説明

撮像装置

【課題】電子先幕を採用した撮像装置において機械式の後幕の駆動を制御する撮像装置を提供することを課題とする。
【解決部】撮像装置は、撮像素子と、前記撮像素子の蓄積電荷を画素ライン毎に所定方向に順次リセットすることにより電子先幕を擬似的に走行させる制御部と、開口を有する基板、前記開口を開閉可能な機械式の後幕、前記後幕を駆動するアクチュエータ、前記後幕の走行の軌跡上での所定位置での通過を検出する検出部、を有したフォーカルプレーンシャッタと、前記検出部の検出結果に応じて前記アクチュエータの駆動を制御する駆動制御部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、機械式の後幕の走行特性に応じて電子先幕を制御する撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−245604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような電子先幕を採用した撮像装置において、機械式の後幕の駆動を制御する撮像装置は存在しない。
【0005】
そこで本発明は、電子先幕を採用した撮像装置において機械式の後幕の駆動を制御する撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、撮像素子と、前記撮像素子の蓄積電荷を画素ライン毎に所定方向に順次リセットすることにより電子先幕を擬似的に走行させる制御部と、開口を有する基板、前記開口を開閉可能な機械式の後幕、前記後幕を駆動するアクチュエータ、前記後幕の走行の軌跡上での所定位置での通過を検出する検出部、を有したフォーカルプレーンシャッタと、前記検出部の検出結果に応じて前記アクチュエータの駆動を制御する駆動制御部と、を備えた撮像装置によって達成できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電子先幕を採用した撮像装置において機械式の後幕の駆動を制御する撮像装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、フォーカルプレーンシャッタを備えたカメラのブロック図である。
【図2】図2は、フォーカルプレーンシャッタの正面図である。
【図3】図3A、3Bは、それぞれ先幕アクチュエータ、後幕アクチュエータの説明図である。
【図4】図4は、薄板の説明図である。
【図5】図5A、5Bは、センサの説明図である。
【図6】図6は、フォーカルプレーンシャッタのタイミングチャートである。
【図7】図7は、フォーカルプレーンシャッタの動作の説明図である。
【図8】図8は、フォーカルプレーンシャッタの動作の説明図である。
【図9】図9は、フォーカルプレーンシャッタの動作の説明図である。
【図10】図10は、フォーカルプレーンシャッタの動作の説明図である。
【図11】図11は、フォーカルプレーンシャッタの動作の説明図である。
【図12】図12は、後幕の走行速度が遅くなった場合のタイミングチャートである。
【図13】図13は、後幕コイルに印加される電流が変更された場合のタイミングチャートである。
【図14】図14A、14Bは、後幕コイルに印加される電流の値を補正するためのマップである。
【図15】図15A〜15Fは、後幕の走行期間中に後幕コイルに印加される電流の値の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、フォーカルプレーンシャッタ1を備えたカメラ(撮像装置)Aのブロック図である。カメラAは、フォーカルプレーンシャッタ1、制御部110、撮像素子130、駆動制御部170を備えている。フォーカルプレーンシャッタ1は、詳しくは後述するが先幕アクチュエータ70a、後幕アクチュエータ70b、センサ60を備えている。駆動制御部170は、制御部110からの指令に応じて先幕アクチュエータ70a、後幕アクチュエータ70bの駆動を制御する。駆動制御部170は、CPU等を備えている。制御部110は、詳しくは後述するがセンサ60からの信号に応じて駆動制御部170に所定の指令を出す。駆動制御部170は、この指令を受けて先幕アクチュエータ70a、後幕アクチュエータ70bの駆動を制御する。制御部110は、カメラ全体の動作を制御し、CPU、ROM、RAM等を備えている。撮像素子130は、CMOSである。撮像素子130は、被写体像を光電変換作用により電気的信号に変換する受光素子である。
【0010】
制御部110は、撮像素子130の蓄積電荷を画素ライン毎に所定方向に順次リセットすることにより電子先幕を擬似的に走行させる制御部の一例に相当する。具体的には、後述する先幕20A、後幕20Bの走行方向と直交する撮像素子130の画素ライン毎に、撮像素子130の蓄積電荷をリセットする。これにより、電子的な先幕が露光開始位置から露光終了位置へ向けて擬似的に走行する。尚、カメラAは、図1には図示していないが、焦点距離を調整するためのレンズ等を備えている。
【0011】
図2は、フォーカルプレーンシャッタ1の正面図である。図2では、先幕アクチュエータ70a、後幕アクチュエータ70bについては省略してある。フォーカルプレーンシャッタ1は、基板10、羽根21a、21b〜24b、アーム31a、32a、31b、32b、先幕アクチュエータ70a、後幕アクチュエータ70b等を有している。基板10には、矩形状の開口11を有している。
【0012】
後幕20Bは、4枚の羽根21b〜24bから構成される。先幕20Aも同様に、4枚の羽根から構成されるが、図2には1枚の羽根21aのみを示している。先幕20A、後幕20Bは、いずれも機械式である。図2は、先幕20Aが重畳状態であり後幕20Bが展開状態の場合を示している。図2の場合には、先幕20Aは開口11から退避し、後幕20Bが開口11を閉鎖している。
【0013】
先幕20Aはアーム31a、32aに連結されている。後幕20Bは、アーム31b、32bに連結されている。これらアーム31a、32a、31b、32bは、それぞれ基板10に回転自在に支持されている。
【0014】
基板10には、アーム31a、31bをそれぞれ駆動するための先幕駆動レバー40a、後幕駆動レバー40bが設けられている。先幕駆動レバー40a、後幕駆動レバー40bは、それぞれ、軸部45a、45bを有している。軸部45a、45bは、基板10に対して回転可能に支持されている。これにより、先幕駆動レバー40a、後幕駆動レバー40bは、基板10に所定範囲を回転可能に支持されている。先幕駆動レバー40a、後幕駆動レバー40bには、それぞれ駆動ピン43a、43bが設けられている。基板10には、駆動ピン43a、43bの移動をそれぞれ逃す逃げ孔13a、13bが設けられている。逃げ孔13a、13bは、それぞれ円弧状である。駆動ピン43a、43bは、それぞれアーム31aの嵌合孔、アーム31bの嵌合孔と嵌合している。先幕駆動レバー40aが回転することにより、アーム31aが回転し、これにより先幕20Aが走行する。同様に、後幕駆動レバー40bが回転することにより、アーム31bが回転し、これにより後幕20Bが走行する。尚、後幕駆動レバー40bには薄板50が設けられている。薄板50は後幕駆動レバー40bと共に回転する。センサ60は、詳しくは後述するが、基板10上に配置されている。
【0015】
図3A、3Bは、それぞれ先幕アクチュエータ70a、後幕アクチュエータ70bの説明図である。先幕アクチュエータ70a、後幕アクチュエータ70bは、基板10に支持される。先幕アクチュエータ70a、後幕アクチュエータ70bは、それぞれ先幕駆動レバー40a、後幕駆動レバー40bを駆動する。先幕アクチュエータ70aは、基板10に回転可能に支持されたロータ72a、励磁されることによりロータ72aとの間で磁力が作用するステータ74a、ステータ74aを励磁するための先幕コイル76aを備えている。ロータ72aは、周方向に異なる極性に着磁された永久磁石である。ロータ72aの回転軸は、先幕駆動レバー40aの軸部45aに連結されている。このため、先幕コイル76aへの通電によりロータ72aが回転し、先幕駆動レバー40aが回転する。先幕駆動レバー40aが回転することにより、先幕20Aが走行する。また、先幕コイル76aへの逆通電によりロータ72aが逆回転し、先幕20Aが前述とは逆方向に走行する。後幕アクチュエータ70bについても同様に、後幕コイル76bへの通電によって後幕アクチュエータ70bのロータ72bが回転することにより後幕駆動レバー40bが回転し、後幕20Bが走行する。また、後幕コイル76bへの逆通電により、後幕20Bは前述とは逆方向に走行する。尚、ロータ72aと先幕駆動レバー40aとの連結は、ギアなどを介して間接的に連結されていてもよい。即ち、ロータ72aの回転に連動して先幕駆動レバー40aが回転する構成であればよい。
【0016】
図4は、薄板50の説明図である。薄板50は薄板状である。薄板50は、後幕駆動レバー40bの軸部45bに嵌合する嵌合孔52を有している。また薄板50には、後幕駆動レバー40bの係止ピン49bと嵌合する係止孔59が形成されている。薄板50は、嵌合孔52を中心とした反時計方向に、突出部54、切欠部55、突出部56、切欠部57が形成されている。突出部54、56は、径方向外側に突出している。係止孔59は突出部54の端に形成されている。
【0017】
図5A、5Bは、センサ60の説明図である。センサ60は、基板10上に配置されている。センサ60は、互いに対向するように配置された発光素子62、受光素子63を有している。発光素子62から照射された光は、受光素子63で受光される。図5A、5Bに示すように、後幕駆動レバー40bの回転に応じて、薄板50の突出部54、56は、発光素子62、受光素子63間に移動する。薄板50の突出部54、56が発光素子62、受光素子63間に位置すると、発光素子62から照射された光は遮断される。この際に受光素子63の出力信号に基づいて、薄板50が発光素子62と受光素子63との間に位置しているか否かを検出でき、後幕駆動レバー40bの位置を検出することができる。この結果、後幕20Bの位置を検出することができる。
【0018】
尚、センサ60は上記のような構成に限定されない。例えば、センサ60は、発光素子と、発光素子の光を反射するミラーと、ミラーにより反射された光を受光する受光素子と、を含む構成であってもよい。薄板50が、発光素子とミラーとの間、または、受光素子とミラーとの間に位置することにより、薄板50の位置を検出できる。
【0019】
次に、フォーカルプレーンシャッタ1の動作について説明する。図6は、フォーカルプレーンシャッタ1のタイミングチャートである。図7〜11は、フォーカルプレーンシャッタ1の動作の説明図である。尚、図7〜11においては、一部構成を省略してある。また、図7〜11においては、羽根21a、21bのみを示している。羽根21bは、後幕20Bを構成する複数の羽根のうちの一枚であり、アーム31b、32bの最も先端側に連結されている。また、羽根21bは、後幕20Bが走行する際に最も先に開口11に進行する。尚、図11は、露光作動終了の状態を示している。
【0020】
図11における露光作動終了の状態において、後幕コイル76bに逆通電することにより後幕駆動レバー40bが反時計方向へ回転する。これにより、図7に示すように後幕20Bは重畳して開口11から退避するように移動する。これにより、開口11は全開状態となる。また、後幕駆動レバー40bが反時計方向に回転することにより、薄板50も反時計方向に回転する。薄板50が反時計方向に回転することにより、切欠部57、突出部56、切欠部55、突出部54が順にセンサ60の発光素子62と受光素子63との間を通過する。突出部54が発光素子62と受光素子63との間に位置した状態で薄板50が停止する。これにより、発光素子62からの光は薄板50の突出部54により遮られる。上述したように、図6に示す露光前のチャージを行なうチャージ状態においては、切欠部57、突出部56、切欠部55、突出部54が発光素子62と受光素子63との間を通過することにより、センサ60の出力信号が変化している。図6に示したセンサ60の出力信号は、詳細には受光素子63の出力信号である。発光素子62からの光が薄板50により遮蔽された際には受光素子63はL信号を制御部110に出力し、発光素子62からの光を受けた場合には受光素子63はH信号を制御部110に出力する。
【0021】
待機状態においては、開口11は全開状態のまま維持される。その後、撮影に際してカメラAのレリーズボタンが押されると、撮像素子130のデータクリアを行なうリセット状態を経て、所定期間経過後に露光を行なう露光状態となる。露光状態においては、制御部110は撮像素子130を制御して電子先幕を露光開始位置から露光終了位置へと擬似的に走行させる。電子先幕の走行が開始して所定時間後、制御部110は駆動制御部170に指令を出して後幕コイル76bに電流値A1の電流を印加させる。ここで、電流値A1は、本実施例のカメラAの出荷時に設定されている値である。後幕コイル76bに電流が印加されることにより、ロータ72bは時計方向に回転する。これにより、後幕20Bが開口11に向けて走行を開始する。これにより、羽根21bは、図7〜11に示すように、後幕20Bが開口11を閉じる。
【0022】
図7において、後幕20Bが走行する軌跡上に3つの地点である地点A〜Cを示している。地点A〜Cは、センサ60が検出可能な後幕20Bの通過位置を示している。また、図7には、走行開始時での羽根21bの先端の位置をスタート地点Sとして示しており、走行終了時での羽根21bの先端の位置を停止地点Eとして示している。
【0023】
図7の状態から後幕コイル76bに通電することにより、後幕駆動レバー40bが時計方向に回転すると、羽根21bが開口11に進行する。羽根21bがスタート地点Sから地点Aまでの区間SAを走行する間では、薄板50の突出部54は発光素子62の光を遮断している。図8に示すように、羽根21bの先端が地点Aに到達した場合には、発光素子62の光は薄板50の切欠部55を通過して受光素子63で受光される。これにより、図6に示す露光状態において、センサ60の信号はL信号からH信号に切り替わる。従って、制御部110は、センサ60の信号の変化により後幕20B、詳細には羽根21bが地点Aを通過したことを検出できる。
【0024】
羽根21bが地点Aから地点Bまでの区間ABを走行する間では、発光素子62の光は薄板50の切欠部55を通過して受光素子63で受光される。図9に示すように、羽根21bの先端が地点Bに到達した場合には、発光素子62の光は薄板50の突出部56によって遮断される。これにより、センサ60の信号はH信号からL信号に切り替わる。従って、制御部110は、センサ60からの信号の変化により羽根21bが地点Bを通過したことを検出できる。尚、地点Bは、後幕20Bが走行する方向での開口11の中間地点、即ち地点Aと地点Cとの中間地点であるが、この位置に限られない。
【0025】
羽根21bが地点Bから地点Cまでの区間BCを走行する間では、発光素子62の光は薄板50の突出部56により遮断される。図10に示すように、羽根21bの先端が地点Cに到達した場合には、突出部56は発光素子62の光から退避し、発光素子62の光は切欠部57を通過して受光素子63で受光される。これにより、センサ60の出力信号はL信号からH信号に切り替わる。従って、制御部110は羽根21bが地点Cを通過したことを検出できる。
【0026】
更に後幕駆動レバー40bが時計方向に回転して羽根21bが区間CEを走行する間では、発光素子62の光は切欠部57を通過して受光素子63で受光される。図11は、羽根21bが停止した、すなわち露光作動終了の状態を示している。この状態では開口11は後幕20Bにより閉じられる。以上のように、薄板50とセンサ60とにより、後幕20Bが地点A、地点B、地点Cを通過したことを検出できる。
【0027】
図6に示した、露出状態における開口の状態において、制御部110が撮像素子130の蓄積電荷を画素ライン毎に開口11の下部から上部へ、すなわち、地点Sから地点E方向に順次リセットすることにより電子先幕を擬似的に走行させた電子先幕の走行軌跡の例を実線で示している。露出期間ATは、電子先幕における地点Aを含む撮像素子130の画素ラインの蓄積電荷のリセット動作開始から、後幕20Bの羽根21bの先端が地点Aに到達するまでの時間、すなわち、開口下部露出時間を示す。また、同様に、露出期間BTは、電子先幕における地点Bを含む撮像素子130の画素ラインの蓄積電荷のリセット動作開始から、後幕20Bの羽根21bの先端が地点Bに到達するまでの時間、すなわち、開口中部露出時間を示し、また、露出期間CTは、電子先幕における地点Cを含む撮像素子130の画素ラインの蓄積電荷のリセット動作開始から、後幕20Bの羽根21bの先端が地点Cに到達するまでの時間、すなわち、開口上部露出時間を示している。
【0028】
ここで、後幕コイル76bに印加される電流値A1は、カメラAの初期状態において露出期間AT、BT、CTが一致するように設定されている。換言すれば、電流値A1は、カメラAの初期状態において、開口内における複数の画素ラインにおける露出期間とが一致するように設定されている。すなわち、開口下部露出時間、開口中部露出時間、開口上部露出時間が一致するような電流値A1により後幕20Bが駆動されるため、開口11内において露光ムラのない撮影が可能となる。
【0029】
走行期間tABは、羽根21bが地点Aから地点Bへ走行する期間を示している。走行期間tBCは、羽根21bが地点Bから地点Cへ走行する期間を示している。制御部110は、センサ60の信号の切り替わりによりこの走行期間tAB、tBCを把握することができる。制御部110は、これらのセンサ60の信号の切り替わりにより、羽根21bが地点Aから地点Cへ走行する期間、すなわち、後幕20Bの走行期間を把握することができる。
【0030】
同様に、制御部110は、既知の計時手段により、電子先幕における地点Aを含む撮像素子130の画素ラインの蓄積電荷のリセット動作開始から地点Cを含む撮像素子130の画素ラインの蓄積電荷のリセット動作開始までの期間、すなわち、電子先幕の走行期間を把握することができる。
【0031】
ここで、カメラAの初期状態において、後幕20Bの走行期間と電子先幕の走行期間とが一致している。すなわち、カメラAの初期状態において、後幕コイル76bに印加される電流値A1は、電子先幕の走行期間と後幕20Bの走行期間とが一致するように後幕20Bを駆動する。これにより、開口11内において露光ムラのない撮影が可能となる。
【0032】
経時変化により、後幕アクチュエータ70bのロータ72bの回転速度が遅くなるおそれがある。ロータ72bの回転速度が遅くなると、後幕20Bの走行速度も遅くなる。図12は、後幕20Bの走行速度が遅くなった場合のタイミングチャートである。T1´は、走行速度が遅くなった場合での後幕20Bの走行を示している。T1は、走行速度が遅くなる前の初期状態での後幕20Bの走行を示している。走行期間tAB´は、走行速度が遅くなった場合での羽根21bが区間ABを走行する期間を示している。走行期間tBC´は、走行速度が遅くなった場合での羽根21bが区間BCを走行する期間を示している。羽根21bの走行速度が遅くなると、走行期間tAB´、tBC´は、それぞれ走行期間tAB、tBCよりも大きくなる。
【0033】
後幕20Bの走行速度が遅くなった場合での露出期間AT´、BT´、CT´は、それぞれ、遅くなる前の初期状態での露出期間AT、BT、CTよりも長くなっている。また、露出期間BT´と露出期間BTとの差は、露出期間AT´と露出期間ATとの差よりも大きく、露出期間CT´と露出期間CTとの差は、露出期間BT´と露出期間BTとの差よりも大きい。すなわち、後幕20Bの走行速度が遅くなった場合、開口下部露出時間の時間変化よりも開口中部露出時間の時間変化が大きく、また、開口中部露出時間の時間変化よりも開口上部露出時間の時間変化のほうが大きくなる。このように、露光期間の差は、停止地点Eに近い画素ラインほど大きくなる。このように、各画素ラインで露光期間に差が生じて、撮像画像にムラが生じるおそれがある。本実施例のカメラAの制御部110は、このような後幕20Bの走行速度の低下に応じて、後幕コイル76bへ供給する電力を変更する。具体的には、制御部110は、電圧は一定のまま後幕コイル76bに印加する電流の値を変更する。
【0034】
図13は、後幕コイル76bに印加される電流が変更された場合のタイミングチャートである。制御部110は、羽根21bがSB区間を走行する間に後幕コイル76bに印加する電流の値を、電流値A1から電流値A2へと増大させる。また、制御部110は、羽根21bがBE区間を走行する間に後幕コイル76bに印加する電流の値を、電流値A2から電流値A3へと増大させる。これにより、T1´で示される前回の後幕20Bの走行に対して、今回、初期状態での後幕20Bの走行T1に戻すことができる。これにより、電流値を変更した後での露出期間AT、BT、CTを一致させ、電子先幕と後幕20Bによる開口内における複数の画素ラインにおける露出期間のバラツキを抑えることができる。尚、電流値A3は、電流値A2よりも大きい。電流値A2から電流値A3に変更するタイミングは、後幕20Bの走行を開始してからセンサ60の信号がH信号からL信号に切り変わった時であるが、これに限定されない。また、電流値を変更した後においては、露出期間AT、BT、CTの全てが一致することが望ましいが、このうち少なくとも2つが一致していればよい。
【0035】
このように後幕コイル76bに印加される電流値を増大させることにより、経時変化により後幕20Bの走行速度が遅くなった場合であっても、後幕20Bを初期状態と同じ動作特性で走行させることができる。これにより、後幕20Bの動作特性を電子先幕の動作特性と一致するように制御することができる。具体的には、露出期間AT、BT、CTが一致し、また、電子先幕の走行期間と後幕20Bの走行期間とが一致する。よって、電子先幕と後幕20Bによる開口内における複数の画素ラインでの露出期間の差を抑制できるため撮像画像にムラが生じることを抑制できる。
【0036】
図14A、14Bは、後幕コイル76bに印加される電流の値を補正するためのマップである。このようなマップは、制御部110のROMに予め記憶されている。図14Aの縦軸は、今回の露光動作での走行期間tAB´から前回の露光動作での走行期間tABを減算した値を示している。図14Bの縦軸は、今回の露光動作での走行期間tBC´から前回の露光動作での走行期間tBCを減算した値を示している。図14A、14Bの横軸は、初期状態での電流の値A1の補正電流値を示している。走行期間tAB´から走行期間tABを減算した値は、後幕20Bの走行速度の変化によって生じる、羽根21bが区間ABを走行するのに要した時間の差を意味する。走行期間tBC´から走行期間tBCを減算した値は、後幕20Bの走行速度の変化によって生じる、羽根21bが区間BCを走行するのに要した時間の差を意味する。
【0037】
補正電流値は、初期状態の電流の値A1に追加される電流値である。補正電流値は、プラスの値又はマイナスの値である。図14Aで示されている補正電流値は、羽根21bがSB区間を走行する間に後幕コイル76bに印加される電流の値A1に追加される電流値である。図14Bで示されている補正電流値は、羽根21bがBE区間を走行する間に後幕コイル76bに印加される電流の値A1に追加される電流値である。このように、羽根21bが所定区間を走行するのに要した時間の差に基づいて後幕コイル76bに印加される電流の値を補正することにより、後幕20Bの走行速度が遅れた場合であっても、次回の露光作動時において後幕20Bの走行速度を元の初期状態に戻すことができる。これにより、後幕20Bの走行速度が低下した場合であっても、次回の露光動作字には後幕20Bの走行速度を初期状態に復帰させることができる。これにより、後幕20Bの動作特性が電子先幕の動作特性に一致するように制御される。
【0038】
尚、後幕コイル76bに印加される電流の値が一定であるにもかかわらず、何らかの原因により後幕20Bの走行速度が増大する場合があり得る。そのような場合には、補正電流値はマイナスの値となるため、このマイナスの値を初期状態での電流値A1に加算することにより、補正後の電流値は初期状態での電流値A1よりも低下する。このように、後幕20Bの走行速度が増大した場合であっても、後幕20Bの走行速度を初期状態の走行速度に一致させることができる。
【0039】
本実施例では、後幕20Bの走行期間中での電力値の変更のタイミングは、羽根21bが地点Bを通過した時である。しかしながら、後幕20Bの走行期間中での電力の変更のタイミングは、羽根21bが地点Bを通過した時に限定されない。例えば、羽根21bが地点A、地点Bの何れかの地点を通過して一定期間経過した後に電流値を変更してもよい。
【0040】
図15A〜15Fは、後幕20Bの走行期間中に後幕コイル76bに印加される電流の値の変形例の説明図である。図15Aに示すように、後幕20Bが走行する全区間で電流値を、初期状態の電流値A1よりも大きな電流値A2にしてもよい。例えば、カメラAが高温環境下で使用される場合には、後幕コイル76bが高温化して抵抗値が増大して、後幕コイル76bに流れる電流の値が低下するおそれがある。このような場合に、電流値を補正することにより、後幕20B走行速度の低下を抑制できる。
【0041】
図15Bに示すように、後幕20Bの走行中に初期状態での電流値A1から電流値A2に変更してもよい。図15Cに示すように、後幕20Bの走行中に、電流値A3から電流値A3よりも低い電流値A2に変更してもよい。
【0042】
図15Dに示すように、後幕20Bの走行中に後幕コイル76bに印加する電流を停止して後幕20Bの走行速度を減速してもよい。これにより走行中の後幕20Bが停止する直前でロータ72bのトルクが弱まり、後幕20Bの停止時でのバウンドを防止できる。尚、この場合で電流の停止タイミングは、例えば羽根21bが地点Bを通過してから地点Cを通過するまでの間であってもよいし、または羽根21bが地点Cを通過した時であってもよい。
【0043】
図15Eに示すように、後幕20Bの走行中に電流値A1の逆方向の電流(電流値‐A1)を印加してもよい。これにより、ロータ72bは停止する直前で逆方向に回転しようとするので、後幕20Bの走行速度を停止直前で減速することができる。従ってこれによっても、後幕20Bのバウンドを抑制できる。
【0044】
図15Fに示すように後幕20Bの走行中に、電流値A1よりも低い電流値A−1から、電流値A1、電流値A2の順に変更してもよい。このように後幕20Bの走行中に電流の値を2回変更してもよいし、更に複数回変更してもよい。
【0045】
従来の撮像装置においては、機械式の後幕の動作特性に応じて電子先幕を制御することで電子先幕、後幕の動作特性を一致させていた。しかしながら、このような制御を行なうと、電子先幕、後幕がともに経時変化や環境変化により幕速が変わってしまうという不具合点がある。これにより、電子先幕、後幕の動作特性を一致させる制御が複雑になり電子先幕と後幕による開口内における複数の画素ラインにおける露出期間のバラツキの原因となる。また、高速移動中の被写体撮影時のフォーカルプレーン現象によって生じる画像歪が経時変化や環境変化で変わってしまうという問題点が生じる。本実施例の撮像装置においては、基本的に動作特性が変化しない電子先幕の走行特性に応じて機械式の後幕の走行特性の制御を行うため、従来と比べ、開口内における複数の画素ラインにおける露出期間のバラツキを抑えることができる。
【0046】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【0047】
上記実施例においては、後幕コイル76bに印加される電流値を変更したが、電流値を変更する代わりに電圧値を変更してもよい。これによっても後幕コイル76bに供給される電力を変更できるからである。
【0048】
対向する発光素子及び受光素子を備えたセンサを基板10に設け、後幕20Bが発光素子と受光素子との間を通過することにより、後幕20Bの、例えば羽根21bがこのセンサが設けられた位置を通過したことを検出してもよい。この場合、後幕20Bがこのセンサから退避している場合には、受光素子は発光素子からの光を受光する。後幕20Bがこのセンサを通過する場合には、発光素子の光は後幕20Bにより遮断されて受光素子は受光しない。
【0049】
上記のように、幕の走行の軌跡上での所定位置での通過を検出するセンサを、先幕20A用と後幕20B用との双方に設けてもよい。これにより、電子先幕を使用せずに先幕20A、後幕20Bで露出制御してもよい。
【0050】
カメラAは、先幕20A、先幕アクチュエータ70aを備えていなくてもよい。
【0051】
制御部110と駆動制御部170は、単一のICチップにより実現されていてもよい。
【0052】
上記実施例においては、羽根が合成樹脂製である場合を説明したが、薄く形成された金属製の羽根であってもよい。
【0053】
上記実施例において、先幕及び後幕は、それぞれ4枚の羽根から構成されるが、これに限定されない。先幕及び後幕は、それぞれ2枚以上の羽根で構成されていればよい。
【0054】
センサ60は、薄板50により発光素子62から受光素子63に向かう光が遮断されることにより、後幕駆動レバー40bの位置を検出するものであるが、このような構成に限定されない。例えば、後幕20Bの走行に伴い、受光素子から発光素子に向かう光を後幕駆動レバー40bが遮断するように突出部を後幕駆動レバー40bに設けてもよい。
【0055】
上記実施例において、後幕コイル76bに印加される電力を制御することにより、開口内における複数の画素ラインにおける露出期間とを一致させ、さらに電子先幕の走行期間と後幕20Bの走行期間とを一致させた例を挙げたが、開口内における複数の画素ラインにおける露出期間のみを一致させ、電子先幕の走行期間と後幕20Bの走行期間は一致させなくてもよい。
【0056】
また、上記実施例において、電子先幕の走行期間と後幕20Bの走行期間のみ一致させてもよい。すなわち、制御部110が、電子先幕の走行期間と後幕20Bの走行期間とが一致するように後幕を駆動するアクチュエータへの電力を制御することにより、経時変化により後幕20Bの走行速度が遅くなった場合であっても、後幕20Bを初期状態と同じ動作特性で走行させ撮像画像のムラを抑制してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 フォーカルプレーンシャッタ
10 基板
20A 先幕
20B 後幕
21a、21b 羽根
31a、32a、31b、32b アーム
40a 先幕駆動レバー
40b 後幕駆動レバー
50 薄板
54、56 突出部
55、57 切欠部
60 センサ
62 発光素子
63 受光素子
70a 先幕アクチュエータ
70b 後幕アクチュエータ
76b 後幕コイル
110 制御部
130 撮像素子
170 駆動制御部
AT、BT、CT、AT´、BT´、CT´ 露光期間
tAB、tBC、tAB´、tBC´ 走行期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、
前記撮像素子の蓄積電荷を画素ライン毎に所定方向に順次リセットすることにより電子先幕を擬似的に走行させる制御部と、
開口を有する基板、前記開口を開閉可能な機械式の後幕、前記後幕を駆動するアクチュエータ、前記後幕の走行の軌跡上での所定位置での通過を検出する検出部、を有したフォーカルプレーンシャッタと、
前記検出部の検出結果に応じて前記アクチュエータの駆動を制御する駆動制御部と、を備えた撮像装置。
【請求項2】
前記駆動制御部は、複数の前記画素ラインのうち少なくとも2つの画素ラインでの露光期間が一致するように前記アクチュエータへ供給する電力を変更する、請求項1の撮像装置。
【請求項3】
前記駆動制御部は、前記電子先幕の走行期間と前記後幕の走行期間とが一致するように前記アクチュエータへ供給する電力を制御する、請求項1又は2の撮像装置。
【請求項4】
前記駆動制御部は、前記後幕の走行中に前記アクチュエータへ供給する電力を変化させる、請求項1乃至3の何れかの撮像装置。
【請求項5】
前記駆動制御部は、前記後幕の走行中に前記アクチュエータへ供給する電力を停止する、請求項1乃至4の何れかの撮像装置。
【請求項6】
前記駆動制御部は、前記後幕の走行中に前記アクチュエータへの電力の通電方向を逆転する、請求項1乃至5の何れかの撮像装置。
【請求項7】
前記所定位置は、少なくとも2つである、請求項1乃至6の何れかの撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−208280(P2012−208280A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73267(P2011−73267)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】