説明

撮像装置

【課題】光学特性や内部構成に影響を受けることのない光学素子を備えた撮像装置を提供する。
【解決手段】本発明に係わる撮像装置(10)は、入射した被写体光を光電変換する撮像素子(22)と、当該撮像素子よりも被写体側に配置された光学ローパスフィルタ(23)と、当該光学ローパスフィルタよりも被写体側に配置された光学素子(24)と、電圧の印加により前記光学素子を振動させる振動発生手段(27)と、を備えた撮像装置であって、前記光学素子(24)は、単結晶の水晶からなる波長板であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラなどの撮像装置では、レンズ交換などの際に侵入する塵埃やカメラ内の駆動部品から発生する磨耗粉(以下、異物という)が、撮像素子の前方に配置された光学ローパスフィルタ(以下、OLPFという)の表面に付着し、撮像素子で撮影した画像に写り込んでしまうという問題が生じていた。
【0003】
そこで、OLPFの更に前方に配置した防塵用の光学素子を振動させることにより、撮像素子に写り込む異物を除去するようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−293097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記光学素子として、ガラスを使用した機種がある。一般に、ガラスは強度が低いため、光学素子として振動させるには板厚を厚くする必要がある。しかし、ガラスの板厚を厚くすると、振動が伝わりにくくなるため、異物の除去が難しくなる。また、ガラス表面に形成されるコーティング膜は、肉眼では見えない表面の汚れを見えやすくしてしまい、光学特性に影響を与える。
【0006】
また、上記光学素子として、水晶複屈折板を使用した機種がある。水晶複屈折板は、ガラスよりも強度は高いが、OLPFの前側に配置するに際しては光軸方向を考慮する必要があるため、光学設計に制約を受ける。また、水晶屈折板は、入射する光をすべて直線偏光するため、後方に配置されるOLPFの構成に制約を受ける。
【0007】
本発明の課題は、光学特性や内部構成に影響を受けることのない光学素子を備えた撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1に記載の発明は、入射した被写体光を光電変換する撮像素子(22)と、当該撮像素子よりも被写体側に配置された光学ローパスフィルタ(23)と、当該光学ローパスフィルタよりも被写体側に配置された光学素子(24)と、電圧の印加により前記光学素子を振動させる振動発生手段(27)と、を備えた撮像装置(10)であって、前記光学素子は、単結晶の水晶からなる波長板であることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の撮像装置(10)であって、前記波長板は、位相差が90度であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の撮像装置(10)であって、前記波長板は、被写体側の表面に可視光のみを透過するコーティング膜が形成されていることを特徴とする。
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光学特性や内部構成に影響を受けることのない光学素子を備えた撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態のカメラを示す図である。(A)は光軸Aにおけるカメラの横断面図である。(B)は光軸Aにおけるカメラの縦断面図である。
【図2】撮像ユニットの構成を示す概略図である。
【図3】振動板を被写体側から光軸Aに沿って見たときの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係わる撮像装置をデジタルカメラに適用した場合の実施形態について説明する。なお、以下に示す各図には、説明と理解とを容易にするために、XYZの直交座標系を設けた。この座標系では、撮影者が光軸Aを水平として横長の画像を撮影する場合のカメラ位置(以下、正位置という)において撮影者から見て右側に向かう方向をXプラス方向とする。また、正位置において上側に向かう方向をYプラス方向とする。さらに、正位置において被写体に向かう方向をZ方向とする。
【0012】
図1は、本実施形態のカメラ1を示す図である。図1(A)は、光軸Aにおけるカメラ1の横断面図であり、図1(B)は、光軸Aにおけるカメラ1の縦断面図である。
【0013】
カメラ1は、撮像装置としてのカメラボディ10と、レンズ鏡筒50と、を備える。本実施形態のカメラ1は、カメラボディ10に対してレンズ鏡筒50が着脱可能なレンズ交換式のデジタルカメラである。なお、図1において、レンズ鏡筒50のレンズLは、レンズを簡略化して描いている。また、レンズLは、実際には複数のレンズにより構成される。
【0014】
カメラボディ10は、ミラーユニット11と、ファインダスクリーン12と、ペンタミラー12aと、接眼レンズ14と、測光素子15と、AF検出素子16と、シャッタ17と、シーケンスモータ18と、表示部19と、撮像ユニット20と、を備える。
【0015】
ミラーユニット11は、メインミラー11aと、サブミラー11bとを備える。メインミラー11aは、撮影光路内に配置され被写体光をペンタミラー12aの方向へ反射する観察位置(図中実線で示す位置)と、撮影光路内から退避した退避位置(図中2点鎖線で示す位置)との間で、回動可能に構成されている。メインミラー11aは、被写体観察時には観察位置に配置され、一方、撮影時には退避位置に配置される。メインミラー11aは、その中心付近がハーフミラーになっている。
【0016】
サブミラー11bは、メインミラー11aが観察位置にあるときに、ハーフミラーを通過した被写体光をAF検出素子16の方向へ反射する部材である。サブミラー11bは、メインミラー11aの退避にともなって、メインミラー11aの裏面に重なるように配置され、撮影光路から退避する。
【0017】
ファインダスクリーン12は、被写体観察時に、メインミラー11aから導かれた被写体光を結像する部材である。ファインダスクリーン12に結像した像は、ペンタミラー12aによって、接眼レンズ14の方向に導かれ、撮影者によって観察される。
【0018】
測光素子15は、ファインダスクリーン12に結像した像の光量を検出するセンサである。測光素子15が検出した光量の情報は、不図示のボディ制御部に出力され、撮影時の露出を決定する際に利用される。
【0019】
AF検出素子16は、被写体観察時に、サブミラー11bから導かれた被写体光に基づいて、レンズLの焦点調節状態を検出するセンサである。AF検出素子16は、サブミラー11bから導かれた被写体光を不図示のマスクにより2つに分けた後、不図示の2つのラインセンサ上に再結像させ、ラインセンサ上の像の相対的なずれ量(位相差)を算出することにより、レンズLの焦点調節状態を検出する。
【0020】
シャッタ17は、所定間隔で走行する複数のシャッタ幕を備える。シャッタ17は、レリーズボタンの操作に応じて、前記シャッタ幕を開閉して、撮像面に入射される光量を調整する。
【0021】
シーケンスモータ18は、ミラーユニット11の駆動や、シャッタ17のチャージ等を行う。
【0022】
表示部19は、カメラボディ10の背面(Zマイナス方向の面)に配置された液晶表示装置等の表示装置である。表示部19は、撮像ユニット20で撮像された撮影画像(再生画像、ライブビュー画像)や、各種設定を行うためのメニュー画面等を表示する。
【0023】
撮像ユニット20は、撮影時において、メインミラー11aが退避位置に配置されることによって、撮像素子22に結像した像を電気信号に変換して、不図示のボディ制御部に出力する装置である。撮像ユニット20の具体的な構成については後述する。
【0024】
図2は、撮像ユニット20の構成を示す概略図である。撮像ユニット20は、大別すると、撮像素子22、OLPF23と、光学素子としての振動板24と、を備える。なお、周辺部材については図示を省略する。撮像素子22は、レンズL(図1)を経て入射した被写体光を光電変換する光電変換素子である。撮像素子22は、不図示のフォトダイオード及びCCD又はCMOSなどで構成されている。
【0025】
OLPF23は、入射した被写体光から空間周波数の高い成分を除去して、被写体光を撮像素子22へ導く光学フィルタである。OLPF23は、被写体側から順に、第1複屈折板23a、赤外カットガラス23b、1/4波長板23c、第2複屈折板23dを貼り合わせて、一体の素子としたものである。なお、OLPF23を構成する各部の機能、配置は本実施形態の例に限らず、適宜に組み合わせ可能である。
【0026】
第1複屈折板23aは、単結晶の水晶からなり、最も被写体側に配置されている。第1複屈折板23aは、入射した光を、振動方向が互いに直交する2つの直線偏光成分に変換して出射する。
【0027】
赤外カットガラス23bは、入射した光から赤外線域以上の長波長の光を吸収する。本実施形態では、赤外カットガラス23bを第1複屈折板23aと1/4波長板23cとの間に配置した例を示すが、この例に限らず、OLPF23の最も被写体側でもよいし、最も撮像素子22であってもよい。
【0028】
1/4波長板23cは、単結晶の水晶からなり、赤外カットガラス23bよりも撮像素子22側に配置されている。1/4波長板23cは、第1複屈折板23aを経て入射した光に含まれる振動方向が互いに直交する2つの成分の間に90度の位相差を生じさせ、入射した光(直線偏光成分)を円偏光成分に変換して出射する。
【0029】
第2複屈折板23dは、単結晶の水晶からなり、1/4波長板23cよりも撮像素子22側に配置されている。第2複屈折板23dは、入射した光(円偏光成分)を、振動方向が互いに直交する2つの直線偏光成分に変換して出射する。
【0030】
上記のように構成されたOLPF23の被写体側の面と撮像素子22側の面には、それぞれ反射防止膜25が形成されている。
【0031】
振動板24は、単結晶の水晶からなる波長板であり、OLPF23よりも被写体側に配置されている。本実施形態の振動板24としては、入射した光に含まれる振動方向が互いに直交する2つの成分の間に90度の位相差を生じさせ、入射した光(直線偏光成分)を円偏光成分に変換して出射する1/4波長板が用いられる。また、振動板24の被写体側の面には、可視光のみを透過する可視光透過膜26が形成されている。また、撮像素子22側の面には反射防止膜25が形成されている。
【0032】
振動板24として使用される水晶は、ガラスよりも強度が高い部材である(モース硬度で水晶は7、ガラスは5〜6)。このため、ガラスよりも板厚を薄くすることができる。また、振動板24に形成されるコーティング膜は、可視光のみを透過する可視光透過膜26であるため、ガラス表面に形成されるコーティング膜のように、肉眼で見えない表面の汚れが目立つことがない。また、可視光透過膜26は、ガラス表面に形成されるコーティング膜に比べて、容易に形成することができる。更に、単結晶の水晶からなる波長板は、水晶原石の光軸と平行な方向に切り出せばよいため、水晶複屈折板に比べて水晶原石からの切り出しも容易となる。
【0033】
また、単結晶の水晶からなる波長板は、OLPF23よりも被写体側に配置する場合に光軸方向を考慮する必要がないので、水晶複屈折板のように光学設計に制約を受けることがない。更に、単結晶の水晶からなる波長板は、水晶複屈折板のように、入射する光をすべて直線偏光することがなく、ガラスとほぼ同じ光学特性と見なすことができるため、撮像素子22側に配置されるOLPF23の構成に制約を与えることがない。
【0034】
図3は、振動板24を被写体側から光軸Aに沿って見たときの正面図である。図3に示すように、振動板24は圧電素子27を備える。圧電素子27は、振動板24の被写体側表面において、X方向の一側縁部に接着により貼り付けられている。圧電素子27は、不図示の圧電素子駆動回路から特定周波数(振動板24の共振周波数)の交流電圧が印加されることにより共振して、振動板24を振動させる振動発生手段として機能する。
【0035】
圧電素子27の端部には、不図示のフレキシブルプリント基板が接続されている。このフレキシブルプリント基板は、上記圧電素子駆動回路と電気的に接続されており、圧電素子27に対して、特定周波数の交流電圧を印加する。圧電素子27に特定周波数の交流電圧が印加されると、圧電素子27の振動とともに振動板24が共振して、振動板24に振動が発生する。この振動によって振動板24の表面に付着した異物が除去されることになる。
【0036】
上記実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)光学素子としての振動板24を、単結晶の水晶からなる波長板により構成したので、振動板24をガラスで構成した場合に比べて強度を高めることができる。また、単結晶の水晶からなる波長板は、OLPF23よりも被写体側に配置する場合に光軸方向を考慮する必要がないため、水晶複屈折板のように光学設計に制約を受けることがない。更に、単結晶の水晶からなる波長板は、水晶複屈折板のように、入射する光をすべて直線偏光することがなく、ガラスとほぼ同じ光学特性と見なすことができるため、撮像素子22側に配置されるOLPF23の構成に制約を与えることがない。
したがって、本実施形態によれば、光学特性や内部構成に影響を受けることのない光学素子としての振動板24を備えたカメラボディ10を提供することができる。
(2)振動板24の位相差が90度であるため、後方のOLPF23に対して最も良好な光学特性を得ることができる。
(3)振動板24に形成されるコーティング膜は、可視光のみを透過する可視光透過膜26であるため、ガラス表面にコーティング膜を形成したときのように、肉眼で見えない表面の汚れが目立つことがない。また、可視光透過膜26は、ガラス表面に形成するコーティング膜に比べて、容易に形成することができる。
(変形形態)
【0037】
以上説明した実施形態に限定されることなく、本発明は以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)振動板24の位相差は90度に限らず、0度でもよいし、45度であってもよい。
(2)圧電素子27の配置は図3の例に限らず、振動板24のY方向の一側縁部でもよいし、X方向の両側縁部や、Y方向の両側縁部に配置されていてもよい。また、圧電素子27は、振動板24の撮像素子22側表面に貼り付けられていてもよい。
(3)本発明に係わる撮像装置は、レンズ交換式のデジタルカメラに限らず、カメラボディとレンズとを一体化したカメラにも適用することができる。
【0038】
また、上記実施形態及び変形形態は適宜に組み合わせて用いることができるが、各実施形態の構成は図示と説明により明らかであるため、詳細な説明を省略する。さらに、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0039】
1:カメラ、10:カメラボディ、20:撮像ユニット、22:撮像素子、23a:第1複屈折板、23b:赤外カットガラス、23c:1/4波長板、23d:第2複屈折板、24:振動板、25:反射防止膜、26:可視光透過膜、27:圧電素子、50:レンズ鏡筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した被写体光を光電変換する撮像素子と、当該撮像素子よりも被写体側に配置された光学ローパスフィルタと、当該光学ローパスフィルタよりも被写体側に配置された光学素子と、電圧の印加により前記光学素子を振動させる振動発生手段と、を備えた撮像装置であって、
前記光学素子は、単結晶の水晶からなる波長板であることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記波長板は、位相差が90度であることを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の撮像装置であって、
前記波長板は、被写体側の表面に可視光のみを透過するコーティング膜が形成されていることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−249881(P2010−249881A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96287(P2009−96287)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】