説明

撮影装置及びその制御方法並びに制御用プログラム

【課題】 電子ズーム時における人物の顔の検出率を向上させ、人物の顔への焦点調節と露出制御を精度よく行う撮影装置及びその制御方法並びに制御用プログラムを提供する。
【解決手段】 A/D変換回路12と、該デジタル画像信号を映像データに処理する信号処理部13と、その映像データ内のズーム領域を所定の画角に変倍する電子ズーム部14と、変倍されたズーム領域の映像データを表示する記録/表示部18と、上記映像データ内の顔検出領域を所定の画角に変倍する電子ズーム部15と、変倍された顔検出領域の映像データから人物の顔の有無を検出すると同時に該人物の顔の座標位置情報を取得する顔領域判定部19と、該顔領域判定部19により取得された座標位置情報に基づいて、測距、測光及びホワイトバランスのいずれか1つを制御するCPU21とを備え、上記顔検出領域は、上記映像データの全体領域よりも狭く、且つ前記ズーム領域よりも広く設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルスチルカメラ等の撮影装置及びにその制御方法並びに制御用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラ等の撮影装置は、主被写体である人物の顔に焦点を合わせたときに、その人物の顔に最適な露出で撮影できることが求められている。
【0003】
従来のAF/AE制御では、液晶表示部の画面内の予め決められた領域を測距/測光領域とし、その測距/測光領域に焦点及び露出が合うように制御している。従って、主被写体である人物の顔が測距/測光領域に含まれていない場合には、人物の顔に焦点及び露出が合わない。
【0004】
例えば、画面中央部を測距/測光領域に設定していて、図8(A)に示すような二人の人物が並んだ構図や、図8(B)に示すような人物が画面の右側にずれている構図で撮影を実行すると、人物の背景に焦点及び露出が合ってしまう。尚、図8(A),(B)において灰色部分が測距/測光領域である。
【0005】
これに対して、画面内の画像(撮影画像)から人物の顔の位置を検出し、該検出された領域からAF/AE評価値を抽出して、焦点及び露出を合わせる撮影装置が従来より知られている(例えば、特許文献1〜特許文献5参照)。
【0006】
画面の一部を電子的に拡大して撮影する電子ズーム時においても同様に、電子ズームされた画面の領域内にある人物の顔の位置を検出し、該検出された人物の顔に焦点及び露出を合わせる必要がある。その際、人物の顔の位置を検出する領域(顔検出領域)を設定する方法として、2種類の方法がある。第1の方法は、顔検出領域を画面全体に設定する方法であり、検出された人物の顔でその位置が電子ズーム領域内に含まれるものに対して焦点及び露出を合わせる。第2の方法は、顔検出領域を電子ズーム領域と同一に設定する方法である。
【0007】
例えば図9(A),(B)において電子ズーム領域を点線で囲まれた領域、顔検出領域を灰色領域で示すと、電子ズーム領域と顔検出領域の関係は、第1の方法では図9(A)、第2の方法では図9(B)となる。
【0008】
第1の方法で人物の顔を検出している従来例として、特許文献2が挙げられる。特許文献2では、画面全体の映像データから人物の顔を検出し、顔の大きさが常に一定になるように光学ズームと電子ズームの倍率を制御している。
【特許文献1】特開平05−0418300号公報
【特許文献2】特開平06−217187号公報
【特許文献3】特開2001−119622号公報
【特許文献4】特開2003−107335号公報
【特許文献5】特開2003−107555号公報
【特許文献6】特開平09−251534号公報
【非特許文献1】M.A.Turk and A.P.Pentland, "Face recognition using eigenfaces", Proc. of IEEE Conf. on Computer Vision and Pattern Recognition, pp.586-591, 1991.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記第1の方法では、人物の顔の大きさが一定になるように電子ズーム倍率を上げていくと、画面全体すなわち顔検出領域に占める人物の顔の大きさは小さくなる。例えば、電子ズーム機能を用いて図10(A)に示すような構図の画像を撮影するときは、画面全体に占める顔の大きさは、図10(B)に示すように小さくなる。図10(B)において、点線で囲まれた領域が電子ズーム領域である。
【0010】
そして、顔検出領域に占める人物の顔の大きさが小さくなると、人物の顔の検出率が低下してしまうという問題が生じる。
【0011】
人物の顔の位置を検出する方法として、撮影画像の肌色領域の形状から判定する方法(例えば特許文献1、特許文献2参照)や、撮影画像と複数の標準パターンとのパターンマッチング法によって判定する方法(例えば、特許文献6参照)があるが、前者の場合、肌色領域の面積を判定基準に利用しているので人物の顔が小さいと検出することができず、後者の場合、小さい人物の顔を検出するにはさらに標準パターンが必要となり、処理時間が増大してしまうので、実際上は人物の顔が所定の大きさより大きくないと検出することができないという問題がある。
【0012】
一方、第2の方法では、人物の顔のアップ写真や人物が電子ズーム領域端に移動した際など、人物の顔の一部が電子ズーム領域からはみ出した場合には人物の顔として検出できなくなり、人物の顔の検出率が低下してしまうという問題がある。
【0013】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであって、電子ズーム時における人物の顔の検出率を向上させ、人物の顔への焦点調節と露出制御を精度よく行う撮影装置及びその制御方法並びに制御用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、請求項1の撮像装置は、撮像素子から得られるアナログ信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換手段と、前記デジタル画像信号を映像データに処理する信号処理手段と、前記映像データ内のズーム領域を所定の画角に変倍する第1変倍手段と、前記第1変倍手段により変倍されたズーム領域の映像データを表示する表示手段と、前記映像データ内の顔検出領域を所定の画角に変倍する第2変倍手段と、前記第2変倍手段により変倍された顔検出領域の映像データから人物の顔の有無を検出すると同時に該人物の顔の座標位置情報を取得する顔検出手段と、前記顔検出手段により取得された座標位置情報に基づいて、測距、測光及びホワイトバランスの少なくともいずれか1つを制御する制御手段とを備え、前記顔検出領域は、前記映像データの全体領域よりも狭く、且つ前記ズーム領域よりも広いことを特徴とする。
【0015】
請求項2の撮像装置は、撮像素子から得られるアナログ信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換手段と、前記デジタル画像信号を映像データに処理する信号処理手段と、前記映像データ内のズーム領域及び顔検出領域を所定の画角に変倍する変倍手段と、前記変倍手段により変倍されたズーム領域の映像データを表示する表示手段と、前記変倍手段により変倍された顔検出領域の映像データから人物の顔の有無を検出すると同時に該人物の顔の座標位置情報を取得する顔検出手段と、前記顔検出手段により取得された座標位置情報に基づいて、測距、測光及びホワイトバランスの少なくともいずれか1つを制御する制御手段とを備え、前記顔検出領域は、前記映像データの全体領域よりも狭く、且つ前記ズーム領域よりも広いことを特徴とする。
【0016】
請求項3の撮像装置は、請求項1又は2記載の撮影装置において、前記ズーム領域の映像データを記録する記録手段を備えていることを特徴とする。
【0017】
請求項4の撮像装置は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の撮影装置において、前記撮影装置は、デジタルスチルカメラであることを特徴とする。
【0018】
請求項5の撮像装置の制御方法は、撮像素子及び表示装置を備える撮像装置の制御方法において、前記撮像素子から得られるアナログ信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換工程と、前記デジタル画像信号を映像データに処理する信号処理工程と、前記映像データ内のズーム領域を所定の画角に変倍する第1変倍工程と、前記第1変倍工程により変倍されたズーム領域の映像データを前記表示装置に表示させる表示工程と、前記映像データ内の顔検出領域を所定の画角に変倍する第2変倍工程と、前記第2変倍工程により変倍された顔検出領域の映像データから人物の顔の有無を検出すると同時に該人物の顔の座標位置情報を取得する顔検出工程と、前記顔検出工程により取得された座標位置情報に基づいて、測距、測光及びホワイトバランスの少なくともいずれか1つを制御する制御工程とを備え、前記顔検出領域は、前記映像データの全体領域よりも狭く、且つ前記ズーム領域よりも広いことを特徴とする。
【0019】
請求項6の撮像装置の制御方法は、撮像素子及び表示装置を備える撮像装置の制御方法において、前記撮像素子から得られるアナログ信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換工程と、前記デジタル画像信号を映像データに処理する信号処理工程と、前記映像データ内のズーム領域及び顔検出領域を所定の画角に変倍する変倍工程と、前記変倍工程により変倍されたズーム領域の映像データ前記表示装置に表示させる表示工程と、前記変倍工程により変倍された顔検出領域の映像データから人物の顔の有無を検出すると同時に該人物の顔の座標位置情報を取得する顔検出工程と、前記顔検出工程により取得された座標位置情報に基づいて、測距、測光及びホワイトバランスの少なくともいずれか1つを制御する制御工程とを備え、前記顔検出領域は、前記映像データの全体領域よりも狭く、且つ前記ズーム領域よりも広いことを特徴とする。
【0020】
請求項7の制御用プログラムは、撮像素子及び表示装置を備える撮像装置で実行される制御用プログラムにおいて、前記撮像素子から得られるアナログ信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換モジュールと、前記デジタル画像信号を映像データに処理する信号処理モジュールと、前記映像データ内のズーム領域を所定の画角に変倍する第1変倍モジュールと、前記第1変倍モジュールにより変倍されたズーム領域の映像データを前記表示装置に表示させる表示モジュールと、前記映像データ内の顔検出領域を所定の画角に変倍する第2変倍モジュールと、前記第2変倍モジュールにより変倍された顔検出領域の映像データから人物の顔の有無を検出すると同時に該人物の顔の座標位置情報を取得する顔検出モジュールと、前記顔検出モジュールにより取得された座標位置情報に基づいて、測距、測光及びホワイトバランスの少なくともいずれか1つを制御する制御モジュールとを備え、前記顔検出領域は、前記映像データの全体領域よりも狭く、且つ前記ズーム領域よりも広いことを特徴とする。
【0021】
請求項8の制御用プログラムは、撮像素子及び表示装置を備える撮像装置で実行される制御用プログラムにおいて、前記撮像素子から得られるアナログ信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換モジュールと、前記デジタル画像信号を映像データに処理する信号処理モジュールと、前記映像データ内のズーム領域及び顔検出領域を所定の画角に変倍する変倍モジュールと、前記変倍モジュールにより変倍されたズーム領域の映像データ前記表示装置にを表示させる表示モジュールと、前記変倍モジュールにより変倍された顔検出領域の映像データから人物の顔の有無を検出すると同時に該人物の顔の座標位置情報を取得する顔検出モジュールと、前記顔検出モジュールにより取得された座標位置情報に基づいて、測距、測光及びホワイトバランスの少なくともいずれか1つを制御する制御モジュールとを備え、前記顔検出領域は、前記映像データの全体領域よりも狭く、且つ前記ズーム領域よりも広いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本願発明によれば、電子ズーム時において人物の顔の位置を検出する領域を画面全体よりも狭く、且つ電子ズーム領域よりも広くなるように設定するので、人物の顔の検出率を向上し、人物の顔への焦点調節と露出/ホワイトバランス制御を精度よく行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図1〜7を参照して本発明の第1〜第3の実施の形態を説明する。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置100の機能構成を示すブロック図である。
【0025】
同図において、10はレンズや絞り等からなる結像光学部であり、フォーカス調節や露出調節を行う。11は光学像を電気信号に変換するCCD等の撮像素子であり、12は撮像素子11からのアナログ画像信号をデジタル画像データに変換するA/D変換回路であり、13はA/D変換回路12の出力データにガンマ処理、補間処理、マトリクス変換等を施して映像データを作成する信号処理部であり、14及び15は画面内の指定範囲の映像データを所定の大きさに電子的に変倍する電子ズーム部である。
【0026】
16はメモリ(DRAM)17との間で映像データや各種制御データの書き込み/読み出しを行うメモリI/Fであり、18は映像データをCFカードなどの記録媒体に圧縮して記録し、またLCDモニタなどに映像データを表示する記録/表示部であり、19は映像データから人物の顔の領域を判定する顔領域判定部(顔検出手段)であり、20はAF/AE/WB(測距/測光/ホワイトバランス)評価値を検出するAF/AE/WB検出部である。21は各種制御を司るCPU(制御手段)であり、AF/AE/WB検出部20からの評価値に基づいて結像光学部10を制御し、また、信号処理部13での信号処理のパラメータ設定を行う。
【0027】
図2は、図1の撮像装置100で実行される処理内容を示すフローチャートである。
なお、本実施の形態では、撮像装置100が備える電子ズーム機能がオンの状態であるものとする。
【0028】
結像光学部10に入射した光は撮像素子11の受光面に結像され、撮像素子11からアナログ画像信号として出力される。アナログ画像信号はA/D変換回路12でデジタル画像データに変換され、信号処理部13に入力される(ステップS101)。
【0029】
信号処理部13では、ステップS102とステップS103の2つの処理が並行して実行される。ステップS102では、入力された画像データをそのまま(RAWデータ)の状態でメモリI/F16を介してメモリ17の予め決められたメモリ空間(メモリ空間A)に記憶する。一方、ステップS103では、入力された画像データにガンマ処理、補間処理、マトリクス変換等を施して画面全体の映像データを作成し、電子ズーム部14,15(第1変倍手段、第2変倍手段、変倍手段)に入力する。
【0030】
電子ズーム部14,15では、画面全体から映像データを切り出す領域と変倍率とをそれぞれ独立に設定することが可能であり、本実施の形態では、電子ズーム部14の切り出し領域は電子ズーム領域と位置及びサイズが同一であり、電子ズーム部15の切り出し領域(顔検出領域)を画面全体よりも狭く、かつ電子ズーム部14の切り出し領域(電子ズーム領域)よりも広くなるように設定する。尚、撮像装置100は、これらの設定(電子ズーム領域や顔検出領域の位置や大きさの設定及びこれらの領域に対する変倍率の設定)をユーザ自身が行えるように、操作子等の設定部を備えるようにしてもよい。
【0031】
電子ズーム領域と顔検出領域の関係を図3に示す。図3において電子ズーム領域は点線で囲まれた領域であり、顔検出領域は灰色で示す領域である。
【0032】
電子ズーム部14は、電子ズーム領域の映像データを電子的に変倍して記録/表示用の映像データを作成し(ステップS104)、メモリI/F16を介してメモリ17の予め決められたメモリ空間(メモリ空間B)に記憶する(ステップS105)。
【0033】
記録/表示部18は、ステップS105においてメモリ空間Bに記憶された記録/表示用の映像データをメモリI/F16を介して読み出し、CFカードなどの記録媒体に圧縮して記録し、またLCDモニタ等に表示し(ステップS106)、処理を終了する。
【0034】
一方、電子ズーム部15は、顔検出領域の映像データを電子的に変倍して顔検出用の映像データを作成し(ステップS107)、メモリI/F16を介してメモリ17の予め決められたメモリ空間(メモリ空間C)に記憶する(ステップS108)。
【0035】
顔領域判定部19は、ステップS108においてメモリ空間Cに記憶された顔検出用の映像データを用いて人物の顔の領域を検出する(ステップS109)。人物の顔領域の検出方法としては、主成分分析による固有顔(eigenface)を用いた方法(非特許文献1、M.A.Turk and A.P.Pentland, "Face recognition using eigenfaces", Proc. of IEEE Conf. on Computer Vision and Pattern Recognition, pp.586-591, 1991.)や、目、鼻、及び口等の特徴点を利用した方法(例えば、特許文献6)が適用可能である。これらの方法は、入力画像と複数の標準パターンとのパターンマッチング法により入力画像が人物の顔であるか否かを判定している。本実施の形態では、予めメモリ17のメモリ空間Dに記憶してある人物の顔の標準パターンと、ステップS108においてメモリ空間Cに記憶された顔検出用の映像データとの間でパターンマッチングを行う。
【0036】
AF/AE/WB検出部20は、ステップS109において検出された人物の顔領域の情報に基づいて、AF評価値を検出する領域(AF領域)、AE評価値を検出する領域(AE領域)およびWB評価値を検出する領域(WB領域)を設定する(ステップS110)。ステップS109において、人物の顔が存在しないと判定された場合(即ち、人物の顔の領域を検出できない場合)には、通常の方法でAF/AE/WB領域を設定する。なお、AF/AE/WB領域の設定は、CPU21で行っても構わない。
【0037】
ステップS111では、ステップS102においてメモリ空間Aに記憶されたRAWデータの内、ステップS110において設定したAF/AE/WB領域に含まれるRAWデータをAF/AE/WB検出部20に読み出し、AF/AE/WB評価値を検出する。CPU21は、ステップS111において得られたAF/AE評価値に基づいてAF/AE調整量を求め、結像光学部10を制御する(ステップS112)。また、ステップS111において得られたAE/WB評価値に基づいて、信号処理部13での信号処理のパラメータ設定を行う。
【0038】
以上説明したように、本実施の形態によれば、電子ズーム時において人物の顔の位置を検出する領域を画面全体よりも狭く、且つ電子ズーム領域よりも広くなるように設定するので、人物の顔の検出率を向上し、人物の顔への焦点調節と露出/ホワイトバランス制御を精度よく行うことが可能となる。
【0039】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置101の機能構成を示すブロック図である。
【0040】
第1の実施の形態に係る撮像装置100では、2つの電子ズーム部14,15を備えていたが、本実施の形態に係る撮像装置101は1つの電子ズーム部14のみを備えている。
【0041】
撮像装置101の電子ズーム部14以外の構成は、撮像装置100の構成を同様なので、その説明は省略する。
【0042】
図5は、図4の撮像装置101で実行される処理内容を示すフローチャートである。なお、本実施の形態では、撮像装置101が備える電子ズーム機能がオンの状態であるものとする。
【0043】
結像光学部10に入射した光は撮像素子11の受光面に結像され、撮像素子11からアナログ画像信号として出力される。アナログ画像信号はA/D変換回路12でデジタル画像データに変換され、信号処理部13に入力される(ステップS201)。
【0044】
信号処理部13では、ステップS202とステップS203の2つの処理が並行して実行される。ステップS202では、入力された画像データをそのまま(RAWデータ)の状態でメモリI/F16を介してメモリ17の予め決められたメモリ空間(メモリ空間A)に記憶する。一方、ステップS203では、入力された画像データにガンマ処理、補間処理、又はマトリクス変換等を施して画面全体の映像データを作成し、電子ズーム部14に入力する。
【0045】
本実施の形態では、電子ズーム部14の変倍率は電子ズーム領域が記録/表示用サイズになるように設定し、電子ズーム部14の画面全体から映像データを切り出す領域は画面全体よりも狭く、かつ電子ズーム領域よりも広い領域(顔検出領域)に設定する。尚、撮像装置101は、これらの設定(電子ズーム領域や顔検出領域の位置や大きさの設定及びこれらの領域に対する変倍率の設定)をユーザ自身が行えるように、操作子等の設定部を備えるようにしてもよい。
【0046】
電子ズーム領域と顔検出領域の関係は、上記図3と同様である。従って、電子ズーム部14において作成される映像データは、記録/表示用サイズよりも大きいものになる。
【0047】
電子ズーム部14は、顔検出領域の映像データを電子的に変倍して映像データを作成し(ステップS204)、メモリI/F16を介してメモリ17の予め決められたメモリ空間(メモリ空間B)に記憶する(ステップS205)。顔検出領域は電子ズーム領域よりも広く設定されているので、ステップS204で作成された映像データは、記録/表示用の映像データを含んでいる。
【0048】
記録/表示部18は、ステップS205においてメモリ空間Bに記憶された顔検出領域の映像データの内で電子ズーム領域の映像データをメモリI/F16を介して読み出し、CFカードなどの記録媒体に圧縮して記録し、またLCDモニタ等に表示する(ステップS206)。
【0049】
顔領域判定部19は、ステップS205においてメモリ空間Bに記憶された顔検出領域の映像データを用いて人物の顔の領域を検出する(ステップS207)。人物の顔領域の検出方法は、第1の実施の形態で説明したものと同じ方法が適用可能である。
【0050】
AF/AE/WB検出部20は、ステップS207において検出された人物の顔領域の情報に基づいて、AF評価値を検出する領域(AF領域)、AE評価値を検出する領域(AE領域)およびWB評価値を検出する領域(WB領域)を設定する(ステップS208)。ステップS207において人物の顔が存在しないと判定された(即ち、人物の顔の領域を検出できない場合)場合には、通常の方法でAF/AE/WB領域を設定する。なお、AF/AE/WB領域の設定は、CPU21で行っても構わない。
【0051】
ステップS209では、ステップS202においてメモリ空間Aに記憶されたRAWデータの内、ステップS208において設定したAF/AE/WB領域に含まれるRAWデータをAF/AE/WB検出部20に読み出し、AF/AE/WB評価値を検出する。CPU21は、ステップS209において得られたAF/AE評価値に基づいて、AF/AE調整量を求め、結像光学部10を制御する(ステップS210)。また、ステップS209において得られたAE/WB評価値に基づいて、信号処理部13での信号処理のパラメータ設定を行う。
【0052】
以上説明したように、本実施の形態によれば、電子ズーム時において人物の顔の位置を検出する領域を画面全体よりも狭く、且つ電子ズーム領域よりも広くなるように設定するので、人物の顔の検出率を向上し、人物の顔への焦点調節と露出/ホワイトバランス制御を精度よく行うことが可能となる。また、撮像装置が備える電子ズーム部を一つにしたので、装置をコンパクト化し、製造コストを減少させることができる。
【0053】
図6は、本発明の第3の実施の形態に係る撮像装置102の機能構成を示すブロック図である。
【0054】
撮像装置102は、撮像装置100の各構成部を全て備えている。撮像装置100の電子ズーム部14,15は信号処理部13とメモリI/F16との間にそれぞれ設けられているが、撮像装置102の電子ズーム部14はメモリI/F16と記録/表示部18との間に設けられており、電子ズーム部15はメモリI/F16と顔領域判定部19との間に設けられている。撮像装置102のその他の構成は、撮像装置100の構成と同様であるので、その説明は省略する。
【0055】
図7は、図6の撮像装置102で実行される処理内容を示すフローチャートである。なお、本実施の形態では、撮像装置102が備える電子ズーム機能がオンの状態であるものとする。
【0056】
結像光学部10に入射した光は撮像素子11の受光面に結像され、撮像素子11からアナログ画像信号として出力される。アナログ画像信号はA/D変換回路12でデジタル画像データに変換され、信号処理部13に入力される(ステップS301)。
【0057】
信号処理部13では、ステップS302とステップS303の2つの処理が平行して実行される。ステップS302では、入力された画像データをそのまま(RAWデータ)の状態でメモリI/F16を介してメモリ17の予め決められたメモリ空間(メモリ空間A)に記憶する。一方、ステップS303では、入力された画像データにガンマ処理、補間処理、マトリクス変換等を施して画面全体の映像データを作成し、メモリI/F16を介してメモリ17の予め決められたメモリ空間(メモリ空間B)に記憶する(ステップS304)。
【0058】
電子ズーム部14は、ステップS304においてメモリ空間Bに記憶された画面全体の映像データの内で電子ズーム領域の映像データをメモリI/F16を介して読み出し、電子的に変倍して記録/表示用の映像データを作成する(ステップS305)。
【0059】
記録/表示部18は、ステップS305において作成された記録/表示用の映像データをCFカードなどの記録媒体に圧縮して記録し、またLCDモニタ等に表示する(ステップS306)。
【0060】
電子ズーム部15は、画面全体よりも狭くて電子ズーム領域よりも広い領域を顔検出領域として設定し、ステップS304においてメモリ空間Bに記憶された画面全体の映像データの内で顔検出領域の映像データをメモリI/F16を介して読み出し、電子的に変倍して顔検出用の映像データを作成する(ステップS307)。尚、撮像装置102は、これらの設定(電子ズーム領域や顔検出領域の位置や大きさの設定及びこれらの領域に対する変倍率の設定)をユーザ自身が行えるように、操作子等の設定部を備えるようにしてもよい。電子ズーム領域と顔検出領域の関係は、上記図3と同様である。
【0061】
顔領域判定部19は、ステップS307において作成された顔検出用の映像データを用いて人物の顔の領域を検出する(ステップS308)。人物の顔領域の検出方法は、第1の実施の形態で説明したものと同じ方法が適用可能である。
【0062】
AF/AE/WB検出部20は、ステップS308において検出された人物の顔領域の情報に基づいて、AF評価値を検出する領域(AF領域)、AE評価値を検出する領域(AE領域)及びWB評価値を検出する領域(WB領域)を設定する(ステップS309)。ステップS308において人物の顔が存在しないと判定された場合(即ち、人物の顔の領域を検出できない場合)には、通常の方法でAF/AE/WB領域を設定する。なお、AF/AE/WB領域の設定は、CPU21で行っても構わない。
【0063】
ステップS310では、ステップS302においてメモリ空間Aに記憶されたRAWデータの内、ステップS309において設定したAF/AE/WB領域に含まれるRAWデータをAF/AE/WB検出部20に読み出し、AF/AE/WB評価値を検出する。CPU21は、ステップS310において得られたAF/AE評価値に基づいてAF/AE調整量を求め、結像光学部10を制御する(ステップS311)。また、ステップS310において得られたAE/WB評価値に基づいて、信号処理部13での信号処理のパラメータ設定を行う。
【0064】
以上説明したように、本実施の形態によれば、電子ズーム時において人物の顔の位置を検出する領域を画面全体よりも狭く、且つ電子ズーム領域よりも広くなるように設定するので、人物の顔の検出率を向上し、人物の顔への焦点調節と露出/ホワイトバランス制御を精度よく行うことが可能となる。
【0065】
上述した本発明の第1〜第3の実施の形態は、それぞれ図1,4,6の構成を備える撮像装置であれば、どのようなものでも実現でき、例えば、撮像装置としては、デジタルスチルカメラ、デジタルカメラ付き携帯電話(PHS端末も含む)、デジタルカメラ内蔵コンピュータ(PDAも含む)等がある。
【0066】
また、本発明の目的は、上記実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
【0067】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード及び該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0068】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0069】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0070】
また、上記プログラムは、上述した実施の形態の機能をコンピュータで実現することができればよく、その形態は、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給されるスクリプトデータ等の形態を有するものでもよい。
【0071】
プログラムを供給する記録媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、MO、CD−R、CD−RW、DVD(DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW)、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、他のROM等を用いることができる。或いは、上記プログラムは、インターネット、商用ネットワーク、若しくはローカルエリアネットワーク等に接続される不図示の他のコンピュータやデータベース等からダウンロードすることにより供給される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置100の機能構成を示すブロック図である。
【図2】図1の撮像装置100で実行される処理内容を示すフローチャートである。
【図3】電子ズーム領域と人物の顔検出領域のと関係を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置101の機能構成を示すブロック図である。
【図5】図4の撮像装置101で実行される処理内容を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る撮像装置102の機能構成を示すブロック図である。
【図7】図6の撮像装置102で実行される処理内容を示すフローチャートである。
【図8】(A)は二人の人物が並んだ構図の例を示す図であり、(B)は人物が画面の右側にずれている構図の例を示す図である。
【図9】(A)は顔検出領域を画面全体に設定した場合を示す図であり、(A)顔検出領域を電子ズーム領域と同一に設定した場合を示す図である。
【図10】(A)は電子ズーム機能を使用する前の撮影画面の一例を示す図であり、(B)は電子ズーム機能を使用した後の撮影画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
10 結像光学部
11 撮像素子
12 A/D変換回路
13 信号処理部
14 電子ズーム部
15 電子ズーム部
16 メモリI/F
17 メモリ
18 記録/表示部
19 顔領域判定部
20 AF/AE/WB検出部
21 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子から得られるアナログ信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換手段と、
前記デジタル画像信号を映像データに処理する信号処理手段と、
前記映像データ内のズーム領域を所定の画角に変倍する第1変倍手段と、
前記第1変倍手段により変倍されたズーム領域の映像データを表示する表示手段と、
前記映像データ内の顔検出領域を所定の画角に変倍する第2変倍手段と、
前記第2変倍手段により変倍された顔検出領域の映像データから人物の顔の有無を検出すると同時に該人物の顔の座標位置情報を取得する顔検出手段と、
前記顔検出手段により取得された座標位置情報に基づいて、測距、測光及びホワイトバランスの少なくともいずれか1つを制御する制御手段とを備え、
前記顔検出領域は、前記映像データの全体領域よりも狭く、且つ前記ズーム領域よりも広いことを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
撮像素子から得られるアナログ信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換手段と、
前記デジタル画像信号を映像データに処理する信号処理手段と、
前記映像データ内のズーム領域及び顔検出領域を所定の画角に変倍する変倍手段と、
前記変倍手段により変倍されたズーム領域の映像データを表示する表示手段と、
前記変倍手段により変倍された顔検出領域の映像データから人物の顔の有無を検出すると同時に該人物の顔の座標位置情報を取得する顔検出手段と、
前記顔検出手段により取得された座標位置情報に基づいて、測距、測光及びホワイトバランスの少なくともいずれか1つを制御する制御手段とを備え、
前記顔検出領域は、前記映像データの全体領域よりも狭く、且つ前記ズーム領域よりも広いことを特徴とする撮影装置。
【請求項3】
前記ズーム領域の映像データを記録する記録手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の撮影装置。
【請求項4】
前記撮影装置は、デジタルスチルカメラであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の撮影装置。
【請求項5】
撮像素子及び表示装置を備える撮像装置の制御方法において、
前記撮像素子から得られるアナログ信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換工程と、
前記デジタル画像信号を映像データに処理する信号処理工程と、
前記映像データ内のズーム領域を所定の画角に変倍する第1変倍工程と、
前記第1変倍工程により変倍されたズーム領域の映像データを前記表示装置に表示させる表示工程と、
前記映像データ内の顔検出領域を所定の画角に変倍する第2変倍工程と、
前記第2変倍工程により変倍された顔検出領域の映像データから人物の顔の有無を検出すると同時に該人物の顔の座標位置情報を取得する顔検出工程と、
前記顔検出工程により取得された座標位置情報に基づいて、測距、測光及びホワイトバランスの少なくともいずれか1つを制御する制御工程とを備え、
前記顔検出領域は、前記映像データの全体領域よりも狭く、且つ前記ズーム領域よりも広いことを特徴とする撮影装置の制御方法。
【請求項6】
撮像素子及び表示装置を備える撮像装置の制御方法において、
前記撮像素子から得られるアナログ信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換工程と、
前記デジタル画像信号を映像データに処理する信号処理工程と、
前記映像データ内のズーム領域及び顔検出領域を所定の画角に変倍する変倍工程と、
前記変倍工程により変倍されたズーム領域の映像データ前記表示装置に表示させる表示工程と、
前記変倍工程により変倍された顔検出領域の映像データから人物の顔の有無を検出すると同時に該人物の顔の座標位置情報を取得する顔検出工程と、
前記顔検出工程により取得された座標位置情報に基づいて、測距、測光及びホワイトバランスの少なくともいずれか1つを制御する制御工程とを備え、
前記顔検出領域は、前記映像データの全体領域よりも狭く、且つ前記ズーム領域よりも広いことを特徴とする撮影装置の制御方法。
【請求項7】
撮像素子及び表示装置を備える撮像装置で実行される制御用プログラムにおいて、
前記撮像素子から得られるアナログ信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換モジュールと、
前記デジタル画像信号を映像データに処理する信号処理モジュールと、
前記映像データ内のズーム領域を所定の画角に変倍する第1変倍モジュールと、
前記第1変倍モジュールにより変倍されたズーム領域の映像データを前記表示装置に表示させる表示モジュールと、
前記映像データ内の顔検出領域を所定の画角に変倍する第2変倍モジュールと、
前記第2変倍モジュールにより変倍された顔検出領域の映像データから人物の顔の有無を検出すると同時に該人物の顔の座標位置情報を取得する顔検出モジュールと、
前記顔検出モジュールにより取得された座標位置情報に基づいて、測距、測光及びホワイトバランスの少なくともいずれか1つを制御する制御モジュールとを備え、
前記顔検出領域は、前記映像データの全体領域よりも狭く、且つ前記ズーム領域よりも広いことを特徴とする制御用プログラム。
【請求項8】
撮像素子及び表示装置を備える撮像装置で実行される制御用プログラムにおいて、
前記撮像素子から得られるアナログ信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換モジュールと、
前記デジタル画像信号を映像データに処理する信号処理モジュールと、
前記映像データ内のズーム領域及び顔検出領域を所定の画角に変倍する変倍モジュールと、
前記変倍モジュールにより変倍されたズーム領域の映像データ前記表示装置にを表示させる表示モジュールと、
前記変倍モジュールにより変倍された顔検出領域の映像データから人物の顔の有無を検出すると同時に該人物の顔の座標位置情報を取得する顔検出モジュールと、
前記顔検出モジュールにより取得された座標位置情報に基づいて、測距、測光及びホワイトバランスの少なくともいずれか1つを制御する制御モジュールとを備え、
前記顔検出領域は、前記映像データの全体領域よりも狭く、且つ前記ズーム領域よりも広いことを特徴とする制御用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2005−348181(P2005−348181A)
【公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−166341(P2004−166341)
【出願日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】