説明

撮像装置

【課題】動画撮影時の操作音を低減して集音する撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置1には、マイク41Aが、周囲の音を検出して第1音情報を出力する。マイク41Bは、その音を検出して第2音情報を出力する。音声信号処理回路45は、第1音情報と第2音情報とを用いて、第1音情報と第2音情報とに含まれる共通の雑音信号を除去して、その音に対応した一つの音信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画撮影時に集音する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置を操作することにより生じる操作音が、集音された音に含まれることにより、動画撮影に合わせて集音するときの雑音として検出されることがある。このような雑音を低減させるための雑音低減処理を行う撮像装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−244613号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】金田、「適応形雑音抑圧マイクロホンアレー(AMNOR)の指向性特性」日本音響学会誌44巻1号、P23−30、1988.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1によると、雑音を発生する場所を予め特定し、雑音を集音するためのマイクを雑音発生部の近傍に配置している。このような雑音の検出方法では、雑音発生箇所が分散する場合では、雑音発生箇所ごとにマイクを配置することが必要になる。例えば、レンズ交換式カメラのレンズ鏡筒に設けられるオートフォーカス機能などを駆動する駆動部が雑音発生箇所となる場合には、レンズ鏡筒内にマイクを配置する必要があるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、動画撮影に合わせて集音するときの操作音を低減して集音する撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、本発明は、周囲の音を検出して第1音情報を出力する第1集音部と、前記音を検出して第2音情報を出力する、前記第1集音部とは異なる第2集音部と、前記第1音情報と前記第2音情報とを用いて、前記第1音情報と前記第2音情報とに含まれる共通の雑音信号を除去して、前記音に対応した一つの音信号を生成する信号処理部とを備える撮像装置である。
また、本発明は、上記の発明において、前記信号処理部は、前記第1音情報に含まれる前記雑音信号と前記第2音情報に含まれる前記雑音信号との時間軸上の相違量と、前記第1音情報に含まれる前記音と前記第2音情報に含まれる前記音との時間軸上の相違量との差に基づいて、前記雑音信号を除去することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記の発明において、前記信号処理部は、前記第1音情報に含まれる前記雑音信号と前記第2音情報に含まれる前記雑音信号とが同期するように、前記第1音情報と前記第2音情報とを相対的に時間シフトさせて前記雑音信号を除去することを特徴とする。
また、本発明は、上記の発明において、前記雑音信号となる雑音を発生させる雑音発生部を備え、前記信号処理部は、前記雑音発生部の位置情報に応じて前記第1音情報と前記第2音情報とを相対的に時間シフトさせることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記の発明において、前記雑音発生部の位置情報は、前記雑音発生部から前記雑音が前記第1集音部に到達するまでの伝播時間と、前記雑音発生部から前記雑音が前記第2集音部に到達するまでの伝播時間との差に基づく情報であることを特徴とする。
また、本発明は、上記の発明において、前記雑音信号は、前記撮像装置の動作による動作音に基づくものであり、前記信号処理部は、前記動作の開始又は停止の少なくとも一方に基づいて、前記雑音信号を除去することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記の発明において、前記信号処理部は、予め設定された、前記雑音信号の波形、周波数成分、音圧情報の少なくとも一つに基づいて、前記雑音信号を除去することを特徴とする。
また、本発明は、上記の発明において、前記第1集音部と前記第2集音部とは、前記撮像装置のレンズ光軸に対して略垂直な面内に配置され、前記レンズ光軸から前記第1集音部までの距離と、前記レンズ光軸から前記第2集音部までの距離とが異なることを特徴とする。
また、本発明は、上記の発明において、前記レンズ光軸に対して略垂直な面内において、前記レンズ光軸と前記第1集音部と前記第2集音部とは一つの直線上に順番に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この本発明によれば、撮像装置において、第1集音部は、周囲の音を検出して第1音情報を出力する。第1集音部とは異なる第2集音部は、その音を検出して第2音情報を出力する。信号処理部は、第1集音部とは異なる第2集音部と、前記第1音情報と前記第2音情報とを用いて、前記第1音情報と前記第2音情報とに含まれる共通の雑音信号を除去して、前記音に対応した一つの音信号を生成する。
これにより、撮像装置は、振動にともなって発生する振動発生部からの雑音を2つの集音部によって検出し、2つの音情報に含まれる共通の雑音信号を除去して、雑音を低減した音信号を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による撮像装置の外観図である。
【図2】同実施形態による撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図3】同実施形態による音声処理部の構成を示す概略ブロック図である。
【図4】同実施形態による雑音低減処理を示す図である。
【図5】同実施形態による撮像装置の外観図である。
【図6】同実施形態による撮像装置における異なる利用形態を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態による撮像装置1の外観図である。この図(a)と(b)は、撮像装置1の上面と正面を示す。
撮像装置1は、カメラ本体100と、カメラ本体100に着脱可能なレンズ鏡筒200を備えている。レンズ鏡筒200は、カメラ本体100の正面に設けられたレンズ・マウントを介して取り付けられる。
また、カメラ本体100の正面には、マイク41Aとマイク41Bが設けられる。マイク41Aとマイク41Bは、レンズ鏡筒200のレンズ光軸に対して略垂直な面内、すなわち、カメラ本体100の正面側の面に設けられる。マイク41Aとマイク41Bは、レンズ鏡筒200のレンズ光軸からマイク41Aまでの距離d1と、そのレンズ光軸からマイク41Bまでの距離d2とが異なるように配置される。
また、マイク41Aとマイク41Bは、そのレンズ光軸に対して略垂直な面内においてレンズ鏡筒200のレンズ光軸とマイク41Aとマイク41Bとは一つの直線x上に順番に配置される。
【0014】
図2は、本実施形態による撮像装置の構成を示すブロック図である。この図に示される撮像装置1は、カメラ本体100及びカメラ本体100に取り付けられるレンズ鏡筒200を備える。
撮像装置1においてレンズ鏡筒200は、光学系210、光学系駆動部220、光学系制御部230を備える。
レンズ鏡筒200における光学系210は、撮像素子8への光の出力を調整する光学素子と、その光学素子などを保護する構造を備えている。例えば、光学系210は、撮影画角を変更するズーム機能、通過する光量を調整する絞り機能、手ブレによる像揺れを補正する機能、焦点を調整する機能などを有し、それぞれの状態を検出する各種センサー、エンコーダなどが設けられる。光学系駆動部220は、制御部20からの制御信号に応じて光学系210をモーターなどのアクチュエータによって駆動して、撮像素子8への光の出力を調整する。光学系制御部230は、光学系210に設けられた各種センサー、エンコーダの情報を収集し、制御部20に通知する。光学系制御部230から通知される情報には、レンズ鏡筒200の種別を示すレンズ種別情報、レンズ焦点距離情報、絞り機能によって設定された絞り値、レンズ鏡筒200に設けられた距離環に基づく被写体距離情報などがある。
【0015】
撮像装置1においてカメラ本体100は、撮像処理部10、不揮発メモリー11、バッファメモリー12、操作検出回路13、モニター制御回路14、モニター15、メモリー制御回路16、メモリー17、制御部20及び音声処理部40を備える。
カメラ本体100における撮像処理部10は、撮像素子制御回路7、撮像素子8及び映像回路9を備える。撮像素子8は、CCD(Charge Coupled Device)或いはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサーなどの受光素子であり、光学系210から出力され結像された像を電気信号に変換してアナログの画像信号を出力する。撮像素子8には、映像回路9と、撮像素子制御回路7とが接続されている。映像回路9は、撮像素子8が出力する画像信号を増幅し、デジタル信号に変換する。撮像素子制御回路7は、撮像素子8を駆動させ、撮像素子8により結像された像の画像信号への変換や、変換された画像信号の出力などの動作を制御する。
【0016】
不揮発メモリー11には、制御部20を動作させるプログラムや、撮像され生成された画像データ、集音された音情報、ユーザーから入力された各種設定や撮像条件などの情報が記憶される。また、記憶される情報には、撮像装置1の動作音の特徴を示す情報として、動作音の時間に応じて変化する波形、周波数成分、音圧情報などが予め記録される。
バッファメモリー12は、制御部20の制御処理に用いられる一時的な情報の記憶領域であり、例えば、撮像素子8から出力される画像信号や、画像信号に応じて生成された画像データなどが制御部20によって一時的に記憶される。
【0017】
操作検出回路13は、入力部に入力されたユーザーの操作を検出し、検出した操作情報を制御信号として制御部20に入力する。入力部は、例えば電源スイッチ13a、レリーズスイッチ13b、・・・、13zなどを備える。入力部は、入力部を操作した操作感をユーザーに与えるために、必要に応じて板ばねなどを設けられる。入力部が所定の位置まで押下げられると板ばねが反り返してユーザーに「クリック感」を与える。この板ばねの反応により、微小な振動が生じてカメラ本体100に伝播する。
また、操作検出回路13には、オートフォーカス(AF)操作を制御するためのAF操作手段13AF、撮影モードなどの設定を行うセレクタボタン13SELなどがある。撮影中に行われた操作であっても、制御部20は、入力された操作情報を受付けて、その操作情報に基づいた制御指示を出力するとともに、操作指示情報を不揮発メモリー11に記憶する。
モニター制御回路14は、例えば、モニター15の点灯、消灯や明るさ調整などの表示制御や、制御部20から出力される画像データをモニター15に表示させる処理を行う。モニター15は、画像データを表示し、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成される。
【0018】
メモリー制御回路16は、制御部20とメモリー17との情報の入出力を制御し、例えば、制御部20によって生成された画像データ、音データなどの情報をメモリー17に記憶させる処理や、メモリー17に記憶されている画像データ、音データなどの情報を読み出して制御部20に出力する処理などを行う。メモリー17は、例えば、メモリーカードなどカメラ本体100から抜き差し可能な記憶媒体であり、制御部20によって生成される画像データ、音データなどが記憶される。
【0019】
音声処理部40は、動画の撮像に合わせて記録する音情報をマイク41Aと41Bで収集し、必要な信号処理を施して記録する音声を生成する。
図3は、音声処理部40の一実施形態を示す概略ブロック図である。この図は、オートフォーカス操作を行うときの主な構成を示す。図1、図2に示した構成と同じ構成には同じ符号を付す。
音声処理部40は、マイク41Aと41B、増幅回路42Aと42B、アナログ・デジタル(A/D)変換回路43Aと43B、遅延回路44及び音声信号処理回路45を備える。
音声処理部40におけるマイク41Aと41Bは、動画記録を行う際に集音した音を変換し音信号を出力する。
増幅回路42Aと42Bは、マイク41Aと41Bが変換した音信号を所定の増幅率で増幅する。それぞれの増幅率は、制御部20からの設定によって定められる。
A/D変換回路43Aと43Bは、増幅された音情報をデジタル信号に変換する。
【0020】
また、マイク41Aと増幅回路42AとA/D変換回路43Aとにより形成される第1の系統から第1デジタル音信号が出力される。マイク41Bと増幅回路42BとA/D変換回路43Bとにより形成される第2の系統から第2デジタル音信号が出力される。
第1の系統のマイク41Aと増幅回路42AとA/D変換回路43A、並びに、第2の系統のマイク41Bと増幅回路42BとA/D変換回路43Bは、対となって構成され、それぞれが同じ特性であることが望ましい。
遅延回路44は、第2の系統で集音された第2デジタル音信号を、設定される遅延時間に基づいて遅延処理して遅延デジタル信号を出力する。
音声信号処理回路45は、第1デジタル音信号と遅延デジタル信号が入力され、2つの信号に設定された時間差を保持したままで差分処理を行う。音声信号処理回路45は、差分処理された結果に基づいて信号再生処理を行って再生した再生信号を記録情報として出力する。記録情報は、制御部20に入力され、メモリー制御部16を介してメモリー17に書き込まれるが、この図では音声信号処理回路45で信号再生処理された再生信号がメモリー17に記録されることを簡略化して示す。
【0021】
図2に戻り、制御部20について示す。
制御部20は、不揮発メモリー11に記憶されたプログラムに基づいてカメラ本体100の各部の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)などからなる。例えば、制御部20は、操作検出回路13に入力されるユーザーからの操作情報に応じて、カメラ本体100への電源の投入、光学系駆動部220を介した光学系210の駆動制御、撮像素子制御回路7を介した撮像素子8の駆動制御、モニター制御回路14を介したモニター15の表示制御、撮像素子8で検出した被写体の撮影処理、音声処理部40で集音する音情報の信号処理の制御を行う。
【0022】
制御部20は、画像処理部21、表示制御部22、撮影制御部23、操作検出処理部24、雑音除去制御部25及び録音制御部26を備える。
制御部20における画像処理部21は、撮像素子8の撮像領域内に捉えられ映像回路9に出力された画像信号を読み出し、読み出した画像信号に基づいて画像データを生成する画像処理を行う。画像処理部21は、画像処理により生成した画像データをバッファメモリー12に記憶させる。表示制御部22は、画像処理部21によって生成されバッファメモリー12に記憶された画像データを一定時間間隔ごとに読み出し、読み出した画像データをリアルタイムにモニター15に出力する。ここで、一定時間間隔とは、例えば1/60秒であり、この場合、表示制御部22によって1秒間に60フレームの画像データがスルー画としてモニター15に表示され、動画像としてメモリー17に記録される。
【0023】
撮影制御部23は、ユーザーの操作入力に基づいた撮影処理を制御するための撮影処理開始指令又は撮影処理終了指令などの制御信号が操作検出回路13から入力されることに応じて、各部に対して必要な制御信号を出力する。撮影制御部23は、撮像処理開始命令が入力されると光学系210を駆動させ、画像データを生成する撮像処理を行う。撮影制御部23は、予めユーザーから入力された撮影条件に応じて、光学系制御部230を介して光学系210のフォーカシング、露出制御、ズーミングなどの制御を行う。
【0024】
操作検出処理部24は、操作検出回路13が検出したユーザーの操作情報を判定し、判定した情報をメモリーに記録するとともに、必要とされる各種処理の制御指示を出力する。例えば、AF操作手段13AFによりオートフォーカス(AF)操作を検出すると、レンズ鏡筒200における光学系駆動部220のAF制御を行うAF制御用のモーターを駆動して光学系210を調整することによりAF制御を行う。
【0025】
雑音除去制御部25は、操作検出処理部24によって検出されたユーザーの操作情報に応じて、雑音とその雑音が発生する箇所を判定し、その雑音が低減するように音声処理部40を制御する。
録音制御部26は、雑音除去制御部25に制御される音声処理部40において雑音の低減処理された音情報を動画情報と関連付けを行ってメモリーに書き込み記録する。
【0026】
本実施形態の雑音低減処理について示す。
雑音除去制御部25の処理によって低減される雑音は、光学系210の制御を行うために光学系駆動部220が駆動されたときに振動を発生するアクチュエータ(モーターなど)の駆動音と、操作検出回路13の入力部に内蔵される板ばねが入力操作に応じて反り返る際に発生する操作音などがある。これらの雑音は、どちらもユーザーの操作に応じて発生することが特徴である。この雑音が発生する場所と時刻は、操作検出回路13の入力部で検出された信号に基づいて導くことができる。
【0027】
ところで、被写体のように撮像装置1から離れた場所からの音は、マイク41Aと41B間の距離に対して被写体の場所からマイク41Aと41Bまでの距離の差が少ないことから、同時に到達するものとみなすことができる。
一方、操作検出回路13の操作に応じて振動を発生する光学系駆動部220は、図1に示したようにマイク41Aと41B間の距離(d1−d2)、に対し近い距離に配置されることから、光学系駆動部220が発する音がマイク41Aと41Bで集音されるまでの音の伝播時間が異なる。
光学系駆動部220とマイク41Aと41Bの配置に応じて、マイク41Aと41Bに到達するまでの駆動音の伝播時間を予め定めることができる。雑音除去制御部25は、この伝播時間の差を利用して、雑音として特定した駆動音を低減させる制御を行う。
【0028】
図4は、本実施形態による雑音低減処理を示す図である。この図に示される波形は、マイク41Aと41Bで変換した音の音圧レベルを模式化したものであり、縦軸が音圧レベルを示し、横軸が時間の経過を示す。
図4(a)と(b)は、マイク41Aと41Bで集音された音を示す波形SAとSBである。同じ位相で示される低い周波数で連続する基本波形は、遠方の被写体からの音を模式化した波形である。図4(a)と(b)の波形SAとSBの基本波形にそれぞれ時刻tと時刻tに重畳した基本波形より高い周波数成分で示される1周期の波形は、基本波形と一緒に検出された共通の雑音の波形を示し、それぞれ雑音NaとNbとする。この図では、説明しやすくするために雑音NaとNbを1周期で示したが連続する波形であっても良い。
雑音を検出した時刻を比較すると、光学系駆動部220から遠くに配置されるマイク41Aで検出された雑音Naは、近くに配置されるマイク41Bで検出された雑音Nbに比べると時間tだけ遅れて検出される。この遅延時間は、音源とマイクの配置で定められ、予め特定できる制御変数として音源を示す情報に対比して記憶領域に予め記憶させておくことができる。
【0029】
図4(c)は、図4(b)の波形SBを遅延回路44によって時間tだけ遅延させた波形SB’である。この遅延処理により、雑音Nbを時間tだけ遅延させた雑音Nb’が導かれる。雑音Naと雑音Nbの位相をそろえ、すなわち、雑音Naと同じタイミングに調整された雑音Nb’として同期させることができる。なお、時間tは、雑音除去制御部25からの指示に基づいた値である。
【0030】
図4(d)は、音声信号処理回路45において、図4(a)の波形SAで示す振幅レベルから、図4(c)の波形SB’で示す振幅レベルを減算する減算処理により生成された差信号の波形SCである。
この減算処理により導かれた差信号では、雑音Naと雑音Nbとが相殺されたことにより、雑音成分を含まない信号となる。この差信号は、減算処理により原信号の基本波形と異なる歪んだ波形となる。
図4(e)は、図4(d)に示した減算処理の波形SCに基づいて、音声信号処理回路45において再生処理を施した波形SC’を示す。前述の減算処理までの処理を打ち消す逆の特性を示す処理を施すことにより、再生処理を行うことができる。
【0031】
このように、雑音が混入した場合であっても2つのマイクで得られた信号に含まれる雑音を相殺できれば、雑音を除去した原信号を再生することができる。
また、雑音が発生する場所によって異なる遅延時間で雑音が重畳する。遅延時間が異なっても、雑音が発生する場所を特定し、その場所に応じた遅延時間を設定できる。
例えば、上記にAF機能を駆動した場合に発生する例を示したが、同じレンズ鏡筒200内にあるほかの機能を駆動するアクチュエータが発生する雑音を低減する場合にも適用できる。駆動するアクチュエータの位置が異なることにより、遅延時間が異なる場合がある。そのような場合であっても、駆動するアクチュエータの位置は、操作検出回路13が検出した情報と、レンズ鏡筒200の構造によって特定することができる。
【0032】
上記の手順にしたがい、具体的な雑音の低減処理の一例を示す。
AF機構を動作させない期間は、第2の系統にある遅延回路44などの処理を行わず、マイク41Aからの音声を記録する。
AF機構を動作させる期間は、雑音発生位置に応じた遅延時間を遅延回路44により雑音低減処理を行う。
制御部20は、操作検出回路13で検出された操作入力に応じて予め定められた遅延時間を導く。遅延時間は、制御部20から参照可能な不揮発メモリー11に、操作入力情報をキーとするテーブルとして記憶されている。
制御部20は、遅延回路に導かれた遅延時間を設定するとともに、第2の系統を機能させ、音声信号処理回路45により2系統の音声信号の演算処理を行わせる。音声信号処理回路45の演算処理により導かれた結果を、制御部20は、メモリー17に音声信号として記録する。音声信号は、第2の系統の遅延処理を行った遅延時間分の時間がシフトされる。制御部20は、その遅延時間を吸収する補正を行って記録することにより、遅延時間の影響を受けて音声が途切れることなく、連続した音声を記録できる。
また、音声信号は、映像信号と同期させて記録することも必要である。制御部20は、映像信号と音声信号とを同期させ、関連付けて記録する。
【0033】
また、制御部20は、レンズ鏡筒200からレンズ種別を示すレンズ種別情報を得て、カメラ本体100に取り付けられているレンズ鏡筒200の種類を特定できる。レンズ種別情報に応じて、発生する動作音の特徴を示す情報を登録しておき、レンズ種別情報をキーとして必要な情報を参照することにより、発生する動作音を特定することができる。その動作音の特徴を示す情報として、各アクチュエータの位置情報、アクチュエータが駆動された振動によって生じる動作音の変化を示す波形の情報、その周波数成分の情報、動作音の音圧レベルの情報などがある。その各アクチュエータの位置情報は、物理的な配置を示す情報のほかに、各アクチュエータからそれぞれのマイクまでの動作音の到達時間を示す情報や、到達時間の時間差を示す情報とすることもできる。
この到達時間や到達時間の時間差情報は、予め定める値とするほかに、アクチュエータを駆動させてマイクで集音される音を測定して、その測定値に基づいて登録した値とすることもできる。
【0034】
制御部20は、入力された操作を特定し、アクチュエータに対して制御信号を出力することから、そのアクチュエータが動作するときのタイミングを検出することができ、アクチュエータから動作音がそれぞれのマイクに到達する前に、雑音低減のための雑音低減処理を有効とするように切り換えることもできる。雑音低減処理中の集音は、2つのマイクを利用し、雑音低減処理を停止中の集音は、1つのマイクを利用することもできる。
【0035】
なお、上記の実施形態では、2つのマイクで変換した信号の時間差を調整して減算する処理を設定することにより複数のマイクを用いて適応的に集音された音に含まれる雑音を除去する。また、雑音処理の演算方法にAMNOR(Adaptive Microphone array for NOise Reduction)と呼ばれる手法がある。信号処理回路45による雑音低減処理は、AMNOR法を用いて処理することもできる。
【0036】
(第2実施形態)
以下、本発明の異なる実施形態について、図面を参照して説明する。
図5は、本実施形態による撮像装置1aの外観図である。この図(a)と(b)は、撮像装置1aの上面と正面を示す。図1と同じ構成には同じ符号を付す。
撮像装置1aは、カメラ本体100aと、カメラ本体100aに着脱可能なレンズ鏡筒200を備えている。レンズ鏡筒200は、カメラ本体100aの正面に設けられたレンズ・マウントを介して取り付けられる。
また、カメラ本体100の正面と背面には、マイク41Aaとマイク41Baが設けられる。マイク41Aaとマイク41Baは、レンズ鏡筒200のレンズ光軸と略平行な直線上に設けられる。すなわち、マイク41Aaとマイク41Baは、レンズ鏡筒200の光軸から同じ距離d1に配置される。
【0037】
第2実施形態で示す撮像装置1aでは、図1の撮像装置1とマイクの配置が異なるが、雑音処理のための構成は、図2、図3に示した構成を参照することができる。
カメラ本体100a、音声処理部40a、マイク41Aaと41Baは、カメラ本体100、音声処理部40、マイク41Aと41Bと読み替えることができる。
動作音が2つのマイクに到達する音圧レベルが異なる場合には、増幅回路42Aと42Bの増幅率を検出される音圧レベルに応じて設定する。増幅率を異なる値に設定することにより、2つの信号の遅延時間と雑音の振幅を合わせて合成することが必要になる。
遅延回路44の遅延時間を、含まれる雑音の時間が合うように適正な値に設定することは変わらない。雑音が除去された差信号から再生する処理では、所望の音が2つのマイクで集音される時刻に時間差があり、その時間差を再生処理の変数として設定する。
【0038】
(第3実施形態)
以下、本発明の異なる実施形態について、図面を参照して説明する。
図6は、本実施形態による撮像装置1における異なる利用形態を示す概略ブロック図である。この図は、モード設定などの選択操作を行うときの主な構成を示す。図1、図2、図3に示した構成と同じ構成には同じ符号を付す。
【0039】
操作検出処理部24(図1)は、例えば、セレクタボタン13SELの操作により選択入力操作を検出すると、検出された操作の情報をメモリーに記録する。操作検出処理部24は、操作されたセレクタボタン13SELを特定する。操作されたセレクタボタン13SELは、板ばねを内部に備えることから、操作によって板ばねが反応して反り返りが生じる。その振動は、カメラ本体100a全体に伝わり、その振動がマイク41Aaと41Baによって検出される。
【0040】
この実施形態では、操作入力に応じて駆動されるアクチュエータがないため、その駆動音は発生しないが、操作入力の操作による振動が雑音発生源となる形態を示す。
発生する雑音は、カメラ本体100aを伝わって2つのマイクで集音される。雑音がそれぞれのマイクで集音されるまでの時間差を、遅延回路44aの遅延時間に設定して、第1実施形態のように、操作入力の検出に応じて雑音低減処理に切り換える。
【0041】
なお、第1から第3の実施形態に以下に示す処理を付加することにより雑音低減効果を高めることができる。
音声信号処理回路45は、駆動音及び操作音の時間に応じて変化する波形、周波数成分、音圧情報の少なくとも1つの特徴情報に基づいてそれぞれのマイクで集音された音情報から低減処理をする。駆動音及び操作音の時間に応じて変化する波形、周波数成分、音圧情報は、予め設定可能な特徴情報であり、不揮発メモリー11などに記憶され、制御部20から参照される。
それぞれのマイクで集音される雑音を、上記の特徴情報と比較することにより、雑音が含まれる時刻の特定を行うことができる。特定された時刻に基づいて遅延時間を導いて、予めテーブルに記憶しておく遅延時間情報とすることができる。
【0042】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。本発明の撮像装置における、音声信号処理機能は遅延時間の調整を一方の信号を遅延させるものとして示したが、含まれる雑音の位相を合わせることができればよく、相対的に差がなくなるように時間シフトさせることで代用できる。
また、光学系駆動部220がAF機構を駆動する形態を示したが、駆動される対象は、光学系210を制御する手ブレを補正する手ブレ補正機構、ズーム機構であっても良い。さらにAF機構を駆動するアクチュエータ(モーター)をカメラ本体100内に設け、機械的に駆動するカプリング駆動を行う形態であっても良い。それぞれの形態に合わせた遅延時間が予め不揮発メモリー11などに記憶され、その遅延時間が設定されるものとする。
また、駆動音及び操作音の時間に応じて変化する波形、周波数成分、音圧情報などの特徴情報は、不揮発メモリー11などに記憶されるとしたが、レンズ鏡筒200内の光学系制御部230内の記憶部に記憶する形態であってもよい。
【0043】
なお、本発明の実施形態において、撮像装置1は、マイク41Aが、周囲の音を検出して第1音情報を出力する。マイク41Aと異なるマイク41Bは、その音を検出して第2音情報を出力する。音声信号処理回路45は、第1音情報と第2音情報とを用いて、第1音情報と第2音情報とに含まれる共通の雑音信号を除去して、その音に対応した一つの音信号を生成する。
【0044】
また、上記の実施形態において、音声信号処理回路45は、第1音情報に含まれる雑音信号と第2音情報に含まれる雑音信号との時間軸上の相違量と、第1音情報に含まれる音と第2音情報に含まれる音との時間軸上の相違量との差に基づいて、雑音信号を除去する。
また、上記の実施形態において、音声信号処理回路45は、第1音情報に含まれる雑音信号と第2音情報に含まれる雑音信号とが同期するように、第1音情報と第2音情報とを相対的に時間シフトさせて雑音信号を除去する。
【0045】
また、上記の実施形態において、光学系駆動部220は、雑音信号となる雑音を発生させる。音声信号処理回路45は、光学系駆動部220の位置情報に応じて第1音情報と第2音情報とを相対的に時間シフトさせる。
また、上記の実施形態において、光学系駆動部220の位置情報は、光学系駆動部220から雑音がマイク41Aに到達するまでの伝播時間と、光学系駆動部220から雑音がマイク41Bに到達するまでの伝播時間との差に基づく情報である。
【0046】
また、上記の実施形態において、雑音信号は、撮像装置1の動作による動作音に基づくものである。音声信号処理回路45は、動作の開始又は停止の少なくとも一方に基づいて、雑音信号を除去する。
また、上記の実施形態において、信号処理部は、予め設定された、雑音信号の波形、周波数成分、音圧情報の少なくとも一つに基づいて、雑音信号を除去する。
【0047】
また、上記の実施形態において、マイク41Aとマイク41Bとは、撮像装置1のレンズ光軸に対して略垂直な面内に配置され、レンズ光軸からマイク41Aまでの距離と、レンズ光軸からマイク41Bまでの距離とが異なる。
また、上記の実施形態において、レンズ光軸に対して略垂直な面内において、レンズ光軸とマイク41Aとマイク41Bとは一つの直線上に順番に配置される。
【0048】
なお、雑音検出用のマイクをレンズ鏡筒内に設ける場合、レンズ鏡筒からカメラ本体に雑音情報を伝送する必要があり、レンズ・マウントを変更する必要があるが、上記実施形態によれば、マイクをレンズ鏡筒内に設けないため、既存のレンズ・マウントを変更せずにそのまま利用することができる。そして、本実施形態に示したように、レンズ鏡洞内に雑音源が含まれる場合であっても、マイクをレンズ鏡筒内に配置しないため、既存の交換レンズを利用する場合にも適用できる。雑音源の位置情報がレンズ鏡筒から出力されない場合では、カメラ本体の不揮発メモリー11などに対応する遅延時間の情報を予め設定することにより、同じように利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 撮像装置
100 カメラ本体
41A、41B マイク
44 遅延処理回路
45 音声信号処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の音を検出して第1音情報を出力する第1集音部と、
前記音を検出して第2音情報を出力する、前記第1集音部とは異なる第2集音部と、
前記第1音情報と前記第2音情報とを用いて、前記第1音情報と前記第2音情報とに含まれる共通の雑音信号を除去して、前記音に対応した一つの音信号を生成する信号処理部と
を備える撮像装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、
前記第1音情報に含まれる前記雑音信号と前記第2音情報に含まれる前記雑音信号との時間軸上の相違量と、前記第1音情報に含まれる前記音と前記第2音情報に含まれる前記音との時間軸上の相違量との差に基づいて、前記雑音信号を除去する
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記信号処理部は、
前記第1音情報に含まれる前記雑音信号と前記第2音情報に含まれる前記雑音信号とが同期するように、前記第1音情報と前記第2音情報とを相対的に時間シフトさせて前記雑音信号を除去する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記雑音信号となる雑音を発生させる雑音発生部
を備え、
前記信号処理部は、
前記雑音発生部の位置情報に応じて前記第1音情報と前記第2音情報とを相対的に時間シフトさせる
ことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記雑音発生部の位置情報は、
前記雑音発生部から前記雑音が前記第1集音部に到達するまでの伝播時間と、前記雑音発生部から前記雑音が前記第2集音部に到達するまでの伝播時間との差に基づく情報である
ことを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記雑音信号は、
前記撮像装置の動作による動作音に基づくものであり、
前記信号処理部は、
前記動作の開始又は停止の少なくとも一方に基づいて、前記雑音信号を除去する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記信号処理部は、
予め設定された、前記雑音信号の波形、周波数成分、音圧情報の少なくとも一つに基づいて、前記雑音信号を除去する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記第1集音部と前記第2集音部とは、
前記撮像装置のレンズ光軸に対して略垂直な面内に配置され、
前記レンズ光軸から前記第1集音部までの距離と、前記レンズ光軸から前記第2集音部までの距離とが異なる
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記レンズ光軸に対して略垂直な面内において、前記レンズ光軸と前記第1集音部と前記第2集音部とは一つの直線上に順番に配置される
ことを特徴とする請求項8に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−10073(P2011−10073A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152051(P2009−152051)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】