求項1において、
前記撮像光学系は、画角が180度以上であることを特徴とする撮像装置。
【請求項17】
請求項1において、
前記撮像光学系の光軸を含む領域を前方領域とし、前記光軸に直交する軸を含む領域を側方領域とした場合に、
前記撮像光学系は、
前記前方領域又は前記側方領域内に設定される撮像領域を撮像可能な光学系であることを特徴とする撮像装置。
【請求項18】
請求項17において、
前記撮像光学系の光軸方向と反対方向の軸を含む領域を後方領域とした場合に、
前記撮像光学系は、
前記後方領域内に設定される撮像領域を撮像可能な光学系であることを特徴とする撮像装置。
【請求項19】
請求項1において、
前記変倍処理部は、
ユーザによる変倍モード切り替え指示に基づいて前記変倍処理における処理内容を切り替えることを特徴とする撮像装置。
【請求項20】
請求項1において、
前記撮像装置は、内視鏡装置であることを特徴とする撮像装置。
【請求項21】
撮像光学系により結像される被写体像から画像信号を生成する複数の画素での、前記画像信号に基づいて原画像を取得し、
前記原画像に対して、注目画素の位置に応じて異なる変倍率で変倍処理を行うことで、前記原画像の画素数よりも少ない画素数の画像である変倍画像を取得し、
前記変倍処理後の画像を前記変倍画像として出力することを特徴とする撮像方法。
【請求項22】
請求項21において、
前記変倍画像上の任意の一辺における画素数に対する、前記原画像上の対応する一辺における画素数の比をαとし、β及びγをβ<(1/α)<γを満たす値とした場合に、
前記変倍画像内の第1の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率をγ倍に設定し、
前記第1の処理領域とは異なる前記変倍画像内の第2の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率をβ倍に設定することを特徴とする撮像方法。
【請求項1】
撮像光学系により結像される被写体像から画像信号を生成する複数の画素を有する撮像素子と、
前記複数の画素分の画像信号からなる原画像に対して変倍処理を施す変倍処理部と、
前記変倍処理後の画像を変倍画像として出力する出力部と、
を含み、
前記変倍処理部は、
前記変倍画像上の注目画素の位置に応じて異なる変倍率で前記変倍処理を行い、
前記撮像素子は、
前記複数の画素として、前記変倍画像の画素数よりも多い画素を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記変倍画像上の任意の一辺における画素数に対する、前記原画像上の対応する一辺における画素数の比をαとし、β及びγをβ<(1/α)<γを満たす値とした場合に、
前記変倍処理部は、
前記変倍画像内の第1の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率をγ倍に設定するとともに、前記第1の処理領域とは異なる前記変倍画像内の第2の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率をβ倍に設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項2において、
δをγ>δ>βを満たす値とした場合に、
前記変倍処理部は、
前記第1の処理領域及び前記第2の領域以外の領域である第3の処理領域に対応する変倍率をδ倍に設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記変倍処理部は、
前記第1の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率γとして、1を含む所定の数値範囲において設定される値を用いることを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記変倍処理部は、
前記第1の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率γとして、0.5〜2.0の範囲において設定される値を用いることを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記変倍処理部は、
前記第1の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率γとして、0.8〜1.2の範囲において設定される値を用いることを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記変倍処理部は、
前記注目画素と前記撮像光学系の光軸に対応する変倍画像上の点との間の距離に基づいて、前記注目画素の位置での変倍率を設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記変倍処理部は、
前記注目画素と前記撮像光学系の光軸に対応する前記変倍画像上の点との間の距離が大きい領域を画像周辺部領域とし、前記注目画素と前記撮像光学系の光軸に対応する変倍画像上の点との間の距離が前記画像周辺部領域に比べて小さい領域を画像中心部領域として、前記画像周辺部領域と前記画像中心部領域とで異なる変倍率を設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記変倍画像上の任意の一辺における画素数に対する、前記原画像上の対応する一辺における画素数の比をαとし、γを(1/α)<γを満たす値とした場合に、
前記変倍処理部は、
前記画像周辺部領域に対応する前記原画像上の領域に属する画素のうち、1/γ画素に1画素の割合で抽出した画素の画素値に基づいて、前記変倍画像上の前記画像周辺部領域に属する注目画素の画素値を決定する処理を行うことで、前記画像周辺部領域での変倍率をγ倍に設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項8において、
前記変倍画像上の任意の一辺における画素数に対する、前記原画像上の対応する一辺における画素数の比をαとし、βをβ<(1/α)を満たす値とした場合に、
前記変倍処理部は、
前記画像中心部領域に対応する前記原画像上の領域に属する画素のうち、1/β画素に1画素の割合で抽出した画素の画素値に基づいて、前記変倍画像上の前記画像中心部領域に属する注目画素の画素値を決定する処理を行うことで、前記画像中心部領域での変倍率をβ倍に設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項11】
請求項1において、
前記撮像素子は、
前記原画像に対応する画像信号として、前記撮像光学系の歪曲収差の影響によって、前記原画像上の位置に応じて前記撮像光学系の局所的な倍率である局所倍率が異なる画像信号を取得し、
前記変倍処理部は、
前記変倍画像上の注目画素に対応する前記原画像上の注目点の局所倍率に基づいて、前記注目画素の変倍率を設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項12】
請求項11において、
前記変倍処理部は、
前記変倍画像上の注目画素に対応する前記原画像上の注目点の局所倍率が、前記原画像上の他の領域での前記局所倍率より小さい場合に、前記変倍処理の前記変倍率を前記原画像上の他の領域に比べて大きく設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項13】
請求項12において、
前記変倍画像上の周辺部に位置する注目画素に対応する前記原画像上の注目点の局所倍率が、前記変倍画像上の中心部に位置する注目画素に対応する前記原画像上の注目点の局所倍率よりも小さい場合に、
前記変倍処理部は、
前記変倍画像の周辺部に位置する前記注目画素の変倍率の値を、前記変倍画像の中央部に位置する前記処理領域の変倍率の値よりも大きくすることを特徴とする撮像装置。
【請求項14】
請求項2において、
前記変倍画像を表示する表示部をさらに含み、
前記変倍処理部は、
前記表示部に前記変倍画像の全体を表示する場合であっても、前記第1の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率を前記γ倍に設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項15】
請求項1において、
前記撮像素子は、
前記原画像に対応する画像信号として、前記撮像光学系の歪曲収差の影響により歪みが生じた画像信号を取得することを特徴とする撮像装置。
【請求項16】
請求項1において、
前記撮像光学系は、画角が180度以上であることを特徴とする撮像装置。
【請求項17】
請求項1において、
前記撮像光学系の光軸を含む領域を前方領域とし、前記光軸に直交する軸を含む領域を側方領域とした場合に、
前記撮像光学系は、
前記前方領域又は前記側方領域内に設定される撮像領域を撮像可能な光学系であることを特徴とする撮像装置。
【請求項18】
請求項17において、
前記撮像光学系の光軸方向と反対方向の軸を含む領域を後方領域とした場合に、
前記撮像光学系は、
前記後方領域内に設定される撮像領域を撮像可能な光学系であることを特徴とする撮像装置。
【請求項19】
請求項1において、
前記変倍処理部は、
ユーザによる変倍モード切り替え指示に基づいて前記変倍処理における処理内容を切り替えることを特徴とする撮像装置。
【請求項20】
請求項1において、
前記撮像装置は、内視鏡装置であることを特徴とする撮像装置。
【請求項21】
撮像光学系により結像される被写体像から画像信号を生成する複数の画素での、前記画像信号に基づいて原画像を取得し、
前記原画像に対して、注目画素の位置に応じて異なる変倍率で変倍処理を行うことで、前記原画像の画素数よりも少ない画素数の画像である変倍画像を取得し、
前記変倍処理後の画像を前記変倍画像として出力することを特徴とする撮像方法。
【請求項22】
請求項21において、
前記変倍画像上の任意の一辺における画素数に対する、前記原画像上の対応する一辺における画素数の比をαとし、β及びγをβ<(1/α)<γを満たす値とした場合に、
前記変倍画像内の第1の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率をγ倍に設定し、
前記第1の処理領域とは異なる前記変倍画像内の第2の処理領域に属する注目画素の位置における変倍率をβ倍に設定することを特徴とする撮像方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−222658(P2012−222658A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87477(P2011−87477)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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