説明

撮像装置

【課題】撮像装置を大きくすることなく、レンズ鏡筒を駆動する円筒部材に、外部装置の駆動に用いる溝部とフレキシブル基板を通すための溝部とをレイアウトすることができる撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置が、磁気駆動装置に電気的接続を取るフレキシブル基板50とを有するレンズ鏡筒と、回転してレンズ鏡筒を駆動する駆動環30とを備える。駆動環30は、駆動環30を貫通してフレキシブル基板50をレンズ鏡筒の内部から外部に通す貫通溝35と、駆動環30の外径側に設けられたストロボカム30aと備える。そして、貫通溝35とストロボカム30aが駆動環30の回転方向に重複する配置を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファインダーや、ズーム又はポップアップ可能なストロボ等の外部装置を備える撮像装置であって、レンズ鏡筒の駆動に連動して外部装置を駆動させる撮像装置が提案されている。例えば、下記の特許文献1は、ファインダー、ストロボ等の外部装置を駆動させるカム板を、レンズ鏡筒の沈胴位置からの繰り出し動作及び沈胴位置への繰り込み動作に連動させる鏡筒ユニットを提案している(特許文献1の図3乃至6を参照)。この鏡筒ユニットは、ファインダカム板が備えるピンと移動カム環が備えるピンとを溝穴形状部を通じて直接当接させて、ファインダカム板が移動カム環と連動して動作するようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−176049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1が提案する鏡筒ユニットの構成では、ファインダー、ストロボ等の外部装置を駆動させる機能部品としてカム板が必要であり、カム板を付勢するバネ等も含め部品点数が増加する。その結果、カメラ全体がコストアップするという問題がある。また、カム板を無くして、カメラが、鏡筒の最外径に配置される回転筒に外部装置を駆動させるカムが設けられた構成を採るようにすることが考えられる。しかし、このような構成によっても、鏡筒内部から外部に電気接続を取るフレキシブル基板の貫通溝に干渉しないように配置する必要がある。その結果、カメラを大きくするだけでなく、設計の自由度も阻害されるという問題が生じる。
【0005】
本発明は、撮像装置を大きくすることなく、レンズ鏡筒を駆動する円筒部材に、外部装置の駆動に用いる溝部とフレキシブル基板を通すための溝部とをレイアウトすることができる撮像装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態の撮像装置は、磁気駆動装置と、該磁気駆動装置に電気的接続を取るフレキシブル基板とを有するレンズ鏡筒と、前記レンズ鏡筒を駆動する円筒部材とを備える。前記円筒部材は、該円筒部材を貫通して前記フレキシブル基板を前記レンズ鏡筒の内部から外部に通す第1の溝部と、該円筒部材の外径側に設けられた第2の溝部とを備える。前記第1の溝部と前記第2の溝部とが互いに重複する配置を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の撮像装置によれば、撮像装置を大きくすることなく、レンズ鏡筒を駆動する円筒部材に、外部装置の駆動に用いる溝部とフレキシブル基板を通すための溝部とをレイアウトすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】撮像装置が備えるレンズ鏡筒の斜視図の例である。
【図2】レンズ鏡筒の分解斜視図の例である。
【図3】2群レンズホルダが備える磁気駆動装置を示す図である。
【図4】撮像装置が備えるストロボの分解斜視図の例である。
【図5】撮像装置の使用位置に応じたストロボホルダの変位を説明する図である。
【図6】撮像装置が備えるファインダーレンズの例を示す図である。
【図7】撮像装置の外観斜視図の例である。
【図8】発光ユニットの分解斜視図の例である。
【図9】レンズ鏡筒と発光ユニットとの連動を説明する図である。
【図10】発光ユニットの状態の遷移を説明する図である。
【図11】スライダを光軸方向に手動で移動させたときの動作を示す図である。
【図12】実施例3、4を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1乃至6を参照して、本発明の実施例1の撮像装置について説明する。この撮像装置は、例えばズーム可能なストロボとファインダーを外部装置として備える。
【0010】
図1は、実施例1の撮像装置が備えるレンズ鏡筒の斜視図の例である。図1(A)は、レンズ鏡筒が収納された状態を示す。この状態のときには、図1(A)の点線部に示すストロボとファインダーは、SINK位置に配置されている。SINK位置は、非撮影状態に対応する。図1(B)は、撮像装置の電源がONとなってレンズ鏡筒が繰り出した状態、すなわち、撮影状態を示す。この状態のときには、図1(A)の破線部に示すストロボとファインダーは、WIDE位置に配置されている。WIDE位置は、撮像装置が備えるズームレンズ機構のワイドの状態に対応する。
【0011】
図2は、図1に示すレンズ鏡筒の分解斜視図の例である。図2に示すレンズ鏡筒の光学系は、1群レンズと2群レンズと不図示のフォーカシングレンズである3群レンズとを備える。1群レンズは1群レンズホルダ10に保持され、2群レンズは2群レンズホルダ11に保持される。直進案内板12はフランジ部の外縁部に複数の突起16が設けられている。この突起16が固定カム環17の内面に設けられた光軸方向へ伸びる複数の溝18にそれぞれ係合することにより、回転動作を規制され且つ光軸方向へ移動自在に支持される。直進案内板12には1群レンズホルダ10の内面に形成された光軸方向へ延びる不図示の溝に係合し、1群レンズホルダ10を光軸方向へ移動可能に支持する1群案内棒13が設けられている。同様に、2群レンズホルダ11の外周部に設けられた2群直進穴14に係合し、2群レンズホルダ11を光軸方向へ移動可能に支持する2群案内棒15が一体的に設けられている。これらにより、1群レンズホルダ10および2群レンズホルダ11は光軸方向へ移動自在に構成される。
【0012】
移動カム環19の外面部に3箇所角度等分に設けられたカムフォロワー20は、固定カム環17の内面に設けられた同形状の3本のカム21にそれぞれカム係合する。移動カム環19の回転に伴い、カムフォロワー20はカム21の軌跡に沿って係合位置が移動し、これにより移動カム環19は回転しながら光軸方向に進退することができる。さらに、移動カム環19の内面後端部に設けられたフランジ22に直進案内板12のフック23が係合することにより、直進案内板12は、移動カム環19に対して回転自在に係合する。これにより、移動カム環19の光軸方向への変位に伴い、直進案内板12も共に光軸方向へ変位することができる。
【0013】
1群レンズホルダ10の外面部に3箇所角度等分に設けられた1群カムフォロワー24は、移動カム環19の内面に設けられた同形状の3本の1群カム25にそれぞれカム係合する。移動カム環19の回転に伴い、1群カムフォロワー24は1群カム25の軌跡に沿って係合位置が移動する。また、1群レンズホルダ10は光軸方向へ移動するよう案内されているので、移動カム環19の回転に伴い、1群カム25の光軸方向への変位量に合わせて変位する。
【0014】
2群レンズホルダ11の外面部に3箇所角度等分に設けられた2群カムフォロワー26は、移動カム環19の内面に設けられた同形状の3本の2群カム27にそれぞれカム係合する。移動カム環19の回転に伴い、2群カムフォロワー26は2群カム27の軌跡に沿って係合位置が移動する。また、2群レンズホルダ11は光軸方向へ移動するよう案内されているので、2群レンズホルダ11は移動カム環19の回転に伴い、2群カム27の光軸方向への変位量に合わせて変位する。また、2群レンズホルダ11は2つの磁気駆動装置を備えている。
【0015】
図3は、2群レンズホルダが備える磁気駆動装置を示す図である。図3(B)に示すように、2群レンズホルダ11の被写体側に防振装置11a、撮像面側に光量を調節する絞りシャッタ装置11bが配置される。防振装置11aと絞りシャッタ装置の各々は磁気駆動装置である。これらの磁気駆動装置は、図3(B)中の矢印に示すように、2群レンズホルダ11に対して前後から取り付く。防振装置11a、絞りシャッタ装置11bには、鏡筒内部から外部へ電気接続を取るためのフレキシブル基板であるフレキシブル基板50a、フレキシブル基板50bがそれぞれ設けられている。すなわち、フレキシブル基板50a、フレキシブル基板50bは、それぞれ、防振装置11a、絞りシャッタ装置11bに電気的接続を取る。図3(A)に示すように、磁気駆動装置が取り付いた状態の2群レンズホルダ11においては、フレキシブル基板50aとフレキシブル基板50bが同じ位置に引き出され、フレキシブル基板50として一箇所にまとめられている。
【0016】
図2に戻って、移動カム環19の外面に3箇所角度等分に設けられた駆動ピン28は、固定カム環17の内面から外面に貫通するカム穴29を貫通して、固定カム環17の外面から突出する。カム21とカム穴29の軌跡は同形状である。そして、駆動ピン28は、移動カム環19の固定カム環17に対する回転繰り出し移動に対して、カム穴29の軌跡に沿って突出した状態を維持する。
【0017】
駆動環30は、回転してレンズ鏡筒を駆動する円筒部材である。駆動環30は、固定カム環17の外面に嵌合して回転自在に支持される。駆動環30の内面には、光軸方向へ伸びる溝31が3箇所角度等分に配置され、溝31のぞれぞれが駆動ピン28に係合するよう構成されている。これにより、駆動環30の回転が溝31と駆動ピン28を介して移動カム環19へと伝達される。この駆動環30は、貫通溝35とストロボカム30aとを備える。貫通溝35は、駆動環30を貫通してフレキシブル基板50をレンズ鏡筒の内部から外部に通す第1の溝部である。また、ストロボカム30aは、該駆動環30の外径側に設けられた第2の溝部である。ストロボカム30aは、外部装置に駆動力を伝達する。
【0018】
1群レンズホルダ10、2群レンズホルダ11、直進案内板12、固定カム環17、移動カム環19および駆動環30は一体となり、それぞれが連携して動作する。そして、この一体となった部品が鏡筒ベース32へと組み込まれる。さらに、不図示の撮像素子を保持する撮像素子ホルダ33が、鏡筒ベース32と共に固定カム環17のフランジ部分を挟み込むように固定されて、レンズ鏡筒が構成される。
【0019】
レンズ鏡筒の駆動源44は、電力を動力へと変換する電磁モータである。駆動源44の動力は、ギア列45を介して駆動環30の外面に設けられた駆動環ギア46へと伝達される。これにより、撮像装置本体からの駆動源44への通電に応じて駆動環30を回転させることができる。
【0020】
図4は、実施例1の撮像装置が備えるストロボの分解斜視図の例である。このストロボは、ズーム可能な発光ユニットである。図4に示すように、鏡筒ベース32にシャフト38が取り付けられ、シャフト38にキセノン管、反射傘を一体的に進退させるストロボホルダ41が摺動嵌合する。ストロボホルダ41はストロボを保持する保持部材である。ストロボホルダ41のガタ取りのために、圧縮バネ42が、鏡筒ベース32の後端32aとストロボホルダ41に挟み込むように配置される。この圧縮バネ42が、常にストロボホルダ41を被写体側に付勢する。ストロボホルダ41が備えるカムフォロワー41aは、ストロボカム30aの傾斜部と係合して追従する追従部である。従って、ストロボホルダ41は、カムフォロワー41aがストロボカム30aに追従することによってカムフォロワー41aと一体的にストロボカム30aに沿って移動する可動部材として機能する。
【0021】
図5は、撮像装置の使用位置に応じたストロボホルダの変位を説明する図である。図5(A)はSINK位置を示す。図5(B)はWIDE位置を示す。図5(C)はTELE位置を示す。TELE位置は、撮像装置が備えるズームレンズ機構のテレの状態に対応する。
【0022】
ストロボカム30aは、SINK位置からWIDE位置にかけて被写体側に繰り出す。また、撮像装置が実使用状態となるWIDE位置からTELE位置の間では、TELE位置に進むに従ってわずかに撮像面側に移動するような微量のリフトがストロボカム30aにつけられている。これは、撮像装置の使用位置によってストロボ発光の集光度合いを変更し、距離が異なった時の被写体への明るさを調整するためである。これにより、駆動環30が図5(A)中に示すα方向に回転すると、ストロボホルダ41がカムフォロワー41aと一体的にストロボカム30aに沿って移動し、SINK位置からWIDE位置では被写体側に繰り出す。そして、ストロボホルダ41は、WIDE位置からTELE位置の間では少しずつ撮像面側に移動する。
【0023】
フレキシブル基板50を通す貫通溝35とストロボカム30aは、駆動環30の回転方向に重複する配置を有する。図5(A)に示す例では、WIDE位置からTELE位置に至る途中で、ストロボカム30aに貫通溝35が重複して配置されている。有底であったストロボカム30aは貫通溝35の部分から底が無くなるが、ストロボカム30aの傾斜部30gは、そのまま貫通溝35の領域でも同じように滑らかに繋がっている。すなわち、貫通溝35の外径側面取り部とストロボカム30aの傾斜面30gとが駆動環30の回転方向に連続して繋がっている。このために、貫通溝35の外径側面取り部とストロボカム30aの傾斜面30gとは、同じ角度を有する。これにより、ストロボホルダ41のカムフォロワー41a(図4を参照)は、ストロボカム30aの傾斜部30gと係合して変位するので、カム底の有無に関係なく作動することができる。
【0024】
なお、ストロボホルダ41が備えるカムフォロワー41aがカムの傾斜部30gが有する2つの傾斜面の双方に接触する場合は、貫通溝35を被写体側の傾斜面の始点と撮像面側の傾斜面の終点との間に設けるようにしてもよい。また、カムフォロワー41aが被写体側の傾斜面のみに接触する場合は、貫通溝35の溝端が被写体側の傾斜面の始点よりも撮像面側に位置するように貫通溝35を設けるようにしてもよい。また、カムフォロワー41aが撮像面側の傾斜面のみに接触する場合は、貫通溝35の溝端が撮像面側の傾斜面の終点よりも被写体側に位置するように貫通溝35を設けるようにしてもよい。このようにすることによって、カムフォロワー41aが貫通溝35に嵌まり込んでしまうことを防止することができる。
【0025】
図5(A)に示すSINK位置の状態では、フレキシブル基板50はストロボカム30aのTELE位置に入り込んでおり、その位置でのストロボカム30aの傾斜部30gはフレキシブル基板50を傷つけないような面取り形状の役割を果たしている。同一の傾斜部30gがストロボカム30aのSINK位置の端部からTELE位置を越えて貫通溝35の領域に入り、貫通溝35の端部まで繋がっている。これにより、ストロボカム30aのストロボホルダ41を変位させるカムの機能と駆動環30が回転移動する時のフレキシブル基板50の切れ防止機能を両立している。図5(C)に示すTELE位置の状態では、フレキシブル基板が入り込んでいた貫通溝35の領域に、ストロボホルダ41のカムフォロワー41aが入り込んでいる。すなわち、非撮影状態と撮影状態とを有する撮像装置の状態に応じて、フレキシブル基板50とカムフォロワー41aとが、貫通溝35とストロボカム30aとが重複する領域を通過する。言い換えると、フレキシブル基板50とカムフォロワー41aとが、貫通溝35が設けられた領域を共用する。
【0026】
図6は、実施例1の撮像装置が備えるファインダーレンズの例を示す図である。図6に示すファインダーレンズは可動部材であり、図4を参照して説明したストロボの構成と同様の構成が適用されている。
【0027】
図6中に示す駆動環30はファインダーレンズ51を変位させるファインダーカム30cとファインダーレンズ52を変位させるファインダーカム30dとを備える。ファインダーレンズ51、52は、ファインダーレンズ51、52を光軸方向にのみ進退させるシャフト53が摺動嵌合するように通され、不図示のベース部材に固定されている。ファインダーレンズ51と52との間には不図示の引っ張りバネが掛けられており、お互いが引き合うように付勢されてガタ取りを行っている。また、51a、52aはそれぞれ、ファインダーレンズ51、52に対応するカムフォロワーであり、図4を参照して説明したカムフォロワー41aと同様の機能を有する。すなわち、カムフォロワー51a、52aは、それぞれ、ファインダーカム30c、30dに係合し、駆動環30の回転に連動して変位する。これにより、ファインダーレンズ51、52を、それぞれ、カムフォロワー51a、52aと一体的に駆動環30の回転に連動して変位させることができる。
【0028】
また、駆動環30が回転することで、ファインダーレンズ51と52は光軸方向に進退し、不図示の他のファインダーレンズと合わせて変倍を行う。図3を参照して説明した2群レンズホルダ11のフレキシブル基板50は、ファインダーカム30cに重複するように施された貫通溝54を通って鏡筒内部から外部に引き出されている。この貫通溝54は、ファインダーレンズ51のファインダーカム30cのリフトを持っている部分(貫通溝の端部54a)から開始され駆動環30の回転角度分以上の長さとなっている。カムの傾斜部30eはフレキシブル基板50の面取りの役割を果たしている。貫通溝54は、ファインダーレンズ51のリフトの大きめなファインダーカム30cの部分にも設けられているが、フレキシブル基板50の長さで対応できる範囲においては、リフト部分に重複させることも可能である。図6に示す例では、貫通溝54の外径側面取り部とファインダーカム30cの傾斜面とが駆動環30の回転方向に連続して繋がっている。そして、非撮影状態と撮影状態とを有する撮像装置の状態に応じて、フレキシブル基板50とカムフォロワー51aとが、貫通溝54とファインダーカム30cとが重複する領域を通過する。
【0029】
本実施例ではカム底の幅とフレキシブル基板50の貫通溝35の幅がほぼ同等な寸法関係になっているが、フォロワーと係合するカムの傾斜部さえ確保できていれば広いカム幅の内部に貫通溝を配置しても良い。また、カムの傾斜部の途中まで削れて無くなるような広めの貫通溝としてもよい。上述した実施例1の撮像装置によれば、撮像装置を大きくすることなく、レンズ鏡筒を駆動する円筒部材(駆動環30)に、ズーム可能なストロボ又はファインダーレンズの駆動に用いる溝部と、フレキシブル基板を通すための溝部とをレイアウトすることができる。
【0030】
図7から図10を参照して、本発明の実施例2の撮像装置について説明する。この撮像装置は、例えばポップアップ可能な発光ユニット1を備えるカメラである。発光ユニット1は例えばストロボである。なお、実施例2の撮像装置のレンズ鏡筒は、図2を参照して説明した実施例1の撮像装置のレンズ鏡筒と同様の構成を有する。また、この撮像装置が備える駆動環30には、図5を参照して説明したストロボカム30a、貫通溝35が設けられている。
【0031】
図7は、実施例2の撮像装置の外観斜視図の例である。図7(A)は、非発光状態である場合の撮像装置を示す。図7(B)は、撮像装置が電源ONしたときの状態である。図7(B)に示す状態では、撮像装置上方に破線部に示す発光ユニット1が突出して、撮像装置が発光可能である。発光ユニット1は、撮像装置上面の一部を形成するカバー部材2などの複数の部品から構成される。発光ユニット1は、撮像装置中央に位置するレンズ鏡筒の駆動環30(図2を参照)に連動し、収納状態から突出状態、逆に突出状態から収納状態に遷移する。
【0032】
図8は、発光ユニットの分解斜視図の例である。図8中に示すキセノン管401は発光体であり、リード線402で電気的に接続され、フレキシブル基板403を介して、発光制御を行うストロボ基板404に配線されている。反射笠405は、キセノン管401からの光を集光させる。キセノン管ゴム406は、キセノン管401の端子部の絶縁と、キセノン管401を反射笠405側へ付勢する機能を有する。プリズムパネル407は、キセノン管401からと前記反射笠405からの光を所望の撮影範囲に照射する。このために、プリズムパネル407は、入射面および射出面を備えている。キセノン管401とプリズムパネル407とキセノン管ゴム406と反射笠405等の発光関連部品は、ストロボホルダ408に組み込まれている。また、ストロボホルダ408には、軸410が軽圧入されている。軸410は、ストロボシャフト302を回動中心に発光ユニット1を突出方向、収納方向に付勢するトグルバネ409の一端を引っ掛ける。トグルバネ409の他端は、ストロボベース301に備える軸301aに引っ掛かっている。ベース部材411は、フレキシブル基板403と、ストロボ基板404と、ストロボコンデンサー412を取り付けるための部材である。ベース部材411は、ストロボベース301とビス締結し、発光ユニット1を構成している。
【0033】
レバー式検知スイッチ(以下、スイッチと記述)403aは、発光ユニット1が撮像装置に対し、突出、収納位置のいずれにあるのかを検知する。スイッチ403aは、ベース部材411が備える穴411a内に配置されている。スイッチ403aは、フレキシブル基板403に実装されている。ストロボホルダ408の突起408aがスイッチ403aのレバーを押し込んでいるときは発光ユニット1が収納状態であることが検知され、撮像装置が非発光状態に遷移する。突起408aがスイッチ403aのレバーから離れたときは、発光ユニット1が突出状態であることが検知されて、撮像装置が発光状態に遷移する。
【0034】
図9は、レンズ鏡筒と発光ユニットとの連動を説明する図である。図9(A)は、レンズ鏡筒に発光ユニット1への連動機構が組み付けられた状態におけるレンズ鏡筒の斜視図を示す。スライダ37は、鏡筒ベース32に保持されたスライダシャフト38に案内され、光軸方向へ移動可能に支持されている。
【0035】
図9(B)は、図9(A)に示すレンズ鏡筒の正面図である。図9(C)は、図9(B)に示すレンズ鏡筒のA−A断面図である。図9(C)中には、スライダ37の駆動源である駆動環30と係合する箇所の断面を示す。図9(C)に示すように、スライダ37が備える光軸に直交する筒状ガイド部に、移動可能な非弾性体のスライダフォロワー39が収納されている。スライダフォロワー39は、圧縮バネ40によって駆動環30の外面に設けられたストロボカム30aに対して付勢し、カム係合している。ストロボカム30aにカム係合したスライダフォロワー39は、このストロボカム30aに追従する。駆動環30が光軸中心に回動することにより、ストロボカム30aにカム係合しているストロボフォロワー39を介し、スライダフォロワー39と一体化して動作するスライダ37が光軸方向に移動する。すなわち、スライダ37は、スライダフォロワー39がストロボカム30aに追従することによってストロボカム30aに沿って移動する可動部材である。図10を参照して説明するように、スライダ37の移動に伴って発光ユニット1は収納状態から突出状態へ、又は突出状態から収納状態に遷移する。従って、駆動環30の回動に連動して発光ユニット1の状態が遷移する。
【0036】
図10は、発光ユニットの状態の遷移を説明する図である。図10(A)は発光ユニット1の収納状態を示す。収納状態は、発光ユニット1が収納された状態である。図10(B)は、スライダ37がストロボホルダ408の突起408bに当接した状態を示す。図10(C)は、発光ユニット1の突出状態を示す。突出状態は、発光ユニット1が撮像装置に対し突出した状態、すなわち、発光ユニット1の使用時の状態を示す。発光ユニット1は、収納状態と突出状態との間で付勢方向が切り変わるトグルバネ409により、収納状態、突出状態のそれぞれにおいて安定的に支持される。
【0037】
図10(A)に示すように、スライダ37のU字部37aは、発光ユニット1が備えるストロボホルダ408から突出した突起408bを挟み込むように構成される。すなわち、スライダ37は、発光ユニット1を保持する保持部材である。スライダ37は、その光軸方向Zへの移動に伴って、突起408bを押圧し(図10(B)を参照)、発光ユニット1は、ストロボシャフト302を中心として回転力を受ける。この回転力がトグルバネ409の付勢力に抗して発光ユニット1を持ち上げ、トグルバネ409の付勢方向を切り換える。これにより、図10(C)に示すように、発光ユニット1が突出状態へ遷移する。発光ユニット1が突出状態から収納状態へ遷移するときは、上述した発光ユニット1が収納状態から突出状態へ遷移するときの動作と逆の動作が行われる。実施例2の撮像装置によれば、撮像装置を大きくすることなく、レンズ鏡筒を駆動する円筒部材(駆動環30)に、ポップアップ可能な発光ユニット1の駆動に用いる溝部と、フレキシブル基板を通すための溝部とをレイアウトすることができる。
【0038】
図11及び図12(A)は、本発明の実施例3を説明する図である。実施例3では、撮像装置が備える駆動環30の外径側の、貫通溝35(第1の溝部)、ストロボカム30a(第2の溝部)から撮像面側に離れた位置に、ストロボカム30fが第3の溝部として設けられている。撮像装置の発光ユニットを保持するスライダ37が備えるストロボフォロワー39が、ストロボカム30fに係合及び追従可能である。スライダ37は、ストロボフォロワー39がストロボカム30fに係合して追従することによってストロボカム30fに沿って移動することができる。
【0039】
実施例3では、手動により、ストロボフォロワー39が、ストロボカム30aに係合する状態からストロボカム30fへ係合する状態へ遷移することができる。また、逆に、手動により、ストロボフォロワー39が、ストロボカム30fに係合する状態からストロボカム30aへ係合する状態へ遷移することができる。
【0040】
以下に、図11を参照して、駆動環30が停止状態である場合に、スライダ37を光軸方向に手動で移動させたときの動作を説明する。図11(A)は、ストロボフォロワー39がストロボカム30fに係合している状態を示す。撮像装置のユーザが、図11(A)に示す状態のスライダ37に対し、手動で光軸方向に荷重Fを付加すると、ストロボフォロワー39が、図11(B)に示すように、ストロボカム30aの斜面に乗り上げる。ストロボフォロワー39がストロボカム30fの斜面に乗り上げることにより、ストロボフォロワー39は、スライダ37内で圧縮バネ40の押圧力に抗して、図11(B)中のP方向に移動する。
【0041】
ユーザが、スライダ37に対して更に大きな荷重Fを付加すると、図11(C)に示すように、ストロボフォロワー39がストロボカム30fから駆動環30の外周面に乗り上げる。図11(C)に示す状態からユーザが更に荷重Fを付加し続けると、図11(D)に示すように、ストロボフォロワー39がストロボカム30aまで移動し、ストロボカム30aにカム係合する。同様に、図11(D)に示す状態からユーザが手動でスライダ37に対して荷重Fと逆ベクトルの荷重F1を付加し続けると、ストロボフォロワー39の状態が、ストロボカム30aにカム係合していた状態からストロボカム30fにカム係合する状態に遷移する。
【0042】
図12(A)は、実施例3におけるスライダ37の変位を説明する図である。スライダ37が備えるストロボフォロワー39の基本動作は、図5を参照して説明したカムフォロワー41aの動作と同様である。そして、非撮影状態と撮影状態とを有する撮像装置の状態に応じて、フレキシブル基板50とスライダ37aとが、貫通溝35とストロボカム30aとが重複する領域を通過する。言い換えると、フレキシブル基板50とストロボフォロワー39とが、貫通溝35が設けられた領域を共用する。
【0043】
スライダ37が図12(A)中のSINK位置30aaに配置されている状態から駆動環30がβ方向に回転すると、スライダ37のストロボフォロワー39が、カム30aの撮像面側に沿って移動する。トグルバネ409の付勢力が切り替わると、ストロボフォロワー39が、カム30aの被写体面側に押し当てられながらWIDE位置30abに達する。このとき、発光ユニット1は開状態になっている。この状態から、撮像装置のユーザが、発光ユニット1の開状態が不要であると判断し、手動で発光ユニット1を閉じて、トグルバネ409を切り換え、ストロボフォロワー39を位置30fbに移動させることができる。ストロボフォロワー39が位置30fbにある状態から、ユーザが再度ストロボの開状態が必要であると判断した場合、ユーザは、発光ユニット1を手動で開いて、位置30fbから位置30abに戻すこともできる。
【0044】
ストロボフォロワー39がWIDE位置30abにある状態から、駆動環30が更にβ方向に回転すると、発光ユニット1の開状態が保たれたまま、ストロボフォロワー39がTELE位置30acに到達する。撮像装置のユーザがストロボの開状態が不要であると判断した場合、ユーザは、手動で発光ユニット1を閉じて、トグルバネ409を切り換え、ストロボフォロワー39を位置30fcに移動させることができる。ストロボフォロワー39が位置30fcにある状態から、ユーザが再度ストロボの開状態が必要であると判断した場合、ユーザは、発光ユニット1を手動で開いて、位置30fcから位置30acに戻すこともできる。
【0045】
ストロボカム30fは、トグルバネ409の付勢力が切り替わった後の発光ユニット1の閉状態を維持するために用いるカムである。ストロボカム30f上ではストロボフォロワー39は滑らかに移動できるので、スライダ37に対して光軸方向に多少の外力が働いた場合でも発光ユニット1の予期しない開きを防止することができる。実施例3の撮像装置によれば、図12(A)中に示す斜線部の領域(WIDE位置からTELE位置までの領域)内で、ストロボフォロワー39を光軸方向に手動で移動させることができる。図12(A)に示す例では、ストロボフォロワー39が通過可能である第1、第2の溝部(貫通溝35、ストロボカム30a)の光軸方向の範囲が、ストロボフォロワー39が通過可能である第3の溝部(ストロボカム30f)の光軸方向の範囲と重複する。
【0046】
図12(B)は、本発明の実施例4を示す図である。実施例4の撮像装置が備える駆動環30には、貫通溝35(第1の溝部)と、ストロボカム30i(第2の溝部)と、ストロボカム30h(第3の溝部)とが設けられている。ストロボカム30hは、第1、第2の溝部から被写体側に離れた位置に設けられている。フレキシブル基板を通す貫通溝35とストロボカム30iは、駆動環30の回転方向に重複する配置を有する。図12(A)に示す例では、WIDE位置からTELE位置に至る途中で、ストロボカム30iに貫通溝35が重複して配置されている。具体的には、貫通溝35の外径側面取り部とストロボカム30iの傾斜面とが駆動環30の回転方向に連続して繋がっている。
【0047】
撮像装置のユーザは、手動でストロボフォロワー39をストロボカム30hに係合する状態からストロボカム30iに係合する状態へ切り換えることができる。また、逆に、ユーザは、手動でストロボフォロワー39をストロボカム30iに係合する状態からストロボカム30hに係合する状態へ切り換えることができる。すなわち、実施例4の撮像装置によれば、図12(B)中に示す斜線部の領域(WIDE位置からTELE位置までの領域)内で、ストロボフォロワー39を光軸方向に手動で移動させることができる。そして、図12(B)に示す例では、ストロボフォロワー39が通過可能である第1、第2の溝部の光軸方向の範囲が、ストロボフォロワー39が通過可能である第3の溝部の光軸方向の範囲と重複する。
【0048】
また、実施例4においても、非撮影状態と撮影状態とを有する撮像装置の状態に応じて、フレキシブル基板とストロボフォロワー39とが、第1の溝部と第2の溝部とが重複する領域を通過する。具体的には、図12(B)中のSINK位置の状態では、フレキシブル基板がストロボカム30iのTELE位置に入り込んでいる。ストロボフォロワー39がストロボカム30hに係合する状態から例えばストロボカム30iに係合する状態へ遷移した後、撮像装置がTELE位置に遷移すると、フレキシブル基板が入り込んでいた貫通溝35の領域にストロボフォロワー39が入り込む。
【0049】
上述した実施例3、4の撮像装置によれば、フレキシブル基板を通すための貫通溝を、駆動環30に設けられた複数のストロボカムを避けて光軸方向の別の箇所に配置する構成を採る場合よりも、撮像装置をコンパクトにすることができる。以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
30 駆動環
30a ストロボカム
35 貫通溝
50 フレキシブル基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気駆動装置と、該磁気駆動装置に電気的接続を取るフレキシブル基板とを有するレンズ鏡筒と、
回転して前記レンズ鏡筒を駆動する円筒部材とを備え、
前記円筒部材は、該円筒部材を貫通して前記フレキシブル基板を前記レンズ鏡筒の内部から外部に通す第1の溝部と、該円筒部材の外径側に設けられた第2の溝部とを備え、
前記第1の溝部と前記第2の溝部が前記円筒部材の回転方向に重複する配置を有する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記第2の溝部に係合して追従する追従部と、
前記追従部を有し、前記追従部が前記第2の溝部に追従することによって前記第2の溝部に沿って移動する可動部材とを備え、
前記第1の溝部の外径側面取り部と前記第2の溝部の傾斜面とが前記円筒部材の回転方向に連続して繋がっており、
非撮影状態と撮影状態とを有する前記撮像装置の状態に応じて、前記フレキシブル基板と前記追従部とが、前記第1の溝部と前記第2の溝部とが重複する領域を通過する
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記円筒部材の外径側の、前記第1、第2の溝部から撮像面側に離れた位置に、前記追従部が係合及び追従可能な第3の溝部が設けられており、
前記可動部材は、前記追従部が前記第3の溝部に係合して追従することによって前記第3の溝部に沿って移動し、
前記追従部は、前記第2の溝部へ係合する状態から前記第3の溝部へ係合する状態、又は前記第3の溝部へ係合する状態から前記第2の溝部へ係合する状態に遷移し、
前記追従部が通過可能である前記第1、第2の溝部の光軸方向の範囲が、該追従部が通過可能である前記第3の溝部の光軸方向の範囲と重複する
ことを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記円筒部材の外径側の、前記第1、第2の溝部から被写体側に離れた位置に設けられた第3の溝部と、
前記第2の溝部又は前記第3の溝部に係合して追従する追従部と、
前記追従部を有し、前記追従部が前記第2又は第3の溝部に追従することによって該第2又は第3の溝部に沿って移動する可動部材とを備え、
前記第1の溝部の外径側面取り部と前記第2の溝部の傾斜面とが前記円筒部材の回転方向に連続して繋がっており、
非撮影状態と撮影状態とを有する前記撮像装置の状態に応じて、前記フレキシブル基板と前記追従部とが、前記第1の溝部と前記第2の溝部とが重複する領域を通過し、
前記追従部が通過可能である前記第1、第2の溝部の光軸方向の範囲が、該追従部が通過可能である前記第3の溝部の光軸方向の範囲と重複する
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記可動部材は、ファインダーレンズである
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記可動部材は、発光ユニットを保持する保持部材である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記磁気駆動装置は、光量を調節する絞りシャッタ装置である
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記磁気駆動装置は、防振装置である
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−158793(P2011−158793A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21725(P2010−21725)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】