説明

撮像装置

【課題】ボケ味を表現した画像撮影ができる撮像装置を提供することを目的とする。
【解決手段】撮像装置は、光軸方向に進退することにより被写体像のフォーカス状態を調節するフォーカスレンズと、被写体像を撮像して画像を生成する撮像部と、被写体像からフォーカス状態に関する情報を取得する取得部と、取得部が取得したフォーカス状態に関する情報に基づいて、フォーカスレンズの結像面が撮像部に合うフォーカスレンズの位置を検出するオートフォーカス制御部と、フォーカスレンズの結像面が、オートフォーカス制御部が検出した位置にフォーカスレンズがあるときの焦点深度内から離れる方向に、フォーカスレンズを所定量移動させるフォーカス調節部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置に関し、特に被写体のフォーカス状態を調節可能な撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
予め記録させておいた像面湾曲情報に基づいて、合焦の基準となる位置を撮影領域の中心から周辺部にずらすことにより、合焦範囲が広い画像を得ようとするカメラがある。例えば、特許文献1は、レンズに固有の像面湾曲データをカメラに予め格納しておき、使用されたレンズの像面湾曲データと焦点距離、および絞り値に基づいて、適当な合焦位置に調節するカメラを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-189580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
使用者が撮影をする際、主要被写体に対して周辺背景のボケ味を表現した画像を得たいときがある。しかしながら、上述した特許文献1のカメラは、合焦範囲が広い画像を得ようとすることが目的であり、ボケ味を表現した画像を得ることはできない。
【0005】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、ボケ味を表現した画像撮影ができる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の撮像装置は、光軸方向に進退することにより被写体像のフォーカス状態を調節するフォーカスレンズと、被写体像を撮像して画像を生成する撮像部と、被写体像からフォーカス状態に関する情報を取得する取得部と、取得部が取得したフォーカス状態に関する情報に基づいて、フォーカスレンズの結像面が撮像部に合うフォーカスレンズの位置を検出するオートフォーカス制御部と、フォーカスレンズの結像面が、オートフォーカス制御部が検出した位置にフォーカスレンズがあるときの焦点深度内から離れる方向に、フォーカスレンズを所定量移動させるフォーカス調節部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ボケ味を表現した画像撮影ができる撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】デジタルカメラ100の電気的構成図
【図2】デジタルカメラ100の背面構成図
【図3】ボケ優先撮影モードのフローチャート
【図4】像面シフト動作のフローチャート
【図5】周辺解像補正動作のフローチャート
【図6】通常撮影モード時のプログラム線図
【図7】ボケ優先撮影モード時のプログラム線図
【図8】焦点距離/被写体距離テーブルを示す図
【図9】像面シフト量テーブルを示す図
【図10】像面シフトを説明するためのイメージ図
【図11】周辺解像の補正ゲインテーブルを示す図
【図12】周辺解像度の補正ゲインカーブのイメージ図
【図13】レンズMTFデータのイメージ図
【図14】出力解像度データのイメージ図
【図15】像面シフトを説明するためのイメージ図
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施の形態1〕
実施の形態1に係るデジタルカメラ100は、撮影状態における像面シフト量および、撮影画像における周辺解像補正量を設定することができる。これにより、デジタルカメラ100は、被写体に対して通常に撮影する場合と比較してボケ表現を強調した画像を撮影することができる。以下、デジタルカメラ100の構成および動作を説明する。
【0010】
〔1.構成〕
以下図を用いてデジタルカメラ100の構成を説明する。
【0011】
〔1−1.デジタルカメラ100の構成〕
図1は、デジタルカメラ100の電気的構成図である。デジタルカメラ100は、光学系110を介して形成された被写体像をCCDイメージセンサ120で撮像する。CCDイメージセンサ120は撮像した被写体像に基づく画像データを生成する。撮像により生成された画像データは、AFE(アナログ・フロント・エンド)121や画像処理部122において各種処理が施される。生成された画像データはフラッシュメモリ142やメモリカード140に記録される。フラッシュメモリ142やメモリカード140に記録された画像データは、使用者による操作部150の操作を受け付けて液晶ディスプレイ123上に表示される。
【0012】
図2は、デジタルカメラ100の背面構成図である。デジタルカメラ100は、上面にレリーズ釦170、ズームレバー171、電源釦172などの操作釦を備える。また、デジタルカメラ100は、背面に選択釦173、決定釦174、ディスプレイ釦175、モードダイアル176などの操作釦や、液晶ディスプレイ123を備える。
【0013】
光学系110は、フォーカスレンズ111やズームレンズ112、絞り113、シャッタ114等により構成される。図示していないが、光学系110は、光学式手ぶれ補正レンズOIS(Optical Image Stabilizer)を含んでいてもよい。なお、光学系110を構成する各種レンズは何枚から構成されるものでも、何群から構成されるものでもよい。
【0014】
フォーカスレンズ111は被写体のフォーカス状態の調節に用いられる。ズームレンズ112は被写体の画角の調節に用いられる。絞り113は、CCDイメージセンサ120に入射する光量の調節に用いられる。シャッタ114は、CCDイメージセンサ120に入射する光の露出時間を調節する。
【0015】
フォーカスモータ115は、コントローラ130から通知された制御信号に従ってフォーカスレンズ111を光軸に沿って進退駆動させる駆動手段である。ズームモータ116は、コントローラ130から通知された制御信号に従ってズームレンズ112を光軸に沿って進退駆動させる駆動手段である。絞りモータ117は、コントローラ130から通知された制御信号に従って絞り113を開閉駆動させる駆動手段である。シャッタモータ116は、コントローラ130から通知された制御信号に従ってシャッタ114を開閉駆動させる駆動手段である。これらの駆動手段は、DCモータやステッピングモータ等により実現できる。
【0016】
CCDイメージセンサ120は、光学系110を通して形成された被写体像を撮像して画像データを生成する。CCDイメージセンサ120の受光面には多数のフォトダイオードが2次元的に配列されている。また、各フォトダイオードに対応してR、G、Bの原色カラーフィルタが所定の配列構造で配置されている。撮像対象となる被写体からの光は、光学系110を通過した後に、CCDイメージセンサ120の受光面に結像される。結像された被写体像は、各フォトダイオードへ入射した光量に応じてR、G、Bに仕分けられたそれぞれ色情報に変換される。その結果、被写体像を示す全体の画像データが生成される。CCDイメージセンサ120は、所定のフレームレート(例えば、30フレーム/秒)で新しいフレームの画像データを生成する。また、CCDイメージセンサ120は、プレビュー表示においては電子シャッタ動作により露出光量を調節する。CCDイメージセンサ120の画像データ生成タイミングおよび電子シャッタ動作は、コントローラ150によって制御される。この画像データをスルー画像として逐一表示部170にプレビュー表示することにより、ユーザはリアルタイムに被写体の状況を表示部170で確認できる。
【0017】
AFE121は、CCDイメージセンサ120が生成した画像データに対して、相関二重サンプリングによる雑音抑圧、アナログゲインコントローラによるADコンバータ133の入力レンジ幅への増幅、ADコンバータによるAD変換を施す。その後、AFE121は、画像データを画像処理部122に出力する。
【0018】
画像処理部122は、AFE121から出力された画像データに対して各種の処理を施す。各種処理としては、スミア補正、ホワイトバランス補正、ガンマ補正、YC変換処理、電子ズーム処理、圧縮処理、伸張処理等などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
液晶ディスプレイ123は、デジタルカメラ100の背面に備わる。液晶ディスプレイ123は、画像処理部122にて処理された画像データに基づく画像を表示する。液晶ディスプレイ123が表示する画像には、スルー画像や記録画像がある。液晶ディスプレイ123は、CCDイメージセンサ120により一定時間毎に生成される画像をスルー画像として略リアルタイムで表示する。ユーザは、液晶ディスプレイ123に表示されるスルー画像を参照することにより、被写体の構図を確認しながら撮影できる。記録画像は、メモリカード140やフラッシュメモリ142に記録された画像である。液晶ディスプレイ123は、ユーザの操作に応じて、すでに記録した画像データに基づく画像を表示する。液晶ディスプレイ123はこの他、デジタルカメラ100の各種設定条件等を表示可能である。
【0020】
コントローラ130は、デジタルカメラ100全体の動作を統括制御する。コントローラ130は、プログラム等の情報を格納するROMや、プログラム等の情報を処理するCPUなどにより構成される。ROMは、オートフォーカス制御(AF制御)や自動露出制御(AE制御)に関するプログラムの他、デジタルカメラ100全体の動作を統括制御するためのプログラムを格納している。また、ROMは、後述する通常撮影モード時のプログラム線図、ボケ優先撮影モード時のプログラム線図、焦点距離/被写体距離テーブル、像面シフト量テーブル、補正ゲインテーブルを格納している。ROMはコントローラ130の内部構成である必要はなく、コントローラ130の外部に備わったものでもよい。
【0021】
バッファメモリ124は、画像処理部122やコントローラ130のワークメモリとして機能する記憶手段である。バッファメモリ124はDRAM(Dynamic Random Access Memory)などで実現できる。コントローラ130は、読み出した焦点距離情報、被写体距離情報、絞り値情報(F値情報)などを一時的にバッファメモリ124に記憶しておき、各種演算において使用する。また、フラッシュメモリ142は、画像データ等を記録するための内部メモリとして機能する記憶手段である。
【0022】
カードスロット141は、メモリカード140を着脱可能な接続手段である。カードスロット141は、メモリカード140を電気的及び機械的に接続可能である。また、カードスロット141は、メモリカード120を制御する機能を備えてもよい。
【0023】
メモリカード140は、内部にフラッシュメモリ等の記憶手段を備えた外部メモリである。メモリカード140は、画像処理部122で処理される画像データなどのデータを記録可能である。
【0024】
操作部150は、デジタルカメラ100の外装に備わっている操作釦や操作レバーの総称であり、使用者による操作を受け付ける。例えば図2に示したレリーズ釦170や、ズームレバー171、電源釦172、選択釦173、決定釦174、ディスプレイ釦175、モードダイアル176などがこれにあたる。操作部150は使用者による操作を受け付けると、コントローラ130に種々の動作指示信号を通知する。
【0025】
レリーズ釦170は、二段押下式の押下釦である。レリーズ釦170が使用者により半押し操作されると、コントローラ130はAF動作やAE動作などを実行する。また、レリーズ釦170が使用者により全押し操作されると、コントローラ130は、押下操作のタイミングに撮像された画像データを記録画像としてメモリカード140等に記録する。
【0026】
ズームレバー171は画角調節についての広角端と望遠端を有する中央位置自己復帰式のレバーである。ズームレバー171は、使用者により操作されるとコントローラ130にズームレンズ112を駆動するための動作指示信号を通知する。すわなち、ズームレバー171が広角端に操作されると、コントローラ130は、被写体を広角で捉えられるようにズームレンズ112を駆動する。同様に、ズームレバー171が望遠端に操作されると、コントローラ130は、被写体を望遠で捉えられるようにズームレンズ112を駆動する。また、ズームレバー171操作によりズームレンズ112が駆動されると、駆動先のズームレンズ112の位置に応じて焦点距離情報がコントローラ130に通知される。
【0027】
電源釦172は、デジタルカメラ100を構成する各部への電力供給をON/OFFするための押下式釦である。電源OFF時に電源釦172が使用者により押下されると、コントローラ130はデジタルカメラ100を構成する各部に電力を供給し、起動させる。また、電源ON時に電源釦172が使用者により押下されると、コントローラ130は各部への電力供給を停止する。
【0028】
選択釦173は、上下左右方向に設けられた押下式釦である。使用者は、選択釦173のいずれかの方向を押下することにより、液晶ディスプレイ123に表示される各種条件項目を選択することができる。
【0029】
決定釦174は、押下式釦である。デジタルカメラ100が撮影モードあるいは再生モードにあるときに、決定釦174が使用者により押下されると、コントローラ130は液晶ディスプレイ123にメニュー画面を表示する。メニュー画面は、撮影/再生のための各種条件を設定するための画面である。決定釦174が各種条件の設定項目が選択されているときに押下されると、コントローラ130は、選択された項目の設定を確定する。
【0030】
ディスプレイ釦175は、押下式釦である。ディスプレイ釦175が押下されると、コントローラ130は所定の画面を表示するよう液晶ディスプレイ123を制御する。
【0031】
モードダイアル176は、使用者の操作を受け付ける。使用者はモード合いある176を操作することで、デジタルカメラ100のモードを切り替えることができる。デジタルカメラ100のモードには、通常撮影モード、ボケ優先撮影モードと、再生モードがある。撮影モードは、レリーズ釦の押下操作により、CCDイメージセンサ120が撮像している画像を記録するモードである。再生モードは、メモリカード140等に記録された画像を液晶ディスプレイ123に表示するモードである。ボケ優先撮影モードについては、詳細を後述する。
【0032】
〔1−2.本発明との対応関係〕
フォーカスレンズ111は、本発明のフォーカスレンズの一例である。CCDイメージセンサ120は、本発明の撮像部の一例である。コントローラ130は、本発明の取得部の一例である。コントローラ130は、本発明のオートフォーカス制御部の一例である。コントローラ130とフォーカスモータ115とからなる構成は、本発明のフォーカス調節部の一例である。コントローラ130は、本発明の第二の取得部の一例である。デジタルカメラ100は、本発明の撮像装置の一例である。
【0033】
〔2.動作〕
以下図3〜図5を用いてデジタルカメラ100のボケ優先撮影モードの動作を説明する。
【0034】
図3は、実施の形態1に係るデジタルカメラ100のボケ優先撮影モードのフローチャートである。まず、図3を用いてボケ優先撮影モードの動作概要を説明する。使用者によるモードダイアル176の操作を受け付けることにより、デジタルカメラ100のモードとしてボケ優先撮影モードが選択される(S300)。コントローラ130は、フォーカスモータ115に制御信号を通知し、ベストピント位置よりピント位置をシフトした位置(像面シフト位置)にフォーカスレンズ111を移動させる(S301)。フォーカスレンズ111が像面シフト位置にあるときに形成された被写体像を露光することにより生成された画像データは、AFE121にて各種の画像処理がなされた後、画像処理部122にて周辺解像補正処理が施される(S302)。画像処理部122における各種処理が完了した画像データはメモリーカード140等に記録される。以下、像面シフト動作、周辺解像補正動作について順に説明する。
【0035】
図4は、像面シフト動作(図3におけるS301)の詳細フローチャート図である。ズームレバー171が使用者により操作されると、入力された情報に基づき、コントローラ130は、ズームモータ116を駆動し、ズームレンズ112を所定の位置に移動させる。この際、コントローラ130は、焦点距離/被写体距離テーブル(図8)を参照し、ズームレンズ112の位置情報から、光学系の現在のレンズ位置による焦点距離情報を読み出す。ここで焦点距離/被写体距離テーブル(図8)とは、ズームレンズ111とフォーカスレンズ112の位置情報に対応する焦点距離情報と被写体距離情報が光学的に演算されたテーブルであり、コントローラ130内のROMに予め格納されている。コントローラ130は、ズームレンズ111やフォーカスレンズ112の位置情報から焦点距離情報や被写体距離情報を知ることが可能である。ズームレンズ111やフォーカスレンズ112の位置情報は、各レンズの原点位置からのモータ駆動ステップ数に換算されてテーブルに格納されている。例えば、ズームレンズ112の現在位置が、ズームレンズ111の原点位置から560ステップであるとき、コントローラ130は、焦点距離/被写体距離テーブル(図8)を参照することで、焦点距離が200mmであることを読み出す(S400)。コントローラ130は、読み出した焦点距離情報をバッファメモリ124に一時記憶する。
【0036】
このとき、コントローラ130は、使用者によりレリーズ釦170が半押し操作されたか否かを監視している(S401)。レリーズ釦170が使用者により半押し操作されると(S401におけるYes)、コントローラ130は、AE動作を実行して被写体像の露出状態を判定した後、ボケ優先撮影モードのプログラム線図(図7)に従って絞り値、シャッタ速度を決定する(S402)。この際、コントローラ130は、絞り値情報(F値情報)を読み出し、バッファメモリ124に一時記憶する(S403)。
【0037】
ここで、デジタルカメラ100の通常撮影モード時のプログラム線図および、ボケ優先撮影モード時のプログラム線図について説明する。図6は、通常撮影モード時のプログラム線図である。図7は、ボケ優先撮影モード時のプログラム線図である。通常撮影モード時のプログラム線図(図6)では、適正露出とボケ量とのバランスが取れるよう、あまり高速シャッタとはならないよう線図が設定されている。例えば、通常撮影モード時のプログラム線図では、露出状態が明るくなって、シャッタ速度が1/1000秒に達したときに絞りを開放端から絞込側へと切り替えていく。一方、ボケ優先撮影モード時のプログラム線図(図7)では、ボケ効果を得るため、極力絞りが開放端を維持するように線図が設定されている。例えば、ボケ優先撮影モード時のプログラム線図では、露出状態が明るくなっても、通常撮影モード時よりは高速のシャッタ速度(例では1/2000秒)まで絞り値を開放端で維持する。更に露出状態が明るくなるような場面になって、シャッタ速度が1/2000秒を越えてから、絞りを開放端から絞込側へと切り替えていく構成とすることが望ましい。
【0038】
次に、コントローラ130は、AF動作を実行する(S404)。AF動作において、コントローラ130は、フォーカスモータ115を駆動し、フォーカスレンズ111を移動させながらCCDイメージセンサ120に取り込まれた画像のコントラスト値を判定していく。そして、コントローラ130は、コントラスト値が最大となるフォーカスレンズ位置(ベストピント位置)を判定する。コントローラ130は、焦点距離/被写体距離テーブル(図8)を参照し、フォーカスレンズ111のベストピント位置における位置情報から、被写体距離情報を読み出す。例えば、現在の光学系のレンズ位置による焦点距離が200mmであり、ベストピント位置にあるときのフォーカスレンズ111の位置が、フォーカスレンズ111の原点位置から460ステップであるとき、コントローラ130は、焦点距離/被写体距離テーブル(図8)を参照することで、被写体距離は2mであることを読み出す(S405)。コントローラ130は、読み出した被写体距離情報をバッファメモリ124に一時記憶する。
【0039】
続いて、コントローラ130は、像面シフト量を決定する。まず、コントローラ130は、バッファメモリ124に記憶された焦点距離情報(S400にて記憶したもの)、絞り値情報(S403にて記憶したもの)、被写体距離情報(S405にて記憶したもの)を読み出す。コントローラ130は、ROMに格納された像面シフト量テーブル(図9)を参照して、焦点距離情報、絞り値情報、被写体距離情報に基づき、像面シフト量を決定する(S406)。
【0040】
図9は、像面シフト量テーブルを示している。ここで像面シフト量テーブル(図9)とは、焦点距離情報、被写体距離情報、絞り値情報に対応する、フォーカスレンズ111の像面シフト量が光学的に演算されたテーブルである。像面シフト量とは、フォーカスレンズ111のベストピント位置における焦点深度情報に基づく値であり、ボケ優先撮影を行うためにフォーカスレンズ111をベストピント位置からシフトすべき距離量である。像面シフト量は、モータステップ数換算でテーブルに格納されている。すなわち、コントローラ130は、像面シフト量テーブルを参照することにより、ボケ優先撮影を行うためにフォーカスレンズ111を駆動すべきステップ数を把握することができる。なお、焦点深度とは、画像として一般的にボケを感じない像面シフト範囲の度合であり、CCDイメージセンサ120の像面から許容可能であるピント位置の移動量を示す。一般的にボケを許容できる範囲(面積)を許容錯乱円径(δ)により表すとすると、焦点深度は、絞り値(F値)×許容錯乱円径(δ)×2(前後方向)で表される。許容錯乱円径の大きさは、本来画像の出力サイズに影響されるが、例えば単版CCD等に代表されるベイヤー配列構成では2画素毎に各色のカラーフィルタが形成されていることから、許容錯乱円径を2画素分のサイズとしておくと画像出力サイズに影響なくボケを感じないため望ましい。焦点深度は、図10に示すように、CCDイメージセンサ120の像面を中心として前後に範囲を有する。一般に、フォーカスレンズ111によって形成される像面は、像面湾曲収差によりお椀形に曲がっている。そのため、ボケ優先撮影が可能なシフト方向と、画像の中心から周辺にかけて合焦状態が良好になるようなシフト方向とが存在する。上記の像面シフト量は、ボケ優先撮影を行うためのシフト量であるため、焦点深度の半分の値であるFδとなる。ボケ優先撮影を行うためのフォーカスレンズ111のシフト方向については後述する。
【0041】
コントローラ130は、像面シフト量(S406により決定したもの)に基づき、フォーカスモータ115を駆動させ、フォーカスレンズ111を移動させる(S407)。すなわち、AF動作において、コントラスト値が最大となるフォーカスレンズ位置(ベストピント位置)を判定した後、フォーカスレンズ111をベストピント位置に移動させるとき、ベストピント位置に像面シフト量を加算した移動量に基づき、フォーカスレンズ111を像面シフト位置まで一気に移動させる。なお、フォーカスレンズ111を一旦ベストピント位置に移動させてから、像面シフト量に従ってシフトさせてもよいが、この場合はタイムラグが発生するため望ましくない。
【0042】
フォーカスレンズ111を像面シフト量に従ってシフトさせる方向について図10を用いて説明する。図10は、フォーカスレンズ111の像面湾曲率が負である場合の、像面シフトを説明するためのイメージ図である。フォーカスレンズ111の像面湾曲率が負である場合、ベストピント位置1001から像面シフト量だけCCD像面1000の手前方向にシフトした位置(シフトピント位置1002)にフォーカスレンズ111の結像面が来るように、フォーカスレンズ111を駆動する。フォーカスレンズ111の結像面がベストピント位置1001にあるとき、結像面におけるb―c−dの範囲はCCD像面の焦点深度内にあるためボケ影響が知覚されないが、a―bおよびd−eの範囲はCCD像面の焦点深度外にあるため、周辺部に行くにつれてボケ影響が知覚されてくる。一方、フォーカスレンズ111の結像面がシフトピント位置1002にあるとき、結像面の中心であるgは、CCD像面の焦点深度内にあるためボケ影響が知覚されないが、f−gおよびg−hの範囲は、CCD像面の焦点深度外にあるため、周辺部に行くにつれてボケ影響が知覚されてくる。すなわち、周辺部に行くにつれてボケが広がる方向になる。従って、像面湾曲率が負である場合、図10に示すようにフォーカスレンズ111をレンズ位置Aからレンズ位置Bにシフトさせることで、ボケ味を表現した画像撮影が可能となる。
【0043】
以上の動作を実行した後、デジタルカメラ100は、像面シフト動作を終える。
【0044】
デジタルカメラ100は、像面シフト動作を終えると、続いて周辺解像補正動作を実行する。図5は周辺解像補正(図3におけるS302)の詳細なフローチャートである。コントローラ130は、上述の像面シフト動作を終えると、レリーズ釦170の全押し操作がなされたか否かを監視する(S500)。レリーズ釦170が全押し操作されたと判定したとき(S500におけるYes)、コントローラ130は以下に説明する動作を実行する。
【0045】
まず、コントローラ130は、露光動作を実行する(S501)。このとき、コントローラ130は、ステップS402において決定した絞り値、シャッタ速度に基づいて、絞りモータ117を駆動し絞り113を所定の絞りに変更し、シャッタモータ118を駆動しシャッタ114を閉じる。CCDイメージセンサ120が露光により生成した画像データは、AFE121に出力される。画像データは、AFE121にて各種処理が施された後、画像処理部122に取り込まれる。
【0046】
続いて、コントローラ130は、画像処理部122に取り込まれた画像データに周辺解像補正処理を施すために、補正ゲインを算出する(S502)。コントローラ130は、バッファメモリ124に記憶された焦点距離情報(S400にて記憶したもの)、絞り値情報(S403にて記憶したもの)、被写体距離情報(S405にて記憶したもの)を読み出す。コントローラ130は、ROMに格納された補正ゲインテーブル(図11)を参照して、焦点距離情報、絞り値情報、被写体距離情報に基づき、各画像の画角(0.0FA−1.0FA)における周辺解像補正ゲインを決定する(S502)。周辺解像補正ゲインは、ターゲットとする解像度の画像データを得るために、レンズMTFデータに乗じるゲインである。図12は、周辺解像度の補正ゲインカーブのイメージである。図13は、レンズMTFデータのイメージ図である。図14は、出力解像度データのイメージ図である。図12から図14において、横軸は画角(FA:Field Angle)を表している。すなわち、画角が低い値のときは、画像の中心部付近を表しており、画角が高い値のときは、画像の周辺部付近を表している。
【0047】
レンズMTFデータは、フォーカスレンズ111やズームレンズ112などを含む光学系110の構成により一義的に求まる光学性能情報である。CCDイメージセンサ120が出力する画像データには高域から低域にかけて周波数成分を有する。例えば、ある高域の周波数成分と、低域の周波数成分を取り出して考えたとき、各周波数成分において、レンズMTFデータを有する。一方、ターゲットとする解像度の画像データは、高域の周波数成分に基づくデータと、低域の周波数成分に基づくデータとで、それぞれの減衰曲線の傾向が類似することが望ましい。これにより、低域から高域にかけてボケ味が滑らかに表現された画像データを得ることができる。
【0048】
補正ゲインテーブルは、図11に示すように、離散的な画角における補正ゲインを有している。そのため、コントローラ130は、周辺解像度補正処理を実行する際、補正ゲインテーブルにより得られる各画角における値を線形的に補間した補正ゲインカーブを使用する。図12は、周辺解像度の補正ゲインカーブのイメージである。ターゲットとする解像度の画像データにおいて、高域の周波数成分に基づくデータは、元のレンズMTF情報に対して画像の中心部の値が上がるようにゲイン計算され、画像の周辺部の値が下がるようにゲイン計算される。低域の周波数成分に基づくデータは、元のレンズMTF情報に対して画像の中心部から周辺部にかけて値が一様に下がるようにゲイン計算される。これにより、入力画像データに対して、画像の中心部のコントラスト値を電子的に高め、画像の周辺部のコントラストを電子的に弱めることができる。従って、中心付近はピント状態が良好で、周辺部に行くに従ってボケ味を増した画像データを得ることができる。
【0049】
その後、画像処理部122は、周辺解像度の補正ゲイン量(S502にて決定したもの)に基づき、入力画像データに対して画像処理を施す(S503)。画像データは、画像処理部122にて各種処理が施された後、メモリカード140に記録される(S504)。以上の動作を実行した後、デジタルカメラ100は、周辺解像補正動作を終える。
【0050】
以上のように、実施の形態1のデジタルカメラ100は、光軸方向に進退することにより被写体像のフォーカス状態を調節するフォーカスレンズ111と、被写体像を撮像して画像を生成するCCDイメージセンサ120と、被写体像からフォーカス状態に関する情報を取得するコントローラ130と、コントローラ130が取得したフォーカス状態に関する情報に基づいて、フォーカスレンズ111の結像面がCCDイメージセンサ120に合うフォーカスレンズ111の位置を検出するコントローラ130と、フォーカスレンズ111の結像面が、コントローラ130が検出した位置にフォーカスレンズ111があるときの焦点深度内から離れる方向に、フォーカスレンズ111を焦点深度内で設定される所定量移動させるコントローラ130とフォーカスモータ115とからなる構成とを備える。これにより、デジタルカメラ100は、ボケ味を表現した画像撮影ができる撮像装置を提供することができる。
【0051】
〔2.他の実施の形態〕
本発明は、上記実施の形態1に限定されず、種々の実施形態が考えられる。以下、本発明の他の実施の形態についてまとめて記載する。
【0052】
上記実施の形態1において、CCDイメージセンサ120を、撮像部の一例として説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、CMOSイメージセンサや、NMOSイメージセンサなど他の撮像素子であっても本発明に適用可能である。また上記実施の形態において、色分離のためのフィルタ構成を、RGBの原色フィルタとしたが、CMY等の補色フィルタでも良い。
【0053】
また、上記実施の形態1において、ベイヤー配列で説明したため、許容錯乱円径を2画素分としたが本発明はこれに限定されない。例えば、3MOSセンサを撮像部として適用した場合、許容錯乱円径を画素1個分にしてもよい。また、許容錯乱円径は、プリントアウトする際の用紙サイズなど、目標の画像出力サイズに応じて任意に設定するようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施の形態1において、コントラストAF方式のAF動作を実行するようにしたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、位相差AF方式や他のAF方式であっても、合焦位置が検出できるものであればいずれを採用してもよい。
【0055】
また、上記実施の形態1において、像面シフト量をFδとしたが本発明はこれに限定されない。像面シフト量としたFδは、画像へのボケ影響が許容できる限界基準値である。そのため、像面シフト量は、Fδ以下の値でもボケが表現できる値を適宜採用すればよい。
【0056】
また、上記実施の形態1において、像面湾曲率が負である場合を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図15に示すように像面湾曲率が正である場合であっても本発明は適用可能である。但し、像面湾曲率が正である場合は、像面湾曲率が負である場合とは逆で、ベストピント位置1001から像面シフト量だけCCD像面1000の奥方向にシフトした位置(シフトピント位置1002)にフォーカスレンズ111の結像面が来るように、フォーカスレンズ111を駆動する。フォーカスレンズ111の結像面がベストピント位置1001にあるとき、結像面におけるb―c−dの範囲はCCD像面の焦点深度内にあるためボケ影響が知覚されないが、a―bおよびd−eの範囲はCCD像面の焦点深度外にあるため、周辺部に行くにつれてボケ影響が知覚されてくる。一方、フォーカスレンズ111の結像面がシフトピント位置1002にあるとき、結像面の中心であるgは、CCD像面の焦点深度内にあるためボケ影響が知覚されないが、f−gおよびg−hの範囲は、CCD像面の焦点深度外にあるため、周辺部に行くにつれてボケ影響が知覚されてくる。すなわち、周辺部に行くにつれてボケが広がる方向になる。従って、像面湾曲率が正である場合は、図15に示すようにフォーカスレンズ111をレンズ位置Aからレンズ位置Bにシフトさせることで、ボケ味を表現した画像撮影が可能となる。
【0057】
上記実施の形態1において、図12に示すように、補正ゲインカーブが画角が大きくなるに従って一様に下がっていうように算出したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、画角が大きくなる途中まで略一定の補正ゲインを保持し、画角の値が画像のごく周辺部における値に達したときに補正ゲインを下げるように算出するようにしてもよい。例えば、被写体に人物が含まれるような場合、中心から一様に補正ゲインを下げてしまうと、顔の周辺部のボケが不必要に強調されてしまうことがあるが、このように補正ゲインを算出することで、人物と背景のコントラストを付けやすくすることができる。
【0058】
以上のように、本発明によれば、ボケ味を表現した画像撮影ができる撮像装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明はデジタルカメラ100への実施に限定されない。すなわち、ムービーカメラや携帯電話など、被写体のフォーカス状態を調節可能な撮像装置に本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
100 デジタルカメラ
111 フォーカスレンズ
112 ズームレンズ
113 絞り
114 シャッタ
120 CCDイメージセンサ
121 AFE(アナログ・フロント・エンド)
122 画像処理部
123 液晶ディスプレイ
124 バッファメモリ
130 コントローラ
140 メモリカード
141 カードスロット
142 フラッシュメモリ
150 操作部
170 レリーズ釦
171 ズームレバー
172 電源釦
173 選択釦
174 決定釦
175 ディスプレイ釦
176 モードダイアル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸方向に進退することにより被写体像のフォーカス状態を調節するフォーカスレンズと、
前記被写体像を撮像して画像を生成する撮像部と、
前記被写体像からフォーカス状態に関する情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得したフォーカス状態に関する情報に基づいて、前記フォーカスレンズの結像面が前記撮像部に合うフォーカスレンズの位置を検出するオートフォーカス制御部と、
前記フォーカスレンズの結像面が、前記オートフォーカス制御部が検出した位置に前記フォーカスレンズがあるときの焦点深度内から離れる方向に、前記フォーカスレンズを所定量移動させるフォーカス調節部と、
を備える撮像装置。
【請求項2】
前記所定量は、前記焦点深度内で設定される、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記フォーカスレンズを含む光学系の状態に基づいて、前記撮像部が生成する画像の解像度を、前記画像の中心部から周辺部にかけて補正する補正係数を取得する第二の取得部と、
前記第二の取得部が算出した補正係数に基づいて、前記撮像部が生成した画像を補正する画像処理部と、を更に備えた、
請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記フォーカスレンズを含む光学系の状態は、焦点距離、被写体距離、絞り値に関する情報である、
請求項1から3のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項5】
光軸方向に進退することにより被写体像のフォーカス状態を調節するフォーカスレンズと、
前記被写体像を撮像して画像を生成する撮像部と、
前記被写体像からフォーカス状態に関する情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得したフォーカス状態に関する情報に基づいて、前記撮像部に対する合焦位置を検出するオートフォーカス制御部と、
前記フォーカスレンズを含む光学系の像面湾曲率が負のときは、前記フォーカスレンズを前記合焦位置よりも前記撮像部に対して離れた位置に制御し、前記フォーカスレンズを含む光学系の像面湾曲率が正のときは、前記フォーカスレンズを前記合焦位置よりも前記撮像部に対して近づいた位置に制御する制御部と、
を備える撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2011−180545(P2011−180545A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47431(P2010−47431)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】